• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
管理番号 1407858
総通号数 27 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-09-22 
確定日 2024-02-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第7244442号発明「注射装置および注射溶液移し替えシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7244442号の請求項1〜18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7244442号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜18に係る特許についての出願は、2018年(平成30年) 6月 8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年 6月 8日 (EP)欧州特許庁、2017年 6月 8日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、令和 5年 3月13日にその特許権の設定登録がされ、令和 5年 3月22日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 5年 9月22日に特許異議申立人 犬塚 直樹(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。


第2 本件特許発明
特許第7244442号の請求項1〜18に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明18」という。)は、特許請求の範囲の請求項1〜18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
注射装置(10)であって、
注射溶液容器(30)と、
プランジャ(70)であって、該プランジャ(70)の少なくとも一部は、前記注射溶液容器(30)に摺動可能に収容されており、前記プランジャ(70)は、前記注射溶液容器(30)に含まれた注射溶液を前記注射溶液容器(30)から排出するために前記注射溶液容器(30)に対して遠位方向へ変位可能である、プランジャ(70)と、
前記プランジャ(70)に対して回転可能な第1のハウジングエレメント(86)であって、該第1のハウジングエレメント(86)に、第1の制限エレメント(168)、第1の計量供給面(146)および第2の計量供給面(148)が形成されている、第1のハウジングエレメント(86)と、
前記第1の計量供給面(146)と係合することによって第1の計量供給位置(P1)において遠位方向への前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位を停止させるように構成された第1のプランジャ停止機構(140)と、
前記第1の計量供給位置(P1)から遠位方向への前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位を第2の計量供給位置(P2)において停止させるように構成された第2のプランジャ停止機構(142)であって、
前記第2のプランジャ停止機構(142)は、前記プランジャ(70)に取り付けられておりかつ前記第2の計量供給面(148)に対して当接するように適応させられている計量供給エレメント(144)に形成されており、
前記第1のハウジングエレメント(86)は、前記計量供給エレメント(144)を前記第1の計量供給面(146)から離しかつ前記第2の計量供給面(148)と前記計量供給エレメント(144)を整列させる位置へと、前記プランジャ(70)に対して回転可能であり、
前記第1の制限エレメント(168)は、前記計量供給エレメント(144)が前記第2の計量供給面(148)を過ぎて回転することを防ぎ、
前記プランジャ(70)の前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)は、前記プランジャ(70)が、前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)の間で前記注射溶液容器(30)に対して変位させられる際、前記注射溶液容器(30)に含まれた前記注射溶液の所望の用量を前記注射溶液容器(30)から排出するように設定されている、
第2のプランジャ停止機構(142)と、を備える、注射装置(10)。
【請求項2】
前記第1のプランジャ停止機構(140)は、前記プランジャ(70)が前記注射溶液容器(30)に対して前記第1の計量供給位置(P1)から遠位方向へ変位させられることを防止するように構成されており、前記注射装置(10)は、さらに、前記注射溶液容器(30)に対する前記第1の計量供給位置(P1)から遠位方向への前記プランジャ(70)の変位を許容するために前記第1のプランジャ停止機構(140)を解除するように構成されたプランジャ解放機構(154)を有する、請求項1記載の注射装置。
【請求項3】
前記プランジャ解放機構(154)は、前記計量供給エレメント(144)を前記第1の計量供給面(146)から離すために前記計量供給エレメント(144)および前記第1の計量供給面(146)のうちの少なくとも一方の移動を許容するように構成されている、請求項2記載の注射装置。
【請求項4】
前記計量供給エレメント(144)および前記第1の計量供給面(146)のうちの少なくとも一方の移動は、回転移動である、請求項3記載の注射装置。
【請求項5】
前記第1および第2の計量供給面(146,148)は、前記プランジャ(70)の周方向において互いにずらして配置されており、前記プランジャ解放機構(154)は、前記プランジャ(70)が前記注射溶液容器(30)に対して前記第1の計量供給位置(P1)から遠位方向へ変位させられて前記第2の計量供給位置(P2)に達したとき、前記計量供給エレメント(144)が前記第2の計量供給面(148)に当接するように、前記計量供給エレメント(144)を前記第1の計量供給面(146)から離しかつ同時に前記計量供給エレメント(144)を前記第2の計量供給面(148)と整列させるために、前記プランジャ(70)の周方向において前記第1および第2の計量供給面(146,148)を変位させられるように構成されている、請求項2から4までのいずれか1項記載の注射装置。
【請求項6】
前記プランジャ解放機構(154)は、前記プランジャ解放機構(154)の作動を示すように構成されたマーカシステム(160)を有する、請求項2から5までのいずれか1項記載の注射装置。
【請求項7】
前記プランジャ(70)が前記第1の計量供給位置(P1)に配置されないかぎり前記プランジャ解放機構(154)の作動を防止するように構成されていて、かつ前記プランジャ(70)が前記第1の計量供給位置(P1)に配置されたときに前記プランジャ解放機構(154)の作動を許容するように構成された作動機構(176)をさらに備える、請求項2から6までのいずれか1項記載の注射装置。
【請求項8】
前記作動機構(176)は、前記プランジャ(70)の周面に設けられた、前記プランジャ(70)の長手方向軸線に沿って延びた、前記第1のハウジングエレメント(86)に設けられた案内エレメント(92)を受容する、案内チャネル(94)を有し、該案内チャネル(94)は、前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位の際、前記案内エレメント(92)に対して変位させられるようになっており、前記案内エレメント(92)と、前記案内チャネル(94)の互いに向かい合う面との相互作用は、互いに対する前記プランジャ(70)および前記第1のハウジングエレメント(86)の回転を防止する、請求項7記載の注射装置。
【請求項9】
前記作動機構(176)は、前記案内チャネル(94)から分岐した、前記プランジャ(70)が前記第1の計量供給位置(P1)に配置されかつ前記案内エレメント(92)を支持する前記第1のハウジングエレメント(86)が前記プランジャ(70)に対して回転させられたときに前記案内エレメント(92)を収容するように形成された作動チャネル(178)をさらに有する、請求項8記載の注射装置。
【請求項10】
前記プランジャ解放機構(154)は、前記計量供給エレメント(144)から離すために前記第1の計量供給面(146)を前記計量供給エレメント(144)に対して移動させた後、前記計量供給エレメント(144)に対する前記第1の計量供給面(146)の位置をロックするように構成されたロッキング配列(180)をさらに有する、請求項2から9までのいずれか1項記載の注射装置。
【請求項11】
前記ロッキング配列(180)は、弾性ロッキングクリップ(182)を有し、該弾性ロッキングクリップ(182)は、前記計量供給エレメント(144)から離すために前記第1の計量供給面(146)を前記計量供給エレメント(144)に対して移動させたとき、ロッキングエレメント(184)との相互作用によって休止位置から弾性的に押し出されるように構成されており、さらに、前記第1の計量供給面(146)の移動の完了後に休止位置へ戻るように変形し、第1の計量供給面(146)を前記計量供給エレメント(144)に対して所定の位置にロックするために前記ロッキングエレメント(184)と相互作用するように構成されている、請求項10記載の注射装置。
【請求項12】
前記第2の計量供給面(148)は、前記第1の計量供給面(146)に形成された凹所(152)の底面によって規定されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の注射装置。
【請求項13】
前記第1の制限エレメント(168)は、前記計量供給エレメント(144)が前記第1の計量供給面(146)から離されかつ前記第2の計量供給面(148)と整列させられたとき、第2のハウジングエレメント(88)に設けられた第2の制限エレメント(170)に対して当接するように構成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の注射装置。
【請求項14】
前記プランジャ(70)を現在の位置に保持する保持力を加えるように構成された第1のドラッグ機構(116)と、
前記第1のハウジングエレメント(86)を現在の位置に保持する保持力を加えるように適応させられた第2のドラッグ機構(172)と、
のうちの少なくとも一方をさらに備える、請求項13記載の注射装置。
【請求項15】
前記第1のドラッグ機構(116)は、前記プランジャ(70)に弾性的な保持力を加えるように形成された弾性ドラッグエレメント(118)を有する、請求項14記載の注射装置。
【請求項16】
前記第2のドラッグ機構(172)は、前記第1の制限エレメント(168)に設けられておりかつ前記第2のハウジングエレメント(88)の保持エレメント(158)と相互作用するように構成された摩擦エレメント(174)を有する、請求項14記載の注射装置。
【請求項17】
近位側端部位置から近位方向への前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位を防止するように構成されたプランジャ位置決め機構(98)をさらに備える、請求項1から16までのいずれか1項記載の注射装置。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の注射装置(10)と、
該注射装置(10)の注射溶液容器(30)にシリンジ(14)から注射溶液を充填するために、前記注射溶液を含んだ前記シリンジ(14)を前記注射装置(10)に接続するための充填アダプタ(12)と、
を備える、注射溶液移し替えシステム(100)。」


第3 申立理由の概要
異議申立人は、下記の証拠を提出し、請求項1〜18に係る特許は、以下の取消理由1、2のとおり特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1〜18に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

<証拠>
甲第1号証:国際公開第2016/169718号(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特表2012−528642号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:米国特許第9144648号明細書(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開平11−151301号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特表2001−505072号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:米国特許出願公開第2002/0161334号明細書(以下「甲6」という。)
甲第7号証:米国特許出願公開第2003/0139707号明細書(以下「甲7」という。)
甲第8号証:米国特許出願公開第2013/0289491号明細書(以下「甲8」という。)
甲第9号証:米国特許第8329119号明細書(以下「甲9」という。)
甲第10号証:特開2016−124594号公報(以下「甲10」という。)

1.取消理由1
請求項1〜17に係る特許は、甲1〜3記載の発明、及び、周知技術(甲4、8〜10)に基いて、当業者が容易に想到し得るものである。
請求項18に係る特許は、甲1〜3、5記載の発明、及び、周知技術(甲4、6〜10)に基いて、当業者が容易に想到し得るものである。

2.取消理由2
請求項1〜17に係る特許は、甲8及び3記載の発明、及び、周知技術(甲1〜2、4、9〜10)に基いて、当業者が容易に想到し得るものである。
請求項18に係る特許は、甲8、3及び5記載の発明、及び、周知技術(甲1〜2、4、6〜7、9〜10)に基いて、当業者が容易に想到し得るものである。


第4 引用発明
1 甲1について
(1)甲1の記載事項
ア 甲1の第4ページ第11〜16行(空行を含む。以下同様。)及び第9ページ第23〜25行(甲1の該当箇所の翻訳文をそれぞれ参照。以下同様。)の記載、並びに図3a、3b、10及び11の図示内容から、プランジャーロッド54の一部は、薬液容器16に摺動可能に収容されており、プランジャーロッド54は、薬液容器16に含まれた薬物を薬液容器16から排出するために薬液容器16に対して近位方向へ移動可能である。

イ 甲1の第9ページ第4〜7行の記載及び図7〜9の図示内容から、回転体62は、プランジャーロッド54に対して回転可能である。

(2)甲1発明
上記(1)の記載事項、並びに、甲1の第1ページ第4〜6行、第5ページ第7〜9行、第6ページ第10〜31行、第8ページ第11〜13行、第8ページ第25行〜第9ページ第25行の記載及び図1〜11の図示内容を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「圧縮バネが配置された駆動機構を備えている薬物送達デバイスであって、
薬液容器16と、
プランジャーロッド54であって、該プランジャーロッド54の一部は、前記薬液容器16に摺動可能に収容されており、前記プランジャーロッド54は、前記薬液容器16に含まれた薬物を前記薬液容器16から排出するために前記薬液容器16に対して近位方向へ移動可能である、プランジャーロッド54と、を備え、
前記プランジャーロッド54に対して回転可能な回転体62であって、前記回転体62の端壁60には、前記プランジャーロッド54が延びていることができる中央通路64が配置されており、前記中央通路64はさらに、間にランドセクタ68を有している複数の切欠セクタ66が配置されており、
前記プランジャーロッド54は、その遠位端に径方向に延びている翼70を備えており、前記翼70が前記ランドセクタ68に係合することによって前記プランジャーロッド54が前記回転体62に対して所定位置に保持されており、
前記回転体62が所定の回転距離を回転することで、前記回転体62の端壁60の切欠セクタ66が前記プランジャーロッド54の前記翼70に整列して、それによって前記プランジャーロッド54が解放されると、前記プランジャーロッド54の近位方向への移動によって、薬物の用量の送達が行われる、薬物送達デバイス。」

2 甲8について
(1)甲8の記載事項
ア 甲8の段落0052〜0053の記載(甲8の該当箇所の翻訳文を参照。以下同様。)及び図1B、9B、10B、11Bの図示内容から、ラムアセンブリ1120のラム1132の一部が、薬剤チャンバ114に摺動可能に収容されており、該ラム1132は、プランジャ1140に関連付けられており、プランジャ1140を遠位方向に変位させることで、薬剤チャンバ114内に収容された薬剤を投薬するように構成されたものである。

イ 甲8の段落0042、0054〜0058の記載並びに図2A及び2Bの図示内容から、甲8には、以下の事項が記載されている。
(ア)ラムアセンブリ1120の突起1134は、ハウジング102の近位端に備えられた開口部1022に対して、第1位置1022aと第2位置1022bとの間で回転するものであり、第1位置1022aにおいて、開口部1022は、突起1134が開口部1022の側方側面によって拘束され得るように整列され、第2位置1022bにおいて、開口部1022は、突起1134が離れて拡開することができるように整列され、第2位置1022bでは、突起1134は、開口部1022の側壁によって拡開することを抑制されず、エネルギー源1122の力の下で拡開し、ラムアセンブリ1120が、エネルギー源1122によって生成される力の下でハウジング102に対して遠位に摺動可能に変位されることを可能にし、ラムアセンブリ1120の遠位変位は、スリーブ110のリング状構造1100の近位表面に当接することによって制限される。
(イ)ラムアセンブリ1120の遠位方向への変位は、プランジャ1140を遠位方向に付勢して、針116を通して薬剤チャンバ114内の薬剤をユーザに投与する。

(2)甲8発明
上記(1)の記載事項、並びに、甲8の段落0042〜0046、0050〜0058の記載及び図1A〜16の図示内容を総合すると、甲8には次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されている。

「注射器100であって、
薬剤チャンバ114と、
ラムアセンブリ1120のラム1132であって、該ラム1132の少なくとも一部は、前記薬剤チャンバ114に摺動可能に収容されており、前記ラム1132は、プランジャ1140に関連付けられており、前記プランジャ1140を遠位方向に変位させることで、前記薬剤チャンバ114に収容された薬剤を投薬するように構成された、ラム1132と、を備え、
前記ラムアセンブリ1120の突起1134が、ハウジング102の近位端に備えられた開口部1022に対して、第1位置1022aと第2位置1022bとの間で回転するものであり、前記第1位置1022aにおいて、前記開口部1022は、前記突起1134が前記開口部1022の側方側面によって拘束され得るように整列され、前記第2位置1022bにおいて、前記開口部1022は、前記突起1134が離れて拡開することができるように整列され、
前記第2位置1022bでは、前記突起1134は、前記開口部1022の側壁によって拡開することを抑制されず拡開し、前記ラムアセンブリ1120が、エネルギー源1122によって生成される力の下で前記ハウジング102に対して遠位に摺動可能に変位されることを可能にし、前記ラムアセンブリ1120の遠位変位は、スリーブ110のリング状構造1100の近位表面に当接することによって制限され、
前記ラムアセンブリ1120の遠位方向への変位は、前記プランジャ1140を遠位方向に付勢して、針116を通して薬剤チャンバ114内の薬剤をユーザに投与する、注射器100。」


第5 当審の判断
1 取消理由1
(1)請求項1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「圧縮バネが配置された駆動機構を備えている薬物送達デバイス」、「薬液容器16」及び「薬物」は、本件発明1の「注射装置(10)」、「注射溶液容器(30)」及び「注射溶液」にそれぞれ相当する。

(イ)甲1発明の「近位方向」は、甲1の第2ページ第14〜19行の記載から、装置の使用中に患者の薬物送達部位に向かう方向であるので、本件発明1の「遠位方向」に相当する。そして、甲1発明の「近位方向へ移動可能」は、本件発明1の「遠位方向へ変位可能」に相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲1発明の「プランジャーロッド54であって、該プランジャーロッド54の一部は、前記薬液容器16に摺動可能に収容されており、前記プランジャーロッド54は、前記薬液容器16に含まれた薬物を前記薬液容器16から排出するために前記薬液容器16に対して近位方向へ移動可能である、プランジャーロッド54」は、本件発明1の「プランジャ(70)であって、該プランジャ(70)の少なくとも一部は、前記注射溶液容器(30)に摺動可能に収容されており、前記プランジャ(70)は、前記注射溶液容器(30)に含まれた注射溶液を前記注射溶液容器(30)から排出するために前記注射溶液容器(30)に対して遠位方向へ変位可能である、プランジャ(70)」に相当する。

(エ)甲1発明の「前記プランジャーロッド54に対して回転可能な回転体62」は、本件発明1の「前記プランジャ(70)に対して回転可能な第1のハウジングエレメント(86)」に相当する。そして、甲1発明の「前記回転体62の端壁60には、前記プランジャーロッド54が延びていることができる中央通路64が配置されており、前記中央通路64はさらに、間にランドセクタ68を有している複数の切欠セクタ66が配置されて」いることと、本件発明1の「該第1のハウジングエレメント(86)に、第1の制限エレメント(168)、第1の計量供給面(146)および第2の計量供給面(148)が形成されている」こととは、「前記第1のハウジングエレメントに、第1の計量供給面が形成されている」限りで一致する。

(オ)甲1発明の「前記プランジャーロッド54は、その遠位端に径方向に延びている翼70を備え」ることは、本件発明1の「前記プランジャ(70)に取り付けられて」「いる計量供給エレメント(144)」を備えることに相当する。
また、甲1発明の「翼70が前記ランドセクタ68に係合することによって前記プランジャーロッド54が前記回転体62に対して所定位置に保持され」ることは、プランジャーロッド54が薬液容器16に対して近位方向(本件発明1における遠位方向)への移動を阻止することであるので、本件発明1の「前記第1の計量供給面(146)と係合することによって第1の計量供給位置(P1)において遠位方向への前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位を停止させるように構成された第1のプランジャ停止機構(140)」を備えることに相当する。
さらに、上記(エ)も踏まえれば、甲1発明の「前記翼70が前記ランドセクタ68に係合することによって前記プランジャーロッド54が前記回転体62に対して所定位置に保持されており、前記回転体62が所定の回転距離を回転することで、前記回転体62の端壁60の切欠セクタ66が前記プランジャーロッド54の前記翼70に整列」することと、本件発明1の「前記第1のハウジングエレメント(86)は、前記計量供給エレメント(144)を前記第1の計量供給面(146)から離しかつ前記第2の計量供給面(148)と前記計量供給エレメント(144)を整列させる位置へと、前記プランジャ(70)に対して回転可能であ」ることとは、「前記第1のハウジングエレメントは、前記計量供給エレメントを前記第1の計量供給面から離しかつ第2の位置へと、前記プランジャに対して回転可能であ」る限りで一致する。

(カ)甲1発明の「前記プランジャーロッド54が解放されると、前記プランジャーロッド54の近位方向への移動によって、薬物の用量の送達が行われる」ことと、本件発明1の「前記プランジャ(70)の前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)は、前記プランジャ(70)が、前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)の間で前記注射溶液容器(30)に対して変位させられる際、前記注射溶液容器(30)に含まれた前記注射溶液の所望の用量を前記注射溶液容器(30)から排出するように設定されている」こととは、「前記プランジャ(70)が、第1の計量供給位置および排出終了位置の間で前記注射溶液容器に対して変位させられる際、前記注射溶液容器に含まれた前記注射溶液の所望の用量を前記注射溶液容器から排出する」限りで一致する。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「注射装置であって、
注射溶液容器と、
プランジャであって、該プランジャの少なくとも一部は、前記注射溶液容器に摺動可能に収容されており、前記プランジャは、前記注射溶液容器に含まれた注射溶液を前記注射溶液容器から排出するために前記注射溶液容器に対して遠位方向へ変位可能である、プランジャと、
前記プランジャに対して回転可能な第1のハウジングエレメントであって、前記第1のハウジングエレメントに、第1の計量供給面が形成されている、第1のハウジングエレメントと、
前記第1の計量供給面と係合することによって第1の計量供給位置において遠位方向への前記注射溶液容器に対する前記プランジャの変位を停止させるように構成された第1のプランジャ停止機構と、を備え、
前記第1のハウジングエレメントは、前記計量供給エレメントを前記第1の計量供給面から離しかつ第2の位置へと、前記プランジャに対して回転可能であり、
前記プランジャが、第1の計量供給位置および排出終了位置の間で前記注射溶液容器に対して変位させられる際、前記注射溶液容器に含まれた前記注射溶液の用量を前記注射溶液容器から排出する、注射装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本件発明1は、第1のハウジングエレメント(86)に、「第1の制限エレメント(168)」「および第2の計量供給面(148)が形成されて」おり、「前記第1の制限エレメント(168)は、前記計量供給エレメント(144)が前記第2の計量供給面(148)を過ぎて回転することを防」ぐのに対し、甲1発明は、回転体62が切欠セクタ66を有する点。

[相違点2]
本件発明1は、「第1の計量供給位置(P1)から遠位方向への前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位を第2の計量供給位置(P2)において停止させるように構成された第2のプランジャ停止機構(142)であって」、「前記第2のプランジャ停止機構(142)は、前記プランジャ(70)に取り付けられておりかつ前記第2の計量供給面(148)に対して当接するように適応させられている計量供給エレメント(144)に形成されており」、「前記第2の計量供給面(148)」と前記計量供給エレメント(144)を整列させる位置へと、前記プランジャ(70)に対して回転可能であるのに対し、甲1発明は、このような構成を有していない点。

[相違点3]
本件発明1は、「プランジャ(70)の前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)は」、前記プランジャ(70)が、前記第1および「第2の計量供給位置(P1,P2)」の間で前記注射溶液容器(30)に対して変位させられる際、前記注射溶液容器に含まれた前記注射溶液の所望の用量を前記注射溶液容器(30)から排出する「ように設定されている」のに対し、甲1発明は、プランジャーロッド54が解放されると、前記プランジャーロッド54の近位方向への移動によって、薬物の用量の送達が行われる点。

イ 判断
まず、上記相違点1について以下検討する。
(ア)本件発明1は、第1のハウジングエレメント(86)が回転して、計量供給エレメント(144)が、第1ハウジングエレメント(86)に形成された第2の計量供給面(148)と整列する際に、第1の制限エレメント(168)によって、計量供給エレメント(144)が第2の計量供給面(148)に対して回転し過ぎることを防ぐものである。
これに対し、甲1発明は、回転体62が回転することで、翼70が、回転体62の切欠セクタ66に整列するものであるが、翼70が切欠セクタ66に整列することで、回転体62のランドセクタ68との係合が外れ、プランジャーロッド54が解放され、該プランジャーロッド54が近位方向へ移動するものである。そして、このプランジャーロッド54が近位方向へ移動する動作は、圧縮バネの作用によって行われるものであり、甲1の第8ページ第11〜13行の記載から、当該圧縮バネによる作用は、翼70とランドセクタ68とが係合している段階においても常に働いている。そのため、甲1発明は、翼70と切欠セクタ66とが整列する位置まで回転体62が回転すれば、当該圧縮バネの作用によって自動的にプランジャーロッド54が解放されるので、翼70と切欠セクタ66とが整列する位置を過ぎて回転することを防ぐ必要性はなく、甲1発明において、回転を防止する構成、すなわち上記相違点1に係る「第1の制限エレメント」を形成しようとする動機は存在しない。

(イ)異議申立人は、異議申立書において甲2及び甲8を例示し、回転を防ぐ構成は周知技術であり、甲1発明に当該周知技術を適用することは、当業者の通常の創作能力の範囲内であると主張するが、上述のとおり、甲1発明において、回転を防止する構成を形成しようとする動機は存在しないので、仮に回転を防ぐ構成が周知技術であったとしても、当該周知技術を甲1発明に適用する動機はない。
また、甲3〜10には、回転を防ぐことについて記載も示唆もない。

(ウ)したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の事項にすることが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

よって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2〜3に記載の発明及び周知技術(甲4、8〜10)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)請求項2〜18について
請求項2〜17に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、さらに技術的事項を追加したものであるから、上記(1)に示した理由と同様に、甲1発明、甲2〜3に記載の発明及び周知技術(甲4、8〜10)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、請求項18に係る発明は、請求項1に係る発明を包含するものであるから、上記(1)に示した理由を有しており、甲1〜3、5記載の発明、及び、周知技術(甲4、6〜10)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 取消理由2
(1)請求項1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明の「注射器100」、「薬剤チャンバ114」及び「薬剤」は、本件発明1の「注射装置(10)」、「注射溶液容器(30)」及び「注射溶液」にそれぞれ相当する。

(イ)甲8発明の「ラムアセンブリ1120のラム1132であって、該ラム1132の少なくとも一部は、前記薬剤チャンバ114に摺動可能に収容されており、前記ラム1132は、プランジャ1140に関連付けられており、前記プランジャ1140を遠位方向に変位させることで、前記薬剤チャンバ114に収容された薬剤を投薬するように構成された、ラム1132」は、本件発明1の「プランジャ(70)であって、該プランジャ(70)の少なくとも一部は、前記注射溶液容器(30)に摺動可能に収容されており、前記プランジャ(70)は、前記注射溶液容器(30)に含まれた注射溶液を前記注射溶液容器(30)から排出するために前記注射溶液容器(30)に対して遠位方向へ変位可能である、プランジャ(70)」に相当する。

(ウ)甲8発明の「前記ラムアセンブリ1120の突起1134」は、「ハウジング102の近位端に備えられた開口部1022に対して、第1位置1022aと第2位置1022bとの間で回転する」ことから、該「ハウジング102」は、「ラムアセンブリ1120」「に対して」「回転する」ということができ、これは、本件発明1の「前記プランジャ(70)に対して回転可能な第1のハウジングエレメント」に相当する。そして、甲8発明の「ハウジング102の近位端に備えられた開口部1022」は、「前記突起1134が前記開口部1022の側方側面によって拘束され得るように整列され」、「前記第2位置1022bにおいて」「前記突起1134が離れて拡開することができるように整列され」ることと、本件発明1の「第1のハウジングエレメント(86)に、第1の制限エレメント(168)、第1の計量供給面(146)および第2の計量供給面(148)が形成されている」こととは、「第1のハウジングエレメントに、第1の計量供給面が形成されている」限りで一致する。

(エ)甲8発明の「前記ラムアセンブリ1120の突起1134」は、本件発明1の「前記プランジャ(70)に取り付けられて」「いる計量供給エレメント(144)」に相当する。
また、甲8発明の「前記第1位置1022aにおいて、前記開口部1022は、突起1134が前記開口部1022の側方側面によって拘束され得るように整列され」ることは、ラムアセンブリ1120が遠位方向に摺動することを不可能にすることであるので、本件発明1の「前記第1の計量供給面(146)と係合することによって第1の計量供給位置(P1)において遠位方向への前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位を停止させるように構成された第1のプランジャ停止機構(140)」を備えることに相当する。
さらに、上記(ウ)を踏まえると、甲8発明の「前記ラムアセンブリ1120の突起1134が、ハウジング102の近位端に備えられた開口部1022に対して、第1位置1022aと第2位置1022bとの間で回転」することと、本件発明1の「前記第1のハウジングエレメント(86)は、前記計量供給エレメント(144)を前記第1の計量供給面(146)から離しかつ前記第2の計量供給面(148)と前記計量供給エレメント(144)を整列させる位置へと、前記プランジャ(70)に対して回転可能であ」ることとは、「前記第1のハウジングエレメントは、前記計量供給エレメントを前記第1の計量供給面から離しかつ第2の位置へと、前記プランジャに対して回転可能であ」る限りで一致する。

(オ)甲8発明の「第2位置1022bでは、前記突起1134は、前記開口部1022の側壁によって拡開することを抑制されず拡開し、前記ラムアセンブリ1120が、エネルギー源1122によって生成される力の下で前記ハウジング102に対して遠位に摺動可能に変位されることを可能にし、前記ラムアセンブリ1120の遠位変位は、スリーブ110のリング状構造1100の近位表面に当接することによって制限され」ることと、本件発明1の「第1の計量供給位置(P1)から遠位方向への前記注射溶液容器(30)に対する前記プランジャ(70)の変位を第2の計量供給位置(P2)において停止させるように構成された第2のプランジャ停止機構(142)」とは、「第1の計量供給位置から遠位方向への前記注射溶液容器に対する前記プランジャの変位を排出終了位置において停止させるように構成された第2のプランジャ停止機構」の限りで一致する。

(カ)甲8発明の「前記ラムアセンブリ1120の遠位方向への変位は、前記プランジャ1140を遠位方向に付勢して、針116を通して薬剤チャンバ114内の薬剤をユーザに投与する」ことと、本件発明1の「前記プランジャ(70)の前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)は、前記プランジャ(70)が、前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)の間で前記注射溶液容器(30)に対して変位させられる際、前記注射溶液容器(30)に含まれた前記注射溶液の所望の用量を前記注射溶液容器(30)から排出するように設定されている」こととは、「前記プランジャ(70)が、第1の計量供給位置および排出終了位置の間で前記注射溶液容器に対して変位させられる際、前記注射溶液容器に含まれた前記注射溶液の所望の用量を前記注射溶液容器から排出する」限りで一致する。

したがって、本件発明1と甲8発明とは、
「注射装置であって、
注射溶液容器と、
プランジャであって、該プランジャの少なくとも一部は、前記注射溶液容器に摺動可能に収容されており、前記プランジャは、前記注射溶液容器に含まれた注射溶液を前記注射溶液容器から排出するために前記注射溶液容器に対して遠位方向へ変位可能である、プランジャと、
前記プランジャに対して回転可能な第1のハウジングエレメントであって、前記第1のハウジングエレメントに、第1の計量供給面が形成されている、第1のハウジングエレメントと、
前記第1の計量供給面と係合することによって第1の計量供給位置において遠位方向への前記注射溶液容器に対する前記プランジャの変位を停止させるように構成された第1のプランジャ停止機構と、
前記第1の計量供給位置から遠位方向への前記注射溶液容器に対するプランジャの変位を排出終了位置において停止させるように構成された第2のプランジャ停止機構と、を備え、
前記第1のハウジングエレメントは、前記計量供給エレメントを前記第1の計量供給面から離しかつ第2の位置へと、前記プランジャに対して回転可能であり、
前記プランジャが、第1の計量供給位置および排出終了位置の間で前記注射溶液容器に対して変位させられる際、前記注射溶液容器に含まれた前記注射溶液の用量を前記注射溶液容器から排出する、注射装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点A]
本件発明1は、第1のハウジングエレメント(86)に、「第1の制限エレメント(168)」「および第2の計量供給面(148)が形成されて」おり、「前記第1の制限エレメント(168)は、前記計量供給エレメント(144)が前記第2の計量供給面(148)を過ぎて回転することを防」ぐのに対し、甲8発明は、ラムアセンブリ1120の突起1134に対して回転するハウジング102がそのような構成を有していない点。

[相違点B]
第2のプランジャ停止機構に関し、本件発明1は、「第2の計量供給位置(P2)」において停止させるように構成され、「前記プランジャ(70)に取り付けられておりかつ前記第2の計量供給面(148)に対して当接するように適応させられている計量供給エレメント(144)に形成されており」、「前記第2の計量供給面(148)と前記計量供給エレメント(144)を整列させる」位置へと、前記プランジャ(70)に対して回転可能であり、「プランジャ(70)の前記第1および第2の計量供給位置(P1,P2)は」、前記プランジャ(70)が、前記第1および「第2の計量供給位置」(P1,「P2」)の間で前記注射溶液容器(30)に対して変位させられる際、前記注射溶液容器に含まれた前記注射溶液の所望の用量を前記注射溶液容器(30)から排出する「ように設定されている」のに対し、甲8発明は、ラムアセンブリ1120の遠位変位は、スリーブ110のリング状構造1100の近位表面に当接することによって制限されるものである点。

イ 判断
まず、上記相違点Aについて以下検討する。
(ア)本件発明1は、第1のハウジングエレメント(86)が回転して、計量供給エレメント(144)が、第1ハウジングエレメント(86)に形成された第2の計量供給面(148)と整列する際に、第1の制限エレメント(168)によって、計量供給エレメント(144)が第2の計量供給面(148)に対して回転し過ぎることを防ぐものである。
これに対し、甲8発明は、ラムアセンブリ1120とハウジング102とが、第1位置1022aと第2位置1022bとの間で相対的に回転し、第2位置1022bにおいて、ラムアセンブリ1120の突起1134が、ハウジング102の開口部1022から離れて拡開することができるように整列されたものである。前記第2位置1022bでは、前記突起1134が拡開し、前記ラムアセンブリ1120がハウジング102に対して遠位に摺動可能に変位される。そして、ラムアセンブリ1120が遠位に変位される動作は、エネルギー源1122によって生成される力の下で行われるものであり、甲8の段落0042及び0054の記載から、当該エネルギー源1122による力は、突起1134が開口部1022の側方側面によって拘束されている間において常に働いている。そのため、甲8発明は、突起1134が開口部1022の第2位置1022bまで回転すれば、当該エネルギー源1122の力によって自動的にラムアセンブリ1120が摺動して変位するので、突起1134が第2位置1022bを過ぎて回転することを防止する必要性はなく、甲8発明において、回転を防止する構成、すなわち上記相違点Aに係る「第1の制限エレメント」を形成しようとする動機は存在しない。

(イ)異議申立人は、異議申立書において、甲8には、「突起1134が、・・・第2位置1022b(注射位置、図2B)まで回転したときに、第2位置1022bの側面が、第2位置1022bを過ぎる突起1134の回転を防ぐ構成が記載されている」(異議申立書72ページ)及び「開口部1022の第1位置1022aの側面だけでなく、開口部1022の第2位置1022bの側面も、突起1134に係合するのは明らかである」(異議申立書87ページ)と主張しているが、これらの事項は甲8に何ら記載されていない。むしろ、甲8の段落0057には、「突起1134を・・・第2位置と整列させる。この位置では、突起1134は、開口部1022の側壁によって拡開することをもはや抑制されない」と記載されており、第2位置では突起1134は、開口部1022の側壁と係合しないことが示唆されている。
また、異議申立人は、甲8のほか、甲2を例示し、回転を防ぐ構成は周知技術であると主張しているが(異議申立書72ページ)、上述したとおり、甲8発明において、回転を防止する構成を形成しようとする動機は存在しないので、仮に回転を防ぐ構成が周知技術であったとしても、当該周知技術を甲8発明に適用する動機はない。
以上のとおりであるから、異議申立人の主張を採用することはできない。

(ウ)したがって、甲8発明において、上記相違点Aに係る本件発明1の事項にすることが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

よって、相違点Bについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲8発明、甲3記載の発明、及び、周知技術(甲1〜2、4、9〜10)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)請求項2〜18について
請求項2〜17に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、さらに技術的事項を追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様に、甲8発明、甲3記載の発明、及び、周知技術(甲1〜2、4、9〜10)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、請求項18に係る発明は、請求項1に係る発明を包含するものであるから、上記(1)に示した理由を有しており、甲8発明、甲3及び5記載の発明、及び、周知技術(甲1〜2、4、6〜7、9〜10)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2024-01-23 
出願番号 P2019-567586
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 近藤 利充
安井 寿儀
登録日 2023-03-13 
登録番号 7244442
権利者 ノバルティス アーゲー
発明の名称 注射装置および注射溶液移し替えシステム  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
代理人 森田 拓  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ