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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02B
管理番号 1405698
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-04-19 
確定日 2024-01-16 
事件の表示 特願2019−56680「ターボチャージャ」拒絶査定不服審判事件〔令和2年10月1日出願公開、特開2020−159220、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月25日の出願であって、令和4年5月24日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年7月22日付けで意見書が提出され、令和4年10月26日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年12月26日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和5年1月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和5年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和5年6月5日に前置報告がされ、令和5年8月30日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和5年1月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1−5、9に係る発明は、以下の引用文献1−2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.本願請求項6−8に係る発明は、以下の引用文献1−3に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2019/044775号
2.特開2001−342807号公報
3.特開2009−529620号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、以下のとおり特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1に「前記複数の固定ベーン又は前記複数の可変ベーンは、前記連通流路に設けられ、」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるかについて検討すると、上記補正は、「前記複数の固定ベーン又は前記複数の可変ベーン」について、それらが設けられる位置を「連通流路」に限定するものであるから、「前記複数の固定ベーン又は前記複数の可変ベーンは、前記連通流路に設けられ、」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると、明細書の段落【0065】には「連通流路35には、複数の固定ベーン52が設けられている。」と記載され、段落【0087】には「複数の可変ベーン73及び複数のスペーサ74は、連通流路35の周方向において互いに間隔を置いてそれぞれ配置されている。」と記載されていることから、「前記複数の固定ベーン又は前記複数の可変ベーンは、前記連通流路に設けられ、」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、以下の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1−9に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和5年4月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。(請求項2−9に係る発明については、記載を省略する。)

「【請求項1】
インペラシャフトを回転可能に支持する筒状のベアリングハウジングと、
前記ベアリングハウジングにおける前記インペラシャフトの回転軸線方向の一端に連結されるとともに、内燃機関から排出された排ガスが内部を流れるタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に形成されるタービン室と、
前記タービン室に収容されるとともに前記タービン室に導入された排ガスによって前記インペラシャフトと一体的に回転するタービンインペラと、
前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンハウジングに流入した排ガスを前記タービン室に導く流路の一部であり、前記タービン室の周囲を取り囲むタービンスクロール流路と、
前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンスクロール流路と前記タービン室とを連通する環状の連通流路と、
前記タービンスクロール流路及び前記連通流路における前記ベアリングハウジング側の壁面を形成する板金製かつ環状のベアリングハウジング側流路形成プレートと、を備えたターボチャージャであって、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートは、1枚の板材で前記タービンスクロール流路及び前記連通流路における前記ベアリングハウジング側の壁面を構成し、
前記タービンハウジングには、複数の固定ベーン又は複数の可変ベーンを有した中実のタービンシュラウド部が設けられており、
前記複数の固定ベーン又は前記複数の可変ベーンは、前記連通流路に設けられ、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間していることを特徴とするターボチャージャ。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0038] 以下、ターボチャージャを具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。 図1に示すように、ターボチャージャ10のケース11は、ベアリングハウジング20、タービンハウジング30、及びコンプレッサハウジング40を有している。ベアリングハウジング20、タービンハウジング30、及びコンプレッサハウジング40は、鋳造製である。タービンハウジング30の内部には、内燃機関Eから排出された排ガスが流れる。コンプレッサハウジング40の内部には、内燃機関Eへ導かれる吸気が流れる。
[0039] ベアリングハウジング20は、インペラシャフト12を回転可能に支持する。インペラシャフト12の回転軸線方向の第1端には、タービンインペラ13が連結されている。インペラシャフト12の回転軸線方向の第2端には、コンプレッサインペラ14が連結されている。タービンハウジング30は、インペラシャフト12の回転軸線方向におけるベアリングハウジング20の第1端に連結されている。コンプレッサハウジング40は、インペラシャフト12の回転軸線方向におけるベアリングハウジング20の第2端に連結されている。」

「[0060] タービンハウジング30内には、タービン室33、連通流路34、及びタービンスクロール流路35が形成されている。タービンインペラ13は、タービン室33に収容されている。タービンスクロール流路35は、タービン室33の周りを渦巻状に周回している。よって、タービンスクロール流路35は、タービン室33の周囲を取り囲む。タービンスクロール流路35は、タービンハウジング30に流入した排ガスをタービン室33に導く流路の一部である。連通流路34は、タービン室33の周囲で環状に延びるとともに、タービンスクロール流路35とタービン室33とを相互に連通させる。
[0061] ターボチャージャ10は、複数のノズルベーン50、第1プレート51、及び第2プレート52を備えている。複数のノズルベーン50は、連通流路34の流路面積を可変とし、タービン室33に導かれる排ガスの流速を調整する可動ベーンである。複数のノズルベーン50は、連通流路34の周方向において互いに間隔を置いて配置されている。
[0062] 第1プレート51は、ベアリングハウジング20の突出部21fの周囲で環状に延びている。第1プレート51は、複数のノズルベーン50を回動可能に支持するとともに連通流路34におけるベアリングハウジング20に近い方の壁面を形成する環状の金属製の支持プレートである。第1プレート51は、第1プレート51の内周面からインペラシャフト12の径方向内側に突出する環状の凸部51fを有している。凸部51fは、突出部21fに対してインペラシャフト12の回転軸線方向において対向している。」

「[0080] ターボチャージャ10は、板金製の環状プレート70を備える。環状プレート70は、タービンスクロール流路35におけるベアリングハウジング20に近い方の壁面を形成する。環状プレート70は、タービンインペラ13よりも前記インペラシャフト12の径方向外側に配置される。また、環状プレート70は、第1プレート51の周りに配置されている。環状プレート70は、インペラシャフト12の回転軸線方向において、スクロール流路形成プレート60、特に連繋壁63の大部分と、対向するように配置されている。環状プレート70の厚みは、第1プレート51の厚み及び第2プレート52の厚みよりも薄い。
[0081] 環状プレート70及び支持プレート51と、ベアリングハウジング20の端面24a及び一端面21aとの間には、断熱層を形成してもよい。断熱層は、例えば空気層である。詳細には、環状プレート70の内周部及び支持プレート51と、ベアリングハウジング20の端面24a及び一端面21aとの間に、断熱のための空間を設けてもよい。この断熱層は、タービンスクロール流路35及び連通流路34を流れる排ガスからベアリングハウジング20への熱の伝達を抑制する。
[0082] スクロール流路形成プレート60のフランジ部67は、環状プレート70に沿って延びる。フランジ部67と環状プレート70との間には隙間を設けてもよい。フランジ部67と環状プレート70との間の隙間は、スクロール流路形成プレート60の熱伸びを許容する。
[0083] タービンスクロール流路35は、スクロール流路形成プレート60と、環状プレート70と、第2プレート52の環状部52bの外周縁と、第1プレート51の外周部とによって形成される。第1プレート51の外周部は、第2プレート52の環状部52bの外周縁よりもインペラシャフト12の径方向外側に突出している。
[0084] 環状プレート70は、周壁31bの端面31dと第2延在部25の端面25aとの間に延びる外周縁71を有する。そして、環状プレート70の外周縁71は、締結具である螺子17の締結力によって、周壁31bの端面31dと第2延在部25の端面25aとで挟み込まれている。つまり、環状プレート70の外周縁71は、タービンハウジング30とベアリングハウジング20とで挟み込まれている。
[0085] 環状プレート70は、インペラシャフト12の回転軸線方向において環状プレート70の内周部72からスクロール流路形成プレート60とは反対側、すなわちベアリングハウジング20側に向けて突出する筒状のリブ73を有している。リブ73は、第1プレート51の外周縁に沿って延びている。
[0086] リブ73の内周面と第1プレート51の外周縁との間には僅かな隙間を設けてもよい。この場合、リブ73は第1プレート51に接触しないので、環状プレート70の熱伸びが許容される。
[0087] このように、環状プレート70の外周縁71をベアリングハウジング20とタービンハウジング30との間に挟まれる固定端とし、環状プレート70の残りの部分である内周部72及びリブ73を他の部材に固定されないようにしてもよい。このようにすれば、環状プレート70の熱伸びが許容される。」

「[0127] 図4に示すように、複数の固定ベーンが第2プレート52に固定される場合、タービンスクロール流路35を形成する環状プレート70の部分である流路形成部を、金属プレート52(第2プレート52)に対向する位置まで延ばしてもよい。この場合、環状プレート70は連通流路34を形成する。金属製の環状プレート70が連通流路34を形成すれば、連通流路34を流れる排ガスからベアリングハウジング20への熱の伝達を抑制できる。さらに、環状プレート70の流路形成部を支えるために、環状プレート70の内周縁と板ばね55とを係合させてもよい。
[0128] ○ 図4及び図5に示すように、環状プレート70の外周縁71が、フランジ31fの端面31cとベアリングハウジング20の第3延在部26の端面26aとの間にまで延びて、環状プレート70がベアリングハウジング20とタービンハウジング30との境界をシールしてもよい。この場合、環状プレート70の外周縁71は、ベアリングハウジング20とタービンハウジング30との境界をシールするようにベアリングハウジング20とタービンハウジング30とによって挟み込まれるガスケット部として機能する。これにより、シール部材18が不要となり、部品点数を削減することができる。図1及び図2の構成において、環状プレート70の外周縁71を延張して、図4及び図5に示すように、環状プレート70がベアリングハウジング20とタービンハウジング30との境界をシールしてもよい。
[0129] ○ 図4に示すように、ベアリングハウジング20の第3延在部26に位置決め突部26bを設けるとともに、環状プレート70及びフランジ31fに突部26bが挿通される位置決め貫通孔71a,31gをそれぞれ設けてもよい。これにより、ベアリングハウジング20、環状プレート70及びタービンハウジング30の組み付けが容易になる。
[0130] ○ 図1及び図2の構成において、図4に示すように、スクロール弾性部材66を設けず、外周壁61をタービンハウジング30に固定しなくてもよい。例えば、スクロール流路形成プレート60は、内周縁64のみをタービンハウジング30に固定し、その他の部分(流路形成部)はタービンハウジング30に固定または支持されていなくてもよい。この場合、外周壁61、特に流路形成部の外周側縁部とタービンハウジング30の内周面とは離間した状態になり、外周壁61の先端(連繋壁63とは反対側の端部)は、他の部材に固定されない自由端となる。すなわち、スクロール流路形成プレート60は、内周縁64がタービンハウジング30と金属プレート52との間に固定され、流路形成部の外周側縁部がタービンハウジング30に対して相対移動可能となるように、タービンハウジング30内に配置される。そのため、スクロール流路形成プレート60が排ガスの熱によって暖められたときに生じるスクロール流路形成プレートの熱伸びが許容される。」

オ 図1




カ 図4




(2)したがって、上記引用文献1(特に、上記(1)エ、カを参照。)には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「インペラシャフト12を回転可能に支持する筒状のベアリングハウジング20と、
前記ベアリングハウジング20における前記インペラシャフト12の回転軸線方向の一端に連結されるとともに、内燃機関Eから排出された排ガスが内部を流れるタービンハウジング30と、
前記タービンハウジング30内に形成されるタービン室33と、
前記タービン室33に収容されるとともに前記タービン室33に導入された排ガスによって前記インペラシャフト12と一体的に回転するタービンインペラ13と、
前記タービンハウジング30内に形成されるとともに前記タービンハウジング30に流入した排ガスを前記タービン室33に導く流路の一部であり、前記タービン室33の周囲を取り囲むタービンスクロール流路35と、
前記タービンハウジング30内に形成されるとともに前記タービンスクロール流路35と前記タービン室33とを連通する環状の連通流路34と、
前記タービンスクロール流路35及び前記連通流路34における前記ベアリングハウジング20側の壁面を形成する板金製かつ環状の環状プレート70と、を備えたターボチャージャ10であって、
前記環状プレート70は、1枚の板材で前記タービンスクロール流路35及び前記連通流路34における前記ベアリングハウジング20側の壁面を構成し、
前記タービンハウジング30には、複数の固定ベーン50を有した中実の第2プレート52が設けられており、
前記複数の固定ベーン50は、前記連通流路34に設けられているターボチャージャ10。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0008】−【0013】及び【図1】の記載からみて、当該引用文献2には、「ノズル2の位置におけるハウジング5側の壁面をノズル取付フランジ8で形成し、タービン翼4の位置におけるハウジング5側の壁面をバックプレート1で形成したバックプレート構造100を有するガスタービンにおいて、バックプレート1の内周端部1bがハウジング5に対してボルト7で固着され、バックプレート1の外周端部1aが環状溝10に内挿され、外周端部1aは、タービン3の回転軸9の軸方向には移動不能であるが、環状溝10におけるバックプレート1よりも半径方向外方に隙間11が形成されていることにより、ハウジング5及びノズル取付フランジ8に対して摺動することができること」(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「インペラシャフト12」、「ベアリングハウジング20」、「内燃機関E」、「タービンハウジング30」、「タービン室33」、「タービンインペラ13」、「タービンスクロール流路35」、「連通流路34」、「環状プレート70」、「ターボチャージャ10」、「複数の固定ベーン50」及び「複数の固定ベーン50を有した中実の第2プレート52」は、それぞれ、本願発明1における「インペラシャフト」、「ベアリングハウジング」、「内燃機関」、「タービンハウジング」、「タービン室」、「タービンインペラ」、「タービンスクロール流路」、「連通流路」、「ベアリングハウジング側流路形成プレート」、「ターボチャージャ」、「複数の固定ベーン又は複数の可変ベーン」及び「複数の固定ベーン又は複数の可変ベーンを有した中実のタービンシュラウド部」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「インペラシャフトを回転可能に支持する筒状のベアリングハウジングと、
前記ベアリングハウジングにおける前記インペラシャフトの回転軸線方向の一端に連結されるとともに、内燃機関から排出された排ガスが内部を流れるタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に形成されるタービン室と、
前記タービン室に収容されるとともに前記タービン室に導入された排ガスによって前記インペラシャフトと一体的に回転するタービンインペラと、
前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンハウジングに流入した排ガスを前記タービン室に導く流路の一部であり、前記タービン室の周囲を取り囲むタービンスクロール流路と、
前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンスクロール流路と前記タービン室とを連通する環状の連通流路と、
前記タービンスクロール流路及び前記連通流路における前記ベアリングハウジング側の壁面を形成する板金製かつ環状のベアリングハウジング側流路形成プレートと、を備えたターボチャージャであって、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートは、1枚の板材で前記タービンスクロール流路及び前記連通流路における前記ベアリングハウジング側の壁面を構成し、
前記タービンハウジングには、複数の固定ベーン又は複数の可変ベーンを有した中実のタービンシュラウド部が設けられており、
前記複数の固定ベーン又は前記複数の可変ベーンは、前記連通流路に設けられているターボチャージャ。」

(相違点)
本願発明1は「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間している」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明に引用文献2に記載された事項を適用する場合について
(ア)上記「第5」2.で述べたとおり、引用文献2に記載されたバックプレート構造100は、ノズル取付フランジ8とバックプレート1の2つの部材からなり、引用発明の環状プレート70のように1枚の板材で構成されたものではない。よって、引用発明の環状プレート70は引用文献2に記載されたバックプレート構造100に対応しており、バックプレート1に対応しているとはいえない。
そうすると、引用発明の環状プレート70に引用文献2に記載されたバックプレート構造100の中のバックプレート1の構成のみを適用する動機付けはないというべきである。
(イ)相違点に係る本願発明1の「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であ」「り、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間している」という構成は、上記「第5」2.の引用文献2に記載された事項における「バックプレート1」の構成に着目すると、「バックプレート1の内周端部1bがハウジング5に対してボルト7で固着され、」「環状溝10におけるバックプレート1よりも半径方向外方に隙間11が形成されていることにより、ハウジング5及びノズル取付フランジ8に対して摺動することができる」という構成が対応しており、上記構成は引用文献2に記載されているといえる。
しかしながら、引用文献2に記載された事項は、「バックプレート1の外周端部1aが環状溝10に内挿され、外周端部1aは、タービン3の回転軸9の軸方向には移動不能である」ものであることから、相違点に係る本願発明1の「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であ」るという構成を備えているとはいえない。
そうすると、仮に、引用発明に引用文献2に記載された「バックプレート1」の構成を適用することができたとしても、上記相違点における「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であ」るという構成には至らない。
(ウ)よって、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用して当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

イ 引用発明に引用文献1に記載された事項を適用する場合について
(ア)上記「第5」1.(1)エで挙げたとおり、引用文献1には「スクロール流路形成プレート60は、内周縁64のみをタービンハウジング30に固定し、その他の部分(流路形成部)はタービンハウジング30に固定または支持されていなくてもよい。この場合、外周壁61、特に流路形成部の外周側縁部とタービンハウジング30の内周面とは離間した状態になり、外周壁61の先端(連繋壁63とは反対側の端部)は、他の部材に固定されない自由端となる。すなわち、スクロール流路形成プレート60は、内周縁64がタービンハウジング30と金属プレート52との間に固定され、流路形成部の外周側縁部がタービンハウジング30に対して相対移動可能となるように、タービンハウジング30内に配置される。そのため、スクロール流路形成プレート60が排ガスの熱によって暖められたときに生じるスクロール流路形成プレートの熱伸びが許容される。」と記載されている。
そこで、引用発明の環状プレート70に引用文献1に記載された上記スクロール流路形成プレート60の構成を適用する動機付けがあるかについて検討する。
(イ)上記「第5」1.(1)エで挙げた「図4及び図5に示すように、環状プレート70の外周縁71が、フランジ31fの端面31cとベアリングハウジング20の第3延在部26の端面26aとの間にまで延びて、環状プレート70がベアリングハウジング20とタービンハウジング30との境界をシールしてもよい。」や「図4に示すように、ベアリングハウジング20の第3延在部26に位置決め突部26bを設けるとともに、環状プレート70及びフランジ31fに突部26bが挿通される位置決め貫通孔71a,31gをそれぞれ設けてもよい。」のとおり、引用発明における「環状プレート70」は、その外周縁71を固定することを前提としており、外周縁71を自由端とし内周縁を固定することは記載も示唆もされていない。
また、引用発明において、「環状プレート70」周辺の構造と「スクロール流路形成プレート60」周辺の構造とは全く異なるものであり、「スクロール流路形成プレート60」が内周縁で固定し外周縁を自由端とすることができたとしても、「環状プレート70」も同様に内周縁で固定し外周縁を自由端とすることが直ちにできるとはいえない。なお、上記「第5」1.(1)エのとおり、引用文献1には「環状プレート70の流路形成部を支えるために、環状プレート70の内周縁と板ばね55とを係合させてもよい。」と記載されているが、「係合」と「固定」とは異なるものであり、この記載があるからといって、環状プレート70の内周縁のみを固定し外周縁を自由端とすることが導き出せるものではない。
そうすると、引用発明の環状プレート70に引用文献1に記載された上記スクロール流路形成プレート60の構成を適用する動機付けがあるとはいえない。
(ウ)よって、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明に引用文献1に記載された事項を適用して当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

ウ 本願発明1の効果について
本願発明1は、「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間している」という構成を採用することにより、ベアリングハウジング側流路形成プレートにおける熱伸び量の多い外周側で、ベアリングハウジング側流路形成プレートの熱伸びを許容できるという、引用発明にはない格別の効果を奏するものである。

(3)小括
よって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1、2に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−5、9について
本願発明2−5、9も、本願発明1の上記「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間している」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6−8について
本願発明6−8も、本願発明1の上記「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間している」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1−9は「前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間している」という事項を有するものであり、上記第6で述べたとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1−3に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2023-12-26 
出願番号 P2019-056680
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 青木 良憲
吉村 俊厚
発明の名称 ターボチャージャ  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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