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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H02M
管理番号 1406755
総通号数 26 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-10-20 
確定日 2024-01-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第7262318号発明「パワーコンディショナ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7262318号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7262318号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜2に係る特許についての出願は、平成30年2月27日に出願した特願2018−33697号の一部を令和1年6月11日に新たな特許出願としたものであって、令和5年4月13日にその特許権の設定登録がされ、同年4月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年10月20日に特許異議申立人藤本 歩(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件特許発明
特許第7262318号の請求項1〜2に係る発明(以下、「本件特許発明1」〜「本件特許発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
壁面に取り付けられるパワーコンディショナであって、
電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子と、電力を出力するための配線が接続される出力側接続端子とを有する本体と、
該本体の前側に取り付けられる正面カバーと、を備え、
前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である、ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
壁面に取り付けられるパワーコンディショナであって、
電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子と、電力を出力するための配線が接続される出力側接続端子とを有する本体と、
該本体の前側に取り付けられる正面カバーと、を備え、
該正面カバーは、ビスにより前記本体に取り付けられており、
前記正面カバーは、上部に、前記本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である、ことを特徴とするパワーコンディショナ。」

第3 申立理由の概要
申立人による申立理由の概要、及び申立人が提出した証拠は以下のとおりである。

1 申立理由1(進歩性
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明を主引例とし、各種の公知文献の開示を組み合わせることで、原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。

2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていないものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである。

3 証拠方法
甲第1号証:特開2017−099161号公報
甲第2号証:意匠登録第1588119号公報
甲第3号証:意匠登録第1595741号公報
甲第4号証:特開2017−118597号公報
甲第5号証:特開2016−063715号公報
甲第6号証:特開2015−023688号公報
甲第7号証:実願昭48−004339号(実開昭49−106229号)のマイクロフィルム
甲第8号証:実願昭50−171806号(実開昭52−82851号)のマイクロフィルム
甲第9号証:実願昭63−077794号(実開平2−777号)のマイクロフィルム

第4 甲第1号証〜甲第9号証の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光などの再生可能エネルギーから得られた直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に係り、特に、配線位置の選択性を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム用の電力変換装置(パワーコンディショナと称する)は、その筐体内に、太陽電池が発電する直流電力を入力として昇圧回路で昇圧し、商用電力系統と同期した所定の交流電力にインバータ回路で変換し、この変換された交流電力を商用電力系統へ重畳可能とする電力変換回路を収容している。
【0003】
パワーコンディショナを建物の外壁に取り付ける屋外設置式とする場合、風雨に晒されるため、パワーコンディショナ内に雨水が浸入しないようにすることが重要であり、電力変換回路の発熱部品の放熱を良好にすることも重要である。
このため、パワーコンディショナを収納ボックス内へ収納した状態で、家屋の外壁に取り付ける構造が採用されている(特許文献1)。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合は、余分に必要な収納ボックスの底壁に形成した入力側配線孔と出力側配線孔を通して、入力側配線と出力側配線を行うため、風雨対策が講じられているが、配線が下方へ延びるため外部から視認可能であり、外観上好ましくない。この対策として、これら配線を特別な配線カバーで覆うことが考慮されるが、配線カバーとその取り付け工事費が余分のコストアップをもたらす。
【0006】
本発明は、このような配線カバーを使用しないように、筺体の背壁を貫通して建物の壁内や建物内に配線できる背面配線方式を採用可能とし、この方式が採用できない建物の構造の場合には、上記のように筺体の下壁を貫通して配線される下面配線方式が、選択可能となる配線方式を備える電力変換装置を提供するものであり、筺体内に収容した電力変換回路との電気的接続のし易さ、及び配線の無駄を少なくすることを考慮し、且つ配線工事の融通性が確保できる電力変換装置を提供するものである。」

ウ 「【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電力変換装置の蓋体を開けたときの状態を示す正面視の分解図である。
【図2】本発明に係る電力変換装置の本体の正面図である。
【図3】図2において本体の下壁に設けた直流用配線導入孔及び交流用配線導入孔を通って配線した状態の説明図である。
【図4】図2において本体内の背壁に設けた直流用配線導入孔及び交流用配線導入孔を通って配線した状態の説明図である。
【図5】本発明に係る電力変換装置の本体の裏側から見た斜視図である。
【図6】本発明に係る電力変換装置の本体内に設けた配線配置部及びヒートシンク部分の構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る電力変換装置を建物の外壁に取り付けた状態の側面図である。」

エ 「【0020】
本発明は、太陽光などの再生可能エネルギーから得られる直流電力を商用電力系統と同期した所定の交流電力に変換して前記商用電力系統へ重畳可能に成した電力変換装置において、
上下壁、左右壁及び背壁で囲まれ全面開口の本体と、前記前面開口の周縁をパッキンを介して水密状態に閉塞する蓋体を備え、前記本体の背壁が建物の外壁に沿って縦方向配置となる筐体と、前記筐体内に収容され前記再生可能エネルギーから得られる直流電力を前記商用電力系統へ重畳可能な交流に変換する電力変換回路を備え、
前記筐体内の下部の左右離れた位置に、一方側に前記太陽電池と前記電力変換回路とを接続する入力側配線用端子台、他方側に前記電力変換回路と前記商用電力系統とを接続する出力側配線用端子台が配置され、
前記本体の下壁の前記入力側配線用端子台に対応して前記太陽電池と前記入力側配線用端子台との配線が通る入力側配線導入孔、前記本体の下壁の前記出力側配線用端子台に対応して前記出力側配線用端子台と前記商用電力系統との配線が通る出力側配線導入孔が配置され、
更に、前記本体の背壁には、前記入力側配線用端子台側または前記出力側配線用端子台側のいずれか一方に、前記太陽電池と前記入力側配線用端子台との配線が通る入力側配線導入孔、及び前記出力側配線用端子台と前記商用電力系統との配線が通る出力側配線導入孔が形成され、
前記本体の背壁に形成した前記入力側配線導入孔及び前記出力側配線導入孔を通る配線のうち、遠方に位置する前記入力側配線用端子台または前記出力側配線用端子台へ接続する配線を通す配線配置部が前記本体の下壁に沿って形成された構成である。
以下にその実施例を図に基づき説明する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置1は、再生可能エネルギーから得られる直流電力を商用電力系統へ重畳可能な交流に変換する電力変換回路INVを構成する電気部品が筐体2内に収容されている。筐体2は、本体3と蓋体4によって構成し、本体3は、上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱を構成し、蓋体4は、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成である。
【0022】
図1に示すように、前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6と密着するように、蓋体4の裏面に環状パッキン30を備える。蓋体4を閉じ、取り付けネジ5を締め付けた状態で、蓋体4の裏面の周縁部に取り付けた環状パッキン30が、環状フランジ6に密着することによって前面開口3Fが閉塞されるが、環状パッキン30を環状フランジ6に取り付ける構成でもよい。後述のように、本体3の下壁3Bに設けた第1入力側配線導入孔27A、第2入力側配線導入孔27B、第1出力側配線導入孔28A、第2出力側配線導入孔28B等の必要な開口や孔を除き、本体3の前面開口3Fを蓋体4によって閉塞した状態で、筐体2は防水構造である。
【0023】
本体3内には電力変換装置1の電力変換回路INVが収容されており、図6に示すように、電力変換回路INVを取り付けるためのシャーシ25が、本体3の背壁3Eに並行配置されている。図1乃至図4に示すように蓋体4を開いた状態で、複数の電装基板20がある。これらの電装基板20は危険防止のために、電力変換回路INVの電気回路部品に人が触れることがないように、複数のカバーで電力変換回路INVを覆っても良い。電装基板20に電力変換回路INVの動作状態を表示する表示器21が正面から目視可能に臨む。更に、太陽電池PVと電力変換回路INVとの入力側配線用端子台22、電力変換回路INVと商用電力系統(GRID)63との出力側配線用端子台23、後述の筐体2の背壁に形成した入力側配線導入孔27B及び出力側配線導入孔28Bが、正面から目視できる状態となる。
【0024】
入力側配線用端子台22は、通常はブレーカ付き配線用端子台であり、内部に過電流にて電路を遮断する機構を備えており、電路が遮断したとき下方へ回動作動する操作部22Sを備え、遮断した電路を接続状態へ復帰させる場合は、下方へ作動した操作部22Sを手動にて上方へ回動作動させればよい。出力側配線用端子台23も同様の構成であってもよい。
【0025】
商用電力系統(GRID)が単相交流電力系統である場合は、電力変換回路INVの一つの形態として、太陽電池PVで発電した直流電力がダイオードを通して直流用リアクトルとスイッチング素子を含む昇圧回路で所定電圧に昇圧され、昇圧回路で昇圧した電力を複数のスイッチング素子で構成する直流・交流変換回路で、商用電力系統(GRID)の周波数に同期する正弦波交流に変換し、交流用リアクトルを含むローパスフィルタで高周波ノイズをカットした状態で、リレー接点を介して商用電力系統(GRID)へ出力する構成である。昇圧回路、直流・交流変換回路及びリレー接点は、制御回路によって動作が制御される構成である。
・・・中略・・・
【0033】
電力変換装置1は、放熱フィン7Bの左右両側に、放熱フィン7B及び収容部L1、L2よりも後方に高く張り出した間隔保持板3Yが、本体3の背壁3Eに固定されており、図7に示すように、電力変換装置1は、本体3の背壁3Eが建物Kの外壁に沿って縦方向配置となるように、間隔保持板3Yの後端が建物Kの外壁に当接する状態で、本体3の左右側部に設けた取り付け部3Tを利用し、別途の取り付け具でもって建物Kの外壁に取り付けられる。この状態で、放熱フィン7B間の空気通路が上下方向となり、IPMの放熱効果が達成される。
【0034】
図2等に示すように、筐体2の本体3内下部の左右離れた位置に、一方側に太陽電池PVと電力変換回路INVとを接続する入力側配線用端子台22、他方側に電力変換回路INVから商用電力系統とを接続する出力側配線用端子台23が配置される。図2等に示すように、実施例では、正面視で、右側に入力側配線用端子台22、左側に出力側配線用端子台23を配置している。
・・・中略・・・
【0040】
本発明は、第1入力側配線導入孔27Aまたは第2入力側配線導入孔27Bのいずれか一方を閉塞する入力側閉塞部材29Aと、第1出力側配線導入孔28Aまたは第2出力側配線導入孔28Bのいずれか一方を閉塞する出力側閉塞部材29Bとを備えることにより、使用しない配線導入孔から風雨が筐体2内へ侵入することが防止するようにしておる。
【0041】
即ち、第1入力側配線導入孔27Aと第2入力側配線導入孔27Bは、それぞれ弾力性を有するゴム材や柔軟性を有する合成樹脂製で形成した防水キャップ構造である入力側閉塞部材29Aが、着脱自在に嵌め込まれており、これら孔から筐体2内に風雨が侵入しない構成である。
また、第1出力側配線導入孔28Aと第2出力側配線導入孔28Bは、それぞれ弾力性を有するゴム材や柔軟性を有する合成樹脂製で形成した防水キャップ構造である出力側閉塞部材29Bが、着脱自在に嵌め込まれており、これら導入孔27A、27B、28A、28Bから筐体2内に風雨が侵入しない構成である。
【0042】
このような構成によって、上記のような下面配線方式では、背壁3Eの第2入力側配線導入孔27Bの入力側閉塞部材29Aと第2出力側配線導入孔28Bの出力側閉塞部材29Bを嵌め込んだままとし、下壁3Bの第1入力側配線導入孔27Aの入力側閉塞部材29Aと、第1出力側配線導入孔28Aの出力側閉塞部材29Bを取り外して、PF管や防止コネクタなどを用いて所期の配線を行う。この場合、下壁3Bの第1入力側配線導入孔27A及び第1出力側配線導入孔28Aでは、配線周囲の隙間にパテ等の適宜の填材を詰めて、この隙間を埋める。
また、上記のような背面配線方式では、下壁3Bの第1入力側配線導入孔27Aの入力側閉塞部材29Aと、第1出力側配線導入孔28Aの出力側閉塞部材29Bを嵌め込んだままとし、背壁3Eの第2入力側配線導入孔27Bの入力側閉塞部材29Aと、第2出力側配線導入孔28Bの出力側閉塞部材29Bを取り外して、PF管や防止コネクタなどを用いて所期の配線を行う。この場合、背壁3Eの第2入力側配線導入孔27B及び第2出力側配線導入孔28Bでは、配線周囲の隙間にパテ等の適宜の填材を詰めて、この隙間を埋める。
・・・中略・・・
【0050】
実施例では、太陽電池PVはPV1、PV2、PV3、PV4のように4ユニットで構成しており、入力側配線用端子台22もそれに対応して4セットを備える。図3に示すように、筺体2の下壁、即ち本体3の下壁3Bを貫通して配線される下面配線方式では、PV1とPV2の+配線DCと−配線DCが、一方(左側)の第1入力側配線導入孔27Aを通り、それぞれ対応する左側2個の入力側配線用端子台22へ接続される。また、PV3とPV4の+配線DCと−配線DCが、他方(右側)の第1入力側配線導入孔27Aを通って、それぞれ対応する右側2個の入力側配線用端子台22へ接続される。
【0051】
一方、電力変換回路INVで変換された3相交流電力は、出力側配線用端子台23にそれぞれ接続された3本の配線ACが第1出力側配線導入孔28Aをそれぞれ通って商用電力系統と接続される。」

オ 「【図1】



カ 「【図3】



キ 「【図4】



ク 「【図5】



ケ 「【図6】



コ 「【図7】



(2)甲1発明
ア 上記(1)アの段落【0002】の「電力変換装置(パワーコンディショナと称する)」との記載から、電力変換装置は、“パワーコンディショナ”と称することもできるものであるから、上記(1)エの段落【0021】には、“再生可能エネルギーから得られる直流電力を商用電力系統へ重畳可能な交流に変換する電力変換回路INVを構成する電気部品が筐体2内に収容されているパワーコンディショナ”が記載されているといえる。

イ 上記(1)エの段落【0021】には、“筐体2は、本体3と蓋体4によって構成され、本体3は、上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱を構成し、蓋体4は、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成であ”ることが記載されている。

ウ 上記(1)エの段落【0020】の「全面開口の本体と、前記前面開口の周縁をパッキンを介して水密状態に閉塞する蓋体」との記載から、本体の前面開口は、蓋体によって水密状態に閉塞されるものであるから、上記(1)エの段落【0022】には、“前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6と密着するように、蓋体4の裏面に環状パッキン30を備え、蓋体4を閉じ、取り付けネジ5を締め付けた状態で、蓋体4の裏面の周縁部に取り付けた環状パッキン30が、環状フランジ6に密着することによって前面開口3Fが水密状態に閉塞され”ることが記載されているといえる。
また、同段落【0022】には、“本体3の下壁3Bに設けた第1入力側配線導入孔27A、第2入力側配線導入孔27B、第1出力側配線導入孔28A、第2出力側配線導入孔28B等の必要な開口や孔を除き、本体3の前面開口3Fを蓋体4によって閉塞した状態で、筐体2は防水構造であ”ることが記載されている。

エ 上記(1)エの段落【0034】には、“筐体2の本体3内下部の左右離れた位置に、正面視で右側に太陽電池PVと電力変換回路INVとを接続する入力側配線用端子台22、正面視で左側に電力変換回路INVから商用電力系統とを接続する出力側配線用端子台23が配置され”ることが記載されている。

オ 上記(1)エの段落【0024】には、“入力側配線用端子台22は、ブレーカ付き配線用端子台であり、内部に過電流にて電路を遮断する機構を備えており、下方へ作動した操作部22Sを手動にて上方へ回動作動させれば、遮断した電路を接続状態へ復帰させることできるものであ”ることが記載されている。

カ 上記(1)カで摘記した図3の記載から、“太陽電池PVは、本体3の外部にある”ことが看取できるから、上記(1)エの段落【0050】には、“本体3の外部にある太陽電池PVはPV1、PV2、PV3、PV4のように4ユニットで構成しており、入力側配線用端子台22もそれに対応して4セットを備え、筺体2の下壁、即ち本体3の下壁3Bを貫通して配線される下面配線方式では、PV1とPV2の+配線DCと−配線DCが、一方(左側)の第1入力側配線導入孔27Aを通り、それぞれ対応する左側2個の入力側配線用端子台22へ接続され、また、PV3とPV4の+配線DCと−配線DCが、他方(右側)の第1入力側配線導入孔27Aを通って、それぞれ対応する右側2個の入力側配線用端子台22へ接続されて”いることが記載されているといえる。

キ 上記(1)エの段落【0051】には、“電力変換回路INVで変換された3相交流電力は、出力側配線用端子台23にそれぞれ接続された3本の配線ACが第1出力側配線導入孔28Aをそれぞれ通って商用電力系統と接続されて”いることが記載されている。

ク 上記イより、「環状フランジ6」は、“本体3の前面開口3Fの周縁を巡る”ものである。そして、上記(1)クで摘記した図5(本発明に係る電力変換装置の本体の裏側から見た斜視図)及び上記(1)ケで摘記した図6(本発明に係る電力変換装置の本体内に設けた配線配置部及びヒートシンク部分の構成を示す断面図)における「環状フランジ6」の形状に注目すると、“環状フランジ6は、上壁3A部分において上方に伸び、下壁3B部分において下方に伸び、左壁3C部分において左方に伸び、右壁3D部分において右方に伸びた形状であ”ることが看取できる。

ケ 上記クの検討を踏まえると、上記(1)ケで摘記した図6の記載から、“蓋体4は、下方に伸びた環状フランジ6のさらに下方に伸びたうえで後方に折れ曲がった形状をして”いることが看取できる。

コ 上記アを踏まえると、上記(1)コで摘記した図7の記載と上記(1)エの段落【0033】の記載(特に下線部の記載)から、甲第1号証には、“電力変換装置1(パワーコンディショナ)は、建物Kの外壁に取り付けられる”ことが記載されているといえる。

サ 上記ア〜コの検討から、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「再生可能エネルギーから得られる直流電力を商用電力系統へ重畳可能な交流に変換する電力変換回路INVを構成する電気部品が筐体2内に収容されているパワーコンディショナであって、
筐体2は、本体3と蓋体4によって構成され、本体3は、上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱を構成し、蓋体4は、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成であり、
前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6と密着するように、蓋体4の裏面に環状パッキン30を備え、蓋体4を閉じ、取り付けネジ5を締め付けた状態で、蓋体4の裏面の周縁部に取り付けた環状パッキン30が、環状フランジ6に密着することによって前面開口3Fが水密状態に閉塞され、
本体3の下壁3Bに設けた第1入力側配線導入孔27A、第2入力側配線導入孔27B、第1出力側配線導入孔28A、第2出力側配線導入孔28B等の必要な開口や孔を除き、本体3の前面開口3Fを蓋体4によって閉塞した状態で、筐体2は防水構造であり、
筐体2の本体3内下部の左右離れた位置に、正面視で右側に太陽電池PVと電力変換回路INVとを接続する入力側配線用端子台22、正面視で左側に電力変換回路INVから商用電力系統とを接続する出力側配線用端子台23が配置され、
入力側配線用端子台22は、ブレーカ付き配線用端子台であり、内部に過電流にて電路を遮断する機構を備えており、下方へ作動した操作部22Sを手動にて上方へ回動作動させれば、遮断した電路を接続状態へ復帰させることできるものであり、
本体3の外部にある太陽電池PVはPV1、PV2、PV3、PV4のように4ユニットで構成しており、入力側配線用端子台22もそれに対応して4セットを備え、筺体2の下壁、即ち本体3の下壁3Bを貫通して配線される下面配線方式では、PV1とPV2の+配線DCと−配線DCが、一方(左側)の第1入力側配線導入孔27Aを通り、それぞれ対応する左側2個の入力側配線用端子台22へ接続され、また、PV3とPV4の+配線DCと−配線DCが、他方(右側)の第1入力側配線導入孔27Aを通って、それぞれ対応する右側2個の入力側配線用端子台22へ接続されており、
電力変換回路INVで変換された3相交流電力は、出力側配線用端子台23にそれぞれ接続された3本の配線ACが第1出力側配線導入孔28Aをそれぞれ通って商用電力系統と接続されており、
本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6は、上壁3A部分において上方に伸び、下壁3B部分において下方に伸び、左壁3C部分において左方に伸び、右壁3D部分において右方に伸びた形状であり、
蓋体4は、下方に伸びた環状フランジ6のさらに下方に伸びたうえで後方に折れ曲がった形状をしており、
建物Kの外壁に取り付けられる、
パワーコンディショナ。」

2 甲第2号証
(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【意匠に係る物品の説明】本物品は、DC/DCコンバータとして使用される電力変換機である。」(第1頁)

イ 「【前方斜視図】



ウ 「【後方斜視図】



エ 「【正面図】



オ 「【左側面図】



カ 「【平面図】




キ 「【内部機構を省略したA−A拡大断面図】



ク 「【背面図】



ケ 「【右側面図】



コ 「【底面図】



サ 「【各部の名称を示す参考図】



(2)甲2記載事項

ア 上記(1)アの記載から、甲第2号証には、「DC/DCコンバータとして使用される電力変換機」が記載されている。

イ 上記(1)イ〜(1)サの記載から、“電力変換機の形状は概略直方体形状であ”ることが看取され、“その正面から見た場合に、上面と底面と左右の側面と前面と背面を有し”ていることが看取できる。
また、電力変換機の概略直方体形状を有する部分は、その内部に電力変換機を構成する回路が収容されるものであるから、電力変換機の“本体”といえる。
そうすると、甲第2号証には、電力変換機は、“形状が概略直方体形状で、正面から見た場合に、上面と底面と左右の側面と前面と背面を有する本体を備え”ていることが記載されているといえる。

ウ 上記(1)サの【各部の名称を示す参考図】から、“電力変換機は、前面パネルと放熱フィンとカバーと配線口を有し”ていることが看取できる。

エ 上記(1)キの【内部機構を省略したA−A拡大断面図】の記載と、上記(1)サの【各部の名称を示す参考図】とを合わせて参照すると、“前面パネルは、電力変換機の前側において本体にネジで取り付けられて”いることが看取できる。

オ 上記(1)キより、“前面パネルは、上側において、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がった形状をして”いることが看取できる。
また、上記(1)のウ、オ、ク、ケ、サによれば、“前面パネルは、上辺の左右の一部分を除く部分において、後方に折れ曲がったうえで、さらに、下方に折れ曲がった形状をして”いることが看取できる。
してみれば、甲第2号証には、“前面パネルの上辺は、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がったうえで、さらに、左右の一部分を除く部分において、下方に折れ曲がった形状をして”いることが記載されているといえる。

カ 上記ア〜オの検討から、甲第2号証には次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。

「DC/DCコンバータとして使用される電力変換機であって、
形状が概略直方体形状であり、正面から見た場合に、上面と底面と左右の側面と前面と背面を有する本体を備え、
前記電力変換機は、前面パネルと放熱フィンとカバーと配線口を有しており、
前記前面パネルは、電力変換機の前側において本体にネジで取り付けられており、
前記前面パネルの上辺は、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がったうえで、さらに、左右の一部分を除く部分において、下方に折れ曲がった形状をしていること。」

3 甲第3号証
(1)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【意匠に係る物品】電力変換器」(第1頁)

イ 「【前方斜視図】



ウ 「【後方斜視図】



エ 「【正面図】



オ 「【背面図】



カ 「【左側面図】



キ 「【内部機構を省略したA−A拡大断面図】



ク 「【右側面図】



ケ 「【平面図】



コ 「【底面図】



サ 「【各部の名称を示す参考図】



(2)甲3記載事項

ア 上記(1)アの記載から、甲第3号証には、「電力変換器」が記載されている。

イ 上記(1)イ〜(1)サの記載から、“電力変換器の形状は概略直方体形状であ”ることが看取され、“その正面から見た場合に、上面と底面と左右の側面と前面と背面を有し”ていることが看取できる。
また、電力変換器の概略直方体形状を有する部分は、その内部に電力変換器を構成する回路が収容されるものであるから、電力変換器の“本体”といえる。
そうすると、甲第3号証には、電力変換器は、“形状が概略直方体形状で、正面から見た場合に、上面と底面と左右の側面と前面と背面を有する本体を備え”ていることが記載されているといえる。

ウ 上記(1)サの【各部の名称を示す参考図】から、“電力変換器は、前面パネルと放熱フィンとカバーと配線口を有し”ていることが看取できる。

エ 上記(1)キの【内部機構を省略したA−A拡大断面図】の記載と、上記(1)サの【各部の名称を示す参考図】とを合わせて参照すると、“前面パネルは、電力変換器の前側において本体にネジで取り付けられて”いることが看取できる。

オ 上記(1)キより、“前面パネルは、上側において、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がったうえで、さらに、下方に折れ曲がった形状をして”いることが看取できる。
また、上記(1)のウ、オ、ク、ケ、サによれば、“前面パネルは、上辺の左右の一部分を除く部分において、後方に折れ曲がったうえで、さらに、下方に折れ曲がった形状をして”いることが看取できる。
してみれば、甲第3号証には、“前面パネルの上辺は、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がったうえで、さらに、左右の一部分を除く部分において、下方に折れ曲がった形状をして”いることが記載されているといえる。

カ 上記ア〜オの検討から、甲第3号証には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されているといえる。

「電力変換器であって、
形状が概略直方体形状であり、正面から見た場合に、上面と底面と左右の側面と前面と背面を有する本体を備え、
前記電力変換器は、前面パネルと放熱フィンとカバーと配線口を有しており、
前記前面パネルは、電力変換器の前側において本体にネジで取り付けられており、
前記前面パネルの上辺は、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がったうえで、さらに、左右の一部分を除く部分において、下方に折れ曲がった形状をしていること。」

4 甲第4号証
(1)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光などの再生可能エネルギーから得られた直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関し、特に、放熱効果を向上させる電力変換装置に関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム用の電力変換装置(パワーコンディショナと称する)は、その筐体内に、太陽電池が発電する直流電力を入力として昇圧回路で昇圧し、商用電力系統と実質的に同期した所定の交流電力にインバータ回路で変換し、この変換された交流電力を商用電力系統へ重畳可能とする電力変換回路を収容している。この電力変換回路には、半導体のスイッチング素子やリアクトル等の発熱部品を備えており、それらの発熱する熱はヒートシンクの基板部に熱伝導状態に取り付けられ、ヒートシンクの放熱フィンから放熱される仕組みである(特許文献1)。」

ウ 「【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電力変換装置のヒートシンクとリアクトル部分を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る電力変換装置の蓋体を開けた状態でリアクトル部分のみを示す正面斜視図である。
【図3】本発明に係る電力変換装置の蓋体を開けた状態でリアクトル部分のみを示す正面図である。
【図4】図3のA−A断面における直流用リアクトル部分の説明図である。
【図5】図3のB−B断面における交流用リアクトル部分の説明図である。
【図6】図3のC−C断面における交流用リアクトル部分と直流用リアクトル部分の説明図である。
【図7】図3のD−D断面図である。
【図8】直流用リアクトルの斜視図である。
【図9】本発明に係る電力変換回路の構成図である。
【図10】本発明に係る電力変換装置を建物の外壁Kに取り付けた状態の側面図である。
【図11】本発明に係る電力変換装置の筐体の背壁に伝熱抑制板を取り付けた状態を示す分解斜視図である。」

エ 「【0018】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置1は、再生可能エネルギーの一つである太陽電池PVから得られる直流電力を商用電力系統へ重畳可能な交流(系統の交流電力と実質的に同期する交流電力)に変換する電力変換回路INVを構成する電気部品が筐体2内に収容されている。筐体2は、本体3と蓋体4によって構成し、本体3は、上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱を構成し、蓋体4は、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、図示しない環状パッキンを介して4隅を取り付けネジによって着脱自在に取り付ける構成である。下壁3Bには、太陽電池PVと電力変換回路INVとの入力ラインの配線孔27Aと、電力変換回路INVと商用電力系統との出力ラインの配線孔28Aを形成している。配線孔は27A、27Bはこのような形状に限るものではなく、配線間のつながる円形の孔を複数設けてもよい。」

オ 「【0038】
また、ヒートシンク71、72を背壁3Eの外側にネジ等で取り付ける際にヒートシンク71、72と背壁3Eとの間でありかつ放熱開口5、51の外側に防水用のパッキン又はシーリング材を介して取り付けると金属製本体3の内部への水の浸入を抑制できる。同時に、ヒートシンク71、72と背壁3Eとの間に空気が流れる空間ができこの空間を冷却用に作用させることができるものである。このパッキン(またはシーリング材)はヒートシンク71、72の周縁沿いに位置するように配置しても良い。この場合ヒートシンク71、72と背壁3Eとの間の空間は断熱層としての作用を奏するものである。尚、屋内設置とする場合はこのようなパッキンを省略することが可能である。シーリング材にはシリコーン、変成シリコーン、ウレタン、アクリル、ブチルなどが用いられるが耐久性と防水性とを適に備えるものであれば良い。」

カ 「【図1】



キ 「【図2】



ク 「【図3】



ケ 「【図4】



コ 「【図5】



サ 「【図6】



(2)甲4記載事項

ア 上記(1)のア、イの記載から、甲第4号証には、“太陽光などの再生可能エネルギーから得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ”が記載されている。

イ 上記(1)エ、オの記載から、甲第4号証には、“筐体2が、金属製の本体3と蓋体4によって構成され、本体3が、上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱で構成され、蓋体4が、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、環状パッキンを介して4隅を取り付けネジによって着脱自在に取り付けられる構成であるパワーコンディショナ”が記載されている。

ウ 上記図3(上記(1)ク)の「A−A断面における直流用リアクトル部分の説明図である」図4(上記(1)ケ)、及び上記図3の「C−C断面における交流用リアクトル部分と直流用リアクトル部分の説明図である」図6(上記(1)サ)によれば、“上壁3A側から上方に伸びる環状フランジ6は、上方に伸びた後、後方に折れ曲がっており、また、下壁3B側から下方に伸びる環状フランジ6は、下方に伸びた後、後方に折れ曲がって”いることが看取できる。

エ 上記図3(上記(1)ク)の「B−B断面における交流用リアクトル部分の説明図である」図5(上記(1)コ)は、図3におけるB−B断面を示す矢印記号の方向を考慮すると、図5の左側が上壁3A側であり、図5の右側が右壁3D側であると認められる。そうすると、上記図5から、“上壁3A側から上方に伸びる環状フランジ6は、上方に伸びた後、後方に折れ曲がっている一方、右壁3D側から右方に伸びる環状フランジ6は、右方に伸びた後、後方に折れ曲がっていない”ことが看取できる。
なお、“上壁3A側から上方に伸びる環状フランジ6は、上方に伸びた後、後方に折れ曲がっている一方、右壁3D側から右方に伸びる環状フランジ6は、右方に伸びた後、後方に折れ曲がっていない”ことは、図1(上記(1)カ)及び図2(上記(1)キ)の記載からもうかがえる。

オ 上記ウ、エの検討から、甲第4号証には、“上壁3A側から上方に伸びる環状フランジ6は、上方に伸びた後、後方に折れ曲がっており、また、下壁3B側から下方に伸びる環状フランジ6は、下方に伸びた後、後方に折れ曲がっている一方、右壁3D側から右方に伸びる環状フランジ6は、右方に伸びた後、後方に折れ曲がっていないこと”が記載されているといえる。

カ 上記ア〜オの検討から、甲第4号証には次の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されているといえる。

「太陽光などの再生可能エネルギーから得られた直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナであって、
筐体2が、金属製の本体3と蓋体4によって構成され、本体3が、上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱で構成され、蓋体4が、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、環状パッキンを介して4隅を取り付けネジによって着脱自在に取り付けられる構成であるパワーコンディショナにおいて、
上壁3A側から上方に伸びる環状フランジ6は、上方に伸びた後、後方に折れ曲がっており、また、下壁3B側から下方に伸びる環状フランジ6は、下方に伸びた後、後方に折れ曲がっている一方、右壁3D側から右方に伸びる環状フランジ6は、右方に伸びた後、後方に折れ曲がっていないこと。」

5 甲第5号証
(1)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、たとえばソーラパネルなどにおいて発電された直流電力を所定周波数の交流電力に変換し、商用系統に連系させるなどの用途に用いられるパワーコンディショナに関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、特定の電気回路をスペース効率良く筐体内に組み込むことができるとともに、電磁ノイズに起因する不具合を好適に防止または抑制することが可能なパワーコンディショナを提供することを、その課題としている。」

ウ 「【0015】
このパワーコンディショナAは、フロントパネル2によって前面部が塞がれる筐体1内に、出力回路基板C1、電源回路基板C2、系統端子台3、インバータ回路基板C3、左右一対のリアクトル4(4a,4b)、およびその他の電気部品が収容されている。前記各回路および電気部品のうち、電源回路、インバータ回路、出力回路、およびリアクトルなどの機能については、「背景技術」の欄で既に述べたとおりであり、重複説明は省略する。なお、インバータ回路基板C3にコンバータ回路をも搭載した構成とすることもできる。」

エ 「【0021】
より具体的には、出力回路基板C1は、リアクトル4と上下に並ぶようにリアクトル4の下方に配され、かつ取り付け面部10に取り付けられている。出力回路基板C1の取り付け手段としては、たとえば取り付け面部10に突設された支持部12に基板本体81を当接させ、かつこの基板本体81をネジ体91を用いて締結する手段が採用されている。これに対し、電源回路基板C2は、基板本体82が基板組み付け部材7Aにネジ体92を用いて組み付けられ、かつこの基板組み付け部材7Aは、ブラケット7Bに取り付けられている。基板組み付け部材7Aおよびブラケット7Bは、ともに金属板にプレス加工を施して形成されたものである。」

オ「【図4】




(2)甲5記載事項

ア 上記(1)アには、“ソーラパネルなどにおいて発電された直流電力を所定周波数の交流電力に変換し、商用系統に連系させるなどの用途に用いられるパワーコンディショナ”が記載されている。

イ 上記(1)ウには、パワーコンディショナAは、“フロントパネル2によって前面部が塞がれる筐体1を備え”ることが記載されている。

ウ 上記(1)オで摘記した図4から、“筐体1はパワーコンディショナの前面部において、上部が上側に折れ曲がって上方に伸びており、また、下部が下側に折れ曲がって下方に伸びて”いる形状を看取できる。
また、同じく図4から、“フロントパネル2は、パワーコンディショナの前面部において、筐体1の上部が上側に折れ曲がって上方に伸びた部分よりもさらに上方において後方に折れ曲がっており、また、筐体1の下部が下側に折れ曲がって下方に伸びた部分よりもさらに下方において後方に折れ曲がって”いる構成を看取できる。

エ 上記ア〜ウの検討から、甲第5号証には次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されているといえる。

「ソーラパネルなどにおいて発電された直流電力を所定周波数の交流電力に変換し、商用系統に連系させるなどの用途に用いられるパワーコンディショナであって、
フロントパネル2によって前面部が塞がれる筐体1を備え、
筐体1はパワーコンディショナの前面部において、上部が上側に折れ曲がって上方に伸びており、また、下部が下側に折れ曲がって下方に伸びており、
フロントパネル2は、パワーコンディショナの前面部において、筐体1の上部が上側に折れ曲がって上方に伸びた部分よりもさらに上方において後方に折れ曲がっており、また、筐体1の下部が下側に折れ曲がって下方に伸びた部分よりもさらに下方において後方に折れ曲がっていること。」

6 甲第6号証
(1)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両には、DC−DCコンバータやこれを搭載した充電装置等の電力変換装置が用いられている。このような電力変換装置としては、例えば、特許文献1に示されたものがある。特許文献1の電力変換装置は、半導体モジュール、トランス、コンデンサ等の電子部品と、これら電子部品を収容するケースとを有している。
【0003】
ケースは、矩形状の底部と、底部の外周縁から立設すると共に底部と反対側の上端に開口部を有する壁部とを備えたケース本体と、壁部の開口部を覆う蓋体とを有している。
ケースとしては、ケース本体が、アルミダイキャストによって形成され、蓋体が、ステンレス等の板金部材をプレス加工して形成されたものが知られている。
【0004】
車両の生産ラインにおける電力変換装置の車両への搭載は、ロボット等を用いて行われることから、ケースに把持部を設ける場合がある。この把持部は、蓋体の外周縁から互いに反対側でかつ外側に向かって突出させて形成することができる。」

ウ 「【0018】
(実施例1)
上記電力変換装置にかかる実施例について、図1〜図3を参照して説明する。
図2に示すごとく、電力変換装置1は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール31を有する半導体ユニット3と、半導体ユニット3を収容するケース2とを備えている。
ケース2は、半導体ユニット3の下方に配される底部211と底部211から半導体ユニット3側に向かって半導体ユニット3の側方を囲むように立設し上方が開口した壁部212とを有するケース本体21と、ケース本体21の上部に配される蓋体22とを有している。
・・・中略・・・
【0020】
以下、さらに詳細に説明する。
図1及び図2に示すごとく、本例においては、蓋体22における一対の把持部26が並んだ方向を並び方向Y、蓋体22の主面と直交する方向を法線方向Z、また、並び方向Y及び法線方向Zの両方と直交する方向を直交方向Xとして、以下説明する。
また、直交方向Xにおいて、冷媒導入管323及び冷媒排出管324の先端側を前方とし、反対側を後方とする。また、法線方向Zにおいて、補強突出部28の突出する側を上方とし、反対側を下方とする。」

エ 「【0030】
図1〜図3に示すごとく、蓋体22は、ケース本体21の開口を覆う蓋体本体部23と、蓋体本体部23の外周縁から外側に向かって突出した一対の把持部26とを有している。
一対の把持部26は、直交方向Xにおいて、蓋体本体部23における互いに反対側の位置から外周側に向かってそれぞれ突出して形成されている。各把持部26は、蓋体本体部23の蓋体22の直交方向X両側にそれぞれ延びる側方延設部261と、側方延設部261の外周側先端から下方に向かって延びる垂下部262とを有している。」

オ 「【図1】



カ 「【図2】



キ 「【図3】



(2)甲6記載事項
上記(1)のア〜キの記載から、甲第6号証には、次の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されているといえる。

「ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に用いられる電力変換装置に、車両の生産ラインにおける電力変換装置の車両への搭載を行うロボットが使用するための把持部を設けること。
電力変換装置1は、半導体ユニット3と、半導体ユニット3を収容するケース2とを備え、ケース2は、ケース本体21と、ケース本体21の上部に配される蓋体22とを有し、蓋体22は、ケース本体21の開口を覆う蓋体本体部23と、蓋体本体部23の外周縁から外側に向かって突出した一対の把持部26とを有し、
蓋体22における一対の把持部26が並んだ方向を並び方向Y、蓋体22の主面と直交する方向を法線方向Z、また、並び方向Y及び法線方向Zの両方と直交する方向を直交方向Xとすると、
各把持部26は、蓋体本体部23の蓋体22の直交方向X両側の方向、すなわちY方向にそれぞれ延びる側方延設部261と、側方延設部261の外周側先端から下方に向かって延びる垂下部262とを有していること。」

7 甲第7号証
(1)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「 3、考案の詳細な説明
本考案はたとえばテレビジョン受像機等、各種電気器具の把手装置に関するものでその使い勝手をよくしようとするものである。
従来の把手を第1図に示す。すなわち従来は第1図に示すようにキャビネットあるいはバックカバーの一部を断面コ字状に形成し把手部1としていた。しかし上記従来の把手部1は手の接触面2がなめらかで、かつ手を挿入した状態で保持するため、手が滑りやすく持ちにくいという欠点があった。
本考案は上記従来の欠点を除去するもので、以下その一実施例について第2図、第3図とともに説明する。」(第1頁9行〜第2頁2行)

イ 「 第2図において、3は断面コ字状の把手部で、保持部5、挿入孔4、この挿入孔4内に位置する補強片7を有する。前記補強片7は上記保持部5と極薄肉部6を介して一体に設けられ、保持部5と同一形状をなしており、通常は第2図に点線で示すごとく挿入孔4内に位置している。
次に上記把手部3を実際に使用する場合について説明する。前記補強片7を極薄肉部6を支点として矢印方向に回転させ、そのフラット面を保持部5の下面に接触させる。これにより保持部5は補強され、かつアールが多数個所できるため手に握りやすい形状となる。」(第2頁3行〜同頁14行)

ウ 「 第3図はその使用状態を示す。
上記挿入孔4に指8を通して、手全体で保持部5、補強片7を握ることができるため持ち易くなり、かつ保持部5と補強片7を重ね合わせているためアールの大きな丸みをおびた形状になり握った感じも極めて良いものである。」(第3頁3行〜同頁8行)

エ 「第1図



オ 「第2図



カ 「第3図



(2)甲7記載事項
上記(1)のア〜カの記載から、甲第7号証には、次の事項(以下、「甲7記載事項」という。)が記載されているといえる。

「テレビジョン受像機等、各種電気器具の把手装置であって、キャビネットあるいはバックカバーの一部を断面コ字状に形成し把手部1とすること。」

8 甲第8号証
(1)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「 3、考案の詳細な説明
本案はテレビジョン受像機、ラジオ受信機等の電気機器の把手構造に関するものであり、その目的とするところは電気機器の運搬時の安定化を図り、かつその組立性、経済性を向上せしめることにある。
一般に電気機器の把手構造は第1図及び第2図に示すように、電気機器のキャビネット本体に対して取付けられるバックカバー1の上面位置に把手用の凹部2を形成し、この凹部2の上面内面位置にすべり止め用の掛り部3を接着剤によって貼り付けたものであり、すべり止め用の掛け部3を別部材として形成し、これを接着剤によって把手用の凹部2の上面内面位置に貼り付けることから組立性工数が多くなり、コスト高になるという不都合があった。また、接着剤によるすべり止め用の掛け部3の取付け性が不充分な場合には掛け部3が把手用の凹部2から外れ、電気機器を手によって充分に保持することがむずかしくなり運搬時に落すという欠点があった。」(第1頁10行〜第2頁9行)

イ 「第3図及び第4図は本案の把手構造の一構成例を示し、図中、11はバックカバーであり、キャビネット本体に対して組立てられ電気機器キャビネットを構成するこのバックカバー11の上面位置に把手用の凹部12が形成されている。13は前記把手用の凹部12の上面内面位置に形成されたすべり止め用の掛り部であり、細い突状リブ13aを複数本間隔をおいて一体成形することにより構成されるものである。」(第2頁17行〜第3頁5行)

ウ 「第1図



エ 「第2図



オ 「第3図



カ 「第4図



(2)甲8記載事項
上記(1)のア〜カの記載から、甲第8号証には、次の事項(以下、「甲8記載事項」という。)が記載されているといえる。

「テレビジョン受像機、ラジオ受信機等の電気機器の把手構造において、電気機器の運搬時の安定化を図るために、電気機器キャビネットを構成するバックカバー11の上面位置に把手用の凹部12を形成し、前記把手用の凹部12の上面内面位置にすべり止め用の掛り部13を形成すること。」

9 甲第9号証
(1)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

ア 「 3. 考案の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
この考案は両側板に運搬用把手を備えた筐体に係るもので、詳しくは、組立後に取手を取り付けることなく、組立てることによって把手穴が形成される筐体の把手構造に関するものである。」(第1頁13〜18行)

イ 「〔従来の技術〕
第4図は従来の筐体の把手構造の一構成例を示す斜視図であって、筐体1を運搬するため、その両側板2,2’にそれぞれプラスチック・ブッシュ3,3’(図示してない)を取り付けていた。第5図は従来の他の構成例を示す斜視図で、第4図のプラスチック・ブッシュ3,3’の代りにトランク取手4,4’(図示していない)を取り付けていた。そして、1人で運搬が出来ない重量物の筐体においては、第6図の斜視図に示すように、トランク取手4を複数個並設していた。」(第1頁19行〜第2頁9行)

ウ 「〔考案が解決しようとする課題〕
しかしなから、上記構成の筐体の把手構造では、筐体両側板に加工を施して把手部を設けているため、2人でも運搬ができない重量物の筐体には適用ができず、又、オフィス等に設置する外観重視のOA機器筐体等には不向きであるなどというような問題点を有していた。
本考案は従来の技術が有していたこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、筐体両側板への加工を施すことなく、把手部の大きさ、形状を自由に選択が可能で外観の優れた筐体の把手構造を提供しようとするものである。」(第2頁10行〜第3頁2行)

エ 「〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、本考案に於ける筐体の把手構造は、両側板に運搬用把手を備えた筐体であって、浅い箱状側板の上辺に設けた一定幅の段差部内側に支柱板との接合板をL字状に突設し、支柱板上辺外側には前記側板の段差部上方において、これと対向する鉤状把手部を突設し、この鉤状把手部の下端辺を天井板側壁の下端鉤部にて覆ってなるものである。」(第3頁3行〜同頁11行)

オ 「第1〜3図において、11は筐体、12は側板、12aは上辺段差部、12bはL字状に突設された接合部、13は筐体本体の支柱板、13aは支柱板13上辺から外方に突設された鉤状の把手部、13bは把手部J3aの下端辺、14は天井板で14aはその両側部に垂下する壁であり、14bはその先端鉤部である。」(第4頁6〜12行)

カ 「更に、筐体の大きさ、重量により、把手部の形状、大きさを自由に変えられるので、1人用、2人用の把手を設けることが容易になり、デザインを重視するOA機器の筺体にも適用可能である。」(第5頁12〜16行)

キ 「第1図



ク 「第2図



ケ 「第3図



コ 「第4図



サ 「第5図



シ 「第6図



(2)甲9記載事項
上記(1)のア〜シの記載から、甲第9号証には、次の事項(以下、「甲9記載事項」という。)が記載されているといえる。

「OA機器の筺体の両側板の上方に運搬用把手を備えること。」

第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「パワーコンディショナ」は、本件特許発明1の「パワーコンディショナ」に相当する。
そして、甲1発明の「パワーコンディショナ」は、「建物Kの外壁に取り付けられる」ものであるところ、「建物Kの外壁」は、“壁面”といえるから、甲1発明の「建物Kの外壁に取り付けられる」「パワーコンディショナ」は、本件特許発明1の「壁面に取り付けられるパワーコンディショナ」に相当する。

(イ)a 甲1発明の「本体3」は、「上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱を構成」するものであって、その「内下部の左右離れた位置に、正面視で右側に太陽電池PVと電力変換回路INVとを接続する入力側配線用端子台22、正面視で左側に電力変換回路INVから商用電力系統とを接続する出力側配線用端子台23が配置され」るものであるから、甲1発明の「本体3」は、「入力側配線用端子台22」と「出力側配線用端子台23」とを“有している”といえる。
b 甲1発明の「入力側配線用端子台22」は、「太陽電池PVと電力変換回路INVとを接続する」ものであるから、太陽電池PVから出力される“直流電力”を電力変換回路INVに“入力するための配線を接続する”ためのものといえ、また、「入力側配線用端子台22」に端子があることは明らかであるから、甲1発明は、本件特許発明1の「電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子」に相当する構成を備えるものである。
c 甲1発明では、「電力変換回路INVで変換された3相交流電力は、出力側配線用端子台23にそれぞれ接続された3本の配線ACが第1出力側配線導入孔28Aをそれぞれ通って商用電力系統と接続されて」いて、この記載によれば、甲1発明の「出力側配線用端子台23」は、電力変換回路INVから、商用電力系統を構成する外部装置に“電力を出力するための配線”を接続するものであって、「出力側配線用端子台23」に端子があることは明らかであるから、甲1発明は、本件特許発明1の「電力を出力するための配線を接続する出力側接続端子」に相当する構成を備えるものである。
d 上記a〜cより、甲1発明の「本体3」は、本件特許発明1の「電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子と、電力を出力するための配線が接続される出力側接続端子とを有する本体」に相当する。

(ウ)甲1発明の「筐体2」は、「本体3と蓋体4によって構成され」るものであるところ、「蓋体4」は、「本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成」であるから、甲1発明の「蓋体4」は、「本体3」の“前側”すなわち“正面側”に取り付けられて、「本体3」の“正面側”をカバーする“正面カバー”であるといえる。
したがって、甲1発明の「蓋体4」は、本件特許発明1の「該本体の前側に取り付けられる正面カバー」に相当する。

(エ)甲1発明の「パワーコンディショナ」は、「再生可能エネルギーから得られる直流電力を商用電力系統へ重畳可能な交流に変換する電力変換回路INVを構成する電気部品が筐体2内に収容されている」ものであって、「筐体2は、本体3と蓋体4によって構成され」るものであるから、甲1発明の「パワーコンディショナ」は、「本体3」と「蓋体4」とを“備える”ものといえる。

(オ)上記(ア)〜(エ)のことから、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、また、相違する。

<一致点>
「壁面に取り付けられるパワーコンディショナであって、
電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子と、電力を出力するための配線が接続される出力側接続端子とを有する本体と、
該本体の前側に取り付けられる正面カバーと、を備える、
パワーコンディショナ。」

<相違点1>
本件特許発明1のパワーコンディショナは、「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」のに対して、甲1発明のパワーコンディショナは、上壁3A部分において上方に伸び、下壁3B部分において下方に伸び、左壁3C部分において左方に伸び、右壁3D部分において右方に伸びた形状の環状フランジ6と、当該環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成である蓋体4とを備えているものの、「前記本体の上面前側」に、「該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」を備えるものではなく、また、「該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ものでもない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点1に係る構成を開示するとされる甲第4号証、甲第6号証、及び甲第7〜9号証についてみると、甲第4号証には、上記第4の4(2)カに記載したとおり、「上壁3A側から上方に伸びる環状フランジ6は、上方に伸びた後、後方に折れ曲がって」いる構成(L字形に折り曲げられた形状)が記載されているものの、この部分を「本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」とすることについては、記載も示唆もなく、また、そのようにすることが当該技術分野における技術常識であるともいえない。
また、甲第6号証には、上記第4の6(2)に記載したとおり、「ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に用いられる電力変換装置に、車両の生産ラインにおける電力変換装置の車両への搭載を行うロボットが使用するための把持部を設けること」、「蓋体22は、ケース本体21の開口を覆う蓋体本体部23と、蓋体本体部23の外周縁から外側に向かって突出した一対の把持部26とを有し、蓋体22における一対の把持部26が並んだ方向を並び方向Y、蓋体22の主面と直交する方向を法線方向Z、また、並び方向Y及び法線方向Zの両方と直交する方向を直交方向Xとすると、各把持部26は、蓋体本体部23の蓋体22の直交方向X両側の方向、すなわちY方向にそれぞれ延びる側方延設部261と、側方延設部261の外周側先端から下方に向かって延びる垂下部262とを有していること」は記載されているものの、甲第6号証には、“Y方向を上下方向とする”という記載や示唆はないことから、甲第6号証の「一対の把持部26」は、「前記本体の上面前側に」備えられた「前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」とはいえないし、また、「該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ともいえない。
更に、甲第7〜9号証には、上記第4の7〜9のとおり、「テレビジョン受像機等、各種電気器具の把手装置であって、キャビネットあるいはバックカバーの一部を断面コ字状に形成し把手部1とすること。」(甲第7号証)、「テレビジョン受像機、ラジオ受信機等の電気機器の把手構造において、電気機器の運搬時の安定化を図るために、電気機器キャビネットを構成するバックカバー11の上面位置に把手用の凹部12を形成し、前記把手用の凹部12の上面内面位置にすべり止め用の掛り部13を形成すること。」(甲第8号証)、「OA機器の筺体の両側板の上方に運搬用把手を備えること。」(甲第9号証)が記載されており、甲第7〜9号証には、“電気機器等”を“運搬するための把持部”が記載されているとは認められるものの、甲第7〜9号証には、“電気機器等”を「パワーコンディショナ」とすることは記載も示唆もされておらず、また、甲第7〜9号証の「把持部」は、「前記本体の上面前側に」設けられるものでもないし、「前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」でもなく、また、「該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ものでもない。
してみると、上記甲第4号証、甲第6号証、及び甲第7〜9号証のいずれにも、「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ことは記載も示唆もなく、また、「パワーコンディショナ」の「前記本体の上面前側に」、「該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ようにすることが当該技術分野における技術常識であるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1発明及び甲第4、6、7〜9号証に記載の事項に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、特許異議申立書において、概ね、以下のa、bのとおり主張している。

a 甲第6号証についての主張
(a)甲第6号証は、電力変換装置1を開示し、甲第6号証の電力変換装置1では主に車載用が想定されていて、太陽電池用のパワーコンディショナに使用することの明示はないものの、太陽電池用の一般的なパワーコンディショナのコア部品は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(DC/AC変換回路)であり、車載用の電力変換装置1のコア部品も同様に、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(DC/AC変換回路)であるから、車載用の電力変換装置1に使用されているインバータ回路(DC/AC変換回路)も、耐電圧・耐電流の要件を満たしていれば、パワーコンディショナのインバータ回路(DC/AC変換回路)に使用することが可能である。
特許権者が審判請求書において主張している[1]本体の側面に把持部を設ける必要性を無くして、本体の幅を狭くすることができるという作用効果と、[2]本体の側面の取っ手を無くしても、例えば壁面に取り付ける場合にパワーコンディショナを把持しやすいようにできるという作用効果、を両立可能とすることは、箱状の筐体の電気器具を運搬・設置する場合全般に適用される作用効果であり、インバータ回路(DC/AC変換回路)を含む機器の用途は、上記の作用効果に何ら影響しないものであるから、本件特許発明1の進歩性を検討する上では、その技術分野は、機器の用途で区分せずに拡張して考えるべきであり、その場合、甲第1号証と甲第6号証の技術分野には十分な関連性を有していると考えることができ、当業者はこれらの文献の開示を組み合わせることについて、十分に動機付けられる。
(b)甲第6号証の段落0030の説明と、図3の「26」の「261」、「262」の形状から、甲第6号証の把持部26は、装置の前面の板である蓋体本体部2が、装置の上下(Y方向)に延び(図3の261)、更に後方(Z方向)に延びた(図3の262)、L字形状の折り曲げ形状となっており、この折り曲げ部分を「把持部26」として用いるものと理解できるから、パワーコンディショナが壁面に取り付けられる前の床に置かれている状態では、正面カバーは本体の上側に取り付けられている状態となり、その場合、把持部は、水平方向に伸び、さらに下方に伸びた形状となり、例えば、壁に設置スペースを設けて、甲第6号証の図1乃至図4のX方向を壁の左右方向、Y方向を壁の高さ方向、Z方向を壁の奥行き方向として、甲第6号証の電力変換装置1を壁に設置することは容易に可能である。

b 判例に基づく主張
機械的な構造に関する進歩性の判断においては、「(特許の構造と)同様な構造が引用文献に開示されていれば、用途や作用効果については同文献に開示がなくとも、新規性進歩性は認められない」というのが多くの判例において用いられてきた通常の進歩性判断であり、判例の判断に従えば、甲1−1発明に、甲4記載事項を組み合わせて、相違点1に係る「前記本体の上面前側に、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である部分」を備えるという、本件特許発明1と同じ構成に想到することが容易である以上、その形状部分が、本件特許発明1と同一の「把持部」としての作用効果を奏することは当然のことである。

(イ)申立人の主張についての判断

a 主張aについて
(a)甲第6号証には、車両の生産ラインにおける電力変換装置の車両への搭載は、ロボット等を用いて行われることから、ケースに把持部を設ける場合があり(段落0004)、電力変換装置において、ケースの蓋体は、板金部材によって形成されているため、成形性等を確保するため肉厚を比較的薄く設定してあり、剛性を確保するのが難しいため、蓋体に形成された把持部を把持した際に、電力変換装置の自重によって蓋体が変形するおそれがあり(段落0006)、従来は、蓋体の変形を防ぐために、把持部の近傍にケース本体と蓋体との固定部を設け、蓋体にかかる荷重の一部を固定部に分散していたが、固定部を設けることで、電力変換装置を構成する部品点数及び組立作業工数の増大につながっていた(段落0007)という課題を解決するために、構成部品の点数及び組立作業工数を低減しながら、蓋体の変形を抑制することのできる電力変換装置を提供する(段落0008)ことが記載されており、この記載によれば、甲第1号証のパワーコンディショナと甲第6号証の電力変換装置1は、単にDC/AC変換を行う電力変換器を有する点で共通しているだけであり、甲第1号証のパワーコンディショナを車両に搭載したり、甲第6号証の電力変換装置1を壁面に取り付けたりすることは想定されていないから、甲1発明に甲6記載事項を組み合わせる動機づけがあるとはいえない。
(b)また、仮に甲第6号証の電力変換装置1を壁面に取り付けることが想定できたとしても、Y方向を上下方向とするか、X方向を上下方向とするかについては選択の余地があるところ、特にY方向を上下方向とする必然性もないことからすれば、そのような方向で壁面に取り付けることを容易ということは、本件特許発明1を見たうえで、甲6記載事項を都合良く適用したものであり、いわゆる後知恵に他ならない。
したがって、申立人の主張は採用することができない。

b 主張bについて
甲第4号証には、L字形に折り曲げられた部分を把持部として機能させることについて、何らの記載も示唆もない以上、甲第4号証に記載のL字形に折り曲げられた部分が、必ずしも把持部として機能するとは限らないことは、当業者にとって自明であるし、そもそも、本件特許発明1において、「該本体を運搬するための把持部」は、明細書に作用効果として記載されるに留まらず、特許請求の範囲に明記された構成なのであるから、「(特許の構造と)同様な構造が引用文献に開示されていれば、用途や作用効果については同文献に開示がなくとも、新規性進歩性は認められない」との申立人の主張は、前提を異にするものであって、採用することはできない。

(2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「パワーコンディショナ」は、本件特許発明2の「パワーコンディショナ」に相当する。
そして、甲1発明の「パワーコンディショナ」は、「建物Kの外壁に取り付けられる」ものであるところ、「建物Kの外壁」は、“壁面”といえるから、甲1発明の「建物Kの外壁に取り付けられる」「パワーコンディショナ」は、本件特許発明2の「壁面に取り付けられるパワーコンディショナ」に相当する。

(イ)a 甲1発明の「本体3」は、「上壁3A、下壁3B、左壁3C、右壁3D、及び背壁3Eで囲まれ前面開口3Fを有する矩形状の箱を構成」するものであって、その「内下部の左右離れた位置に、正面視で右側に太陽電池PVと電力変換回路INVとを接続する入力側配線用端子台22、正面視で左側に電力変換回路INVから商用電力系統とを接続する出力側配線用端子台23が配置され」るものであるから、甲1発明の「本体3」は、「入力側配線用端子台22」と「出力側配線用端子台23」とを“有している”といえる。
b 甲1発明の「入力側配線用端子台22」は、「太陽電池PVと電力変換回路INVとを接続する」ものであるから、太陽電池PVから出力される“直流電力”を電力変換回路INVに“入力するための配線を接続する”ためのものといえ、また、「入力側配線用端子台22」に端子があることは明らかであるから、甲1発明は、本件特許発明2の「電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子」に相当する構成を備えるものである。
c 甲1発明では、「電力変換回路INVで変換された3相交流電力は、出力側配線用端子台23にそれぞれ接続された3本の配線ACが第1出力側配線導入孔28Aをそれぞれ通って商用電力系統と接続されて」いて、この記載によれば、甲1発明の「出力側配線用端子台23」は、電力変換回路INVから、商用電力系統を構成する外部装置に“電力を出力するための配線”を接続するものであって、「出力側配線用端子台23」に端子があることは明らかであるから、甲1発明は、本件特許発明2の「電力を出力するための配線を接続する出力側接続端子」に相当する構成を備えるものである。
d 上記a〜cより、甲1発明の「本体3」は、本件特許発明2の「電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子と、電力を出力するための配線が接続される出力側接続端子とを有する本体」に相当する。

(ウ)甲1発明の「筐体2」は、「本体3と蓋体4によって構成され」るものであるところ、「蓋体4」は、「本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成」であるから、甲1発明の「蓋体4」は、「本体3」の“前側”すなわち“正面側”に取り付けられて、「本体3」の“正面側”をカバーする“正面カバー”であるといえる。
したがって、甲1発明の「蓋体4」は、本件特許発明2の「該本体の前側に取り付けられる正面カバー」に相当する。

(エ)甲1発明の「パワーコンディショナ」は、「再生可能エネルギーから得られる直流電力を商用電力系統へ重畳可能な交流に変換する電力変換回路INVを構成する電気部品が筐体2内に収容されている」ものであって、「筐体2は、本体3と蓋体4によって構成され」るものであるから、甲1発明の「パワーコンディショナ」は、「本体3」と「蓋体4」とを“備える”ものといえる。

(オ)甲1発明は、「蓋体4は、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成であ」るところ、本件特許明細書の段落0031の「本実施の形態のパワーコンディショナ10は、前側に正面カバー13を備えており、正面カバー13は、前側からビスにより本体11に取り付け可能となっている。」との記載、及び同段落0051の「正面カバー13は、ねじ13aを外すことにより行うことができる。」との記載からみて、本件特許発明2の「ビス」は「ねじ」と同一視できるものであるから、甲1発明の「取り付けネジ5」は、本件特許発明2の「ビス」に相当する。
したがって、甲1発明の「蓋体4は、本体3の前面開口3Fの周縁を巡る環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成であ」ることは、本件特許発明2の「該正面カバーは、ビスにより前記本体に取り付けられて」いることに相当する。

(カ)上記(ア)〜(オ)のことから、本件特許発明2と甲1発明とは、次の点で一致し、また、相違する。

<一致点>
「壁面に取り付けられるパワーコンディショナであって、
電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子と、電力を出力するための配線が接続される出力側接続端子とを有する本体と、
該本体の前側に取り付けられる正面カバーと、を備え、
該正面カバーは、ビスにより前記本体に取り付けられている、
パワーコンディショナ。」

<相違点2>
本件特許発明2のパワーコンディショナは、「前記正面カバーは、上部に、前記本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」のに対して、甲1発明のパワーコンディショナは、上壁3A部分において上方に伸び、下壁3B部分において下方に伸び、左壁3C部分において左方に伸び、右壁3D部分において右方に伸びた形状の環状フランジ6と、当該環状フランジ6に対し、4隅を取り付けネジ5によって着脱自在に取り付ける構成である蓋体4とを備え、前記蓋体4は、「下方に伸びた環状フランジ6のさらに下方に伸びたうえで後方に折れ曲がった形状をして」いるものの、「上部に、前記本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」を備えるものではなく、また、「該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ものでもない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点2に係る構成を開示するとされる甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、及び甲第7〜9号証についてみると、甲第2号証には、上記第4の2(2)カに記載したとおり、「前記前面パネルの上辺は、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がったうえで、さらに、左右の一部分を除く部分において、下方に折れ曲がった形状をしている」構成(L字形に折り曲げられた形状)が記載されているものの、この部分を「本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」とすることについては、記載も示唆もなく、また、そのようにすることが当該技術分野における技術常識であるともいえない。
また、甲第3号証には、上記第4の3(2)カに記載したとおり、「前記前面パネルの上辺は、本体よりも上方に伸び、後方に折れ曲がったうえで、さらに、左右の一部分を除く部分において、下方に折れ曲がった形状をしている」構成(L字形に折り曲げられた形状)が記載されているものの、この部分を「本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」とすることについては、記載も示唆もなく、また、そのようにすることが当該技術分野における技術常識であるともいえない。
また、甲第5号証には、上記第4の5(2)エに記載したとおり、「フロントパネル2は、パワーコンディショナの前面部において、筐体1の上部が上側に折れ曲がって上方に伸びた部分よりもさらに上方において後方に折れ曲がって」いる構成(L字形に折り曲げられた形状)が記載されているものの、この部分を「本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」とすることについては、記載も示唆もなく、また、そのようにすることが当該技術分野における技術常識であるともいえない。
また、甲第6号証には、上記第4の6(2)に記載したとおり、「ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に用いられる電力変換装置に、車両の生産ラインにおける電力変換装置の車両への搭載を行うロボットが使用するための把持部を設けること」、「蓋体22は、ケース本体21の開口を覆う蓋体本体部23と、蓋体本体部23の外周縁から外側に向かって突出した一対の把持部26とを有し、蓋体22における一対の把持部26が並んだ方向を並び方向Y、蓋体22の主面と直交する方向を法線方向Z、また、並び方向Y及び法線方向Zの両方と直交する方向を直交方向Xとすると、各把持部26は、蓋体本体部23の蓋体22の直交方向X両側の方向、すなわちY方向にそれぞれ延びる側方延設部261と、側方延設部261の外周側先端から下方に向かって延びる垂下部262とを有していること」は記載されているものの、甲第6号証には、“Y方向を上下方向とする”という記載や示唆はないことから、甲第6号証の「一対の把持部26」は、「蓋体22」の“上部”に備えられた「前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」とはいえないし、また、「該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ともいえない。
更に、甲第7〜9号証には、上記第4の7〜9のとおり、「テレビジョン受像機等、各種電気器具の把手装置であって、キャビネットあるいはバックカバーの一部を断面コ字状に形成し把手部1とすること。」(甲第7号証)、「テレビジョン受像機、ラジオ受信機等の電気機器の把手構造において、電気機器の運搬時の安定化を図るために、電気機器キャビネットを構成するバックカバー11の上面位置に把手用の凹部12を形成し、前記把手用の凹部12の上面内面位置にすべり止め用の掛り部13を形成すること。」(甲第8号証)、「OA機器の筺体の両側板の上方に運搬用把手を備えること。」(甲第9号証)が記載されており、甲第7〜9号証には、“電気機器等”を“運搬するための把持部”が記載されているとは認められるものの、甲第7〜9号証には、“電気機器等”を「パワーコンディショナ」とすることは記載も示唆もされておらず、また、甲第7〜9号証の「把持部」は、「正面カバー」の「上部」に備えられたものでもないし、「前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部」でもない。
してみると、上記甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、及び甲第7〜9号証のいずれにも、パワーコンディショナの「正面カバー」を、「上部に、前記本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え」るものとすること、及び「該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ことは記載も示唆もなく、また、「パワーコンディショナ」の「正面カバー」を「上部に、前記本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え」るものとすること、及び「該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ようにすることが当該技術分野における技術常識であるともいえない。
したがって、本件特許発明2は、当業者であっても、甲1発明及び甲第2、3、5、6、7〜9号証に記載の事項に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、本件特許発明1についての上記(1)ウ(ア)と同様の主張をしている。
しかしながら、これらの主張については、上記(1)ウ(イ)のとおり、いずれも採用することができない。

2 申立理由2(サポート要件)について
申立人は、申立理由2において、本件特許発明1〜2に係る特許のサポート要件違反を主張しているので、以下検討する。

(1)サポート要件の判断の枠組み
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、上記観点に立って、本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜2の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。

(2)本件特許発明1〜2の記載
本件特許発明1〜2の記載は、上記第2に記載のとおりである。

(3)発明の詳細な説明に記載された発明であるかについて
ア 発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許の請求項1〜2に関連して、以下のような記載がある。(下線は、当審で付したものである。)

(ア)「【0012】
そこで、前記パワーコンディショナでは、前記下側筐体の開口部は、複数の前記背面開口を備えており、前記下側筐体は、前記背面開口のそれぞれを閉塞する着脱可能な閉塞部材を少なくとも1つ備えてもよい。この場合、壁面の様々な開口の位置に、前記下側筐体の前記背面開口の1つを対応させ、残りの前記背面開口を閉塞部材により閉塞することができる。その結果、パワーコンディショナを壁面の様々な位置に取り付けることができる。」

(イ)「【0016】
そこで、前記パワーコンディショナでは、前記本体は、前記本体を運搬するための把持部を、本体の上面および底面に備えてもよい。この場合、前記本体の側面に把持部を設ける必要がなくなり、前記本体の幅を狭くすることができる。」

(ウ)「【0026】
系統連系システムは、住宅の屋根等に設置する複数の太陽電池と、各太陽電池により発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナとで構成される。そして、この系統連系システムは、パワーコンディショナと商用電力系統との間に接続された負荷に対して、系統連系運転と自立運転との何れか一方に切り替えて交流電力を供給するものである。ここで、系統連系運転とは、パワーコンディショナと商用電力系統とを連系して運転することを示す。また、自立運転とは、例えば商用電力系統が停電している場合等に、パワーコンディショナのみを運転することを示す。
【0027】
ところで、パワーコンディショナを壁面に設置する場合、壁面から露出させた配線4をパワーコンディショナ本体の底面から引き込んでパワーコンディショナ本体の入力側開閉器、出力側端子台等における各種接続端子に接続する場合がある。この場合、パワーコンディショナ本体に引き込まれる配線4が露出することになるので、配線4の保護および美観の観点から好ましくない。本実施の形態のパワーコンディショナは、これらの問題を解決すべく、案出されたものである。
・・・中略・・・
【0029】
図2は、パワーコンディショナ10の構成を示す斜視図である。図3の(a)は、パワーコンディショナ10の構成を示す正面図である。図3の(b)は、パワーコンディショナ10の構成を示す正面図である。図3の(c)は、パワーコンディショナ10の構成を示す底面図である。図3の(d)は、図3の(b)における一点鎖線αで囲んだ部分の断面図である。図3の(e)は、図3の(b)における一点鎖線βで囲んだ部分の断面図である。尚、本明細書においては、正面側を前側と称し、背面側を後側と称する場合がある。
・・・中略・・・
【0031】
本実施の形態のパワーコンディショナ10は、前側に正面カバー13を備えており、正面カバー13は、前側からビスにより本体11に取り付け可能となっている。
【0032】
また、本実施の形態のパワーコンディショナ10では、本体11の上面前側は、上方に伸び、さらに後方に伸びている。また、正面カバー13の上部は、後方に伸び、さらに下方に伸びている。これにより、パワーコンディショナ10の上面前側には、作業者の指を挿入できる空間が形成されることになる。一方、本体11の下面前側は、下方に伸び、さらに後方に伸びている。また、正面カバー13の下部は、後方に伸びている。これにより、パワーコンディショナ10の下面前側には、作業者の指を挿入できる空間が形成されることになる。
【0033】
ところで、図1の(a)(b)を参照すると、本体11の底面から各種接続端子までの配線4は、シンプルに伸びている。従って、本体11内の下部における配線接続作業用の空間を狭くすることができる。これにより、本体11を小型化できると共に、本体11の下部の強度を向上することができる。
【0034】
そこで、本実施の形態のパワーコンディショナ10では、上記上面前側および上記下面前側の空間を形成する部分は、それぞれ、本体11を運搬するための把持部50・51となる。この場合、本体11の側面に把持部を設ける必要がなくなり、本体11の幅を狭くすることができる。
【0035】
図4は、正面カバー13を外した状態のパワーコンディショナ10の構成を、前面側を上にして示す分解斜視図である。図4に示すように、本体11は、正面カバー13を外すと、例えば、入力側開閉器15や出力側端子台16、その他表示部等が露出するようになっている。本体11の本体底面部11aには、外部からの配線4を通す本体配線孔14が複数個設けられている。したがって、外部から本体配線孔14を通して本体11に内部に引き込まれた配線4は、入力側開閉器15や出力側端子台16の各種接続端子に接続される。」

(エ)「【0046】
(パワーコンンディショナの壁面への取り付け方法)
本実施の形態のパワーコンディショナ10の壁面への取り付け方法について、図7に基づいて説明する。図7は、パワーコンディショナ10の壁面への取り付け手順を示す斜視図である。
【0047】
図7に示ように、本実施の形態のパワーコンディショナ10を図示しない壁面に取り付ける場合には、最初に、取付けベース板1をねじ1aにて図示しない壁面に取り付ける。尚、図7においては、1個のねじ1aしか記載していないが、実際には、ねじ1aは複数箇所に存在している。
【0048】
壁面に取付けベース板1を取り付けた後、取付けベース板1における折曲下端板1bの例えば右端に隠蔽ダクト3をねじ3eにより取り付ける。その後、隠蔽ダクト3のダクト背面開口3aにおける壁面側縁と図示しない壁面との隙間を外側からコーキング(封止材で封止)する。
【0049】
次いで、パワーコンディショナ10の本体11を取付けベース板1に取り付ける。」

(オ)「【図3】



(カ)「【図7】



イ 本件特許発明1について
(ア)上記ア(ア)の段落0012の記載から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「壁面に取り付けられるパワーコンディショナ」が記載されているといえる。

(イ)上記ア(ウ)の段落0026、0027、0035の記載から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「電力を入力するための配線が接続される入力側接続端子と、電力を出力するための配線が接続される出力側接続端子とを有する本体」が記載されているといえる。

(ウ)上記ア(ウ)の段落0031の記載から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「該本体の前側に取り付けられる正面カバー」が記載されているといえる。

(エ)上記ア(ウ)の段落0032、0034の記載から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部」を備えることが記載されているといえる。

(オ)上記ア(エ)の段落0046〜0049の記載、及び上記(3)カの図7の記載から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、“パワーコンディショナ10を壁面に取り付ける場合”に、パワーコンディショナ10の“本体11”を、壁面に取り付けた取付けベース板1の位置まで“運搬する”ことが記載されているといえるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記本体の上面前側に」備えられた「該本体を運搬するための把持部」は、「前記本体を壁面に取り付ける場合」に、“本体を運搬するために”「把持される」ことが記載されているといえる。

(カ)上記(エ)及び(オ)より、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え」ることが記載されているといえる。

(キ)上記ア(ウ)の段落0029の記載及び上記ア(オ)の図3(d)の記載から、把持部50を構成する本体11の構造として、“正面カバー13の上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である”ことが読み取れるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ことが記載されているといえる。

(ク)上記(ア)〜(キ)の検討から、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

ウ 本件特許発明2について
(ア)上記ア(ウ)の段落0031の記載から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「該正面カバーは、ビスにより前記本体に取り付けられて」いることが記載されているといえる。

(イ)上記ア(ウ)の段落0032、0034の記載から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記正面カバーは、上部に、前記本体を運搬するための把持部」を備えることが記載されているといえる。

(ウ)上記(イ)及び上記イ(オ)より、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「前記正面カバーは、上部に、前記本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え」ることが記載されているといえる。

(エ)上記ア(ウ)の段落0029の記載及び上記ア(オ)の図3(d)の記載から、把持部50を構成する正面カバー13の構造として、“上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である”ことが読み取れるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ことが記載されているといえる。

(オ)上記(ア)〜(エ)の検討と、上記イの検討から、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

(4)課題の解決について
ア 本件特許明細書の課題の記載
本件特許明細書には、発明が解決しようとする課題に関して、以下の記載がある。(下線は当審が付加した。)

「【0034】
そこで、本実施の形態のパワーコンディショナ10では、上記上面前側および上記下面前側の空間を形成する部分は、それぞれ、本体11を運搬するための把持部50・51となる。この場合、本体11の側面に把持部を設ける必要がなくなり、本体11の幅を狭くすることができる。」

上記記載によれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、「本体の側面に把持部を設ける必要をなくして、本体の幅を狭くすること」であるといえる。

イ 本件特許発明1について
本件特許発明1では、「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、前記正面カバーの上部と対向するように上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ように構成することで、上記「本体の側面に把持部を設ける必要をなくして、本体の幅を狭くする」という課題を解決することができることが理解される。すなわち、従来は、本体11の側面に把持部が設けられていたところ、当該側面の把持部を設ける必要がなくなることにより、本体11の幅を狭くすることができることは明らかであるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

ウ 本件特許発明2について
本件特許発明2では、「前記正面カバーは、上部に、前記本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え、該把持部は、上方に伸び、さらに後方に伸びた形状である」ように構成することで、上記「本体の側面に把持部を設ける必要をなくして、本体の幅を狭くする」という課題を解決することができることが理解される。すなわち、従来は、本体11の側面に把持部が設けられていたところ、当該側面の把持部を設ける必要がなくなることにより、本体11の幅を狭くすることができることは明らかであるから、本件特許発明2は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(5)サポート要件のまとめ
以上から、本件特許発明1〜2は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、サポート要件を満たしているといえる。

(6)申立人の主張について
ア 本件特許発明1について
申立人は、本件特許発明1について、概ね、以下の(ア)、(イ)のとおり主張している。

(ア)a [1]本体の側面に把持部を設ける必要性を無くして、本体の幅を狭くすることができるという作用効果を主張するのであれば、本件特許発明の原出願日前の一般的なパワーコンディショナが、本体の側面に把持部を設けており、その把持部が邪魔になっていた事実が必要である。省スペース化の効果は、従来の基準に対して把握されるものであり、従来の基準が示されなければ、省スペース化されたか否かを確認することができない。しかしながら、特許権者は、従来のパワーコンディショナが側面に把持部を設けており、その把持部が邪魔になっていた事実を何ら実証できていない。
b 特許権者が審判請求書に添付した写真2には、2台のパワーコンディショナが横に並べられて壁面に取り付けられている。

「審判請求書に添付した写真2」


しかしながら、本体の上下方向だけでなく、幅方向(左右方向)にもフランジを有しており、それに応じて正面カバーは、本体に対して上下方向だけでなく、幅方向(左右方向)にも本体に対してはみ出している。写真2を見るかぎり、上方向へ伸びるフランジの部分と、幅方向(左右方向)に伸びるフランジの部分の長さは、ほぼ変わらないように見える。本件特許発明の図1(a)、図3(a)、図4を見ても、上方向へ伸びるフランジ11bの部分と、幅方向(左右方向)に伸びるフランジ11bの部分の長さは、ほぼ変わらないように見える。少なくとも幅方向(左右方向)に伸びるフランジの部分も指で把持することが可能であると思われる。
c 写真2において、2台のパワーコンディショナを横に並べて壁面に取り付けられているのは、パワーコンディショナの本体自体の横幅を狭くしたことによる効果であり、パワーコンディショナの側面の把持部を省略したことによる効果ではないことは明らかである。
d 本件特許発明1において、本体のサイズやアスペクト比に関する発明特定事項は含まれていない。また、本体の左右面に把持部が設けられているか否かも特定されていない。
したがって、本件特許発明1は、[1]本体の側面に把持部を設ける必要性を無くして、本体の幅を狭くするという、特許権者が主張する発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されたものではない。

(イ)a [2]本体の側面の取っ手を無くしても、例えば壁面に取り付ける場合にパワーコンディショナを把持しやすいようにできるという作用効果を主張するのであれば、本件特許発明の原出願日前の一般的なパワーコンディショナの本体の側面に、取っ手が設けられていた事実が必要である。しかしながら、特許権者は、そのような事実を何ら実証できていない。
b また、本体の上面前側に把持部を設けることにより、壁面に取り付ける場合に把持しやすくなるという効果は、壁面側に、本件特許発明の図7に示される取付けベース板1があることを前提とする効果である。例えば、壁面側にパワーコンディショナを収納する空間が存在し、その空間にパワーコンディショナを置いて設置する場合、把持部は本体の左右面に設けられているほうがパワーコンディショナを把持しやすい。本体の左右面に把持部が設けられ上面前側に把持部が設けられないパワーコンディショナと、本体の左右面に把持部が設けられず上面前側に把持部が設けられるパワーコンディショナを比較すると、前者のほうが設置しやすいと言える。仮に、本体の左右面に把持部が設けられていた状態から、その把持部が省略された場合、むしろ取り付けにくくなったと言える。
このように、壁面に取り付ける場合にパワーコンディショナを把持しやすいという効果は、壁面側の取り付け構造に大きく依存し、本体の上面前側に把持部を設けることで、壁面に取り付ける場合に把持しやすくなるという効果は、全ての事例において当てはまる効果ではない。
c 本件特許発明1において、壁面側の構成を限定する発明特定事項を含んでいない。したがって、本件特許発明1は、[2]本体の側面の取っ手を無くしても、例えば壁面に取り付ける場合にパワーコンディショナを把持しやすいようにできるという、特許権者が主張する発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されたものではない。

(ウ)判断
a 上記(ア)の主張について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、側面に把持部が設けられた従来のパワーコンディショナについての記載は無いものの、本件特許明細書の段落0034の「本体11の側面に把持部を設ける必要がなくなり」との記載から、従来のパワーコンディショナでは、「本体11の側面に把持部を設ける必要が」あったことを把握することができ、側面に把持部を設ける必要をなくすという課題を解決するために、本件特許発明1の「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え」るようにし、これによって、「本体11の側面に把持部を設ける必要がなくな」るものと理解することができる。
そして、仮に、「本体の上下方向だけでなく、幅方向(左右方向)にもフランジを有しており」、「幅方向(左右方向)に伸びるフランジの部分も指で把持することが可能である」としても、当該部分は「本体を運搬するための把持部」ではないから、当該部分があることによって、「本体11の側面に把持部を設ける必要がなくな」るという本件特許発明の効果を奏することができないとまではいえない。
また、仮に「パワーコンディショナの本体自体の横幅を狭くしたことによる効果」があったとしても、側面に把持部を設けないことによって、更に横幅を短くできることは明らかであるから、「本体自体の横幅を狭くしたことによる効果」があることで、「本体11の側面に把持部を設ける必要がなくな」るという本件特許発明1の効果を奏することができないともいえない。
さらに、上記aで説示したように、本件特許発明1では、「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え」るようにし、これによって、「本体11の側面に把持部を設ける必要がなくな」るものと理解することができるから、「本体のサイズやアスペクト比に関する発明特定事項は含まれて」おらず、また、「本体の左右面に把持部が設けられているか否かも特定されていない」ことによって、「本体の側面に把持部を設ける必要性を無くして、本体の幅を狭くする」という「発明の課題」を解決できることを当業者が認識できないともいえない。

b 上記(イ)の主張について
本件特許明細書の段落0034の「本体11の側面に把持部を設ける必要がなくなり」との記載から、従来のパワーコンディショナでは、「本体11の側面に把持部を設ける必要が」あったことを把握することができ、そのような必要をなくすという課題を解決するために、本件特許発明1の「前記本体の上面前側に、該本体を運搬するための把持部であって前記本体を壁面に取り付ける場合に把持される把持部を備え」るようにし、これによって、「本体11の側面に把持部を設ける必要がなくな」るものと理解することができる。
したがって、本件特許明細書の記載に基づけば、本件特許発明1の構成によって「本体の側面の取っ手を無くしても、例えば壁面に取り付ける場合にパワーコンディショナを把持しやすいようにできるという作用効果」を奏することができることは明らかである。
また、仮に、壁面側の取付構造によっては、本体の左右面に設けられた把持部の方が把持しやすい場合があったとしても、本件特許発明は、把持しやすさを犠牲にしても、幅を狭くすることを優先した発明とみることもできる。そして、上面前側に把持部を設ければ、当該把持部を設けない場合に比べて把持しやすいようになることは明らかであるから、本件特許発明1において、壁面側の構成を限定する発明特定事項を含んでいないからといって、「本件特許発明1は、本体の側面の取っ手を無くしても、例えば壁面に取り付ける場合にパワーコンディショナを把持しやすいようにできる」という発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていないとはいえない。

c 小括
したがって、申立人の主張はいずれも採用することができない。

イ 本件特許発明2について
申立人は、本件特許発明2について、上記アの(ア)、(イ)と同様の主張をしている。
しかしながら、上記ア(ウ)で判断したとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。

3 まとめ
以上のとおり、本件特許発明1〜2は、当業者であっても、甲1発明及び甲第2〜9号証に記載の事項に基づいて容易に発明することができたものとはいえないから、請求項1〜2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
また、本件特許発明1〜2はサポート要件を満たしているから、請求項1〜2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2024-01-12 
出願番号 P2019-108990
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H02M)
P 1 651・ 537- Y (H02M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 吉田 美彦
特許庁審判官 須田 勝巳
打出 義尚
登録日 2023-04-13 
登録番号 7262318
権利者 オムロン株式会社
発明の名称 パワーコンディショナ  
代理人 弁理士法人秀和特許事務所  

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