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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1406745
総通号数 26 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-10-02 
確定日 2024-01-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第7255588号発明「樹脂組成物、光ファイバのセカンダリ被覆材料及び光ファイバ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7255588号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7255588号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成31年4月2日を国際出願日とする特願2020−512270(優先日 平成30年4月2日)であって、令和5年4月3日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年10月2日に特許異議申立人 落合 克弘(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1〜8)を行った。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。また、本件特許発明1ないし8をまとめて「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、フェノキシ基を有するモノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、疎水性の無機酸化物粒子とを含み、
粘度が、45℃で300mPa・s以上3500mPa・s以下であり、
前記フェノキシ基を有するモノマーの含有量が、前記ベース樹脂の総量を基準として1質量%以上30質量%以下であり、
前記フェノキシ基を有するモノマーが、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート及びフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂が、フェノキシ基を有しないモノマーを更に含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノキシ基を有しないモノマーの粘度が、25℃で50mPa・s以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物粒子が、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機酸化物粒子の平均一次粒径が200nm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機酸化物粒子の含有量が、前記樹脂組成物の総量を基準として1質量%以上60質量%以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、光ファイバのセカンダリ被覆材料。
【請求項8】
コア及びクラッドを含むガラスファイバと、
前記ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、
前記プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、
前記セカンダリ樹脂層が、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる、光ファイバ。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由
1 特許異議申立理由の概要
令和5年10月2日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許発明1ないし8は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 証拠方法
申立書に添付されて提出された証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2003−295010号公報
甲第2号証:特開2014−77918号公報
甲第3号証:特開2012−104470号公報
甲第4号証:特表2002−515397号公報
甲第5号証:特開平6−102441号公報
以下、「甲第1号証」等を、順に「甲1」等という。

第4 当審の判断
申立人がした申立ての理由(甲1を主引用例とする進歩性欠如)によっては、本件特許発明1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
その理由は以下のとおりである。

1 証拠等の記載等
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がされている。
なお、下線については当審において付与したものである。以下、同様。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラスファイバの外周に1層以上の紫外線硬化型樹脂層を設けてなる光ファイバ心線の外周に、さらに、2層以上の樹脂被覆層を前記光ファイバ心線から離れる方向で順に設けてなる被覆光ファイバ心線であって、前記樹脂被覆層を構成する樹脂がハロゲンを有さない樹脂であるとともに、前記紫外線硬化型樹脂層の最外層と前記樹脂被覆層の最内層とが密着状態にあり、かつ、前記樹脂被覆層から前記ガラスファイバの方向へ前記ガラスファイバには達しないように切り込み、前記紫外線硬化型樹脂層と前記樹脂被覆層とを前記ガラスファイバから引抜くように分離する時における引抜力が2.5kgf以下となるように構成された被覆光ファイバ心線。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】ハロゲン含有樹脂に代えて、ポリオレフィン樹脂を使用すれば、燃焼時における有毒ガスの発生等の環境対策上の問題は解消される。しかし、本願発明者らの検討によれば、外部被覆104がポリオレフィン樹脂とされた被覆光ファイバ心線100に、被覆除去具20を用いて被覆の端末側部分を端末方向に引抜いて、ガラスファイバ101を露出させようとしても、ガラスファイバ101が破断することが頻発することが分かった(図9(B)参照)。
【0010】なお、従来例1および従来例2に記載の構成の被覆光ファイバ心線では、上記したガラスファイバの破断の頻発を抑制することはできない。
【0011】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、環境特性(燃焼時に有毒ガスを発生しない特性)と機械特性(側圧に対する耐性)に優れるととともに、被覆除去をガラスファイバの破断を頻発させることなく容易に実施できる被覆光ファイバ心線、これを用いたコネクタ付被覆光ファイバ心線、及び、光ファイバケーブルを提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、紫外線硬化型樹脂層と外部被覆としての2層以上の樹脂被覆層(ハロゲンを有さない樹脂)とを密着状態にするとともに、紫外線硬化型樹脂層と樹脂被覆層とをガラスファイバから引抜くように分離する時における引抜力が特定範囲内となるように、被覆光ファイバ心線を構成することにより、環境特性と機械特性とに優れるとともに、被覆除去性が容易なコネクタ付被覆光ファイバ心線を製造できることを見出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明の技術的構成およびその作用効果は以下の通りである。
【0013】請求項1に係る被覆光ファイバ心線は、ガラスファイバの外周に1層以上の紫外線硬化型樹脂層を設けてなる光ファイバ心線の外周に、さらに、2層以上の樹脂被覆層を光ファイバ心線から離れる方向で順に設けてなる被覆光ファイバ心線であって、樹脂被覆層を構成する樹脂がハロゲンを有さない樹脂であるとともに、紫外線硬化型樹脂層の最外層と樹脂被覆層の最内層とが密着状態にあり、かつ、樹脂被覆層からガラスファイバの方向へガラスファイバには達しないように切り込み、紫外線硬化型樹脂層と樹脂被覆層とをガラスファイバから引抜くように分離する時における引抜力が2.5kgf以下となるように構成されている。引抜き力は1.4kgf以上が望ましい。
【0014】このような構成によれば、先ず、樹脂被覆層を構成する樹脂がハロゲンを有さない樹脂であるので環境特性に優れる。また、樹脂被覆層は2層以上からなるので、例えば、内側の層を柔軟な層とし、外側の層を堅固な層とすれば、被覆光ファイバ心線が受ける側圧(被覆光ファイバ心線の外周面から受ける外界からの圧力)に対して、外側の層で該圧力の一部を吸収させ、また、該圧力が、外側の層で完全に吸収できない程に大きな力であっても内側の層で該圧力を緩衝させる等、樹脂被覆層を構成する各層の各物性を調整することにより、ガラスファイバが圧力を受けることによる光伝送損失を低減できる。」
「【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の実施形態に係る被覆光ファイバ心線10は、図1(A)の模式断面図に示すように、ガラスファイバ11の外周に紫外線硬化型樹脂層12を設けてなる光ファイバ心線13の外周に、さらに、樹脂被覆層16として、最内層14と中間層61と最外層15とを光ファイバ心線13から離れる方向で順に設けてなる。ここで、紫外線硬化型樹脂層12は、図1(B)の模式断面図に示すように、ガラスファイバ11から離れる方向に、第一紫外線硬化型樹脂層12Aと第二紫外線硬化型樹脂層12Bと着色層12Cからなる。
・・・・
【0028】また、樹脂被覆層16(最内層14,中間層61,最外層15)を構成する樹脂は、ハロゲンを有さない樹脂であるので、環境特性に優れる。樹脂被覆層16を構成する樹脂は、ハロゲンを有さない樹脂であれば特に限定されないが、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を挙げることができ、より具体的には、最内層14及び中間層61を構成する樹脂は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン・ビニルアセテート樹脂(EVA)、エチレン・エチルアクリレート樹脂(EEA)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びスチレン・ブタジエンゴム(SBR)等から選択される1種の樹脂または2種以上の樹脂の混合物を好適に例示できる。最内層14中及び中間層61中の樹脂の含有量は、前記した引抜力が2.5kgf以下となれば特に限定されないが、後述する最内層及び中間層の好適な弾性率を鑑みて、50重量%〜65重量%とされるのが好ましい。また、最内層14及び中間層61は、フィラーとして無機化合物を含有でき、無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、黒鉛、およびこれらの材料をシラン処理したもの等を挙げることができる。」
「【0034】次に、紫外線硬化型樹脂層12について説明する。紫外線硬化型樹脂層12を構成する樹脂は、紫外線硬化型液状樹脂組成物が紫外線照射によって硬化された樹脂であり、紫外線硬化型液状樹脂組成物(以下、単に、“液状樹脂組成物”ともいう)とは、紫外線照射により硬化しうる液状の樹脂組成物を意味する。
【0035】液状樹脂組成物は、繰り返し単位構造と重合性二重結合とを併有する重合性オリゴマー、重合性不飽和モノマー(以下、“反応希釈性モノマー”ともいう)、および光重合開始剤を含有するものが好ましい。
【0036】重合性オリゴマーは、“ウレタン結合を有する繰り返し単位構造”と(メタ)アクリル基とを併有する重合性オリゴマーが好ましく、特に、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートを用いて、ジイソシアネートのイソシアネート基を、ポリオール化合物の水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と反応させて得られる重合性オリゴマーが好ましい。
・・・
【0045】重合性オリゴマーの液状樹脂組成物に対する含有量は、液状樹脂組成物として適度な粘度、および、後述する好ましい弾性率等を鑑みて設定されるものであるが、20重量%〜85重量%の範囲内とされるのが好ましく、25重量%〜80重量%の範囲内とされるのがより好ましい。」
「【0046】次に、重合性不飽和モノマー(反応希釈性モノマー)について説明する。重合性不飽和モノマーとしては単官能性化合物及び/または多官能性化合物を用いることができる。単官能性化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン,N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム;イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、一般式CH2=C(R2)-COO(R3O)m-R4(式中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、mは0〜12、好ましくは1〜8の数を示す)で表される(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。このうち、一般式CH2=C(R2)-COO(R3O)m-R4で表される(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
・・・
【0049】重合性不飽和モノマーの液状樹脂組成物に対する含有量は、液状樹脂組成物として適度な粘度、および、後述する好ましい弾性率等を鑑みて設定されるものであるが、10重量%〜80重量%の範囲内とされるのが好ましく、15重量%〜75重量%の範囲内とされるのがより好ましい。」
「【0050】光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。その市販品としては、I.651、I.369、I.907、I−184(チバスペシャルティケミカル社製)等を挙げることができる。
【0051】光重合開始剤の液状樹脂組成物に対する含有量は、0.1重量%〜10重量%の範囲内とされるのが好ましく、0.3重量%〜7重量%の範囲内とされるのがより好ましい。」
「【0060】光ファイバ心線13に関し、第一紫外線硬化型樹脂層12Aの弾性率は0.5MPa〜2MPa、第二紫外線硬化型樹脂層12Bの弾性率は250MPa〜1500MPa、着色層12Cの弾性率は500MPa〜1500MPaとされるのが好ましい。このように、第一紫外線硬化型樹脂層12Aを柔軟な層とし、第二紫外線硬化型樹脂層12Bを堅固な層とすることによって、光ファイバ心線13が受ける側圧(光ファイバ心線13の外周面から受ける外界からの圧力であって、特に、光ファイバ心線13に樹脂被覆層16が設けられる前に受ける圧力)に対して、第二紫外線硬化型樹脂層12Bで該圧力を吸収させ、また、該圧力が、第二紫外線硬化型樹脂層12Bで完全に吸収できない程に大きな力であっても第一紫外線硬化型樹脂層12Aで該圧力を緩衝させることにより、ガラスファイバ11が圧力を受けることによる光伝送損失を低減できる。」
「【0076】
【実施例】以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0077】(被覆光ファイバ心線の作製)石英ガラスを主成分とするシングルモード型ガラスファイバ(Dg:125μm)の外周に第一紫外線硬化型樹脂層(DU1:200μm)と第二紫外線硬化型樹脂層(DU2:245μm)と着色層(DC:255μm)とを前記した方法および表1及び表2に示す組成に準じて設けることによって、光ファイバ心線を製造する(なお、一部は、上記着色層を設けない。)。次いで、この光ファイバ心線の外周に、表1及び表2に示す組成の樹脂被覆層の最内層と中間層と最外層とを前記した方法に準じて設けることによって、実施例及び比較例の被覆光ファイバ心線を作製する(なお、一部は、上記中間層を設けない。)。実施例2と比較例5は、中間層が1層であり、実施例3は、中間層が2層である。被覆光ファイバ心線の各特性値を表1及び表2に示す。実施例8,9は、紫外線硬化型樹脂を硬化させるときの紫外線照射量を他の実施例よりも少なくしてわざと硬化度を小さくした。実施例8は、実施例9よりも紫外線照射量が少ない。実施例9は着色層を有し、紫外線硬化型樹脂層と樹脂被覆層との密着が強くないので、ガラス破断確率が実施例8より大きくなっているが許容範囲である。
【0078】
【表1】

・・・
【0080】表1および表2に関し、各樹脂層の組成は以下の通りである。
<紫外線硬化型樹脂層を構成する樹脂>
樹脂A(紫外線硬化型樹脂1層目=第一紫外線硬化型樹脂層):ウレタンアクリレートオリゴマーI(80部)+反応希釈性モノマー(15部)+光重合開始剤(3部)+その他添加剤(2部)
【0081】(樹脂Aの構成要素)
ウレタンアクリレートオリゴマーI:ポリプロピレングリコール+イソホロンジイソシアネート+2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートの重合により得られた平均分子量8000の成分
反応希釈性モノマー:N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、イソボニルアクリレートの混合物(配合比=3:3:1)
光重合性開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
その他添加剤:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、酸化防止剤
・・・
【0086】樹脂H(紫外線硬化型樹脂2層目=第二紫外線硬化型樹脂層):ウレタンアクリレートオリゴマーII(65部)+反応希釈性モノマー(30部)+光重合開始剤(4部)+その他添加剤(1部)
【0087】(樹脂Hの構成要素)
ウレタンアクリレートオリゴマーII:ポリプロピレングリコール+トリレンジイソシアネート+2−ヒドロキシル(メタ)アクリレートの重合により得られた平均分子量4000の成分
反応希釈性モノマー:N−ビニルピロリドン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの混合物(配合比=3:5)
光重合性開始剤:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
その他添加剤:酸化防止剤、老化防止剤
・・・
【0094】樹脂Z(紫外線硬化型樹脂3層目=着色層):ウレタンアクリレートオリゴマーII(10部)+エポキシアクリレートオリゴマー(55部)+反応希釈性モノマー(20部)+光重合開始剤(10部)+有機顔料(3部)+その他添加剤(2部)
【0095】(樹脂Zの構成要素)
ウレタンアクリレートオリゴマーII:ポリテトラメチレングリコール+トリレンジイソシアネート+トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレートの重合により得られた平均分子量3500の成分
エポキシアクリレート:ビスフェノールA+2−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートの重合により得られた平均分子量2500の成分
反応希釈性モノマー:ビスフェノールAエチレンオキサイド変性アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、シリコンアクリレート
光重合開始剤:ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル
有機顔料:有機系顔料(例:フタロシアニンブルー)
その他添加剤:酸化防止剤、酸化チタン等」

イ 甲1に記載された発明
甲1の実施例における紫外線硬化型樹脂3層目に用いられる樹脂Zに着目すると、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。
「ウレタンアクリレートオリゴマーII 10部と
エポキシアクリレートオリゴマー 55部と
反応希釈性モノマー 20部と
光重合開始剤 10部と有機顔料3部及びその他添加剤2部からなる紫外線硬化型樹脂であって、
上記ウレタンアクリレートオリゴマーIIがポリテトラメチレングリコール、トリレンジイソシアネート及びトリメチロールエタンジ(メタ)アクリレートの重合により得られた平均分子量3500の成分であり、
上記エポキシアクリレートオリゴマーがビスフェノールA及び2−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートの重合により得られた平均分子量2500の成分であり、
上記反応希釈性モノマーがビスフェノールAエチレンオキサイド変性アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、シリコンアクリレートであり、
上記光重合開始剤がベンゾフェノン、ベンゾインエーテルであり、
上記有機顔料が有機系顔料(例:フタロシアニンブルー)であり、
上記その他添加剤が酸化防止剤、酸化チタン等である、
紫外線硬化型樹脂」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲2の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの外周に、活性線硬化型樹脂組成物を塗布・硬化して被覆層を形成する光ファイバ素線の製造方法であって、
光ファイバの外周に塗布された活性線硬化型樹脂組成物の硬化が、二台以上の活性線照射装置を順次使用することにより行われ、二台目以降の活性線照射装置が紫外線照射装置であり、
最初に使用される第一の活性線照射装置の活性線が、電子線またはその後に使用されるいずれの紫外線照射装置の紫外線よりも短波長の紫外線であり、被覆層の最外層を硬化することを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。」
「【0007】
本発明は、光ファイバを樹脂被覆するときに当該樹脂から揮発するガスの量を減らして光ファイバ素線の硬化度が長さ方向に安定し、連続して生産される光ファイバ素線長を長くすることを目的とする。」
「【0019】
3.活性線硬化型樹脂組成物の塗布・硬化工程
本発明の光ファイバ素線の製造方法では、活性線硬化型樹脂組成物を塗布・硬化して被覆層を形成する。本実施形態においては、上記工程で得られた光ファイバ1は、プライマリ層塗布用コーテイングダイス14とセカンダリ層塗布用コーテイングダイス16に順次導入される。
【0020】
使用される活性線硬化型樹脂組成物のベース樹脂としては、特に限定はされないが、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂が好ましい。詳細には、ウレタン結合及び/又はエポキシ骨格を有するアクリレートオリゴマーをアクリレートモノマーで希釈したものが好ましい。
【0021】
被覆層の最外層を形成するセカンダリ層5に使用される活性線硬化型樹脂組成物は、光開始剤の吸収波長により硬化のタイミングがコントロールされることが好ましい。具体的には、被覆層の最外層を形成する活性線硬化型樹脂組成物では、例えば、400nmに実質的に吸収を有さない光開始剤を含有することで、400nmよりも低波長である第一の活性線照射装置の活性線の照射により、被覆層の最外層を形成する活性線硬化型樹脂組成物の表面のみを選択的に硬化することができる。
また該硬化時の温度(第一の活性線照射装置内の温度)は60℃以下であることが好ましい。これにより、第一の活性線照射装置18においても、その後に使用される活性線照射装置20においても被覆層の樹脂表面からの揮発ガス発生が抑制される。第一の活性線照射装置内の温度が45℃以下であれば、揮発ガス発生がさらに抑制されてさらに好ましい。
活性線照射装置20においては、例えば光源として紫外線ランプ(極大波長400nm付近)の照射により、被覆層の最外層以外の層が硬化される。
上記工程により製造された光ファイバ素線6は、巻き取りドラム22に巻き取って保管することができる。
【0022】
400nmに実質的に吸収を有さない光開始剤とは、400nm付近の波長に全く吸収を有さないか、アセトニトリルなどの溶媒を用い0.1wt%になるように調整した光開始剤の吸収が常法による測定で0.1Abs以下である光開始剤を意味し、例えば、Irgacure(商標)651,184,127(BASF社製)及びDarocure(商標)1173(BASF社製)を好適に使用することができる。なお、光開始剤は、活性線硬化型樹脂組成物の上記ベース樹脂に対し、0.5〜3.0重量%含有されることが好ましい。被覆層の内層に使用される活性線硬化型樹脂組成物に添加される光開始剤は上述の400nmに実質的に吸収を有さないものに拘らない。」
「【実施例】
【0025】
以下、本発明に係る実施例1〜5及び比較例1〜2について評価試験の結果等を示し、本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
[光ファイバ素線の作製]
図1に示す光ファイバ素線製造装置を使用して、光ファイバ母材より引き出された光ファイバに、プライマリ層用の活性線硬化型樹脂組成物と下記表1に示す種類及び量(重量部)の光開始剤を添加したセカンダリ層用の活性線硬化型樹脂組成物を順に塗布した。次いで、表1に記載の光源(波長)と温度の条件で、第一の活性線照射装置による硬化を行った後、紫外線ランプ(極大波長:365nm)を備えた本活性線照射装置による硬化を行い、各実施例及び比較例の光ファイバ素線を得た。第一の活性線照射装置で照射される活性線が紫外線である場合、その波長は本活性線照射装置である紫外線照射装置で照射される紫外線の極大波長(すなわち紫外線ランプの極大波長)に30nmを加えた値以下とした。
【0027】
[評価]
実施例1〜5及び比較例1〜2について、製造性及び長手安定性の評価を行った。具体的には、線引きした光ファイバに合計で5,000km分の被覆層形成を行い、その開始端と終了端の硬化性の違いをFT−IRにて評価を行った。結果を表1に示す。
なお、FT−IRの評価方法については、以下に示す通りである。
【0028】
〔FT−IR〕
FT−IRはATR法により測定し、アクリロイル基の残存率から合否判定を行った。800〜815cm−1範囲のピーク面積を算出した。算出したピーク面積は硬化性が低下した場合は大きくなる。この値について、線引き開始端と終了端で比較を行った。開始端/終了端の計算を行い、この値について以下のように判断した。
開始端/終了端≧0.75 ⇒合格
開始端/終了端<0.75 ⇒不合格
【0029】
【表1】

【0030】
上記表1の結果に示すように、本発明の光ファイバ素線の製造方法で作製した光ファイバ素線(実施例1〜5)は、光ファイバ素線が線引される間の硬化度の低下が少なく、光ファイバ素線の長手方向の硬化度の安定性の評価が良好であった。一方、本発明の光ファイバ素線の製造方法の要件を満たさない方法により作製した光ファイバ素線(比較例1〜2)は、線引終了時に硬化度の低下が著しく、連続して線引できる光ファイバ素線の長さが短く、製造性が良くなかった。」

(3)甲3の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型樹脂組成物に、吸水性ポリマに水を予め吸水させ吸水膨潤させた含水吸水性ポリマを分散して含水率40%以上を有する含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物と、前記含水吸水性ポリマを含まない紫外線硬化型樹脂組成物とを形成し、金属線上に、前記含水吸水性ポリマを含まない紫外線硬化型樹脂組成物と、前記含水吸水性ポリマ分散紫外線硬化型樹脂組成物とを被覆して二層構造に形成した後、脱水処理を行うことを特徴とする多孔質紫外線硬化型樹脂被覆電線の製造方法。」
「【0015】
本発明の目的は、細径化・薄肉化を可能とした多孔質薄膜を形成材料として用いた多孔質紫外線硬化型樹脂被覆電線の製造方法、多孔質紫外線硬化型樹脂被覆電線、及び同軸ケーブルを提供することにある。」
「【実施例】
【0045】
以下に、本発明の更に具体的な実施の形態として、実施例及び比較例を挙げて、多孔質紫外線硬化型樹脂被覆電線について説明する。
【0046】
(紫外線硬化型樹脂組成物A)
下記の 表1に、実施例1〜3、及び比較例1の紫外線硬化型樹脂組成物として例示した紫外線硬化型樹脂組成物Aの一例を示す。
【0047】
15MILブレードを用い、ガラス板上に紫外線硬化型樹脂組成物Aを窒素雰囲気下で紫外線照射量500mJ/cm2により硬化させ、膜厚が約200μmであるフィルムを作製した。空洞共振法により、紫外線硬化型樹脂組成物Aからなるフィルムの誘電率を求めたところ、周波数10GHzにおける誘電率は、2.70であった。このフィルムの粘度を測定したところ、25℃で4500mPa・sであり、40℃で2100mPa・sであり、60℃で1000mPa・sであり、80℃で450mPa・sであった。
【0048】
【表1】



(4)甲4の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射線硬化性の内部1次被覆組成物と放射線硬化性の外部1次被覆組成物を含んでいる、ガラス光ファイバーを被覆するためのシステムであって、
前記の放射線硬化性の内部1次被覆組成物が少なくとも一つのストリップ向上成分を含んでおり、前記内部1次被覆組成物が放射線硬化後には、(a)0℃未満のガラス転移温度; 及び(b)相対湿度95%でコンディショニングされたとき少なくとも5g/インチのガラスに対する接着力; の性質の組合せを有し; そして前記外部1次被覆組成物が、放射線の作用下で重合することが可能な少なくとも一つの官能基を有するオリゴマーを含んでおり、前記外部1次被覆組成物が放射線硬化後には、23℃で1000MPaより大きい割線モジュラス(secant modulus)を有する、
前記システム。」
「 【0011】
実質的に残渣がない裸の光ファイバーを提供するような清浄にリボンストリップするリボンアセンブリの能力は現在までは予測できず、リボンストリップに影響を与える因子は十分に理解されていなかった。したがって、光ファイバーリボンのストリップ性能を改良する光ファイバー用放射線硬化型被覆組成物に対するニーズが存在する。
【0012】
(発明の概要)
本発明の目的は、内部一次被覆組成物、および着色または非着色外部一次被覆組成物を含み、リボンアセンブリ組み込み時に改良したリボンストリップ性を与える、放射線硬化型光ファイバー一次被覆システムを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、リボンアセンブリに組み込んだ時に、リボンアセンブリがより良好なストリップ清浄度を達成するような被覆を有する被覆光ファイバーを提供することである。
【0014】
本発明のその他の目的は、改良したリボンストリップ性能をもつリボンアセンブリを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる他の目的は、リボンアセンブリ組み込み時に改良したリボンストリップ性を与える、内部一次被覆組成物および外部一次被覆組成物を含む、放射線硬化型光ファイバー被覆システムを作成する方法を提供することである。
【0016】
驚くことに、上記の目的およびその他の目的は、下記により達成された。本発明は、i)ストリップ性を高める少なくとも1種の成分を含む放射線硬化型内部一次被覆組成物であって、硬化後に光ファイバーに十分に接着して、水分存在下および取扱い中の離層を防止できる組成物、およびii)硬化時に、少なくとも1000MPa(マイラー上で測定した時)の割線モジュラスをもつ放射線硬化型外部一次被覆組成物を含む放射線硬化型光ファイバー一次被覆組成物を提供する。」
「 【0023】
(A)オリゴマーシステム
本発明では、プレポリマーまたはオリゴマーシステムは、1種または複数の放射線硬化型オリゴマーを含む。一般的に、まずオリゴマーシステムを、任意選択的にモノマー希釈剤の存在下で作成する。次に、モノマー希釈剤、光開始剤、および添加剤などの他の成分と混合して、オリゴマー調合物を調合する。多様なオリゴマーを所望するときには、個々のオリゴマーを別々に合成し、その後に混合してもよく、または単一のワンポット合成で一緒に合成してもよい。いずれの場合にも、オリゴマーの合成は、しばしば異なるタイプのオリゴマーの統計学的分布になるが、理想化した構造で代表できる。
【0024】
オリゴマー合成中に、モノマー希釈剤システム(以下を参照)から何か成分が発生するとしても、一般的にモノマー希釈剤はオリゴマー作成中に実質的に反応せず、単にオリゴマー合成の溶媒として機能するだけであるから、発生した成分をプレポリマーの一部分とは見なさない。通常、モノマー希釈剤は、オリゴマーに比較して低分子量であるから、オリゴマーとは区別でき、オリゴマーの粘度低下に役立つ。しかし、ある種のモノマー希釈剤が、反復アルキル単位などの反復単位をもっていてもよい。しかし、本発明では、希釈剤がオリゴマーの粘度減少に機能するならば、オリゴマーではなく希釈剤と呼ぶ。
【0025】
オリゴマーシステム(A)の量は、例えば約10重量%から約90重量%、好ましくは約20重量%と約80重量%の間、より好ましくは約30重量%から約70重量%が可能である。好ましくは、オリゴマーの量は約50重量%である。1種以上のオリゴマーが存在するときには、各オリゴマーの重量%を加算する。
【0026】
放射線硬化型オリゴマーは、1個または複数の放射線硬化型末端基およびオリゴマー主鎖を含んでもよい。末端基が硬化メカニズムを提供し、一方主鎖が硬化時の適切な機械的特性を提供する。加えて、オリゴマーはウレタンまたは尿素含有成分などの1個または複数の結合基を含んでもよく、これらの結合基は硬化した組成物の機械的性能を改良できる。結合基は、オリゴマー主鎖成分を放射線硬化型末端基に結合させることができ、またはオリゴマー主鎖成分同志を結合させることができる。それ故、例えば、放射線硬化型オリゴマーを、3つの基本的成分(主鎖、結合および放射線硬化型成分)から作成することができ、そして、例えば、
R−[L−B]X−L−R
[式中、Rは放射線硬化型基、Lは結合基、かつBは主鎖成分である]
などの構造で表わすことができる。変数Xは、オリゴマー分子当たりの主鎖成分の数を示している。このXの値は、オリゴマー合成中の反応化学量論のコントロールにより制御可能である。通常、Xは1として設計される。この表現で、LおよびBは2官能性成分であるが、しかしオリゴマーは、分枝を作成するために3またはそれ以上の官能性のLおよびB成分を用いて作成してもよい。本発明では、好ましくは、オリゴマーの分枝点が存在し、かつ、好ましくは少なくとも3官能性基Lの使用で得られる。さらに、例えば、オリゴマーは、
(R)2−L−B−L−(R)2
で表わすこともできる。
【0027】
詳細には、本発明による典型的な放射線硬化型ウレタンアクリルオリゴマーを、(i)反応して放射線硬化型アクリル基Rを与える少なくとも1種の成分、(ii)反応してウレタン結合基Lを与える少なくとも1種の成分、および(iii)反応して主鎖Bを与える少なくとも1種の成分から作成する。異なるウレタンアクリレートオリゴマーの合成方法が、例えば米国特許第5,093,386号に開示されており、これを本明細書では参考として援用する。しかし、その他の合成方法を使用しても、同等の構造物を作成できる。業界に知られた手段により、これらの方法を採用可能であり、ウレタン結合、メタクリル結合、およびその他の放射線硬化型オリゴマーに見られる普遍的タイプの結合を供給できる。」
「 【0041】
(B)モノマー希釈剤システム
また、本発明による組成物は、モノマー希釈剤システム、または少なくとも1種のモノマー希釈剤を含む反応性希釈剤システムを含む。被覆組成物の粘度を調節するために反応性希釈剤を使用できる。このように、反応性希釈剤は、化学線に暴露したときに重合できる少なくとも1種の官能基を含む低粘度モノマーであればよい。
【0042】
反応性希釈剤は、好ましくは、被覆組成物の粘度が約1,000から約10,000mP.a.s.の範囲になる量で添加する。」
「 【0046】
好ましくは、反応性希釈剤システムは、アクリレートまたはビニルエーテル官能基およびC4〜C20アルキルまたはポリエーテル成分を有する1つまたは複数のモノマーを含む。このような反応性希釈剤の例には、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エトキシエトキシ−エチルアクリレート、ラウリルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ビニルカプロラクタム、およびN−ビニルピロリドンなどがある。
【0047】
反応性希釈剤の別のタイプは、芳香族基を含む化合物である。芳香族基を有する希釈剤の例には、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールフェニルエーテルアクリレート、およびポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルアクリレートなどの上記モノマーのアルキル置換フェニル誘導体などがある。」
「 【0050】
(C)任意選択的光開始剤システム
本組成物は、任意選択的に、さらに少なくとも1種の光開始剤を含むことができる。光開始剤は、高速UV硬化に必要であるが、電子ビーム硬化では省略してもよい。通常の光開始剤が使用できる。光開始剤の例には、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェニルケトンなどのアセトフェノン誘導体、ベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタール、モノアシルホスフィンオキシド、およびビスアシルホスフィンオキシドがある。好適な光開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184、Ciba Geigy)がある。」
「 【0053】
(D)添加剤
通常の添加剤を効果的な量で使用できる。例えば、ゲル化を防止する安定剤、UV遮蔽化合物、レベリング剤、重合禁止剤、光安定剤、連鎖移動剤、顔料および染料を含有する着色剤、可塑剤、充填剤、濡れ性改良剤、および防腐剤などの添加剤が使用できる。その他のポリマーおよびオリゴマーを組成物に添加してもよい。被覆組成物中の水分量は最小であることが好ましい。」
「 【0219】
外部1次被覆OP−1〜OP−4の製造
a)オリゴマー1の製造
ここでオリゴマー1と称されているオリゴマー組成物は、60℃に熱した反応器に81.26部のアジプレン(Adiprene)L−200C、トルエンジイソシアネートと反応させた平均分子量1000のポリプロピレンオキシドジオールから誘導されたイソシアネート、を加えることによって製造された。反応器の内容物を約100rpmで稼働する機械的ミキサーによって混合した。反応器内容物に、0.10部のブチル化ヒドロキシトルエン及び0.10部のジブチル錫ジラウレートを反応器内容物に混合する。反応器に空気ブランケットを3m3/時で導入する。1時間にわたって、18.54部のヒドロキシエチルアクリレートを、温度が70℃を越えないような速度で定常的に導入した。NCOの%が0.2未満に降下するまで、反応器混合物をこれら条件下に約1時間維持した。
【0220】
b)オリゴマー2の製造
ここでオリゴマー2と称されているオリゴマー組成物は、水ジャケット付き反応器の中に18.86部のオリン(Olin)TDI−90、トルエンジイソシアネート、を導入することによって製造された。水ジャケットは、反応器の内容物を約11℃に維持するように制御された。次いで、0.08部のブチル化ヒドロキシトルエンを加えた。反応器の内容物を3m3/時の空気スパージ(air sparge)下で機械的ミキサーによって連続混合した。15.01部のヒドロキシエチルアクリレートを温度が60℃を越えないような速度で定常的に導入した。NCOの%が約12未満に降下するまで反応器内容物をこれら条件下に約2時間維持した。次いで、反応器を50℃に加熱し、そして43.67部のPTG−L1000と0.04部のクリスタリン(Crystalline) DABCO(1,4−ジアザビシクロ− [2.2.2] −オクタン)を、結晶がPTG−L1000(分子量1000を有するポリメチルテトラヒドロフルフリル/ポリテトラヒドロフルフリル共重合体ジオール(ミツイ、NY))の一部の中に予め溶解されて、導入した。次いで、反応器温度を80℃に上げ、そしてNCOの%が0.2未満に降下するまで約90分間そこに維持した。
【0221】
表A.2には、外部1次被覆組成物が、組成物を生成するに導入された成分の重量%によって記載されており、そしてそれぞれの外部1次組成物の測定された性質が記載されている。
【0222】

【0223】



(5)甲5の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリカ系光ファイバ(10)と、
前記光ファイバを被覆する重合体材料製の第1の外被層(20)と、
所定量の微粒子材料から構成される第2の外被層(30)とによって構成される光ファイバにおいて、
前記微粒子材料は、水に対して、少なくとも部分的に可溶性を示す材料で、光ファイバが純水に対して反応性が減少するような溶液が形成されることを特徴とする湿度耐性を改善した光ファイバ。
【請求項2】 微粒子材料が、シリカからなることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】 前記所定量は、1.0wt.%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】 第2の外被層(30)のシリカ含有量が、約1.0重量%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項5】 微粒子材料が、酸化チタンと、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、及びそれらの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】光ファイバの重合体外被材料に、適切な微粒子片を混ぜることによって、ファイバが湿気に曝された際に関連する、強度劣化をある程度保護できることを見いだした。適切な材料は、少なくとも部分的には水溶性であり、純水に対するファイバへの反応性を減少させるような溶液を形成させる。例として、そのような材料は、ファイバの組成からなる、ガラス形成システムの要素とすればよい(そのような材料は、ファイバガラスそれ自体の組成と同じである必要は必ずしも無い)。
【0006】特に、シリカの微粒子片が、高強度、シリカ系光ファイバへの、湿気に対する保護に効果的である。」
「【0009】
【実施例】本発明における実施例においては、高強度、シリカ系光ファイバを用いる。高強度ファイバは、高信頼性で、通常の伸張試験(約10秒間)において、最低約4.9から5.6GPa(700−800ksi)の強度を示す。このようなファイバは、125μmファイバで、AT&Tから、D-LUX 100 LIGHTGUIDE FIBERとして市販されている。適当な、uv感受性を有し、シリカ充填した、液体プリポリマー構造を用い、従来技術によってファイバに塗布し、硬化してポリマー外被を形成した。このため、プリポリマーは適切な粘性を有する必要があり、侵食を防ぐために十分に強固で、適切に硬化した後は粘性がなく、剥離可能でなくてはならない。さらに、第1の外被層を形成するのに用いられる場合には、光学損失を十分抑制したものでなくてはならない。実施例のプリポリマーでは、この条件に好都合で、2つのモノマー、2−エソキシエソキシエチルアクリレート及びNビニルピロリドン、及び、ウレタンジアクリレートとして市販されている高分子量合成樹脂からなる。このようなプリポリマーは、さらに、2、2−ジメソキシ−2−フェニルアセトフェノンのような光感受材料を有している。上述のプリポリマーの構造について、N.Levy and P.E.Massy,"Effects of Composition andPolymerization Mechanism on the Mechanical Properties of UV-Cured Crosslinked Polymers", Polymer Eng. Science 21(1981) 406-414に示されている。
【0010】さらに、図1に示されるように、単一ポリマー層、あるいは、光ファイバ10に接した第1層20及び少なくとも一つの第2層30からなる多層外被が、光ファイバ10に形成される。従来例と異なり、外被の少なくとも第1層20及び/あるいは第2層30に、例としてシリカ微粒子のような微粒子が充填されている。シリカ充填層は、外被の単一層でもよく、あるいは、多層外被構造としてもよい。
【0011】従来ポリマー外被への水分の浸透は、例として標準劣化試験によって示されるように、光ファイバを劣化させる。水分がシリカ充填外被層に浸透すると、シリカが外被から到達し水溶液となる。その結果、光ファイバに到達した浸透水分は、シリカとほぼ飽和状態となる。これは、光ファイバのガラスへの水分の侵食を防護する。標準劣化試験において、従来の外被ファイバと、同様のシリカ充填外被ファイバとを比較した。このような試験で、本発明による外被によって、加速劣化量が、半分から30分の1に低減されることが示された。」

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明の技術的意義について
本件特許明細書の段落【0006】【0007】には、「[本開示が解決しようとする課題]
フィラーを含有する樹脂組成物は、粘度が高くなり、塗布性が乏しくなる傾向にある。一方、樹脂組成物の粘度を調整するために、希釈性モノマーの添加量を増やすと、オリゴマーの割合が低下し、樹脂組成物から形成される塗膜が脆くなる傾向にある。また、希釈性モノマーの添加量を増やすと、樹脂組成物から形成される塗膜のヤング率に増加減が生じたり、塗膜の厚みが薄くなってしまい樹脂層の強度が低下したりする。そのため、光ファイバの被覆樹脂層に用いられる樹脂組成物には、塗布性と塗膜物性とを両立することが求められている。
本開示は、塗布性と塗膜物性とを両立することができる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物から形成される被覆樹脂層を有する光ファイバを提供することを目的とする。」と記載されていることからすると、本件特許発明の課題は、「フィラー」を含有する樹脂組成物において、塗布性と塗膜物性とを両立することであると認められる。
そして、本件特許発明は、本件特許発明の上記課題を解決するためになされたものである。

イ 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリテトラメチレングリコール、トリレンジイソシアネート及びトリメチロールエタンジ(メタ)アクリレートの重合により得られた平均分子量3500の成分」である「ウレタンアクリレートオリゴマーII」は、本件特許発明1の「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」に相当し、甲1発明の「ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル」である「光重合性開始剤」は、本件特許発明1の「光重合性開始剤」に相当する。また、甲1発明の「ビスフェノールAエチレンオキサイド変性アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、シリコンアクリレート」である「反応希釈性モノマー」は、本件特許発明1の「フェノキシ基を有するモノマー」と「モノマー」である限りにおいて相当する。そして、甲1発明の「ウレタンアクリレートオリゴマーII」、「エポキシアクリレート」と「反応希釈性モノマー」と「光重合性開始剤」を含有するものは、紫外線照射により硬化されて樹脂となるから、本件特許発明1の「ベース樹脂」に相当する。甲1発明の「酸化チタン」は、本件特許発明1の「疎水性の無機酸化物粒子」と「無機酸化物粒子」である限りにおいて相当する。
また、甲1発明の「紫外線硬化型樹脂」は、「ベース樹脂」に、さらに「有機顔料」と「その他添加剤」を含有するものであるから、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。
してみると、両発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と無機酸化物粒子を含む、樹脂組成物。

<相違点1>モノマーが、本件特許発明1は「2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート及びフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である」「フェノキシ基を有するモノマー」を含有し、その含有量が「前記ベース樹脂の総量を基準として1質量%以上30質量%以下」であるのに対し、甲1発明は、当該モノマーを含有していない点
<相違点2>無機酸化物粒子が、本件特許発明1は「疎水性」であるのに対し、甲1発明はその点不明である点
<相違点3>樹脂組成物の粘度が、本件特許発明1は「45℃で300mPa・s以上3500mPa・s以下」であるのに対し、甲1発明は不明である点

ウ 相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点1>について
甲1の段落【0046】には、反応希釈性モノマーとして、「フェノキシエチル(メタ)アクリレート」が例示されるものの、例示される多数のモノマーの選択肢の一つに過ぎず、「フェノキシ基を有するモノマー」としては当該モノマーが唯一例示されるだけであり、他の実施例でも使用されていない。そして、甲1には、「フェノキシ基を有するモノマー」を用いることによる有利な効果、特にフィラーを含有した上で塗布性に優れたものとなることは記載も示唆もされていない。そのため、甲1発明において、甲1の記載に基づいて「フェノキシエチル(メタ)アクリレート」を採用する積極的な動機付けがあるとはいえない。

甲4には、「【請求項1】 放射線硬化性の内部1次被覆組成物と放射線硬化性の外部1次被覆組成物を含んでいる、ガラス光ファイバーを被覆するためのシステムであって、
前記の放射線硬化性の内部1次被覆組成物が少なくとも一つのストリップ向上成分を含んでおり、前記内部1次被覆組成物が放射線硬化後には、(a)0℃未満のガラス転移温度; 及び(b)相対湿度95%でコンディショニングされたとき少なくとも5g/インチのガラスに対する接着力; の性質の組合せを有し; そして前記外部1次被覆組成物が、放射線の作用下で重合することが可能な少なくとも一つの官能基を有するオリゴマーを含んでおり、前記外部1次被覆組成物が放射線硬化後には、23℃で1000MPaより大きい割線モジュラス(secant modulus)を有する、前記システム。」に関する技術が開示されているところ、その実施例に、モノマー希釈剤として「フェノキシエチルアクリレート」が配合されたガラス光ファイバー放射線硬化性の外部1次被覆組成物OP−3及びOP−4が記載されている(段落【0222】)。
しかしながら、甲4のその他の記載を参照しても、「フェノキシ基を有するモノマー」を用いることによる有利な効果、特にフィラーを含有した上で塗布性に優れたものとなることは記載も示唆もされていない。そのため、甲1発明において、甲4の記載に基づいて「フェノキシエチル(メタ)アクリレート」を採用する積極的な動機付けがあるとはいえない。
そして、申立人が提出したその他の証拠である甲2、甲3、甲5をみても、「フェノキシ基を有するモノマー」を用いることによる有利な効果、特にフィラーを含有した上で塗布性に優れたものとなることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において「フェノキシ基を有するモノマー」を採用し、<相違点1>に係る事項を当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

エ 効果の検討
ついで、本件特許発明1の効果について検討する。
本件特許発明1の効果は、その段落【0006】ないし【0008】からみて、フィラーを含有する樹脂組成物において、「塗布性と塗膜物性とを両立することができる」というものである。
ここで、本件特許明細書の実施例と比較例をみてみると、フェノキシ基を有するモノマーを用いた実施例は「塗布性が良好」であるのに対し、フェノキシ基を有するモノマーを用いない比較例は「塗布性が乏しく」なっていることが見て取れる。
してみると、本件特許発明1が奏する「塗布性と塗膜物性とを両立することができる」という効果は、甲1ないし甲5のいずれにも記載されておらず、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。

オ 小括
よって、本件特許発明1は、上記<相違点2>及び<相違点3>を検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1ないし甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をし得たものではない。

(2)本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(1)で検討したのと同様、本件特許発明2ないし8は、甲1に記載された発明及び甲1ないし甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をし得たものではない。

3 申立人の主張について
申立人は、申立書の第7ページにおいて、「・・・しかしながら、甲1記載事項1の通りフェノキシエチル(メタ)アクリレートが使用できることは記載されており、甲1記載事項1の通り無機酸化物粒子は疎水処理できることも記載されている。さらに、本特許発明ではヤング率の測定は行っているが、甲1記載事項3に記載されている通り、甲第1号証でも弾性率(ヤング率)について適宜調整されることも記載されている。そもそも、甲4記載事項1の技術分野において、甲4発明の様にフェノキシ基を有するモノマーを使用することは従来から知られており、そもそも、フェノキシ基を有するモノマーを組み合わせることは容易に成し得る。」と主張する。
しかしながら、上記2(1)ウで説示したように、甲1ないし甲5のいずれの証拠にも、「フェノキシ基を有するモノマー」を用いることによる有利な効果、特にフィラーを含有した上で塗布性に優れたものとなることは記載も示唆もされていない。
このため、甲1発明において、塗布性に優れたものとするために「フェノキシ基を有するモノマー」を含有することを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。

4 まとめ
以上検討したとおり、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、申立理由によっては取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2024-01-10 
出願番号 P2020-512270
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 浩子
特許庁審判官 瀧澤 佳世
細井 龍史
登録日 2023-04-03 
登録番号 7255588
権利者 住友電気工業株式会社
発明の名称 樹脂組成物、光ファイバのセカンダリ被覆材料及び光ファイバ  
代理人 ▲高▼木 邦夫  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 寺澤 正太郎  
代理人 黒木 義樹  

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