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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1409454
総通号数 29 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-10 
確定日 2024-04-17 
事件の表示 特願2018−522738「インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼを阻害するための医薬組成物と方法、及びその適応」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月11日国際公開、WO2017/079669、平成30年11月 8日国内公表、特表2018−532756〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)11月4日(パリ条約による優先権主張 2015年11月4日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和2年10月 7日付け 拒絶理由通知書
令和3年 3月11日 意見書及び手続補正書の提出
同年 4月23日付け 拒絶査定
同年 9月10日 審判請求書の提出
同年11月04日 手続補正書(方式:審判請求書の理由の補充)の提出
令和5年 1月18日付け 拒絶理由通知書(当審)
同年 7月24日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜40に係る発明は、令和5年7月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1〜40に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりであると認められる。

「免疫チェックポイント分子インヒビターと1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物と組み合わせてがんの治療に用いるための、下記の化合物1
【化1】

またはその製薬学的に許容可能な塩と1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記治療が、遊離塩基換算で約400mg〜約600mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含む、医薬組成物。」

第3 当審における拒絶の理由
当審において令和5年1月18日付けで通知した拒絶の理由のうち、特許法第29条第2項進歩性)に係る[理由1]の概要は下記のとおりである。
[理由1](進歩性
本願の下記の請求項に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献については引用文献一覧を参照)
・請求項1〜41
・引用文献1(主引用例)、引用文献2〜7
<引用文献一覧>
1.国際公開第2015/119944号
2.特表2011−527686号公報
3.Trial watch: IDO inhibitors in cancer therapy, OncoImmunology, 2014, Volume3, Issue10, p.e957994-1〜e957994-10
4.「Phase I study of the safety, pharmacokinetics (PK), and pharmacodynamics (PD) of the oral inhibitor of indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO1) INCB024360 in patients (pts) with advanced malignancies.,「Journal of Clinical Oncology」, Published online May 20. 2013, Vol.31, No.15_suppl,p.3025, [検索日2023.01.05], URL:https://ascopubs.org/doi/10.1200/jco.2013.31.15_suppl.3025
5.岡山医学会雑誌,April 2013,第125巻,p.13-18
6.日薬理誌(Folia Pharmacol.Jpn),2013,Vol.142,p.85-887.Lancet,2014,Vol.384,p.1109-1117

第4 引用文献に記載された事項及び引用発明
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明

(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には以下の事項が記載されている。原文は外国語で記載されているので、必要に応じて当審合議体による日本語訳を記載する。なお、下線は当審合議体が付したものである。

「8.個体におけるがんの処置において、Programmed Death 1 protein(PD-1)のアンタゴニストと組み合わせて使用するためのIDO1阻害剤を含む医薬であって、前記IDO1阻害剤が、式I:

またはその薬学的に許容される塩:
ここで、Xは、

R1はCl,Br,CF3又はCN;R2はH又はF;及びR3はCl又はBrである、
を含む、医薬。」(p.61〜62、請求項8)
(当審注:IDO1はindoleamine 2,3-dioxygenase 1を意味する(引用文献1の[0001]を参照。))。

「22.前記IDO阻害剤が、4-({2-[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N'-ヒドロキシ-1,2,5-オキサジアゾール-3-カルボキシミドアミドである、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法、医薬又はキット。」(p.64、請求項22)

「[0001] 本発明は、がんの治療に有用な併用療法に関する。特に、本発明は、Programmed Death 1 protein(PD-1)のアンタゴニスト及びインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)の選択的阻害剤を含む併用療法に関する。
[0002] PD-1は、免疫調節及び末梢寛容の維持において重要であると認識されている。PD-1は、ナイーブT、B及びNKT細胞上で中程度に発現され、リンパ球、単球及び骨髄細胞上のT/B細胞受容体シグナル伝達によって上方調節される(1)。
・・・
[0005] IDO1は、免疫細胞機能を抑制表現型に調節し、したがって、宿主免疫監視からの腫瘍回避について部分的に説明可能である(17,18)。酵素インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、必須アミノ酸トリプトファンをキヌレニン及び他の代謝産物に分解する。これらの代謝産物及びトリプトファンの不足は、エフェクターT細胞機能の抑制及び制御性T細胞の分化の増強をもたらす(19-23)。抗CTLA-4、抗PD-1/抗PD-L1、及びアゴニスト抗GITRのような免疫療法抗体の抗腫瘍効果は、野生型マウスと比較してIDO欠損マウスにおいて有意に高かった(24)。これは、T細胞ベースの免疫療法が、IDO活性に起因して妨害され、そしてこの経路をブロックすることが、これらの抗体の治療可能性をブーストし得ることを示唆する。」([0001]〜[0005])

「[0006] INCB024360は、IDO1酵素活性の選択的阻害剤であり、単一の薬剤として、及び複数の癌のための他のモダリティと組み合わせて、Inctye社によって現在臨床開発中である(25,26)。
[0007] MK-3475は、IgG4/カッパアイソタイプの選択的ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であり、これは、単剤として、及び複数の癌のための他のモダリティと組み合わせて、Merckによって現在臨床開発中である。」([0006]〜[0007])

「[0058] 「PD-1アンタゴニスト」は、癌細胞上に発現したPD-L1の、免疫細胞(T細胞、B細胞又はNKT細胞)上に発現したPD-1への結合を遮断し、好ましくは癌細胞上に発現したPD-L2の免疫細胞発現PD-1への結合も遮断する任意の化合物又は生物学的分子を意味する。・・・。」([0058])

「[0091] いくつかの実施形態において、IDO阻害剤は、4-({2-[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N'-ヒドロキシ-1,2,5-オキサジアゾ−ル-3-カルボキシミドアミド(化合物I;INCB024360):又はその薬学的に許容される塩である。

」([0091])

「[0108] 本発明の併用療法における各治療剤は、標準的な薬務に従って、単独で、又は治療剤並びに1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び希釈剤を含む医薬(本明細書では医薬組成物とも呼ばれる)中で投与することができる。」([0108])

「[0124] MK-3475と組み合わせた式Iの化合物についての最適用量は、これらの薬剤の一方又は両方の用量漸増によって同定され得る。一実施形態では、MK-3475は、10mg/kgQ2W又はQ3Wの開始用量で投与され、式Iの化合物(例えば、INCB024360)は、25mgBID、50mgBID、100mgBID、又は300mgBIDの開始用量で投与される。開始用量の組合せが患者によって耐容されない場合、MK-3475の用量を2mg/kgQ2W又は2mg/kgQ3Wに減少させ、式Iの化合物(例えば、INCB024360)を25mgBIDで投与する。」([0124])
(当審注:BIDは1日2回、Q2Wは2週1回、Q3Wは3週1回を、それぞれ意味する(引用文献1の[0025]を参照。))。

「実施例1
固形腫瘍を有する患者の治療における本発明の組合せを評価する臨床試験
[0144] 本実施例は、様々な固形腫瘍及び進行性非小細胞肺癌(NSCLC)を呈する対象におけるMK-3475及びINCB024360の本発明の組合せの安全性、忍容性、及び有効性を評価するための進行中の第1/2相臨床試験を記載する。・・・。
[0147] 第1相用量漸増相は、3週間毎に2mg/kgのMK-3475と組み合わせて、25mgBID、50mgBID、及び100mgBIDの初回用量で1日2回(BID)のINCB024360で処置された対象のコホートを含む。1回の治療サイクルは21日からなる。最低3名の対象を各コホートに登録し、処置し、3名の対象すべてを最低42日間(6週間)観察した後、その後のコホートに登録を開始する。・・・研究対象コホートを要約すると以下のようになる。

研究コホート1及び2の結果に基づいて、INCB024360の用量漸増(例えば、2mg/kg MK-3475 IV Q3Wと組み合わせた100mg又は300 mg BID経口)もまた、評価され得る。」(実施例1のタイトル〜[0144]〜[0147])

「[0163] 以下の表3は、上記の第1相試験に登録された被験体の臨床応答に関連する評価可能な予備的有効性データ及び確認された予備的有効性データを示す。より具体的には、被験体を、第1/2相研究プロトコルに従って、表3に示されるようなINCB024360で処置した。プロトコルに従って、INCB024360をMK-3475と組み合わせて投与した。MK-3475を、記載されるように2mg/kgの用量で静脈内投与した。
表3 進行中の試験からの予備的臨床有効性データ
患者、n(%)

**NE:評価不可能:1人の被験体が、最初の研究中のスキャンの前に転倒により死亡した(処置に無関係)。
(当審注:表3中のCR、PR、SD及びPDは、それぞれ完全奏効(CR:complete response)、部分奏効(PR:partial response)、安定(SD:stable disease)及び進行(PD:progressive disease)を意味する。)
・・・
[0168] 以下の表4は、記載される研究において報告された、免疫関連AEを含む有害事象(AE)の予備データを提示する。
表4

(当審注:表4中のRash、Nausea、Cough、Diarrhea、Dyspnea、Pruritis、Headache、DVT(IJ)、Fatigue、Mild Infusion Reaction及びFallは、それぞれ発疹、悪心、咳、下痢、呼吸困難、そう痒症、頭痛、深部静脈血栓症(内頸)、疲労、穏やかな注入反応及び転倒を意味する。)
・・・
[0170] 上記の表3で観察されるように、結果は、予備的ではあるが、複数の腫瘍型に対して、そして特に、膀胱、黒色腫及び腎臓腫瘍を含む少なくとも3つの異なる腫瘍型に対して、本発明の併用療法の有望な抗腫瘍活性を示す。さらに、予備的結果は、研究において評価された被験体によって経験される主要な研究関連の有害事象又は免疫関連の有害事象を示さない。」
([0163]〜[0170])

(2)引用文献1に記載された発明(引用発明)
上記(1)、特に請求項8及び22、[0091]の記載から、引用文献1には、「個体におけるがんの処置においてProgrammed Death 1 protein(PD-1)のアンタゴニストと組み合わせて使用するための、
下記式

で示される化合物I(INCB024360)又はその薬学的に許容される塩である、indoleamine 2,3-dioxygenase 1(IDO1)阻害剤を含む医薬。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付したものである。

「【請求項14】
4−({2−[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)−N−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−N’−ヒドロキシ−1,2,5−オキサジアゾール−3−カルボキシミドアミドである化合物、またはその医薬的に許容される塩。」(【請求項14】)

「【0014】
本発明は、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼの活性を阻害する方法であって、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)を式Iの化合物、またはその医薬的に許容される塩と接触させることを含む方法、をさらに提供する。」(【0014】)

「【0031】
本発明は、固体形態の4−({2−[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)−N−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−N’−ヒドロキシ−1,2,5−オキサジアゾール−3−カルボキシミドアミドを含む組成物をさらに提供する(実施例1を参照)。組成物は、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約99重量%の固体形態を含み得る。組成物は、医薬的に許容される賦形剤を含有することができる。一部の実施形態において、固体形態は、実質的に精製される。」(【0031】)

「【0118】
本発明は、活性成分として、上記本発明の化合物のうちの1つ以上を、1つ以上の医薬的に許容される担体と併せて含有する医薬組成物も含む。本発明の組成物を形成する場合、活性成分は、通常、賦形剤と混合され、賦形剤で希釈されるか、または、カプセル、子袋、紙、または他の容器等の担体内に包含される。・・・。
・・・
【0120】
適切な賦形剤の一部の例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルギニン酸、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。・・・。」(【0118】〜【0120】)

「【0138】
実施例1
4−({2−[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)−N−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−N’−ヒドロキシ−1,2,5−オキサジアゾール−3−カルボキシミドアミド
【化16】

」(【0138】)

3 引用文献3に記載された事項
引用文献3には以下の事項が記載されている。原文は外国語で記載されているので、当審合議体による日本語訳を併記する。なお、下線は当審合議体が付したものである。

(摘記3a)
「Preclinical and Clinical Development of IDO1 Inhibitors for Cancer Therapy
During the last decade, 1-methyltryptophan, a competitive inhibitor of IDO1 (and IDO2) that exists as a mixture of chiral isoforms (i.e., 1-methyl-D-tryptophan and 1-methyl-L-tryptophan), and genetic interventions specifically targeting IDO1 have been shown to inhibit tumor growth in rodent tumor models, along with the (re)elicitation of an anticancer immune response.23,67,103-108 However, targeting IDO1 as a standalone therapeutic intervention often fail to cause tumor eradication and to prevent disease progression. Thus, IDO1-targeting agents have been investigated for their ability to improve the efficacy of multiple chemotherapeutics, and some combinatorial regimens of this type had promising results in preclinical scenarios.1,67,109
がん治療のためのIDO1阻害剤の前臨床及び臨床開発
過去10年間に、キラルアイソフォーム(すなわち、1-メチル-D-トリプトファン及び1-メチル-L-トリプトファン)の混合物として存在するIDO1(及びIDO2)の競合的阻害剤である1-メチルトリプトファン、及びIDO1を特異的に標的とする遺伝子介入は、抗がん免疫応答の(再)誘発と共に、げっ歯類腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を阻害することが示されている23,67,103-108。 しかしながら、単独の治療的介入としてIDO1を標的とすることは、多くの場合、腫瘍根絶を引き起こすこと及び疾患進行を予防することができない。 したがって、IDO1標的化剤は、複数の化学療法剤の有効性を改善するそれらの能力について調査されており、このタイプのいくつかの組合せレジメンは、前臨床シナリオにおいて有望な結果を有した1,67,109。」
(p.e957994-3左欄の「Preclinical and Clinical Development of IDO1 Inhibitors for Cancer Therapy」の項目の1段落)

(摘記3b)
「Preliminary results are also available from 2 distinct clinical trials assessing the safety and efficacy of INCB024360 in oncological indications (NCT01195311; NCT01604889).75,119,120 NCT01195311, which has been completed, was a Phase I, open-label, dose-escalation study to determine the safety, tolerability, pharmacokinetics and pharmacodynamics of INCB024360 in subjects with advanced malignancies. In this setting, 52 patients were enrolled to receive 50-700 mg INCB024360 p.o. twice a day in 28-d cycles until disease progression or inacceptable toxicity. The most frequent Grade 3 or 4 side effects were abdominal pain, hypokalemia, and fatigue (9.6% each) and 2 dose-limiting toxicities were recorded. Significant reduction in the circulating Kyn/Trp ratio were observed in all patients, but there were no objective responses.
予備的結果はまた、腫瘍学的適応症におけるINCB024360の安全性及び有効性を評価する2つの異なる臨床試験から入手可能である(NCT01195311;NCT01604889)。75,119,120 完了したNCT01195311は、進行性悪性腫瘍を有する対象におけるINCB024360の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を決定するための第I相非盲検用量漸増試験であった。 この設定において、52人の患者を登録して、疾患の進行または許容できない毒性まで、28日サイクルで1日2回、50-700mgのINCB024360をp.o.投与(当審注:経口投与)した。 最も頻繁なグレード3又は4の副作用は、腹痛、低カリウム血症、及び疲労(それぞれ9.6%)であり、2つの用量制限毒性を記録した。 循環Kyn/Trp比(当審注:キヌレニン/トリプトファン比)の有意な減少が全ての患者において観察されたが、客観的応答はなかった。」(p.e957994-3右欄2段落)

4 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、引用文献3で言及されている「NCT01195311」と称される臨床試験(摘記3b)について、以下の事項が記載されている。引用文献4は外国語で記載されているので、当審合議体による日本語訳を併記する。なお、下線は当審合議体が付したものである。

(摘記4a)
「Phase I study of the safety, pharmacokinetics (PK), and pharmacodynamics (PD) of the oral inhibitor of indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO1) INCB024360 in patients (pts) with advanced malignancies.
インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)の経口投与阻害剤であるINCB024360の安全性、薬物動態(PK)、及び薬力学(PD)について、進行した悪性腫瘍の入院患者(pts)を対象とした第I相試験。」(文献タイトル)

(摘記4b)
「Background: INCB024360 is a potent, selective inhibitor of IDO1. As the catabolism of tryptophan (Trp) to kynurenine (Kyn) by IDO1 inhibits immune responses and IDO1 expression is elevated in many human cancers, IDO1 inhibition may potentiate effective antitumor immune responses.」
背景:INCB024360はIDO1の強力な選択的阻害剤である。IDO1によるトリプトファン(Trp)のキヌレニン(Kyn)への異化作用は免疫応答を阻害し、IDO1の発現は多くのヒトの癌で上昇するため、IDO1の阻害は有効な抗腫瘍免疫応答を増強する可能性がある。」(Abstractの「Background」の項目)

(摘記4c)
「Methods: This dose-escalation study in adult pts with advanced malignancies used a 3+3 design to determine MTD, toxicity, PK, PD, and tumor response rate. Daily doses of INCB024360 were evaluated in 28-day cycles in 8 cohorts (50mg once daily; 50mg, 100mg, 300mg, 400mg, 500mg, 600mg, or 700mgBID).Treatment continued until disease progression or unacceptable toxicity. PK and PD samples were drawn on days 1 and 15.
方法:進行性悪性腫瘍の成人患者を対象としたこの用量漸増研究では、3+3計画を使用して、MTD、毒性、PK、PD、及び腫瘍反応率を決定した。INCB024360の1日用量は、8つのコホートで、28日サイクルで評価された(50mgを1日1回;50mg、100mg、300mg、400mg、500mg、600mg又は700mgをBID(当審注:1日2回))。治療は、疾患の進行又は許容できない毒性が現れるまで継続された。PK(当審注:薬物動態)及びPD(当審注:薬力学)サンプルは、1日目と15日目に採取された。」(Abstractの「Methods」の項目)

(摘記4d)
「Results: 52 pts have been treated. Tumor types included colorectal (56%), melanoma (12%), and other(33%). The most common adverse events (≧20%) were fatigue, nausea, decreased appetite, vomiting, constipation, abdominal pain, diarrhea, dyspnea, back pain, and cough. The most common grade 3 or 4 adverse events were abdominal pain, hypokalemia, and fatigue (9.6% each). One DLT each was observed at 300 mg BID (grade 3 radiation pneumonitis) and 400mg BID (grade 3 fatigue); no DLTs were observed in the 18 pts treated with 600 mg or 700 mg BID. There were no objective responses. At 56 days, stable disease was seen in 15 patients and lasted ≧112 days in 7 patients. Significant dose-dependent reductions in plasma Kyn/Trp ratios and Kyn levels were detected at all doses and in all pts. Maximal effects were observed at doses ≧300 mg BID. With repeat dosing, 700 mg BID provided an average plasma concentration 〜5-fold the projected IC90. Overall, doses ≧300 mg BID achieved greater than 90% inhibition of IDO1 throughout the dosing period.
結果:52人の患者が治療された。腫瘍の種類には、結腸直腸(56%)、メラノーマ(12%)、及びその他(33%)が含まれていた。最も一般的な有害事象(20%以上)は、疲労、吐き気、食欲減退、嘔吐、便秘、腹痛、下痢、息苦しさ、背中の痛み、咳であった。最も一般的なグレード3又は4の有害事象は、腹痛、低カリウム血症、及び疲労(それぞれ9.6%)であった。300mgBID(グレード3 放射線肺炎)及び400mgBID(グレード3 疲労)で、それぞれ1人のDLT(当審注:用量制限毒性)が観察された。600mg又は700mgBIDで治療された18人の患者では、DLT(用量制限毒性)は観察されなかった。客観的な応答はなかった。56日の時点で、15人の患者で安定した疾患が見られ、7人の患者で112日以上持続した。血漿Kyn/Trp比(当審注:キヌレニン/トリプトファン比)及びKynレベル(当審注:キヌレニンレベル)の有意な用量依存的減少が、全ての用量及び全ての患者で検出された。最大の効果は、300mgBID以上の用量で観察された。反復投与により、700mgBIDでは、予測されたIC90(90%阻害濃度)の5倍程度の平均血漿濃度が得られた。全体として、300mgBID以上の用量において、投与期間全体でIDO1の90%を超える阻害が達成された。」(Abstractの「Results」の項目)

(摘記4e)
「Conclusions: INCB024360 was generally well tolerated at doses of up to 700mg BID and there appears to be no correlation of dose with toxicity. Doses≧300mg BID were capable of >90% inhibition of IDO1 activity and found to effectively normalize plasma Kyn levels. The recommended dose as monotherapy is 600mg BID. Clinical trial information: NCT01195311.
結論:INCB024360は一般に最大700mgBIDの用量まで忍容性が良好であり、用量と毒性との相関関係はないようである。300mgBID以上の用量は、IDO1活性の90%を超える阻害が可能であり、血漿Kynレベル(キヌレニンレベル)を効果的に正常化することがわかった。単剤療法として推奨される用量は600mgBIDである。臨床試験情報:NCT01195311。」(Abstractの「Conclusions」の項目)

5 引用文献5に記載された事項
引用文献5には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付したものである。
(摘記5a)
「免疫チェックポイント制御とがん免疫治療
・・・
要旨
がんワクチンによる免疫治療では,如何にCD8T細胞を感作(プライミング)しその数を増やすか(免疫増強)という点に多大の努力が払われて来た.樹状細胞への抗原デリバリーと抗原プロセシング/提示,Toll様受容体などの刺激,即ち自然免疫系の活性化の併用などはそれに該当する.・・・癌組織内での繰り返す抗原認識の過程でT細胞は疲弊し,次第に本来あるべき機能を喪失していく.この疲弊(exhaustion)と呼ばれる現象は,T細胞に発現する複数の免疫抑制性分子−免疫チェックポイント分子−と腫瘍に発現するそのリガンドの結合によってもたらされる.代表的なチェックポイント分子の機能を抑制し,エフェクターT細胞が疲弊することなくその機能を長く維持できれば,これからのがん免疫治療に飛躍的な進展がみられるかもしれない.」(p.13の文献タイトル〜「要旨」の項目)

(摘記5b)
「Programmed cell death protein 1(PD1)経路
PD1分子もT細胞の活性化に伴い発現してくる分子であり,同分子が発現されるとT細胞の活性状態に歯止めをかける.・・・CTLA4はリンパ組織におけるT細胞の活性化を制御するのに対し,PD1は腫瘍などの組織におけるエフェクターT細胞の機能を制御し,末梢組織における炎症を制御する機構である.腫瘍組織などの場合は長期にわたり慢性的に抗原刺激が入っており,浸潤T細胞には非常に高いレベルのPD1が発現している.・・・.」(p.15の「Programmed cell death protein 1(PD1)経路」の項目)

(摘記5c)
「抗PD1抗体によるPD1抑制経路のブロック
上述の理由から,抗PD1抗体によりPD1経路をブロックできれば腫瘍組織内における免疫応答を維持・強化できる可能性がある.実際,PD1,PDL1,PDL2欠損マウスモデルの実験では抗腫瘍効果が認められる一方,有り難いことにCTLA4欠損マウスのような副作用は認められていない11-13).ヒト臨床研究でも同様の事実が報告されている.即ち,抗PD1抗体の効果は,CTLA4に対する抗体と比較して副作用が軽い一方,同等以上の抗腫瘍効果が見られたとされる.大腸がん,肺がん,腎臓がん,メラノーマにおいて腫瘍の完全拒絶を含めた効果が観察された14).・・・2年間に及ぶ抗体投与では,75%の患者で完全寛解を含む何らかの治療効果が見られたという.副作用が軽いため長期にわたる投与が可能であることが抗PD1抗体の大きな魅力である.」(p.15の「抗PD1抗体によるPD1抑制経路のブロック」の項目)

(摘記5d)


」(p.17の「図1」)

6 引用文献6に記載された事項
引用文献6には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付したものである。

(摘記6a)
「1)腫瘍細胞に発現するIDO1による免疫抑制機構
腫瘍細胞に高発現しているIDO1酵素誘導による結果として,腫瘍細胞内および腫瘍細胞周辺でのTrpの枯渇によるストレスが免疫反応を調節していると考えられている.IDO1活性の上昇によりもたらされるTrpの減少は,細胞内でのアミノ酸の減少に従って遊離t-RNAを増加,さらにはGCN2キナーゼ(generalcontrol non-depressive 2 kinase)の活性化をもたらす.IDO1の活性増加によりもたらされるTrp枯渇により腫瘍細胞周辺に存在するT細胞は大きな影響をうける.つまり,GCN2キナーゼの活性化によりT細胞は細胞周期をG1期に停止させる.さらにTrp減少による免疫抑制機能に加えて,産生されるKYNなどのTrp代謝産物の影響も示されている.KYNに代表されるTrp代謝産物がin vitro において,T細胞の増殖に関与していることが明らかとなっており,代謝産物の細胞毒性によりT細胞やNK細胞などの増殖抑制あるいは細胞死が誘導される(1).上述の通り,IDO1誘導が腫瘍細胞を攻撃する役割を持つT細胞の増殖抑制や細胞死誘導をもたらすことで免疫抑制に働いている(図3a).」(p.86右欄最終段落〜p.87左欄1段落)。
(当審注:TrpはTryptophan、KYNはKynurenineを意味する。)

(摘記6b)


」(p.87の「図3」)

7 引用文献7に記載された事項
引用文献7には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付したものである。
(摘記7a)
「Pembrolizumab(MK-3475,previously known as lambrolizumab) is a highly selective, humanized monoclonal IgG4-kappa isotype antibody against PD-1 that has shown robust clinical activity with an acceptable safety profile.」(p.1109右欄下から2行〜p.1110左欄3行)

8 上記各引用文献の記載から、化合物I(INCB024360)及び臨床試験に関する事項をまとめると、以下のようになる。

(1)化合物I(INCB024360)の作用について
「化合物I(INCB024360)」はIDO1酵素活性(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1酵素活性)の選択的阻害剤であり、単剤として、及び複数の癌に対する他の治療手段(modalities)と組み合わせて臨床開発中である(引用文献1の[0006])。
上記IDO1は必須アミノ酸トリプトファンをキヌレニン及び他の代謝産物に分解する酵素であり、IDO1誘導が腫瘍細胞を攻撃する役割を持つT細胞の増殖抑制や細胞死誘導をもたらすことで、免疫抑制に働いている(引用文献6の摘記6a及び6b)。
そして、IDO1阻害により、トリプトファンを代謝する経路をブロックすると、抗PD-1抗体(PD-1アンタゴニスト)等の免疫療法抗体の治療可能性をブーストし得ることが示唆されている(引用文献1の[0005])。

(2)MK-3475と化合物I(INCB024360)を組み合わせて投与した臨床試験について
「MK-3475」は選択的ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(当審注:抗PD-1抗体、PD-1アンタゴニスト)である(引用文献1の[0007]、[0058])。
そして、引用文献1には、MK-3475(3週間毎に2mg/kgの用量)と組み合わせて、「化合物I(INCB024360)」を25mgBIDで経口投与(研究コホート1)、及び50mgBIDで経口投与(研究コホート2)した臨床試験において、複数の腫瘍型に対して有望な抗腫瘍活性が示され、主要な有害事象は示されず、これらの結果に基づいて、「化合物I(INCB024360)」の用量漸増(例えば、2mg/kg MK-3475 IV Q3Wと組み合わせた100mg又は300mgBID経口)も評価され得ることが記載されている(引用文献1の[0144]〜[0147]、[0163]〜[0170])。
さらに、引用文献1には、MK-3475と組み合わせた「化合物I(INCB024360)」の最適用量を同定するための一実施形態として、MK-3475は10mg/kgQ2W又はQ3Wの開始用量で投与し、「化合物I(INCB024360)」は、25mgBID、50mgBID、100mgBID又は300mgBIDの開始用量で投与して用量漸増することが記載されている(引用文献1の[0124])。

(3)臨床試験(NCT01195311)について
「NCT01195311」と称される臨床試験は、IDO1の経口投与阻害剤である「化合物I(INCB024360)」の安全性及び有効性を評価する臨床試験である(引用文献3の摘記3b、引用文献4の摘記4a)。
そして、上記臨床試験(NCT01195311)において、28日サイクルで「化合物I(INCB024360)」50mgを1日1回、50mg、100mg、300mg、400mg、500mg、600mg又は700mgBIDで経口投与した際に、全ての用量及び全ての患者で血漿キヌレニン/トリプトファン比及びキヌレニンレベルの有意な用量依存的減少が検出されたという結果(引用文献4の摘記4d)は、上記(1)で説示したIDO1の作用からみて、50mg-700mgBIDの経口投与用量で、IDO1酵素活性が有意に用量依存的に阻害されたことを意味している。
また、上記臨床試験(NCT01195311)では、最大の効果は300mgBID以上の経口投与用量で観察され、最大700mgBIDの経口投与用量まで忍容性が良好であることが示された(引用文献4の摘記4d及び4e)。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願明細書の「いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子インヒビターは、PD−1のインヒビター、例えば、抗PD−1モノクローナル抗体である。」(【0163】)という記載、引用文献1の「PD-1アンタゴニストは、・・・PD-1への結合を遮断し、・・・PD-1への結合も遮断する任意の化合物又は生物学的分子を意味する。」([0058])という記載、及び引用文献5の記載(摘記5a〜摘記5d)から、引用発明の「Programmed Death 1 protein(PD-1)のアンタゴニスト」は、本願発明の「免疫チェックポイント分子インヒビター」に相当する。
また、本願明細書の「酵素のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(INDO、IDOまたはIDO1としても知られている)は、L−トリプトファンがN−ホルミル−キヌレニンに分解される際の第一段階かつ律速段階を触媒する。」(【0003】)という記載、及び「IDOインヒビターの4−({2−[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)−N−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−N’−ヒドロキシ−1,2,5−オキサジアゾール−3−カルボキシイミドアミド(化合物1)」(【0019】)という記載から、本願発明の化合物1はIDO1阻害剤であり、引用発明の「下記式・・・で示される化合物I(INCB024360)又はその薬学的に許容される塩である、indoleamine 2,3-dioxygenase 1(IDO1)阻害剤」は、本願発明の「下記の化合物1・・・またはその製薬学的に許容可能な塩」に相当する。
そして、引用文献1の「本発明は、がんの治療に有用な併用療法に関する。」([0001])という記載から、引用発明の「個体におけるがんの処置」は、本願発明の「がんの治療」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、下記のとおりであると認められる。

<一致点>
「免疫チェックポイント分子インヒビターと組み合わせてがんの治療に用いるための、下記の化合物1
【化1】

またはその製薬学的に許容可能な塩を含む医薬。」の発明である点。

<相違点1>
本願発明1では、「免疫チェックポイント分子インヒビター」及び「化合物1」が、それぞれ1つ以上の賦形剤を含む医薬組成物の形態であることが特定されているのに対し、引用発明1ではこのような特定がされていない点。

<相違点2>
本願発明1では、「がんの治療」が「遊離塩基換算で約400mg〜約600mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含む」ことが特定されているのに対し、引用発明1ではこのような特定がされていない点。

なお、以下では、引用発明の「Programmed Death 1 protein(PD-1)アンタゴニスト」及び「indoleamine 2,3-dioxygenase 1(IDO1)阻害剤」をそれぞれ「PD-1アンタゴニスト」及び「IDO1阻害剤」と略して記載する。

第6 判断
1 相違点1について
引用文献1には、各治療剤は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び希釈剤を含む医薬(医薬組成物とも呼ばれる)中で投与することができることが記載されている([0108])。
また、引用文献2には、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼの活性を阻害する「4−({2−[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)−N−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−N’−ヒドロキシ−1,2,5−オキサジアゾール−3−カルボキシミドアミドである化合物、またはその医薬的に許容される塩」を、医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態にすることが記載されており(【請求項14】、【0014】、【0031】、【0118】〜【0120】、【0138】)、上記カルボキシミドアミドは、引用発明の「化合物I(INCB024360)」に相当する。
そして、医薬分野において、治療剤を各種の賦形剤とともに医薬組成物の形態で使用することは常套手段であるから、引用発明の治療剤である「PD-1アンタゴニスト」及び「下記式・・・で示される化合物I(INCB024360)又はその薬学的に許容される塩である、indoleamine 2,3-dioxygenase 1(IDO1)阻害剤」について、それぞれを1つ以上の賦形剤を含む医薬組成物の形態にして、引用発明を相違点1に係る本願発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎないといえる。

2 相違点2について
上記第4の8(2)で説示したように、引用文献1には「化合物I(INCB024360)」の開始用量として「300mgBID」が記載されており、この記載は、「PD1アンタゴニスト」である「MK-3475」と組み合わせる「化合物I(INCB024360)」の経口投与用量を300mgBIDから開始して用量漸増することによって最適用量の決定を試みることを示唆するものである。
そして、上記第4の8(3)で説示したように、臨床試験(NCT01195311)において、「化合物I(INCB024360)」の50mg-700mgBIDの経口投与用量でIDO1活性が有意に用量依存的に阻害され、最大の効果は300mgBID以上の用量で観察され、最大700mgBIDの用量まで忍容性が良好であることも示されたのであるから、引用発明において、「PD1アンタゴニスト」と組み合わせる「化合物I(INCB024360)」の経口投与の開始用量を300mgBIDとして700mgBID程度まで漸増させて最適な用量範囲を検討し、「化合物I(INCB024360)」の投与レジメンを「遊離塩基換算で約400mg〜約600mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメン」に決定して、引用発明を相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎないといえる。
さらに、本願明細書の記載を参酌しても、上記「約400mg〜約600mg」という用量範囲に臨界的意義があるとは認められない。

3 上記1、2のとおりであるから、引用発明を、相違点1、2に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

4 本願発明の効果について
(1)本願明細書には、「実施例3.MK−3475と組み合わせた化合物1」において、25mgBID、50mgBID、100mgBID又は300mgBID経口投与用量の「化合物1」を、「MK−3475(ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ及びKeytruda(登録商標)としても知られている)」と組み合わせて、各種のがん治療に適用した臨床試験結果が記載されているが、この臨床試験における「化合物1」の経口投与用量(1日2回)は、本願発明で特定される「約400mg〜約600mg」ではないのであるから、上記実施例3は、本願発明の実施例ではない。

(2)ここで、本願優先日当時、MK-3475の別名称がペムブロリズマブ、ランブロリズマブであることは知られていたので(引用文献7の摘記7a)、本願明細書の実施例3の「MK−3475」は、引用文献1の実施例1で用いられた「PD1アンタゴニスト」である「MK-3475」と同一の抗PD-1抗体であると解される。
そして、本願発明の「化合物1」すなわち引用発明の「化合物I(INCB024360)」の25mgBID、50mgBID、100mgBID又は300mgBID経口投与用量は、いずれも引用文献1に記載されている用量であり([0147]等)、上記第4の8で説示した化合物I(INCB024360)及び臨床試験に関する事項から、上記(1)の臨床試験結果(実施例3)は、当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

(3)また、本願明細書には、本願発明の「遊離塩基換算で約400mg〜約600mgの化合物1またはその製薬学的に許容可能な塩を1日に2回、経口投与することを含む投与レジメンを含む」医薬組成物を、実際に「MK-3475」等の「免疫チェックポイント分子インヒビター」を含む医薬組成物と組み合わせて、がんの治療に適用した臨床試験及びその結果について、すなわち本願発明の実施例及びその結果についての記載はないのであるから、本願発明により、当業者が予測し得ない顕著な効果が得られたとはいえない。

5 請求人の主張について
請求人は、令和5年7月24日提出の意見書において、下記(1)〜(3)の趣旨の主張をしているので、順次検討する。

(1)引用文献1は、当業者に、本願発明のような免疫チェックポイント分子インヒビターと組み合わせて、約400mg〜約600mgの用量で化合物1を1日2回投与する理由も動機も与えていない。当業者は、用量の増加は安全性に悪影響を与える可能性があることを認識しているため、なんらかの動機がなければ、引用文献1に開示されている1日2回の300mgの用量を超えることはない。

上記(1)の主張について検討する。
上記第4の8(2)及び上記2で説示したように、引用文献1には「化合物I(INCB024360)」の経口投与用量を300mgBIDから開始して用量漸増することによって最適用量の決定を試みることを示唆する記載があるので、「引用文献1に開示されている1日2回の300mgの用量を超える」動機付けがあることは明らかである。
そして、上記第4の8(3)及び上記2で説示したように、引用発明の、「PD1アンタゴニスト」と組み合わせる「化合物I(INCB024360)」の経口投与用量について、開始用量を300mgBIDとして700mgBID程度まで漸増させて最適な範囲を検討し、「約400mg〜約600mg」(1日に2回)に決定することは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。
よって、上記(1)の主張を採用することはできない。

(2)引用文献3に開示されている2番目の研究は、切除不能または転移性メラノーマを有する被験者においてイピリムマブと化合物1を組み合わせて試験した第I/II相ランダム化盲検プラセボ対照研究であり、この研究では、1日2回投与される25mg又は300mgのみの用量の化合物1が用いられている(p.e957994-3右欄の2段落)。しかしながら、イピリムマブと組み合わせて300mgの化合物1を1日2回投与した患者集団の70%を超える患者集団、及びイピリムマブと組み合わせて25mgの化合物1を1日2回投与した患者集団の10%を超える患者集団に副作用が報告されている引用文献3の教示に基づいて、300mgの1日2回用量を超えようという動機付けは得られない。

上記(2)の主張について検討する。
引用文献3に記載されているイピリムマブは抗CTLA-4抗体であり(本願明細書の【0165】)、引用発明の「PD1アンタゴニスト」ではない。
そして、PD-1とCTLA-4はいずれも免疫チェックポイント分子であるが、抗PD-1抗体等の「PD1アンタゴニスト」と抗CTLA-4抗体とでは、免疫応答を維持・強化する経路が異なっており、本願優先日当時、抗PD1抗体の効果は、CTLA4に対する抗体と比較して副作用が軽い一方,同等以上の抗腫瘍効果が見られ、副作用が軽いため長期にわたる投与が可能であることが抗PD1抗体の大きな魅力であるという知見が報告されていた(引用文献5の摘記5a〜摘記5d、特に摘記5c)。
そうすると、引用文献3に記載されている、イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)と組み合わせた「化合物I(INCB024360)」の臨床試験における副作用の報告を参酌しても、「PD1アンタゴニスト」と「化合物I(INCB024360)」を組み合わせた場合でも同様の副作用を生ずるかは不明であるから、引用発明において、「PD1アンタゴニスト」と組み合わせて用いる「化合物I(INCB024360)」の経口投与用量について、開始用量を300mgBIDとして700mgBID程度まで漸増させて最適な範囲を検討すること(上記2)に阻害要因があるとはいえない。
よって、上記(2)の主張を採用することはできない。

(3)免疫チェックポイント分子インヒビターである抗PD-1抗体であるレチファンリマブと組み合わせてエパカドスタット(化合物1)を用いる第1b相試験では、固形腫瘍を患う患者3人からなる2つのグループ(グループ1およびグループ2)に、100mgBID又は600mgBIDのエパカドスタット(化合物1)と組み合わせてレチファンリマブ(500mgQ4W)を投与した。グループ1の患者には100mgBIDのエパカドスタット(化合物1)を投与し、一方、グループ2の患者には600mgBIDのエパカドスタット(化合物1)を投与した。グループ2の患者は、治療8日目の時点で、血漿キヌレニンレベルの低下が、グループ1の3人の患者と比較して大きいことを示した。600mgBIDのエパカドスタット(化合物1)によるこれらの効果は、ほとんどの患者で持続することが判明し、最大4か月間持続したケースもあった。このことは、エパカドスタット(化合物1)の高用量投与により、予想外に高いレベルのIDO1阻害作用が持続的に得られたことを示唆している。
そして、600mgBIDのエパカドスタット(化合物1)による血漿キヌレニンレベルの低下は、別の抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(MK-3475、200mg/kgQ3W)と300mgBIDのエパカドスタット(化合物1)を組み合わせた以前の臨床試験の結果に基づくと驚くべきことである。

上記(3)の主張について検討する。
上記「免疫チェックポイント分子インヒビターである抗PD-1抗体であるレティファンリマブと組み合わせてエパカドスタット(化合物1)を用いる第1b相試験」及びその結果は、いずれも審判請求の理由(令和3年11月4日提出の手続補正書(方式))において、本願の出願後に提示されたものであり、上記「抗PD-1抗体であるレティファンリマブ」は、本願明細書には具体的に記載されていない免疫チェックポイント分子インヒビターである。
そして、本願明細書には、レティファンリマブと組み合わせた際に、エパカドスタット(化合物1)の高用量投与により、予想外に高いレベルのIDO1阻害作用が持続的に得られたという効果や、600mgBIDのエパカドスタット(化合物1)による血漿キヌレニンレベルの低下は、別の抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(MK-3475、200mg/kgQ3W)と300mgBIDのエパカドスタット(化合物1)を組み合わせた以前の臨床試験の結果に基づくと驚くべきことであることについての記載はないのであるから、本願の出願後に提示された上記第1b相試験の結果を、本願発明の効果として参酌することはできない。
仮に、上記第1b相試験の結果を参酌したとしても、上記第1b相試験のグループ1の投与レジメンとグループ2の投与レジメンとは、レティファンリマブ(500mgQ4W)の用量は同一であって、エパカドスタット(化合物1)の投与量のみが異なっており、グループ2(600mgBID)の方がグループ1(100mgBID)よりも、化合物1の用量が多いのであるから、グループ2の患者の血漿キヌレニンレベルの減少の程度がグループ1の患者の血漿キヌレニンレベルの減少の程度と比べて大きかった等の効果は、化合物1(INCB024360)の50mg-700mgBIDの経口投与用量で血漿キヌレニンレベルの有意な用量依存的減少が検出されたこと(引用文献4の摘記4d)から当業者が予測し得た程度の効果にすぎず、格別顕著な効果であるとはいえない。
そして、上記第1b相試験のレティファンリマブは、引用文献1の実施例1で用いられたMK-3475とは異なる抗PD-1抗体であり、レティファンリマブと600mgBIDのエパカドスタット(化合物1)の組合せによる効果が、エパカドスタット(化合物1)の用量を600mgBIDまで増加したことによる効果、あるいは抗PD-1抗体をMK-3475からレティファンリマブに変更したことによる効果のいずれであるのか不明であるので、本願の出願後に提示された上記第1b相試験の結果は、エパカドスタット(化合物1)の用量を「遊離塩基換算で約400mg〜約600mg」で「1日に2回、経口投与」に特定したことに起因する、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を示すものであるとはいえない。
仮に、上記第1b相試験の結果が、エパカドスタット(化合物1)の上記用量に起因する効果を示すものであるとしても、レティファンリマブ以外の、本願発明の「免疫チェックポイントインヒビター」の全てについても同様の効果が得られるのかは不明である。
よって、上記(3)の主張を採用することはできない。

6 まとめ
上記1〜5のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)、及び引用文献1〜7に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 原田 隆興
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2023-11-16 
結審通知日 2023-11-21 
審決日 2023-12-06 
出願番号 P2018-522738
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 前田 佳与子
吉田 佳代子
発明の名称 インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼを阻害するための医薬組成物と方法、及びその適応  
代理人 落合 康  
代理人 松谷 道子  

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