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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1407300
総通号数 27 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-10-24 
確定日 2024-02-08 
事件の表示 特願2020− 77782「金属板、金属樹脂複合体、および半導体ディバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月 1日出願公開、特開2021−174883〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和 2年 4月24日の出願(特願2020−077782号)であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和 3年 5月28日付け:拒絶理由通知
令和 3年 7月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年12月23日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 4年 3月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 7月27日付け:補正の却下の決定
令和 4年 7月27日付け:拒絶査定(原査定)
令和 4年10月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 6月16日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 5年 8月18日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜12に係る発明は、令和5年8月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載した事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
<本願発明>
「【請求項1】
樹脂部材により被覆される被覆領域を表面に有する金属板であって、
前記金属板と前記樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間内から当該閉空間外へ当該金属板の表面を走査する方向に対して交差するように、前記金属板の表面から窪んで形成された少なくとも2本の筋状凹部を含む凹部形成領域が存在し、
前記凹部形成領域に含まれる前記筋状凹部の長手方向両端部が、前記金属板の縁に位置し、
前記凹部形成領域の前記筋状凹部の深さDが0.020mm以上であり、
前記凹部形成領域が前記金属板の両方の表面に存在し、
前記凹部形成領域の前記筋状凹部の深さD(mm)の、当該筋状凹部の幅W(mm)に対する比率が0.2以上であり、
前記凹部形成領域が前記被覆領域内に形成されている、金属板。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和5年6月16日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(進歩性)について
・請求項 1、4 :引用文献 4、5、7
・請求項 2、3、5、6 :引用文献 5、7〜9
・請求項 7〜14 :引用文献 4、5、7〜9
●理由2(サポート要件)について
・請求項 1、5〜14

<引用文献等一覧>
4.特開平06−085133号公報
5.特開2017−168553号公報
7.特開平06−169046号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2017−022267号公報(周知技術を示す文献)
9.特開2017−037998号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献4について
(1)当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に公開された引用文献4(特開平06−085133号公報)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ダイパッド上に搭載された半導体チップがモールド樹脂により封止されている半導体集積回路装置に関し、特にパッケージの吸湿性の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図5は従来のSOP(Small Outline Package)型の半導体集積回路装置の一例を示す断面図である。図において、パッケージを形成するモールド樹脂1内に、半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されている。また、外部接続端子としてのリード4は、モールド樹脂1内に埋設された部分(内部リード)の端部がボンディングワイヤ5を介して半導体チップ2の電極に接続されている。ダイパッド3の下面には、モールド樹脂1との密着性を上げるために複数のディンプル6が形成されている。」

「【0011】
【実施例】以下、この発明の実施例を図について説明する。
実施例1.図1は請求項1の発明の一実施例によるプラスチック型SOPの断面図であり、図5と同一又は相当部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図において、リード4のモールド樹脂で覆われている部分(内部リード)には、凹部である複数のディンプル7が例えばプレス加工等により形成されている。
【0012】上記のような半導体集積回路装置では、リード4にディンプル7を形成したことにより、リード4とモールド樹脂1との界面の面積が大きくなり、界面密着性が向上する。従来例の説明でも述べたように、パッケージ内に水分が侵入する最大の経路は、リード4とモールド樹脂1との界面であるため、この部分の界面密着性を上げたことにより、パッケージ内への水分侵入は効果的に抑制される。即ち、リード4、ボンディングワイヤ5、半導体チップ2という水分侵入経路は、リード4のディンプル7の領域で遮断されることになる。この結果、吸湿による界面剥離がより確実に防止され、装置全体の信頼性が向上する。
【0013】実施例2.なお、上記実施例1では凹部としてディンプル7を示したが、凹部の平面形状や断面形状は特に限定されるものではなく、例えば図2に示すように、リード4の幅方向に延びる断面V字状の溝8などであってもよい。ここで、凹部の部分のリード4の厚さt2は、リード4の他の部分の厚さt1よりも薄く(t1>t2)なければならない。」


【図2】




【図5】



(2)上記(1)より、引用文献4には以下の技術事項が記載されている。
ア 段落0001には、「この発明は、ダイパッド上に搭載された半導体チップがモールド樹脂により封止されている半導体集積回路装置に関し」と記載されている。
よって、ダイパッド上に搭載された半導体チップはモールド樹脂により封止されるものである。
また、段落0002には、「図5」について、「モールド樹脂1内に、半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されている。」、「リード4は、モールド樹脂1内に埋設された部分」「の端部がボンディングワイヤ5を介して半導体チップ2の電極に接続されている。」と記載され、図5より、モールド樹脂1内に埋設された部分と、モールド樹脂1内に埋設されない部分とを有するリード4が見て取れ、さらに、モールド樹脂1内に、半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されて、リード部4のモールド樹脂1内に埋設された部分の端部がボンディングワイヤ5を介して半導体チップ2の電極に接続されることが見て取れる。
そして、段落0011には、「実施例1.図1は」「一実施例による」「断面図であり、図5と同一又は相当部分には同一符号を付し、その説明を省略する。」と記載されている。
よって、図1に係る実施例1において、リード4は、モールド樹脂1内に埋設された部分と、モールド樹脂1内に埋設されない部分とを有し、モールド樹脂1内に、半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されて封止され、リード部4のモールド樹脂1内に埋設された部分の端部がボンディングワイヤ5を介して半導体チップ2の電極に接続されるといえる。

イ 段落0011には、「リード4のモールド樹脂で覆われている部分」「には」「凹部である複数のディンプル7が」「形成されている。」と記載されている。

ウ 段落0013には、「実施例1では凹部としてディンプル7を示したが」「図2に示すように、リード4の幅方向に延びる断面V字状の溝8などであってもよい。」と記載されている。よって、上記イを踏まえると、リード4のモールド樹脂で覆われている部分には、断面V字状の溝8がリード4の幅方向に延びることが記載されている。
そして、図2は、モールド樹脂1内に埋設された半導体チップ2からリード4のモールド樹脂1によって覆われていない部分へ向かう方向に沿った断面図であり、溝8のV字状の断面が示されているから、図2より、リード4の両面にあるモールド樹脂で覆われている部分には、モールド樹脂1内に埋設された半導体チップ2から、リード4のモールド樹脂1内に埋設されない部分へ向かう方向に交差するように、リード4の幅方向に延びる断面V字状の溝8が複数形成されることが見て取れる。

エ 段落0013には「凹部の部分のリード4のリード4の厚さt2は、リード4の他の部分の厚さt1よりも薄く(t1>t2)なければならない。」と記載されている。
よって、上記ウを踏まえると、溝8の部分のリード4の厚さt2は、リード4の他の部分の厚さt1よりも薄いといえる。

オ 上記ア〜エによれば、引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明4>
「モールド樹脂1内に埋設された部分と、モールド樹脂1内に埋設されない部分とを有するリード4であって、
モールド樹脂1内に、半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されて封止され、
リード4のモールド樹脂1内に埋設された部分の端部がボンディングワイヤ5を介して半導体チップ2の電極に接続され、
リード4の両面にあるモールド樹脂1で覆われている部分には、モールド樹脂1内に埋設された半導体チップ2から、リード4のモールド樹脂1内に埋設されない部分へ向かう方向に交差するように、リード4の幅方向に延びる断面V字状の溝8が複数形成され、
溝8の部分のリード4の厚さt2は、リード4の他の部分の厚さt1よりも薄い、
リード4。」

2 引用文献5について
(1)当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に公開された引用文献5(特開2017−168553号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0049】
・・・(中略)・・・第2リード3は、第1リード2とは異なり、形状が平たんである部材である。本実施形態にかかる第2リード3は、第1リード2と同一の導電性基材81からなる。第2リード3は、第1リード2と同じく第1方向Xに沿って配置されている。第2リード3は、第2実装面31および素子搭載面32を有する。また、第2リード3は、パッド部33および帯状部34を含む。パッド部33および帯状部34の厚さは、ともに同一である。・・・(中略)・・・
【0051】
図4に示すように、素子搭載面32は、半導体素子11を搭載する面である。素子搭載面32は、図4に示す第2リード3の上面である。素子搭載面32は、第2接合層13を介して第2電極112に導通している。半導体素子11の厚さ方向Zにおいて、第2実装面31および素子搭載面32は互いに反対側を向いている。本実施形態においては、素子搭載面32および端子部外面222の半導体素子11の厚さ方向Zにおける位置は、ともに同一である。
【0052】
図2および図4に示すように、パッド部33は、半導体素子11を搭載する部分である。・・・(中略)・・・
【0053】
図1〜図5に示すように、帯状部34は、パッド部33に対して第1リード2とは反対側に位置し、かつパッド部33につながる部分である。第2方向Yにおいて、帯状部34の長さはパッド部33の長さよりも短い。本実施形態にかかる帯状部34は、第2実装面31に加え、素子搭載面32の一部が封止樹脂4から露出している。図2、図4および図6に示すように、帯状部34のパッド部33につながる部分には、素子搭載面32から窪み、かつ第2方向Yに沿った溝341が2本形成されている。第2方向Yに対する溝341の断面形状はV字状で、かつ一様である。溝341は、全て封止樹脂4で充填されている。本実施形態にかかる溝341の深さは、30〜70μmである。
【0054】
封止樹脂4は、図1、図3および図5に示すように、第1リード2および第2リード3のそれぞれ一部ずつと、半導体素子11とを覆う部材である。封止樹脂4は、電気絶縁性を有する熱硬化性の合成樹脂であり、本実施形態にかかる当該合成樹脂は、黒色のエポキシ樹脂である。封止樹脂4は、樹脂主面41、樹脂裏面42、一対の樹脂第1側面431および一対の樹脂第2側面432を有する。
・・・(中略)・・・
【0056】
・・・(中略)・・・本実施形態においては、一方の樹脂第1側面431(図3の右側に位置)から端子部22の一部が突出し、他方の樹脂第1側面431(図3の左側に位置)から第2リード3の帯状部34の一部が突出している。
・・・(中略)・・・
【0071】
第2リード3の帯状部34には、素子搭載面32から窪み、かつ第2方向Yに沿った溝341が形成されている。溝341を形成することによって、先述した庇331と同様に、封止樹脂4に接する第2リード3の表面積が拡大するため、第2リード3と封止樹脂4との間の接合力が向上する。したがって、封止樹脂4から第2リード3が脱落するといった信頼性低下の懸念が払拭される。」

「【図2】



(2)上記(1)より、引用文献5には以下の技術事項が記載されている。
ア 段落0049には、「第2リード3は」「形状が平たんである部材である。」、「第2リード3は」「導電性基材81からなる。」、「第2リード3は、第2実装面31および素子搭載面32を有する。」、「第2リード3は、パッド部33および帯状部34を含む。パッド部33および帯状部34の厚さは、ともに同一である。」と記載され、段落0051には、「第2実装面31および素子搭載面32は互いに反対側を向いている。」と記載され、段落0052には、「パッド部33は、半導体素子11を搭載する部分である。」と記載され、段落0053には、「帯状部34は」「パッド部33につながる部分である。」と記載されている。
よって、第2リード3は、形状が平たんで、互いに反対側を向いている第2実装面31および素子搭載面32を有し、半導体素子を搭載するパッド部33、及びパッド部33につながる帯状部34を含み、パッド部33および帯状部34の厚さがともに同一である導電性基材81からなるといえる。

イ 段落0054には、「封止樹脂4は」「第2リード3の」「一部」「を覆う部材である。」、「封止樹脂4は」「樹脂第1側面431」「を有する。」と記載され、段落0056には、「樹脂第1側面431」「から第2リード3の帯状部34の一部が突出している。」と記載されている。
よって、第2リード3の一部を封止樹脂4が覆い、封止樹脂4の樹脂第1側面431から第2リード3の帯状部34の一部が突出するといえる。

ウ 段落0053には、「帯状部34のパッド部33につながる部分には、素子搭載面32から窪み、かつ第2方向Yに沿った溝341が2本形成されている。第2方向Yに対する溝341の断面形状はV字状で、かつ一様である。溝341は、全て封止樹脂4で充填されている。本実施形態にかかる溝341の深さは、30〜70μmである。」と記載され、段落0071には、「溝341を形成することによって」「封止樹脂4に接する第2リード3の表面積が拡大するため、第2リード3と封止樹脂4との間の接合力が向上する。」と記載されている。そして、図2より、溝341は、パッド部33および帯状部34が配置される第1方向Xに直角な方向である第2方向Yに沿って形成され、第2リード3の第2方向Yの両端部まで延在することが見て取れる。
よって、帯状部34のパッド部33につながる部分には、素子搭載面32から窪み、かつパッド部33および帯状部34が配置される第1方向Xに直角な方向である第2方向Yに沿った溝341が2本形成され、第2方向Yに対する溝341の断面形状はV字状でかつ一様であり、溝341は全て封止樹脂4で充填され、30〜70μmの深さであり、第2リード3の第2方向Yの両端部まで延在し、溝341を形成することによって封止樹脂4に接する第2リード3の表面積が拡大するため、第2リード3と封止樹脂4との間の接合力が向上するといえる。

エ 上記ア〜ウによれば、引用文献5には以下の技術事項が記載されていると認められる。
「形状が平たんで、互いに反対側を向いている第2実装面31および素子搭載面32を有し、半導体素子を搭載するパッド部33、及びパッド部33につながる帯状部34を含み、パッド部33および帯状部34の厚さがともに同一である導電性基材81からなる第2リード3において、
第2リード3の一部を封止樹脂4が覆い、封止樹脂4の樹脂第1側面431から第2リード3の帯状部34の一部が突出し、
帯状部34のパッド部33につながる部分には、素子搭載面32から窪み、かつパッド部33および帯状部34が配置される第1方向Xに直角な方向である第2方向Yに沿った溝341が2本形成され、第2方向Yに対する溝341の断面形状はV字状でかつ一様であり、溝341は全て封止樹脂4で充填され、30〜70μmの深さであり、第2リード3の第2方向Yの両端部まで延在し、溝341を形成することによって封止樹脂4に接する第2リード3の表面積が拡大するため、第2リード3と封止樹脂4との間の接合力が向上すること。」

3 引用文献7の記載、周知技術
(1)当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に公開された引用文献7(特開平06−169046号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来技術】従来、IC,LSI等の電子部品の実装に際して用いられる平板状リードは、鉄系あるいは銅系等の金属材料からなる板状体をプレス加工またはエッチングにより所望のパターンに形成して作成され、前記平板状リードを回路基板などに半田で実装固定する。・・・(中略)・・・」(合議体注:段落番号の「00012」は「0002」の誤記と認定した。)

(2)上記(1)より、以下の事項は周知技術であるといえる。
「リードを鉄系あるいは銅系等の金属材料からなる平板状とすること。」

第5 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明4とを対比する。
(1)引用発明4の「モールド樹脂1」は金型成形された樹脂であるから、樹脂からなる成形体であるといえ、本願発明の「樹脂部材」に相当する。
また、引用発明4の「モールド樹脂1内に埋設された部分」「を有する」ことは、本願発明の「樹脂部材により被覆される被覆領域を表面に有する」ことに相当する。
さらに、引用発明4の「リード4」は「両面」並びに「厚さt2」、「厚さt1」を有するものであるから、板状であるといえる。
そうすると、引用発明4の「リード4」は、樹脂部材により被覆される被覆領域を表面に有する板状の構造体である点で、本願発明の「金属板」と一致する。
しかし、本願発明は「金属板」であるのに対し、引用発明4は「リード4」が板状であるものの、金属からなるものであるか不明である点で相違する。

(2)引用発明4において、「リード4」が「モールド樹脂1内に埋設された部分」「を有」することは、「リード4」と「モールド樹脂1」とが部材を構成するといえるから、上記(1)を踏まえると、板状の構造体と樹脂部材とを含む部材である点で、本願発明の「前記金属板と前記樹脂部材とを含む部材」と一致する。

(3)本願明細書の段落0016には、「閉空間S1は、閉空間S1の内部に封入物を封入する空間(領域)が形成されていれば、区画部材と封入物との間には、空間(隙間)が存在していてもよいし、空間(隙間)が存在していなくてもよい」及び「閉空間S1を形成する部材(区画部材)は、金属板10と樹脂部材11の他、放熱性を有する部材を用いることができ」と記載され、「閉空間S1」には、樹脂部材11内の隙間なく封入物が封入される領域が含まれるといえる。一方、引用発明4は、モールド樹脂1内に、半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されて封止されるものであるから、「モールド樹脂1内に半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されて封入され」る領域は、本願発明の「閉空間」に相当する。
よって、引用発明4の「モールド樹脂1内に埋設された部分と、モールド樹脂1内に埋設されない部分とを有するリード4」において「モールド樹脂1内に、半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3が埋設されて封止され」ることは、上記(1)〜(2)を踏まえると、板状の構造体と樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間を有する点で、本願発明の「前記金属板と前記樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間内」を有することに相当する。

(4)引用発明4の「モールド樹脂1内に埋設されない部分」は、「半導体チップ2、この半導体チップ2をマウントするためのダイパッド3」が埋設された領域からみて「モールド樹脂1」の外側にあるから、「リード4」と「モールド樹脂1」により構成される部材内の閉空間外であるといえる。
よって、上記(1)〜(3)を踏まえると、引用発明4の「モールド樹脂1内に埋設された半導体チップ2から、リード4のモールド樹脂1内に埋設されない部分へ向かう方向」は、板状の構造体と樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間内から閉空間外へ板状の構造体の表面を走査する方向である点で、本願発明の「前記金属板と前記樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間内から当該閉空間外へ当該金属板の表面を走査する方向」と一致する。

(5)引用発明4の「溝8」は、リード4の表面から窪んで形成された筋状凹部であるといえる。
よって、上記(1)を踏まえると、引用発明4の「リード4の両面にあるモールド樹脂1で覆われている部分には」「溝8が複数形成され」ていることは、板状の構造体の表面から窪んで形成された少なくとも2本の筋状凹部を含む凹部形成領域が存在する点で、本願発明の「前記金属板の表面から窪んで形成された少なくとも2本の筋状凹部を含む凹部形成領域が存在」することに相当する。
そして、引用発明4の「リード4の両面にあるモールド樹脂1で覆われている部分には、モールド樹脂1内に埋設された半導体チップ2から、リード4のモールド樹脂1内に埋設されない部分へ向かう方向に交差するように、リード4の幅方向に延びる断面V字状の溝8が複数形成され」ていることは、板状の構造体と樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間内から閉空間外へ構造体の表面を走査する方向に対して交差するように、構造体の表面から窪んで形成された少なくとも2本の筋状凹部を含む凹部形成領域が存在し、凹部形成領域が構造体の両方の表面に存在する点で、本願発明の「前記金属板と前記樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間内から当該閉空間外へ当該金属板の表面を走査する方向に対して交差するように、前記金属板の表面から窪んで形成された少なくとも2本の筋状凹部を含む凹部形成領域が存在」し、「前記凹部形成領域が前記金属板の両方の表面に存在」することと一致する。
しかし、本願発明が「前記凹部形成領域に含まれる前記筋状凹部の長手方向両端部が、前記金属板の縁に位置」するのに対し、引用発明4はそのような構成を有するか、不明である点で相違する。

(6)本願発明が、「前記凹部形成領域の前記筋状凹部の深さDが0.020mm以上で」あり、「前記凹部形成領域の前記筋状凹部の深さD(mm)の、当該筋状凹部の幅W(mm)に対する比率が0.2以上である」のに対し、引用発明4は、「溝8」の寸法に関する特定を有さない点で相違する。

(7)引用発明4の「リード4の両面にあるモールド樹脂1で覆われている部分には」「溝8が複数形成され」ることは、本願発明の「前記凹部形成領域が前記被覆領域内に形成されている」ことに相当する。

(8)上記(1)〜(7)より、本願発明と引用発明4とは以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「樹脂部材により被覆される被覆領域を表面に有する板状の構造体であって、
前記板状の構造体と前記樹脂部材とを含む部材で形成される閉空間内から当該閉空間外へ前記板状の構造体の表面を走査する方向に対して交差するように、前記板状の構造体の表面から窪んで形成された少なくとも2本の筋状凹部を含む凹部形成領域が存在し、
前記凹部形成領域が前記板状の構造体の両方の表面に存在し、
前記凹部形成領域が前記被覆領域内に形成されている、板状の構造体。」

<相違点1>
板状の構造体が、本願発明では「金属板」であるのに対し、引用発明4は「リード4」が板状であるものの、金属からなるものであるか不明である点。

<相違点2>
本願発明においては「前記凹部形成領域に含まれる前記筋状凹部の長手方向両端部が、前記金属板の縁に位置」するのに対し、引用発明4はそのような構成を有するか、不明である点。

<相違点3>
本願発明においては「前記凹部形成領域の前記筋状凹部の深さDが0.020mm以上で」あるのに対し、引用発明4は「溝」の深さを特定していない点。

<相違点4>
本願発明においては「前記凹部形成領域の前記筋状凹部の深さD(mm)の、当該筋状凹部の幅W(mm)に対する比率が0.2以上である」のに対し、引用発明4は「溝」の深さと幅の比率を特定していない点。

2 相違点についての判断
(1)相違点1について検討する。
上記第4の3(2)で挙げた周知技術に基づき、引用発明4の「リード4」を鉄系あるいは銅系等の金属材料からなる平板状のもの、すなわち、金属板とし、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2及び3について検討する。
ア 引用文献4の段落0006には「この発明は、上記のような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、パッケージ内部への水分の侵入を抑制することができ、これにより・・・(中略)・・・装置全体の信頼性を向上させることができる半導体集積回路装置を得ることを目的とする。」と記載され、段落0012には「リード4にディンプル7を形成したことにより、リード4とモールド樹脂1との界面の面積が大きくなり、界面密着性が向上する。」及び「この部分の界面密着性を上げたことにより、パッケージ内への水分侵入は効果的に抑制される。」と記載されている。よって、引用発明4は、半導体集積回路装置においてパッケージ内への水分侵入を効果的に抑制することを課題とするもので、リード4に溝8を形成して、リード4とモールド樹脂1との界面の面積を大きくすることにより、リード4とモールド樹脂1との界面密着性を向上させ、当該課題を解決するものである。
イ 上記第4の2(2)で挙げた引用文献5に記載された技術事項は、第2リード3の帯状部34のパッド部33につながる部分に溝341を形成することによって、封止樹脂4に接する第2リード3の表面積を拡大させ、第2リード3と封止樹脂4との間の接合力を向上させるものであるから、引用発明4と引用文献5に記載された技術事項とは、リードに関する共通の技術分野に属し、リードに溝を形成することによってリードと樹脂との界面の面積を大きくすることにより、界面密着性を向上させる点で同様の作用効果を奏するものである。
ウ よって、引用発明4において、リード4とモールド樹脂1との界面の面積を大きくして、界面密着性を向上させるための溝8の構造として、引用文献5に記載された技術事項を適用し、深さ30〜70μmで、リード4が沿って配置される第1方向Xに対して直角な第2方向Yの両端部まで延在するように設け、相違点2及び3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点4について
本願明細書の段落0004には「発明が解決しようとする課題」として「当該金属板をリードフレームとした半導体ディバイスに用いる際、金属板および樹脂部材等を含む部材で半導体チップを封入させて閉空間を形成するところ、密閉性が不十分の場合、その間から水分が閉空間外から閉空間内へ浸透するおそれがあり、浸透した場合には、・・・(中略)・・・半導体チップが水分と接触して動作不良を起こし得る。」と記載され、段落0027には「凹部形成領域A2の筋状凹部13の深さD(mm)の、筋状凹部13の幅W(mm)に対する比率を、0.2以上とすることが好ましく、より好ましくは0.4以上である。当該比率を0.2以上とすることにより、閉空間S1内と閉空間S1外との間での密閉性をより向上させることができる。」と記載されている。よって、本願発明は、水分が閉空間外から閉空間内へ浸透することを抑制することを課題とするもので、凹部形成領域A2の筋状凹部13の深さD(mm)の、筋状凹部13の幅W(mm)に対する比率を0.2以上とすることにより、金属板および樹脂部材の間の密閉性を向上させ、当該課題を解決するものである。
そして、上記(2)アを踏まえると、本願発明と引用発明4とは、樹脂部材の内部への水分の浸透を抑制するという共通の課題を有し、板状の構造体に凹部を形成することにより、板状の構造体と樹脂部材との間の密閉性を向上させるという共通の手段で課題を解決するものである。また、引用発明4において、リード4とモールド樹脂1との界面の面積は、溝8の数が一定の場合、溝8が深く形成される程、すなわち、溝8の深さの幅に対する比率が大きくなる程大きくなることは明らかである。よって、引用発明4において溝8を形成する際、溝8の深さの幅に対する比率を所定値以上に大きく設定することは、リード4とモールド樹脂1との界面の面積を大きくするために当業者が容易になし得たことであり、その所定値を0.2とすることは、パッケージ内部への水分の侵入を所望の程度に抑制するために適宜選択し得た数値の最適化にすぎない。また、本願明細書を参照しても、本願発明において当該「比率」を0.2以上とした点に臨界的意義は認められない。
よって、引用発明4において溝8を形成する際、溝8における深さDの幅に対する比率を、パッケージ内への水分侵入を効果的に抑制できる程度に大きくして、例えば0.2以上とし、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得た設計事項の範囲内のことである。

3 請求人の主張について
(1)請求人は、令和5年8月18日提出の意見書において概略以下の点を主張している。
<主張1>
引用発明4は、半導体チップ(2)をマウントするためのダイパッド(3)にディンプル(6)を形成した場合には、ダイパッド(3)とモールド樹脂(1)との界面の密着性を十分にあげることができなかったという課題に対してなされた発明であり、それを解決するために、ダイパッド(3)以外の部分であるリード部分に着目してリード部分に所望の構造(凹部、凸部、ポリイミドコーディング)を設けることに着想してなされた発明である。
これに対して、引用文献5において、溝(341)は、半導体素子(11)を搭載する部分であるパッド部(33)に設けられたものである。
そうすると、引用発明4は、ダイパッド(3)に設けたディンプル(6)ではダイパッド(3)とモールド樹脂(1)との界面の密着性を十分にあげることができなかったという課題に対してなされた発明であるから、当業者は、当該課題に鑑みて引用文献5に記載のパッド部(33)に設けられた「溝(341)」に関する技術事項を参照しようとはしないか、或いは、「溝(341)」に関する技術事項を適用しても、引用発明5の課題が解決できないと認識する。

<主張2>
引用発明4において、凹部の部分のリード(4)の厚さt2は、リード(4)の他の部分の厚さt1よりも薄く(t1>t2)なければならない。
これに対して、引用文献5では、第2リード(3)において、溝(341)の部分の第2リード(3)の厚さt2は、第2リード(3)の庇(331)の部分の厚さtよりも厚くなっており、溝(341)の部分以外の第2リード(3)の部分の厚さよりも薄くはなっていない。
引用発明4では、凹部(ディンプル6)の部分のリード4の厚さt2が、リード4の他の部分の厚さt1よりも薄い(t1>t2)ことを必須としているのに対して、引用文献5に記載のパッド部(33)に設けられた溝(341)の部分の第2リード(3)の厚さが、溝(341)の部分以外の第2リード(3)の部分の厚さよりも薄くはなっていないから、当業者は、引用発明4に対して、引用文献5に記載のパッド部(33)に設けられた「溝(341)」に関する技術事項を適用しようとはしない。

(2)上記(1)の主張について検討する。
ア 主張1について
引用文献5に記載された技術事項における「第2リード3」は、パッド部33、及びパッド部33につながる帯状部34を有し、封止樹脂4の樹脂第1側面431から帯状部34の一部が突出し、リードとして機能する点で、引用発明4の、モールド樹脂1内に埋設された部分と、モールド樹脂1内に埋設されない部分とを有する「リード4」と共通の構造及び機能を有するものであり、モールド樹脂1内に埋設されて封入され、リードとしての機能を有しない単なる「ダイパッド」とは構造及び機能が異なるものであるといえる。
そうすると、上記2(2)のとおり、当業者は、引用発明4の「リード4」に、引用文献5に記載された「第2リード3」に関する技術事項を適用することに想到し得るといえる。
よって、上記主張1を採用することはできない。

イ 主張2について
引用文献5には、庇(331)の部分の厚さについて記載されておらず、仮に、第2リードにおける庇(331)の部分の厚さが、溝(341)の部分の厚さより薄いとしても、庇(331)の部分のみの厚さを、溝(341)の部分以外の第2リードの厚さと認定すべき事情はない。
よって、上記主張2を採用することはできない。

4 小括
よって、本願発明は、引用文献4に記載された発明、引用文献5に記載された技術事項、及び、引用文献7に記載された周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-12-01 
結審通知日 2023-12-05 
審決日 2023-12-20 
出願番号 P2020-077782
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀧内 健夫
特許庁審判官 市川 武宜
棚田 一也
発明の名称 金属板、金属樹脂複合体、および半導体ディバイス  
代理人 アクシス国際弁理士法人  

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