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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1407752
総通号数 27 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-08-30 
確定日 2024-03-12 
事件の表示 特願2022− 28888「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 9月 7日出願公開、特開2023−124992、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和4年2月28日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和5年 1月31日付け:拒絶理由通知書
令和5年 3月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 7月 4日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和5年 8月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年12月19日 :上申書の提出

第2 令和5年8月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定

1 結論
令和5年8月30日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1)補正の内容
令和5年8月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、令和5年3月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、(下線部は、補正箇所である。)

「 【請求項1】
ケースと、前記ケースに固定されるカバーとを有している筐体、
前記筐体内に設けられる保持具、
前記ケースと前記保持具との間に設けられる第1基板、
前記カバーと前記保持具との間に設けられる第2基板、及び
前記カバーと前記保持具と前記第1基板と前記第2基板とを、前記ケースに固定する固定ねじ
を備え、
前記ケースには、前記第1基板に当てられる第1固定部が形成されており、
前記カバーには、前記第2基板に当てられる第2固定部が形成されており、
前記保持具には、前記第1基板と前記第2基板との間に挟まれるスペーサ部が形成されており、
前記第1固定部には、前記固定ねじがねじ込まれる固定ねじ穴が設けられており、
前記第2固定部、前記スペーサ部、前記第1基板、及び前記第2基板には、前記固定ねじが通される固定ねじ通し穴がそれぞれ設けられており、
前記固定ねじの締め付けによって、前記カバー、前記保持具、前記第1基板、前記第2基板が同時に前記ケースに固定され、
前記保持具には、前記第1基板の周縁部に押し付けられている第1押付部と、前記第2基板の周縁部に押し付けられている第2押付部とが形成されており、
前記ケースには、前記第1基板の周縁部に押し付けられているケース押付部が形成されており、
前記カバーには、前記第2基板の周縁部に押し付けられているカバー押付部が形成されており、
前記筐体および前記保持具は、グランドを有しており、
前記第1基板のグランドと前記第1押付部のグランドとの間、前記第2基板のグランドと前記第2押付部のグランドとの間、前記第1基板のグランドと前記ケース押付部のグランドとの間、前記第2基板のグランドと前記カバー押付部のグランドとの間、前記ケースのグランドと前記カバーのグランドとの間、前記ケースのグランドと前記保持具のグランドとの間、及び前記カバーのグランドと前記保持具のグランドとの間の少なくともいずれか1箇所には、導電性部材が介在している電子機器。」
とする、補正を含むものである。

(2)本件補正の適否について
本件補正の請求項1には、上記(1)のとおり、「前記筐体および前記保持具は、グランドを有しており」との事項が記載されている。
そして、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、【0061】に「このため、外力、例えば振動に対して、第1基板30及び第2基板40を筐体10内に安定して保持することができる。これにより、第1基板30のグランドと、第2基板40のグランドと、筐体10のグランドとの間を安定して接続することができ、安定したEMC(Electromagnetic Compatibility)性能を確保することができる。」と記載されている。
してみると、当初明細書等には、「筐体」が「グランド」を有することは記載されているものの、「前記保持具は、グランドを有」することについては直接記載されておらず、また、「保持具」の材質についても記載されていない。したがって、当初明細書等の上記の他の記載事項を検討しても、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば、出願時の技術常識に照らして、「前記保持具は、グランドを有しており」が当初明細書等に記載されていると同然であると理解することもできない。
そうすると、本件補正後の請求項1に記載された「前記保持具は、グランドを有しており」が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとする根拠は見出せない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

ここで、本件請求人は、令和5年12月19日提出の上申書において、 「審査官殿は、保持具がグランドを有する構成が出願当初明細書に記載されていないと御指摘しております。
しかしながら、出願当初明細書の[0049]には、「ケース11と保持具20との間、及びカバー12と保持具20との間の少なくともいずれか1箇所にも、導電性部材52が介在していてもよい。」と記載されております。
導電性部材52が介在することの目的は、出願当初明細書の[0062]に記載されているように、安定したEMC性能を確保することです。
安定したEMC性能を確保するためには、ケース11と保持具20との間、及びカバー12と保持具20との間が電気的に接続される必要があります。
すなわち、保持具20には、電気的に接続されるためのグランドが設けられており、保持具20のグランドにケース11及びカバー12が電気的に接続されていることになります。
したがって、出願当初明細書の[0049]には、保持具がグランドを有する構成が記載されているものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、「ケース11と保持具20との間」の「導電性部材52」と、「カバー12と保持具20との間」の「導電性部材52」が何らかの手段で接続されていれば、「保持具20」がグランドを有していなくとも「ケース11」と「カバー12」で安定したEMC性能は確保できるものと認められる。また、当初明細書等の段落【0045】には「・・・。また、ケース11とカバー12との間には、導電性部材52が設けられている。」と記載されており、引用文献1においては、「ケース11」と「カバー12」からなる筐体全体で安定したEMC性能が確保できているものである。
したがって、出願当初明細書の[0049]に「保持具20」がグランドを有する構成が記載されていたとは認められない。
よって、本件請求人の上記主張は採用できない。

(3)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 原査定の概要
原査定(令和5年7月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 理由1
新規性)この出願の請求項1、2、8、9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 理由2
進歩性)本願請求項1−6、8、9に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願請求項7に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、および、引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2008−78438号公報
引用文献2:登録実用新案第3030032号公報

第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 令和5年8月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和5年3月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ケースと、前記ケースに固定されるカバーとを有している筐体、
前記筐体内に設けられる保持具、
前記ケースと前記保持具との間に設けられる第1基板、
前記カバーと前記保持具との間に設けられる第2基板、及び
前記カバーと前記保持具と前記第1基板と前記第2基板とを、前記ケースに固定する固定ねじ
を備え、
前記ケースには、前記第1基板に当てられる第1固定部が形成されており、
前記カバーには、前記第2基板に当てられる第2固定部が形成されており、
前記保持具には、前記第1基板と前記第2基板との間に挟まれるスペーサ部が形成されており、
前記第1固定部には、前記固定ねじがねじ込まれる固定ねじ穴が設けられており、
前記第2固定部、前記スペーサ部、前記第1基板、及び前記第2基板には、前記固定ねじが通される固定ねじ通し穴がそれぞれ設けられており、
前記固定ねじの締め付けによって、前記カバー、前記保持具、前記第1基板、前記第2基板が同時に前記ケースに固定される電子機器。
【請求項2】
前記保持具には、前記第1基板の周縁部に押し付けられている第1押付部と、前記第2基板の周縁部に押し付けられている第2押付部とが形成されており、
前記ケースには、前記第1基板の周縁部に押し付けられているケース押付部が形成されており、
前記カバーには、前記第2基板の周縁部に押し付けられているカバー押付部が形成されている請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1基板と前記第1押付部との間、前記第2基板と前記第2押付部との間、前記第1基板と前記ケース押付部との間、前記第2基板と前記カバー押付部との間、前記ケースと前記カバーとの間、前記ケースと前記保持具との間、及び前記カバーと前記保持具との間の少なくともいずれか1箇所には、導電性部材が介在している請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記ケースの外周部と、前記カバーの外周部とは、ラビリンス構造により結合されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記ケースの外周部及び前記カバーの外周部と、前記保持具の外周部とは、それぞれラビリンス構造により結合されている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記ケース、前記カバー、前記保持具、前記第1基板、及び前記第2基板には、位置決めピンが通されるピン通し穴がそれぞれ設けられている請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1基板には、第1保持具位置決め穴が設けられており、
前記第2基板には、第2保持具位置決め穴が設けられており、
前記保持具には、前記第1保持具位置決め穴に挿入される第1保持具突起と、前記第2保持具位置決め穴に挿入される第2保持具突起とが形成されている請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記保持具に設けられており、前記第1基板及び前記第2基板の少なくともいずれか一方に実装されている発熱電子部品の熱を前記保持具に伝える放熱体
をさらに備えている請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記保持具は、前記筐体外に露出している放熱フィンを有している請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電子機器。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。)

ア 「【図4】



イ 「【図5】



ウ 「【図6】



エ 「【0025】
図4から図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、図4はプリント基板の取付構造を示す分解斜視図、図5は図4の組み付け状態を示すA−A線断面図、図6は、図5の組み付け前の状態を示す分解断面図であり、前述した第1の実施形態と同一部分、均等箇所については同一符号を付して説明する。
【0026】
同図において、第2の実施形態におけるプリント基板の取付構造としては、前述した第1の実施形態とほぼ同様の構造を採用している。ここでは、合成樹脂材料により成型された上ケース10と下ケース20とによって全体のケースが構成され、この上下のケース10,20の内部に、たとえば第1のプリント基板30と第2のプリント基板40とが所定の間隔を介して収納されている。この場合、各プリント基板30,40の間には絶縁性材料からなるスペーサ50が介在されており、このスペーサ50は前記上下のケース10,20との色合いと異なる色合いにより成形されている。
【0027】
また、第2の実施形態にあっては、下ケース20に収納される第1のプリント基板30と第2のプリント基板40とを上ケース10を介して共締め固定するためのビスやネジからなる固定部材60が設けられている。
【0028】
下ケース20は、ほぼ平板状からなる底壁部21と、その底壁部21の周囲から上方に延びる側壁部22とによって上方が開放された箱状に形成されている。また、下ケース20の底壁部21には、円柱状からなる複数個の組み付け用ボス部23が上方に向かって一体に突き出し形成されており、この組み付け用ボス部23の外形寸法として下側から上側に順次積層配設するために径大な寸法からなる載置面部23Aを有する軸部23Bが設けられ、この径大な寸法からなる軸部23Bと連続して径小な寸法からなる載置面部23Cを有する軸部23Dとが一体に形成されている。
【0029】
なお、この軸部23Dの上端部にはさらに径小からなる筒部23Eが第2のプリント基板40の板厚寸法分だけ突き出し形成され、筒部23Eおよび径小な軸部23Dの上端部分には上ケース10を介して固定部材60によって螺着するための螺着用孔部23Fが設けられている。
【0030】
第1のプリント基板30には、下ケース20に設けられたそれぞれの組み付け用ボス部23の位置に合わせて軸部23B(審判注:「軸部23D」の誤記と認められる。)を挿入する取付孔31が形成されている。また、第1のプリント基板30の上に積層配設される第2のプリント基板40には、下ケース20に設けられたそれぞれの組み付け用ボス部23の位置に合わせて軸部23D(審判注:「筒部23E」の誤記と認められる。)を挿入する取付孔41が形成されている。
【0031】
また、下ケース20の側壁部22には、前記それぞれの組み付け用ボス部23と隣接する箇所に確認用の開口部24Aがそれぞれ形成されている。
【0032】
また、スペーサ50は、第1のプリント基板30と第2のプリント基板40との間隔を所定間隔に保つための部材であり、この第2の実施形態にあってはスペーサ50の高さ寸法としては前記下ケース20に設けられた組み付け用ボス部23の径大な軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてスペーサ50をセットした時に径小な軸部23Dの上端位置より若干低い位置関係となるように高さ寸法が設定されている。
【0033】
また、この第2の実施形態からなるスペーサ50においては、径小な軸部23Dに挿入されるように挿通孔51が設けられるとともに、スペーサ50の外周面から一体に下ケース20の側壁部22に設けられた開口部24A位置まで沿って延設される確認用突部52が設けられているものであり、結果的に、スペーサ50に設けられた確認用突部52が下ケース20に設けられた開口部24A位置に臨むように設けられている。
【0034】
また上ケース10は、ほぼ平板状からなる上壁部11と、その上壁部11の周囲から下方に延びる側壁部12とによって下方が開放された箱状に形成されている。また、上ケース10の上壁部11には、前記下ケース20のそれぞれの筒部23Eと対向する位置に筒部23Eを取り巻くように筒状からなる突き当て筒部14が設けられており、この突き当て筒部14の中央部分にはネジなどの固定部材60を挿入し固定するための固定孔15が設けられている。
【0035】
上記構成からなる第2の実施形態におけるプリント基板の取付構造においては、それぞれのプリント基板30、40を取付固定する場合、先ず下ケース20を基準として第1のプリント基板30の取付孔31を組み付け用ボス部23に設けられた径小な寸法からなる軸部23Dに挿通し、組み付け用ボス部23に設けられた径大な寸法からなる軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてセットする。次いで、軸部23Dに筒状からなるスペーサ50の挿通孔51を差し込んでスペーサ50を第1のプリント基板30上に載置する。この際、スペーサ50の外周面から一体に延設された確認用突部52が下ケース20に設けられた開口部24A位置に臨むようにセットされる。
【0036】
次いで、第2のプリント基板40を筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットされる。さらに、第2のプリント基板40上に上ケース10を被せ、この状態にてネジなどの固定部材60によって上ケース10に形成された固定孔15を介して筒部23Eと軸部23Dの上端部分に設けられた螺着用孔部23Fに螺着固定することにより、下ケース20に対して第1のプリント基板30とスペーサ50および第2のプリント基板40とが上ケース10とともに共締め固定される。」

(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「合成樹脂材料により成型された上ケース10と下ケース20とによって全体のケースが構成され、この上下のケース10、20の内部に、第1のプリント基板30と第2のプリント基板40とが所定の間隔を介して収納され、各プリント基板30、40の間には絶縁性材料からなるスペーサ50が介在されている、プリント基板の取付構造において、
下ケース20は、ほぼ平板状からなる底壁部21と、その底壁部21の周囲から上方に延びる側壁部22とによって上方が開放された箱状に形成され、また、下ケース20の底壁部21には、円柱状からなる複数個の組み付け用ボス部23が上方に向かって一体に突き出し形成されており、この組み付け用ボス部23の外形寸法として下側から上側に順次積層配設するために径大な寸法からなる載置面部23Aを有する軸部23Bが設けられ、この径大な寸法からなる軸部23Bと連続して径小な寸法からなる載置面部23Cを有する軸部23Dとが一体に形成され、この軸部23Dの上端部にはさらに径小からなる筒部23Eが第2のプリント基板40の板厚寸法分だけ突き出し形成され、筒部23Eおよび径小な軸部23Dの上端部分には上ケース10を介して固定部材60によって螺着するための螺着用孔部23Fが設けられており、
第1のプリント基板30には、下ケース20に設けられたそれぞれの組み付け用ボス部23の位置に合わせて軸部23Dを挿入する取付孔31が形成されており、
第2のプリント基板40には、下ケース20に設けられたそれぞれの組み付け用ボス部23の位置に合わせて筒部23Eを挿入する取付孔41が形成されており、
スペーサ50は、第1のプリント基板30と第2のプリント基板40との間隔を所定間隔に保つための部材であり、スペーサ50の高さ寸法としては前記下ケース20に設けられた組み付け用ボス部23の径大な軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてスペーサ50をセットした時に径小な軸部23Dの上端位置より若干低い位置関係となるように高さ寸法が設定されており、
上ケース10は、ほぼ平板状からなる上壁部11と、その上壁部11の周囲から下方に延びる側壁部12とによって下方が開放された箱状に形成され、また、上ケース10の上壁部11には、前記下ケース20のそれぞれの筒部23Eと対向する位置に筒部23Eを取り巻くように筒状からなる突き当て筒部14が設けられており、この突き当て筒部14の中央部分にはネジなどの固定部材60を挿入し固定するための固定孔15が設けられており、
それぞれのプリント基板30、40を取付固定する場合、先ず下ケース20を基準として第1のプリント基板30の取付孔31を組み付け用ボス部23に設けられた径小な寸法からなる軸部23Dに挿通し、組み付け用ボス部23に設けられた径大な寸法からなる軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてセットし、次いで、軸部23Dに筒状からなるスペーサ50の挿通孔51を差し込んでスペーサ50を第1のプリント基板30上に載置し、
次いで、第2のプリント基板40を筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットし、さらに、第2のプリント基板40上に上ケース10を被せ、この状態にてネジなどの固定部材60によって上ケース10に形成された固定孔15を介して筒部23Eと軸部23Dの上端部分に設けられた螺着用孔部23Fに螺着固定する、
プリント基板の取付構造。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

ア 「【図1】



イ 「【図3】



ウ 「【0012】
医療器械用基板固定用具10は、電子回路基板30に配設された所定径の孔部31〜33内に嵌入される第1基板挿入凸部を形成する上部円柱部11、該上部円柱部11に続いてやや大径の断面略六角形の角柱部12と、角柱部14に続く中間円柱部14と、中間円柱部14に続き小径で基板20に配設された孔部21〜23の円形部分の径と略同じ外径を有する下部円柱部15と該下部円柱部15より連続して下部円柱部15形状より一部が外方に突出した断面略星雲断面形状を有する螺合係合部13とで構成されている。」

エ 「【図4】



オ 「【0025】
図4に示す第2の考案の実施の形態例における医療器械用基板固定用具は、図3に示す第1の実施の形態例に比し、螺子孔11に変えて中心部に貫通孔17が形成されている。
そして、第1の実施の形態例と同様にして2つの基板を図2の如くに固定する。この第2の実施の形態例における医療器械用基板固定用具10により固定状態とされた基板200を下部筐体100と上部筐体300で形成される箱状の筐体内に固定する操作を以下説明する。
【0026】
下部筐体100には、図4の(B)に明確に示されているように、基板200の医療器械用基板固定用具10の貫通孔17位置に合わせて雌螺子部111が設けられており、この雌螺子部111の筐体側面方向外方に医療器械用基板固定用具10の螺合係合部13の一部外方突出部を両側より挟持して医療器械用基板固定用具10が回転することを防止する挟持片121、122が配設されている。
そして、図4に示すようにこの挟持片121、122の上面は、雌螺子部111上面より所定距離だけ高く形成されており、基板200を螺合係合部13の一部外方突出部が筐体側面方向に突出するように固定して下部筐体100に収納することにより、この医療器械用基板固定用具10が基板に対して回転することを防止することができる。
【0027】
そして、この基板200を例えば下部筐体100内に収納した状態で上部筐体をセットし、螺子310を上部筐体300に配設された固定孔320より貫通孔17を貫通するように挿入し、下部筐体100に設けられている螺子孔部111に螺合させて上下筐体部及び基板を互いに固定する。
なお、基板200において、医療器械用基板固定用具10を配置していない部分においては、螺子315により基板200と上部筐体を固定する構成であり、基板200に螺子孔が配設されている。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「下ケース20」、「上ケース10」は、各々、本願発明1の「ケース」、「カバー」に相当する。
また、引用発明の「ケース」は、「上ケース10と下ケース20とによって全体」「が構成され」るものであって、「下ケース20」に「上ケース10」が固定されていることは明らかであるから、引用発明の「ケース」は、本願発明1の「ケースと、前記ケースに固定されるカバーとを有している筐体」に相当する。

イ 引用発明の「スペーサ50」は、「上下のケース10、20の内部」の「第1のプリント基板30と第2のプリント基板40とが所定の間隔を介して収納され」るように、「各プリント基板30、40の間に」「介在され」るものであるから、本願発明1の「前記筐体内に設けられる保持具」に相当する。

ウ 引用発明では、「第1のプリント基板30の取付孔31を」「下ケース20」の「組み付け用ボス部23に設けられた径小な寸法からなる軸部23Dに挿通し、組み付け用ボス部23に設けられた径大な寸法からなる軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてセットし、次いで、軸部23Dに筒状からなるスペーサ50の挿通孔51を差し込んでスペーサ50を第1のプリント基板30上に載置」するものであり、引用発明の「第1のプリント基板30」は、「下ケース20」と「スペーサ50」との間に設けられているといえる。
したがって、引用発明の「第1のプリント基板30」は、本願発明1の「前記ケースと前記保持具との間に設けられる第1基板」に相当する。

エ 引用発明では、「第2のプリント基板40を」「下ケース20」の「筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットされ、さらに、第2のプリント基板40上に上ケース10を被せ」るものであり、引用発明の「第2のプリント基板40」は、「上ケース10」と「スペーサ50」との間に設けられているといえる。
したがって、引用発明の「第2のプリント基板40」は、本願発明1の「前記カバーと前記保持具との間に設けられる第2基板」に相当する。

オ 引用発明の「固定部材60」は、「ネジ」であって、「それぞれのプリント基板30、40を取付固定する場合、先ず下ケース20を基準として第1のプリント基板30の取付孔31を」「下ケース20」の「組み付け用ボス部23に設けられた径小な寸法からなる軸部23Dに挿通し、組み付け用ボス部23に設けられた径大な寸法からなる軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてセットし、次いで、軸部23Dに筒状からなるスペーサ50の挿通孔51を差し込んでスペーサ50を第1のプリント基板30上に載置し、次いで、第2のプリント基板40を筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットし、さらに、第2のプリント基板40上に上ケース10を被せ、この状態にて」「上ケース10に形成された固定孔15を介して筒部23Eと軸部23Dの上端部分に設けられた螺着用孔部23Fに螺着固定」されるものである。
してみると、引用発明の「固定部材60」は、「上ケース10」と「スペーサ50」と「第1のプリント基板30」と「第2のプリント基板40」とを、「下ケース20」に固定するねじといえる。
したがって、引用発明の「固定部材60」は、本願発明1の「前記カバーと前記保持具と前記第1基板と前記第2基板とを、前記ケースに固定する固定ねじ」に相当する。

カ 引用発明では、「第1のプリント基板30の取付孔31を」「下ケース20」の「組み付け用ボス部23に設けられた径小な寸法からなる軸部23Dに挿通し、組み付け用ボス部23に設けられた径大な寸法からなる軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてセット」するものであるから、「下ケース20」の「軸部23Bの載置面部23A」は、「第1のプリント基板30」に当てられているといえる。
したがって、引用発明の「軸部23Bの載置面部23A」は、本願発明1の「第1固定部」に相当し、引用発明の「下ケース20」に「載置面部23Aを有する軸部23Bが設けられ」ていることは、本願発明1の「前記ケースには、前記第1基板に当てられる第1固定部が形成されて」いることに相当する。

キ 引用発明の「上ケース10」の「固定孔15」は、「筒部23Eと対向する位置に筒部23Eを取り巻くように筒状からなる突き当て筒部14の中央部分」に設けられているものであって、引用発明では、「第2のプリント基板40を筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットし、さらに、第2のプリント基板40上に上ケース10を被せ、この状態にてネジなどの固定部材60によって上ケース10に形成された固定孔15を介して筒部23Eと軸部23Dの上端部分に設けられた螺着用孔部23Fに螺着固定する」ものであるから、引用発明の「上ケース10」の「突き当て筒部14」は「第2のプリント基板40」に当てられているといえる。
したがって、引用発明の「突き当て筒部14」は、本願発明1の「第2固定部」に相当し、そして、引用発明の「上ケース10の上壁部11には、前記下ケース20のそれぞれの筒部23Eと対向する位置に筒部23Eを取り巻くように筒状からなる突き当て筒部14が設けられて」いることは、本願発明1の「前記カバーには、前記第2基板に当てられる第2固定部が形成されて」いることに相当する。

ク 引用発明の「スペーサ50」は、「第1のプリント基板30と第2のプリント基板40との間隔を所定間隔に保つための部材であ」るから、引用発明の「スペーサ50」は、本願発明1の「前記保持具には、前記第1基板と前記第2基板との間に挟まれるスペーサ部が形成され」るに相当する構成を有していることは明らかである。

ケ 引用発明の「螺着用孔部23F」は、「固定部材60」の「ネジ」が「螺着固定」されるものであって、ねじがねじ込まれる穴といえる。しかしながら、「螺着用孔部23F」は、「筒部23Eと軸部23Dの上端部分に設けら」れるものであって、「載置面部23A」に設けられたものではない。
してみると、引用発明の「螺着用孔部23F」は、本願発明1の「固定ねじがねじ込まれる固定ねじ穴」に相当し、引用発明1の「筒部23Eおよび径小な軸部23Dの上端部分には上ケース10を介して固定部材60によって螺着するための螺着用孔部23Fが設けられ」ることと、本願発明1の「前記第1固定部には、前記固定ねじがねじ込まれる固定ねじ穴が設けられ」ることとは、後記の点で相違するものの、「前記ケースには、前記固定ねじがねじ込まれる固定ねじ穴が設けられ」の点では共通する。

コ 引用発明の「突き当て筒部14」の「固定孔15」は、「ネジなどの固定部材60を挿入し固定するための」ものであり、ねじが通されるねじ通し穴といえる。
また、引用発明の「スペーサ50」には、「軸部23D」を「差し込む」「挿通孔51」が設けられ、引用発明の「第1のプリント基板30」には、「軸部23D」を「挿通」する「取付孔31」が設けられ、さらに、引用発明の「第2のプリント基板40」には、「筒部23E」を「挿通」する「取付孔41」が設けられているが、上記ケで検討したように、「筒部23Eと軸部23D」にはねじがねじ込まれる「螺着用孔部23F」が設けられているものであるから、引用発明の「スペーサ50」の「挿通孔51」、「第1のプリント基板30」の「取付孔31」、「第2のプリント基板40」の「取付孔41」は、ねじが通されるねじ通し穴とはいえない。
してみると、引用発明の「突き当て筒部14」には、「ネジなどの固定部材60を挿入し固定するための固定孔15が設けられて」いることと、本願発明1の「前記第2固定部、前記スペーサ部、前記第1基板、及び前記第2基板には、前記固定ねじが通される固定ねじ通し穴がそれぞれ設けられて」いることとは、後記の点で相違するものの、「前記第2固定部には、前記固定ねじが通される固定ねじ通し穴がそれぞれ設けられて」いることの点では共通する。

サ 引用発明では、「スペーサ50の高さ寸法としては前記下ケース20に設けられた組み付け用ボス部23の径大な軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてスペーサ50をセットした時に径小な軸部23Dの上端位置より若干低い位置関係となるように高さ寸法が設定されて」いるものであり、「軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてスペーサ50をセットし」、「次いで、第2のプリント基板40を筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットし」た際には、「スペーサ50」と「第2のプリント基板40」の間には若干の隙間が生じているものと認められる。
してみると、引用発明において「それぞれのプリント基板30、40を取付固定する場合、先ず下ケース20を基準として第1のプリント基板30の取付孔31を組み付け用ボス部23に設けられた径小な寸法からなる軸部23Dに挿通し、組み付け用ボス部23に設けられた径大な寸法からなる軸部23Bの載置面部23A上に第1のプリント基板30を載せてセットし、次いで、軸部23Dに筒状からなるスペーサ50の挿通孔51を差し込んでスペーサ50を第1のプリント基板30上に載置し、次いで、第2のプリント基板40を筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットし、さらに、第2のプリント基板40上に上ケース10を被せ、この状態にてネジなどの固定部材60によって上ケース10に形成された固定孔15を介して筒部23Eと軸部23Dの上端部分に設けられた螺着用孔部23Fに螺着固定」すると、「ネジ」の締め付けによって、「上ケース10」、「第2のプリント基板40」が同時に「下ケース20」の「軸部23Dの上端位置」の面に固定されるといえるが、「スペーサ50」、「第1のプリント基板30」までもが同時に「下ケース20」に固定されているかは不明である。
したがって、引用発明の「それぞれのプリント基板30、40を取付固定する場合、・・・、次いで、第2のプリント基板40を筒部23Eに挿通することにより径小な軸部23Dの載置面部23C上に、かつスペーサ50上に第2のプリント基板40がセットし、さらに、第2のプリント基板40上に上ケース10を被せ、この状態にてネジなどの固定部材60によって上ケース10に形成された固定孔15を介して筒部23Eと軸部23Dの上端部分に設けられた螺着用孔部23Fに螺着固定する」ことと、本願発明の「前記固定ねじの締め付けによって、前記カバー、前記保持具、前記第1基板、前記第2基板が同時に前記ケースに固定される」こととは、後記の点で相違するものの、「前記固定ねじの締め付けによって、前記カバー、前記第2基板が同時に前記ケースに固定される」ことの点では共通する。

シ 引用発明の「プリント基板の取付構造」は、本願発明1の「電子機器」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

〈一致点〉
「ケースと、前記ケースに固定されるカバーとを有している筐体、
前記筐体内に設けられる保持具、
前記ケースと前記保持具との間に設けられる第1基板、
前記カバーと前記保持具との間に設けられる第2基板、及び
前記カバーと前記保持具と前記第1基板と前記第2基板とを、前記ケースに固定する固定ねじ
を備え、
前記ケースには、前記第1基板に当てられる第1固定部が形成されており、
前記カバーには、前記第2基板に当てられる第2固定部が形成されており、
前記保持具には、前記第1基板と前記第2基板との間に挟まれるスペーサ部が形成されており、
前記ケースには、前記固定ねじがねじ込まれる固定ねじ穴が設けられており、
前記第2固定部は、前記固定ねじが通される固定ねじ通し穴がそれぞれ設けられており、
前記固定ねじの締め付けによって、前記カバー、前記第2基板が同時に前記ケースに固定される電子機器。」

〈相違点1〉
「固定ねじ穴が設けられ」るのが、本願発明では、「前記第1固定部」であるのに対して、引用発明では、「筒部23Eと軸部23Dの上端部分」である点。

〈相違点2〉
「固定ねじ通し穴」が、本願発明1では、「前記スペーサ部、前記第1基板、及び前記第2基板」にも設けられるのに対して、引用発明では、「スペーサ50」、「第1のプリント基板30」、「第2のプリント基板40」にはそのようなねじを通す穴は設けられていない点。

〈相違点3〉
本願発明1では、「前記固定ねじの締め付けによって、」「前記第2基板が同時に前記ケースに固定される」のが、「前記カバー、前記保持具、前記第1基板」であるのに対して、引用発明では、「スペーサ50」、「第1のプリント基板30」が同時に固定されているか不明である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、「固定ねじ」において相互に関連する相違点1、2、3についてまとめて検討する。
引用発明においては、「軸部23D」、「筒部23E」によって、「下ケース20」に「第1のプリント基板30」、「第2のプリント基板40」を「組み付け」「位置に合わせ」を行うものであって、さらに、「スペーサ50」の「組み付け」「位置に合わせ」も行っていることは明らかであり、引用発明において、「軸部23D」、「筒部23E」を無くしてしまう理由が存在しない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明ではないし、また、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2−9について
本願発明2−9は、本願発明1に従属する発明であって、本願発明1と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではないし、また、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2024-02-26 
出願番号 P2022-028888
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 561- WY (H05K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 篠塚 隆
特許庁審判官 山内 裕史
山澤 宏
発明の名称 電子機器  
代理人 曾我 道治  
代理人 松岡 隆裕  
代理人 梶並 順  
代理人 大宅 一宏  
代理人 上田 俊一  

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