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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1407657 |
総通号数 | 27 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-05-10 |
確定日 | 2024-03-05 |
事件の表示 | 特願2019− 18016「管理サーバ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月20日出願公開、特開2020−126416、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年2月4日の出願であって、令和4年9月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月8日付けで手続補正がされ、令和5年2月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 補正の却下の決定 1 補正の却下の決定の結論 令和5年5月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 2 補正の却下の決定の理由 (1)本件補正の内容 ア 本件補正は、補正前の請求項4の「(c)前記通貨読取装置において読み取った通貨が、前記選択を受付けなかった通貨であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられている場合、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用を不可にする処理を実行させる指令を送信する処理」を、補正後の請求項4の「(c)前記通貨読取装置において読み取った通貨が、前記選択を受付けなかった通貨であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられており、且つ、外部から偽札情報を受信した場合、前記偽札情報に基づき、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用の可否を自動的に設定する処理を実行させる指令を送信する処理」を含むものである。 イ この点、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、次のとおりの記載がある。なお、下線は、当審で付与した。 「【0064】 なお、詳細は後述するが、スロットマシン管理サーバ1が、紙幣情報信号を受信した場合、スロットマシン管理サーバ1において記憶されている、通貨の利用設定(通貨の利用設定を行うエリアの情報、使用可又は不可とする通貨の情報、及び、使用可又は不可とする金種の情報)と、受信した紙幣情報信号とを参照して、使用可能な通貨であるか否かが判断され、使用可能な通貨であれば、使用許可信号を、紙幣情報信号を送信してきたスロットマシン4SのPTS端末700を介して通貨読取装置201に送信する。一方、使用不可な通貨であれば、使用不可信号を、紙幣情報信号を送信してきた、スロットマシン4SのPTS端末700を介して通貨読取装置201に送信する。 【0065】 次に、CPU210は、スロットマシン管理サーバ1からPTS端末700を介して送信される使用許可信号を受信したか否かを判定する(S204)。そして、使用許可信号を受信しなかった場合(S204:NO)、CPU210は、スロットマシン管理サーバ1からPTS端末700を介して送信される使用不可信号を受信したか否かを判定する(S205)。そして、使用不可信号を受信しなかった場合(S205:NO)、S204の処理に戻る。 【0066】 一方、使用不可信号を受信した場合(S205:YES)、挿入された紙幣Tをビルエントリー22から排出する(排出処理:S206)。例えば、紙幣Tが挿入されたスロットマシン4Sが、エリアEに設置されており、図14に示す選択エリア2の利用通貨選択画面508で、EUR(ユーロ)にはチェックが入れられず、使用できない通貨に設定されている場合には、挿入されたユーロ紙幣全てが、使用ができない通貨の金種であると判定され、挿入されたユーロ紙幣はビルエントリー22から排出される。これにより、エリアEに設置されたスロットマシン4Sでは使用できない通貨に設定された、ユーロ紙幣は、ビルエントリー22から挿入されたとしても排出されることにより利用が制限(中止)される。また、紙幣Tが挿入された当該スロットマシン4Sが、エリアEに設置されており、図15に示す、選択エリア2の利用金種選択画面509で、USDの100ドル紙幣にはチェックが入れられず、使用できない通貨の金種に設定されている場合には、挿入されたUS100ドル紙幣は、使用できない通貨の金種であると判定され、挿入されたUS100ドル紙幣はビルエントリー22から排出される。これにより、エリアEに設置されたスロットマシン4Sでは使用できない通貨の金種に設定された、100ドル紙幣は、ビルエントリー22から挿入されたとしても排出されることにより利用が制限(中止)される。そして、S206の排出処理後は、S201の処理へ戻る。」 「【0069】 (使用確認処理) 次に、スロットマシン管理サーバ1が、上記紙幣受け入れ処理のS203の処理によって、PTS端末700から送信された紙幣情報信号を受信した際に、スロットマシン管理サーバ1のセンターコントローラ101が実行する使用確認処理を図7のフローチャートを参照して説明する。」 「【0071】 一方、紙幣情報信号を受信した場合(S301:YES)、センターコントローラ101は、使用不可通貨参照処理を行う(S302)。この使用不可通貨参照処理では、記憶部102において記憶されている、通貨の利用設定(通貨の利用設定を行うエリアの情報、使用可又は不可とする通貨の情報、及び、使用可又は不可とする金種の情報)と、受信した紙幣情報信号の紙幣情報(挿入された紙幣T(通貨)の種類、挿入された紙幣Tの金種)及び、紙幣情報に紐付けられたエリア情報(紙幣情報信号を送信してきたPTS端末700が搭載されたスロットマシン4Sが所属しているエリアの情報)とが比較される。 【0072】 そして、使用不可通貨参照処理の結果、紙幣情報信号を送信してきたPTS端末700が搭載されたスロットマシン4Sが、通貨の利用設定が行なわれたエリアに該当しているか否かを判断し、該当している場合には、センターコントローラ101は、紙幣情報信号を送信したスロットマシン4Sに搭載された通貨読取装置201に挿入された紙幣Tが、使用不可に設定された通貨の金種であるか否かを判定する(S303)。そして、使用不可に設定された通貨の金種であると判定された場合(S303:YES)、使用不可信号を、紙幣情報信号を送信してきた、スロットマシン4SのPTS端末700を介して通貨読取装置201に送信する(S304)。 【0073】 一方、使用不可に設定された通貨の金種ではないと判定された場合(S303:NO)、使用許可信号を、紙幣情報信号を送信してきた、スロットマシン4SのPTS端末700を介して通貨読取装置201に送信する(S305)。以上で本処理を終了する。」 「【0087】 (その他の実施形態) 上記実施形態では、スロットマシン管理サーバ1の管理者は、入力部104により、通貨管理ソフトウェアを使用して、手入力により、通貨の利用設定を行っている。しかし、これに限らず、スロットマシン管理サーバ1は、カジノマネジメントシステム2など外部から偽札情報を受信した場合、偽札情報に基づき、自動的に通貨の利用設定を行ってもよい。」 (2)本件補正の適否の判断 本件補正の補正事項は上記(1)アのとおり、「前記通貨読取装置において読み取った通貨」が、「前記選択を受付けなかった通貨であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられており、且つ、外部から偽札情報を受信した場合」、「前記偽札情報に基づき」、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、「前記選択された通貨の利用の可否を自動的に設定する処理を実行させる指令」を送信する処理との事項を追加する補正を含むものである。 しかしながら、当初明細書等には、上記(1)イのとおり、スロットマシン管理サーバ1が、PTS端末700から送信された紙幣情報信号を受信した際に、スロットマシン管理サーバ1のセンターコントローラ101が実行する使用確認処理を実行することで、使用不可に設定された通貨の金種か否かを判定すること、及び、スロットマシン管理サーバ1は、カジノマネジメントシステム2など外部から偽札情報を受信した場合、偽札情報に基づき、自動的に通貨の利用設定を行ってもよいが記載されているものの、これらは個別の処理であって、前記通貨読取装置において読み取った通貨が、前記選択を受付けなかった通貨であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられており、且つ、外部から偽札情報を受信した場合、前記偽札情報に基づき、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用の可否を自動的に設定する処理を実行させることは記載されていない。 そのため、本件補正の補正事項は、当初明細書等から自明でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、上記のとおり本件補正を却下する。 第3 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1〜4に係る発明は、引用文献1(国際公開第2010/055726号)に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 本願発明 本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。 したがって、本願請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明4」という。)は、令和4年11月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される発明である。 「 【請求項1】 多種の通貨の利用が可能な通貨読取装置を備えた、複数の通貨取扱システムと、通信回線を介して接続される管理サーバであって、 前記通貨取扱システムは、通貨のベットとゲーム結果とに基づいて配当を付与するゲーミングマシンに搭載されており、 前記複数の通貨取扱システムはそれぞれ、複数のエリアの中の何れかのエリアに対応付けられ、且つ、前記複数のエリアは、前記ゲーミングマシンでベットされる通貨額の最小値に応じて分けられており、 当該管理サーバは、 前記複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能であり、 前記選択されたエリアに対応付けられている、前記通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用の可否を設定することができる処理を実行する。 【請求項2】 多種の通貨の利用が可能な通貨読取装置を備えた、複数の通貨取扱システムと、通信回線を介して接続される管理サーバであって、 前記通貨取扱システムは、通貨のベットとゲーム結果とに基づいて配当を付与するゲーミングマシンに搭載されており、 前記複数の通貨取扱システムはそれぞれ、複数のエリアの中の何れかのエリアに対応付けられ、且つ、前記複数のエリアは、前記ゲーミングマシンでベットされる通貨額の最小値に応じて分けられており、 当該管理サーバは、 前記複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能な入力部と、 前記複数の通貨取扱システムに指令を送信する送信部と、 所定の処理を実行するようにプログラムされたコントローラと、 を備え、 前記コントローラは下記処理を実行する。 (a)前記入力部により、複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、多種の通貨の中から任意の通貨の選択を受付ける処理、 (b)前記通貨読取装置において読み取った通貨が、前記選択を受付けた通貨であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられている場合、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用を可能にする処理を実行させる指令を送信する処理。 【請求項3】 請求項2に記載の管理サーバであって、 前記入力部は、更に、多種の金種から任意の金種を選択可能とし、 前記コントローラは、下記処理を実行する。 (a)前記入力部により、複数のエリアの中から任意のエリアの選択、多種の通貨の中から任意の通貨の選択、及び、及び、多種の金種から任意の金種の選択を受付る処理、 (b)前記通貨読取装置において読み取った通貨が、前記選択を受付けた通貨の金種であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられている場合、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の金種の利用を可能にする処理を実行させる指令を送信する処理。 【請求項4】 多種の通貨の利用が可能な通貨読取装置を備えた、複数の通貨取扱システムと、通信回線を介して接続される管理サーバであって、 前記複数の通貨取扱システムはそれぞれ、複数のエリアの中の何れかのエリアに対応付けられており、 当該管理サーバは、 前記エリアごとに利用可能な前記通貨の種類を設定及び確認可能なステータス画面を表示する表示部と、 前記表示部に表示された前記ステータス画面に基づき、前記複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能な入力部と、 前記複数の通貨取扱システムに指令を送信する送信部と、 所定の処理を実行するようにプログラムされたコントローラと、 を備え、 前記コントローラは下記処理を実行する。 (a)前記入力部により、複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、多種の通貨の中から任意の通貨の選択を受付ける処理、 (b)前記通貨読取装置において読み取った通貨が、前記選択を受付けた通貨であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられている場合、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用を可能にする処理を実行させる指令を送信する処理、 (c)前記通貨読取装置において読み取った通貨が、前記選択を受付けなかった通貨であり、前記通貨を読み取った当該通貨読取装置が、前記選択を受付けたエリアに対応付けられている場合、前記送信部から、当該通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用を不可にする処理を実行させる指令を送信する処理。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1に記載されている事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2010/055726号)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0012] 図2に示すように、本発明の実施形態に係るゲーミングシステム1は、プログレッシブボーナスを共有する10台のスロットマシン10A〜10J(ゲーミングターミナル)を有している。プログレッシブボーナスは、例えば、各スロットマシン10A〜10Jにおいて実行されるスロットゲーム(単位ゲーム)にベットされたクレジット(賭け量)の一部を累積することで、プログレッシブに増加する。各スロットマシン10A〜10Jでベットを受け付ける通貨の種類は、予め指定される。プログレッシブボーナスのカウントは、例えば、支持部材3の中に収容したサーバ5のプログレッシブボーナスカウンタ77(図6A参照)によって行われる。ゲーミングシステム1では、所定条件が成立すると、各スロットマシン10A〜10Jが参加するイベントゲームが実行される。このイベントゲームで入賞したスロットマシン10(10A〜10J)には、プログレッシブボーナスによる賞が付与される。」 「[0024] 図3は、本実施形態に係るゲーミングシステム1のネットワーク接続図である。この図3に示すように、複数のスロットマシン10(10A〜10J)は、ネットワークを介してサーバ5に接続される。更に、サーバ5は、共通ディスプレイ4やサブディスプレイ301A,301B、各ランプ帯310A〜310J(の発光ダイオード)に接続される。 [0025] 次に、図4を参照してスロットマシン10の構成について説明する。なお、各スロットマシン10(10A〜10J)は同一構成であるので、スロットマシン10Aを例に挙げて説明する。図4に示すように、本実施形態に係るスロットマシン10Aは、上部キャビネット11と、下部キャビネット12、及び、上部キャビネット11と下部キャビネット12の間にて前面に突出して設けられる操作卓15を備えている。」 「[0035] また、操作卓15には、キャッシュアウトスイッチ23、MAXベットスイッチ24、ベットスイッチ25、スピンリピートベットスイッチ26、スタートスイッチ27、及びレスキュー設定スイッチ28が設けられている。更に、操作卓15には、ゲームを実行する際に用いるメダルを投入するためのメダル投入口21、紙幣の適否を識別すると共に正規の紙幣を受け入れるための紙幣識別器22が設けられている。この紙幣識別器22で受け入れ可能な紙幣の種類は、サーバ5から通知されるクレジットのベットに使用する通貨の種類と同じである。したがって、このスロットマシン10Aでは、サーバ5から指定された種類の通貨の単位でクレジットがカウントされる。」 「[0042] 図5は、本実施形態に係るスロットマシン10Aに設けられているコントローラ40、及び該コントローラ40に接続される各種機器の電気的構成を示すブロック図である。・・・(以下省略)」 「[0056] 次に、サーバ5の電気的構成を図6Aに示すブロック図を参照して説明する。サーバ5は、各スロットマシン10(10A〜10J)でスロットゲームが実行されることにより発生するプログレッシブボーナスのカウント値をプログレッシブボーナスカウンタ77に累積し、且つ、イベントゲームの実行時(イベントタイム)には、共通ディスプレイ4やサブディスプレイ301A,301Bにイベントゲームに関連する各種の情報を表示する制御を行う。これと共に、サーバ5は、サブディスプレイ301A,301Bに内蔵されたサブスピーカ302A,302Bに、プログレッシブボーナスカウンタ77の累積カウント値Nに応じた賞の配当量を案内するメッセージを音声出力させる制御を行う。更に、サーバ5は、イベントゲームに勝利したスロットマシン10に対して、プログレッシブボーナスカウンタ77の累積カウント値Nに応じた賞を付与する制御を行う。」 「[0067] 図6Aに示したサーバ5のサーバ制御用CPU71は、図9のフローチャートに示す処理を一定周期毎に繰り返し実行する。そして、この処理ではまず、各スロットマシン10(10A〜10J)におけるクレジットのベットに使用する通貨の種類を指定する入力が、キーボード75から行われたか否かを判定する(ステップS21)。入力が行われていない場合は(ステップS21でNO)、ステップS23に処理を移行する。入力が行われた場合は(ステップS21でYES)、入力された通貨の種類を各スロットマシン10(10A〜10J)のコントローラ40に通知する(ステップS22)。 [0068] 例えば、キーボード75から日本円が指定入力された場合は、各スロットマシン10(10A〜10J)のコントローラ40に日本円を通知する。米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、ユーロがそれぞれ入力された場合は、入力された米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、又は、ユーロを通知する。なお、サーバ5の電源が投入された直後には、デフォルトの通貨種類として、米ドルが各スロットマシン10(10A〜10J)のコントローラ40に通知される。その後、ステップS23に処理を移行する。」 「[0079] 図5に示したコントローラ40は、スロットマシン10Aにおけるクレジットのベットに用いる通貨の種類が、サーバ5から指定されたか否かを判定する(ステップS36)。指定された場合は(ステップS36でYES)、指定された種類の通貨をクレジットのベットに用いる設定処理を行った後(ステップS37)、ステップS38のスロットゲーム実行処理を行い、本処理を終了する。通貨の種類がサーバ5から指定されていない場合は(ステップS36でNO)、ステップS38のスロットゲーム実行処理を行い、本処理を終了する。スロットゲーム実行処理の詳細については後述する。」 2 引用文献1に記載された発明 上記1から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 プログレッシブボーナスを共有する10台のスロットマシン10A〜10J(ゲーミングターミナル)を有するゲーミングシステム1における、ネットワークを介して複数のスロットマシン10(10A〜10J)に接続されるサーバ5であって([0012]、[0024])、 各スロットマシン10A〜10Jにおいて実行されるスロットゲーム(単位ゲーム)にベットされ、各スロットマシン10A〜10Jが参加するイベントゲームが実行され、イベントゲームで入賞したスロットマシン10(10A〜10J)には、プログレッシブボーナスによる賞が付与され([0012]) 各スロットマシン10(10A〜10J)は操作卓15を備え、操作卓15には、ゲームを実行する際に用いるメダルを投入するためのメダル投入口21、紙幣の適否を識別すると共に正規の紙幣を受け入れるための紙幣識別器22が設けられ([0025]、[0035])、 スロットマシン10Aでは、サーバ5から指定された種類の通貨の単位でクレジットがカウントされ([0035])、 サーバ5は、 イベントゲームに勝利したスロットマシン10に対して、プログレッシブボーナスカウンタ77の累積カウント値Nに応じた賞を付与する制御を行い([0056])、 各スロットマシン10(10A〜10J)におけるクレジットのベットに使用する通貨の種類を指定する入力が、キーボード75から行われた場合は、入力された通貨の種類を各スロットマシン10(10A〜10J)のコントローラ40に通知することであって([0067])、キーボード75から日本円が指定入力された場合は、各スロットマシン10(10A〜10J)のコントローラ40に日本円を通知し、米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、ユーロがそれぞれ入力された場合は、入力された米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、又は、ユーロを通知し([0068])、 スロットマシン10Aは、クレジットのベットに用いる通貨の種類が、サーバ5から指定された場合は、指定された種類の通貨をクレジットのベットに用いる設定処理を行う([0079])、 サーバ5。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は、サーバ5の「キーボード75」から「日本円」、「米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、ユーロ」が入力されるものであり、「各スロットマシン10(10A〜10J)は操作卓15を備え、操作卓15には、ゲームを実行する際に用いるメダルを投入するためのメダル投入口21、紙幣の適否を識別すると共に正規の紙幣を受け入れるための紙幣識別器22が設けられ」、「サーバ5」は、「ネットワークを介して複数のスロットマシン10(10A〜10J)に接続される」ものである。 そうすると、引用発明の、キーボードで指定される「日本円」及び「米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、ユーロ」は、本願発明1の「多種の通貨」に相当し、引用発明の「紙幣の適否を識別すると共に正規の紙幣を受け入れるための紙幣識別器22」は、本願発明1の「多種の通貨の利用が可能な通貨読取装置」に相当し、引用発明の「各スロットマシン10(10A〜10J)」は、本願発明1の「多種の通貨の利用が可能な通貨読取装置を備えた、複数の通貨取扱システム」に相当する。 そうすると、引用発明の「ネットワークを介して複数のスロットマシン10(10A〜10J)に接続されるサーバ5」は、後述する相違点は別にして、本願発明1の「多種の通貨の利用が可能な通貨読取装置を備えた、複数の通貨取扱システムと、通信回線を介して接続される管理サーバ」に相当する。 イ 引用発明は、「各スロットマシン10A〜10Jにおいて実行されるスロットゲーム(単位ゲーム)にベットされ、各スロットマシン10A〜10Jが参加するイベントゲームが実行され、イベントゲームで入賞したスロットマシン10(10A〜10J)には、プログレッシブボーナスによる賞が付与され」、「各スロットマシン10(10A〜10J)は操作卓15を備え、操作卓15には、ゲームを実行する際に用いるメダルを投入するためのメダル投入口21、紙幣の適否を識別すると共に正規の紙幣を受け入れるための紙幣識別器22が設けられ」るものである。 そうすると、引用発明の「スロットマシン10」と、本願発明1の「前記通貨取扱システムは、通貨のベットとゲーム結果とに基づいて配当を付与するゲーミングマシンに搭載されており」と、「前記通貨取扱システムは、通貨のベットとゲーム結果とに基づいて配当を付与するゲーミングマシンと一体であり」との点で共通する。 ウ 引用発明は、「サーバ5」が、「各スロットマシン10(10A〜10J)におけるクレジットのベットに使用する通貨の種類を指定する入力が、キーボード75から行われた場合は、入力された通貨の種類を各スロットマシン10(10A〜10J)のコントローラ40に通知」し、「キーボード75」から「日本円」、「米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、ユーロ」が入力される」ものである。 そうすると、引用発明の「キーボード75」から「日本円」、「米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、ユーロ」が入力される」ことは、本願発明1の「当該管理サーバは」、「前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能」に相当する。 エ 引用発明の、「スロットマシン10Aは、クレジットのベットに用いる通貨の種類が、サーバ5から指定された場合は、指定された種類の通貨をクレジットのベットに用いる設定処理を行う」ことは、サーバ5が、スロットマシン10に対して設定処理を実行させる点で、引用発明の「当該管理サーバ」は、「前記通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用の可否を設定することができる処理を実行する」ことに相当する。 オ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「 多種の通貨の利用が可能な通貨読取装置を備えた、複数の通貨取扱システムと、通信回線を介して接続される管理サーバであって、 前記通貨取扱システムは、通貨のベットとゲーム結果とに基づいて配当を付与するゲーミングマシンと一体であり、 当該管理サーバは、 前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能であり、 前記通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用の可否を設定することができる処理を実行する。」 <相違点> (相違点1) 本願発明1は、「前記通貨取扱システムは、通貨のベットとゲーム結果とに基づいて配当を付与するゲーミングマシンに搭載されて」いるのに対し、引用発明は、「紙幣識別器22」が設けられた「スロットマシン10」に、「ベット」され、「プログレッシブボーナスによる賞が付与され」る点。 (相違点2) 本願発明1は、「前記複数の通貨取扱システムはそれぞれ、複数のエリアの中の何れかのエリアに対応付けられ、且つ、前記複数のエリアは、前記ゲーミングマシンでベットされる通貨額の最小値に応じて分けられて」いるのに対し、引用発明は、そのような構成ではない点。 (相違点3) 本願発明1は、「前記複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能」であるのに対して、引用発明は、「サーバ5」の「キーボード75」から「日本円」、「米ドル、英ポンド、南アフリカランド、香港ドル、カナダドル、豪ドル、ユーロ」が入力される」ものの、この入力及び「エリアの選択」をするものではない。 (相違点4) 本願発明1は、「前記選択されたエリアに対応付けられている、前記通貨取扱システムに対して、前記選択された通貨の利用の可否を設定することができる処理を実行する」のに対し、引用発明の「スロットマシン10」は、選択されたエリアに対応づけられているものではない点。 (2)相違点についての判断 事案にかんがみ、相違点3から検討を行う。 引用文献1には、エリアの選択に関する記載はなく、周知の事項でもない。 なお、引用文献1には「[0209] 以上に説明した本発明の第1乃至第4実施形態では、サーバ5に接続された各スロットマシン10(10A〜10J)で共有するプログレッシブボーナスカウント累積値N,N1,N2を、サーバ5のプログレッシブボーナスカウンタ77でカウントする場合について説明した。しかし、互いに異なるエリアにスロットマシン10(10A〜10J)と共に設置された複数のサーバ5を共通のホストサーバにそれぞれ接続し、各サーバ5が管理するエリアの各スロットマシン10(10A〜10J)で共有するプログレッシブボーナス累積カウント値N,N1,N2を、ホストサーバで一括してカウントする構成とすることもできる。」との記載はあるものの、通貨の選択及びエリアを選択することは記載されていない。 このため、引用発明において、引用文献1の記載に基づいて、エリアを選択すること及び通貨の種類の指定をする構成とすることで上記相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものではない。 そして、当該相違点1〜4の構成を採用することで、「複数のエリアが、ベットされる通貨額の最小値に応じて分けられていることから、所定の通貨の利用ができるエリアと利用できないエリアとに分ける場合に、ベットされる額の最小値を考慮して、エリアを選択することができる。」(【0012】)との効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、上記相違点1、2、4を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2、3について 本願発明2は、独立形式請求項であるものの、本願発明1の「前記複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 また、本願発明2を引用する本願発明3は、本願発明2の「前記複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明4について 本願発明4は、独立形式請求項であるものの、本願発明1の「前記複数のエリアの中から任意のエリアの選択、及び、前記多種の通貨の中から任意の通貨の選択が可能」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1〜4は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2024-02-19 |
出願番号 | P2019-018016 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06Q)
P 1 8・ 561- WY (G06Q) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
梶尾 誠哉 松田 直也 |
発明の名称 | 管理サーバ |
代理人 | 弁理士法人ATEN |