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審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する C08J
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する C08J
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する C08J
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C08J
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C08J
管理番号 1406653
総通号数 26 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-02-22 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2023-09-08 
確定日 2023-11-16 
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第7107323号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第7107323号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜5について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7107323号(請求項の数5。以下「本件特許」という。)に係る出願は、2018年(平成30年)11月20日(優先権主張 平成29年12月22日、平成30年7月26日)を国際出願日とする出願(特願2019−560891号)であって、令和4年7月19日に特許権の設定登録がされたものである。
そして、令和5年9月8日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第7107323号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜5について訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2 訂正の内容
本件訂正審判による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

特許請求の範囲の請求項1に「長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の直角方向の熱収縮率が1%以下であり、」と記載されているのを、「長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の熱収縮率が1%以下であり、」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様の訂正をする。

第3 訂正の適否
1 訂正の目的
請求人は、本件審判請求書において、本件訂正の目的が誤記の訂正である旨主張するので、本件訂正が誤記の訂正を目的とするものであるかどうかについて検討する。

(1)誤記の訂正の要件
誤記の訂正が認められるためには、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載に誤記が存在することが必要である(審判便覧(第19版)(特許庁HP掲載)38−03参照。)。
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すこといい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。

(2)本件訂正が誤記の訂正の要件を満たしているかどうかについて
そこで、本件訂正が誤記の訂正を目的とするものであるかどうかについて検討する。

ア 特許第7107323号の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」及び「本件特許請求の範囲」という。)の記載等
(ア)本件訂正前の特許請求の範囲、すなわち本件特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
プロピレン−エチレンブロック共重合体、及びプロピレン−αオレフィンランダム共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂90〜97重量部に対し、エチレン−プロピレン共重合エラストマーを3〜10重量部を含有し、プロピレン−エチレンブロック共重合体とプロピレン−αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン−αオレフィンランダム共重合体の比率が0〜50重量%の範囲であって、長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の直角方向の熱収縮率が1%以下であり、前記長手方向の降伏応力が150MPa以上250MPa以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。」

(イ)本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

・「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、フィルム中の主成分となるポリオレフィン系樹脂と相溶性に優れるエチレン−プロピレン共重合エラストマーを衝撃吸収剤として使用し、かつ延伸により重合体分子を主に長手方向に配向させるものの、長手方向及び幅方向の熱収縮率を低減させ、かつ前記長手方向の降伏応力を特定の範囲とすることにより、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムのような分子配向軸の歪みが大きい基材フィルムと積層した場合においても、その積層体から得られた包装袋は、直進カット性に優れ、かつ落下時に破袋しにくい、ポリオレフィン系樹脂フィルムを得られることを見いだし、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下の態様を有する。」

・「【0037】
無配向のシートを延伸する方式は特に限定するものではなく、例えばインフレーション方式、ロール延伸方式が使用できるが、配向の制御のし易さからロール延伸方式が好ましい。
無配向のシートを適切な条件で長手方向に延伸することにより、直進カット性が発現する。これは分子鎖が延伸方向に規則的に配列されるためである。本発明においては、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向を長手方向とし、前記長手方向と直角方向を幅方向と呼ぶ。
長手方向の延伸倍率の下限は特に限定されないが好ましくは3.3倍である。これより小さいと降伏応力が低下し、長手方向の引裂強度が大きくなったり、直進カット性が劣ることがある。より好ましくは3.5倍であり、さらに好ましくは3.8倍である。
長手方向の延伸倍率の上限は特に限定されないが好ましくは5.5倍である。これより大きいと過剰に配向が進行し、シールエネルギーが低下し、落下時の耐破袋性が悪化することがある。より好ましくは5.0倍である。」

・「【0044】
(熱収縮率)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の120℃における熱収縮率の上限は20%である。上記を超えると引裂強度が高くなると同時に、ヒートシール時や包装体のレトルト収縮が大きくなり、包装体の外観を損なうことがある。好ましくは17%であり、さらに好ましくは14%である。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の熱収縮率の下限は2%である。これより小さくしようとすると、アニール温度やアニール時間を著しく大きくする必要があるため、耐破袋性や外観が著しく悪化する場合がある。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の熱収縮率の上限は1%である。上記を超えると、長手方向の引裂強度が大きくなったり、あるいは直進カット性に劣る。好ましくは0.5%である。本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の熱収縮率の下限は−5%である。上記未満であると、ヒートシールで伸びが発生し、包装体の外観が悪化する場合がある。好ましくは−2%である。」

・「【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。各実施例で得られた特性は以下の方法により測定、評価した 。評価の際、フィルム製膜の長手方向をMD方向、幅方向をTD方向とした。」

・「【0064】
(3)熱収縮率
ラミネート前のフィルムを120mm四方に切り出した。MD方向(フィルム製膜の流れ方向)、TD方向(MD方向に垂直な方向)それぞれに100mmの間隔となるよう、標線を記入した。120℃に保温したオーブン内にサンプルを吊り下げ、30分間熱処理を行った。標線間の距離を測定し、下記式に従い、熱収縮率を計算した。N=3で測定し、平均値を算出した。
熱収縮率=(熱処理前の標線長−熱処理後の標線長)/熱処理前の標線長×100 (%)」

・「【0105】
【表1】



イ 判断
(ア)本件特許請求の範囲に誤記が存在することについて
本件特許請求の範囲の請求項1の「長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の直角方向の熱収縮率が1%以下であり、」という記載は、「長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり」と記載された直後に「幅方向の直角方向の熱収縮率が1%以下であり」と記載されており、長手方向の熱収縮率の直後に幅方向の直角方向、すなわち、「長手方向」の熱収縮率が記載されていることになることから、技術常識をふまえると誤記であると認める。

(イ)「誤記の訂正」に該当することについて
本件明細書の【0010】には、「長手方向及び幅方向の熱収縮率を低減させ」ること、【0037】には、「本発明においては、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向を長手方向とし、前記長手方向と直角方向を幅方向と呼ぶ」こと、【0044】には、「本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の熱収縮率の上限は1%である」ことが記載され、実施例では、【0061】には、「評価の際、フィルム製膜の長手方向をMD方向、幅方向をTD方向とした」こと、【0064】には、熱収縮率の評価において「MD方向(フィルム製膜の流れ方向)、TD方向(MD方向に垂直な方向)」とすることが記載されるとともに、【表1】では、全実施例1〜12において、MD方向(長手方向)の熱収縮率が3%以上20%以下であり、TD方向(幅方向)の熱収縮率が1%以下であることが記載されている。これらの記載をふまえるならば、本件訂正前の「長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の直角方向の熱収縮率が1%以下であり、」との記載は、当然に本件訂正後の「長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の熱収縮率が1%以下であり、」との記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。
したがって、本件訂正は、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すものであり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものといえ、「誤記の訂正」に該当する。

ウ まとめ
よって、本件訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。

新規事項の追加の有無(特許法第126条第5項
本件明細書の【0044】には、「本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の熱収縮率の上限は1%である。」と記載されている(第3 1(2)ア(イ))ことから、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しないものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

3 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否(特許法第126条第6項
(1)「実質上特許請求の範囲を拡張する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するもの(例えば、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正)のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するようなものをいう。
「実質上特許請求の範囲を変更する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味を表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を変更するようなものをいう。
そして、請求項の誤記のうち、請求項中の記載が、それ自体で、又は設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まるときにおいて、その誤りを正しい記載にする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない(審判便覧(第19版)(特許庁HP掲載)38−03参照。)。

(2)上記のとおり、本件訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、本件明細書及び本件特許請求の範囲の記載全体から、「長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の熱収縮率が1%以下であり、」が正しい記載であり、正しい記載が自明な事項として定まるものである。
そして、そのときにおいて、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

4 独立特許要件(特許法第126条第7項
本件訂正後の請求項1ないし5に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由はなく、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第126条第5ないし7項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン−エチレンブロック共重合体、及びプロピレン−αオレフィンランダム共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂90〜97重量部に対し、エチレン−プロピレン共重合エラストマーを3〜10重量部を含有し、プロピレン−エチレンブロック共重合体とプロピレン−αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン−αオレフィンランダム共重合体の比率が0〜50重量%の範囲であって、長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の熱収縮率が1%以下であり、前記長手方向の降伏応力が150MPa以上250MPa以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムと、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムとの積層体。
【請求項3】
直進カット性が5mm以下である、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
請求項3記載の積層体からなる包装体。
【請求項5】
レトルト用である、請求項4に記載の包装体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2023-10-19 
結審通知日 2023-10-24 
審決日 2023-11-09 
出願番号 P2019-560891
審決分類 P 1 41・ 856- Y (C08J)
P 1 41・ 854- Y (C08J)
P 1 41・ 852- Y (C08J)
P 1 41・ 841- Y (C08J)
P 1 41・ 855- Y (C08J)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 植前 充司
特許庁審判官 加藤 友也
中村 和正
登録日 2022-07-19 
登録番号 7107323
発明の名称 ポリオレフィン系樹脂フィルム  
代理人 弁理士法人アスフィ国際特許事務所  
代理人 弁理士法人アスフィ国際特許事務所  

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