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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07D
管理番号 1405818
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-02-08 
確定日 2023-11-09 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第7116075号発明「有機半導体化合物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7116075号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−17〕について訂正することを認める。 特許第7116075号の請求項1〜17に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7116075号の請求項1〜17に係る特許についての出願は、2018年3月6日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2017年3月9日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、令和4年8月1日に特許権の設定登録がされ、同年8月9日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和5年2月8日に、その請求項1〜17に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 古川 慎二(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
そして、令和5年4月21日付けで当審合議体から取消理由通知が通知され、同年7月26日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年8月18日付けで当審合議体から特許法第120条の5第5項に基づく通知書が通知されたが、特許異議申立人からは、指定された期間内に意見書が提出されなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 令和5年7月26日提出の訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下の訂正事項1〜3のとおりである。

(1)訂正事項1
請求項1について、訂正前に「Ar1、Ar4、Ar5 5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環式基、」とあるのを、「Ar1が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】


【化5】

から選択され、
Ar4、Ar5 5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環式基、」に訂正する。
また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2〜17についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
ア 訂正事項2−1
請求項3について、訂正前に「式I中のAr1及び式IA中のAr11が、」とあるのを、「式IA中のAr11が、」に訂正する。

イ 訂正事項2−2
請求項3について、訂正前に「請求項1又は2に記載の化合物」とあるのを、「請求項2に記載の化合物」に訂正する。

また、上記ア及びイについて、請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項5〜17についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
ア 訂正事項3−1
請求項4について、訂正前に「式I中のAr1及び式IB中のAr12が、」とあるのを、「式IB中のAr12が、」に訂正する。

イ 訂正事項3−2
請求項4について、訂正前に「請求項1又は2に記載の化合物」とあるのを、「請求項2に記載の化合物」に訂正する。

また、上記ア及びイについて、請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5〜17についても同様に訂正する。

3 訂正事項1〜3についての訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前に「Ar1」が「5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環」であったのを、訂正後に、「Ar1」を該範囲に該当する(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像の選択肢に限定したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2〜17の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、請求項3及び請求項4に記載されていた(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像との選択肢の記載に基づき、訂正前の「Ar1」を限定したもので、登録時の特許明細書及び特許請求の範囲(以下「登録時の明細書等」という。)の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2〜17の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、登録時の明細書等の記載に基づき特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

また、請求項1の上記訂正に連動する請求項2〜17の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項1のまとめ
訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
訂正前の請求項3の「式I中のAr1及び式IA中のAr11が、」との記載の意味について

訂正前の請求項3は、請求項1及び2を引用しており、請求項1においては、式I中の意味として、「Ar1」が、「5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環」であったこと、請求項2においては、式IA中の意味として、「Ar11」が、「Ar1」であったことが示されており、請求項1には、「式IA」との記載はないし、請求項2には、「式I」との記載はない。
したがって、上記請求項3の「式I中のAr1及び式IA中のAr11が、」との訂正前の記載は、「式I中のAr1」との記載部分は、請求項3が請求項1を引用する場合のみの記載であり、「式IA中のAr11」との記載部分は、請求項3が請求項2を引用する場合のみの記載であると理解できる。
上記理解を前提として以下判断する。

事案に鑑み訂正事項2−2から判断する。

(2−1)訂正事項2−2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2−2は、訂正前に「請求項1又は2に記載の化合物」として、請求項1と請求項2を引用していたのを、訂正後に、「請求項2に記載の化合物」として、請求項2のみを引用するようにしたもので、発明の範囲が減縮されているのであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、請求項3の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項2−2に係る訂正は、訂正前に請求項3が請求項1及び2の記載を引用していたのを、請求項1を引用する記載について削除しただけであるから、登録時の明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項2−2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

また、請求項3の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、登録時の明細書等の記載に基づき特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2−2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

また、請求項3の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2−2)訂正事項2−1について
ア 訂正の目的について
訂正事項2−1は、訂正前に「式I中のAr1及び式IA中のAr11が、」として、請求項3が請求項1を引用する場合の記載と、請求項3が請求項2を引用する場合の記載があったところ、訂正後に、訂正事項2−2の訂正に伴って、請求項3が請求項1を引用しないものとなったため、請求項3が請求項1を引用する場合の記載である「式I中のAr1及び」との記載を削除して記載を整合させたもので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

また、請求項3の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項2−1に係る訂正は、訂正前に請求項3が請求項1を引用する場合の記載と請求項2を引用する場合の記載が存在していたのを、請求項1を引用しないものとなったのに伴って、請求項1を引用する場合の記載を削除して整合させただけであるから、登録時の明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項2−1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

また、請求項3の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮した訂正事項2−2の訂正に伴って、削除された記載との整合をとるために明瞭でない記載の釈明を目的として訂正をしたものであって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2−1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

また、請求項3の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2−3)訂正事項2のまとめ
訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
訂正前の請求項4の「式I中のAr1及び式IB中のAr12が、」との記載の意味について

訂正前の請求項4は、請求項1及び2を引用しており、請求項1においては、式I中の意味として、「Ar1」が、「5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環」であったこと、請求項2においては、式IB中の意味として、「Ar12」が、「Ar1」であったことが示されており、請求項1には、「式IB」との記載はないし、請求項2には、「式I」との記載はない。
したがって、上記請求項4の「式I中のAr1及び式IB中のAr12が、」との訂正前の記載は、「式I中のAr1」との記載部分は、請求項4が請求項1を引用する場合のみの記載であり、「式IB中のAr12」との記載部分は、請求項4が請求項2を引用する場合のみの記載であると理解できる。
上記理解を前提として以下判断する。

事案に鑑み訂正事項3−2から判断する。

(3−1)訂正事項3−2について
ア 訂正の目的について
訂正事項3−2は、訂正前に「請求項1又は2に記載の化合物」として、請求項1と請求項2を引用していたのを、訂正後に、「請求項2に記載の化合物」として、請求項2のみを引用するようにしたもので、発明の範囲が減縮されているのであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、請求項4の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項3−2に係る訂正は、訂正前に請求項4が請求項1及び2の記載を引用していたのを、請求項1を引用する記載について削除しただけであるから、登録時の明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項3−2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

また、請求項4の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、登録時の明細書等の記載に基づき特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3−2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

また、請求項4の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3−2)訂正事項3−1について
ア 訂正の目的について
訂正事項3−1は、訂正前に「式I中のAr1及び式IB中のAr12が、」として、請求項4が請求項1を引用する場合の記載と、請求項4が請求項2を引用する場合の記載があったところ、訂正後に、訂正事項3−2の訂正に伴って、請求項4が請求項1を引用しないものとなったため、請求項4が請求項1を引用する場合の記載である「式I中のAr1及び」との記載を削除して記載を整合させたもので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

また、請求項4の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項3−1に係る訂正は、訂正前に請求項4が請求項1を引用する場合の記載と請求項2を引用する場合の記載が存在していたのを、請求項1を引用しないものとなったのに伴って、請求項1を引用する場合の記載を削除して整合させただけであるから、登録時の明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項3−1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

また、請求項4の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮した訂正事項3−2の訂正に伴って、削除された記載との整合をとるために明瞭でない記載の釈明を目的として訂正をしたものであって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3−1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

また、請求項4の上記訂正に連動する請求項5〜17の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3−3)訂正事項3のまとめ
訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

4 本件訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項1〜17について訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1〜17に係る発明(以下、「本件特許発明1」〜「本件特許発明17」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(なお、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜17に係る発明を、「訂正前の本件特許発明1〜17」ということもある。)。

「【請求項1】
式I
【化1】

(式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
U11及びU12の一方がC=C二重結合であり、他方がCR1R2であり、
U21及びU22の一方がC=C二重結合であり、他方がCR3R4であり、
Ar1が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】


【化5】

から選択され、
Ar4、Ar5 5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環式基、
Ar2及びAr3 下式(1C)〜(35C)及びそれらの鏡像から選択される、
【化2】


X O、S、Se又はTe、
R、R’ 式Iについて定義されるR1又はLの意味のうちの1つ、
# C=C二重結合を介して、式Iの隣接する基に結合されるsp2炭素原子、
* C−C単結合を介して、式I中の隣接する基に結合されるsp2炭素原子、
Z、Z’ O、S、C(=O)、NR、=N−又は=CR−(ここで、Z及びZ’の少なくとも1つが、=N−及び=CR−と異なる)、
Arx、Ary 縮合5員又は6員芳香環(ここで、1つ以上のCH基が、−O−、−S−、Se、Te、=N−、−NR−又は−C(=O)−で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、R1又はLで任意選択的に置換される)、
Y CR1R2、SiR1R2、GeR1R2、NR、C(=O)又はS(=O)、
R1〜4 H、F、Cl、CN、1〜40個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル(ここで、O及び/又はS原子が、互いに直接結合されないように、1つ以上のCH2基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR0−、−SiR0R00−、−CF2−、−CR0=CR00−、−CY1=CY2−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、1つ以上のCH2又はCH3基が、カチオン性又はアニオン性基で任意選択的に置換される)、
又は1〜40個のSi原子を有する直鎖状、分枝鎖状若しくは環状シリル、
又はアリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ(ここで、上記の環式基のそれぞれが、5〜20個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基Lで置換される)、
L F、Cl、−NO2、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、R0、OR0、SR0、−C(=O)X0、−C(=O)R0、−C(=O)−OR0、−O−C(=O)−R0、−NH2、−NHR0、−NR0R00、−C(=O)NHR0、−C(=O)NR0R00、−SO3R0、−SO2R0、−OH、−NO2、−CF3、−SF5、又は1〜20個のSi原子を有する任意選択的に置換されるシリル、又は任意選択的に置換され、任意選択的に、1つ以上のヘテロ原子を含む、1〜30個のC原子を有するカルビル若しくはヒドロカルビル、好適には、F、−CN、R0、−OR0、−SR0、−C(=O)−R0、−C(=O)−OR0、−O−C(=O)−R0、−O−C(=O)−OR0、−C(=O)−NHR0、又は−C(=O)−NR0R00、
R0、R00 H又は任意選択的にフッ素化される1〜40個のC原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、
X0 ハロゲン、好適には、F又はCl、
a、b 0又は1〜10の整数
を有する)
の化合物。
【請求項2】
下式IA、IB
【化3】

から選択され、式IA、IB中、Ar1〜5、U11、U21、U22、a、bが、請求項1に示される意味を有し、Ar11及びAr12が、Ar1について示される意味のうちの1つを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式IA中のAr11が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】


から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
X O、S、Se又はTe、
R、R’ 請求項1において定義されるR1又はLの意味のうちの1つ、
# C=C二重結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp2炭素原子、及び
* C−C単結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp2炭素原子、
Z、Z’ O、S、C(=O)、NR、=N−又は=CR−(ここで、Z及びZ’の少なくとも1つが、=N−及び=CR−と異なる)を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式IB中のAr12が、下式及びそれらの鏡像:
【化5】

から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味を有し、
X、Z、Z’、R、#及び*が、請求項3に示される意味を有し、
Arx、Ary 縮合5員又は6員芳香環(ここで、1つ以上のCH基が、−O−、−S−、Se、Te、=N−、−NR−又は−C(=O)−で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、R1又はLで任意選択的に置換される)、
Y CR1R2、SiR1R2、GeR1R2、NR、C(=O)又はS(=O)、
ここで、L、R1及びR2が、請求項1において定義されるとおりである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Ar4及びAr5が、下式及びそれらの鏡像:
【化6】



から選択され、式中、Arx、Ary、R、R’、X、Y、Z、Z’、#及び*が、請求項3及び4において定義されるとおりであり、Y’が、N又はCRを示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
下式
【化7】




から選択され、式中、R1〜5、R及びR’が、請求項1及び4において示される意味を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R1〜4が、任意選択的にフッ素化される1〜40個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシ、又は単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、請求項1において定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換される、4〜30個の環原子を有するアリール若しくはヘテロアリールから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物を含み、半導体、正孔若しくは電子輸送、正孔若しくは電子遮断、導電、光伝導、光活性又は発光特性のうちの1つ以上を有する1つ以上の化合物、及び/又は結合剤をさらに含む組成物。
【請求項9】
1つ以上のn型半導体(そのうちの少なくとも1つが、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物である)を含み、1つ以上のp型半導体をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
共役ポリマーから選択される1つ以上のp型半導体を含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物から形成されるバルクヘテロ接合(BHJ)。
【請求項12】
電子若しくは光電子デバイスにおける、又はこのようなデバイスの構成要素における、又はこのようなデバイスを含むアセンブリにおける、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物を含み、有機溶媒から選択される1つ以上の溶媒をさらに含む配合物。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む、電子若しくは光電子デバイス、又はその構成要素、又はそれを含むアセンブリ。
【請求項15】
有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機発光電気化学セル(OLEC)、有機光起電デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、ペロブスカイト系太陽電池(PSC)、有機光電気化学セル(OPEC)、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体、光検出器、熱電デバイス及びLCウインドウから選択される、請求項14に記載の電子又は光電子デバイス。
【請求項16】
電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止フィルム、ポリマー電解質膜(PEM)、伝導性基板及び伝導性パターンから選択される、請求項14に記載の構成要素。
【請求項17】
集積回路(IC)、無線自動識別(RFID)タグ、セキュリティマーキング、セキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサーデバイス、バイオセンサー及びバイオチップから選択される、請求項14に記載のアセンブリ。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、下記の甲第1〜9号証を提出し、以下の異議申立理由を主張している。

(1)新規性
異議申立理由1:本件の請求項1、2、5及び7に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1、2、5及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第1項第2号の規定により取消されるべきものである。

(2)進歩性
異議申立理由2:本件の請求項1〜17に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第9号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第1項第2号の規定により取消されるべきものである。

(3)サポート要件
異議申立理由3:請求項1〜17に係る発明は、本願発明の構成であるからこそ奏する作用効果の評価検証が裏付けられていないから、発明の詳細な説明において、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えて特許を請求するものである。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1項第4号の規定により取消されるべきものである。



甲第1号証:特開2012−193145号号公報
甲第2号証:Paula Mayorga Burrezo ほか7名、Journal of the American Chemical Society、2015年、137、p.3834〜3843
甲第3号証:大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子科学研究所、“新コンセプト有機太陽電池によって高効率化への道筋を拓く ―水平交互多層接合によってバルクヘテロ接合を超える―(平本グループら)”、[online]、2019年2月19日、[令和5年1月22日印刷日]、インターネット
甲第4号証:ウィキペディア、“太陽電池”、[online]、[令和5年1月22日印刷日]、インターネットhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E9%9B%BB%E6%B1%A0
甲第5号証:特表2010−529219号公報
甲第6号証:特開2012−248854号公報
甲第7号証:特表2014−523464号公報
甲第8号証:特開2015−220179号公報
甲第9号証:科学技術振興機構(JST)、首都大学東京、“高機能な導電性ポリマーの精密合成法を開発”、[online]、平成29年3月28日、[令和5年1月22日印刷日]、インターネット

2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2、5、8〜17に係る特許に対して、当審合議体が令和5年4月21日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

理由1:(新規性)請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2:(進歩性)請求項1、2、5、8〜17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5、8〜17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



引用文献1:特開2012−193145号号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証)
引用文献2:Paula Mayorga Burrezo ほか7名、Journal of the American Chemical Society、2015年、137、p.3834〜3843(特許異議申立人の提出した甲第2号証)
引用文献3:大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子科学研究所、“新コンセプト有機太陽電池によって高効率化への道筋を拓く ―水平交互多層接合によってバルクヘテロ接合を超える―(平本グループら)”、[online]、2019年2月19日、[令和5年1月22日印刷日]、インターネット(特許異議申立人の提出した甲第3号証)
引用文献4:ウィキペディア、“太陽電池”、[online]、[令和5年1月22日印刷日]、インターネット (特許異議申立人の提出した甲第4号証)
引用文献5:特表2010−529219号公報(特許異議申立人の提出した甲第5号証)
引用文献6:特開2012−248854号公報(特許異議申立人の提出した甲第6号証)
引用文献7:特表2014−523464号公報(特許異議申立人の提出した甲第7号証)
引用文献8:特開2015−220179号公報(特許異議申立人の提出した甲第8号証)
引用文献9:科学技術振興機構(JST)、首都大学東京、“高機能な導電性ポリマーの精密合成法を開発”、[online]、平成29年3月28日、[令和5年1月22日印刷日]、インターネット(特許異議申立人の提出した甲第9号証)

第5 当審合議体の判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した理由及び特許異議申立人の申し立てた理由によって、本件特許の請求項1〜17に係る特許は取り消されるべきではないと判断する。
その理由は次のとおりである。

I 取消理由について

1 取消理由1の新規性欠如(請求項1、2、5について)及び取消理由2の進歩性欠如(請求項1、2、5、8〜17について)に関して
(1)引用文献の記載
ア 引用文献1の記載
(1a)「【請求項1】
下記一般式(I)で表されるキノイド型炭素架橋フェニレンビニレン化合物:
【化1】

式中、nは1〜5の整数を表わし;R1〜R4はそれぞれ同一又は異なる、置換されていてもよいアリール基を表わし;X1及びX2はそれぞれ、C(Z1)(Z2)、酸素原子又は硫黄原子を表わし、Z1及びZ2はそれぞれ同一又は異なる、電子吸引性基又は電子供与性基を表す。
【請求項2】
nが1又は2である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1〜R4がそれぞれ、同一又は異なる、無置換のアリール基、又はアルキル基、アルコキシ基及びアリール基の少なくとも1つで置換されたアリール基を表わす請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
X1及びX2がそれぞれ、C(CN)2、酸素原子又は硫黄原子を表わす請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
2つのキノン骨格の間に、互いに同一又は異なる2つのアリール基で置換された4級炭素原子による架橋構造を導入することによる、キノイド型フェニレンビニレン化合物の安定化方法。
【請求項6】
下記式(II)のインデン誘導体を、請求項1中の式(I)で表されるキノイド型炭素架橋フェニレンビニレン化合物に変換することを含む請求項5に記載の方法。
【化2】

式中、nは1〜5の整数を表わし;R1〜R4はそれぞれ同一又は異なる、置換されていてもよいアリール基を表わす。」

(1b)「【0001】
本発明は、種々の用途、特に近赤外吸収材料、発光材料、及び電気化学材料等に有用な新規なキノイド型炭素架橋フェニレンビニレン化合物に関する。また、本発明は、キノイド型フェニレンビニレン化合物を安定化する方法にも関する。」

(1c)「【0029】
3.キノイド型炭素架橋フェニレンビニレン化合物の用途
本発明のキノイド型炭素架橋フェニレンビニレン化合物は、光機能材料等の種々の機能材料として利用することができる。
例えば、本発明の化合物の中には、近赤外領域に強い吸収を示すものがあり、これらの化合物は、近赤外線吸収材料として有用である。特に、有機系太陽電池では、近赤外領域の光吸収特性を示す材料に対する要求が強い。本発明の本発明の化合物は、有機薄膜型又は色素増感型の有機系太陽電池の材料として利用することができる。さらには,カメラやビデオカメラ等の光学機器やプラズマディイスプレーの光学フィルター等として利用することができる。
また、本発明の化合物の中には、溶液状態で又は固体状態で近赤外領域の発光特性を示すものがあり、発光材料として有用である。例えば、有機EL用等の発光材料及び電荷輸送材料、LEDプリンター等の記録用光源発光素子,光通信用発光材料等として利用することができる。
また、本発明の化合物の中には、酸化還元に対して安定な化合物があり、電気化学材料として有用である。例えば、センサーデバイス,有機メモリー,スィッチング素子等として利用することができる。
また、本発明の化合物の中には、シングレット状態とトリプレット状態のビラジカル状態に由来するESRスペクトル特性を示すものがあり、この特性を利用した用途に用いることもできる。」

(1d)「【0038】
[実施例2]
以下の合成ルートにより、化合物XIを合成した。なお、下記スキーム中のPhは無置換のフェニル基を意味し、Arは、4−オクチルフェニル基を意味する。なお、化合物VIIIは、特開2011−32197号公報に記載の方法に従って合成したものを用いた。
【0039】
【化10】

【0040】
化合物IXの合成:
化合物VIII(0.282g,0.203mmol)、及びCuBr2/Al2O3(0.82g,1.22mmol)のCCl4(14mL)混合液を、85℃で12時間加熱した。室温まで冷却し、NaHSO3の水溶液を加えて急冷し、ジクロロメタンを用いて短経路(short path)シリカゲルカラムに通した。溶媒を蒸発させた後、残渣をろ過し、メタノール及びn−へ起算で洗浄し、黄色固体の化合物IX(0.281g、収率90%)を得た。
Mp.: 262-264 (C;
1H NMR (500 MHz, CDCl3): ( 0.88 (t, 3J = 6.3 Hz, 12H), 1.27-1.30 (m, 40H), 1.50-1.55 (m, 8H), 2.49 (t, 3J = 8.0 Hz, 8H), 6.95 (d, 3J = 8.0 Hz, 8H), 6.99 (d, 3J = 8.0 Hz, 2H), 7.06 (d, 3J = 8.6 Hz, 8H), 7.15-7.23 (m, 22H), 7.25 (s, 2H), 7.50 (d, 3J = 1.8 Hz, 2H);
13C NMR (125 MHz, CDCl3): ( 14.2, 22.8, 29.3, 29.6, 29.7, 31.4, 32.0, 35.7, 62.6, 62.9, 118.2, 119.5, 121.6, 126.9, 128.2, 128.4, 128.5, 128.6, 130.2, 136.5, 137.8, 139.3, 141.8, 143.1, 153.5, 156.4, 156.5, 159.3;
TOF MS (APCI+): 1542.9 [M]+;
Anal. Calcd for C106H112Br2: C, 82.36; H, 7.30; Found: C, 82.09; H, 7.44.
【0041】
化合物Xの合成:
化合物IX(0.281g,0.182mmol)のエチルエーテル(6mL)溶液に、n-ブチルLi/n−ヘキサン(0.26mL,0.398mmol,1.53M)を温度0℃で滴下した。0℃で1時間攪拌した後、ジヨードエタン(0.123g,0.436mmol)を添加して、0℃で30分間攪拌した。NaHSO3の水溶液を加えて急冷し、ジクロロメタンを用いて短経路(short path)シリカゲルカラムに通した。溶媒を蒸発させた後、残渣をろ過し、メタノールとn−ヘキサンで洗浄し、黄色固体の化合物X(0.288g、収率97%)を得た。
Mp.: 250-252 (C;
1H NMR (500 MHz, CDCl3): ( 0.88 (t, 3J = 6.9 Hz, 12H), 1.28-1.31 (m, 40H), 1.50-1.54 (m, 8H), 2.50 (t, 3J = 7.4 Hz, 8H), 6.88 (d, 3J = 8.0 Hz, 2H), 6.95 (d, 3J = 8.6 Hz, 8H), 7.05 (d, 3J = 8.0 Hz, 8H), 7.15-7.20 (m, 20H), 7.24 (s, 2H), 7.42 (dd, 3J = 8.0 Hz, 4J = 1.7 Hz, 2H), 7.69 (d, 3J = 1.2 Hz, 2H);
13C NMR (125 MHz, CDCl3): ( 14.2, 22.8, 29.3, 29.6, 29.7, 31.4, 32.0, 35.7, 62.6, 62.9, 90.8, 118.2, 122.1, 126.9, 128.2, 128.4, 128.5, 128.6, 134.1, 136.2, 136.4, 138.4, 139.2, 141.8, 143.1, 153.6, 156.4, 156.5, 159.4;
TOF MS (APCI+): 1638.9 [M]+;
Anal. Calcd for C106H112I2: C, 77.64; H, 6.88; Found: C, 77.64; H, 7.01.
【0042】
化合物XIの合成:
水素化ナトリウム(油中63%濃度,19mg,0.500mmol)を、マロノニトリル(16mg,0.242mmol)の乾燥THF(12mL)混合液に添加し、この混合液を室温で10分間攪拌した。この混合液に、化合物X(80mg,0.049mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(10mg,0.011mmol)及びPPh3(11mg,0.042mmol)をゆっくりと添加した。この混合物を温度70℃に8時間加熱した後、氷浴で冷却しつつ、希釈塩酸(2M,10mL)を添加した。CH2Cl2で抽出し、DDQ(11mg,0.048mmol)を添加した。得られた混合物を、CH2Cl2を用いてシリカゲルに通した。粗生成物を、THF/MeOHで再結晶させ、緑色固体の化合物XI(44mg、収率60%)
Mp.: 210-212 (C (dec.);
1H NMR (500 MHz, THF-d8): ( 0.85 (t, 3J = 6.9 Hz, 12H), 1.27-1.30 (m, 40H), 1.52 (m, 8H), 2.46 (m, 8H), 6.96 (m, 8H), 7.16-7.21 (m, 28H), 7.38-7.52 (m, 6H), 7.91 (brs, 2H);
13C NMR (125 MHz, THF-d8): ( 13.5, 22.6, 29.3, 29.5, 29.6, 31.5, 31.9, 35.5, 54.3, 63.1, 128.4;
TOF MS (APCI+): 1513.0 [M]+;
Anal. Calcd for C112H112N4: C, 88.84; H, 7.46; N, 3.70; Found: C, 88.66; H, 7.46; N, 3.57.」

イ 引用文献2の記載
訳文にて示す。
(2a)「フェニレンビニレンオリゴマー(OPV)とポリマー(PPV)は、有機発光ダイオード(OLED)、バルクへテロ太陽電池1,2及び分子ワイヤ3の初期段階での発見以来、有機エレクトロニクスで広く使用されてきた。そしてフェニレン基とビニレン基の間のC−C結合の柔軟性は、非効率的なフォトニック性能と化学的不安定性の原因として認識されている。1−4ねじれ運動は、基底状態でのこれらの共役系の電子状態、特に荷電種(即ち、ポーラロンラジカルカチオン、バイポーラロンジカチオン、ポーラロンペアジカチオン及び高い酸化状態)に関する詳細な研究をも妨げている。これらは、有機導電材料における電子−電子相関、スピン−スピン相関、電子−振動結合などの重要な効果についての知見を得るのに必要とされている。
最近、スキーム1(COPVnと表示)に示す一連の炭素架橋オリゴ(パラ−フェニレンビニレン)の一般的な合成法を開発した。これらの分子は、COPV1の4つからCOPV6,5,6の19までの連続した6員及び5員の炭素環の融合を特徴とするOPVオリゴマー群、及びコンフォメーション(電子)破壊のない非局在化波動関数を可能にする完全な平面π電子骨格を表す。7また、ビシクロ[3.3.0]−オクテン骨格内の2つの5員環により共有されるビニレン基の存在によって引き起こされる環歪みにも特徴がある。歪みは、基底状態を活性化し、荷電状態と励起状態の形成を促進する(スキーム1参照)。π系内の平面性と歪みの相乗効果は、いくつかの有用で珍しい光物理的及び電子的特性をもたらした。例えば、強力な光吸収、単一の量子収量を伴うフォトルミネッセンス、及び分子ワイヤ8として機能する場合のドナーからアクセプターへの高い光電子移動率など、ラジカル カチオンやジカチオンなどの荷電種の高い安定性である。π系に直交する4−オクチルフェニル/フェニル基は、溶液中及び固体状態で分子を互いに遠ざけるため、上記特性の一部にも関与する。帯電したOPV/PPVシステムが安定した形で利用できることはめったにないため、平坦なCOPV分子の荷電状態のラマン研究は、ポーラロニック形式及びバイポーラロニック形式等のπ共役系の電子構造に関する基本的な情報を提供する。」(3834頁序論)

(2b)スキーム1に上から下にCOPV化合物COPV1〜COPV6の化学構造として、化学構造中Ar=4−オクチルフェニル、Ph=フェニルであるものが示されている。(3835頁左欄スキーム1)

(2c)スキーム2にジカチオン種のモデルとしての電子受容基(Q(COPV1)及びQ(COPV2))を有するキノイドCOPV誘導体の化学構造、更に部分的に架橋されていないCOPV3(B−COPV3)及び電子供与性ジフェニルアミノ基を有する対称的に置換されたCOPV(DA(COPV2))の化学構造として、化学構造中Ar=4−オクチルフェニル、Ph=フェニルであるものが示されている。(3835頁左欄スキーム2)

ウ 引用文献3の記載
(3a)「研究の背景
有機太陽電池のバルクヘテロ接合(ブレンド接合)(図1(a))は、1991年に研究代表者が発明し・・・、有機太陽電池の世界標準になっています。これは、電子受容性(アクセプター性)と電子供与性(ドナー性)の有機半導体分子を混ぜ合わせたブレンド膜で、植物の光合成と同じく、アクセプター分子とドナー分子の間に起こる電子移動を利用して、光電流を発生できます。
・・・
(図省略)
図1(a)バルクへテロ接合有機太陽電池。(b)縦型超格子理想構造。」(研究の背景の欄)

エ 引用文献4の記載
(4a)「太陽電池
・・・
原理
・・・
pn接合型の場合
現在一般的な太陽電池は、p型とn型の半導体の接合した構造を持つpn接合型ダイオード(フォトダイオード)である。シリコン系、化合物系の太陽電池がこれに該当する。電子に光のエネルギーを吸収させ(光励起)、電力として取り出す。これは、発光ダイオードと逆の過程である。」(「太陽電池」の項目の「原理」の欄)

オ 引用文献5の記載
(5a)「【0014】
別の態様は、少なくとも1つのp型半導体と、半導体の吸収領域の外側の紫外領域および赤外領域において吸収する少なくとも1つの添加剤とのブレンドを含む組成物である。例えば、半導体は共役ポリマーであり得るものであり、添加剤はポルフィリン大環状分子であり得る。」

(5b)「【0091】
別の態様では、少なくとも1つのp型半導体と、半導体の吸収領域の外側の紫外領域および赤外領域において吸収する少なくとも1つの添加剤とのブレンドを含む組成物を提供する。p型半導体は当技術分野で公知であり、有機でも無機でもよい。それらはポリマーであり得る。一態様では、上記のように、半導体は共役ポリマーであり、添加剤はポルフィリン大環状分子である。」

カ 引用文献6の記載
(6a)「【0019】
第1の本発明の有機太陽電池活性層用インクは、有機溶媒を含有する。
上記有機溶媒は特に限定されないが、クロロベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、エタノール、キシレン等が好ましい。」

(6b)「【0023】
また、第1の本発明の有機太陽電池活性層用インクを用いると、スピンコート法等の印刷法により活性層を形成することができる。上記有機半導体化合物と上記無機半導体化合物との分散性が高いことに加えて、活性層の形成方法として印刷法を採用できることから、第1の本発明の有機太陽電池活性層用インクを用いることにより、活性層を安定的かつ簡便に形成することができ、活性層の形成コストを削減することができる。」

キ 引用文献7の記載
(7a)「【0011】
本発明は上記のような問題点を解決するためのもので、光活性層のコーティングが容易で、且つ透明性及び導電性の高い透明電極を形成することができる導電性高分子インク組成物及びそれを含む有機太陽電池を提供する。」

(7b)「【0018】
本発明による導電性高分子インク組成物は、a)導電性高分子を含む水系分散溶液と、b)導電性増進剤と、c)溶媒と、d)フッ素系界面活性剤及び親水性親油性比(hydrophile−lipophile balance、HLB)が12以上の界面活性剤と、を含む。」

(7c)「【0026】
一方、上記溶媒はインク組成物の粘度及び物性などを調節するためのもので、上記導電性高分子とうまく混合できるものであれば、制限なく使用することができ、例えば、水及び有機溶媒の混合物であってもよい。このとき、上記水及び有機溶媒の含量比率は、水:有機溶媒が40:60〜90:10または50:50〜80:20であることが好ましい。水及び有機溶媒の含量比率が上記数値範囲を満たすと、インクの分散性及び導電性に優れ、コーティング性、ジェッティング性が向上してインクジェット工程に適する。
【0027】
より具体的には、上記有機溶媒は、例えば、i)グリコールエーテル類及びii)多価アルコール類を含んでもよい。即ち、本発明における上記溶媒は、水、i)グリコールエーテル類及びii)多価アルコール類の混合溶媒であってもよい。溶媒として、上記のような水、i)グリコールエーテル類及びii)多価アルコール類の混合溶媒を混合して使用すると、ジェッティング性及び広がり性などが向上してインクジェット工程により適用しやすくなる。」

(7d)「【0065】
また、本発明による導電性高分子インク組成物を利用して形成した導電性高分子層は、表面エネルギーが高くて光活性層のコーティング性に優れるため、有機太陽電池の製造が非常に容易である。
【0066】
一方、上記光活性層としては、100nm〜400nm程度の厚さを有する、電子供与体(donor、D)物質と電子受容体(acceptor、A)物質の二層構造(D/A bi−layer)あるいは複合薄膜((D+A)blend、bulk heterojuction)構造を利用してもよい。上記光活性層は、電子供与体(electron doner)としてπ−電子を含むp型導電性高分子物質と、電子受容体(electron acceptor)としてフラーレンまたはその誘導体を含む導電性高分子物質からなるブレンド層を含むことが好ましい。」

ク 引用文献8の記載
(8a)「【0001】
本発明は、塗布ヘッドの複数回の走査による機能膜の製造方法、当該製造方法によって製造される有機EL機能膜、有機太陽電池機能膜、及び有機半導体機能膜、並びにこれらの機能膜を備える有機EL素子、有機太陽電池素子、有機半導体素子、照明装置、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイパネルの製造においては、各画素をバンクと呼ばれる隔壁で区画し、かかるバンク内の微小な領域に、有機EL素子の有機機能層を構成するための塗布液(インク)をインクジェット法にて吐出し、当該バンクによって区画されたそれぞれの微小な領域に有機機能層を形成する方法が一般的に用いられている。例えば、特許文献1には、インクジェット装置を使用して、ディスプレイ用の基板の所定の区画領域に有機発光材料を含有するインクの液滴を吐出し、有機機能層を形成する技術が開示されている。」

(8b)「【0031】
また、有機EL素子を例にとると、有機EL素子は一般に2つの電極の間に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層といった複数の層が設けられているが、これらの層1つ1つが本発明の機能膜に相当しうる。つまり、本発明における基板の表面上とは、基板の直接の表面上のみでなく、基板上に何らかの機能膜が形成された表面であってもよい。例えば、発光層を本発明の機能膜として形成する場合は、基板上に正孔輸送層等が形成された表面に、発光層を形成するためのインクを塗布することになるが、正孔輸送層を本発明の機能膜として形成する場合には、基板上に正孔注入層が形成された表面に、正孔輸送層を形成するためのインクを塗布することになる。」

(8c)「【0050】
また、本実施形態例においては、有機EL素子に用いられる機能膜の製造が前提となっていたが、有機太陽電池に用いられる機能膜、及び有機半導体に用いられる機能膜の製造にも上述した機能膜の製造方法を適用することができる。これにより、膜厚が均一な有機太陽電池機能膜及び有機半導体機能膜を提供することができる。そして、このような有機太陽電池機能膜を有機太陽電池素子に適用し、或いは有機半導体機能膜を有機半導体素子に適用することで、優れた電気的特性及び信頼性を備える有機太陽電池素子及び有機半導体素子を実現することができる。」

ケ 引用文献9の記載
(9a)「<用語解説>
注1) n共役ポリマー
ポリマーとは、ある化合物(モノマー)が複数結合して鎖状や環状になった高分子である。中でも、ポリマーを構成する繰り返し単位(主鎖)が炭素−炭素2重結合によって連なることで、2つの炭素同士で共有する電子(共役n電子)を持つものをn共役ポリマーと呼ぶ。有機高分子の一種kで、電子伝導性や発光特性などを示す導電性高分子(高分子半導体)。有機ELや太陽電池など幅広い応用が可能な機能材料である。」(用語解説の欄)

(2)引用文献1記載の発明
ア 引用文献1は、近赤外吸収材料、発光材料、及び電気化学材料等に有用な新規なキノイド型炭素架橋フェニレンビニレン化合物に関する文献であって(摘記(1a))、摘記(1d)には、実施例2の記載に、

で表され、Arが4-オクチルフェニル基で、Phがフェニル基である化合物XIが製造方法を伴って記載されている。
したがって、引用文献1から、実施例2に係る発明として、以下の発明が認定できるといえる。



で表され、Arが4-オクチルフェニル基で、Phがフェニル基である化合物」(以下「引用文献1発明」という。)

イ また、引用文献1の特許請求の範囲請求項1には、一般式(I)が記載され、請求項1を引用する請求項4には、X1及びX2がそれぞれC(CN)2であるキノイド型炭素架橋フェニレンビニレン化合物が記載されている。

(3) 本件特許発明と引用文献1発明との対比・判断
ア−1 本件特許発明1と引用文献1発明との対比
引用文献1発明の化合物は、本件特許発明1の式Iの化合物において、U11:「

」(Ar:4−オクチルフェニル基(本件特許発明1のアルキル基であるオクチル基(L)で置換されたアリール基に相当))、U12:C=C二重結合、U21:C=C二重結合、U22:「

」(Arは上記と同じ。)、Ar2:「

」、Ar3:「

」、a=b=0(Ar4、Ar5が存在しない)場合に相当する。


したがって、本件特許発明1と引用文献1発明とは、「Ar1の式中の説明に関する選択肢構造を除いた
式I
【化1】

(式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
U11及びU12の一方がC=C二重結合であり、他方がCR1R2であり、
U21及びU22の一方がC=C二重結合であり、他方がCR3R4であり、
Ar4、Ar5 5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環式基、
Ar2及びAr3 下式(1C)〜(35C)及びそれらの鏡像から選択される、
【化2】・・・(省略)・・・)の化合物。」である点で一致し、以下の点で相違点する。

相違点1:Ar1について、本件特許発明1においては、「Ar1が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】


【化5】

から選択され」ると特定されているのに対して、
引用文献1発明においては、「

」(12個の環原子を有する縮合環であるインダセン骨格(5員環−6員環−5員環の構造)を有し、4つのフェニル基で置換されたキノイド性脂環式基)である点。

イ−1 相違点についての判断
(ア)相違点1について検討する。
まず、引用文献1発明のAr1の「


は、本件特許発明1のAr1の選択肢である、(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像のいずれの選択肢にも該当するものがないことから、相違点1は、実質的な相違点である。

(イ)また、引用文献1の記載全体を考慮しても、引用文献1に記載された化合物は、

という一般式を前提としたものであり、引用文献1発明において、(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像の選択肢に該当する化合物にAr1の構造だけに着目して、変更する動機付けもないし、式(II)からみて想定もされていない。
したがって、引用文献1発明において、相違点1に関する本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になしえる技術的事項であるとはいえない。

ウ−1 小括
本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明することができたものともいえない。

ア−2 本件特許発明2と引用文献1発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1を式1Aと式1Bに分けて表現したものであり、引用文献1発明は、U11及びU22の結合に着目すると、式1Aの化合物にA11以外の部分が該当し、上記ア−1で検討したのと同様に、本件特許発明2と引用文献1発明とは、「

から選択され、式IA、IB中、Ar2〜5、U11、U21、U22、a、bが、請求項1に示される意味を有する、請求項1に記載の化合物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:Ar11について、本件特許発明2においては、「Ar1」「が、請求項1に示される意味を有し」、「Ar11」「が、Ar1について示される意味」である、つまりAr1が、「下式及びそれらの鏡像:
【化4】


【化5】

から選択され」ると特定されているのに対して、
引用文献1発明においては、「

」(12個の環原子を有する縮合環であるインダセン骨格(5員環−6員環−5員環の構造)を有し、4つのフェニル基で置換されたキノイド性脂環式基)である点。

イ−2 相違点についての判断
(ア)相違点2について検討すると、相違点1と同様に、引用文献1発明のAr11の「


は、本件特許発明2のAr11の選択肢である、(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像のいずれの選択肢にも該当するものがないことから、相違点2は、実質的な相違点である。

(イ)また、引用文献1の記載全体を考慮しても、引用文献1に記載された化合物は、

という一般式を前提としたものであり、引用文献1発明において、(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像の選択肢に該当する化合物にAr11の構造だけに着目して、変更する動機付けもないし、式(II)からみて想定もされていない。
したがって、引用文献1発明において、相違点2に関する本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易になしえる技術的事項であるとはいえない。

ウ−2 小括
本件特許発明2は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明することができたものともいえない。

ア−3 本件特許発明5と引用文献1発明との対比
本件特許発明5は、本件特許発明1におけるAr4及びAr5を特定したものであるものの、引用文献1発明は、a=b=0(Ar4、Ar5が存在しない)場合であり、両者に新たな相違点はなく、上記ア−1で検討したのと同様に、
引用文献1発明の化合物は、本件特許発明5の式Iの化合物において、U11:「

」(Ar:4−オクチルフェニル基(本件特許発明1のアルキル基であるオクチル基(L)で置換されたアリール基に相当))、U12:C=C二重結合、U21:C=C二重結合、U22:「

」(Arは上記と同じ。)、Ar2:「

」、Ar3:「

」、a=b=0(Ar4、Ar5が存在しない)場合に相当する。

したがって、本件特許発明5と引用文献1発明とは、「Ar1の式中の説明に関する選択肢構造を除いた
式I
【化1】

(式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
U11及びU12の一方がC=C二重結合であり、他方がCR1R2であり、
U21及びU22の一方がC=C二重結合であり、他方がCR3R4であり、
Ar4、Ar5 下式及びそれらの鏡像:【化6】・・・((1D)〜(45D)省略)・・・、
Ar2及びAr3 下式(1C)〜(35C)及びそれらの鏡像から選択される、
【化2】・・・(省略)・・・)の化合物。」である点で一致し、以下の点で相違点する。

相違点3:Ar1について、本件特許発明5においては、「Ar1が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】


【化5】

から選択され」ると特定されているのに対して、
引用文献1発明においては、「

」(12個の環原子を有する縮合環であるインダセン骨格(5員環−6員環−5員環の構造)を有し、4つのフェニル基で置換されたキノイド性脂環式基)である点。

イ−3 相違点についての判断
(ア)相違点3について検討すると、引用文献1発明のAr1の「


は、本件特許発明1のAr1の選択肢である、(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像のいずれの選択肢にも該当するものがないことから、相違点5は、実質的な相違点である。

(イ)また、引用文献1の記載全体を考慮しても、引用文献1に記載された化合物は、

という一般式を前提としたものであり、引用文献1発明において、(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像の選択肢に該当する化合物にAr1の構造だけに着目して、変更する動機付けもないし、式(II)からみて想定もされていない。
したがって、引用文献1発明において、相違点3に関する本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易になしえる技術的事項であるとはいえない。

ウ−3 小括
本件特許発明5は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明することができたものともいえない。

エ−1 本件特許発明8〜17と引用文献1発明との対比・判断
(ア)本件特許発明8〜17は、本件特許発明1、2、5において、それぞれ、「半導体、正孔若しくは電子輸送、正孔若しくは電子遮断、導電、光伝導、光活性又は発光特性のうちの1つ以上を有する1つ以上の化合物、及び/又は結合剤をさらに含む組成物。」であること(本件特許発明8)、「1つ以上のn型半導体(そのうちの少なくとも1つが、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物である)を含み、1つ以上のp型半導体をさらに含む」こと(本件特許発明9)、「共役ポリマーから選択される1つ以上のp型半導体を含む」こと(本件特許発明10)、「請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物から形成されるバルクヘテロ接合。」であること(本件特許発明11)、「電子若しくは光電子デバイスにおける、又はこのようなデバイスの構成要素における、又はこのようなデバイスを含むアセンブリにおける、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。」であること(本件特許発明12)、「請求項1〜7のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物を含み、有機溶媒から選択される1つ以上の溶媒をさらに含む配合物。」であること(本件特許発明13)、「請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む、電子若しくは光電子デバイス、又はその構成要素、又はそれを含むアセンブリ。」であること(本件特許発明14)、「有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機発光電気化学セル(OLEC)、有機光起電デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、ペロブスカイト系太陽電池(PSC)、有機光電気化学セル(OPEC)、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体、光検出器、熱電デバイス及びLCウインドウから選択される、請求項14に記載の電子又は光電子デバイス。」であること(本件特許発明15)、「電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止フィルム、ポリマー電解質膜(PEM)、伝導性基板及び伝導性パターンから選択される、請求項14に記載の構成要素。」であること(本件特許発明16)、「集積回路(IC)、無線自動識別(RFID)タグ、セキュリティマーキング、セキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサーデバイス、バイオセンサー及びバイオチップから選択される、請求項14に記載のアセンブリ。」であること(本件特許発明17)をさらに技術的に特定したものである。
したがって、本件特許発明8〜17と引用文献1発明との対比において、少なくとも相違点1〜3を有している。

(イ)引用文献1には、【0001】及び【0029】に引用文献1発明の化合物の有機系太陽電池等の用途に関する記載があること(摘記(1b)及び摘記(1c))、引用文献2〜9には、それぞれ有機発光ダイオード(OLED)、バルクヘテロ接合太陽電池等(摘記(2a)〜(2c))、有機太陽電池のバルクヘテロ接合(摘記(3a))、p型半導体とn型半導体の接合(摘記(4a))、混合して用いるp型半導体である共役ポリマー(摘記(5a)〜(5b))、有機太陽電池活性層用インクに含有させる有機溶媒(摘記(6a)〜(6b))、導電性高分子インク組成物(摘記(7a)〜(7d))、有機EL機能膜、有機太陽電池機能膜、及び有機半導体機能膜、並びにこれらの機能膜を備える有機EL素子、有機太陽電池素子、有機半導体素子、照明装置、及び表示装置に関し、例えば有機EL素子であれば、一般に2つの電極の間に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層といった複数の層が設けられ、これらの層1つ1つが機能膜に相当する旨の記載(摘記(8a)〜(8c))、n共役ポリマーに関する記載(摘記(9a))があるものの、前記相違点1〜3に関する化学構造の変更についての記載はない。

したがって、相違点1〜3以外の相違点の検討をするまでもなく、前記本件特許発明1〜3と引用文献1発明の対比判断において検討したように、引用文献1発明において、相違点1〜3は、引用文献1に記載された技術的事項を考慮しても、当業者が容易になし得た技術的事項ではないから、本件特許発明8〜17は、引用文献1〜9に記載された技術的事項を考慮しても、引用文献1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

エ−3 小括
本件特許発明8〜17は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1〜9に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(4) 取消理由の判断のまとめ
以上のとおり、当審合議体から通知した取消理由通知に示した取消理由は解消しており、上記取消理由1及び2には理由がない。

II 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についての検討

1 異議申立理由1(新規性)、異議申立理由2(進歩性)について
(1)本件特許発明3、4、6、7と甲第1号証に記載された発明(引用文献1発明)との対比・判断について

ア 本件特許発明3について
(ア)本件特許発明3は、本件特許発明2において、式IA中のAr11が、下式(1A)〜(25A)及びそれらの鏡像であることをさらに特定したものであり、
「I 取消理由について」の本件特許発明1及び本件特許発明2と引用文献1発明との対比・判断で検討したのと同様に、引用文献1発明との間で、少なくとも以下の相違点を有する。

相違点4:相違点1:Ar11について、本件特許発明3においては、「Ar11が、下式(1A)〜(25A)及びそれらの鏡像:
【化4】


から選択され」ると特定されているのに対して、
引用文献1発明においては、「

」(12個の環原子を有する縮合環であるインダセン骨格(5員環−6員環−5員環の構造)を有し、4つのフェニル基で置換されたキノイド性脂環式基)である点。

(イ)相違点についての判断
相違点1〜3で検討したのと同様に、甲第1号証の記載全体を考慮しても、甲第1号証に記載された化合物は、

という一般式を前提としたものであり、引用文献1発明において、(1A)〜(25A)及びそれらの鏡像の選択肢に該当する化合物にAr11の構造だけに着目して、変更する動機付けもないし、式(II)からみて想定もされていない。
したがって、引用文献1発明において、相違点4に関する本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易になしえる技術的事項であるとはいえない。
特許異議申立人は、特許異議申立書34〜35頁において、相違点4に関して、本件特許明細書の記載を用いて、Ar11の構造を(1A)〜(25A)及びそれらの鏡像に変更することが、過度な試行錯誤なく容易に合成できるとか、適宜なし得る旨主張している。
しかしながら、本件特許明細書の記載に基づいて、引用文献1発明から容易想到性を論ずることが不適切であることはもちろんのこと、上述のとおり、引用文献1発明において、(1A)〜(25A)及びそれらの鏡像の選択肢に該当する化合物にAr11の構造だけに着目して、変更する動機付けもないし、引用文献1の式(II)からみて想定もされていない。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

(ウ)小括
本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

イ 本件特許発明4について
(ア)本件特許発明4は、本件特許発明2において、式IB中のAr12が、下式(1B)〜(23B)及びそれらの鏡像であることをさらに特定したものであり、
「I 取消理由について」の本件特許発明1及び本件特許発明2と引用文献1発明との対比・判断で検討したのと同様に、引用文献1発明との間で、少なくとも以下の相違点を有する。

相違点5:Ar12について、本件特許発明4においては、「Ar12が、下式(1B)〜(23B)及びそれらの鏡像:
【化4】


から選択され」ると特定されているのに対して、
引用文献1発明においては、「

」(12個の環原子を有する縮合環であるインダセン骨格(5員環−6員環−5員環の構造)を有し、4つのフェニル基で置換されたキノイド性脂環式基)である点。

(イ)相違点の判断
相違点1〜3で検討したのと同様に、甲第1号証の記載全体を考慮しても、甲第1号証に記載された化合物は、

という一般式を前提としたものであり、引用文献1発明において、(1B)〜(23B)及びそれらの鏡像の選択肢に該当する化合物にAr12の構造だけに着目して、変更する動機付けもないし、式(II)からみて想定もされていない。
したがって、引用文献1発明において、相違点5に関する本件特許発明4の構成とすることは、当業者が容易になしえる技術的事項であるとはいえない。

(ウ)小括
本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 本件特許発明6について
(ア)本件特許発明6は、本件特許発明1〜5において、化学構造式全体をI1〜I20に特定するものであるが、引用文献1発明とは化学構造式が明らかに相違しており、相違点1〜3で検討したのと同様に、甲第1号証の記載全体を考慮しても、甲第1号証に記載された化合物は、

という一般式を前提としたものであり、引用文献1発明において、I1〜I20の選択肢に該当する化合物に変更する動機付けもないし、式(II)からみて想定もされていない。

(イ)小括
本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

エ 本件特許発明7について
(ア)本件特許発明7は、本件特許発明1〜6において、「R1〜4が、任意選択的にフッ素化される1〜40個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシ、又は単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、請求項1において定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換される、4〜30個の環原子を有するアリール若しくはヘテロアリールから選択される」ことを特定したものである。
本件特許発明7は、本件訂正によって、本件特許発明1のAr1が特定の選択肢である(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)及びそれらの鏡像となったので、少なくともAr1の部分で相違しており、引用文献1発明において、(1A)〜(25A)及び(1B)〜(23B)並びにそれらの鏡像の選択肢に該当する化合物に変更する動機付けもないし、引用文献1の式(II)からみて想定もされていない。

(イ)小括
本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

オ 異議申立理由1及び2のまとめ
以上のとおり、上記異議申立理由1及び2には理由がない。

2 異議申立理由3(サポート要件)について

(1)本件特許発明に関する特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の【0005】〜【0009】の記載、本件特許発明1〜17の発明特定事項及び本件明細書全体の記載を参酌して、本件特許発明1〜7については、OSC材料に利用できる有利な特性を有するジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する新規な化合物を提供することにあると認める。
また、本件特許発明8〜17の課題は、上記化合物を含む組成物、それらの使用方法、配合物、アセンブリ、デバイス、構成要素を提供することにあると認める。

(3) 特許請求の範囲の記載
請求項1〜17には、前記第3のとおり、各発明が記載されている。

(4) 発明の詳細な説明の記載
ア 本願の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲に記載された発明に対応した記載として、実質的な繰り返し記載を除いて以下のような記載がある。

イ 本件特許発明の一般的説明について
本件特許明細書の【0002】〜【0009】には、背景技術や目的に関して、「【背景技術】
【0002】
近年、より多用途の、より低コストの有機電子(OE)デバイスを製造するために、有機半導体(OSC)材料の開発があった。このような材料は、ほんの数例を挙げると、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、ペロブスカイト系太陽電池(PSC)デバイス、有機光検出器(OPD)、有機光起電(OPV)電池、センサー、記憶素子及び論理回路を含む広範なデバイス又は装置に応用される。有機半導体材料は、典型的に、例えば50〜300nmの厚さの薄層の形態で、電子デバイス中に存在する。
【0003】
OSC材料は、主に、低温で費用効果の高い溶液処理技術によって製造されるOEデバイスにおいて大きな利益を生み出す商業的展望のため、ここ20年にわたって大きな注目を集めてきた。有機及び/又はポリマー半導体は、軽量の可撓性のバックプレーンを製造する可能性、低コストで、高速の溶液ベースの製造技術を用いて広域ディスプレイを作製する可能性、並びにそれらの光学及び電子特性が、合理的な化学構造修飾によって微調整可能であることなどの、無機の同等物を上回る多くの利点を有するものと一般に考えられている。しかしながら、主な欠点は、それらが、比較的低いデバイス性能、並びに低い熱、光及び電気的安定性を未だに示すことである。過去およそ20年間にわたる徹底的な構造設計及び合成試験のおかげで、広範な新規なπ共役ポリマーが入手可能になり、OSCベースのデバイス、特に、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)におけるそれらの性能は、電荷キャリア移動度の点で、アモルファスシリコンのものを上回る大きな改善を遂げた。その一方で、活性な電子供与材料として低バンドギャップπ共役ポリマーを用いて製造される有機太陽電池の電力変換効率は、10%を超えた。
【0004】
これまで、OFET、OPV電池又はOPDのようなOEデバイスにおけるOSC材料として使用され得る多数のπ共役化合物が合成されてきた。これらの中でも、p型OSC材料は、主に、構成単位及び前駆体の合成可能性の相対的容易さのため、圧倒的に優勢を保っている。対照的に、n型OSCとしての商業的可能性を示した、利用可能な電子受容共役化合物は少ない。この状況は、CMOS構造を含む有機回路を製造する際の相補的なn型OSCの限られた選択につながる。
【0005】
有利な特性、特に、良好な加工性、有機溶媒への高い溶解性、良好な構造機構及び塗膜形成特性を有する、OPV電池、OPD及びOFETのようなOEデバイスにおいて使用するためのn型OSCが依然として必要とされている。さらに、OSC材料は、特に、大量生産に好適な方法によって合成するのが容易であるべきである。OPV電池において使用するために、OSC材料は、特に、低いバンドギャップを有するべきであり、これは、光活性層による集光の改善を可能にし、より高い電池効率、高い安定性及び長い寿命につながり得る。OFETにおいて使用するために、OSC材料は、特に、高い電荷キャリア移動度、トランジスタデバイスにおける高いオン・オフ比、高い酸化安定性及び長い寿命を有するべきである。
【0006】
本発明の目的は、先行技術からのOSCの欠点を克服することができ、上記の有利な特性、特に、大量生産に好適な方法による容易な合成、良好な加工性、高い安定性、OEデバイスにおける長い寿命、有機溶媒への良好な溶解性、高い電荷キャリア移動度、及び低いバンドギャップのうちの1つ以上を提供する新規なn型OSCを提供することであった。本発明の別の目的は、専門家が利用可能なOSC材料及びn型OSCのプールを拡張することであった。本発明の他の目的は、以下の詳細な説明から専門家に直ちに明白である。
【0007】
本発明の発明者らは、n型OSCとして使用され得る、以下において開示及び権利請求される電子不足化合物を提供することによって、上記の目的の1つ以上が達成され得ることを見出した。これらの化合物は、以下の式Iに示されるように、ジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する。
【0008】
このような化合物は、それらが上述される有利な特性を示す、OPV電池又はOPDのようなOEデバイスにおいて使用するためのn型有機半導体として使用され得ることが分かっている。
【0009】
キノイド性構造を有し、ジシアノメチレン基で終端されている化合物が、先行技術の文献、例えば特許文献1〜4に開示されている。しかしながら、本明細書において以後、開示及び権利請求される化合物は、先行技術においてこれまで開示されていなかった。」(下線は当審合議体にて追加。以下同様。)と記載され、【0011】〜【0027】には、解決手段について記載され、【0078】〜【0150】には、発明を実施するための形態を好ましい実施形態を示しながら記載され、【0151】〜【0261】には、本件特許発明の化合物、組成物、配合物、アセンブリ、デバイス、構成要素の製造方法やそれらの使用方法が記載されている。

ウ 具体的記載について
本件特許発明に該当する実施例1、2として、それぞれ化合物(1)、化合物(2)の詳細な製造法が記載され、最終的に得られた固体や粉末を1H NMRおよびMSで確認したことが示されている。

(5) 対比・判断
ア 本件特許発明1〜17の課題は、上記(2)に述べたとおり、OSC材料に利用できる有利な特性を有するジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する新規な化合物、該化合物を含む組成物、それらの使用方法、配合物、アセンブリ、デバイス、構成要素を提供することにある。

イ そして、特許請求の範囲には、環構造の置換基には選択肢はあるものの、環構造およびそれらの結合を含めた骨格構造は特定のジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する化合物に限定されたものが記載されている。
そして、発明の詳細な説明においては、上記(4)イのとおり、OSC材料に利用するためのジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する新規な化合物に関して、背景技術、目的、解決手段、について記載され、発明を実施するための形態を好ましい実施形態を示しながら記載され、それらの化合物の製造方法や、それらの化合物を用いて組成物、配合物、アセンブリ、デバイス、構成要素とする場合の製造方法や使用方法の記載も存在している。
また、本件特許発明は、ジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する新規な化合物であること、【0007】〜【0009】に記載されるように、本発明の発明者らは、n型OSCとして使用され得る、本件特許発明の電子不足化合物を提供することによって、上記の目的の1つ以上が達成され得ることを見出し、これらの化合物が式Iに示されるように、ジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有すると言及し、このような化合物は、それらが上述される有利な特性を示し、OPV電池又はOPDのようなOEデバイスにおいて使用するためのn型有機半導体として使用され得ることが分かっていること、キノイド性構造を有し、ジシアノメチレン基で終端されている化合物が、先行技術の文献でもすでに開示されている旨の公知の類似化合物に関する技術水準と、本件特許発明の新規化合物との関係を説明する記載がある。

ウ さらに、上記(4)ウのとおり、実施例として、2つの本件特許発明に該当する化合物を製造した具体例がある。

エ したがって、本件特許発明1〜7に関して、対応するジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する新規な化合物が、上記発明の詳細な説明の技術水準と新規化合物との関係を含めた記載、実施態様や化合物等の製造方法の記載、実施例の具体的化合物の製造例の記載、及び本件出願時の共役二重結合の広がりによる化合物の安定性等のOSC材料に関する技術常識を参酌すれば、有利な特性を有するジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する新規な化合物が提供できることが裏付けられているので、当業者であれば本件特許発明の課題が解決できることを認識できるといえる。

オ 特許異議申立人のサポート要件に関する主張(異議申立理由3)について
特許異議申立人は、請求項1〜7に係る発明の化合物に多種の化合物が存在するのに、実施例1、2で合成した化合物以外に合成例の記載がなく、比較化合物と比較した効果の評価結果がなく、本願発明の構成であるからこそ奏する作用効果の評価検証が裏付けられていないから、発明の詳細な説明において、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えて特許を請求するものである旨主張している。

しかしながら、上述のとおり、本件特許発明に該当する実施例の化合物が実施例で製造され、その他の発明の詳細な説明の記載においても、背景技術、目的、解決手段、発明を実施するための形態を好ましい実施形態を示しながら記載され、本件特許発明の化合物、組成物、配合物、アセンブリ、デバイス、構成要素のそれぞれの製造方法やそれらの使用方法が記載されており、OSC材料として、一定の有利な特性を有することについて、すでに背景技術の記載から公知の知見が存在していることが示されている。
また、OSC材料の特性として、π伸長したキノイド多環式単位を含有する化合物が、望ましいことは技術常識であることも考慮すると、本件特許発明のジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する化合物も一定の有利な効果を奏することは、当業者であれば十分に予想できるといえる。
そして、実施例が少ないとか比較例との比較がされていないからといって、ただちにサポート要件を満たさない理由となるわけではないのはもちろんのこと、上述のとおり、本件特許発明においては、特許請求の範囲で特定された「OSC材料に利用できる有利な特性を有するジシアノメチレン基でω−二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する新規な化合物」自体が「発明の課題を解決するための手段」であり、一定の推定をもって使用できる化合物が提供できているのであるから、本件特許発明が、本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(5)異議申立理由3(サポート要件)の判断のまとめ
以上のとおり、異議申立理由3には理由がない。

3 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についてのまとめ
したがって、異議申立理由1(新規性)、異議申立理由2(進歩性)、異議申立理由3(サポート要件)に関する特許異議申立理由には、理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、本件の請求項1〜17に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、ほかに本件の請求項1〜17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、個々の基が、互いに独立して、出現することに、同一に又は異なって、以下の意味:
U11及びU12の一方がC=C二重結合であり、他方がCR1R2であり、
U21及びU22の一方がC=C二重結合であり、他方がCR3R4であり、
Ar1が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】


【化5】

から選択され、
Ar4、Ar5 5〜30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R1若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環式基、
Ar2及びAr3 下式(1C)〜(35C)及びそれらの鏡像から選択される、
【化2】


X O、S、Se又はTe、
R、R’ 式Iについて定義されるR1又はLの意味のうちの1つ、
# C=C二重結合を介して、式Iの隣接する基に結合されるsp2炭素原子、
* C−C単結合を介して、式I中の隣接する基に結合されるsp2炭素原子、
Z、Z’ O、S、C(=O)、NR、=N−又は=CR−(ここで、Z及びZ’の少なくとも1つが、=N−及び=CR−と異なる)、
Arx、Ary 縮合5員又は6員芳香環(ここで、1つ以上のCH基が、−O−、−S−、Se、Te、=N−、−NR1又は−C(=O)−で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、R1又はLで任意選択的に置換される)、
Y CR1R2、SiR1R2、GeR1R2、NR、C(=O)又はS(=O)、
R1〜4 H、F、Cl、CN、1〜40個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル(ここで、O及び/又はS原子が、互いに直接結合されないように、1つ以上のCH2基が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR0−、−SiR0R00−、−CF2−、−CR0=CR00−、−CY1=CY2−又は−C≡C−で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、1つ以上のCH2又はCH3基が、カチオン性又はアニオン性基で任意選択的に置換される)、
又は1〜40個のSi原子を有する直鎖状、分枝鎖状若しくは環状シリル、
又はアリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ(ここで、上記の環式基のそれぞれが、5〜20個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基Lで置換される)、
L F、Cl、−NO2、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、R0、OR0、SR0、−C(=O)X0、−C(=O)R0、−C(=O)−OR0、−O−C(=O)−R0、−NH2、−NHR0、−NR0R00、−C(=O)NHR0、−C(=O)NR0R00、−SO3R0、−SO2R0、−OH、−NO2、−CF3、−SF5、又は1〜20個のSi原子を有する任意選択的に置換されるシリル、又は任意選択的に置換され、任意選択的に、1つ以上のヘテロ原子を含む、1〜30個のC原子を有するカルビル若しくはヒドロカルビル、好適には、F、−CN、R0、−OR0、−SR0、−C(=O)−R0、−C(=O)−OR0、−O−C(=O)−R0、−O−C(=O)−OR0、−C(=O)−NHR0、又は−C(=O)−NR0R00、
R0、R00 H又は任意選択的にフッ素化される1〜40個のC原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、
X0 ハロゲン、好適には、F又はCl、
a、b 0又は1〜10の整数
を有する)
の化合物。
【請求項2】
下式IA、IB
【化3】

から選択され、式IA、IB中、Ar1〜5、U11、U21、U22、a、bが、請求項1に示される意味を有し、Ar11及びAr12が、Ar1について示される意味のうちの1つを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式IA中のAr11が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】


から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現することに、同一に又は異なって、以下の意味:
X O、S、Se又はTe、
R、R’ 請求項1において定義されるR1又はLの意味のうちの1つ、
# C=C二重結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp2炭素原子、及び
* C−C単結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp2炭素原子、
Z、Z’ O、S、C(=O)、NR、=N−又は=CR−(ここで、Z及びZ’の少なくとも1つが、=N−及び=CR−と異なる)を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式IB中のAr12が、下式及びそれらの鏡像:
【化5】

から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現することに、同一に又は異なって、以下の意味を有し、
X、Z、Z’、R、#及び*が、請求項3に示される意味を有し、
Arx、Ary 縮合5員又は6員芳香環(ここで、1つ以上のCH基が、−O−、−S−、Se、Te、=N−、−NR−又は−C(=O)−で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、R1又はLで任意選択的に置換される)、
Y CR1R2、SiR1R2、GeR1R2、NR、C(=O)又はS(=O)、
ここで、L、R1及びR2が、請求項1において定義されるとおりである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Ar4及びAr5が、下式及びそれらの鏡像:
【化6】



から選択され、式中、Arx、Ary、R、R’、X、Y、Z、Z’、#及び*が、請求項3及び4において定義されるとおりであり、Y’が、N又はCRを示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
下式
【化7】




から選択され、式中、R1〜5、R及びR’が、請求項1及び4において示される意味を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R1〜4が、任意選択的にフッ素化される1〜40個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシ、又は単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、請求項1において定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換される、4〜30個の環原子を有するアリール若しくはヘテロアリールから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物を含み、半導体、正孔若しくは電子輸送、正孔若しくは電子遮断、導電、光伝導、光活性又は発光特性のうちの1つ以上を有する1つ以上の化合物、及び/又は結合剤をさらに含む組成物。
【請求項9】
1つ以上のn型半導体(そのうちの少なくとも1つが、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物である)を含み、1つ以上のp型半導体をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
共役ポリマーから選択される1つ以上のp型半導体を含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物から形成されるバルクヘテロ接合(BHJ)。
【請求項12】
電子若しくは光電子デバイスにおける、又はこのようなデバイスの構成要素における、又はこのようなデバイスを含むアセンブリにおける、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物を含み、有機溶媒から選択される1つ以上の溶媒をさらに含む配合物。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む、電子若しくは光電子デバイス、又はその構成要素、又はそれを含むアセンブリ。
【請求項15】
有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機発光電気化学セル(OLEC)、有機光起電デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、ペロブスカイト系太陽電池(PSC)、有機光電気化学セル(OPEC)、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体、光検出器、熱電デバイス及びLCウインドウから選択される、請求項14に記載の電子又は光電子デバイス。
【請求項16】
電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止フィルム、ポリマー電解質膜(PEM)、伝導性基板及び伝導性パターンから選択される、請求項14に記載の構成要素。
【請求項17】
集積回路(IC)、無線自動識別(RFID)タグ、セキュリティマーキング、セキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサーデバイス、バイオセンサー及びバイオチップから選択される、請求項14に記載のアセンブリ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2023-10-31 
出願番号 P2019-548717
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C07D)
P 1 651・ 537- YAA (C07D)
P 1 651・ 121- YAA (C07D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 阪野 誠司
特許庁審判官 瀬良 聡機
野田 定文
登録日 2022-08-01 
登録番号 7116075
権利者 レイナジー テック インコーポレイション
発明の名称 有機半導体化合物  
代理人 本田 淳  
代理人 中村 美樹  
代理人 中村 美樹  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  

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