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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1405631
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-02-07 
確定日 2023-12-14 
事件の表示 特願2018−160431「防災用設備」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月 5日出願公開、特開2020− 35139〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年8月29日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 4年 6月 3日付け 拒絶理由通知書
8月16日 意見書・手続補正書
10月31日付け 拒絶査定
令和 5年 2月 7日 審判請求書・手続補正書
3月 6日 前置報告書

以下では、令和4年10月31日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和5年2月7日の手続補正書による補正を「本件補正」という。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の令和4年8月16日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
制御盤と端末機器とを備え、前記制御盤と前記端末機器との間で電話線を介した通話を行う防災用設備であって、
前記制御盤に設けられた電話ジャックおよび/または前記端末機器に設けられた電話ジャックに接続可能なプラグを有し、外部機器との無線通信が可能な無線変換器をさらに備え、
前記無線変換器は、
前記電話線を介して前記制御盤に設けられた電話ジャックまたは前記端末機器に設けられた電話ジャックに到達した第1音声信号を無線送信信号に変換して前記外部機器に送信し、
前記外部機器から受信した無線受信信号を第2音声信号に変換し、前記電話線を介して送信し、
前記外部機器と前記無線変換器とは、Bluetoothによる通信機能を用いてペアリングを実施することで前記無線通信が可能となる
防災用設備。」

(2)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。

「【請求項1】
制御盤と端末機器とを備え、前記制御盤と前記端末機器との間で電話線を介した通話を行う防災用設備であって、
前記制御盤に設けられた電話ジャックおよび/または前記端末機器に設けられた電話ジャックに接続可能なプラグを有し、スピーカーおよびマイクを有するヘッドセットとの無線通信が可能な無線変換器をさらに備え、
前記無線変換器は、
前記電話線を介して前記制御盤に設けられた電話ジャックまたは前記端末機器に設けられた電話ジャックに到達した第1音声信号を無線送信信号に変換して前記ヘッドセットに送信し、
前記ヘッドセットから受信した無線受信信号を第2音声信号に変換し、前記電話線を介して送信し、
前記ヘッドセットと前記無線変換器とは、Bluetoothによる通信機能を用いてペアリングを実施することで前記無線通信が可能となり、
前記ヘッドセットとの無線通信が可能な前記無線変換器を用いることで、ハンズフリーによる無線通信機能を実現する
防災用設備。」

2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「外部機器」を「スピーカーおよびマイクを有するヘッドセット」に限定し、さらに、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「防災用設備」について「前記ヘッドセットとの無線通信が可能な前記無線変換器を用いることで、ハンズフリーによる無線通信機能を実現する」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。

3 補正の適否
本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA〜Fに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。

【請求項1】
A 制御盤と端末機器とを備え、前記制御盤と前記端末機器との間で電話線を介した通話を行う防災用設備であって、
B 前記制御盤に設けられた電話ジャックおよび/または前記端末機器に設けられた電話ジャックに接続可能なプラグを有し、スピーカーおよびマイクを有するヘッドセットとの無線通信が可能な無線変換器をさらに備え、
C 前記無線変換器は、
C1 前記電話線を介して前記制御盤に設けられた電話ジャックまたは前記端末機器に設けられた電話ジャックに到達した第1音声信号を無線送信信号に変換して前記ヘッドセットに送信し、
C2 前記ヘッドセットから受信した無線受信信号を第2音声信号に変換し、前記電話線を介して送信し、
D 前記ヘッドセットと前記無線変換器とは、Bluetoothによる通信機能を用いてペアリングを実施することで前記無線通信が可能となり、
E 前記ヘッドセットとの無線通信が可能な前記無線変換器を用いることで、ハンズフリーによる無線通信機能を実現する
F 防災用設備。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定で引用された特開2016−81262号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。

(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高層ビル等の施工、メンテナンス時においては、防災センタ等に設けられる火災受信機と端末機器付近の現場との連絡を行うために、火災受信機と電話線を介して接続される発信機に送受話器を接続し、火災受信機の送受話器と発信機の送受話器との間で通話を可能とし、さらに、その通話内容を発信機近傍と現場の作業員が携帯する無線機で連絡するといったように、防災センタと現場との連絡を行うのに、防災センタ、発信機近傍、現場に作業員がそれぞれ必要であった。
【0003】
このような問題を解決するため、近年では、送受話器の代わりに無線親機を発信機に接続し、かつ現場で携帯する無線子機により無線親機と無線通信するようにして、電話線と発信機及び無線親機を介して、無線子機と火災受信機との間で通話を可能とし、発信機近傍への作業員の配置を不要とした火災報知設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
[第1の実施の形態]
図1はこの発明の第1の実施の形態における火災報知設備を示す概略構成図である。図において、10は送受話器11を有する火災受信機、20は信号線L1を介して火災受信機10と接続される端末機器の一例としての火災感知器、30は信号線L1を介して火災受信機10と接続され、また火災受信機10と電話線L2を介して接続される電話ジャック31を有する端末機器の一例としての発信機、40は発信機30の電話ジャック31と接続される電話プラグ46を有する無線親機、50は無線親機40と無線通信する無線子機である。
【0015】
この第1の実施の形態における火災報知設備は、無線親機40の電話プラグ46を発信機30の電話ジャック31に接続することで、電話線L2と発信機30及び無線親機40を介して、無線子機50の送受話部(後述する)と火災受信機10の送受話器11との間で、通話を可能としている。
【0016】
図2は図1の無線親機40を示す概略ブロック図である。41は無線親機40の各部に電源供給を開始する電源スイッチ、42は無線子機50との間の無線通信周波数を手動で設定する手段(無線通信周波数設定手段の一例)であり、複数の無線通信周波数の中から所望の無線通信周波数を設定する無線通信周波数設定スイッチ、43は無線親機40の全体を制御する制御部、44はアンテナを有し、無線通信周波数設定スイッチ42で設定された無線通信周波数で、無線子機50の送受信部54(図3)と無線通信する送受信部、45は音声変換部、46は電話プラグである。
【0017】
音声変換部45は、無線子機50との無線通信により送受信部44で受信した音声信号を電話線L2(火災受信機10)との通信仕様に適合した音声信号に変換して電話線L2側へ出力し、また電話線L2を介して受信した音声信号を無線子機50との通信仕様に適合した音声信号に変換して送受信部44へ出力する。
【0018】
図3は図1の無線子機50を示す概略ブロック図である。51は無線子機50の各部に電源供給を開始する電源スイッチ、52は無線親機40との間の無線通信周波数を手動で設定する手段(無線通信周波数設定手段の一例)であり、複数の無線通信周波数の中から所望の無線通信周波数を設定する無線通信周波数設定スイッチ、53は無線子機50の全体を制御する制御部、54はアンテナを有し、無線通信周波数設定スイッチ52で設定された無線通信周波数で、無線親機50の送受信部44と無線通信する送受信部、55は音声変換部、56はマイク、57はスピーカである。マイク56とスピーカ57は送受話部の一例である。
【0019】
音声変換部55は、無線親機40との無線通信により送受信部54で受信した音声信号をスピーカ57との通信仕様に適合した音声信号に変換してスピーカ57へ出力し、またマイク56から入力した音声信号を無線親機40との通信仕様に適合した音声信号に変換して送受信部54へ出力する。
【0020】
次に、図1乃至図3に示した本第1の実施の形態の火災報知設備の動作を説明する。施工、メンテナンス等において、火災受信機10と端末機器付近の現場との連絡を行う際には、現場の作業員は、現場近傍に配置された発信機30の電話ジャック31に無線親機40の電話プラグ46を接続してから、電源スイッチ41、51をオンして無線親機40及び無線子機50に電源供給を開始する。そして、無線通信周波数設定スイッチ42、52を操作して、所望の同一の無線通信周波数を無線親機40及び無線子機50に設定する。
【0021】
この状態で、無線子機50のマイク56から音声が入力されると、音声変換部55及び送受信部54を介して、設定された通信周波数の音声信号として無線送信され、無線親機40において、送受信部44を介して音声信号が受信され、音声変換部45及び電話プラグ46を介して、電話線L2側に送信され、最終的に、火災受信機10において、電話線L2を介して、音声信号が受信されて、送受話器11から出力される。また、火災受信機10の送受話器11から音声が入力されると、同様の経路を経由して、無線子機50のスピーカ57から出力される。
【0022】
このように、無線子機50の送受話部と火災受信機10の送受話器11との間で、つまり現場の作業員と火災受信機10側の作業員との通話が可能となった状態で、第三者が同一の無線通信周波数を使用していて、通話がクリアでない場合は、現場の作業員は、無線通信周波数設定スイッチ42、52を再操作して、無線通信周波数を切り替えて、同一の無線通信周波数を無線親機40及び無線子機50に再設定して、通話がクリアになるようにする。」

(ウ)「【0024】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、無線通信周波数設定手段は、無線親機40と無線子機50との間の無線通信周波数を手動で設定する手段の一例として、無線通信周波数設定スイッチ42、52を備えたものであったのに対し、この第2の実施の形態では、無線通信周波数設定手段は、無線親機40と無線子機50との間の無線通信周波数を自動で設定する手段の一例として、無線通信周波数自動設定スイッチ49、59を備えたものであることが相違する。
【0025】
つまり、この第2の実施の形態に係る無線親機40及び無線子機50は、図2及び図3で示した無線通信周波数設定スイッチ42、52の代わりに、無線通信周波数自動設定スイッチ49、59を備えたブロック図であるため、図面を省略し、以下に、第1の実施の形態との相違点についての動作を説明する。
【0026】
無線親機40又は無線子機50(発呼無線機)は、現場の作業員によって無線通信周波数自動設定スイッチ49、59が操作されると、複数の無線通信周波数を順に切替えて1つの無線通信周波数を選択し、第三者が使用していない無線通信周波数(空きチャネルの無線通信周波数)を探索する。具体的には、選択された無線通信周波数で送受信部44、54が受信する無線信号のレベル(キャリアレベル)によって無線通信周波数の空きチャネルの有無を判定している。選択された無線通信周波数が利用可能な空きチャネルの無線通信周波数と判定されると、その無線通信周波数で接続要求信号を送出する。そして、無線親機40と無線子機50との間の無線通信周波数として、選択された無線通信周波数を設定する。
【0027】
一方、無線子機50又は無線親機40(被呼無線機)では、複数の無線通信周波数を順に切替えて1つの無線通信周波数を選択し、選択された無線通信周波数で送受信部54、44が、発呼無線機からの接続要求信号を受信するか否かを探索する。接続要求信号を受信すると、無線親機40と無線子機50との間の無線通信周波数として、選択された無線通信周波数を設定する。
【0028】
以上の動作により、発呼無線機と被呼無線機との間で、同一の無線通信周波数を設定でき、発呼無線機と被呼無線機との間で無線信号を通信することができる。」

(エ)図1


(オ)図2


(カ)図3


イ 前記アの記載によれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa〜lに分説し、「構成a」のようにして参照する。

「a 火災報知設備であって、(【0001】)
b 送受話器11を有する火災受信機10と、
c 信号線L1を介して火災受信機10と接続される端末機器の一例としての火災感知器20と、
d 信号線L1を介して火災受信機10と接続され、また火災受信機10と電話線L2を介して接続される電話ジャック31を有する端末機器の一例としての発信機30と、
e 発信機30の電話ジャック31と接続される電話プラグ46を有する無線親機40と、
f 無線親機40と無線通信する無線子機50とを備え、(以上、【0014】及び図1)
g 無線親機40は、無線子機50の送受信部54と無線通信する送受信部44と、音声変換部45とを備え、(【0016】及び図2)
h 音声変換部45は、無線子機50との無線通信により送受信部44で受信した音声信号を電話線L2との通信仕様に適合した音声信号に変換して電話線L2側へ出力し、また電話線L2を介して受信した音声信号を無線子機50との通信仕様に適合した音声信号に変換して送受信部44へ出力し、(【0017】)
i 無線子機50は、送受話部の一例としてマイク56とスピーカ57を備え、(【0018】及び図3)
j 施工、メンテナンス等において、火災受信機10と端末機器付近の現場との連絡を行う際には、(【0020】)
j1 電話ジャック31に電話プラグ46を接続して、(【0020】)
j2 無線子機50のマイク56から音声が入力されると、音声信号として無線送信され、無線親機40において、音声変換部45及び電話プラグ46を介して、電話線L2側に送信され、火災受信機10において、電話線L2を介して、音声信号が受信されて、送受話器11から出力され、(【0021】)
j3 また、火災受信機10の送受話器11から音声が入力されると、同様の経路を経由して、無線子機50のスピーカ57から出力され、(【0021】)
j4 このように、無線子機50の送受話部と火災受信機10の送受話器11との間で、通話が可能であり、(【0022】)
k 無線親機40と無線子機50との間の無線通信周波数を自動で設定する手段を備え、無線子機50と無線親機40との間で、同一の無線通信周波数を設定でき、無線子機50と無線親機40との間で無線信号を通信することができる(【0024】、【0026】〜【0028】)
l 火災報知設備。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 発明特定事項A及びFについて
引用発明の「火災報知設備」(構成a)は、本件補正発明の「防災用設備」に相当する。
引用発明の「火災受信機10」(構成b)については、引用文献にその設置場所が明記されていないものの、引用発明の背景技術の説明において「防災センタ等に設けられる火災受信機」(【0002】)との記載があるため、引用発明の「火災受信機10」も背景技術の火災受信機に準じて防災センタ等に設けられるものと認められ、加えて、引用発明の「火災受信機10」は「端末機器の一例としての火災感知器20」と接続されていること(構成c)及び「施工、メンテナンス等において、火災受信機10と端末機器付近の現場との連絡を行う」こと(構成j)を考慮すると、引用発明の「火災受信機10」は、防災センタ等に設けられて「火災感知器20」が感知した情報を集約するとともに火災報知設備全体を制御するために用いられるものと解されるから、本件補正発明の「制御盤」に相当する。
引用発明の「端末機器の一例としての発信機30」(構成d)は、本件補正発明の「端末機器」に相当する。
引用発明は、「施工、メンテナンス等において、火災受信機10と端末機器付近の現場との連絡を行う際に」(構成j)、「電話線L2を介して」(構成j2)、「無線子機50の送受話部と火災受信機10の送受話器11との間で、通話が可能」なものである(構成j4)から、「火災受信機10」と「端末機器」との間で「電話線L2」を介した通話を行うものと解される。
以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「制御盤と端末機器とを備え、前記制御盤と前記端末機器との間で電話線を介した通話を行う防災用設備」である点で一致する。

イ 発明特定事項Bについて
引用発明の「電話ジャック31」、「電話プラグ46」、「マイク56」及び「スピーカ57」は、それぞれ本件補正発明の「電話ジャック」、「電話ジャックに接続可能なプラグ」、「マイク」及び「スピーカー」に相当する。
引用発明の「無線子機50」は「マイク56とスピーカ57を備え」ており(構成i)、他方、本件補正発明の「ヘッドセット」は「スピーカーおよびマイクを有する」から、両者は「スピーカーおよびマイクを有する」点で共通する。また、「無線子機50」も「ヘッドセット」も、共に電子機器であるといえる。よって、本件補正発明の「ヘッドセット」と引用発明の「無線子機50」とは、「スピーカーおよびマイクを有する電子機器」である点で共通する。
引用発明の「無線親機40」の「音声変換部45」(構成g)は、「無線子機50との無線通信により送受信部44で受信した音声信号を電話線L2との通信仕様に適合した音声信号に変換して電話線L2側へ出力し、また電話線L2を介して受信した音声信号を無線子機50との通信仕様に適合した音声信号に変換して送受信部44へ出力」するもの(構成h)であるから、有線である「電話線L2」の通信仕様に適合した音声信号と、「無線子機50」の通信仕様に適合した音声信号とを、相互に変換するものである。そうすると、「音声変換部45」を備える「無線親機40」は、無線変換器であるといえる。よって、引用発明の「無線親機40」は、本件補正発明の「無線変換器」に相当する。
引用発明の「発信機30」は「電話ジャック31」を有する(構成d)から、本件補正発明の「電話ジャック」と引用発明の「電話ジャック31」とは、「前記端末機器に設けられた電話ジャック」である点で一致し、ひいては、「前記制御盤に設けられた電話ジャックおよび/または前記端末機器に設けられた電話ジャック」である点で一致する。
引用発明の「無線親機40」は「電話プラグ46」を有する(構成e)から、本件補正発明の「無線変換器」と引用発明の「無線親機40」とは、「電話ジャックに接続可能なプラグを有」する点で一致する。
引用発明の「無線親機40」は、「無線子機50」と「無線通信」する(構成h)から、本件補正発明の「無線変換器」と引用発明の「無線親機40」とは、「スピーカー及びマイクを有する電子機器との無線通信が可能」である点で共通する。
以上を総合すると、本件補正発明と引用発明とは、「前記制御盤に設けられた電話ジャックおよび/または前記端末機器に設けられた電話ジャックに接続可能なプラグを有し、スピーカーおよびマイクを有する電子機器との無線通信が可能な無線変換器をさらに備え」る点で共通する。

ウ 発明特定事項C〜C2について
(ア)構成j1、構成j2及び構成hによれば、引用発明では、無線子機50からの音声信号は無線送信され、無線親機40で電話線L2との通信仕様に適合した音声信号に変換され、電話プラグ46及び電話ジャック31を介して電話線L2へ出力され、電話線L2を介して、火災受信機10において受信されて送受話器11から出力されると認められる。

(イ)引用発明では、「火災受信機10の送受話器11から音声が入力されると、同様の経路を経由して、無線子機50のスピーカ57から出力され」る(構成j3)ところ、「同様の経路」は前記(ア)の経路の逆順であると解される。すなわち、引用発明では、火災受信機10からの音声信号は、電話線L2、電話ジャック31及び電話プラグ46を介して無線親機40で受信され、無線親機40で無線子機50との通信仕様に適合した音声信号に変換されて無線送信され、無線子機50において受信されてスピーカ57から出力されると認められる。

(ウ)前記(イ)によれば、引用発明の「無線親機40」は、「発信機30」に設けられた「電話ジャック31」に到達した音声信号(以下、「第1音声信号」という。)を、無線子機50との通信仕様に適合した音声信号に変換して無線送信するための信号に変換して、「無線子機50」に送信するものである。
そうすると、本件補正発明の「無線変換器」と引用発明の「無線親機40」とは、「前記端末機器に設けられた電話ジャックに到達した第1音声信号を無線送信信号に変換して前記電子機器に送信」する点で共通し、ひいては「前記電話線を介して前記制御盤に設けられた電話ジャックまたは前記端末機器に設けられた電話ジャックに到達した第1音声信号を無線送信信号に変換して前記電子機器に送信」する点で共通する。

(エ)前記(ア)によれば、引用発明の「無線親機40」は、「無線子機50」から受信した無線信号を、電話線L2との通信仕様に適合した音声信号(以下、「第2音声信号」という。)に変換し、「電話線L2」を介して送信するものである。
そうすると、本件補正発明の「無線変換器」と引用発明の「無線親機40」とは、「前記電子機器から受信した無線受信信号を第2音声信号に変換し、前記電話線を介して送信」する点で共通する。

エ 発明特定事項Dについて
引用発明では、「無線親機40と無線子機50との間の無線通信周波数を自動で設定」でき、該設定によって「無線子機50と無線親機40との間で無線信号を通信することができる」ようになる(構成k)と認められるが、その無線通信の方式はBluetoothではない。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記電子機器と前記無線変換器とは、前記無線通信が可能とな」る点で共通するが、無線通信を可能とするために「Bluetoothによる通信機能を用いてペアリングを実施する」ものではない点で相違する。

オ 発明特定事項Eについて
前記エのとおり、引用発明の「無線親機40」は「無線子機50」との無線通信が可能である。
そして、引用発明において、「無線親機40」を用いることで無線通信機能が実現されていることは明らかである。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記電子機器との無線通信が可能な前記無線変換器を用いることで無線通信機能を実現する」点で共通するが、実現される無線通信機能が「ハンズフリーによる」ものか否かは不明である点で相違する。

カ 前記ア〜オによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

〈一致点〉
「制御盤と端末機器とを備え、前記制御盤と前記端末機器との間で電話線を介した通話を行う防災用設備であって、
前記制御盤に設けられた電話ジャックおよび/または前記端末機器に設けられた電話ジャックに接続可能なプラグを有し、スピーカーおよびマイクを有する電子機器との無線通信が可能な無線変換器をさらに備え、
前記無線変換器は、
前記電話線を介して前記制御盤に設けられた電話ジャックまたは前記端末機器に設けられた電話ジャックに到達した第1音声信号を無線送信信号に変換して前記電子機器に送信し、
前記電子機器から受信した無線受信信号を第2音声信号に変換し、前記電話線を介して送信し、
前記電子機器と前記無線変換器とは、前記無線通信が可能となり、
前記電子機器との無線通信が可能な前記無線変換器を用いることで無線通信機能を実現する
防災用設備。」である点。

〈相違点1〉
スピーカー及びマイクを有する電子機器が、本件補正発明では「ヘッドセット」であるのに対し、引用発明では「無線子機50」である点。

〈相違点2〉
無線通信を可能とするために、本件補正発明では「Bluetoothによる通信機能を用いてペアリングを実施する」のに対し、引用発明ではペアリングを実施していない点。

〈相違点3〉
「無線変換器」(「無線親機40」)を用いることにより実現される無線通信機能が、本件補正発明は「ハンズフリーによる」ものであるのに対し、引用発明はハンズフリーによるものか否かが不明である点。

(4)相違点についての判断
ア 相違点1について
スピーカー及びマイクを有する無線通信可能な電子機器として、Bluetoothのヘッドセットは、多くの企業から数多くの製品が発売され、小売店で消費者向けに販売されているものであって、一般によく知られたものであり、特許文献においても、例えば、特開2017−163354号公報(図1、【0062】)に示されるように、周知である。
また、引用発明の「無線子機50」及び「無線親機40」は無線通信周波数を自動で設定して音声を無線で通信するものであるところ、Bluetoothは、無線通信周波数を自動で設定するように規格が定められ、音声の無線通信についてもサポートされており、引用発明と技術分野及び機能が共通する。
引用発明の無線通信周波数の自動設定をBluetoothで行うために、一般によく知られたBluetoothのヘッドセットを「無線子機50」として採用し、これに伴い「無線親機40」の通信規格をBluetoothにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、この点に格別の困難性は存在しない。

イ 相違点2について
前記アのとおり、引用発明の「無線子機50」としてBluetoothのヘッドセットを採用することに、格別の困難性は存在しない。
そして、Bluetoothによる通信機能にはペアリングが含まれているから、相違点2に係る「Bluetoothによる通信機能を用いてペアリングを実施する」ことは、Bluetoothのヘッドセットを採用することで自ずと得られる。

ウ 相違点3について
前記アのとおり、引用発明の「無線子機50」としてBluetoothのヘッドセットを採用することに、格別の困難性は存在しない。
そして、ヘッドセットは頭部に装着するものであり、その使用の際に手を用いる必要はない。
したがって、相違点3に係る「ハンズフリーによる」無線通信機能は、Bluetoothのヘッドセットを採用することで自ずと得られる。

(5)効果についての判断
本件補正発明の効果として、(a)電話ジャックに差し込むことで外部機器との間で無線通信を可能とする無線変換器を備えている結果、ハンズフリー通話による作業性の向上を容易に実現できる防災用設備を得ることができること(明細書【0009】)、(b)作業者が無線変換器から離れて作業する場合にも相手側の発した音声を確実に聞き取ることができるとともに、必要以上に大声を出すことなく、顧客の業務を邪魔せずに、通話を行うことができ、ハンズフリーの状態で容易に通話を行うことができ、作業性の改善を図ることができること(【0022】)、及び、(c)10m以内であれば、障害物があっても通信可能であり、ハンズフリーによる無線通信を容易に行うことができ、Bluetoothによる通信機能を備えたヘッドセット41を用いることができ、ペアリングを実施することにより、盗聴を防止することができ、セキュリティ面も保証されること(【0027】)が挙げられる。
本件補正発明の効果(a)〜(c)は、いずれも、引用発明において「通信子機50」としてBluetoothのヘッドセットを採用することによって得られる効果に過ぎず、格別のものではない。

(6)請求人の主張についての判断
請求人の主張は、引用文献には「ハンズフリー」及び「ヘッドセット」の概念が開示されておらず、「作業者は、無線変換器40から離れて作業する場合にも、スピーカー41aを介して、相手側の発した音声を確実に聞き取ることができるとともに、マイク41bを介することで、必要以上に大声を出すことなく、顧客の業務を邪魔せずに、通話を行うことができる。さらに、作業者は、装着したヘッドセット41により、ハンズフリーの状態で容易に通話を行うことができ、作業性の改善を図ることができる。」(【0022】)という顕著な効果を得ることができない、というものである。(審判請求書3〜4頁)
しかしながら、引用発明において「無線子機50」としてBluetoothのヘッドセットを採用することは、前記(4)アに示したとおり、当業者にとって容易になし得ることであり、その効果は前記(5)のとおり格別のものではないので、請求人の主張は採用できない。
なお、上申書における請求人の主張は、この審決の引用文献を前提としたものではないので、採用できない。

(7)小括
以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

4 本件補正についてのむすび
前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)のとおりである。

第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、文献1又は文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項2に係る発明は、文献1又は文献2に記載された発明及び文献3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

文献1.特開2016−81262号公報
文献2.特開平10−304026号公報
文献3.特開2010−231581号公報

第5 文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された文献1(この審決における引用文献に対応)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。

第6 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、その発明特定事項である「スピーカーおよびマイクを有するヘッドセット」を「外部機器」に拡張し、さらに、その発明特定事項である「防災用設備」に係る「前記ヘッドセットとの無線通信が可能な前記無線変換器を用いることで、ハンズフリーによる無線通信機能を実現する」との限定事項を削除したものである(前記第2[理由]2を参照)。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に示したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-10-04 
結審通知日 2023-10-10 
審決日 2023-10-24 
出願番号 P2018-160431
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 575- Z (G08B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 高野 洋
特許庁審判官 土居 仁士
丸山 高政
発明の名称 防災用設備  
代理人 梶並 順  
代理人 松岡 隆裕  
代理人 曾我 道治  
代理人 上田 俊一  

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