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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1405595
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-01-17 
確定日 2023-12-20 
事件の表示 特願2021−112117「非一時的記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月18日出願公開、特開2021−180494〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月25日(パリ条約による優先権主張 2017年10月27日、米国)を国際出願日とする特願2019−550292号の一部を令和3年7月6日に特願2021−112117号として新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 7月 6日 :上申書の提出
令和 4年 6月17日付け:拒絶理由通知書
同年 8月19日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月26日付け:拒絶査定
令和 5年 1月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 2月13日付け:前置報告書
同年 3月24日 :上申書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、令和4年8月19日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3を、令和5年1月17日付け手続補正により請求項1、2を削除し、請求項3を補正することによる、特許請求の範囲の請求項1により特定されるものであって、以下のとおりのものである。(符号は合議体が付したものであり、以下、「構成A」〜「構成C111」等という。以下、同じ。)

【請求項1】
A ビットストリームを保存する非一時的記憶媒体であって、
B 前記ビットストリームは、前記ビットストリームを受信するコンピュータに復号処理をさせるための情報を含み、
C 前記情報は、
C1 前記コンピュータが、
対象ブロックのインター予測処理におけるアフィン動き補償予測処理において、動き探索または動き補償を行う範囲を制限して前記対象ブロックの動き補償を行うことで、符号化されたストリームを復号化し、
(C1) 前記アフィン動き補償予測処理では、
C11 前記動き探索または前記動き補償を行う範囲を、アフィン動き補償予測処理における前記対象ブロックの左上角の制御ポイント動きベクトルと右上角の制御ポイント動きベクトルとのばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する情報であって、
C111 前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる、
C 情報を含む、
A 非一時的記憶媒体。」

第3 原査定の理由
令和4年9月26日付け拒絶査定の理由の概要は以下の通りである。

1.(発明該当性)この出願の請求項3に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

請求項3のデータ構造(ビットストリーム)は、コンピュータによる情報処理を可能とするデータ構造にすぎず、コンピュータまたはハードウェア資源が自らの処理として行うことが可能であるものであるものの、データ構造(データストリーム)がコンピュータまたはハードウェア資源による所定の情報処理を規定しているとまではいえない。
そうすると、請求項3に係るビットストリームを保存するコンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体は、ビットストリームが含むデータ要素の内容を定義したものにすぎず、人為的な取決めに止まるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、「発明」に該当しない。(審査ハンドブック 附属書B 第1章 コンピュータソフトウエア関連発明 〔事例 2-8〕参照。)
したがって、本願の請求項3に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。

第4 判断
1.本願発明の「非一時的記憶媒体」に保存される「ビットストリーム」に含まれる「情報」の発明特定事項について
(1)「ビットストリーム」及び「情報」の構成
本願発明の「ビットストリーム」は、「ビットストリームを受信するコンピュータに復号処理をさせるための情報を含」む(構成B)ことから、上記「情報」は上記「ビットストリーム」に含まれることが特定されているといえる。

(2)「ビットストリーム」に含まれる「情報」に関連する、コンピュータによる情報処理
本願発明の上記「ビットストリーム」に含まれる上記「情報」に関連する、コンピュータによる情報処理は、
・「ビットストリームを受信するコンピュータに復号処理をさせる」(構成B)こと、
・「前記コンピュータが、対象ブロックのインター予測処理におけるアフィン動き補償予測処理において、動き探索または動き補償を行う範囲を制限して前記対象ブロックの動き補償を行うことで、符号化されたストリームを復号化」する(構成C1)こと、
・「動き探索または前記動き補償を行う範囲を、アフィン動き補償予測処理における前記対象ブロックの左上角の制御ポイント動きベクトルと右上角の制御ポイント動きベクトルとのばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する」(構成C11)こと、
・「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理」(構成C111)であること
といえる。

2.発明該当性についての判断
(1)「コンピュータによる情報処理」について
本願発明の「ビットストリーム」に含まれる「情報」に関連する情報処理は、上記1(2)のとおりである。

(2)「ビットストリーム」に含まれる「情報」が「プログラム」であるかどうかについて
本願発明の「ビットストリーム」に含まれる「情報」は、上記1(2)から、「ビットストリームを受信するコンピュータに復号処理をさせる」ためのものであり、「前記コンピュータが、対象ブロックのインター予測処理におけるアフィン動き補償予測処理において、動き探索または動き補償を行う範囲を制限して前記対象ブロックの動き補償を行うことで、符号化されたストリームを復号化」するために用いられる「情報」であり、「動き探索または前記動き補償を行う範囲を、アフィン動き補償予測処理における前記対象ブロックの左上角の制御ポイント動きベクトルと右上角の制御ポイント動きベクトルとのばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する」ために用いられる「情報であって」、「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる」「情報」といえる。
そうすると、上記「情報」は、コンピュータが行う処理のために用いられるといえるものの、コンピュータが果たす機能を、コンピュータに対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものとして、手順として特定したものということはできない。
したがって、上記「情報」は、特許法第2条第4項に規定する「プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう)」には該当しない。

(3)「情報」を含む「ビットストリーム」のデータ構造、及び当該データ構造が「プログラムに準ずるデータ構造」であるかどうかについて
ア 上記1(1)のとおり、本願発明は、上記(2)の「情報」が「ビットストリーム」に含まれていることを特定している。

イ また、上記「情報」が、上記1(2)の
・構成C11の「動き探索または前記動き補償を行う範囲を」「所定の範囲に収まるように制限する」ために用いられる情報と、
・構成C111「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる」情報が、
ビットストリームに含まれており、これらをまとめて構成Bの「ビットストリームを受信するコンピュータに復号処理をさせるための」「情報」であることが把握できる。

ウ そうすると、上記「ビットストリーム」に含まれる「情報」には、「ビットストリームを受信するコンピュータにおいて復号処理をさせるための情報」であって、ストリームの復号処理における、「動き探索または前記動き補償を行う範囲を」対象ブロックの所定の2つの制御ポイント動きベクトルのばらつきが「所定の範囲に収まるように制限する」処理や、「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理」といった処理に用いられる情報が含まれていることはいえる。

エ そこで、上記ウの「情報」がプログラムに準ずるかどうかについて検討すると、この「情報」は、上記ウの「動き探索または前記動き補償を行う範囲を」対象ブロックの所定の2つの制御ポイント動きベクトルのばらつきが「所定の範囲に収まるように制限する」処理や、「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理」といった処理に用いるための具体的なデータ構造を特定しているわけではない。
そうすると、このような上記「ビットストリーム」に含まれる「情報」は、上記ウの「動き探索または前記動き補償を行う範囲を」対象ブロックの所定の2つの制御ポイント動きベクトルのばらつきが「所定の範囲に収まるように制限する」処理や、「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理」といった処理に用いられる「情報」がビットストリーム中に存在していることを示しているにすぎず、当該「情報」が有するデータ構造がコンピュータに対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたプログラムに類似する性質を有するとはいえない。
よって、このような「情報」を含む「ビットストリーム」は、コンピュータに対する指令が一の結果を得るように組み合わされたプログラムに類似する性質を有していない、すなわち、何ら電子計算機による処理を規定するものではない。

オ したがって、本願発明の「情報」を含む「ビットストリーム」は、特許法第2条第4項に規定された「その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの」ということはできない。

(4)上記の「情報」を含む「ビットストリーム」を保存する「非一時的記憶媒体」について
次に、上記の「情報」を含む「ビットストリーム」を保存する「非一時的記憶媒体」について検討する。
本願発明の「非一時的記憶媒体」は、上記1(1)の「ビットストリーム」を保存するものといえ、また、本願発明の「非一時的記憶媒体」に基づく情報処理は、上記1(2)の「「ビットストリーム」に含まれる「情報」に関連する、コンピュータによる情報処理」と同様のものといえる。

ところで、上記(1)のとおり、本願発明の「ビットストリーム」に含まれる「情報」は、コンピュータに復号処理をさせるための情報であって、構成C1、C11、C111の処理に用いられることが特定される情報にすぎず、上記(2)と同様にこのような特定があることをもって「プログラム」ということはできない。
また、上記(2)のとおり把握される「情報」を含む「ビットストリーム」のデータ構造について、上記(3)のとおり、当該ビットストリーム中の情報がコンピュータに対する指令が一の結果を得ることができるように組み合わされたプログラムに類似する性質を有しているとはいえず、プログラムに準ずるものとはいえない。
したがって、本願発明の「非一時的記憶媒体」は、特許法第2条第4項に規定する「プログラム」または「プログラムに準ずるもの」を記録したものを特定するものではない。

(5)小括
以上のことから、本願発明における、非一時的記録媒体に保存されるビットストリームに含まれる「情報」は、全体としてみて、特許法第2条第4項に規定する「プログラム」または「プログラムに準ずるもの」ということはできず、「人為的な取決め」を特定したにとどまるものであって、上記「情報」を含む「ビットストリーム」を保存する「非一時的記録媒体」は、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する「発明」に該当しない。

3.審判請求書の主張について
請求人は、令和5年1月17日提出の審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、以下のとおり主張している。
「補正後の請求項1に記載のデータ構造(ビットストリーム)は、「前記コンピュータが、対象ブロックのインター予測処理におけるアフィン動き補償予測処理において、動き探索または動き補償を行う範囲を制限して前記対象ブロックの動き補償を行うことで、符号化されたストリームを復号化し、前記アフィン動き補償予測処理では、前記動き探索または前記動き補償を行う範囲を、アフィン動き補償予測処理における前記対象ブロックの左上角の制御ポイント動きベクトルと右上角の制御ポイント動きベクトルとのばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する情報であって、前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる情報を含む」ことによって「前記動き探索または前記動き補償を行う範囲を、アフィン動き補償予測処理における前記対象ブロックの左上角の制御ポイント動きベクトルと右上角の制御ポイント動きベクトルとのばらつきが、所定の範囲に収まるように制限」し、「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する」というコンピュータによる情報処理を可能とするデータ構造である。
よって、当該データ構造は、コンピュータによる情報処理を規定するという点でプログラムに類似する性質を有しており、プログラムに準ずるデータ構造である。
そして、補正後の請求項1の記載から、符号化されたビットストリームの復号という使用目的に応じた特有の情報の演算または加工が、ソフトウェア(プログラムに準ずるデータ構造)とハードウェア資源(コンピュータ)とが協働した具体的手段または具体的手順によって実現されていると判断できる。そのため、当該データ構造は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって使用目的に応じた特有のコンピュータの動作方法を構築するものである。
したがって、プログラムに準ずるデータ構造が規定する情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることから、補正後の請求項1に係るビットストリームを保存する非一時的記憶媒体は、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、「発明」に該当すると思料する。」

さらに、請求人は、令和5年3月24日提出の上申書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、以下のとおり主張している。
「本願の「ビットストリームを保存する非一時的記憶媒体」における「ビットストリーム」は、「前記ビットストリームを受信するコンピュータに復号処理をさせるための情報を含」みます。すなわち「情報」(ここでは、データの有する構造は記載していない)がプロセッサの処理を規定しています。
例えば、復号処理として「[0187]符号化ビットストリームから読み解かれたALFのオン/オフを示す情報がALFのオンを示す場合、局所的な勾配の方向及び活性度に基づいて複数のフィルタの中から1つのフィルタが選択され、選択されたフィルタが再構成ブロックに適用される。」より、「情報」がプロセッサの行う「復号処理」を規定していることがわかります。
さらに、この「情報」は「前記アフィン動き補償予測処理では、〜ばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する情報であって、前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる、ための情報を含む」ものです。すなわち「情報」は、「復号処理」のうち、本願の特徴である「アフィン動き補償予測処理」に用いられるデータ構造を含み、そのデータ構造は「ばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する情報」として、「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる、ための情報」が紐づけられていることを示しています。
したがって、本願の「ビットストリーム」は、データの有する構造がプロセッサの処理を規定するものであり、プログラムに類似する性質を有するものであるから、プログラムに準ずるものであるといえます。」

そこで、上記主張について検討する。
上記1(2)において示したように、本願発明の「ビットストリーム」に含まれる「情報」に関連する、コンピュータによる情報処理とは、構成B、構成C1、C11、C111により特定される「復号処理」であるところ、上記の「情報」はこの「復号処理」に用いられる情報であることを特定しているにすぎない。
そして、この「情報」は、構成C1の「アフィン動き補償予測処理」に用いられ、構成C11の「ばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する情報」、構成C111の「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる、ための情報」であることが特定されているにとどまる、すなわち、「ばらつきが、所定の範囲に収まるように制限する情報」として、「前記所定の範囲を、参照するピクチャの種類に応じて変更する処理に用いられる、ための情報」を紐付けるための具体的なデータ構造を特定しているわけではなく、単に構成C11や構成C111の「情報」が「ビットストリーム」に含まれているということを特定しているにとどまる。
したがって、本願の「ビットストリーム」は、その中に含まれる「情報」の有するデータ構造が復号処理に用いられるコンピュータにおいて実行される処理を規定するものであるとはいえない。

結局、本願発明の上記の「情報」を含む「ビットストリーム」は、コンピュータに対する指令が一の結果を得るように組み合わされたプログラムに類似する性質を有するものではない、すなわち、何ら電子計算機による処理を規定するものではないといえ、換言すれば、特許法第2条第4項に規定された「プログラム」または「プログラムに準ずるもの」ということはできない。
したがって、請求人の審判請求書及び上申書における上記主張は、採用することができない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明の「ビットストリームを保存する非一時的記録媒体」における、「非一時的記録媒体」に保存された「ビットストリーム」に含まれる「情報」は、全体としてみて「プログラム」ではなく、また「情報」のデータ構造に基づく情報処理を具体的に特定するものではないことから、この「情報」が「プログラムに準ずるもの」ということもできない。
したがって、本願発明の「ビットストリームを保存する非一時的記憶媒体」は、所定の情報処理において、ビットストリームに含まれる特定の情報が用いられるという「人為的な取り決め」を保存する記憶媒体を特定したにとどまるものであって、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する「発明」に該当しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 畑中 高行
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2023-06-20 
結審通知日 2023-06-27 
審決日 2023-07-28 
出願番号 P2021-112117
審決分類 P 1 8・ 1- Z (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 畑中 高行
特許庁審判官 川崎 優
高橋 宣博
発明の名称 非一時的記憶媒体  
代理人 道坂 伸一  
代理人 新居 広守  
代理人 寺谷 英作  

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