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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1406371
総通号数 26 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-11-09 
確定日 2024-01-18 
事件の表示 特願2021− 82242「計測システム及び基板処理システム、並びにデバイス製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月26日出願公開、特開2021−121872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月22日に出願した特願2018−535674号(優先権主張 平成28年8月24日、以下「優先日」という。)の一部を令和3年5月14日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 4年 3月24日付け:特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由
通知書
同年 6月 3日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月 5日付け:令和4年6月3日の手続補正についての補
正却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」
という。)
(同月 9日 :原査定の謄本の送達)
同年11月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年11月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和4年11月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システムであって、
それぞれが基板に対する計測処理を行なう複数の計測装置と、
前記複数の計測装置の間で前記基板を搬送する搬送システムと、
複数の基板を収納したキャリアを設置可能なキャリア載置部を少なくとも一つ有し、前記搬送システムを介して、前記キャリアと複数の前記計測装置との間で基板の分配と回収を行うキャリアシステムと、
前記複数の計測装置と前記搬送システムと前記キャリアシステムとを制御可能な制御装置と、を備え、
前記複数の計測装置は、基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置を含み、前記第1計測装置は前記基板上の第m層(mは1以上の整数)に形成された複数のマークの位置情報を取得し、前記第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報は、前記第m層の露光に用いられた露光装置に提供される計測システム。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、本願出願当初の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システムであって、
それぞれが基板に対する計測処理を行なう複数の計測装置と、
前記複数の計測装置の間で前記基板を搬送する搬送システムと、
複数の基板を収納したキャリアを設置可能なキャリア載置部を少なくとも一つ有し、前記搬送システムを介して、前記キャリアと複数の前記計測装置との間で基板の分配と回収を行うキャリアシステムと、
前記複数の計測装置と前記搬送システムと前記キャリアシステムとを制御可能な制御装置と、を備え、
前記複数の計測装置は、基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置を含む計測システム。」

2 本件補正の適否
本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1計測装置」について「前記基板上の第m層(mは1以上の整数)に形成された複数のマークの位置情報を取得し、前記第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報は、前記第m層の露光に用いられた露光装置に提供される」との限定を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に発行された国際公開第2007/102484号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当合議体が付した。以下同じ。)。

「[0001] 本発明は、デバイス製造方法、デバイス製造システム及び測定検査装置に係り、さらに詳しくは、例えば、半導体素子、液晶表示素子、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子、薄膜磁気ヘッド等を製造するためのフォトリソグラフイエ程を含むデバイス製造方法、デバイス製造システム及び測定検査装置に関する。」

「[0014] 以下、本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
[0015] 図1には、一実施形態に係るデバイス製造・処理システム1000の概略構成が示されている。図1に示されるように、デバイス製造・処理システム1000は、工場内生産管理メインホストシステム600と、露光セル700と、搬送ライン800と、デバイス製造・処理装置群900と、露光工程管理コントローラ(以下、「管理コントローラ」と略述する)160と、解析装置170とを備えている。
[0016] [工場内生産管理メインホストシステム]
工場内生産管理メインホストシステム(以下、「ホスト」と呼ぶ)600は、デバイス製造・処理システム1000全体の状態を把握し、露光セル700、搬送ライン800、デバイス製造・処理装置群900、管理コントローラ160、解析装置170を統括制御するメインホストコンピュータである。
[0017] ホスト600と、露光セル700と、搬送ライン800(より具体的にはそのコントローラ)と、デバイス製造・処理装置群900と、管理コントローラ160と、解析装置170との間は、有線又は無線の通信ネットワーク又は専用の通信回線を通じて接続されており、相互にデータ通信を行うことができる。このデータ通信により、ホスト600は、デバイス製造・処理システム1000全体の統括制御を実現している。
[0018] 露光セル700は、複数の露光装置100、101と、複数のトラック200と、複数の測定検査器120、121と、搬送ライン140とを備えている。図2では、説明を簡単にするために、露光装置、トラック、測定検査器はともに2台しか示されていないが、実際には、3つ以上設けられていても良い。
[0019][露光装置]
露光装置100、101は、デバイスパターンを、フォトレジストが塗布されたウェハに転写する装置である。露光装置100、101は同じ機種であるため、以下では、露光装置100を代表的に取り上げてその構成等について説明する。」

「[0047][トラック]
図1に戻り、トラック200は、露光装置100を囲むチャンバ(不図示)に接するように配置されている。トラック200は、内部に備える搬送ラインにより、主として露光装置100に対するウェハWの搬入・搬出を行っている。
[0048][コータ・デベロッパ]
トラック200内には、レジスト塗布処理を行うコータ、現像処理を行うデベロッパ、PEB処理を行うPEB装置などを備えるコータ・デベロッパ(C/D)110が設けられている。C/D110は、レジスト塗布、現像、PEB処理の処理状態を観測し、その観測データをログデータとして記録することができる。観測可能な処理状態としては、例えば、スピンコータの回転速度、現像中の温度、現像モジュール処理、PEBの温度均一性(ホットプレート温度均一性)、ウェハ加熱履歴管理(PEB処理後のオーバベータを回避、クーリングプレート)の各状態がある。C/D110も、その装置パラメータの設定により、その処理状態をある程度調整することができる。このような装置パラメータには、例えば、ウェハW上のレジストの厚みを補正することができるパラメータ(レジストの滴下量、滴下間隔)、装置内の設定温度、スピンコータの回転速度などがある。」

「[0052][測定検査器]
測定検査器120、121は、ウェハWを対象とする種々の測定検査を行うことが可能な複合的な測定検査器である。測定検査器120、121は同機種であるため、以下では、測定検査器120を代表的に取り上げてその構成等について説明する。測定検査器120は、露光装置100におけるウェハステージWSTと同様に、ウェハWを保持するステージを備えている。このステージのXY位置は、ウェハステージWSTと同様に、不図示の干渉計により計測されている。測定検査器120のコントローラは、干渉計の計測位置により、ステージのXY位置を制御する。ウェハWの測定検査には、まず、ウェハWの位置合わせが必要となる。この測定検査器120は、露光装置100、101と同様に、ウェハWの位置合わせが可能であり、露光装置100のアライメント系ALGと同様のアライメント系を備えている。測定検査器120におけるウェハWのアライメントは、露光装置100、101と同様のアライメント関連パラメータの下で、同じように行うことができる。」

「[0055] 測定検査器120は、露光装置100、101及びC/D110とは、独立して動作可能である。露光セル700内の搬送ライン140は、露光装置100、101、C/D110、測定検査器120、121の間を、ウェハW毎に搬送可能であるものとする。また、測定検査器120は、通信ネットワークを介してデータの入出力が可能である。」

「[0059][管理コントローラ]
管理コントローラ160は、露光装置100、101により実施される露光工程を集中的に管理するとともに、トラック200内のC/D110、測定検査器120、121の管理及びそれらの連携動作の制御を行う。このようなコントローラとしては、例えば、パーソナルコンピュータ(以下、適宜PCと略述する)を採用することができる。管理コントローラ160は、デバイス製造・処理システム1000内の通信ネットワークを通じて、処理、動作の進捗状況を示す情報、及び処理結果、測定検査結果を示す情報を各装置から受信し、デバイス製造・処理システム1000の製造ライン全体の状況を把握し、露光工程等が適切に行われるように、各装置の管理及び制御を行う。」

「[0093] 次のステップ214では、事後測定検査処理を行う測定検査器の選択及び測定検査条件の設定を行う。その後、このレジスト像の線幅の測定、ウェハW上に転写されたデバイスパターンの線幅測定及びパターン欠陥検査などの事後測定検査処理を行う(ステップ215)。このステップ214、215は、後述するエッチング処理後に行うようにしても良い。
[0094] 事後測定検査処理の処理内容としては、様々なものがあるが、例えば、以下のものがあげられる。
(1)デバイスパターンの重ね合わせ誤差測定
(2)デバイスパターンのパターン欠陥検査
以下、(1)、(2)の測定検査処理各々について、ステップ214、215の処理を、詳細に説明する。ステップ214において、測定検査器の選択までは、前述したとおりであるので、測定検査器が選択されてから以降の処理について説明する。
[0095][デバイスパターンの重ね合わせ誤差測定]
まず、選択された測定検査器は、露光装置(100、101のいずれかであるかであるが、ここでは露光装置100とする)に対して、測定検査に必要な処理条件などに関するデータを問い合わせる。露光装置100は、重ね合わせ誤差測定に必要な情報、例えば、露光装置100内の環境(温度、湿度、気圧)、アライメント系ALGの測定条件、ウェハWのアライメント結果のデータ(ウェハグリッド及びショット領域SA自体の変形成分)、ウェハWの面形状などのデータ(フォーカス段差データ)、及びフォーカス関連パラメ一タなどを測定検査器に送る。測定検査器は、送られた情報にしたがって、測定検査器内の環境、及びアライメント系の測定条件などを、露光装置100にあわせる。
[0096] デバイスパターンの重ね合わせ誤差測定では、露光装置100におけるアライメント系ALGの測定条件(アライメント装置22の処理条件など)が設定された状態で、アライメントが行われるようになる。
[0097] そして、ウェハW上の重ね合わせ誤差測定用マークの測定を行う。ここでは、測定対象となるマークに対する光学系のフォーカス合わせを、露光装置100と同じフォーカス関連パラメータの下で、事前測定検査処理で測定されたフォーカス段差のデータを考慮して行う。このようにすれば、マークに対するフォーカス合わせに要する時間を短くすることが可能となる。
[0098] また、ショット領域SAには、多数の重ね合わせ誤差測定用マークが形成されているため、形成状態が良好でないマークについては、測定対象から除外することができる。この場合、選択された測定検査器は、解析装置170に測定対象から除外すべきマークについて問い合わせる。解析装置170は、この問い合わせを受信した後、露光装置100に対して、ログデータの送信を要求する。露光装置100は、そのウェハWに対する処理を行ったときのログデータを解析装置170に送信する。解析装置170は、受信したログデータに基づいて、図3(A)〜図3(E)に示されるように、重ね合わせ誤差測定用マークが形成されている地点での制御誤差を、AB間のログデータから算出する。そして、その制御誤差をキーとして、CDテーブル群を参照し、その重ね合わせ誤差測定用マークの推定線幅値を求める。そして、その推定線幅値が、設計線幅から所定値以上ずれている場合には、その重ね合わせ誤差測定用マークを測定対象から除外するように設定する。そして、測定対象となっているウェハW上の重ね合わせ誤差測定用マーク各々の解析結果を、測定検査器に返す。
[0099] なお、解析装置170では、マークの除外のほかにも様々な処理が可能である。例えば、重ね合わせ誤差測定用マークが、ライン・アンド・スペース・パターン(L/Sパターン)であり、その重ね合わせ誤差測定用マークの非対称性が、露光装置100の口グデータに基づいて推定可能である場合には、その非対称性から推定されるマークの位置ずれ量を解析結果として算出するようにしても良い。
[0100] 解析装置170から解析結果を受信した測定検査器は、その結果に基づいて、除外されていない重ね合わせ誤差測定用マークによる重ね合わせ誤差の測定を行い、必要であれば、その重ね合わせ誤差を、上述のようにして算出された位置ずれ量で補正する。」

図1は、以下のとおりである。




引用発明の認定
前記アで摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1の実施形態に係るデバイス製造・処理システム1000として、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。

<引用発明>
「工場内生産管理メインホストシステム600と、露光セル700と、搬送ライン800と、デバイス製造・処理装置群900と、露光工程管理コントローラ160と、解析装置170とを備え、([0015])
工場内生産管理メインホストシステム600は、デバイス製造・処理システム1000全体の状態を把握し、露光セル700、搬送ライン800、デバイス製造・処理装置群900、管理コントローラ160、解析装置170を統括制御するメインホストコンピュータであり、([0016])
露光セル700は、複数の露光装置100、101と、複数のトラック200と、複数の測定検査器120、121と、搬送ライン140とを備え、([0018])
露光装置100、101は同じ機種であり、([0019])
トラック200内には、レジスト塗布処理を行うコータ、現像処理を行うデベロッパ、PEB処理を行うPEB装置などを備えるコータ・デベロッパ(C/D)110が設けられており、([0048])
測定検査器120、121は、ウェハWを対象とする種々の測定検査を行うことが可能な複合的な測定検査器であり、([0052])
露光セル700内の搬送ライン140は、露光装置100、101、C/D110、測定検査器120、121の間を、ウェハW毎に搬送可能であり、([0055])
測定検査器は、ウェハW上の重ね合わせ誤差測定用マークの測定を行い、([0097])
ショット領域SAには、多数の重ね合わせ誤差測定用マークが形成されているため、形成状態が良好でないマークについては、測定対象から除外することができ、([0098])
測定検査器は、除外されていない重ね合わせ誤差測定用マークによる重ね合わせ誤差の測定を行う、([0100])
半導体素子等を製造するためのデバイス製造・処理システム1000。([0001]及び[0015])」

(3) 本件補正発明と引用発明との対比・判断
ア 対比分析
(ア) 引用発明の「ウェハW」は、本件補正発明の「基板」に、相当し、以下、
引用発明の「複数の測定検査器120、121」は、本件補正発明の「複数の計測装置」に、
引用発明の「搬送ライン140」は、本件補正発明の「搬送システム」に、
引用発明の「工場内生産管理メインホストシステム600」は、本件補正発明の「制御装置」に、
それぞれ相当する。

(イ) 本件補正発明の「マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システム」及び「計測システム」の発明特定事項について
引用発明の「デバイス製造・処理システム1000」は、「半導体素子等を製造する」ものであるから、マイクロデバイスの製造ラインで用いられるシステムであるといえ、また、「測定検査器120、121」を備えているから、計測システムであるといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。

(ウ) 本件補正発明の「それぞれが基板に対する計測処理を行なう複数の計測装置」の発明特定事項について
引用発明は、「複数の測定検査器120、121」を備え、「測定検査器120、121は、ウェハWを対象とする種々の測定検査を行う」ものである。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。

(エ) 本件補正発明の「前記複数の計測装置の間で前記基板を搬送する搬送システム」の発明特定事項について
本件補正発明の上記発明特定事項は、当該記載からどのような意味か判然としないところ、明細書の【0027】を参酌すると、計測装置1001〜1003のそれぞれとウエハの受け渡しをすることができる搬送システム521が記載されているから、前記複数の計測装置のそれぞれと基板の受け渡しをすることができるシステムを少なくとも含むといえる。そして、引用発明は、「露光セル700内の搬送ライン140は、露光装置100、101、C/D110,測定検査器120、121の間を、ウェハW毎に搬送可能であ」るから、露光セル700内の搬送ライン140は、測定検査器120、121のそれぞれとウェハWの受け渡しをすることができるものといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。

(オ) 本件補正発明の「前記複数の計測装置と前記搬送システムと前記キャリアシステムとを制御可能な制御装置」の発明特定事項について
引用発明は、「工場内生産管理メインホストシステム600は、デバイス製造・処理システム1000全体の状態を把握し、露光セル700、搬送ライン800、デバイス製造・処理装置群900、管理コントローラ160、解析装置170を統括制御するメインホストコンピュータであ」り、また、「露光セル700」は、「複数の測定検査器120、121と、搬送ライン140とを備え」るから、引用発明が備える工場内生産管理メインホストシステム600は、測定検査器120、121と搬送ライン800の統括制御も行っているといえる。
したがって、本件補正発明の「制御装置」と引用発明の「工場内生産管理メインホストシステム600」とは、「前記複数の計測装置と前記搬送システム」「とを制御可能な制御装置」である点で共通する。

(カ) 本件補正発明の「前記複数の計測装置は、基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置を含み、前記第1計測装置は前記基板上の第m層(mは1以上の整数)に形成された複数のマークの位置情報を取得し、」の発明特定事項について
a 引用発明の「複数の測定検査器120、121」は、「ウェハWを対象とする種々の測定検査を行う」ものであるから、「測定検査機120、121」の一つが、本件補正発明の「前記複数の計測装置」が含む「第1計測装置」に相当する。

b(a) 引用発明は、「測定検査器は、ウェハW上の重ね合わせ誤差測定用マークの測定を行」うものであり、「ショット領域SAには、多数の重ね合わせ誤差測定用マークが形成されているため、形成状態が良好でないマークについては、測定対象から除外することができ」、「測定検査器は、除外されていない重ね合わせ誤差測定用マークによる重ね合わせ誤差の測定を行う」ものであるから、測定検査器が測定を行う、測定対象から除外されていない重ね合わせ誤差測定用マークが複数であることは明らかである。
(b) さらに、重ね合わせ誤差を測定するためには、ウェハ上のマークに関する位置情報を取得することは技術常識であるから、上記aの測定検査器120、121の一つは、ウェハW上の重ね合わせ誤差測定用マークの位置情報を取得しているといえる。
(c) したがって、上記aの「測定検査器120、121」の一つは、「基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置」に相当する。

c 引用発明は、「測定検査器は、ウェハ上の重ね合わせ誤差測定用マークの測定を行い」、「測定検査器は、除外されていない重ね合わせ誤差測定用マークによる重ね合わせ誤差の測定を行う」ものであるところ、重ね合わせ誤差測定用マークの測定による重ね合わせ誤差の測定を行う際には、2つの層に形成された重ね合わせ誤差測定用マークの測定を行うことは技術常識である。そして、2つの層にそれぞれ形成された重ね合わせ誤差測定用マークのうち、上記aの「測定検査器120、121」の一つが測定を行う重ね合わせ誤差測定用マークが形成された層が、本件補正発明の「第m層」に相当し、上記bの検討も踏まえると、上記aの「測定検査器120、121」の一つは、ウェハW上の第m層に形成された複数の重ね合わせ誤差測定用マークの位置情報を取得しているといえる。そして、当該複数の重ね合わせ誤差測定用マークが、本件補正発明の「前記第m層に形成された複数のマーク」に相当する。
したがって、上記aの「測定検査器120、121」の一つと、本件補正発明の「第1計測装置」は、「前記基板上の第m層(mは1以上の整数)に形成された複数のマークの位置情報を取得」する点で一致する。

d 上記a〜cから、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。

イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア) 一致点
【一致点】
「マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システムであって、
それぞれが基板に対する計測処理を行なう複数の計測装置と、
前記複数の計測装置の間で前記基板を搬送する搬送システムと、
前記複数の計測装置と前記搬送システムとを制御可能な制御装置と、を備え、
前記複数の計測装置は、基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置を含み、前記第1計測装置は前記基板上の第m層(mは1以上の整数)に形成された複数のマークの位置情報を取得する計測システム。」

(イ) 相違点
【相違点1】
本件補正発明では、「複数の基板を収納したキャリアを設置可能なキャリア載置部を少なくとも一つ有し、前記搬送システムを介して、前記キャリアと複数の前記計測装置との間で基板の分配と回収を行うキャリアシステム」を備えているのに対し、引用発明では、露光セル700内の搬送ライン140は、露光装置100、101、C/D110、測定検査器120、121の間を、ウェハW毎に搬送可能であるものの、当該キャリアシステムを備えるか明らかでない点。

【相違点2】
制御装置につき、本件補正発明では、「キャリアシステム」をも制御可能であるのに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。

【相違点3】
本件補正発明では、「前記第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報は、前記第m層の露光に用いられた露光装置に提供される」のに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。

ウ 相違点に対する判断
以下、上記相違点について検討する。
(ア) 相違点1及び2について
事案にかんがみ、相違点1及び2を合わせて検討する。
a 引用発明は、「露光セル700内の搬送ライン140は、露光装置100、101、C/D110、測定検査器120、121の間を、ウェハW毎に搬送可能であ」ることからして、引用発明は、複数のウェハWを露光セル700に受け入れ、受け入れた複数のウェハWを個別に搬送するものといえる。

b そして、引用発明は、複数のウェハWを扱うものであるから、取扱性を考慮し、ウェハWの所定枚数毎にキャリアに収納することが自然である。

c ところで、複数の基板をキャリアに収納するようにしている基板搬送装置において、複数の基板を収納したキャリアを設置可能なキャリア載置部を少なくとも一つ有し、キャリアから基板を1枚毎に基板を扱う装置に抜き出し、基板を扱う装置からキャリアへ回収するシステムを備えることは、周知技術(必要ならば、特開2009−76587号公報(特に、【0026】、【0040】、【0042】、図1及び図2)及び特開2015−126083号公報(特に、【0031】、【0032】、【0037】、【0063】及び図1)を参照されたい。)である。

d そして、引用発明において、ウエハWの取扱性を向上させるためにキャリアを用いるに際して、前記周知技術を適用して、露光セル700内の搬送ライン140に隣接して、複数のウェハWを収納したキャリアを設置可能なキャリア載置部を少なくとも一つ有し、キャリアから基板を1枚毎に測定検査器120、121に抜き出し、測定検査器120、121から回収するシステムを備えるようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

e 上記dのようにすると、露光セル700において、キャリアから基板を1枚毎に測定検査器120、121に抜き出し、測定検査器120、121から回収するシステムとウェハWの測定検査を行う測定検査器120、121との間に、ウェハW毎に搬送可能である搬送ライン140が設けられることとなる。そうすると、キャリアから基板を1枚毎に測定検査器120、121に抜き出し、測定検査器120、121からキャリアに回収するシステムは、相違点1に係る本件補正発明でいう「前記搬送システムを介して、前記キャリアと複数の前記計測装置との間で基板の分配と回収を行う」ものであるといえ、本件補正発明の「キャリアシステム」に相当することとなる。

f さらに、工場内生産管理メインホストシステム600は、露光セル700を統括制御するものであるから、上記キャリアから基板を1枚毎に測定検査器120、121に抜き出し、測定検査器120、121からキャリアに回収するシステムの制御も行うようにすることはごく自然なことである。

g 以上からすれば、当業者は、引用発明に前記周知技術を適用することにより、相違点1及び2に係る本件補正発明の構成に容易に至るというべきである。

(イ) 相違点3について
a 引用発明は、重ね合わせ誤差の測定を行うものであるところ、重ね合わせ誤差の測定を行った場合に、当業者は、当該重ね合わせ誤差について、所定の活用をすると考えるのが自然である。

b ここで、半導体等素子等のデバイス製造システムにおいて、重ね合わせ誤差を活用する技術として、露光条件を最適化するために、重ね合わせの検査の結果を露光装置にフィードバックする技術は、周知技術(必要ならば、特開2006−128187号公報(特に、【0005】〜【0007】)及び国際公開第2007−049704号(特に、[0102])を参照されたい。)であるから、引用発明において、露光条件を最適化するために、重ね合わせ検査の結果、すなわち、重ね合わせ誤差を露光装置にフィードバックすることは当業者が容易になし得たことである。

c このとき、上記ア(カ)cで説示したように、引用発明が備える測定検査器120、121の一つは、ウェハW上の第m層に形成された複数の重ね合わせ誤差測定用マークの位置情報を取得しているといえ、これにより重ね合わせ誤差の測定を行うのであるから、当該重ね合わせ誤差は、本件補正発明の「前記第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報」に相当することとなる。

d そして、重ね合わせ誤差をフィードバックする先は、第m層を含む2つの層のいずれかを露光した、いずれかの露光装置であることは自明である。そうすると、引用発明において、上記周知技術を適用した結果、フィードバックされる重ね合わせ誤差は、第m層を含む2つの層のいずれかを露光した、いずれかの露光装置にフィードバックされることとなる。このとき、2つの層のうちフィードバックされる露光装置が露光した層が第m層に相当することとなり、相違点3に係る本件補正発明の構成は、引用発明に上記周知技術を適用することにより、必然的に満たされることになる。

(ウ) 総合検討
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の作用効果は、引用発明及び周知技術に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ 審判請求人の主張について
(ア) 審判請求人の主張内容
審判請求人は、以下の旨を主張している。
a 引用発明は、重ね合わせ露光時(下層の露光で形成されたパターン(ショット領域)に対し、対応するパターン(ショット領域を上層において重畳して露光すること)のショット配列をウエハ毎に調整し、オーバーレイ誤差を調整するものであり、第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報を、次の重ね合わせ露光を行う露光装置に送ることを考えこそすれ、当該第m層の露光に用いられた露光装置に送ることは容易に想到できるものではない。
b 本件補正発明は、ある層(第m層)のマークの位置情報を取得し、その情報を当該層(第m層)の露光に用いられた露光装置に提供し、その露光装置固有のショット配列誤差を補正するものである。

(イ) 審判請求人の主張についての検討
上記主張は、以下に説示するとおり、上記ウ(イ)の判断を左右するものではない。
a 重ね合わせ検査の結果を露光装置にフィードバックすることは周知技術であることは上記ウ(イ)bで説示したとおりであり、この結果、第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報を、当該第m層の露光に用いられた露光装置に送ることになることは、上記ウ(イ)dで説示したとおりである。
b 請求人の主張する、「露光装置固有のショット配列誤差を補正する」ことは、本件補正発明の発明特定事項ではないことから、請求項の記載に基づく主張ではない。そして、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項である、「前記第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報は、前記第m層の露光に用いられた露光装置に提供される」ことが、引用発明に周知技術を適用することで当業者が容易になし得たことであることは、上記ウ(イ)で説示したとおりである。
なお、請求人は本件補正の根拠について、審判請求書で明細書【0245】〜【0272】の記載に基づいたものであると主張しており、当該記載(特に、【0262】及び【0266】参照)には、重ね合わせ計測における露光装置へのフィードバックが記載されていることからも、本件補正発明が「露光装置固有のショット配列誤差を補正する」ものに限定されないことは首肯される。
よって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

オ 小括
以上によれば、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正の却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1〜57に係る発明は、本願出願当初の特許請求の範囲の請求項1〜57に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該請求項1の記載は前記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の本願発明に対する拒絶の理由の概略は、以下の理由を含むものである。
理由1.(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1.国際公開第2007/102484号

3 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)イで記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]1(1)に記載した本件補正発明から、「第1計測装置」について「前記基板上の第m層(mは1以上の整数)に形成された複数のマークの位置情報を取得し、前記第m層に形成された複数のマークの位置情報に基づいて求められる情報は、前記第m層の露光に用いられた露光装置に提供される」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)ウ及びオに記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-11-16 
結審通知日 2023-11-21 
審決日 2023-12-04 
出願番号 P2021-082242
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 575- Z (G03F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 波多江 進
特許庁審判官 山村 浩
野村 伸雄
発明の名称 計測システム及び基板処理システム、並びにデバイス製造方法  
代理人 西澤 和純  
代理人 小林 淳一  
代理人 大浪 一徳  

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