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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1408294
総通号数 28 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-11 
確定日 2024-03-06 
事件の表示 特願2019−516429「薬剤送達デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日国際公開、WO2018/060023、令和 1年10月17日国内公表、特表2019−528949〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年) 9月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年 9月27日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 3年 7月27日付け:拒絶理由通知
令和 3年11月 2日提出:意見書、手続補正書
令和 3年12月24日付け:拒絶査定
令和 4年 5月11日提出:審判請求書、手続補正書

第2 令和4年5月11日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和4年5月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前(令和3年11月2日の手続補正書)の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「薬剤送達デバイスであって:
第1および第2の部分を有するハウジングと;
該ハウジング内に配置されたリザーバを含み、該リザーバが薬剤を収容するとき、リザーバから薬剤を投薬するように動作可能な、投薬機構と;
アクチュエータと
を含み、ここで、
ハウジングの第1の部分は、遠位端を含み、第2の部分は、投薬機構が動作できないようにアクチュエータの作動が妨げられる初期位置から、投薬機構の動作のためにアクチュエータが作動可能な準備完了位置へと、遠位端の方に向けて可動であり、ここで、
アクチュエータは、第2の部分が初期位置にあるとき、アクチュエータの作動を防止するようにハウジング内に後退しており、第2の部分が準備完了位置にあるとき、ハウジングから突出する、
前記薬剤送達デバイス。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、当審で補正箇所を示すために付したものである。)。
「薬剤送達デバイスであって:
第1および第2の部分を有するハウジングと;
該ハウジング内に配置されたリザーバを含み、該リザーバが薬剤を収容するとき、リザーバから薬剤を投薬するように動作可能な、投薬機構と;
アクチュエータと
を含み、ここで、
ハウジングの第1の部分は、遠位端を含み、第2の部分は、投薬機構が動作できないようにアクチュエータの作動が妨げられる初期位置から、投薬機構の動作のためにアクチュエータが作動可能な準備完了位置へと、遠位端の方に向けて可動であり、ここで、
アクチュエータは、第2の部分が初期位置にあるとき、アクチュエータの作動を防止するようにハウジング内に完全に後退しており、第2の部分が準備完了位置にあるとき、ハウジングから突出する、
前記薬剤送達デバイス。」

2 本件補正(請求項1に係る補正)の適否
(1)本件補正の内容
本件補正は、請求項1の「ハウジング内に後退」を「ハウジング内に完全に後退」に減縮するものである。
また、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である。
したがって、請求項1に係る本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(2)引用文献の記載、引用発明
(2−1)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2015−530198号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0007】
例示的な実施形態において、本発明による薬剤送達デバイスは、薬剤の容器を保持するように適用されたケースと、容器から薬剤を排出するように適用された駆動機構と、ケースの上に配設され、駆動機構に動作可能に連結されたトリガボタンとを含む。トリガボタンは、凹位置および凸位置を有する。トリガボタンが凸位置から凹位置へ動くことによって、駆動機構が起動される。」
(イ)「【0013】 例示的な実施形態において、薬剤送達デバイスは、ケースに伸縮自在に(telescopically)連結され、ケースに対する伸長位置とケースに対する後退位置(retracted position)との間で並進運動可能なインターロック部材をさらに含む。インターロック部材は、トリガボタンに動作可能に連結される。インターロック部材の伸長位置から後退位置への並進運動によって、トリガボタンが凹位置から凸位置へ移行される。インターロック部材は、伸長位置で付勢される。インターロック部材は、インターロック部材が後退位置から伸長位置へ並進運動し、トリガボタンが凸位置から凹位置へ移行した後、伸長位置でロックされる。」
(ウ)「【0024】
図1および2は、薬剤送達デバイス1(たとえば、自動注射器、ペン型注射器など)の例示的な実施形態を示している。その例示的な実施形態において、送達デバイス1は、針4を有する容器3(たとえば、カートリッジ、シリンジ)を保持するように適用されたケース2を含み、針4は、容器3に着脱可能に連結されるか、または容器3と一体形成される。送達デバイス1は、薬剤を容器3から針4を通して変位させるための駆動機構5を含む。例示的な実施形態において、駆動機構5は、プランジャおよび駆動ばねを含むことができ、駆動ばねは、起動されると、プランジャに力を及ぼし、容器3の中のストッパを押して薬剤を排出する。
【0025】
例示的な実施形態において、送達デバイス1は、駆動機構5を作動させるためのトリガボタン6を含む。トリガボタン6は、ケース2の近位端に配設することができる。他の例示的な実施形態において、トリガボタン6は、ケース2の側面に配設することができる。例示的な実施形態において、トリガボタン6は、少なくとも1つの柔軟な熱可塑性エラストマー、たとえば、スチレンブロックコポリマー、ポリオレフィンブレンド、エラストマーアロイ、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、または熱可塑性ポリアミドから作られる。トリガボタン6は、実質的な気密封止を生み出すように、ケース2に連結することができる。さらに、トリガボタン6の直径は、ケース2の直径に対応することができる。
【0026】
例示的な実施形態において、トリガボタン6は、凹位置および凸位置を有することができる。例示的な実施形態において、トリガボタン6は、どちらの位置でも(たとえば、その弾性特性によって)付勢することができる。
【0027】
例示的な実施形態において、インターロック部材7(たとえば、スリーブ)は、ケース2に伸縮自在に連結され、かつトリガボタン6に動作可能に連結される。インターロック部材7は、ケース2に対する伸長位置で(図1および2)で、たとえば、ばね(図示せず)によって付勢することができる。
【0028】
図1および図2の例示的な実施形態に示すように、送達デバイス1の使用前、トリガボタン6は凹位置にある。送達デバイス1の使用前、トリガボタン6が凸位置にあってもよいことが、当業者には理解されるであろう。インターロック部材7は、伸長位置にある。例示的な実施形態において、容器3は、ケース2の中に、針4がケース2によって覆われる後退位置と、(たとえば、注射部位の貫入のために)針4が露出される伸長位置との間で摺動可能に配置することができる。容器3がケース2の中に摺動可能に配置される場合には、使用前、容器3は後退位置にある。容器3がケース2の中に固定して配置される場合には、針4を、ケース2の遠位端を超えて延びるインターロック部材7によって覆うことができる。
【0029】
図3および4の例示的な実施形態に示すように、送達デバイス1が注射部位の上に配置されると、インターロック部材7は、伸長位置から後退位置へ並進運動する。インターロック部材7が後退位置にあるとき、トリガボタン6は凸位置を得る。別の例示的な実施形態では、インターロック部材7をケース2に対して後退させると、トリガボタン6は凸位置へ推移することができる。送達デバイス1が(たとえば、再調整のために)注射部位から除かれる場合、トリガボタン6は、(たとえば、付勢力を受けて)凹位置に戻ることができる。トリガボタン6は凸位置にあるとき、使用者に対して、送達デバイス1を作動させることができるという視覚的なフィードバックを提供する。トリガボタン6が凹位置から凸位置へ推移するとき、トリガボタン6の弾性特性によって、聴覚的なフィードバック(たとえば、「ポン」という音)を提供することができる。
【0030】
トリガボタン6が押されると、トリガボタン6は、駆動機構5を作動させ、容器3を進めて針4を注射部位に挿入し、プランジャを容器3の中へ進めて薬剤を排出することができる。別の例示的な実施形態では、駆動機構の作動によって、プランジャを容器3の中へ進めて薬剤を排出するだけでもよい。
【0031】
送達デバイス1が注射部位から除かれると、インターロック部材7は、ばねの付勢力を受けて伸長位置に戻ることができ、トリガボタン6は凹位置に戻ることができる。例示的な実施形態では、トリガボタン6が押された後、トリガボタン6はインターロック部材7を係合解除することができ、したがって、送達デバイス1が注射部位に押し付けられた場合、インターロック部材7が後退位置へ並進運動したとしても、トリガボタン6は凹位置にとどまる。例示的な実施形態では、インターロック部材7は、送達デバイス1が注射部位から除かれた後、伸長位置でロックされる。」
(ウ)【図1】

(エ)【図2】

(オ)【図3】

(カ)【図4】

(キ)段落【0007】、【0024】、【0028】、【0030】の記載より、薬剤送達デバイス1は、ケース2の中に配置される薬剤の容器3及び前記容器3から薬剤を排出する駆動機構5を有する。
(ク)【図1】より、インターロック部材7が遠位端を含むことが看取できる。
(ケ)段落【0027】−【0028】の記載より、薬剤送達デバイス1の使用前、インターロック部材7はケース2に対する伸長位置にあり、トリガボタン6は凹位置にある。この位置は、段落【0007】の「トリガボタンが凸位置から凹位置へ動くことによって、駆動機構が起動」ができない位置であって、トリガボタンを凸位置から凹位置へ作動できず、駆動機構5を起動できない位置状態であることは、明らかである。
したがって、ケース2に対するインターロック部材7の伸長位置であって、当該伸長位置は、トリガボタン6が凹位置にあってトリガボタン6を凸位置から凹位置へ作動できず、駆動機構5を起動できない位置状態である、薬剤送達デバイスの使用前の伸長位置が記載されている。
さらに、【図1】、【図2】を上記記載とあわせて見ると、前記伸長位置にあるとき、トリガボタン6は、凹位置に後退しており、該凹位置においてトリガボタン6の中央がケース2の近位端より下方に凹んでいることが看取できる。
(コ)段落【0029】の「図3および4の例示的な実施形態に示すように、送達デバイス1が注射部位の上に配置されると、インターロック部材7は、伸長位置から後退位置へ並進運動する。インターロック部材7が後退位置にあるとき、トリガボタン6は凸位置を得る。別の例示的な実施形態では、インターロック部材7をケース2に対して後退させると、トリガボタン6は凸位置へ推移することができる。・・・トリガボタン6は凸位置にあるとき、使用者に対して、送達デバイス1を作動させることができるという視覚的なフィードバックを提供する。・・・」との記載より、インターロック部材7をケース2に対して後退した後退位置へと並進運動すると、トリガボタン6は凸位置へ推移する。この位置は、段落【0007】の「トリガボタンが凸位置から凹位置へ動くことによって、駆動機構が起動」が可能な位置であって、駆動機構5を起動させるためにトリガボタンを凸位置から凹位置へ動かすことが可能な位置状態であることは明らかである。
したがって、ケース2に対するインターロック部材7の後退位置であって、当該後退位置への並進運動によりトリガボタン6が凸位置へ移行されて、駆動機構5を起動するためにトリガボタンを凸位置から凹位置へ動かすことが可能な位置状態である後退位置へ、並進運動することが記載されている。
さらに【図3】、【図4】から、前記後退位置にあるとき、トリガボタン6は、凸位置にあり、ケース2から突出することが看取できる。

(2−2).引用発明
上記記載を総合し、本願発明の記載に倣って整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「薬剤送達デバイス1であって:
インターロック部材7とケース2と;
前記ケース2の中に配置される薬剤の容器3及び前記容器3から薬剤を排出する駆動機構5と;
トリガボタン6と
を含み、ここで、
インターロック部材7は、遠位端を含み、
ケース2に対するインターロック部材7は、
伸長位置であって、当該伸長位置は、トリガボタン6が凹位置にあってトリガボタン6を凸位置から凹位置へ作動できず駆動機構5を起動できない位置状態である、薬剤送達デバイスの使用前の伸長位置から、
後退位置であって、当該後退位置への並進運動によりトリガボタン6が凸位置へ移行されて、駆動機構5を起動するためにトリガボタン6を凸位置から凹位置へ動かすことが可能な位置状態である後退位置へ、
並進運動し、ここで、
前記伸長位置にあるとき、トリガボタン6は、凹位置に後退しており、該凹位置においてトリガボタン6の中央がケース2の近位端より下方に凹んでおり、
前記後退位置にあるとき、トリガボタン6は、凸位置にあり、ケース2から突出する、
前記薬剤送達デバイス1。」


(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「薬剤送達デバイス1」は、本件補正発明の「薬剤送達デバイス」に相当する。
引用発明の「インターロック部材7」は、引用文献1の段落【0027】においてスリーブが例示されており、引用文献1の段落【0027】−【0030】、図1−4からみてその作用、構造から、本件補正発明の「ハウジング」の「第1の部分」に相当する。
引用発明の「ケース2」は、その作用、構造から、本件補正発明の「ハウジング」の「第2の部分」に相当する。
引用発明の「インターロック部材7」と「ケース2」とからなる部分は、「第1および第2の部分を有するハウジング」を含むといえる。
引用発明の「薬剤の容器3」、「トリガボタン6」は、その作用、構造から、それぞれ、本件補正発明の「リザーバ」、「アクチュエータ」に相当する。
引用発明の「前記ケース2の中に配置される薬剤の容器3及び前記容器3から薬剤を排出する駆動機構5」は、本件補正発明の「該ハウジング内に配置されたリザーバを含み、該リザーバが薬剤を収容するとき、リザーバから薬剤を投薬するように動作可能な、投薬機構」に相当する。

(i)引用発明の「ケース2に対するインターロック部材7」が、「伸長位置」にあること、「ケース2に対するインターロック部材7」が、「後退位置」にあることは、それぞれ、ケース2がインターロック部材7の遠位端に対して離間した伸長位置にあること、ケース2がインターロック部材7の遠位端に対して近づいた後退位置にあることであり、
(ii)引用発明の「ケース2に対するインターロック部材7」が、「伸長位置」から「後退位置」へ「並進運動」することは、引用文献1の図1−4を参照すると、ケース2が、インターロック部材7の遠位端の方に向けて動き、前記伸長位置から前記後退位置へと、インターロック部材の遠位端に向けて可動することである。
(iii)引用発明の「ケース2に対するインターロック部材7」が「伸長位置であって、当該伸長位置は、トリガボタン6が凹位置にあってトリガボタン6を凸位置から凹位置へ作動できず駆動機構5を起動できない位置状態である、薬剤送達デバイスの使用前の伸長位置」は、
ケース2が、伸長位置であって、トリガボタン6の作動ができず駆動機構5を起動できない位置状態である、薬剤送達デバイスの使用前の位置であるから、
本件補正発明の「第2の部分」が、「投薬機構が動作できないようにアクチュエータの作動が妨げられる初期位置」に相当する。
(iv)引用発明の「ケース2に対するインターロック部材7」が「後退位置であって、当該後退位置への並進運動によりトリガボタン6が凸位置へ移行されて、駆動機構5を起動するためにトリガボタンを凸位置から凹位置へ動かすことが可能な状態となっている後退位置」へ「並進運動」可能であることは、
ケース2が、後退位置であって、駆動機構5を起動するためにトリガボタンが作動可能な状態となっている位置へ可動であるから、
本件補正発明の「第2の部分」が「投薬機構の動作のためにアクチュエータが作動可能な準備完了位置へと」「可動であ」ることに相当する。
したがって、引用発明の「ケース2に対するインターロック部材7は、
伸長位置であって、当該伸長位置は、トリガボタン6が凹位置にあってトリガボタン6を凸位置から凹位置へ作動できず駆動機構5を起動できない位置状態である、薬剤送達デバイスの使用前の伸長位置から、
後退位置であって、当該後退位置への並進運動によりトリガボタン6が凸位置へ移行されて、駆動機構5を起動するためにトリガボタンを凸位置から凹位置へ動かすことが可能な位置状態である後退位置へ、並進運動す」ることは、
本件補正発明の「第2の部分は、投薬機構が動作できないようにアクチュエータの作動が妨げられる初期位置から、投薬機構の動作のためにアクチュエータが作動可能な準備完了位置へと、遠位端の方に向けて可動であ」ることに相当する。

引用発明の「前記伸長位置にあるとき、トリガボタン6は、凹位置に後退しており、該凹位置においてトリガボタン6の中央がケース2の近位端より下方に凹んで」いることは、
トリガボタン6は、ケース2が伸長位置にあるとき、駆動機構5を起動することができない位置である凹位置に後退していることであるから、
本件補正発明の「アクチュエータは、第2の部分が初期位置にあるとき、アクチュエータの作動を防止するように」「後退して」いることに相当する。

引用発明の「前記後退位置にあるとき、トリガボタン6は、凸位置にあり、ケース2から突出する」ことは、
トリガボタン6は、ケース2が後退位置にあるとき、凸位置にあり、ケース2から突出することであるから、本件補正発明の「アクチュエータ」は「第2の部分が準備完了位置にあるとき、ハウジングから突出する」ことに相当する。

そうすると、本件補正発明と引用発明は、
「薬剤送達デバイスであって:
第1および第2の部分を有するハウジングと;
該ハウジング内に配置されたリザーバを含み、該リザーバが薬剤を収容するとき、リザーバから薬剤を投薬するように動作可能な、投薬機構と;
アクチュエータと
を含み、ここで、
ハウジングの第1の部分は、遠位端を含み、第2の部分は、投薬機構が動作できないようにアクチュエータの作動が妨げられる初期位置から、投薬機構の動作のためにアクチュエータが作動可能な準備完了位置へと、遠位端の方に向けて可動であり、
アクチュエータは、第2の部分が初期位置にあるとき、アクチュエータの作動を防止するように、後退しており、第2の部分が準備完了位置にあるとき、ハウジングから突出する、
前記薬剤送達デバイス。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
第2の部分が初期位置にあるとき、本件補正発明では、アクチュエータが、ハウジング内に「完全に」後退しているのに対して、引用発明では、トリガボタン6が、凹位置に後退しており、該凹位置においてトリガボタン6の中央がケース2の近位端より下方に凹んでいる点。

(4)判断
<相違点について>
引用発明の、トリガボタン6の中央がケース2の近位端より下方に凹んでいることは、凹んでいる箇所がハウジングの近位端よりも下方に後退しているという意味において、ハウジング内に完全に後退していると表現することができる。
してみると、上記相違点は、実質的な相違点でない。

そうすると、本件補正発明は、引用発明である。

請求人は、審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】4.1.(3−12)において、引用文献1の図1−2の状態をトリガボタン6がハウジング内に完全に後退しているとはいわないと主張する。
そこで、仮に、凹位置にあるトリガボタン6に指で触れることができない程度に、トリガボタン6の上面全体がケース2内に側面視で全く見えないように没入していることを意味しているとして、以下検討する。
引用文献1には「トリガボタン6は凸位置にあるとき、使用者に対して、送達デバイス1を作動させることができるという視覚的なフィードバックを提供する」(段落【0029】)ことが記載されており、引用発明において、トリガボタン6が凹位置にあるときに、送達デバイスを作動させる状態でないことの視覚フィードバックをよりわかりやくすくするために、トリガボタン6の凹位置を、トリガボタン6の上面全体がケース2内に側面視で全く見えないように没入する程度とすること、すなわち、指で触ることができない程度の没入深さとすることは、当業者が設計上適宜になし得た程度のことである。
そして、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得た程度のものであって、格別なものでない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和 3年11月 2日提出の手続補正書により補正された請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、第2 [理由] 1(1)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
1.(新規性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
・請求項1
・引用文献1
<引用文献等一覧>
1.特表2015−530198号公報

3 引用文献1の記載、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載、引用発明は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明における「ハウジング内に完全に後退しており」に関して、「完全に」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものである本件補正発明は、前記第2[理由]2(4)に記載したとおり、引用発明であるか、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるのだから、同様の理由により、本願発明は、引用発明であるか、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3項に該当し特許を受けることができない、あるいは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 佐々木 正章
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2023-09-28 
結審通知日 2023-10-03 
審決日 2023-10-24 
出願番号 P2019-516429
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
P 1 8・ 113- Z (A61M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 村上 哲
安井 寿儀
発明の名称 薬剤送達デバイス  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  

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