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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1406430 |
総通号数 | 26 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-12-16 |
確定日 | 2024-01-11 |
事件の表示 | 特願2018−40083「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和元年9月12日出願公開、特開2019−150506〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年3月6日の出願であって、令和3年2月19日に手続補正書が提出され、同年12月16日付けで拒絶の理由が通知され、令和4年2月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月7日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年8月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月22日付け(送達日:同年12月6日)で、同年8月8日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年12月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和5年8月2日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年9月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるとおりのものであると認められ、当審で分説し、AからGの符号を付与すると、次のとおりのものである。 「【請求項1】 A 所定の演出要素が段階的にステップアップし、当否判定結果が遊技者に報知されるよりも前に当該ステップアップが停止して、当該ステップアップが停止した段階により当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆されるステップアップ演出を実行することが可能な遊技機であって、 B 前記ステップアップ演出は、 X段階(Xは0を除く自然数である)にあることを示すX段階画像が表示された状態の後、 ステップアップの発生を示す進行演出が発生した上で、 X+1段階にあることを示すX+1段階画像が表示された状態に移行する ものであり、 C 前記進行演出の態様として、第一進行態様および当該第一進行態様とは異なる第二進行態様が設定されており、 D ある段階にて前記進行演出が発生する場合、当該進行演出が前記第一進行態様であるときよりも、前記第二進行態様であるときの方が、当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高い E ことを特徴とする遊技機。 F ただし、前記第一進行態様および前記第二進行態様のどちらが発生しても、前記X段階にて表示される前記X段階画像、および、前記X+1段階にて表示される前記X+1段階画像は相違ないものとする。 G また、前記進行演出は、前記X段階から前記X+1段階へのステップアップが発生しない場合には実行されず、かつ、前記X+1段階の次の段階であるX+2段階までステップアップが進行することを示す演出ではなく、前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出ではないものとする。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は、請求項1に係る発明に対する以下の拒絶理由を含むものである。 請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2016−2469号公報 引用文献2:特開2018−15637号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明等 1 引用文献1及び引用発明1 (1) 引用文献1に記載された事項 当審拒絶理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016−2469号公報(平成28年1月12日公開。以下「引用文献1」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。 「【0001】 本発明は、ステップアップ演出が実行可能な遊技機に関する。」 「【0028】 ステップアップ演出は、当否判定手段による大当たりの当否判定結果を示唆する演出である。具体的には、複数段階に設定された演出がどの段階まで進行するか、すなわち「演出の進行の程度」により、遊技者に対し当否判定結果を示唆する(いわゆる大当たり期待度を示す)ものである。」 「【0029】 ・ステップアップ演出の構成 本実施形態では、ステップアップする対象として、一または複数種のストーリー(動画)が設定されている。かかるストーリーが複数段階に区切られており、どの段階まで進行するかによって、当否判定結果が大当たりとなる蓋然性が異なる。図2に示すように、本実施形態では、各種ストーリーは四段階(エピソード1〜4)に区切られている。そして、本実施形態では、演出が第一段階まで進行したとき(ステップアップしなかったとき)は大当たりとなる確率(トータルの大当たり期待度)が10%、第二段階まで進行したときは大当たりとなる確率が20%、第三段階まで進行したときは大当たりとなる確率が50%、第四段階(最終段階)まで進行したときは大当たりとなる確率が75%となるように、演出が進行すればするほど、大当たりとなる確率が高まるように設定される。ただし、これはあくまで例示である。例えば、演出が第一段階まで進行したとき(ステップアップしなかったとき)に大当たりとなる確率が、第二段階まで進行したときに大当たりとなる確率よりも高くなるようにしてもよい。つまり、必ずしも、演出が進行すればするほど、大当たりとなる蓋然性が高くなるように設定しなくてもよい。また、例えば、演出が最終段階まで進行したときには大当たりとなる確率が100%となるように設定してもよい。 【0030】 このように演出が段階的に進行していくステップアップ演出において、各段階の演出が実行されている、すなわち各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるようにして複数の予告画像20が表示される。各予告画像20には、その後の演出の進行を示唆する表示がなされる。後述するように、表示される複数の予告画像20の種類によって、大当たり期待度がその都度変化することとなるが、ステップアップ演出がどの段階まで進行したかによって示唆される上記各段階の大当たり期待度は、平均値が上記のようになるように設定されている。本実施形態では、予告画像20として表示される画像として、大きく分けて二種類の画像を含む。一種類は「ステップアップ演出の今後の進行の程度を示唆する」ものであり、もう一種類は「ステップアップ演出終了後に移行する演出の内容を示唆する」ものである。 【0031】 「ステップアップ演出の今後の進行の程度を示唆する」画像(進行程度示唆画像)は、発生したステップアップ演出の進行に関する内容を表示したものである。図3に示すように、本実施形態では、「NEXT」と「NEXT+」という画像が表示される可能性がある。後述するように「NEXT」は、次段階の演出に進行する(少なくとも一段階ステップアップする)ことを示すものであり、「NEXT+」は次々段階の演出に進行する(少なくとも二段階ステップアップする)ことを示すものである。なお、三段階ステップアップすることを示す画像が表示される可能性があってもよい。つまり、次段階の演出に進行することを示す画像以外に、二段階先以降の演出に進行することを示すものが設定されていればよい。」 「【0040】 第一段階の演出が実行されている際、識別図柄40の変動は継続しつつ複数の予告画像20が変動表示される。具体的には、識別図柄40の変動表示中に所定の大きさの枠画像30が表示され、当該枠画像30内において複数の予告画像20が横方向に沿ってスクロールするようにして変動表示される(図5(c)参照)。この変動表示は、第一段階の演出(エピソード1の動画)に重なるようになされる。当該変動スピードは、第一段階の演出中に遊技者が全ての予告画像20を順次視認することができるように設定される。本実施形態では、四つの予告画像20が変動表示される。そして次段階に進む場合、複数の予告画像20は、枠画像30とともに一体的に上下方向に沿って移動する。つまり、複数の予告画像20は、枠画像30の移動に伴って変動する方向と異なる方向に一体的に移動する。本実施形態では、複数の予告画像20を変動表示しながら一体となって表示装置10の表示画面を上から下に向かって移動するように表示される(図5(c)〜(e)参照)。 【0041】 このように、複数の予告画像20は次段階に進む場合、横方向に沿ってスクロールするように変動しながら、一体となって下方向に沿って移動する。ここで、本実施形態では、変動表示される複数の予告画像20のいずれもが停止しなかった場合(予告画像20が確定停止しなかった場合)、ステップアップ演出におけるある段階の演出が、次段階の演出に進行するように構成されている(図5(e)(d)参照)。いずれの予告画像20も停止しない場合、複数の予告画像20が一体となって移動し、表示装置10の表示画面を横断するように表示される。つまり、本実施形態では、複数の予告画像20は、横方向に変動しながら一体となって表示画面の上側縁から下側縁に向かって移動する(表示画面を上から下に横断する)。一体となって移動する予告画像20が表示画面を横断する前の所定のタイミングおいて、複数の予告画像20の変動(スクロール)の態様は、当該複数の予告画像20のうちのいずれかが停止しそうな態様となる(図5(d)参照)。つまり、一体となって移動する予告画像20が表示画面を横断する前の所定のタイミングにおいて、複数の予告画像20の変動のスピードを低下させることで、いずれかの予告画像20で停止させる場合はそのまま停止し、次段階に進む場合であってもいずれかの予告画像20が停止するのではないかという印象を遊技者に与える。 【0042】 ここで、本実施形態では、変動する複数の予告画像20に、上述した「NEXT」や「NEXT+」といった「ステップアップ演出の今後の進行の程度を示唆する」ものが多く含まれていればいるほど、次段階の演出に進行する蓋然性(確率)が高まるように設定されている。つまり、本実施形態では、変動表示される複数の予告画像20のいずれもがある段階の演出で停止しなかった場合に次段階の演出に進行するように設定されているところ、変動表示される複数の予告画像20に含まれる「ステップアップ演出の今後の進行の程度を示唆する」ものの数によって、その期待度を示唆する構成である。 【0043】 そして、本実施形態では、一体となって移動する予告画像20が表示画面を横断する前の所定のタイミングにおいて、複数の予告画像20の変動(スクロール)の速度が低下し、いずれかの予告画像20が停止(確定表示)しそうになる。図7に示すように、この停止しそうになる画像が「NEXT」である場合(図7(b)参照)には、次段階の演出に進行することが確定するように(すなわち、いずれの予告画像20も停止せずに、一体となって移動する予告画像20が表示画面を横断する)設定される。例えば、第一段階の演出(エピソード1)で「NEXT」が停止しそうになれば第二段階の演出(エピソード2)に進行する。一方、停止しそうになる画像が「NEXT+」である場合(図7(b)に示した画像「NEXT」が「NEXT+」である場合)には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行することが確定するように設定される。例えば、第一段階の演出(エピソード1)で「NEXT+」が停止しそうになれば第三段階の演出(エピソード3)まで進行することが確定する。このように、本実施形態では、複数の予告画像20のうちいずれの予告画像20も停止しなかった場合に次段階の演出に進行することとしているところ、停止しそうな予告画像20の種類によって次段階の演出に進行するか否か、さらに次段階の演出に進行するかどうかを示唆する構成としている。なお、停止しそうな予告画像20が、「ステップアップ演出の今後の進行の程度を示唆する」ものでない場合、例えば「ステップアップ演出終了後に移行する演出の内容を示唆する」ものである場合であっても、いずれの予告画像20も停止しなければ、次段階の演出に進行することとなる。」 (2) 引用文献1の記載より認定できる事項 段落【0031】には、「なお、三段階ステップアップすることを示す画像が表示される可能性があってもよい。」と記載されていることから、「三段階ステップアップすることを示す画像が表示される可能性」の存在が記載されており、また、段落【0043】には、「一方、停止しそうになる画像が「NEXT+」である場合(図7(b)に示した画像「NEXT」が「NEXT+」である場合)には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行することが確定するように設定される。」という記載があることから、これらの記載から、「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示された場合には、「次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行し、その後さらに次段階の演出に進行するように設定される」点(以下「認定事項ア」という。)が認定できる。 (3) 引用発明1 上記(1)に摘記した引用文献1の記載事項、及び、上記(2)における認定事項より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。なお、a等の符号は、本願発明の構成A等に概ね対応させて当審にて付与した。 「a 複数段階に設定された演出がどの段階まで進行するか、すなわち「演出の進行の程度」により、遊技者に対し当否判定結果を示唆する(【0028】)ステップアップ演出が実行可能な遊技機であって(【0001】)、 b ステップアップする対象として、複数種のストーリー(動画)が設定され、かかるストーリーが複数段階に区切られており、どの段階まで進行するかによって、当否判定結果が大当たりとなる蓋然性が異なり(【0029】)、 各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるようにして複数の予告画像20が表示され(【0030】)、 変動表示される予告画像20が確定停止しなかった場合、ステップアップ演出におけるある段階の演出が、次段階の演出に進行するように構成され(【0041】)、 cd 予告画像20として(【0030】)、次段階の演出に進行することを示すものである「NEXT」と、次々段階の演出に進行することを示すものである「NEXT+」と、「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示される可能性があり(【0031】)、 f いずれの予告画像20も停止せずに、第一段階の演出(エピソード1)で「NEXT」が停止しそうになれば第二段階の演出(エピソード2)に進行し、停止しそうになる画像が「NEXT+」である場合には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行することが確定するように設定され(【0043】)、停止しそうになる画像が「三段階ステップアップすることを示す画像」である場合には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行し、その後さらに次段階の演出に進行するように設定される(【0043】、認定事項ア) e 遊技機。」 2 引用文献2及び引用文献2記載事項 (1) 引用文献2に記載された事項 当審拒絶理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018−15637号公報(平成30年2月1日公開。以下「引用文献2」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、パチンコ機やスロットマシンに代表される遊技機に関するものである。」 「【0009】 以下、パチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)の一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1はパチンコ機10の正面図であり、図2は、後述する外枠11に対して内枠12と前面枠セット14とを開放した状態を示す斜視図である。」 「【0137】 ここで、図28を参照して、本実施の形態のパチンコ機10の特徴部分でもあるチャンス目について説明する。本実施の形態のパチンコ機10では、連続演出が実行可能に構成されている。即ち、例えば、複数の変動表示が待機されている状況において、最後に待機された変動表示で大当たりが発生する場合や、ハズレの変動表示の一部において、大当たりが発生し得る変動表示の前に待機されていた変動表示において大当たりが期待できる演出(例えば、期待度の高いリーチ表示)を実行可能に構成されている。このように構成することによって、複数の変動表示に渡る長期間において遊技者の期待感を向上させることで、遊技性の向上を図ることができる。また、本実施の形態では、遊技者に予め特定の図柄(即ち、チャンス目)で停止した場合に大当たりの期待感が持てることを示唆しておき、連続演出を行う際に、連続演出中の変動表示を特定の図柄(チャンス目)で停止させ易くすることで、遊技者の期待感を向上させるように構成されている。 【0138】 図28は、7つの代表的なチャンス目を模式的に表した図である。まず、図28(a)を参照して第1のチャンス目について説明すると、左図柄列42aにおいて、上段に第1数値図柄、中段に第2数値図柄、下段に第1数値図柄が停止図柄として表示されればチャンス目となる。なお、左図柄列42aにおいて上記第1のチャンス目が出現した場合には、中・右図柄列42b,42cに表示される停止図柄はいずれの図柄でも良いので、「ANY」と表示している。本実施の形態のパチンコ機10では、大物図柄表示装置42において1の図柄列に対して3の図柄を表示可能としており、この第1のチャンス目のように、大物図柄表示装置42のいずれかの図柄列42a〜42cの表示可能領域のすべてにおいて特定の主図柄(例えば、第1数値図柄及び第2数値図柄)が現出すれば大当たりの期待が持てるチャンス目とすることで、各図柄列42a〜42c毎のそれぞれにおける変動において新たな遊技性を付与することができる。 【0139】 図28(b)を参照して第2のチャンス目について説明すると、いずれかのラインL1〜L5上に、第1数値図柄、第2数値図柄、又は、「2」の数字を付した特別図柄がいずれの組み合わせでも停止図柄として表示されればチャンス目となる。第1のチャンス目のように、1のいずれかの図柄列42a〜42cの表示可能領域のすべてにおいて特定の図柄が停止すればチャンス目とすると共に、いずれかのラインL1〜L5上に第1のチャンス目を構成する図柄が一直線上に停止した場合に第2のチャンス目とすることによって、第1のチャンス目と第2のチャンス目とを関連付けることができ、遊技者に遊技性を理解させ易くすることができる。 【0140】 図28(c)を参照して第3のチャンス目について説明すると、左図柄列42aにおいて、上段に第2数値図柄、中段に「1」の数字を付した特別図柄、下段に「2」の数字を付した特別図柄が表示されると共に、更に、右図柄列42cにおいて、上段又は下段に第1数値図柄、第2数値図柄、又は、「2」の数字を付した特別図柄のいずれかが停止図柄として表示されればチャンス目となる。なお、中図柄列42bにおいて上記第3のチャンス目が出現した場合には、中図柄列42bに表示される停止図柄はいずれの図柄でも良いので、「ANY」と表示している。 【0141】 図28(d)を参照して第4のチャンス目について説明すると、右図柄列42cにおいて、上段に「2」の数字を付した特別図柄、中段に「1」の数字を付した特別図柄、下段に第2数値図柄が停止図柄として表示されればチャンス目となる。なお、右図柄列42cにおいて上記第4のチャンス目が出現した場合には、左・中図柄列42a,42bに表示される停止図柄はいずれの図柄でも良いので、「ANY」と表示している。本実施の形態では、図28(b)に示される第2のチャンス目と、図28(d)に示される第4のチャンス目が現出した場合には、1の変動表示において、2のチャンス目を現出させつつ、3のリーチ表示(所謂、トリプルリーチ)を現出させることができるので、遊技者にその変動表示における3のリーチ表示による大当たりへの期待感と、2のチャンス目が現出したことによって以降に実行される変動表示に対する期待感とを同時に付与することができるので、遊技性を向上させることができる。 【0142】 図28(e)を参照して第5のチャンス目について説明すると、左図柄列42aにおいて、上段に「4」の数字を付した特別図柄、中段に「3」の数字を付した特別図柄、下段に「4」の数字を付した特別図柄が表示されると共に、中図柄列42bにおいて、上・下段に副図柄、中段に「3」の数字を付した特別図柄が停止図柄として表示されればチャンス目となる。なお、左・中図柄列42a,42bにおいて上記第5のチャンス目が出現した場合には、右図柄列42cに表示される停止図柄はいずれの図柄でも良いので、「ANY」と表示している。 【0143】 図28(f)を参照して第6のチャンス目について説明すると、左図柄列42aにおいて、上段に「4」の数字を付した特別図柄、中段に「3」の数字を付した特別図柄、下段に「4」の数字を付した特別図柄が表示されると共に、中図柄列42bにおいて、上・下段に副図柄、中段に「4」の数字を付した特別図柄が停止図柄として表示されればチャンス目となる。なお、左・中図柄列42a,42bにおいて上記第6のチャンス目が出現した場合には、右図柄列42cに表示される停止図柄はいずれの図柄でも良いので、「ANY」と表示している。 【0144】 図28(g)を参照して第7のチャンス目について説明すると、左図柄列42aにおいて、上段に「5」の数字を付した特別図柄、中段に副図柄、下段に「5」の数字を付した特別図柄が表示されると共に、中図柄列42bにおいて、上・下段に副図柄、中段に「5」の数字を付した特別図柄が停止図柄として表示されればチャンス目となる。なお、左・中図柄列42a,42bにおいて上記第7のチャンス目が出現した場合には、右図柄列42cに表示される停止図柄はいずれの図柄でも良いので、「ANY」と表示している。」 「【0154】 次に、図30を参照して、本実施の形態のパチンコ機10の特徴部分でもあるステップアップ予告について説明する。本実施の形態では、変動表示の開始時に、該変動表示において大当たりの付与する確率を示唆する予告表示機能が搭載されている。ステップアップ予告には、通常に表示されている背景を利用して表示しており、通常時に背景において表示されている2の女神像のそれぞれの水瓶から流れ出ている水が止まる水止め予告と、その水止め予告から発展して2の女神像がそれぞれ画面正面を向く振り向き予告と、その振り向き予告から発展して2の女神像の間に虹がかかる虹予告と、その虹予告から発展して2の女神像の後ろ側に表示された池の中を魚群が泳ぐ魚群予告と、その魚群予告から発展して2の女神像がそれぞれ黄金色になる黄金予告との5種類のステップアップ予告が用意されている。現出するステップアップ予告に応じて大当たりの信頼度が決められており、通常より水止め予告、水止め予告より振り向き予告、振り向き予告より虹予告、虹予告より魚群予告、魚群予告より黄金予告が現出した方が大当たりを期待できる仕様となっている。」 「【0161】 このように構成することで、ステップアップ予告を用いる共に、そのステップアップ予告が発展すればするほど、遊技者の大当たりへの期待度を高めることができるので、変動表示が実行されている様々なタイミングにおいて遊技者の期待感を煽ることができ、遊技性を向上させることができる。 【0162】 また、本実施の形態では、変動表示においてステップアップ予告を現出させる場合に、該変動表示の停止態様においてチャンス目を現出するように構成されている。従って、ステップアップ予告の段階に応じてチャンス目の出現回数を遊技者に示唆することができると共に、予告図柄と変動表示の停留図柄との演出を関連付けて複数回の変動表示を実行することで、複数回の変動表示における遊技性を向上させることができる。 【0163】 更に、本実施の形態のパチンコ機10では、チャンス目の連続現出回数が多ければ多い程、ステップアップ予告の演出内容も変化するように構成されている。具体的には、例えば、待機中の変動表示が4つあると共に4つ目に待機された変動表示において確変大当たりが現出する場合に、1つ目に待機された変動表示ではいずれかのチャンス目の停留態様を現出させると共に図30(b)に示す水止め予告が現出する変動パターンを実行し、2つ目に待機された変動表示ではいずれかのチャンス目の停留態様を現出させると共に図30(c)に示す振り向き予告が現出する変動パターンを実行し、3つ目に待機された変動表示ではいずれかのチャンス目の停留態様を現出させると共に図30(d)に示す虹予告が現出する変動パターンを実行し、4つ目に待機された変動表示ではいずれかの確変大当たりの停留態様を現出させると共に図30(e)に示す魚群予告又は黄金予告が現出する変動パターンを実行するように構成する。このように、連続演出における予告図柄と変動表示の停留図柄との演出を関連付けて複数回の変動表示を実行することで、複数回の変動表示における遊技性を向上させることができる。」 「【図28】 」 「【図30】 」 (2) 引用文献2の記載より認定できる事項 引用文献2の【図28】を参照すると、7種類のチャンス目が図示されており、それぞれのチャンス目が異なることが看取できることから、「それぞれのチャンス目が異なるものであること」(以下「認定事項イ」という。)が認定できる。 (3) 引用発明2 上記(1)に摘記した引用文献2の記載事項、及び、上記(2)における認定事項より、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。なお、a等の符号は、本願発明の構成A等に概ね対応させて当審にて付与した。 「a 現出するステップアップ予告に応じて大当たりの信頼度が決められている(【0154】)パチンコ機10であって(【0009】)、 bcfg 変動表示においてステップアップ予告を現出させる場合に、該変動表示の停止態様においてチャンス目を現出するように構成され(【0162】)、 チャンス目には、それぞれ異なる、第1のチャンス目、第2のチャンス目、第3のチャンス目、第4のチャンス目、第5のチャンス目、第6のチャンス目、及び、第7のチャンス目があり(【0138】〜【0144】、図28、認定事項イ)、 ステップアップ予告には、水止め予告と、振り向き予告と、虹予告と、魚群予告と、黄金予告との5種類のステップアップ予告が用意され(【0154】)、 水止め予告が現出し、いずれかのチャンス目の停留態様を現出させると振り向き予告が現出し、いずれかのチャンス目の停留態様を現出させると虹予告が現出し、いずれかの確変大当たりの停留態様を現出させると魚群予告又は黄金予告が現出するように構成された(【0163】)、 e パチンコ機10(【0009】)。」 3 周知技術を示す文献の記載及び周知技術 (1) 周知文献1及び周知文献1記載事項 本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014−64683号公報(平成26年4月17日公開。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、複数の変動表示領域で各々を識別可能な複数種類の識別情報の変動表示を行い、変動表示の表示結果があらかじめ定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利価値を付与するパチンコ機やスロット機などの遊技機に関する。」 「【0226】 図30および図31に予告パターン決定テーブルを用いる場合には、仮停止時の仮停止図柄(「1」「1」「2」または「6」「6」「7」:以下、チャンス目ともいう。)が決定されるとともに、演出態様として、いずれの仮停止時にいずれの演出図柄の近傍にいずれの種類のキャラクタ画像が表示されるのかが決定される。なお、「キャラクタA」はキャラクタ画像9aのことであり、「キャラクタB」はキャラクタ画像9bのことである。」 「【0236】 また、仮停止図柄が「6」「6」「7」である場合には、仮停止図柄が「1」「1」「2」である場合に比べて大当りに対する期待度が高い。」 上記の記載より、周知文献1には、 「チャンス目として「1」「1」「2」または「6」「6」「7」が決定される遊技機において、チャンス目が「6」「6」「7」である場合には、チャンス目が「1」「1」「2」である場合に比べて大当りに対する期待度が高い点。」(以下「周知文献1記載事項」という。) が記載されていると認められる。 (2)周知文献2及び周知文献2記載事項 本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011−177232号公報(平成23年9月15日公開、以下「周知文献2」という。)には、ぱちんこ遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、大当たり抽選をおこなうと、表示画面上で複数の図柄を変動させた後に停止させて、停止時の各図柄の組み合わせにより大当たり抽選の抽選結果を示唆するぱちんこ遊技機に関する。」 「【0082】 また、ぱちんこ遊技機100は、1回、特別図柄を変動させて停止させるまでの間に、複数回、演出図柄の変動および停止を繰り返すこともできる。以下、このように、1回、特別図柄を変動させて停止させるまでの間に、複数回、演出図柄の変動および停止を繰り返す演出を「疑似連演出」という。疑似連演出については図4などを用いて後述する。ぱちんこ遊技機100は、疑似連演出において演出図柄の変動を再開させる場合、その前には、いわゆる「チャンス目」と呼ばれる特定の出目で各演出図柄を停止させる。」 「【0092】 また、ぱちんこ遊技機100は、チャンス目を構成しているすべてのチャンス図柄が、それぞれどの種類の識別図柄に重ねられているかによって期待度をあらわしてもよいし、一つのチャンス図柄について当該チャンス図柄がどの種類の識別図柄上に重ねられているかによって期待度をあらわしてもよい。たとえば、本実施の形態では、左演出図柄についてチャンス図柄が重ねられた識別図柄の種類により期待度をあらわすものとする。複数の演出図柄が期待度に関連する場合には期待度を多段階的に表現でき、一つの演出図柄のみが期待度に関連する場合には遊技者にわかり易く期待度を示唆することができる。」 上記の記載より、周知文献2には、 「「チャンス目」と呼ばれる特定の出目で各演出図柄を停止させるぱちんこ遊技機において、チャンス目を構成しているすべてのチャンス図柄が、それぞれどの種類の識別図柄に重ねられているかによって期待度をあらわす点。」(以下「周知文献2記載事項」という。) が記載されていると認められる。 (3) 周知技術 上記(1)に記載した「周知文献1記載事項」及び上記(2)に記載した「周知文献2記載事項」より、以下の事項が本願の出願前における周知技術であると認められる。 「複数のチャンス目が存在する遊技機において、チャンス目により期待度を異ならせることを可能とした点。」 第5 引用発明1に基づく進歩性についての検討 1 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (1) 本願発明の構成Aについて 引用発明1のaにおける「ステップアップ演出が実行可能」なことは、本願発明の構成Aにおける「所定の演出要素が段階的にステップアップ」することに相当する。 また、引用発明1のaにおける「複数段階に設定された演出がどの段階まで進行するか、すなわち「演出の進行の程度」」は、本願発明の構成Aにおける「当該ステップアップが停止して、当該ステップアップが停止した段階」に相当する。 そして、引用発明1のaにおける「当否判定結果」の「示唆」は、当否判定結果の報知よりも前に行われることが当業者にとって明らかであるから、「遊技者に対し当否判定結果を示唆する」ことは、本願発明の構成Aにおける「当否判定結果が遊技者に報知されるよりも前に」「当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆される」ことに相当する。 してみると、引用発明1のaにおける「複数段階に設定された演出がどの段階まで進行するか、すなわち「演出の進行の程度」により、遊技者に対し当否判定結果を示唆する」「ステップアップ演出が実行可能な遊技機」は、本願発明の構成Aにおける「所定の演出要素が段階的にステップアップし、当否判定結果が遊技者に報知されるよりも前に当該ステップアップが停止して、当該ステップアップが停止した段階により当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆されるステップアップ演出を実行することが可能な遊技機」に相当する。 よって、引用発明1は、本願発明の構成Aに相当する構成を有する。 (2) 本願発明の構成Bに関して 引用発明1のbにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき」は、本願発明の構成Bにおける「X段階(Xは0を除く自然数である)にあることを示すX段階画像が表示された状態」に相当する。 また、引用発明1のbにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるように」「表示され」た「変動表示される予告画像20が確定停止しな」いことは、本願発明の構成Bにおける「進行演出」に相当し、引用発明1のbにおける「その動画に重なるようにして複数の予告画像20が表示され」ることは、本願発明の構成Bにおける「ステップアップの発生を示す進行演出が発生」することに相当する。 そして、引用発明1のbにおける「変動表示される予告画像20が確定停止しなかった場合、ステップアップ演出におけるある段階の演出が、次段階の演出に進行する」ことは、本願発明の構成Bにおける「X+1段階にあることを示すX+1段階画像が表示された状態に移行する」ことに相当する。 してみると、引用発明1のbにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるようにして複数の予告画像20が表示され」、「変動表示される予告画像20が確定停止しなかった場合、ステップアップ演出におけるある段階の演出が、次段階の演出に進行するように構成され」ることは、本願発明の構成Bにおける「前記ステップアップ演出は、X段階(Xは0を除く自然数である)にあることを示すX段階画像が表示された状態の後、ステップアップの発生を示す進行演出が発生した上で、X+1段階にあることを示すX+1段階画像が表示された状態に移行するものである」ことに相当する。 よって、引用発明1は、本願発明の構成Bに相当する構成を有する。 (3) 本願発明の構成Cに関して 引用発明1のcdにおける「予告画像20として」「次段階の演出に進行することを示すものである「NEXT」と、次々段階の演出に進行することを示すものである「NEXT+」と、「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示される可能性があ」ることにおいて、「NEXT」が表示されること、「NEXT+」が表示されること、及び「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示されることは、それぞれ異なる演出の態様といえる。 そして、上記(2)で検討したように、引用発明1のbにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるように」「表示され」た「変動表示される予告画像20が確定停止しな」いことは、本願発明の構成Bにおける「進行演出」に相当することから、引用発明1のb及びcdにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるように」「表示され」た「変動表示される予告画像20」が「確定停止しな」い場合において、「予告画像20として」「次段階の演出に進行することを示すものである「NEXT」と、次々段階の演出に進行することを示すものである「NEXT+」と、「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示される可能性があ」ること、すなわち、「予告画像20として」異なる画像が存在することは、本願発明の構成Cにおける「前記進行演出の態様として、第一進行態様および当該第一進行態様とは異なる第二進行態様が設定されて」いることに相当する。 よって、引用発明1は、本願発明の構成Cに相当する構成を有する。 (4) 本願発明の構成Dに関して 引用発明1のcdにおける「予告画像20として」「次々段階の演出に進行することを示すものである「NEXT+」又は「「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示される」場合は、「次段階の演出に進行することを示すものである「NEXT」が「表示される」場合よりも次段階以降まで「ステップアップ演出が」「進行することを示す」ものであるところ、技術常識を踏まえれば、次段階の演出に進行する場合に比べて、次々段階の演出に進行する場合や三段階ステップアップする場合の方が、「当否判定結果が大当たりとなる蓋然性が高い」といえる。 してみると、引用発明1のb及びcdにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるように」「表示され」た「変動表示される予告画像20が確定停止しな」い場合において、「予告画像20として」、「次段階の演出に進行することを示すものである「NEXT」が「表示される」場合は、本願発明の構成Dにおける「第一進行態様」に相当し、引用発明1のb及びcdにおける同「予告画像20として」「次々段階の演出に進行することを示すものである「NEXT+」が「表示される」場合、又は、「予告画像20として」「「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示される」場合は、本願発明の構成Dにおける「当該進行演出が前記第一進行態様であるときよりも、」「当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高い」「第二進行態様」に相当する。 したがって、引用発明1のb及びcdにおける、「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるように」「表示され」た「変動表示される予告画像20が確定停止しな」い場合において、「予告画像20として」「次段階の演出に進行することを示すものである「NEXT」と、次々段階の演出に進行することを示すものである「NEXT+」と、「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示される」場合があることは、本願発明の構成Dにおける「ある段階にて前記進行演出が発生する場合、当該進行演出が前記第一進行態様であるときよりも、前記第二進行態様であるときの方が、当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高い」ことに相当する。 よって、引用発明1は、本願発明の構成Dに相当する構成を有する。 (5) 本願発明の構成Eに関して 引用発明1のeにおける「遊技機」は、本願発明の構成Eにおける「遊技機」に相当する。 よって、引用発明1は、本願発明の構成Eに相当する構成を有する。 (6) 本願発明の構成Fに関して 引用発明1のcdには「NEXT」は「次段階の演出に進行することを示すものである」ことが特定されており、また、引用発明1のfには「停止しそうになる画像が「NEXT+」である場合には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行すること」が特定され、引用発明1のfには「停止しそうになる画像が「三段階ステップアップすることを示す画像」である場合には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行し、その後さらに次段階の演出に進行する」ことが特定されていることから、引用発明1のbにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるようにして複数の予告画像20が表示され」た場合において、いずれの予告画像20が表示された場合でも、まず「次段階の演出に進行」するものと認められ、そのことは、本願発明の構成Fにおける「前記第一進行態様および前記第二進行態様のどちらが発生しても、」「前記X+1段階にて表示される前記X+1段階画像は相違ないものとする」ことに相当する。 同様に、引用発明1の上記「NEXT」、「NEXT+」や「三段階ステップアップすることを示す画像」が表示される前には、同じX段階にあるから、本願発明の構成Fにおける「前記第一進行態様および前記第二進行態様のどちらが発生しても、前記X段階にて表示される前記X段階画像」「は相違ない」ことは明らかである。 してみると、引用発明1のb、cd及びfにおいて、「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるようにして複数の予告画像20が表示され」、「予告画像20として」「「NEXT」が停止しそうになれば」「次段階の演出に進行」し、「停止しそうになる画像が「NEXT+」である場合には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行」し、「停止しそうになる画像が「三段階ステップアップすることを示す画像」である場合には、次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行し、その後さらに次段階の演出に進行する」ことは、本願発明の構成Fにおける「前記第一進行態様および前記第二進行態様のどちらが発生しても、前記X段階にて表示される前記X段階画像、および、前記X+1段階にて表示される前記X+1段階画像は相違ない」ことに相当する。 よって、引用発明1は、本願発明の構成Fに相当する構成を有する。 (7) 本願発明の構成Gに関して 引用発明1のbにおいて「変動表示される予告画像20が確定停止しなかった場合、ステップアップ演出におけるある段階の演出が、次段階の演出に進行するように構成され」ることは、「変動表示される予告画像20が確定停止し」た場合には、「ステップアップ演出におけるある段階の演出が、次段階の演出に進行」しないことであるとともに、上記(2)において検討したように、引用発明のbにおける「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるように」「表示され」た「変動表示される予告画像20が確定停止しな」いことが、本願発明の構成Gにおける「進行演出」に相当するから、ここにおける「変動表示される予告画像20が確定停止し」たことは、本願発明の構成Gにおける「進行演出」が「実行され」ないことに相当する。 そして、その場合に、「前記X段階から前記X+1段階へのステップアップが」「実行され」ないことは明らかである。 また、引用発明1のfにおける「次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行することが確定するように設定され」た「停止しそうになる画像が「NEXT+」である場合」は、本願発明の構成Gにおける「前記X+1段階の次の段階であるX+2段階までステップアップが進行することを示す演出」に相当し、引用発明1のfにおける「次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行することが確定するように設定され」た「停止しそうになる画像が「三段階ステップアップすることを示す画像」である場合」は、本願発明の構成Gにおける「前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出」に相当する。 してみると、引用発明1と本願発明は、「前記進行演出は、前記X段階から前記X+1段階へのステップアップが発生しない場合には実行され」ない点で一致する。 (8) 一致点及び相違点について 上記(1)〜(7)より、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「A 所定の演出要素が段階的にステップアップし、当否判定結果が遊技者に報知されるよりも前に当該ステップアップが停止して、当該ステップアップが停止した段階により当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆されるステップアップ演出を実行することが可能な遊技機であって、 B 前記ステップアップ演出は、 X段階(Xは0を除く自然数である)にあることを示すX段階画像が表示された状態の後、 ステップアップの発生を示す進行演出が発生した上で、 X+1段階にあることを示すX+1段階画像が表示された状態に移行する ものであり、 C 前記進行演出の態様として、第一進行態様および当該第一進行態様とは異なる第二進行態様が設定されており、 D ある段階にて前記進行演出が発生する場合、当該進行演出が前記第一進行態様であるときよりも、前記第二進行態様であるときの方が、当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高い E 遊技機。 F ただし、前記第一進行態様および前記第二進行態様のどちらが発生しても、前記X段階にて表示される前記X段階画像、および、前記X+1段階にて表示される前記X+1段階画像は相違ないものとする。 G’また、前記進行演出は、前記X段階から前記X+1段階へのステップアップが発生しない場合には実行されないものとする。」 そして、両者は、以下の点で相違する <相違点> (構成Gに関して) 進行演出に関して、本願発明は、前記進行演出が、前記X+1段階の次の段階であるX+2段階までステップアップが進行することを示す演出ではなく、前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出ではないものであるとの特定があるのに対して、引用発明1は、本願発明の「進行演出」に相当する、「各段階の動画が表示装置10の表示画面に表示されているとき、その動画に重なるようにして複数の予告画像20が表示され」、「変動表示される予告画像20が確定停止しな」い演出に対して、そのような特定がなされていない点。 2 判断 (1) 相違点についての検討 上記相違点について検討する。 本願発明の構成Gにおいて「前記進行演出は、前記X段階から前記X+1段階へのステップアップが発生しない場合には実行されず、かつ、前記X+1段階の次の段階であるX+2段階までステップアップが進行することを示す演出ではなく、前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出ではないもの」と特定されていることから、「X+4段階までステップアップが進行することを示す進行演出を有していれば、構成Gを充足する。 ところで、ステップアップ演出を行う遊技機において、ステップアップの段階数をどの程度にするかは興趣の向上の観点から当業者が適宜設定し得るものであるところ、ステップアップの段階数を5段階とすることは当業者が適宜になし得ることであり、その場合の進行演出として、4段階(X+4段階まで)ステップアップが進行する進行演出を備えるものとすることも、当業者が適宜になし得る程度のことにすぎない。 (2) 本願発明の奏する効果について 本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果から、当業者が予測することができた程度のものである。 (3) 請求人の意見書における主張に対する反論 請求人は、令和5年9月26日に提出された意見書において、以下の主張を行っている。 「本願発明は、「前記進行演出は、・・・前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出ではない」ことを特定します。 これは、拒絶理由通知に記載されております通り、引用発明1の「三段階ステップアップすることを示す画像」は、「次段階の演出に進行した後さらに次段階の演出に進行し、その後さらに次段階の演出に進行する」ことを示すものであるといえますから、本願発明の進行演出(前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出ではない)と相違します。 少なくともかかる点において本願発明と引用発明1は明確に相違しますので、本願は、両発明が同一であるとする判断を前提とした標記拒絶理由を包含するものではありません。」 しかしながら、上記(1)において検討したとおりであり、請求人の上記の主張は採用できない。 3 小括 よって、本願発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 引用発明2に基づく進歩性についての検討 1 対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 (1) 本願発明の構成Aに関して 引用発明2のaにおける「大当たりの信頼度」は、「大当たり」等の結果の報知よりも前に示唆されるものであることが当業者の技術常識であるから、本願発明の構成Aにおける「当否判定結果が遊技者に報知されるよりも前に」「示唆される」「当否判定結果が当たりとなる蓋然性」に相当する。 また、引用発明2のaにおける「現出するステップアップ予告に応じて大当たりの信頼度が決められている」「ステップアップ予告」は、本願発明の構成Aにおける「所定の演出要素が段階的にステップアップし、」「ステップアップが停止した段階により当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆されるステップアップ演出」に相当する。 してみると、引用発明2のa及びbcfgにおける「現出するステップアップ予告に応じて大当たりの信頼度が決められ」、「ステップアップ予告を現出させる」ことは、本願発明の構成Aにおける「所定の演出要素が段階的にステップアップし、当否判定結果が遊技者に報知されるよりも前に当該ステップアップが停止して、当該ステップアップが停止した段階により当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆されるステップアップ演出を実行すること」に相当する。 そして、引用発明2のaにおける「パチンコ機10」は、本願発明の構成Aにおける「遊技機」に相当する。 よって、引用発明2は、本願発明の構成Aに相当する構成を有する。 (2) 本願発明の構成Bに関して 引用発明2のbcfgにおける「チャンス目を現出する」ことは、本願発明の構成Bにおける「進行演出」に相当する。 そして、引用発明2のbcfgにおける「変動表示においてステップアップ予告を現出させる場合に、該変動表示の停止態様においてチャンス目を現出するように構成され」ることは、本願発明の構成Bにおける「前記ステップアップ演出は、X段階(Xは0を除く自然数である)にあることを示すX段階画像が表示された状態の後、ステップアップの発生を示す進行演出が発生した上で、X+1段階にあることを示すX+1段階画像が表示された状態に移行するものであ」ることに相当する。 よって、引用発明2は、本願発明の構成Bに相当する構成を有する。 (3) 本願発明の構成Cに関して 引用発明2のbcfgにおける「チャンス目には、それぞれ異なる、第1のチャンス目、第2のチャンス目、第3のチャンス目、第4のチャンス目、第5のチャンス目、第6のチャンス目、及び、第7のチャンス目があ」ることは、「チャンス目を現出する」にあたって、複数の異なるチャンス目の停留態様があることであるから、本願発明の構成Cにおける「前記進行演出の態様として、第一進行態様および当該第一進行態様とは異なる第二進行態様が設定されている」ことに相当する。 よって、引用発明2は、本願発明の構成Cに相当する構成を有する。 (4) 本願発明の構成Eに関して 引用発明2のeにおける「パチンコ機10」は、本願発明の構成Eにおける「遊技機」に相当する。 よって、引用発明2は、本願発明の構成Eに相当する構成を有する。 (5) 本願発明の構成F及び構成Gに関して 引用発明2のbcfgにおける「水止め予告が現出し、いずれかのチャンス目の停留態様を現出させると振り向き予告が現出し、いずれかのチャンス目の停留態様を現出させると虹予告が現出」することは、「水止め予告が現出し」た場合に、どのチャンス目の停留態様が現出しても、同じステップアップ予告である「振り向き予告」が現出し、次いで「虹予告」が現出するものであるから、そのことは、本願発明の構成Fにおける「前記第一進行態様および前記第二進行態様のどちらが発生しても、前記X段階にて表示される前記X段階画像、および、前記X+1段階にて表示される前記X+1段階画像は相違ないもの」であることに相当する。 また、引用発明2のbcfgにおいて、「第1のチャンス目、第2のチャンス目、第3のチャンス目、第4のチャンス目、第5のチャンス目、第6のチャンス目、及び、第7のチャンス目」のいずれかが現出した場合において、「振り向き予告」が現出し、次いで「虹予告」が現出するものであるから、そのことは、本願発明の構成Gにおける「前記進行演出は、前記X段階から前記X+1段階へのステップアップが発生しない場合には実行されず、かつ、前記X+1段階の次の段階であるX+2段階までステップアップが進行することを示す演出ではなく、前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出ではない」ことに相当する。 よって、引用発明2は、本願発明の構成F及び構成Gに相当する構成を有する。 (6) 一致点及び相違点について 上記(1)〜(5)より、本願発明と引用発明2とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「A 所定の演出要素が段階的にステップアップし、当否判定結果が遊技者に報知されるよりも前に当該ステップアップが停止して、当該ステップアップが停止した段階により当否判定結果が当たりとなる蓋然性が示唆されるステップアップ演出を実行することが可能な遊技機であって、 B 前記ステップアップ演出は、 X段階(Xは0を除く自然数である)にあることを示すX段階画像が表示された状態の後、 ステップアップの発生を示す進行演出が発生した上で、 X+1段階にあることを示すX+1段階画像が表示された状態に移行する ものであり、 C 前記進行演出の態様として、第一進行態様および当該第一進行態様とは異なる第二進行態様が設定されている E 遊技機。 F ただし、前記第一進行態様および前記第二進行態様のどちらが発生しても、前記X段階にて表示される前記X段階画像、および、前記X+1段階にて表示される前記X+1段階画像は相違ないものとする。 G また、前記進行演出は、前記X段階から前記X+1段階へのステップアップが発生しない場合には実行されず、かつ、前記X+1段階の次の段階であるX+2段階までステップアップが進行することを示す演出ではなく、前記X+1段階の次の段階のさらに次の段階であるX+3段階までステップアップが進行することを示す演出ではないものとする。」 そして、両者は、以下の点で相違する <相違点> (構成Dに関して) 進行演出に関して、本願発明は、ある段階にて前記進行演出が発生する場合、当該進行演出が前記第一進行態様であるときよりも、前記第二進行態様であるときの方が、当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高いのに対して、引用発明2は、本願発明の進行演出に相当する「チャンス目を現出する」ことに関して、チャンス目の停留態様に応じて「当否判定結果が当たりとなる蓋然性」の高低を表すものではない点。 2 判断 (1) 相違点についての検討 上記相違点について検討する。 上記第4の3(3)に示したように、複数のチャンス目が存在する遊技機において、チャンス目により期待度を異ならせることを可能とすることは、本願の出願前における周知技術である。 そして、引用発明2において、異なるチャンス目を現出させるにあたって、上記の周知技術を適用し、チャンス目により期待度を異ならせることによって相違点にかかる本願発明の構成を成すことは、当業者が容易に想到し得たものである。 (2) 本願発明の奏する効果について 本願発明の奏する効果は、引用発明2及び周知技術の奏する効果から、当業者が予測することができた程度のものである。 (3) 請求人の主張について 請求人は、令和5年9月26日に提出された意見書において、以下の主張を行っている。 「本願発明は、「ある段階にて前記進行演出が発生する場合、当該進行演出が前記第一進行態様であるときよりも、前記第二進行態様であるときの方が、当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高い」ことを特定します。」 「ある段階にていずれかのチャンス目が発生した場合の方が他のチャンス目が発生した場合よりも信頼度が高いということは引用文献2には記載されておりません」。 しかしながら、上記2に示したように、チャンス目により期待度を異ならせることは本願の出願前において周知の事項であるから、請求人が主張する「ある段階にていずれかのチャンス目が発生した場合の方が他のチャンス目が発生した場合よりも信頼度が高い」ようにすることは、引用発明2に本願の出願前における周知の事項を適用することにより当業者が容易に想到し得ることであり、その点が特定されたことによって本願発明が進歩性を有するものとは認められず、請求人の上記の主張は採用できない。 3 小括 よって、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、また、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2023-11-08 |
結審通知日 | 2023-11-14 |
審決日 | 2023-11-28 |
出願番号 | P2018-040083 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
長井 真一 |
特許庁審判官 |
眞壁 隆一 ▲高▼橋 祐介 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 弁理士法人上野特許事務所 |