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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C09J 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 C09J |
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管理番号 | 1407811 |
総通号数 | 27 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2024-03-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-01-25 |
確定日 | 2023-12-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第7106848号発明「粘着剤用樹脂組成物及び粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7106848号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−8〕について訂正することを認める。 特許第7106848号の請求項1、3〜8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7106848号の請求項1〜8に係る特許についての出願は、平成29年12月1日(優先権主張 平成28年12月2日(以下「優先日」という。))の出願であって、令和4年7月19日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1、3〜8に係る特許に対し、令和5年1月25日に特許異議申立人 岡田 生(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年5月31日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年7月31日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと、意見書及び手続補正書が提出されたことを、同年8月10日付けで特許異議申立人に通知したが、特許異議申立人からの応答はなかった。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1〜3からなる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、アミド結合を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中のアミド結合含有単量体由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して0.1質量%以上10質量%未満であり、」とあるのを、 「前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり、 マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有し、 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中の(メタ)アクリルアミド由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満であり、」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項4〜8についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記マクロモノマー(a)が下記式(1)で表される請求項1に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【化2】 (式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、Qは2以上の前記式(a’)で表される構成単位を含む主鎖部分を示し、Zは末端基を示す。)」とあるのを、 「下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む粘着剤用樹脂組成物であって、 前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、アミド結合を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中のアミド結合含有単量体由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して0.1質量%以上10質量%未満であり、 前記(メタ)アクリル文共重合体(A)の酸価が3.9mgKOH/g以下であり、前記マクロモノマー(a)が下記式(1)で表される粘着剤用樹脂組成物。 【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4COOR5、CN、CONR6R7NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有 する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは署換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。) 【化2】 (式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、Qは2以上の前記式(a’)で表される構成単位を含む主鎖部分を示し、Zは末端基を示す。)」に訂正する。 (請求項2の記載を引用する請求項3〜8についても同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、全構成単位の合計質量に対して3〜60質量%である、請求項1又は2の何れかに記載の粘着剤用樹脂組成物。」とあるのを、 「前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、全構成単位の合計質量に対して3〜60質量%である、請求項2に記載の粘着剤用樹脂組成物。」に訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項4〜8についても同様に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1は独立形式請求項である。そして、請求項2〜8は、それぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1による請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、請求項1〜8は一群の請求項である。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載において、以下の点について訂正するものである。 [a] マクロモノマー(a)について、「マクロモノマー(a)に用いる単星体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有し、前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質箪に対して3〜20質量%であ」るものに訂正する(以下、「訂正事項1a」ともいう。)。 [b] (メタ)アクリル系共重合体(A)を、「アミド結合を有」するものから「(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有」するものに訂正し、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対するアミド結合を含有する単量体の含有量を「0.1質量%以上10質量%未満」から「2.0質量%以上10質量%未満」に訂正する(以下、「訂正事項1b」ともいう。)。 すなわち、訂正事項1aは、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有すること、及び、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位に対するマクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量の範囲について新たに特定するものであり、また、訂正事項1bは、(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれるアミド結合を有する単量体の種類を(メタ)アクリルアミドに限定するとともに、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対するその含有量の範囲を減縮するものであるから、訂正事項1は、全体として特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断 上訂正事項1は、上記アの理由からも明らかなように、訂正事項1aによって、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)としてメタクリル酸イソボルニルを含有すること、及び、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位に対するマクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量の範囲について特定し、さらに、訂正事項1bによって、(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれるアミド結合を有する単量体の種類を(メタ)アクリルアミドに限定するとともに、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対するその含有量の範囲を減縮するものである。そして、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断 (a)訂正事項1aについて マクロモノマー(a)として用いる単量体(a1)については、発明の詳細な説明の段落【0031】〜【0033】に記載されているとおり、アミド結合含有単量体(X)とアミド基を含有しない単量体(y)が挙げられ、後者については、「これらの中で、・・・、メタクリル酸イソボルニル、・・・が粘着剤の保持力を高める点で好ましい。」(段落【0033】)と記載されている。また、「共重合体(A)中のマクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量は、共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜60質量%が好ましく、7〜40質量%がより好ましく、8〜30質量%が更に好ましく、9〜20質量%が特に好ましい。マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、粘着層の保持力がより優れる。マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、配合物としたときの他成分との相溶性やホットメルト加工性がより優れる。」(段落【0066】)と記載されているとおり、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対するマクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量の好適な範囲の下限として「3質量%」が、特に好ましい範囲の上限として「20質量%」が明示されている。 そして、本件訂正発明1に係る実施例に相当する実施例4〜6は、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)を単量体として用いて合成したマクロモノマー(a−2)を13.5部含有する共重合体(A)を含む粘着剤用樹脂組成物に関するものである。 (b)訂正事項lbについて 発明の詳細な説明において、「共重合体(A)においては、マクロモノマー(a)が有する構成単位及びビニル単量体(b)由来の構成単位の一部が、アミド結合を有することが好ましい。」(段落【0014】)とされており、「耐湿熱白化性の点では、(メタ)アクリルアミドが好ましい。」(段落【0032】)と記載されている。また、「共重合体(A)中の単量体(x)(注;アミド結合含有単量体)由来の構成単位の含有量は、共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して0.1〜30質量%が好ましく、1.0〜20質量%がより好ましく、2.0〜10質量%が更に好ましく、2.0〜4.8が特に好ましい。」(段落【0068】)と記載されているとおり、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満であ」ることが(更に)好ましい旨が特許明細書に記載されている。 そして、本件訂正発明1に係る実施例に相当する実施例4〜6は、ビニル単量体(b)としてアクリルアミド(Aam)を2.8〜5.6部含有する共重合体(A)を含む粘着剤用樹脂組成物に関するものである。 以上のとおり、訂正事項1によって訂正された内容(訂正事項1a、訂正事項1c)は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、明細書における実施例4〜6は、本件訂正発明の実施例に相当することが理解できる。 訂正事項1によって訂正された内容(訂正事項1a、訂正事項1c)は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件についての判断 本件においては、訂正前の請求項1、3〜8について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1、3〜8に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、特許異議申立がされていない訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断 訂正事項2は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断 訂正事項2は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件についての判断 訂正事項2は、特許異議申立がされていない訂正前の請求項2について、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的として訂正するものであって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、請求項2、3〜8に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正事項1による請求項1の訂正(マクロモノマー(a)由来の構成単位の全構成単位の合計質星に対する含有量の特定)に伴い、請求項3が訂正前の請求項1又は2の何れかを引用する記載であったものを、請求項2のみを引用する記載に改める訂正であって、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断 訂正事項3は、請求項3で引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断 訂正事項3は、請求項3で引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件についての判断 本件においては、訂正前の請求項1、3〜8について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1、3〜8に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項〜第7項の規定に適合する。 したがって、特許第7106848号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−8〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1−8〕について訂正することを認めるので、特許異議の申立ての対象である本件特許の請求項1、3〜8に係る発明は、令和5年7月31日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3〜8に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」〜「本件特許発明8」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む粘着剤用樹脂組成物であって、 前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり、 マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有し、 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中の(メタ)アクリルアミド由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の酸価が3.9mgKOH/g以下である粘着剤用樹脂組成物。 【化1】 (式中、Rlは水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4COOR5CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。) 【請求項3】 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、全構成単位の合計質量に対して3〜60質量%である、請求項2に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項4】 前記マクロモノマー(a)のガラス転移温度と前記ビニル単量体(b)を重合して得られるポリマーのガラス転移温度の差が50℃以上である、請求項1〜3の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項5】 前記ビニル単量体(b)が炭素数が4〜30の無置換のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(y1)を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項6】 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が5万〜70万である請求項1〜5の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項7】 前記ビニル単量体(b)由来の構成単位中の前記アミド結合を有する構成単位の含有量が、前記ビニル単量体(b)由来の構成単位の合計質量に対して0.1〜30質量%である、請求項1〜6の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項8】 請求項1〜7の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物を用いた粘着シート。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 訂正前の請求項1、3〜8に係る特許に対して、当審が令和5年3月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1(新規性)本件特許の請求項1、3〜8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1、3〜8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 前記第4における新規性・進歩性についての判断 1 甲号証について 甲第1号証:特開2013−18227号公報 甲第2号証:特開平8−209099号公報 甲第3号証:特開2002−97221号公報 甲第4号証:特開2015−189782号公報 甲第5号証:特開2016−121305号公報 甲第6号証:特開2016−102195号公報 甲第7号証:特開平8−143847号公報 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 1a「【請求項1】 基材と、粘着剤層と、導電層とがこの順に積層された積層体であって、 前記粘着剤層は、 (A)架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー0.1〜10重量%およびマクロマー0.1〜30重量%を含むモノマー(全モノマーを100重量%とする)を共重合させて得られる、酸性基を実質的に有しない重量平均分子量が5万以上40万未満である(メタ)アクリル系ポリマーと、 (B)架橋剤とを含み、 前記マクロマーは重合性不飽和基を有し、ガラス転移温度は50〜180℃であり、重量平均分子量は500〜10万であることを特徴とする積層体。」 1b「【0033】 (マクロマー) 上記マクロマーは、重合性不飽和基を有する、重量平均分子量500〜10万の重合体である。 【0034】 前記重合性不飽和基としては、エチレン性不飽和二重結合などが挙げられる。 マクロマーの重合性不飽和基は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマーとラジカル重合反応を起こし、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中に取り込まれる。そして(メタ)アクリル系ポリマー(A)として見ると、マクロマーに基づく側鎖が形成されることになる。 【0035】 この側鎖により、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分子同士が密集することが防がれ、それにより本発明の積層体における粘着剤層は柔軟な構造になるので、段差追従性に優れている。 【0036】 そしてこのマクロマー自体は、Foxの式により求めたガラス転移温度が50〜180℃、好ましくは80〜150℃という高い温度にあるので、これが取り込まれた(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含有する前記粘着剤層は、耐熱発泡性にも優れている。 【0037】 前記マクロマーの重量平均分子量は、段差追従性の観点から、500〜10万であり、好ましくは1000〜5万である。なお、本明細書において重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量であり、以下同様である。 【0038】 マクロマーを構成する重合体鎖(主鎖)部分のモノマーの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレートおよびt−ブチルメタクリレートなどのメタクリル系モノマー、スチレンおよびα−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、ならびにアクリロニトリル等が挙げられる。本発明の積層体における粘着剤層の凝集力、ならびに後述するアクリル系低分子量体を添加する際の該低分子量体と(メタ)アクリル系ポリマー(A)との相溶性の観点から、これらの中ではメチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートおよびスチレンが好ましい。 【0039】 以上説明したマクロマーの製造は、公知の種々の方法に従って実施することができる。 例えば、(1)リビングアニオン重合でマクロマーを構成するポリマー鎖(リビングポリマーアニオン)を製造し、これにメタクリル酸クロリド等を作用させる方法; (2)メルカプト酢酸のような連鎖移動剤の存在下で、メチルメタクリレート等のラジカル重合性モノマーを重合させ、末端にカルボキシル基を有するオリゴマーを得た後、これをメタクリル酸グリシジル等と反応させる方法; (3)カルボキシル基を含むアゾ系重合開始剤の存在下に、メチルメタクリレート等のラジカル重合性モノマーを重合させ、末端にカルボキシル基を有するオリゴマーを得た後、メタクリル酸グリシジルでマクロマー化する方法などの方法が挙げられる。 【0040】 さらにマクロマーは市販もされており、例えば、末端がメタクリロイル基であって、主鎖構成モノマーがメチルメタクリレート(MMA)であるマクロマー(製品名:45%AA−6(AA−6S)、AA−6;東亞合成株式会社製)、主鎖構成モノマーがスチレンであるマクロマー(製品名:AS−6S、AS−6;東亞合成株式会社製)、主鎖がスチレン/アクリロニトリルの共重合体であるマクロマー(製品名:AN−6S;東亞合成株式会社製)、主鎖構成モノマーがブチルアクリレートのマクロマー(製品名:AB−6;東亞合成株式会社製)などが挙げられる。 【0041】 以上説明したマクロマーは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重合に用いられる全モノマーに対して、0.1〜30重量%の量で共重合されており、凝集力及び相溶性の観点から好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.1〜20重量%の量で共重合されている。この共重合割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造において、マクロマーの仕込み割合をこの割合に合わせることにより達成される。またマクロマーは、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。 【0042】 (その他のモノマー) (メタ)アクリル系ポリマー(A)には、以上説明した架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーおよびマクロマー以外のその他のモノマーが共重合されていてもよい。 【0043】 その他のモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレートおよびジデカ(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、 メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびエトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート、アルコキシアルキレン(メタ)アクリレートを挙げることができる。 【0044】 これらのアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシ(メタ)アクリレート及びアルコキシアルキレン(メタ)アクリレートが、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重合に用いられる全モノマーに対して60〜99.8重量%、好ましくは66〜99.0重量%、さらに好ましくは74〜98.6重量%の割合で用いられることが好ましく、さらには、上記モノマー中でアルコキシ(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキレン(メタ)アクリレートの合計が20重量%以上となるように使用することが、粘着剤層の水分による白化をより抑制する上で好ましい。 【0045】 さらに、その他のモノマーとして、窒素含有モノマーを含有することも好ましい。窒素含有モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー、 (メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、 ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム等の窒素系複素環含有モノマー、 シアノ(メタ)アクリレート等のシアノ基含有モノマーを挙げることができ、このような窒素含有モノマーを、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重合に用いられる全モノマーに対して、5重量%以下、さらには、0.1〜4重量%の範囲で共重合させることで粘着剤の凝集力を向上させ、さらに、イソシアネート系架橋剤による架橋を促進することができる。この共重合割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造において、モノマーの仕込み割合をこの割合に合わせることにより達成される。 【0046】 その他、本発明において使用できるモノマーとしては、酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;スチレン、α?メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレンなどのアルキルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウ化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレン等のスチレン系単量体などが挙げられ、これらは(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重合に用いられる全モノマーに対して、0〜10重量%の範囲で使用することができる。この共重合割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造において、モノマーの仕込み割合をこの割合に合わせることにより達成される。」 1c「【0103】 次に本発明の実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。 以下に示すようにして、(メタ)アクリル系ポリマー(A)(以下の製造例で示した、重合溶媒に溶解した状態のもの)、(メタ)アクリル系低分子量体を製造し、これらと架橋剤(B)とを混合して粘着剤組成物を調製し、以下の種々の特性の評価を行った。 ・・・ 【0107】 【数2】 <ヘイズ(耐白化性)> 粘着剤組成物を剥離シート((シリコーンで剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)上に塗布し、80℃条件で5分乾燥して粘着剤層(厚み50μm)を形成し、当該層の剥離シートと接していない面に剥離シートを積層した。 ・・・ 【0140】 <製造例11>(メタ)アクリル系ポリマー11の製造 撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)15重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)1重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。 【0141】 次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行なった。反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー11を得た。 【0142】 <製造例12>(メタ)アクリル系ポリマー12の製造 撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)11重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)5重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。 【0143】 次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行なった。反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー12を得た。 【0144】 ・・・ 【0164】 以上説明した各製造例におけるモノマーの使用量、得られたポリマーの重量平均分子量等を下記表1にまとめた。 [実施例1〜13および比較例1〜8] さらに、表1に示す割合で、各製造例で得られた(メタ)アクリル系ポリマーに架橋剤を配合し、そして実施例8では製造例14で得た(メタ)アクリル系低分子量体を配合して粘着剤組成物を得て、上記の種々の特性の評価を行った。 【0165】 【表1】 【0166】 表1中の略号は以下の通りである。 MMA・・・メチルメタクリレート BA・・・ブチルアクリレート MEA・・・メトキシエチルアクリレート 2−HEA・・・2−ヒドロキシエチルアクリレート AA・・・アクリル酸 DM・・・ジメチルアミノエチルメタクリレート AM・・・アクリルアミド MMAマクロマー・・・MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃) Stマクロマー・・・Stを主鎖とするマクロマー(Tg 100℃) t−BMA・・・t−BMAを主鎖とするマクロマー(Tg 110℃) TD−75・・・キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(綜研化学社製) なおマクロマーは、その主鎖を構成するモノマーに加えて、カルボキシル基を有する連鎖移動剤チオグリコール酸を用いて重合して得られる、末端にカルボキシル基を有する重合体とグリシジルメタクリレートとを反応させて得られた、末端に不飽和結合を有する重合体である。) (2)甲第2号証(以下、「甲2」という。) 2a「【請求項1】(A)カルボキシル基を有しないビニルモノマーおよび(B)分子内の一方の末端に不飽和二重結合を有し、かつ数平均分子量が3,000〜30,000であるマクロモノマーからなるアクリル系共重合体100重量部と、多官能性イソシアネート化合物0.3〜3重量部よりなるアクリル系粘着剤組成物。」 2b「【0009】上記両問題点に対し、極性成分として、例えば、N−ビニルピロリドンを共重合することにより、実質的にカルボキシル基を含有しない共重合体を用いたアクリル系粘着剤が開示されている(特開昭61−2862号公報)。 ・・・ 【0019】上記マクロモノマー(B)は、分子内の一方の末端に不飽和二重結合を有し、かつ数平均分子量が3,000〜30,000のものであり、特に上記末端の不飽和二重結合としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基等が好適に挙げられ、また、非反応性の主鎖部分は、単官能ビニルモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーであり、上記単官能ビニルモノマーとしては、例えば、前述のアルキル(メタ)アクリレートの他、スチレン等が挙げられる。 【0020】上記マクロモノマー(B)は、予めマクロモノマーの主鎖となるポリマー(以下「主鎖ポリマー」とする)を得、次いで末端にビニル基を付加することで得られる。 ・・・ 【0063】 【実施例】以下本発明の実施例について説明する。尚、以下「部」とあるのは「重量部」を意味する。 「マクロモノマー」表1の配合組成に従って、還流冷却管、温度計、攪拌器、窒素ガス導入管を備えた5つ口のセパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(以下「MMA」とする)、ブチルメタクリレート(以下「BMA」とする)、2−ヒドキシエチルメタクリレート(以下「2HEMA」とする)、メルカプト酢酸および酢酸エチルを添加し充分攪拌した後、窒素ガスで30分間パージすることにより溶存酸素を除去し、更に窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温して70℃に保持した状態で、0.1部のアゾビスイソブチロバレリアン酸を1部の酢酸エチルに溶解した溶液を滴下ロートにより滴下し、10時間反応させてマクロモノマーの主鎖ポリマーを得た。 【0064】次いで、トリエチルアミン(以下「TEA」とする)0.1部、グリシジルメタクリレート(以下「GMA」とする)1部を添加し、5時間加熱還流させた後に冷却し、更にイソプロピルアルコール中に沈殿させた沈殿物を60℃で24時間真空乾燥させてマクロモノマーM1およびM2を得た。 【0065】また、マクロモノマーM3〜M7としては、以下に示す東亜合成社製の市販品を用いた。 マクロモノマーM3;主鎖:MMAのホモポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:6,000、商品名「AA−6」 マクロモノマーM4;主鎖:MMAのホモポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:11,400、商品名「AA−10」 マクロモノマーM5;主鎖:MMAのホモポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:22,000、商品名「AA−20」 マクロモノマーM6;主鎖:MMA/2HEMA=86/14のコポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:7,000、商品名「AA−714S」 マクロモノマーM7;主鎖:BMA/2HEMA=93/7のコポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:7,000、商品名「AA−707S」 【0066】「アクリル系ポリマー」表1の配合組成に従って、還流冷却管、温度計、攪拌器、窒素ガス導入管を備えた5つ口のセパラブルフラスコに、MMA、2HEMA、メタクリル酸(以下「MAc」とする)、メルカプト酢酸および酢酸エチルを添加し充分攪拌した後、窒素ガスで30分間パージすることにより溶存酸素を除去し、更に窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温して70℃に保持した状態で、0.1部のアゾビスイソブチロバレリアン酸を1部の酢酸エチルに溶解した溶液を滴下ロートにより滴下し、10時間反応させてアクリル系ポリマーAP1およびAP2を得た。また、アクリル系ポリマーAP3としては、ポリメチルメタクリレート(和光薬品社製)を用いた。 【0067】 【表1】 【0068】「アクリル系共重合体の作成」表2〜11の配合組成に従って、還流冷却管、温度計、攪拌器、窒素ガス導入管を備えた5つ口のセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(以下「BA」とする)、2−エチルヘキシルアクリレート(以下「2EHA」とする)、2−ヒドキシエチルメタクリレート(以下「2HEMA」とする)、アクリル酸(以下「AAc」とする)、マクロモノマー、n−ドデシルメルカプタン(以下「DDM」とする)および酢酸エチルを添加し充分攪拌した後、窒素ガスで30分間パージすることにより溶存酸素を除去し、更に窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温して70℃に保持した状態で、0.03部のベンゾイルパーオキサイドを1部の酢酸エチルに溶解した溶液を滴下ロートにより滴下し、10時間反応させてアクリル系共重合体を得た。 【0069】但し、下記の実施例15〜21、27、28、43〜49、55、56および比較例11〜18、29〜35では、更に上記アクリル系ポリマーを添加したアクリル系共重合体を得た。 【0070】(実施例1〜28、比較例1〜18) 「金属蒸着層を有する粘着テープの作成」表2〜6記載のアクリル系共重合体の固形分100部に対して、トリメチロールプロパン変成TDI(固形分55重量%、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL55E」、以下「コロネートL」とする)を添加して均一に混合した後、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」とする)上に塗工し、110℃オーブン中で5分間乾燥することにより25μmの粘着剤フィルムを得た。 【0071】更に、1000オングストロームの銀蒸着層を積層した38μmポリエステルフィルムの銀蒸着面に、上記粘着剤フィルムをラミネートすることにより構成1の金属蒸着層を有する粘着テープを得、また、上記銀蒸着層を有するポリエステルフィルムの銀蒸着面に保護層を有するフィルムの保護層面に上記粘着剤フィルムをラミネートすることにより構成2の粘着テープを得た。」 (3)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a「【0036】アクリル系プレポリマーの製造 【製造例1】撹拌装置、窒素導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、ラウリルメタクリレート100重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を80℃に加熱した。ついで、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸5重量部を撹拌下のフラスコ内に添加した。その後、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却及び加温を2時間行った。その後続けて、撹拌中のフラスコ内の内容物の温度が95℃に維持できるように、冷却及び加温を行いながら、重合反応を6時間行った。 【0037】上記のようにして合計で8時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。その結果、重合率が71%の反応物が得られた。 【0038】つづいて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで徐々に加熱しながらTHFおよび残存単量体、残存チオール化合物を除去した。こうして得られた重合体の150℃加熱残分は、99.0%であった。また、得られた重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=4600、Mn=2300であり、分散指数=2.1であり、23℃における粘度は、6.7(Pa・s)であった。 【0039】 【製造例2】撹拌装置、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、スチレン5重量部、およびルテノセンジクロライド0.1重量部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内の内容物を80℃に加熱した。ついで、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸8重量部を攪拌下のフラスコ内に添加した。その後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が80℃に維持できるように、冷却および加温を2時間行った。さらに、十分に窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸6重量部を攪拌下のフラスコ内に追加添加した。その後、攪拌中のフラスコ内の内容物の温度が95℃に維持できるように、さらに冷却および加温を行いながら、重合反応を6時間行った。 【0040】上記のようにして合計で8時間の反応後、反応物の温度を室温に戻し、反応物にベンゾキノン溶液(95%THF溶液)を20重量部添加して重合を停止させた。こうして得られた反応物のTHF溶液について、単量体残存率をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、重合率を求めた。その結果、重合率が78%の反応物が得られ、この重合に際して重合反応の暴走は認められなかった。 【0041】つづいて得られた反応物をエバポレーターに移し、減圧下に80℃まで除々に加熱しながらTHFおよび残存単量体、残存チオール化合物を除去した。こうして得られた重合体の150℃加熱残分は、99.4%であった。また、得られた重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は、Mw=2200、Mn=1100であり、分散指数=2.0であり、23℃における粘度は、2.6(Pa・s)であった。」 (4)甲第4号証(以下、「甲4」という。) 4a「【0020】 {物性} 粘着剤組成物における共重合体の理論ガラス転移温度は、−20℃以下であり、好適には−30℃以下であり、より好適には−40℃以下である。尚、下限値は限定されないが、例えば−100℃である。共重合体としてこのようなTgのものを使用すると、タックと凝集力のバランスが優れる粘着剤が得られるという理由で好ましい。ここで、理論ガラス転移温度(Tg)は、個々の成分(重量分率)のホモポリマーのガラス転移温度(℃)(文献値)により、下記式により計算する。 1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・ Tg:共重合体のガラス転移温度 Tg1:共重合体を構成するモノマーTg1のホモポリマーのガラス転移温度(文献値) W1:共重合体を構成するモノマーTg1の重量分率 Tg2:共重合体を構成するモノマーTg2のホモポリマーのガラス転移温度(文献値) W2:共重合体を構成するモノマーTg2の重量分率 ホモポリマーのガラス転移温度は以下の通り(一例)。 アクリル酸n−ブチル −54℃ アクリル酸2−エチルヘキシル −70℃ アクリル酸2−メトキシエチル −50℃ 酢酸ビニル 32℃ スチレン 80℃ アクリル酸 106℃」 (5)甲第5号証(以下、「甲5」という。) 5a「【0189】 <(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度の測定> ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。 式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)] 〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの重量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕 文献値: 2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃ 4−ヒドロキブチルアクリレート(4HBA):−32℃ 2−ヒドロキエチルアクリレート(2HEA):−15℃ N−ビニルピロリドン(NVP):80℃ メタクリル酸メチル(MMA):105℃」 (6)甲第6号証(以下、「甲6」という。) 6a「【0040】 ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。 2−エチルヘキシルアクリレート −70℃ n−ブチルアクリレート −55℃ エチルアクリレート −22℃ メチルメタクリレート 105℃ イソブチルメタクリレート 20℃ 酢酸ビニル 32℃ 2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃ アクリル酸 106℃ メタクリル酸 228℃ アクリルアミド 77℃ シクロヘキシルメタクリレート 66℃ ジシクロペンタニルメタクリレート 175℃ 上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。」 (7)甲第7号証(以下、「甲2」という。) 7a「【0035】参考例3 アクリル共重合体A〜Lの作成 表1に示した配合組成に従って、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、水酸基含有マクロモノマー(1)、水酸基含有マクロモノマー(2)、数平均分子量(Mn)のマクロモノマーとしてAA−714S(MMA;86%、2HEMA;14%末端メタクロイル基、東亜合成社製)及びラウリルメルカプタンを酢酸エチル80重量部とともに、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入口を備えた五つ口フラスコ中に仕込み、攪拌溶解して均一混合物とした後、窒素ガスで約30分間パージして、モノマー溶液中に存在する酸素を除去した。 【0036】その後、窒素ガスでフラスコ内空気を置換し、攪拌しながら昇温し、これを70℃に保持してベンゾイルパーオキシド0.03重量部を酢酸エチル1重量部に溶解させた溶液を、滴下ロートにより滴下した後、そのままの温度で10時間重合反応させてアクリル系共重合体の溶液を得た。 【0037】アクリル系共重合体A〜Lの分子量測定 上記により得られたアクリル系共重合体溶液の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、(Mw/Mn)の測定を行った。上記分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンを基準とし、テトラヒドロフランを溶離剤とし、検出は屈折系を用いて測定した。その結果を表1に示した。なお、アクリル共重合体Hは、トルエン80を溶剤として行った。表1中、M3は、AA−714S(MMA;86%、2HEMA;14%末端メタクロイル基、東亜合成社製)を表す。 【0038】 【表1】 」 3 甲号証に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 ア 甲1発明A1 甲1には(メタ)アクリル系ポリマー11を用いて得た粘着剤組成物として「MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)15重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)1重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温し、次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行ない、反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、得た、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー11を含み、架橋剤を配合し、粘着剤組成物を得るための組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 イ 甲1発明A2 甲1には(メタ)アクリル系ポリマー12を用いて得た粘着剤組成物として「MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)11重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)4重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温し、次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行ない、反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、得た、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー12を含み、架橋剤を配合し、粘着剤組成物を得るための組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 ウ 甲1発明B1 甲1には(メタ)アクリル系ポリマー11を用いて得た粘着剤組成物を剥離シートに積層したものとして「MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)15重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)1重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温し、次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行ない、反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、得た、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー11に架橋剤を配合し、得た、粘着剤組成物を剥離シート((シリコーンで剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)上に塗布し、80℃条件で5分乾燥して粘着剤層(厚み50μm)を形成し、当該層の剥離シートと接していない面に剥離シートを積層した、粘着シート。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 エ 甲1発明B2 甲1には(メタ)アクリル系ポリマー11を用いて得た粘着剤組成物を剥離シートに積層したものとして「MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)11重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)4重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温し、次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行ない、反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、得た、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー12に架橋剤を配合し、得た、粘着剤組成物を剥離シート((シリコーンで剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)上に塗布し、80℃条件で5分乾燥して粘着剤層(厚み50μm)を形成し、当該層の剥離シートと接していない面に剥離シートを積層した、粘着シート。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 (2)甲2に記載された発明 ア 甲2発明A 甲2には実施例15の粘着剤フィルムを得るためのアクリル共重合体として「n−ブチルアクリレート(以下「BA」とする)を66重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(以下「2EHA」とする)を24重量部、NVPを2重量部(当審注:摘記1cの【0009】の記載からN−ビニルピロリドンと解される)、マクロモノマーM3;主鎖:MMAのホモポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:6,000、商品名「AA−6」を8重量部、 MMAを90重量部、2HEMAを10重量部、メルカプト酢酸を0.5重量部及び酢酸エチルを80重量部添加し充分攪拌した後、窒素ガスで30分間パージすることにより溶存酸素を除去し、更に窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温して70℃に保持した状態で、0.1部のアゾビスイソブチロバレリアン酸を1部の酢酸エチルに溶解した溶液を滴下ロートにより滴下し、10時間反応させて、得たアクリル系ポリマーAP1を1重量部を添加して得たアクリル系共重合体を含み、 トリメチロールプロパン変成TDI(固形分55重量%、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL55E」、以下「コロネートL」とする)を1.5重量部を添加して均一に混合して、粘着剤フィルムを得るための組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記2b参照)。 イ 甲2発明B また、甲2には前記粘着剤フィルムをラミネートすることにより得た粘着テープとして「1000オングストロームの銀蒸着層を積層した38μmポリエステルフィルムの銀蒸着面に、 n−ブチルアクリレート(以下「BA」とする)を66重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(以下「2EHA」とする)を24重量部、NVPを2重量部、マクロモノマーM3;主鎖:MMAのホモポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:6,000、商品名「AA−6」を8重量部、 MMAを90重量部、2HEMAを10重量部、メルカプト酢酸を0.5重量部及び酢酸エチルを80重量部添加し充分攪拌した後、窒素ガスで30分間パージすることにより溶存酸素を除去し、更に窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温して70℃に保持した状態で、0.1部のアゾビスイソブチロバレリアン酸を1部の酢酸エチルに溶解した溶液を滴下ロートにより滴下し、10時間反応させて、得たアクリル系ポリマーAP1を1重量部を添加して得たアクリル系共重合体に、 トリメチロールプロパン変成TDI(固形分55重量%、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL55E」、以下「コロネートL」とする)を1.5重量部を添加して均一に混合した後、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」とする)上に塗工し、110℃オーブン中で5分間乾燥することにより得た、25μmの粘着剤フィルム。」の発明が記載されているといえる(摘記2b参照)。 4 対比・判断 (1)甲1発明A1〜甲1発明B2を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲1発明A1及び甲1発明A2との対比 本件特許発明1と甲1発明A1及び甲1発明A2を対比する。 甲1発明A1及び甲1発明A2の「MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部」は本件特許発明1の「式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位」及び「【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)」に相当し、甲1発明A1の「n-ブチルアクリレート(BA)15重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)1重量部」及び甲1発明A2の「n-ブチルアクリレート(BA)11重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)4重量部」は、本件特許発明1の「ビニル単量体(b)由来の構成単位」に相当し、甲1発明A1「(メタ)アクリル系ポリマー11」は、その構成単位に「アクリルアミド(AM)1重量部」を含み、甲1発明A2のアクリル系ポリマー12」は、その構成単位に「アクリルアミド(AM)5重量部」を含み、アクリルアミド(AM)由来の構成単位の含有量は、甲1発明A2で4%((4×100)/(10+11+70+4+1)であるから、甲1発明A1の「MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)15重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)1重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温し、次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行ない、反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、得た、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー11に架橋剤を配合し、得た、粘着剤組成物」は、本件特許発明1の「下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む」、「前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり」、「前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有し」及び「【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)」に相当し、甲1発明A2の「MMAを主鎖とするマクロマー(Tg 105℃)(MMAマクロマー(重量平均分子量1万))10重量部、n-ブチルアクリレート(BA)11重量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)70重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)4重量部、アクリルアミド(AM)5重量部及び酢酸エチル(EtAc)100重量部、メチルエチルケトン(MEK)20重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温し、次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を反応液に加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間重合反応を行ない、反応終了後、酢酸エチル(EtAc)にて反応液を希釈し、固形分濃度30%に調整し、得た、重量平均分子量30万の(メタ)アクリル系ポリマー12に架橋剤を配合し、得た、粘着剤組成物」は、本件特許発明1の「下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む」、「前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり」、「前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中の(メタ)アクリルアミド由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満であり」及び「【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)」に相当する。 甲1発明A1及び甲1発明A2の「粘着剤組成物を得るための組成物」は本件特許発明1の「粘着剤用樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明A1は、「下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む粘着剤用樹脂組成物であって、 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有する、粘着剤用樹脂組成物。 【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)」である点で一致し、本件特許発明1と甲1発明A2は、「下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む粘着剤用樹脂組成物であって、 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中の(メタ)アクリルアミド由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満である、粘着剤用樹脂組成物。 【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1−1> 本件特許発明1ではマクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であるのに対し、甲1発明A1及び甲1発明A2ではマクロモノマーの数量平均分子量が不明である点。 <相違点1−2> 本件特許発明1では、(メタ)アクリル系共重合体(A)の酸価が3.9mgKOH/g以下であるのに対し、甲1発明A1及び甲1発明A2では(メタ)アクリル系ポリマー11又は(メタ)アクリル系ポリマー12の酸価が不明である点。 <相違点1−3> 本件特許発明1では、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有するのに対し、甲1発明A1及び甲1発明A2では、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有しない点。 <相違点1−4> 本件特許発明1では、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満であるのに対し、甲1発明A1では、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して1.0質量%である点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1−3>について検討する。 <相違点1−3>は実質的な相違点である。 そして、甲1には甲1発明A1及び甲1発明A2の粘着剤組成物におけるマクロマーの単量体が列記されているものの(摘記1b参照)、マクロマーの単量体がメタクリル酸イソボルニルであることについて記載も示唆もない。 また、甲2にも甲2に記載の粘着剤フィルムを得るための組成物におけるMMAの単量体が列記されているものの(摘記2b参照)、MMAの単量体がメタクリル酸イソボルニルであることについて記載も示唆もない。 そして、甲3〜甲7にも甲1発明A1及び甲1発明A2の粘着剤組成物におけるマクロマーの単量体がメタクリル酸イソボルニルであることについて記載も示唆もない。 そうすると、甲1発明A1及び甲1発明A2の粘着剤組成物において、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有するものとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 本件特許明細書の【表2】からみて、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有するものが、メタクリル酸イソボルニルを含有しないものと比較して、粘着力及び耐湿熱白化性が優れているから、本件特許発明1は、メタクリル酸イソボルニルを含有することにより、甲1〜甲7の記載から当業者が予測ができない顕著な効果を奏するといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点1−1>、<相違点1−2>及び<相違点1−4>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2〜甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明3 本件特許発明3は、特許異議申立がされていない本件特許発明2について本件特許発明1を引用しない独立形式請求項に改めた本件訂正後の本件特許発明2を引用し、さらに限定したものであるから、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2〜甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明4〜8 本件特許発明4〜8は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明A1及び甲1発明A2との<相違点1−3>と同じの相違点を有するものであり、あるいは、特許異議申立がされていない本件特許発明2について本件特許発明1を引用しない独立形式請求項に改めた本件訂正後の本件特許発明2を引用し、さらに限定したものであるから、本件特許発明4〜8は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2〜甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)甲2発明A又は甲2発明Bを主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲2発明Aとの対比 本件特許発明1と甲2発明Aを対比する。 甲2発明Aの「n−ブチルアクリレート(以下「BA」とする)」、「2−エチルヘキシルアクリレート(以下「2EHA」とする)」及び「NVP」は、本件特許発明1の「ビニル単量体(b)由来の構成単位」に相当し、甲2発明Aの「マクロモノマーM3;主鎖:MMAのホモポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:6,000、商品名「AA−6」」は本件特許発明1の「式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位」、「前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり」及び「【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)」に相当し、甲2発明Aの「n−ブチルアクリレート(以下「BA」とする)を66重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(以下「2EHA」とする)を24重量部、NVPを2重量部、マクロモノマーM3;主鎖:MMAのホモポリマー、末端反応性基:メタクロイル基、数平均分子量:6,000、商品名「AA−6」を8重量部、 MMAを90重量部、2HEMAを10重量部、メルカプト酢酸を0.5重量部及び酢酸エチルを80重量部添加し充分攪拌した後、窒素ガスで30分間パージすることにより溶存酸素を除去し、更に窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温して70℃に保持した状態で、0.1部のアゾビスイソブチロバレリアン酸を1部の酢酸エチルに溶解した溶液を滴下ロートにより滴下し、10時間反応させて、得たアクリル系ポリマーAP1を1重量部を添加して得たアクリル系共重合体」は、マクロモノマーM3の含有量はアクリル系共重合体中7.9質量%(8×100/(66+24+2+8+0.05+1)であるから、本件特許発明1の「下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)」、「前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり」、「前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり」及び「【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)」に相当する。 甲2発明Aの「粘着剤フィルムを得るための組成物」は本件特許発明1の「粘着剤用樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明Aは、「下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む粘着剤用樹脂組成物であって、 前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり、 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%である、粘着剤用樹脂組成物 【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)粘着剤用樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2−1> (メタ)アクリル系共重合体(A)が、本件特許発明1では重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除くのに対し、甲2発明Aでは重量平均分子量が不明である点。 <相違点2−2> 本件特許発明1では、(メタ)アクリル系共重合体(A)の酸価が3.9mgKOH/g以下であるのに対し、甲2発明Aではアクリル系共重合体の酸価が不明である点。 <相違点2−3> 本件特許発明1では、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有するのに対し、甲2発明Aでは、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有しない点。 <相違点2−4> 本件特許発明1では、(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中の(メタ)アクリルアミド由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満であるのに対し、甲2発明Aでは、(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有しない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点2−3>について検討する。 <相違点2−3>は実質的な相違点である。 そして、甲2には甲2発明Aの粘着剤フィルムを得るための組成物におけるマクロモノマーの単量体が列記されているものの(摘記2b参照)、マクロマーの単量体がメタクリル酸イソボルニルであることについて記載も示唆もない。 また、甲1にも甲1に記載の粘着剤組成物におけるマクロマーの単量体が列記されているものの(摘記1b参照)、マクロマーの単量体がメタクリル酸イソボルニルであることについて記載も示唆もない。 そして、甲3〜甲7にも甲2発明Aの粘着剤組成物におけるマクロマーの単量体がメタクリル酸イソボルニルであることについて記載も示唆もない。 そうすると、甲2発明Aの粘着剤フィルムを得るための組成物において、マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有するものとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)のとおり、本件特許発明1は、メタクリル酸イソボルニルを含有することにより、甲1〜甲7の記載から当業者が予測ができない顕著な効果を奏するといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点2−1>、<相違点2−2>及び<相違点2−4>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3〜甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明3 本件特許発明3は、特許異議申立がされていない本件特許発明2について本件特許発明1を引用しない独立形式請求項に改めた本件訂正後の本件特許発明2を引用し、さらに限定したものであるから、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3〜甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明4〜8 本件特許発明4〜8は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明Aとの<相違点2−3>と同じの相違点を有するものであり、あるいは、特許異議申立がされていない本件特許発明2について本件特許発明1を引用しない独立形式請求項に改めた本件訂正後の本件特許発明2を引用し、さらに限定したものであるから、本件特許発明4〜8は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3〜甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、令和5年5月31日付けの取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1、3〜8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1、3〜8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む粘着剤用樹脂組成物であって、 前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり、 マクロモノマー(a)に用いる単量体(a1)として、メタクリル酸イソボルニルを含有し、 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して3〜20質量%であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、(メタ)アクリルアミド由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中の(メタ)アクリルアミド由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して2.0質量%以上10質量%未満であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の酸価が3.9mgKOH/g以下である粘着剤用樹脂組成物。 【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3、ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。) 【請求項2】 下記式(a’)で表される構成単位を2以上有するマクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位を有する、(メタ)アクリル系共重合体(A)(ただし、重量平均分子量が100万以上350万以下のものを除く。)を含む粘着剤用樹脂組成物であって、 前記マクロモノマー(a)の数量平均分子量が1000〜6000であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、アミド結合を有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)中のアミド結合含有単量体由来の構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計質量に対して0.1質量%以上10質量%未満であり、 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の酸価が3.9mgKOH/g以下であり、 前記マクロモノマー(a)が下記式(1)で表される粘着剤用樹脂組成物。 【化1】 (式中、R1は水素原子、メチル基又はCH2OHを示し、R2はOR3,ハロゲン原子、COR4、COOR5、CN、CONR6R7、NHCOR8、又はR9を示し、 R3〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、R9は非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。) 【化2】 (式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、Qは2以上の前記式(a’)で表される構成単位を含む主鎖部分を示し、Zは末端基を示す。) 【請求項3】 前記マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が、全構成単位の合計質量に対して3〜60質量%である、請求項2に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項4】 前記マクロモノマー(a)のガラス転移温度と前記ビニル単量体(b)を重合して得られるポリマーのガラス転移温度の差が50℃以上である、請求項1〜3の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項5】 前記ビニル単量体(b)が炭素数が4〜30の無置換のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(y1)を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項6】 前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が5万〜70万である請求項1〜5の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項7】 前記ビニル単量体(b)由来の構成単位中の前記アミド結合を有する構成単位の含有量が、前記ビニル単量体(b)由来の構成単位の合計質量に対して0.1〜30質量%である、請求項1〜6の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物。 【請求項8】 請求項1〜7の何れか一項に記載の粘着剤用樹脂組成物を用いた粘着シート。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2023-11-29 |
出願番号 | P2017-232177 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YAA
(C09J)
P 1 652・ 113- YAA (C09J) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
関根 裕 |
特許庁審判官 |
瀬下 浩一 門前 浩一 |
登録日 | 2022-07-19 |
登録番号 | 7106848 |
権利者 | 三菱ケミカル株式会社 |
発明の名称 | 粘着剤用樹脂組成物及び粘着シート |
代理人 | 伏見 俊介 |
代理人 | 田▲崎▼ 聡 |
代理人 | 大浪 一徳 |
代理人 | 大浪 一徳 |
代理人 | 伏見 俊介 |
代理人 | 君塚 哲也 |
代理人 | 田▲崎▼ 聡 |
代理人 | 君塚 哲也 |