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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1409539
総通号数 29 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-06 
確定日 2024-04-17 
事件の表示 特願2019−211918「協同的結合に関与する化合物及びその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月23日出願公開、特開2020−63256〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)1月8日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年1月9日 米国(US)〕を国際出願日とする出願の一部を令和元年11月25日に新たな特許出願としたものであって、同年12月24日に上申書が提出されるとともに手続補正がされ、さらに、令和2年2月20日に上申書が提出されるとともに手続補正がされ、令和3年1月15日付けの拒絶理由通知に対し、同年7月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年12月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和4年5月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年6月7日に手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 令和4年5月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和4年5月6日にされた手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
令和4年5月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、以下の(A)の記載から(B)の記載とするものであって、補正前の請求項1を補正後の請求項1とする補正事項(以下「補正事項a」という。)、及び、補正前の請求項8を補正後の請求項8とする補正事項(以下「補正事項b」という。)を含むものである。(下線部は補正部分である。)

(A) 補正前
「 【請求項1】
14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物であって、前記マクロ環式化合物が、
(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分であって、
【化1】

(式中、uは、1〜20の整数であり、かつ
各Yは、独立して、任意のアミノ酸、又は式X,XII,又はXIII:
【化2】

(ここで、
各R21及びR22は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択的に置換されたヒドロキシル、任意選択的に置換されたアミノであり、又はR20及びR21は、組み合わせて、=O、又は任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルを形成し、かつ各R27、R28、R29、及びR30は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択的に置換されたヒドロキシル、任意選択的に置換されたアミノ、又は任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルを形成する)のいずれか1つで示される構造を有する)で示される構造式を有し、
前記哺乳動物標的タンパク質相互作用部分は、
【化3】

からなるものではない、哺乳動物標的タンパク質相互作用部分と、
(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分であって、
【化4】

(式中、о及びpは、それぞれ独立して0,1又は2であり、
qは0〜7の整数であり、
s及びtは、それぞれ独立して、0〜7の整数であり、
X4及びX5は、それぞれ独立して、不在、CH2、O、S、SO、SO2、又はNR11であり、X6及びX7は、それぞれ独立して、O、S、SO、SO2、又はNR19であり、各R6及びR7は、独立して、水素、ヒドロキシル、任意選択的に置換されたアミノ、ハロゲン、チオール、任意選択的に置換されたC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルキニル、任意選択的に置換されたC1〜C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたC3〜C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6〜C10アリール、任意選択的に置換されたC6〜C10アリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリルC1〜C6アルキルであり、又はR6及びR7は、それらが結合された炭素原子と組み合わせてC=Oを形成し、各R8は、独立して、ヒドロキシル、任意選択的に置換されたアミノ、ハロゲン、チオール、任意選択的に置換されたC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルキニル、任意選択的に置換されたC1〜C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたC3〜C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6〜C10アリール、任意選択的に置換されたC6〜C10アリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリルC1〜C6アルキルであり、又は2つのR8は、組み合わせて、任意選択的に置換されたC3〜C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6〜C10アリール、もしくは任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリールを形成し、R14は、水素、ヒドロキシル、任意選択的に置換されたC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルキニル、任意選択的に置換されたC1〜C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたC3〜C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6〜C10アリール、任意選択的に置換されたC6〜C10アリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリルC1〜C6アルキルであり、R15及びR17は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、又は任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルであり、R16及びR18は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、任意選択的に置換されたアミノ、ハロゲン、チオール、任意選択的に置換されたC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルキニル、任意選択的に置換されたC1〜C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたC3〜C10カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6〜C10アリール、任意選択的に置換されたC6〜C10アリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリール、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロアリールC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリル、もしくは任意選択的に置換されたC2〜C9ヘテロシクリルC1〜C6アルキルであり、
R19は、水素、任意選択的に置換されたC1〜C6アルキル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2〜C6アルキニル、任意選択的に置換されたC6〜C10アリール、C3〜C7カルボシクリル、任意選択的に置換されたC6〜C10アリールC1〜C6アルキル、及び任意選択的に置換されたC3〜C7カルボシクリルC1〜C6アルキルである)で示される構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分と、を含み、前記プレゼンタータンパク質結合部分はFKBPファミリーのメンバーに結合する、マクロ環式化合物、及びその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
前記FKBPファミリーのメンバーはFKBP12である、請求項1に記載のマクロ環式化合物、及びその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
前記哺乳動物標的タンパク質相互作用部分はCEP250に結合する、請求項1又は2に記載のマクロ環式化合物、及びその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
前記マクロ環式化合物とFKBP12はCEP250に特異的に結合する複合体を形成し、前記複合体は、前記複合体の形成の不在下での前記マクロ環式化合物及びFKBP12に対するCEP250に対する親和性の少なくとも5倍の親和性で前記CEP250に結合する、請求項3に記載のマクロ環式化合物、及びその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記プレゼンタータンパク質結合部分は、
【化5】



から選択される構造式からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物、及びその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
前記マクロ環式化合物は、
【化6】


から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物、及びその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
前記プレゼンタータンパク質がプロリルイソメラーゼである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマクロ環式化合物と、プレゼンタータンパク質とからなる、プレゼンタータンパク質/化合物複合体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容可能な賦形剤とを含有する、医薬組成物。」

(B) 補正後
「 【請求項1】
14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物であって、前記マクロ環式化合物が、
(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分であって、
【化1】

(式中、uは、1〜20の整数であり、かつ
各Yは、独立して、任意のアミノ酸、又は式X,XII,又はXIII:
【化2】

(ここで、
各R21及びR22は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択的に置換されたヒドロキシル、任意選択的に置換されたアミノであり、又はR21及びR22は、組み合わせて、=O、又は任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルを形成し、かつ各R27、R28、R29、及びR30は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択的に置換されたヒドロキシル、任意選択的に置換されたアミノ、又は任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルを形成する)のいずれか1つで示される構造を有する)で示される構造式を有し、前記哺乳動物標的タンパク質相互作用部分は、
【化3】


からなるものではない、哺乳動物標的タンパク質相互作用部分と、
(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分であって、
【化4】

(式中、о及びpは、それぞれ独立して0,1又は2であり、
s及びtは、それぞれ独立して、0〜7の整数であり、
R14は、任意選択的に置換されたフェネチル基であり、R16及びR18は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、または、任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルである)で示される構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分と、を含み、前記プレゼンタータンパク質結合部分はFKBPファミリーのメンバーに結合する、マクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
前記FKBPファミリーのメンバーはFKBP12である、請求項1に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
前記哺乳動物標的タンパク質相互作用部分はCEP250に結合する、請求項1又は2に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
前記マクロ環式化合物とFKBP12はCEP250に特異的に結合する複合体を形成し、前記複合体は、前記複合体の形成の不在下での前記マクロ環式化合物及びFKBP12に対するCEP250に対する親和性の少なくとも5倍の親和性で前記CEP250に結合する、請求項3に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記プレゼンタータンパク質結合部分は、
【化5】

から選択される構造式からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
前記マクロ環式化合物は、
【化6】


から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
前記プレゼンタータンパク質がプロリルイソメラーゼである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマクロ環式化合物と、プレゼンタータンパク質とからなる、プレゼンタータンパク質/化合物複合体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含有する、医薬組成物。」

2 補正の目的
(1) 請求項1についての補正事項aは、補正前の発明を特定するために必要な事項である「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」及び「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」を含む「マクロ環式化合物」と「その薬学的に許容可能な塩」(以下「・・・化合物」及び/又は「その薬学的に許容可能な塩」を合わせて「・・・化合物類」といい、「・・・」は記載の省略を表す。)について、「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」に関する誤記の訂正と、「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」の置換基及び分子骨格を限定し、「マクロ環式化合物」と「その薬学的に許容可能な塩」の関係を訂正するものである。
すなわち、「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」において、「組み合わせて、=O、又は任意選択的に置換されたC1〜C6アルキルを形成」する置換基が「R20及びR21」であることから、「R21及びR22」であることへの補正は、「組み合わせて=O」を形成し得る点から、誤記の訂正といえる。また、「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」において、補正前の「о及びp」をいずれも「1の整数」に(ただし、補正後の「о及びpは、それぞれ独立して0,1又は2であり、」という記載は、削除漏れの誤記と認める。)、補正前の「q」を「0の整数」に、補正前の「X4」を「CH2」に、補正前の「X5、X6及びX7」をいずれも「O」に、補正前の「R6及びR7」を「それらが結合された炭素原子と組み合わせてC=Oを形成」するものに、補正前の「R14」を「任意選択的に置換されたC6〜C10アリールC1〜C6アルキル」の「任意選択的に置換されたC6アリールC2アルキル」である「任意選択的に置換されたフェネチル基」に、補正前の「R15及びR17」を「ヒドロキシル」に、補正前の「R16及びR18」を「それぞれ独立して、ヒドロキシル、または、任意選択的に置換されたC1〜C6アルキル」に、化学構造を減縮するものである。そして、「マクロ環式化合物」と「その薬学的に許容可能な塩」について、一つの化合物自体として両立し得ない記載となる「、及び」について、「または」に補正することは、誤記の訂正といえる。

(2) 請求項8についての補正事項bは、補正前の発明を特定するために必要な事項である、医薬組成物が含有する「化合物」について、「請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物」とされていたのを、「請求項1〜6のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩」に変更するものであり、記載を引用する請求項1〜6において、対象となる化合物が減縮されると同時に、「化合物」が「マクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩」であることを明確化するという、明瞭でない記載の釈明をしたものである。

(3) 補正前の請求項1及び8に記載された発明と補正後の請求項1及び8に記載された発明の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」は同一である。
したがって、補正事項a及びbは、特許法第17条の2第5項第2〜4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1及び8に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、いわゆる「独立特許要件」。)について、以下検討する。

3 独立特許要件について
(1) 本願補正発明及びその独立特許要件の判断について
本件補正後の請求項1に記載された発明及び請求項8に記載された発明(以下、それぞれ、「本願補正発明1」及び「本願補正発明8」という。)は、上記1(B)に摘記した請求項1及び請求項8に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、当審合議体は、本願補正発明1及び本願補正発明8が、以下の理由A(実施可能要件)及び理由B(サポート要件)の点で、独立特許要件を満たしていないと判断する。
以下詳述する。

(2) 理由A(実施可能要件)について
実施可能要件の判断の前提
(ア) 明細書の発明の詳細な説明の記載が、物の発明について実施可能要件を満たすためには、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない。
(イ) 物の発明のうち、特に医薬用途発明においては、一般に、物質名や化学構造などが示されることのみによっては、その有用性を予測することは困難であり、明細書の発明の詳細な説明に、医薬の有効量や投与方法、製剤化のための事項などがある程度記載されていても、それだけでは、当業者において当該医薬が実際にその用途において使用できるかを予測することは困難であるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を使用することができる程度の記載があるというためには、明細書の発明の詳細な説明において、当該物質が当該用途に使用できることにつき薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項を記載し、出願時の技術常識に照らして、当該物質が当該用途の医薬として使用できることを当業者が理解できるようにする必要があるとされている。
(上記内容を述べた参考判決例としては、知財高判令4.3.7(令和2(行ケ)10135号)、知財高判令4.1.19(令和2(行ケ)10122号)が挙げられる。)

イ 本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載
(ア) 本願明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下「本願明細書等」という。)には、本願補正発明1及び本願補正発明8の製造及び調製に関連する事項として、以下の摘記(A)〜摘記(N)の事項が記載されている(以下、下線は当審合議体が付したものである。)。

摘記(A):細菌株培養と発酵ブロスからの単離
「【0062】
いくつかの態様では、本発明は、本発明の化合物を調製する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、かかる方法は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属の細菌株を培養する工程と、発酵ブロスから化合物を単離する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、細菌株は工学操作された株である。いくつかの実施形態では、細菌株は、化合物を産生するように及び/又は化合物をブロス中に分泌するように改変されたという点で工学操作されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の化合物を調製する方法を提供し、本方法は、株が化合物を産生しかつそれを発酵ブロス中に放出する条件下でストレプトマイセス(Streptomyces)属の細菌株を培養する工程と、化合物を発酵ブロスから単離する工程と、を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、本明細書に記載の化合物を発酵ブロスから単離する工程を含む。
いくつかの態様では、本発明は、(i)標的タンパク質(たとえば、哺乳動物標的タンパク質や菌類標的タンパク質などの真核生物標的タンパク質又は細菌標的タンパク質などの原核生物標的タンパク質)と、(ii)プレゼンタータンパク質/化合物複合体と、を含むトリパータイト複合体を特徴とし、プレゼンタータンパク質/化合物複合体は、プレゼンタータンパク質と本発明の化合物のいずれかとを含む。」

摘記(B):異性体の説明と取得の一般論
「【0071】
本明細書に記載の化合物は非対称でありうる(たとえば、1つ以上のステレオ中心を有する)。とくに指定がない限り、エナンチオマーやジアステレオマーなどの立体異性体はすべて意図される。非対称置換炭素原子を含有する本開示の化合物は、光学活性形又はラセミ形で単離可能である。光学活性出発材料から光学活性形をいかに調製するかに関する方法は当技術分野で公知であり、たとえば、ラセミ混合物の分割によるもの又は立体選択的合成によるものがある。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体もまた、本明細書に記載の化合物中に存在可能であり、かかる安定な異性体はすべて本開示で企図される。本開示の化合物のシス及びトランス幾何異性体は記載されており、異性体の混合物として又は分離された異性形として単離しうる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に表される1種以上の化合物はさまざまな互変異性形で存在しうる。文脈から明らかであろうが、明示的に除外されない限り、かかる化合物への参照はかかる互変異性形をすべて包含する。いくつかの実施形態では、互変異性形は、単結合と隣接二重結合との交換及びそれに付随するプロトンの移動から生じる。ある特定の実施形態では、互変異性形は、参照形と同一の実験式及び全電荷を有する異性プロトン化状態のプロトトロピー互変異性体でありうる。プロトトロピー互変異性形部分の例は、ケトン−エノールペア、アミド−イミド酸ペア、ラクタム−ラクチムペア、アミド−イミド酸ペア、エナミン−イミンペア、及びプロトンがヘテロ環系の2つ以上の位置を占有可能である環状形、たとえば、1H−及び3H−イミダゾール、1H−、2H−、及び4H−1,2,4−トリアゾール、1H−及び2H−イソインドール、ならびに1H−及び2H−ピラゾールである。いくつかの実施形態では、互変異性形は、平衡状態でありうるか又は適切な置換により1つの形に立体的にロックしうる。ある特定の実施形態では、互変異性形は、アセタール相互変換、たとえば、以下のスキーム:
【0073】
【化20】

に例示される相互変換から生じる。・・・
【0101】
本明細書で用いられる「異性体」という用語は、本発明の任意の化合物の任意の互変異性体、立体異性体、エナンチオマー、又はジアステレオマーを意味する。本発明の化合物は、1つ以上のキラル中心及び/又は二重結合を有しうるとともに、それにより、二重結合異性体(すなわちE/Z幾何異性体)やジアステレオマー(たとえばエナンチオマー(すなわち(+)もしくは(−))又はシス/トランス異性体)などの立体異性体として存在しうると認識される。本発明によれば、本明細書に表される化学構造つまり本発明の化合物は、すべての対応する立体異性体、すなわち、ステレオマー的純粋形(たとえば、幾何学的純粋形、エナンチオマー的純粋形、又はジアステレオマー的純粋形)もエナンチオマー混合物や立体異性体混合物(たとえばラセミ体)も包含する。本発明の化合物のエナンチオマー混合物及び立体異性体混合物は、典型的には、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高性能液体クロマトグラフィー、キラル塩複合体としての化合物の結晶化、キラル溶媒中での化合物の結晶化などの周知の方法により、それらの成分のエナンチオマー又は立体異性体に分割可能である。エナンチオマー及び立体異性体はまた、周知の不斉合成法によりステレオマー的又はエナンチオマー的に純粋な中間体、試薬、及び触媒から取得可能である。」

摘記(C):工学操作という用語の説明
「【0133】
本明細書で用いられる場合、「工学操作」という用語は、設計及び/又は生成が人の手の作用を含む化合物を記述するために用いられる。たとえば、いくつかの実施形態では、「工学操作」された化合物はin vitro化学合成により調製される。いくつかの実施形態では、「工学操作」された化合物は、参照野生型細胞に対して遺伝子操作された細胞により生成される。いくつかの実施形態では、「工学操作」された化合物は培養下で細胞により生成される。いくつかの実施形態では、「工学操作」された化合物は、化合物の生成を増強するように特異的に改変された培養条件で細胞により生成される。いくつかの実施形態では、「工学操作」された化合物は、in silicoモデリングにより設計又は選択された構造を有する。」

摘記(D):マクロ環式化合物の定義と説明
「【0138】
本明細書で用いられる「マクロ環式化合物」という用語は、9個以上の環原子を有する環を含有する低分子化合物を意味する。マクロ環式化合物としては、マクロ環式ラクトンを含有する低分子のグループであるマクロライド、たとえば、エリスロマイシン、ラパマイシン、及びFK506が挙げられる。いくつかの実施形態では、マクロ環式化合物は、低分子中の非水素原子の25%超(たとえば、30%超、35%超、40%超、45%超)が単環構造又は縮合環構造に含まれる低分子である。いくつかの実施形態では、マクロ環式化合物は、ベンジャミン(Benjamin)ら著、ネイチャー・レビュー・ドラック・ディスカバリー(Nat.Rev.Drug.Discov.)、2011年、第10巻、第11号、p.868〜880、又はスウィーニー,Z.K.(Sweeney,Z.K.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、2014年、epub ahead of printに記載の化合物(その構造は参照により組み込まれる)ではない。」

摘記(E):「結合に関与する」等の用語の説明
「【0141】
本明細書で用いられる場合、「結合に関与する」原子は、結合するエンティティーから4Å以内にあるか、又は結合するエンティティーの4Åにある原子に接続する。
本明細書で用いられる場合、「医薬組成物」という用語は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体と一緒に製剤化された活性化合物を意味する。いくつかの実施形態では、活性化合物は、関連集団に投与したときに所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンの投与に適したユニット投与量で存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、次の投与に適合化したもの、すなわち、経口投与に適合化したもの、たとえば、ドレンチ剤(水性もしくは非水性の溶液剤もしくはサスペンジョン剤)、錠剤、たとえば、経頬、舌下、及び全身的吸収を目的としたもの、ボーラス剤、粉末剤、顆粒剤、舌に適用するためのペースト剤、非経口投与、たとえば、皮下、筋肉内、静脈内、もしくは硬膜外注射に適合化したもの、たとえば、無菌溶液剤もしくはサスペンジョン剤、又は持続放出製剤、局所適用に適合化したもの、たとえば、クリーム剤、軟膏剤、又は皮膚、肺、もしくは口腔に適用される制御放出性のパッチ剤もしくはスプレー剤、膣内又は直腸内に適合化したもの、たとえば、ペッサリー、クリーム剤、又はフォーム剤、舌下に適合化したもの、経眼に適合化したもの、経真皮的に適合化したもの、あるいは経肺、経鼻、及び他の粘膜表面に適合化したものを含めて、固体又は液体の形態で投与に供すべく特別に製剤化しうる。
【0142】
本明細書で用いられる「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、被験体において非毒性かつ非炎症性の性質を有する任意の不活性成分(たとえば、活性化合物を懸濁可能又は溶解可能な媒体)を意味する。典型的な賦形剤としては、たとえば、抗接着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、膜形成剤もしくはコーティング剤、風味剤、香気剤、滑剤(流動促進剤)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、収着剤、懸濁化もしくは分散剤、甘味剤、又は水和水が挙げられる。賦形剤としては、限定されるものではないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(第2)、カルシウムステアレート、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、マグネシウムステアレート、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、α化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クエン酸ナトリウム、ナトリウムデンプングリコレート、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトールが挙げられる。当業者であれば、賦形剤として有用なさまざまな作用剤及び材料を熟知している。
【0143】
本明細書で用いられる「薬学的に許容可能な塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなくヒト及び動物の組織に接触させて使用するのに好適でありかつ妥当な便益/リスク比に見合う本明細書に記載の化合物の塩を意味する。薬学的に許容可能な塩は、当技術分野で周知である。たとえば、薬学的に許容可能な塩は、バージ(Berge)ら著、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(J.Pharmaceutical Sciences)、第66巻、p.1〜19、1977年、及び医薬塩:性質、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use)、P.H.スタール(P.H.Stahl)及びC.G.ウェルムス(C.G.Wermuth)、ワイリー−VCH(Wiley−VCH)、2008年に記載されている。塩は、本明細書に記載される化合物の最終的な単離時及び精製時にin situで調製可能であるか、又は遊離塩基基と好適な有機酸との反応により個別に調製可能である。
【0144】
本発明の化合物は、薬学的に許容可能な塩として調製できるようにイオン化性基を有しうる。こうした塩は無機酸又は有機酸を含む酸付加塩でありうるか、又は塩は、本発明の化合物の酸形の場合、無機塩基又は有機塩基から調製しうる。多くの場合、化合物は、薬学的に許容可能な酸又は塩基の付加生成物として調製された薬学的に許容可能な塩として調製又は使用される。好適な薬学的に許容可能な酸及び塩基、たとえば、酸付加塩を形成するための塩酸、硫酸、臭化水素酸、酢酸、乳酸、クエン酸、又は酒石酸、及び塩基塩を形成するための水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、カフェイン、種々のアミンなどは、当技術分野で周知である。適切な塩の調製方法は当技術分野で十分に確立されている。
・・・
【0163】
「治療レジメン」とは、関連集団全体にわたる投与が所望の又は有益な治療アウトカムと相関する投与レジメンを意味する。
「治療上有効量」という用語は、疾患、障害、及び/又は病態に罹患している又は罹患しやすい疾患集団に治療投与レジメンに従って投与したときに、疾患、障害、及び/又は病態を治療するのに十分な量を意味する。いくつかの実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、及び/又は病態の発生率及び/又は重症度の低減、及び/又はそれらの1つ以上の症状の開始の遅延を行う量である。「治療上有効量」という用語が特定の個体では実際上奏効的治療の達成を必要としないことは、当業者であれば分かるであろう。より正確には、治療有効量は、かかる治療が必要とされる患者に投与したときに有意数の被験体で特定の所望の薬理学的反応を提供する量でありうる。特定の被験体は「治療有効量」に実際上「不応性」でありうることが、とくに理解されている。一例であるが例を挙げると、不応性の被験体は低い生物学的利用率を有しうるので、臨床的有効性が得られない。いくつかの実施形態では、治療有効量への参照は、1つ以上の特定の組織(たとえば、疾患、障害、もしくは病態に罹患した組織)又は流体(たとえば、血液、唾液、血清、汗、涙液、尿など)で測定される量への参照でありうる。いくつかの実施形態では、治療有効量を単回用量で製剤化及び/又は投与しうることは、当業者であれば分かるであろう。いくつかの実施形態では、治療有効量は、たとえば投与レジメンの一部として、複数回用量で製剤化及び/又は投与しうる。」

摘記(F):低分子と標的タンパク質との相互作用の一般論
「【0170】
低分子は標的との相互作用が接着力により駆動され、その強さは接触表面積にほぼ比例するので、その標的化能力は限られている。その小サイズが小さいので、低分子が標的タンパク質と効果的に相互作用するのに十分な分子間接触表面積を構築する唯一の方法は、そのタンパク質にそのまま包み込むことである。実際には、多くの一連の実験及び計算の両方のデータから、表面上に疎水性「ポケット」を有するタンパク質のみが低分子に結合できるという見解が支持される。その場合、結合は包込みにより可能になる。
【0171】
自然は、低分子と標的タンパク質とを疎水性ポケット以外の部位で相互作用させるストラテジーを進化させてきた。このストラテジーは、天然に存在する免疫抑制剤のシクロスポリンA、ラパマイシン、及びFK506により例示される。これらの薬剤の生物学的活性は、低分子と小さい提示タンパク質との高親和性複合体の形成を必要とする。低分子と提示タンパク質との複合表面は、標的にエンゲージする。したがって、たとえば、シクロスポリンAとシクロフィリンAとの間で形成される二元複合体は、高い親和性及び特異性でカルシニューリンを標的とするが、シクロスポリンAもシクロフィリンAも単独ではカルシニューリンに測定可能な親和性で結合しない。
【0172】
多くの重要な治療標的は、他のタンパク質との複合体化によりそれらの機能を発揮する。タンパク質/タンパク質相互作用表面は、これらの系の多くで、極性残基の広い環に取り囲まれた疎水性側鎖の内側コアを含有する。疎水性残基は、エネルギー的に有利な接触のほぼすべてに寄与するので、このクラスターは、タンパク質−タンパク質相互作用のエンゲージメント用の「ホットスポット」として表されてきた。重要なこととして、天然に存在する低分子と小さい提示タンパク質との以上に挙げた複合体では、低分子は、ホットスポットと類似の疎水性機能のクラスターを提供し、タンパク質は、主に極性の残基の環を提供する。言い換えれば、提示された低分子系は、天然タンパク質/タンパク質相互作用系で広く利用される表面アーキテクチャーを模倣する。
【0173】
自然は、提示された低分子−ポータブルホットスポットの標的特異性を進化の多様化により再プログラムする能力を実証してきた。最も良好に特徴付けられた例では、FK506結合タンパク質(FKBP)とFK506との間で形成された複合体は、カルシニューリンを標的とする。しかしながら、FKBPはまた、関連分子のラパマイシンとの複合体を形成可能であり、しかも複合体は、まったく異なる標的TorC1と相互作用する。これまでアンドラッガブルであるとみなされた他の標的タンパク質と相互作用してそれをモジュレートできるように、プレゼンタータンパク質/リガンドインターフェースの結合及びモジュレート能力を再プログラムする方法は、これまでのところ、開発されていない。
【0174】
そのほかに、いくつかの薬剤候補物質は、意図された標的及び他の意図されていないタンパク質の両方の活性を同じようにモジュレートすることから、うまく機能しないことが広く認められている。この問題は、標的タンパク質の薬剤結合部位が非標的タンパク質の結合部位に類似している場合にとくに困難なものとなる。ATP結合ポケットが非標的インスリンレセプター(IR)の結合ポケットに構造的に類似しているインスリン様成長因子レセプター(IGF−1R)は、そのような一例である。IGF−1Rを標的とするように設計された低分子開発候補物質もまた、典型的には、同様にインスリンレセプターもモジュレートする許容できない副作用を有する。しかしながら、ATP結合ポケットの周囲の領域には、これらの2つのタンパク質間の構造の非類似性が存在する。かかる知見にもかかわらず、そうした差の利点を生かしてIRよりもIGF−1Rに特異的な薬剤を開発する方法は、これまでのところ存在しない。」

摘記(G):化合物の構造例
「【0181】
ある特定の実施形態では、化合物は、図1又は図2の化合物のいずれかの構造を有する。
いくつかの実施形態では、化合物は、天然化合物である(たとえば、遺伝的に改変されていない細菌株により合成される)。いくつかの実施形態では、化合物は天然化合物の変異体(たとえば、半合成化合物)である。いくつかの実施形態では、変異体は環サイズを参照天然化合物と共有する。いくつかの実施形態では、変異体は、1個以上の置換基の同一性のみが参照天然化合物と異なる(たとえば、少なくとも1つの位置に対して、変異体は適切な参照化合物の対応する位置に見いだされるものと異なる置換基又は置換基のセットを有する)。・・・
【0189】
本発明の化合物は、天然に存在するものであっても天然に存在しないものであってもよい。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は天然に存在しない。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は工学操作されている。工学操作された化合物とは、その設計及び/又は生成が人の手の作用を必要とする化合物(たとえば、化学合成により調製される化合物、参照野生型細胞に対して遺伝子操作された細胞により調製される化合物、化合物の生成を増強するように改変された培養条件で細胞により生成される化合物)のことである。
【0190】
ある特定の実施形態では、提供される化合物(たとえばマクロ環式化合物)は、ベンジャミン(Benjamin)ら著、ネイチャー・レビュー・ドラック・ディスカバリー(Nat.Rev.Drug.Discov.)、2011年、第10巻、第11号、p.868〜880、又はスウィーニー,Z.K.(Sweeney,Z.K.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、2014年、epub ahead of printに記載の化合物(その構造は参照により組み込まれる)及び/又は構造:を有する化合物ではない。」

摘記(H):化合物の構造例とそのLC−MSのデータ等
「【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】

【図1−7】

【図1−8】



摘記(I):リンカーの一般論
「【0212】
・・・
リンカー
本発明の化合物は、リンカー(たとえば、プレゼンタータンパク質結合部分と標的タンパク質相互作用部分(たとえば、哺乳動物標的タンパク質相互作用部分や菌類標的タンパク質相互作用部分などの真核生物標的タンパク質相互作用部分又は細菌標的タンパク質相互作用部分などの原核生物標的タンパク質相互作用部分)とを接続する2つのリンカー)を含む。本発明のリンカー成分は、最も単純な場合、結合であるが、2つの部分を共有結合するペンダント基を有する線状、環状、又は分岐状の分子骨格を提供してもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、リンカーの少なくとも1個の原子は、プレゼンタータンパク質及び/又は標的タンパク質への結合に関与する。ある特定の実施形態では、リンカーの少なくとも1個の原子は、プレゼンタータンパク質及び/又は標的タンパク質への結合に関与しない。
【0214】
それゆえ、2つの部分の結合は、両方の部分上に位置する1個以上の官能基による結合形成を含む共有結合手段により達成される。この目的に利用しうる化学反応性官能基の例としては、限定されるものではないが、カルボニル、炭水化物基、ビシナルジオール、チオエーテル、2−アミノアルコール、2−アミノチオール、グアニジニル、イミダゾリル、及びフェノール基が挙げられる。
【0215】
2つの部分の共有結合は、両方の部分に存在するかかる官能基による反応が可能な反応性部分を含有するリンカーを用いて行いうる。たとえば、部分のアミン基は、リンカーのカルボキシル基又はその活性化誘導体と反応しうるので、2つを結合するアミドを形成する。
【0216】
スルフヒドリル基と反応可能な部分の例としては、XCH2CO−(式中、X=Br、Cl、又はI)タイプのα−ハロアセチル化合物が挙げられる。このタイプのものは、ガード(Gurd)著、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)、第11巻、p.532、1967年)に記載されるように、スルフヒドリル基に対して特定の反応性を示すだけでなく、イミダゾリル基、チオエーテル基、フェノール基、及びアミノ基を修飾するためにも使用可能である。N−マレイミド誘導体もまた、スルフヒドリル基に対して選択性があるとみなされるが、そのほかに、ある特定の条件下でアミノ基とのカップリングに有用でありうる。アミノ基の変換によりチオール基を導入する2−イミノチオランなどの試薬(トラウト(Traut)ら著、バイオケミストリー(Biochemistry)、第12巻、p.3266、1973年)は、ジスルフィド架橋の形成により結合が行われる場合、スルフヒドリル試薬と見なしうる。
【0217】
アミノ基と反応可能な反応性部分の例としては、たとえば、アルキル化剤及びアシル化剤が挙げられる。代表的なアルキル化剤としては、
(i)α−ハロアセチル化合物、これは、たとえば、ウォング(Wong)著、バイオケミストリー(Biochemistry)、第24巻、p.5337、1979年に記載されるように、反応性チオール基の不在下でアミノ基に対して特異性を示し、かつXCH2CO−(式中、X=Br、Cl、又はI)タイプである)、
(ii)N−マレイミド誘導体、これは、たとえば、スミス(Smyth)ら著、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)、第82巻、p.4600、1960年、及びバイオケミカル・ジャーナル(Biochem.J.)、第91巻、p.589、1964年に記載されるように、マイケル型反応を介して又は環カルボニル基への付加によるアシル化を介してアミノ基と反応しうる、
(iii)ハロゲン化アリール、たとえば、反応性ニトハロ芳香族化合物、
(iv)ハロゲン化アルキル、たとえば、マケンジー(McKenzie)ら著、ジャーナル・オブ・プロテイン・ケミストリー(J.Protein Chem.)、第7巻、p.581、1988年、
(v)アミノ基とシッフ塩基を形成可能なアルデヒド及びケトン、形成される付加物は、通常、還元により安定なアミンを与える、
(vi)エピクロロヒドリンやビスオキシランなどのエポキシド誘導体、これはアミノ基、スルフヒドリル基、又はフェノール性ヒドロキシル基と反応しうる、
(vii)s−トリアジンの塩素含有誘導体類、これはアミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基などの求核剤に対して非常に反応性である、
(viii)以上に詳述したs−トリアジン化合物に基づくアジリジン、たとえば、ロス(Ross)著、ジャーナル・オブ・アドバンスト・キャンサー・リサーチ(J.Adv.Cancer Res.)第2巻、p.1、1954年に記載されており、これは開環によりアミノ基などの求核剤と反応する、
(ix)スクアリン酸ジエチルエステル、ティーツェ(Tietze)著、ヘミッシェ
・ベリヒテ(Chem.Ber.)、第124巻、p.1215、1991年に記載されている、及び
(x)α−ハロアルキルエーテル、これはベネッシェ(Benneche)ら著、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Eur.J.Med.Chem.)、第28巻、p.463、1993年に記載されるように、エーテル酸素原子により引き起こされる活性化に起因して通常のハロゲン化アルキルよりも高反応性のアルキル化剤である、
が挙げられる。
【0218】
代表的なアミノ反応性アシル化剤としては、
(i)イソシアネート及びイソチオシアネート、とくに芳香族誘導体、これはそれぞれ安定な尿素誘導体及びチオ尿素誘導体を形成する、
(ii)スルホニルクロリド、これはハージグ(Herzig)ら著、バイオポリマーズ(Biopolymers)、第2巻、p.349、1964年に記載されている、
(iii)酸ハロゲン化物、
(iv)活性エステル、たとえば、エステルニトロフェニルエステル又はN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、
(v)酸無水物、たとえば、混合型、対称型、又はΝ−カルボキシ無水物、
(vi)アミド結合形成用の他の有用な試薬、たとえば、M.ボダンスキー(M.Bodansky)著、ペプチド合成の原理(Principles of Peptide
Synthesis)、シュプリンガー・フェアラーク(Springer−Verlag)、1984年に記載されている、
(vii)アシルアジド、このアジド基は、ウェッツ(Wetz)ら著、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)、第58巻、p.347、1974年に記載されるように、亜硝酸ナトリウムを用いて事前に形成されたヒドラジド誘導体から生成される、
(viii)イミドエステル、これは、たとえば、ハンター(Hunter)及びルドウィッヒ(Ludwig)著、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)、第84巻、p.3491、1962年に記載されるように、アミノ基との反応により安定なアミジンを形成する、及び
(ix)ハロヘテロアリール基、たとえば、ハロピリジン又はハロピリミジン、
が挙げられる。
【0219】
アルデヒド及びケトンは、アミンと反応してシッフ塩基を形成しうるとともに、これは還元的アミノ化により有利に安定化しうる。アルコキシルアミノ部分は、たとえば、ウェブ(Webb)ら著、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjugate
Chem.)、第1巻、p.96、1990年に記載されるように、ケトン及びアルデヒドと容易に反応して安定なアルコキサミンを生成する。
【0220】
カルボキシル基と反応可能な反応性部分の例としては、ジアゾアセテートエステルやジアゾアセトアミドなどのジアゾ化合物が挙げられる。これは、たとえば、ヘリオット(Herriot)著、アドバンス・イン・プロテイン・ケミストリー(Adv.Protein Chem.)、第3巻、p.169、1947年に記載されるように、高い特異性で反応してエステル基を生成する。O−アシルウレア形成及びそれに続くアミド結合形成により反応するカルボジイミドなどのカルボキシル修飾試薬も利用可能である。
【0221】
たとえば、追加の反応性又は選択性を付与するために、所望により、いずれかの部分の官能基を反応前に他の官能基に変換しうることは、分かるであろう。この目的に有用な方法の例としては、ジカルボン酸無水物などの試薬を用いたアミンかカルボキシルへの変換、N−アセチルホモシステインチオラクトン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、2−イミノチオラン、チオール含有スクシンイミジル誘導体などの試薬を用いたアミンからチオールへの変換、α−ハロアセテートなどの試薬を用いたチオールからカルボキシルへの変換、エチレンイミンや2−ブロモエチルアミンなどの試薬を用いたチオールからアミンへの変換、カルボジイミド及び続いてジアミンなどの試薬を用いたカルボキシルからアミンへの変換、ならびに塩化トシルなどの試薬を用いたアルコールからチオールへの変換、及び続いてチオアセテートを用いたエステル交換、及び酢酸ナトリウムを用いたチオールへの加水分解が挙げられる。
【0222】
所望により、本発明に従って、追加の結合材料を導入することなく一方の部分の反応性化学基と他方の部分の反応性化学基とを直接共有結合することを含むいわゆるゼロレングスリンカーを使用しうる。
【0223】
しかしながら、より一般的には、リンカーは、以上に記載のようにスペーサエレメントにより接続された2つ以上の反応性部分を含むであろう。かかるスペーサの存在は、二官能性リンカーをいずれかの部分内の特定の官能基と反応させて2つの間に共有結合を生成する。リンカー中の反応性部分は、同一であっても(ホモ二官能性リンカー)異なっていてもよく(ヘテロ二官能性リンカー又はいくつかの類似していない反応性部分が存在する場合は多官能性リンカー)、2つの部分間に共有結合を生成しうるさまざまな可能性のある試薬を提供する。
【0224】
リンカー中のスペーサエレメントは、典型的には、直鎖又は分岐鎖からなり、C1〜10アルキル、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、C2〜6ヘテロシクリル、C6〜12アリール、C7〜14アルカリール、C3〜10アルクヘテロシクリル、C2〜C100ポリエチレングリコール、又はC1〜10ヘテロアルキルを含みうる。
【0225】
いくつかの場合には、リンカーは式Vにより記述される。
本発明のコンジュゲートの調製に有用なホモ二官能性リンカーの例としては、限定されるものではないが、エチレンジアミン、プロピレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、及びポリカプロラクトンジオールから選択されるジアミン及びジオールが挙げられる。
【0226】
いくつかの実施形態では、リンカーは、結合であるか、又は炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、もしくはリン原子から独立して選択される10個までの原子の直鎖であり、鎖中の各原子は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルボキサミド、シアノ、オキソ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ホスホリル、及びスルホニルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換され、かつ鎖中の任意の2個の原子は、それらに結合された置換基と一緒になって環を形成しうるとともに、環は、さらなる置換及び/又は1つ以上の任意選択的に置換された炭素環、ヘテロ環、アリール環、又はヘテロアリール環への融合を行いうる。
【0227】
いくつかの実施形態では、リンカーは、式XIX:
A1−(B1)a−(C1)b−(B2)c−(D)−(B3)d−(C2)e−(B4)f−A2
式XIX
(式中、A1は、リンカーとプレゼンタータンパク質結合部分との間の結合であり、A2は、哺乳動物標的相互作用部分とリンカーとの間の結合であり、B1、B2、B3、及びB4は、それぞれ独立して、任意選択的に置換されたC1〜C2アルキル、任意選択的に置換されたC1〜C3ヘテロアルキル、O、S、及びNRNから選択され、RNは、水素、任意選択的に置換されたC1〜4アルキル、任意選択的に置換されたC3〜4アルケニル、任意選択的に置換されたC2〜4アルキニル、任意選択的に置換されたC2〜6ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6〜12アリール、又は任意選択的に置換されたC1〜7ヘテロアルキルであり、C1及びC2は、それぞれ独立して、カルボニル、チオカルボニル、スルホニル、又はホスホリルから選択され、a、b、c、d、e、及びfは、それぞれ独立して、0又は1であり、ならびにDは、任意選択的に置換されたC1〜10アルキル、任意選択的に置換されたC2〜10アルケニル、任意選択的に置換されたC2〜10アルキニル、任意選択的に置換されたC2〜6ヘテロシクリル、任意選択的に置換されたC6〜12アリール、任意選択的に置換されたC2〜C10ポリエチレングリコール、もしくは任意選択的に置換されたC1〜10ヘテロアルキル、又はA1−(B1)a−(C1)b−(B2)c−と−(B3)d−(C2)e−(B4)f−A2とを結合する化学結合である)
の構造を有する。」

摘記(J):低分子と標的タンパク質との相互作用について説明
「【0244】
本発明は、典型的には、低分子は標的との相互作用が接着力により駆動され、その強さは接触表面積にほぼ比例するので、その標的化能力は限られているという認識を包含する。その小サイズが小さいので、低分子が標的タンパク質と効果的に相互作用するのに十分な分子間接触表面積を構築する唯一の方法は、そのタンパク質にそのまま包み込むことである。実際には、多くの一連の実験及び計算の両方のデータから、表面上に疎水性「ポケット」を有するタンパク質のみが低分子に結合できるという見解が支持される。その場合、結合は包込みにより可能になる。疎水性ポケット外でタンパク質に高親和性で結合する低分子の例は1つも存在しない。
【0245】
自然は、低分子と標的タンパク質とを疎水性ポケット以外の部位で相互作用させるストラテジーを進化させてきた。このストラテジーは、天然に存在する免疫抑制剤のシクロスポリンA、ラパマイシン、及びFK506により例示される。これらの薬剤の活性は、低分子と小さい提示タンパク質との高親和性複合体の形成を必要とする。その際、低分子と提示タンパク質との複合表面は、標的にエンゲージする。したがって、たとえば、シクロスポリンAとシクロフィリンAとの間で形成される二元複合体は、高い親和性及び特異性でカルシニューリンを標的とするが、シクロスポリンAもシクロフィリンAも単独ではカルシニューリンに測定可能な親和性で結合しない。
【0246】
多くの重要な治療標的は、他のタンパク質との複合体化によりそれらの機能を発揮する。タンパク質/タンパク質相互作用表面は、これらの系の多くで、極性残基の広い環に取り囲まれた疎水性側鎖の内側コアを含有する。疎水性残基は、エネルギー的に有利な接触のほぼすべてに寄与するので、このクラスターは、タンパク質−タンパク質相互作用のエンゲージメント用の「ホットスポット」として表されてきた。重要なこととして、天然に存在する低分子と小さい提示タンパク質との以上に挙げた複合体では、低分子は、ホットスポットと類似の疎水性機能のクラスターを提供し、タンパク質は、主に極性の残基の環を提供する。言い換えれば、提示された低分子系は、天然タンパク質/タンパク質相互作用系で広く利用される表面アーキテクチャーを模倣する。」

摘記(K):プレゼンタータンパク質/化合物複合体の相互作用の説明や医薬組成物の一般論
「【0249】
いくつかの実施形態では、プレゼンタータンパク質/化合物複合体は、標的タンパク質上のフラット表面部位に結合する。いくつかの実施形態では、プレゼンタータンパク質/化合物複合体中の化合物(たとえばマクロ環式化合物)は、標的タンパク質上の疎水性表面部位、たとえば、少なくとも50%の疎水性残基を含む部位に結合する。いくつかの実施形態では、化合物の原子の1個以上と標的タンパク質の原子の1個以上との間の結合相互作用の少なくとも70%は、ファンデルワールス相互作用及び/又はπ効果相互作用である。ある特定の実施形態では、プレゼンタータンパク質/化合物複合体は、標的タンパク質と標的タンパク質に特異的に結合するタンパク質との間の天然に存在するタンパク質−タンパク質相互作用の部位で標的タンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、プレゼンタータンパク質/化合物複合体は、標的タンパク質の活性部位に結合しない。いくつかの実施形態では、プレゼンタータンパク質/化合物複合体は、標的タンパク質の活性部位に結合する。
【0250】
プレゼンタータンパク質と標的タンパク質とのトリパータイト複合体を形成する本発明の化合物の特徴は、トリパータイト複合体と比較してプレゼンタータンパク質/化合物複合体で主要構造再組織化が欠如していることである。こうした主要構造再組織化の欠如は、プレゼンタータンパク質/化合物複合体が形成されてからトリパータイト複合体の形成に有利な構成に再組織化するエントロピーコストを低くする。たとえば、RMSDの閾値定量は、ピモル(PyMOL)バージョン1.7rc1(シュレーディンガLLC(Schroedinger LLC))中のalignコマンドを用いて測定可能である。代替的に、RMSDは、リグアセイン(LigAlign)(ジャーナル・オブ・モレキュラー・グラフィックス・アンド・モデリング(J.Mol.Graphics and Modelling)、2010年、第29巻、p.93〜101)というアルゴリズムのエグゼクティブRMS(ExecutiveRMS)パラメータを用いて計算可能である。いくつかの実施形態では、化合物の構造組織(すなわち、分子の原子及び結合の平均三次元配置)は、標的タンパク質に結合する前のプレゼンタータンパク質/化合物複合体のときの化合物と比較してトリパータイト複合体で実質的に不変である。たとえば、2つのアライメント構造の根平均二乗偏差(RMSD)は1未満である。
有用性及び投与
本明細書に記載される化合物及びプレゼンタータンパク質/化合物複合体は、本発明の方法に有用であり、理論により拘束されるものではないが、プレゼンタータンパク質と標的タンパク質との相互作用により、標的タンパク質(たとえば、哺乳動物標的タンパク質や菌類標的タンパク質などの真核生物標的タンパク質又は細菌標的タンパク質などの原核生物標的タンパク質)の活性をモジュレートする(たとえば、正又は負にモジュレートする)能力により望ましい効果を発揮すると考えられる。
・・・
医薬組成物
ヒト及び動物被験体の治療に使用するために、本発明の化合物は、医薬組成物又は獣医薬組成物として製剤化可能である。治療される被験体、投与モード、及び所望の治療タイプ(たとえば、防止、予防、又は治療)に依存して、化合物は、これらのパラメータに合致した方法で製剤化される。かかる技術の概要は、レミングトン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第21版、リッピンコット・ウイリアムズ・アンド・ウイルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、2005年;及びエンサイクロペディア・オブ・ファーマシューティカル・テクノロジー(Encyclopedia of Pharmaceutical Technology)、J.スワーブリクス(J.Swarbrick)及びJ.C.ボイラン(J.C.Boylan)編、1988−1999年、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされる。
【0251】
本明細書に記載される化合物は、組成物の全重量の1〜95重量%の合計量で存在しうる。組成物は、関節内、経口、非経口(たとえば、静脈内、筋肉内)、経直腸、皮膚、皮下、局所、経真皮、舌下、経鼻、経腟、小胞内、尿道内、髄腔内、硬膜外、経耳、もしくは経眼の投与、又は注射、吸入、又は鼻、泌尿生殖器、生殖器、もしくは口腔粘膜との直接接触に好適な剤形で提供しうる。それゆえ、医薬組成物は、たとえば、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、サスペンジョン剤、エマルジョン剤、溶液剤、ヒドロゲル剤を含めてゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、硬膏剤、ドレンチ剤、浸透圧送達デバイス、坐剤、浣腸剤、注射剤、インプラント、スプレー剤、イオン泳動送達に好適な調製物、又はエアロゾル剤の形をとりうる。組成物は従来の薬務に従って製剤化しうる。
【0252】
一般的には、治療に使用するために、本明細書に記載される化合物は、単独で又は1つ以上の他の活性剤と組み合わせて使用しうる。本明細書に記載される化合物と組み合される他の医薬の例は、同一の適応症の治療のための医薬を含むであろう。本明細書に記載される化合物と組み合される可能性のある医薬の他の例は、異なるとはいえ関連のある症状又は適応症の治療のための医薬を含むであろう。投与モードに依存して、化合物は、容易な送達を可能にするするのに好適な組成物として製剤化されよう。組合せ療法の各化合物は、当技術分野で公知のさまざまな方法に製剤化しうる。たとえば、組合せ療法の第1及び第2の作用剤は一緒に又は個別に製剤化しうる。望ましくは、第1及び第2の作用剤は、作用剤の同時投与又はほぼ同時投与のために一緒に製剤化される。
【0253】
本発明の化合物は、当技術分野で周知のように、本明細書に記載される有効量の化合物と薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む医薬組成物として調製及び使用しうる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも2つの異なる薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む。
【0254】
製剤は、全身投与又は局所投与に好適な方式で調製しうる。全身製剤は、注射(たとえば、筋肉内、静脈内、皮下の注射)に供すべく設計されたものを含むか、又は経真皮、経粘膜、もしくは経口の投与に供すべく調製しうる。製剤は、一般に、希釈剤さらにはいくつかの場合にはアジュバント、緩衝剤、保存剤などを含むであろう。化合物はまた、リポソーム組成物又はマイクロエマルジョン剤として投与可能である。
【0255】
注射に供する場合、製剤は、液体溶液剤として又はサスペンジョン剤として又は注射前に液体中に溶解もしくは懸濁させるのに好適な固体製剤として又はエマルジョン剤として従来形で調製可能である。好適な賦形剤としては、たとえば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなどが挙げられる。かかる組成物はまた、種々の量の非毒性補助物質、たとえば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤など、たとえば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレートなども含有しうる。
【0256】
薬剤のさまざまな持続放出系も考案されてきた。たとえば、米国特許第5,624,677号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
全身投与としては、比較的非侵襲性の方法、たとえば、坐剤、経真皮パッチの使用、経粘膜送達、及び鼻腔内投与も挙げられうる。経口投与もまた本発明の化合物に好適である。好適な製剤としては、当技術分野で理解されているように、シロップ剤、カプセル剤、及び錠剤が挙げられる。
【0257】
本明細書に記載される組合せ療法の各化合物は、当技術分野で公知のさまざまな方法で製剤化しうる。たとえば、組合せ療法の第1及び第2の作用剤は一緒に又は分割して製剤化しうる。
【0258】
個別に又は分割して製剤化された作用剤は、キットとして一緒にパッケージング可能である。その例としては、限定されるものではないが、たとえば、2丸剤、丸剤+粉末剤、バイアル中の坐剤+液体剤、2局所クリーム剤などを含有するキットが挙げられる。キットは、ユニット用量を被験体に投与するのを支援する任意選択的なコンポーネント、たとえば、粉末形を再構成するためのバイアル、注入用のシリンジ、カスタマイズされたIV送達システム、インヘラーなどを含みうる。そのほかに、ユニット用量キットは、組成物の調製及び投与のための説明書を含有しうる。キットは、一被験体用の単回使用ユニット用量として、特定被験体用の複数回使用として(一定用量で又は治療の進行に合わせて個別の化合物の効力が変化するように)製造しうるか、又はキットは、複数被験体への投与に好適なマルチプル用量を含有しうる(「バルクパッケージング」)。キットのコンポーネントは、カートン、ブリスターパック、ボトル、チューブなどとしてアセンブルしうる。
【0259】
経口使用に供される製剤としては、非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤との混合物として活性成分を含有する錠剤が挙げられる。こうした賦形剤は、たとえば、不活性希釈剤又は充填剤(たとえば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンなどのデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム)、顆粒化剤及び崩壊剤(たとえば、微結晶セルロースなどのセルロース誘導体、ジャガイモデンプンなどのデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、又はアルギン酸)、結合剤(たとえば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、ナトリウムアルギネート、ゼラチン、デンプン、α化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミウニム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はポリエチレングリコール)、ならびに滑沢剤、滑剤、及び接着防止剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物性油、又はタルク)でありうる。他の薬学的に許容可能な賦形剤は、着色剤、風味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などでありうる。
【0260】
2つ以上の化合物は、錠剤、カプセル剤、もしくは他の媒体で一緒に混合しうるか、又は分割しうる。一例として、第2の化合物の実質的部分が第1の化合物の放出前に放出されるように、第1の化合物は錠剤の内側にかつ第2の化合物は外側に含有される。
【0261】
経口使用に供される製剤はまた、咀嚼錠剤として、又は活性成分が不活性固体希釈剤(たとえば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリン)と混合されるハードゼラチンカプセル剤として、又は活性成分が水もしくは油性媒体、たとえば、ラッカセイ油、流動パラフィン、オリーブ油と混合されるソフトゼラチンカプセル剤としても提供しうる。粉末剤、顆粒剤、及びペレット剤は、従来方式で、たとえば、ミキサー、流動床装置、又はスプレードライ装置により錠剤及びカプセル剤の状態の以上に挙げた成分を用いて調製しうる。
【0262】
溶解又は拡散制御放出は、化合物の錠剤、カプセル剤、ペレット剤、又は顆粒剤に適切なコーティングを施すことにより又は適切なマトリックス中に化合物を組み込むことにより達成可能である。制御放出コーティング剤としては、以上に挙げたコーティング物質の1つ以上、及び/又は、たとえば、シェラック、ビーワックス、グリコワックス、カスターワックス、カルナウバワックス、ステアリルアルコール、グリセリルモノステアレート、グリセリルジステアレート、グリセロールパルミトステアレート、エチルセルロース、アクリル樹脂、dlポリ乳酸、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルクロライド、ポリビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2つのヒドロキシメタクリレート、メタクリレートヒドロゲル剤、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート、及び/又はポリエチレングリコールが挙げられる。また、制御放出マトリックス製剤では、マトリックス材料として、たとえば、水和メチルセルロース、カルナウバワックス及びステアリルアルコール、カーボポール934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリン、メチルアクリレート−メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、及び/又はハロゲン化フルオロカーボンが挙げられうる。
【0263】
経口投与に供すべく本発明の化合物及び組成物を組み込うる液状製剤としては、メンジツ油、ゴマ油、ココヤシ油、ラッカセイ油などの食用油さらにはエリキシル剤及び類似の医薬媒体を有する、水性溶液剤、好適に風味付けされたシロップ剤、水性又は油性サスペンジョン剤、及び、風味付けされたエマルジョン剤が挙げられる。」

摘記(L):実施例
「【0266】
・・・
(実施例)
実施例1.一般的発酵・単離プロトコル
細菌株により合成した化合物は、以下の一般的プロトコルを用いて発酵及び単離しうる。
一般的発酵プロトコル
株:FKBPリガンド(例:F1、F2、F3、又はそれらの構造類似化合物及びアナログ)を生成する細菌株、たとえば、ストレプトマイセス・マレーシエンシス(Streptomyces malaysiensis)DSM41697、他の生成種、又は遺伝子修飾誘導体は、固体培地(例:ISP4)上で無菌的に増殖させた。
【0267】
ワーキングセルバンク:3〜14日間にわたり30℃の固体培地プレート上で成長させた培養物に由来する胞子又は菌糸体を用いて液体培養物(例:250mlエルレンマイヤーフラスコ中の40ml ATCC172液体培地)に接種した。2〜3日間にわたり30℃で振盪しながら培養物をインキュベートした。得られた細胞懸濁液を無菌50%グリセロールと混合して15〜25%グリセロールの最終濃度を含有する混合物を与えた。さらなる使用までグリセロール−菌糸体混合物のアリコート(約1ml)を−80℃の無菌クライオバイアル中で貯蔵した。
【0268】
一次種培養物:一次種培養物(例:250mLエルレンマイヤーフラスコ中の40mL
ATCC172培地)に1mLワーキングセルバンクサスペンジョンを接種した。30℃で2〜3日間にわたり200〜220rpmで培養物を50.8mm(2インチ)スローの振盪機上でインキュベートした。
【0269】
二次種培養物:二次種培養物(例:500mLエルレンマイヤーフラスコ中の100〜200mL ATCC172)に一次種培養物(5%v/v)を接種し、種々のインキュベーション時間(例:18〜48h)で以上に記載のようにインキュベートした。
【0270】
フラスコ中の生成発酵:生成発酵は、これらの化合物の生合成を支持する0.5L生成培地(例:培地8430又はその派生物)を含有する1.8Lフェルンバッハ又はエルレンマイヤーフラスコ中で行った。培養物に以上に記載されたように調製された種培養物を2〜5%(v/v)で接種し、以上に記載された条件で3〜7日間にわたりインキュベートした。
【0271】
バイオリアクター中の生成発酵:生成発酵は、バイオフロ300(BioFlo 300)モジュールにより制御されたバイオリアクター(7.5L容量、ニュー・ブルンスウィック・サイエンティフィック(New Brunswick Scientific)、米国ニュージャージー州)中で行った。5L滅菌培地(例:8430及びその派生物)を含有するバイオリアクターに種培養物(2〜5%、v/v)を接種し、溶存酸素量(例:10〜50%)、プロペラスピード(例:200〜500rpm)、pH(例:pH4.5〜7.0)、温度(例:25〜35℃)、適切であれば栄養供給などの制御パラメータを用いて又は用いずに3〜7日間にわたりインキュベートした。
【0272】
ISP4(1リットル当たり)
可溶性デンプン 10.0g
リン酸二カリウム 1.0g
硫酸マグネシウムUSP 1.0g
塩化ナトリウム 1.0g
硫酸アンモニウム 2.0g
炭酸カルシウム 2.0g
硫酸第1鉄 1.0mg
塩化マンガン 1.0mg
硫酸亜鉛 1.0mg
寒天 20.0g
【0273】
【表2】

表2.ATCC#172媒体(1リットル当たり)
【0274】
【表3】

表3.8430培地
【0275】
【表4】

表4.*R2微量元素溶液
一般的単離プロトコル
特定の化合物を生成する株の発酵ブロスを上清から分離し、遠心分離により微生物ペレットにした。上清中の標的化合物は、ジクロロメタン(DCM)、エチルアセテート(EtOAc)などの水非混和性溶媒を用いた分配抽出により、又はHP20、HP20ssなどの非極性樹脂と混合して固相抽出により、抽出可能である。ペレット中の標的化合物は、エチルEtOAc−メタノール(9:1、v/v)を用いて繰返し(4×)抽出可能である。微生物抽出物は真空中で濃縮すべくプールする。この抽出物に、HP20ビーズ(メタノール(MeOH)、DCM、アセトニトリル、イソプロパノール(IPA)などの有機溶媒を用いた)及び/又は元の上清の液/液抽出の有機相から溶出させた物質を添加可能である。
【0276】
合わせた抽出物をセライト(Celite)に通して濾過し、真空中で乾燥させて一次粗製物を生成し、そしてこの物質を秤量する。一次粗製物を最小限の100%MeOH又はDCMとテトラヒドロフラン(THF)との混合物に溶解させる。これにシリカゲル粉末などの結合培地をフラスコ内で添加し、真空中で再乾燥させて順相シリカゲルカラムクロマトグラフィーに供する。カラム床の粗製物とシリカゲルとの比は、好適には約1:5(wt/wt)である。ステップグラジエント、リニアグラジエント、又はアイソクラチック溶出条件を用いて、レディセップ(RediSep)(登録商標)順相シリカ・フラッシュカラムにより、粗物質を分画が可能である。溶出溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、エチルアセテート、エタノール、アセトン、イソプロパノール、毛髪も他の有機溶媒又は組合せを含みうる。富化標的化合物を有する画分をプールし、乾燥させて、LC/MS分析及び/又は薄層クロマトグラフィー(TLC)分析後、さらなる精製に供する。
【0277】
ウォーターズ・スフェリソーブCN(Waters Spherisorb CN)、ウォーターズ・プレプ・シリカ(Waters Prep Silica)、又はクロマシル60−5DIOL(Kromacil 60−5DIOL)などの順相調製又は特定分取HPLCカラムを介してさらなる精製を達成可能である。溶出溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、エチルアセテート、エタノール、アセトン、イソプロパノール、もしくは他の有機溶媒、又は組合せが挙げられうる。富化又は純粋標的化合物を有する画分をプールし、乾燥させて、LC/MS分析及び/又は薄層クロマトグラフィー(TLC)分析後、さらなる後処理に供する。
【0278】
追加の精製は、極性、溶解度などの濃縮物質及び標的化合物の性質の複雑性に依存して各種の逆相分取HPLCで達成可能である。分離使用した逆相分取HPLCカラムには、ウォーターズ・サンファイア調製C18 OBD(Waters Sunfire Prep C18 OBD)、ウォーターズ・エックスブリッジ調製C18 OBD(Waters Xbridge Prep C18 OBD)、クロマシルC4(Kromacil C4)、サーモ・アクレイム・ポーラ・アドバンテージ2(Thermo Acclaim Polar Advantage 2)、及びフェノメネックスC18(Phenomenex Luna C18)が含まれる。共通溶媒系は、0.1%ギ酸又は0.01%トリフルオロ酢酸調整剤又は25mMギ酸アンモニウム緩衝剤を用いた又は用いない水とアセトニトリル又はメタノールとの混合物である。溶出モードは、リニアグラジエント又はアイソクラチックのいずれかでありうる。純粋標的化合物を有する画分をプールし、乾燥させて、LC/MS分析及び/又は薄層クロマトグラフィー(TLC)分析後、さらなる後処理に供する。
【0279】
純粋化合物を含有する画分を後処理及び乾燥プロセスに付して純粋固体材料を得る。ある特定の標的化合物は、逆相カラムクロマトグラフィー精製後、エチルアセテート又はジクロロメタンを用いて水性マトリックスから可能である。溶媒除去及び乾燥の技術には、ロタバップ(rotavap)、スピードバック(speedvac)、及び凍結乾燥が含まれる。精製標的化合物の純度及び化学構造は、LC−MS(/MS)及びNMR技術により決定される。
実施例2.F2及びF3の単離
F1(目標質量595)、F2(目標質量609)、及び化合物3(目標質量623)を生成するストレプトマイセス・マレーシエンシス(Streptomyces malaysiensis)の10L発酵ブロス(NRRL B−24313、ATCC BAA−13、DSM41697、JCM10672、KCTC9934、NBRC16446、CGMCC、4.1900、IFO16448)は、遠心分離により分離した。F1及びF2は、清澄ブロス及び微生物ペレットの両方に存在する。上清中の目標化合物は、体積比(1:1、v/v)でEtOAcを用いて1回抽出した。ペレットは、各抽出のために1時間〜1.5時間にわたりオーバーヘッド撹拌機で撹拌しながら1.5LのEtOAc−MeOH(9:1、v/v)で3倍に抽出した。有機抽出物はセライト(Celite)に通して濾過した。合わせた濾液を乾燥するまで35℃で蒸発させて約30gの粗抽出物を与えた。次いで、残渣を90mLのDCM−THF(80:20、v/v)中に溶解させ、これに60gのシリカゲルを35℃で添加し、そして真空中で乾燥させた。乾燥残渣/シリカ混合物を120gレディセップ(RediSep)シリカゴールドカートリッジ上に負荷した。100%ヘプタン〜ヘプタン−EtOAc(6:4、v/v)を用いてリニアグラジエントで化合物を85mL/minで30分間溶出させ、 テレダインISCOコンビフラッシュ Rf(Teledyne ISCO Combiflash
Rf)装置を用いて50mL/画分で捕集した。
【0280】
TLCによりF2富化画分をヘプタン中20%〜30%EtOAcで溶出させた。次いで、プール画分を35℃で濃縮して900mg富化F2物質を提供し、これをシリカゲルカートリッジでさらに再精製した。約1mLのDCMを用いて画分を溶解させ、そして1.8gのシリカゲルを添加した。乾燥混合物を80gレディセップ(RediSep)シリカゴールドカートリッジ上に負荷した。100%ヘプタン〜ヘプタン−EtOAc(6:4、v/v)を用いてリニアグラジエントで化合物を60mL/minで30分間溶出させ、50mL/画分で捕集した。TLCによる純粋画分25〜28を合わせて35℃真空中で溶媒除去に供し、構造解明及び動物実験のために300mgの純粋F2(β形)を得た。
【0281】
F2:1H NMR(500MHz,ベンゼンd6)・・・。13C NMR(125MHz,ベンゼンd6)・・・。HR−MS[M+Na]+:計算値[C36H51NO7+Na]+632.3563、観測値632.3569。
【0282】
TLC及びLC−MS分析により化合物3富化画分をヘプタン中30%〜40%EtOAcで溶出させた。次いで、プール画分を35℃で濃縮して500mg富化化合物3物質を提供し、サーモ・ポーラ・アドバンテージII(Thermo Polar Advantage II)カラム(5μm、250×21.2mm)で逆相分取HPLCにより再精製した。分取HPLC条件には、水中70%アセトニトリル+0.1%ギ酸、アイソクラチック溶出モード、15mL/min、254nmが含まれていた。富化化合物3サンプルを10mLメタノールに溶解させ、繰返し10回の注射に供した。23.5分の時点で目標化合物3ピークを捕集した。分取HPLCプール画分からEtOAcで抽出した後、真空中で有機溶媒除去し、250mg純粋化合物3を得た。続いて、その化学構造を各種のLC−MS及びNMR技術により決定した。
【0283】
F3:1H NMR(500MHz,ベンゼンd6,回転異性体の1:1混合物)・・・。13CNMR(125MHz,ベンゼンd6)・・・。HR−MS[M+H]+:計算値[C36H49NO8+H]+624.3536、観測値624.3547。
実施例3.F22の単離
組換え株S1806から生成された10L発酵ブロスを遠心分離してペレット及び上清を得た。ペレットを1.5LのEtOAcMeOH(9:1、v/v)で3回抽出した。有機溶媒と組み合わせて真空中で濃縮し、1.8g粗抽出物を得た。これに2mLヘプタン−THF(4:1、v/v)を添加して溶解させ、次いで2gセライト(Celite)を添加し、30℃でロータリーエバポレータにより溶媒を除去した後、乾燥混合物を得た。乾燥残渣/セライト混合物をカラムクロマトグラフィー用の40gレディセップ(RediSep)シリカゴールドカートリッジに負荷した。100%n−ヘプタン〜ヘプタン(v/v)中40%EtOAcのリニアグラジエント溶出により20mL/minで25分にわたり50mL/画分で捕集して化合物を分画した。F22(目標質量607)は、LC−MS分析により同定された画分14で主に富化した。次いで、画分14を30℃の真空中で乾燥させて17.8mg固体材料を与え、これをサーモ・ポーラ・アドバンテージII(Thermo Polar Advantage II)カラム(5μm、250×21.2mm)の分取HPLCによりさらに精製した。分取HPLC条件には、水中90%アセトニトリル+0.1%ギ酸、アイソクラチック溶出モード、15mL/min、254nmが含まれていた。サンプルを1.78mLメタノールに溶解させ、繰返し5回の注射に供した。11.5分の時点で目標F22ピークを捕集した。真空中で溶媒除去後、3.64mgの純粋F22を得た。続いて、その化学構造を各種のLC−MS/MS及びNMR技術により決定した。
実施例4.所定化合物の合成
装置:
アジレント(Agilent)SD−1システムを用いた分取HPLCにより精製を行った。エレクトロスプレーLC/MS分析は、アジレント(Agilent)1260シリーズLCポンプを備えたアジレント1260インフィニィティ(Agilent 1260 Infinity)システムを用いて行った。使用した方法は以下の通りであった。
分析HPLC法1:
アジレント・ゾルバックス・エクステンド(Agilent Zorbax Extend)C−18逆相カラム(2.1×50mm)、1.8μm:
溶媒A:水+0.1%ギ酸
溶媒B:アセトニトリル+0.1%ギ酸
流量:0.5mL/min
注入量:5μl
カラム温度:40℃
グラジエント:
【0284】
【表5】

分析HPLC法2:
サーモサイエンティフィック・アクレイム・ポーラ・アドバンテージII(ThermoScientific Acclaim,Polar Advantage II)、4.6×150mm、5μm
溶媒A:水+0.1%ギ酸
溶媒B:アセトニトリル+0.1%ギ酸
流量:0.8mL/min
注入量:5μl
カラム温度:40℃:
アイソクラチック:
【0285】
【表6】

エレクトロスプレーUHPLC/MSは、アジレント(Agilent)1290シリーズLCポンプを備えたアジレント1290インフィニィティ(Agilent 1290 Infinity)システムを用いておなた。使用したカラムは同一であった。
分析UHPLC法1:
アジレント・ゾルバックス・エクステンド(Agilent Zorbax Extend)C−18逆相カラム(2.1×50mm)、1.8μm:
溶媒A:水+0.1%ギ酸
溶媒B:アセトニトリル+0.1%ギ酸
流量:0.5mL/min
注入量:5μl
カラム温度:40℃
グラジエント:
【0286】
【表7】

精製方法A:アクレイム・ポーラ・アドバンテージII(ACCLAIM Polar Advantage II)(21.2x250mm)カラムを用いて行った。流量17mL/min、アイソクラチック70%B。溶媒Aは0.1%水性ギ酸であり、溶媒Bは0.1%ギ酸を含有する100%アセトニトリルであった。
F11の合成
(2S)−1−((4R,7S)−7−((2R,3S,4R,11S,12R)−12−ベンジル−3,11−ジヒドロキシ−4−メチルテトラデカン−2−イル−2−ヒドロキシ−4−メチル−3−オキソオキセパン−2−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸C−11ラクトン.F11の合成
【0287】
【化31】

窒素下の(2S)−1−((4R,7S)−7−((2R,3S,4R,6E,9E,11R,12R)−12−ベンジル−3,11−ジヒドロキシ4−メチルテトラデカ−6,9−ジエン2−イル)−2−ヒドロキシ−4−メチル−3−オキソオキセパン−2−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸C−11ラクトン(5mg、8.2μmol)と10%パラジウム担持カーボン(2mg)とスターラビーズとの混合物にエチルアセテート(1mL)を添加した。フラスコに水素を充填し、激しく1.5時間撹拌した。水素の雰囲気を窒素で置き換え、反応系をセライトに通して濾過した。より多くのエチルアセテートでセライトパッドを洗浄し、真空中で溶媒を蒸発された。グラジエント溶出エチルアセテート:ヘキサン40:60〜100:0でシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して標記化合物を与えた。
【0288】
1H NMR(CDCl3,500MHz)・・・。
13C NMR(CDCl3,500MHz)・・・。
MS(ESI):(C36H55NO7+H)+に対する計算値614.4057、実測値614.4066。
F24の合成
(S)−1−(2−((2R,3R,6S)−6−((2R,3R,4S,6E,9E,11R,12R)−12−ベンジル−3,11−ジヒドロキシ−4−メチル−5−オキソテトラデカ−6,9−ジエン2−イル−2−ヒドロキシ−3−メチルテトラヒドロ−2−H−ピラン−2−イル−2−オキソアセチル)ピペリジン−2−カルボン酸C−11ラクトンの合成
【0289】
【化32】

窒素の下のエチルアセテート(1mL)中のF3(24.2mg、36.7μmol)の溶液に10%Pd/C(12mg、50%w/w)を添加した。フラスコに水素を充填し、サスペンジョンを室温で30分間撹拌した。水素を窒素で置き換え、次いで、反応混合物をセライトに通して濾過した。真空下で濾液を濃縮して24mgの粗生成物を与え、その一部を方法Aにより精製して白色固体(11mg、47.8%)としてテトラヒドロWDB−003を与えた。TLC:(50/50ヘプタン/エチルアセテート)Rf=0.45。
【0290】
1H NMR(400MHz,C6D6,回転異性体の1:0.3混合物,アステリスク(*)は副異性体に関連するピークを表す)・・・。
13C NMR(400MHz,C6D6)・・・。MS(ESI):(C36H53NO8+Na)+に対する計算値650.37、実測値650.3。
F25の合成
(2S)−1−((4R,7S)−7−((2R,3R,4S,11S,12R)−12−ベンジル−3,11−ジヒドロキシ−4−メチル−5−オキソテトラデカン−2−イル)−2−ヒドロキシ−4−メチル−3−オキソオキセパン−2−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸C−11ラクトンの合成。
【0291】
【化33】

窒素下のジクロロメタン(2mL)中の(S)−1−(2−((2R,3R,6S)−6−((2R,3R,4S,6E,9E,11R,12R)−12−ベンジル−3,11−ジヒドロキシ−4−メチル−5−オキソテトラデカ−6,9−ジエン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル−2−オキソアセチル)ピペリジン−2−カルボン酸C−11ラクトン−F24(18.8mg、30.1μL)とトリエチルアミン(4.0μL、30.1μL)との氷冷溶液。得られた溶液を0℃で15分間撹拌し、次いで、室温で2時間加温した。反応系を0℃まで冷却させ、トリエチルアミン(4.0μL、30.1μL)及びtert−ブチルジメチルシリル・トリフルオロメタンスルホネート(6.9μL、30.1μmol))の第2の部分を添加した。反応系を再び室温に加温し、窒素下で16時間撹拌した。ジクロロメタン(10mL)及び0.5M水性重炭酸ナトリウム溶液(10mL)を添加し、有機層を分離し、5%ブライン溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、そして濾液を真空中で濃縮した。方法Aを用いて粗生成物を精製することにより出発物質を白色固体(2.52mg)として、標記化合物(4.51mg)を白色固体として与えた。
【0292】
1H NMR(400MHz,C6D6)・・・。
13C NMR(400MHz,C6D6)・・・。
MS(ESI):(C36H53NO8+Na)+に対する計算値+650.37、実測値650.3。」

摘記(M):実施例
「実施例5.シクロスポリンアナログの合成
一般的プロトコル
溶液相ペプチド合成を用いて、・・・
【0293】
・・・
実施例6.本発明の環式ペプチド化合物の合成
・・・
実施例7.化合物とシクロフィリンAとの結合」

摘記(N):実施例
「実施例8.化合物とFKBP12との結合
本発明の化合物とFKBP12との結合は、以下のプロトコルを用いて決定可能である。
一般的プロトコル
・・・
【0304】
結果:選択された化合物のFKBP12結合は、表6に示されるように決定された。
【0305】
【表9】

表6.FKBP12結合
実施例9.化合物とFKBP12との結合を測定するSPRプロトコル
このプロトコルでは、方法として表面プラズモン共鳴(SPR)を利用して化合物(アナライト)と固定化FKBP12(リガンド)との結合の速度論(KD、Ka、Kd)を決定する。
・・・
【0310】
【表10】

表7.FKBP12結合データ
実施例10.SPRによるF2及びF11とFKBP12との結合の決定
このプロトコルでは、方法として表面プラズモン共鳴(SPR)を利用してF2及びF11(アナライト)と固定化FKBP12(リガンド)との結合の速度論(KD、Ka、Kd)を決定する。
・・・
【0315】
結果:F2とFKBP12との結合の値は、Ka(1/Ms):4.50×104、Kd(1/s):5.94×10−4、及びKD:13.2nMである。
F11とFKBP12との結合の値は、Ka(1/Ms):5.67×105、Kd(1/s):8.8×10−3、及びKD:15.6nMである。
実施例11.化合物の細胞透過性の決定
化合物の細胞透過性は以下のプロトコルを用いて決定する。
一般的プロトコル
・・・
【0321】
結果:選択化合物の細胞透過性データを表8に示されるように収集した。
【0322】
【表11】

表8.バイオセンサー透過性
実施例12.プレゼンタータンパク質/化合物複合体と標的タンパク質との結合
本発明のプレゼンタータンパク質/化合物複合体と標的タンパク質との結合は、以下のプロトコルを用いて決定可能である。
シクロフィリンA複合体に対する一般的プロトコル
・・・
FKBP12複合体に対する一般的プロトコル
このプロトコルでは、パーキン・エルマー・アルファLISA(Perkin Elmer AlphaLISA)技術プラットフォームを利用して6xHISタグ付き標的タンパク質+FLAGタグ付きFKBP12とFKBP結合化合物との結合を測定することにより化合物を検出する。
【0327】
・・・
実施例13.SPRによるプレゼンタータンパク質/化合物複合体と標的タンパク質との結合の決定
このプロトコルでは、方法として表面プラズモン共鳴(SPR)を利用して哺乳動物標的タンパク質(アナライト)と固定化FKBP12−化合物二元複合体(リガンド)との結合の速度論(KD、Ka、Kd)を決定する。
【0331】
・・・
実施例14.SPRによるFKBP12/F2複合体とCEP250の結合の決定
このプロトコルでは、方法として表面プラズモン共鳴(SPR)を利用してCEP250(アナライト)と固定化FKBP12−F2二元複合体(リガンド)との結合の速度論(KD、Ka、Kd)を決定する。
【0335】
・・・
【0339】
結果:FKBP12/F2複合体とCEP25011.4及びCEP25029.2との結合のk値は、それぞれ、Ka(1/Ms):5.71×105、Kd(1/s):3.09×10−3、及びKD:5.4nM、及びKa(1/Ms):3.11×105、Kd(1/s):9.25×10−5、及びKD:0.29nMである。
実施例15.ITCによるプレゼンタータンパク質/化合物複合体と標的タンパク質との結合の決定
一般的プロトコル
・・・
実施例16.ITCによるFKBP12/F2及びFKBP12/F2複合体とCEP250との結合の決定
このプロトコルでは、等温滴定熱量測定(ITC)を利用してFKBP12−F2及びFKBP12−F11二元複合体とCEP250との結合に伴う熱変化を直接測定する。熱変化の測定は、会合定数(Ka)、反応化学量論比(N)、及び結合エンタルピーの変化(ΔΗ)の正確な決定を可能にする。
【0342】
・・・より詳細な実験パラメータは、以下の表11及び12に示される。
表9.ITC実験パラメータ
試験装置:MicroCal TM iT200 (GE Healthcare)
【0344】
【表12】

実験パラメータ
【0345】
【表13】

注入パラメータ
【0346】
【表14】

表10.ITCに対するタンパク質及びリガンドの濃度
タンパク質及びリガンドの最終濃度
【0347】
【表15】

データフィッティング:以下の手順に従ってオリジン(Origin)ITC200ソフトウェアによりデータのフィッティングを行った。
【0348】
1)生データの読込み。
2)「mRawlTC」:積分ピーク及びベースラインを調整してすべてのピークを積分する。
【0349】
3)「ΔH」−データ管理:不良データを除去し(注入#1及び他のアーチファクト)、直線を差し引く(バックグラウンド除去)。
4)「ΔH」−モデルフィッティング:部位モデルの1セットを選択し、χ2がさらに減少しなくなるまでレーベンバーグ・マーカートアルゴリズムを用いてフィッティングを行い、「done」で終了する(パラメータN、Ka、及びΔΗはフィッティング基づいて計算する)。FKBP12−F2及びFKBP12−F11二元複合体とCEP250との結合のITC測定は、以下の表11にまとめる。
【0350】
【表16】

表11.ITC測定
結果:全体として、CEP25011.4及びCEP25029.4に結合するFKBP12−F2及びFKBP12−F11二元複合体のデータは、類似の相互作用パラメータを示す。Kd値はすべての組合せで類似していた。すべての相互作用は、ほとんど同一の熱力学的プロファイルを示し、結合は、純粋エンタルピー結合モードにより特徴付けられる(−T*AS項は正であり、ギブズ自由エネルギーに寄与しない)。すべての相互作用に対する結合化学量論比は、N=0.5〜0.6であり、CEP25011.4/F2/FKBP12の結晶構造で実証されるように2種のFKBP12分子に結合する1種のCEP250ホモ二量体に対して1:2の結合比を支持する。
実施例17.三元複合体の結晶構造決定
一般的プロトコル
・・・
実施例18.FKBP12/F2及びFKBP12/F11複合体とCEP250との三次複合体の結晶構造決定
このプロトコルでは、FKBP12−化合物2−CEP250及びFKBP12−F11−CEP250の三元複合体の構造に対して結晶化及び構造決定方法を記述する。
【0353】
・・・
【0355】
結果:FKBP12−F2−CEP250の全体構造:F2との複合体の状態でCEP250を有するFKBP12の構造では、2つのFKBP12モノマーがCEP250のホモ二量体に結合される。2つのCEP250モノマーはコイルドコイル構造を形成する。基本的に同一の全体的コンフォメーションを有して非対称ユニットで4つのヘテロ二量体が存在する。モデルは、FKBP12の残基Met1〜Glu108とCEP250のAsp2142〜His2228とを含む。電子密度は、リガンドの配向及びコンフォメーションを含めてリガンドF2に対して明瞭な結合モードを示す。
・・・
【0362】
最終構造の統計は、以下の表12及び13に列挙されている。
【0363】
【表17】

表12.FKBP12−F2−CEP250
【0364】
【表18】

表13.FKBP12−F11−CEP250」

(イ) 本願明細書等には、本願補正発明8の医薬用途に関連する事項、及び本願補正発明1及び8の課題について、以下の摘記(O)及び摘記(P)の事項も記載されている。

摘記(O):背景技術と課題
「【背景技術】
【0002】
低分子薬剤の大多数は、標的タンパク質上の機能的重要ポケットに結合することにより作用し、それにより、そのタンパク質の活性をモジュレートする。たとえば、コレステロール低下薬剤のスタチンは、HMG−CoAレダクターゼの酵素活性部位に結合し、それにより、酵素がその基質にエンゲージするのを防止する。多くのかかる薬剤/標的相互作用ペアが知られているという事実から、適正量の時間、労力、及び資源をかければすべてではないにしてもほとんどのタンパク質に対する低分子モジュレータを発見可能であるという誤った考えに導かれる者が現れうる。このことは真実からはほど遠い。現在の推定値によれば、全ヒトタンパク質の約10%が低分子の標的となりうるにすぎない。残りの90%は、低分子薬剤の発見が面倒又は困難であると現在考えられている。かかる標的は、通常「アンドラッガブル」として参照される。こうしたアンドラッガブル標的には、医学的に重要なヒトタンパク質の莫大なかつほとんど未開発の宝庫が含まれる。それゆえ、かかるアンドラッガブル標的の機能をモジュレート可能な新しい分子モダリティーを発見することに大きな関心が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、たとえば、プレゼンタータンパク質(たとえば、FKBPファミリーのメンバー、シクロフィリンファミリーのメンバー、又はPIN1)及び標的タンパク質に結合することにより、生物学的プロセスをモジュレート可能な化合物(たとえばマクロ環式化合物)を特徴とする。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及び/又はプレゼンタータンパク質は細胞内タンパク質である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及び/又はプレゼンタータンパク質は哺乳動物タンパク質である。いくつかの実施形態では、提供される化合物は、細胞内たとえば哺乳動物細胞内のトリパータイトプレゼンタータンパク質/化合物/標的タンパク質複合体に関与する。いくつかの実施形態では、提供される化合物は、癌、炎症、感染症などの疾患及び障害の治療で有用でありうる。」

摘記(P):医薬用途自体について
「【0175】
本発明は、たとえば、プレゼンタータンパク質(たとえば、FKBPファミリーのメンバー、シクロフィリンファミリーのメンバー、又はPIN1)及び標的タンパク質に結合することにより、生物学的プロセスをモジュレート可能な化合物(たとえばマクロ環式化合物)を特徴とする。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及び/又はプレゼンタータンパク質は細胞内タンパク質である。いくつかの実施形態では、標的タンパク質及び/又はプレゼンタータンパク質は哺乳動物タンパク質である。いくつかの実施形態では、提供される化合物は、細胞内たとえば哺乳動物細胞内のトリパータイトプレゼンタータンパク質/化合物/標的タンパク質複合体に関与する。いくつかの実施形態では、提供される化合物は、癌、炎症、感染症などの疾患及び障害の治療で有用でありうる。
化合物
本発明は、たとえば、プレゼンタータンパク質(たとえば、FKBPファミリーのメンバー、シクロフィリンファミリーのメンバー、又はPIN1)及び標的タンパク質(たとえば、哺乳動物標的タンパク質や菌類標的タンパク質などの真核生物標的タンパク質又は細菌標的タンパク質などの原核生物標的タンパク質)への結合により、生物学的プロセスをモジュレート可能な化合物(たとえばマクロ環式化合物)を特徴とする。簡潔に述べると、こうした化合物は、FKBPなどの内因性細胞内プレゼンタータンパク質に結合し、得られる二元複合体は、細胞内標的タンパク質に選択的に結合してその活性をモジュレートする。なんら特定の理論により拘束されることを望むものではないが、プレゼンタータンパク質と化合物と標的タンパク質とのトリパータイト複合体の形成が、タンパク質−化合物及びタンパク質−タンパク質の両方の相互作用により駆動され、かつ両方とも、標的タンパク質の活性のモジュレーション(たとえば、正又は負のモジュレーション)に必要とされるということを、我々は提案した。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、通常はプレゼンタータンパク質に結合しないうえに化合物の存在下で大幅に増強される結合を有していないタンパク質標的へのプレゼンタータンパク質の結合を「再プログラム」することにより、こうした新しい標的の活性をモジュレートする(たとえば、正又は負にモジュレートする)能力をもたらす。
【0176】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、プレゼンタータンパク質結合部分と標的タンパク質相互作用部分とを含む。いくつかの実施形態では、プレゼンタータンパク質結合部分及び標的タンパク質相互作用部分は、環構造の個別部分であり、たとえば、それらはオーバーラップしない。いくつかの実施形態では、プレゼンタータンパク質結合部分及び標的タンパク質相互作用部分は、片側又は両側でリンカーにより互いに接続される。
【0177】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、本明細書に記載されるように、複合体の形成の不在下で標的タンパク質に実質的に結合しない。いくつかの実施形態では、本発明の化合物とプレゼンタータンパク質との複合体は、本明細書に記載されるように、複合体の形成の不在下での標的タンパク質への化合物の親和性の少なくとも5倍(少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍)の親和性で標的タンパク質に結合する。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、プレゼンタータンパク質との複合体の形成の不在下で標的タンパク質の活性を実質的にモジュレートしない。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、10μM超(たとえば、20μM超、50μM超、100μM超、500μM超)のIC50で標的タンパク質の活性を阻害する。代替的に、本発明の化合物は、10μM超(たとえば、20μM超、50μM超、100μM超、500μM超)のAC50で標的タンパク質の活性を増強する。ある特定の実施形態では、化合物とプレゼンタータンパク質との複合体は、化合物単独の少なくとも5倍の活性である(すなわち、1/5のIC50又はAC50を有する)。
【0178】
本発明の化合物(たとえばマクロ環式化合物)は、一般にプレゼンタータンパク質に強く結合する。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の化合物(たとえばマクロ環式化合物)は、10μM未満(たとえば、5μM未満、1μM未満、500nM未満、200nM未満、100nM未満、75nM未満、50nM未満、25nM未満、10nM未満)のKDでプレゼンタータンパク質に結合するか、又はたとえば、1μM未満(たとえば、0.5μM未満、0.1μM未満、0.05μM未満、0.01μM未満)のIC50でプレゼンタータンパク質のペプチジル−プロリルイソメラーゼ活性を阻害する。」

ウ 本願補正発明1について
(ア) 検討
a 本願補正発明1は、「マクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩」という物の発明である。
そうすると、上記ア(ア)で説示したように、本願明細書等の記載が、本願補正発明1について実施可能要件を満たすためには、当業者が、本願明細書等の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願補正発明1に係る化合物類全般を少なくとも製造できることが必要である。

b 本願補正発明1の化合物類の「14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物」は、「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」及び「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」を有するものの、それらの位置関係や化学構造全体が特定されていない化合物であって、「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」及び「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」などの構造を連結する膨大な可能性のある任意の「リンカー」も有し得る「化合物」である(摘記(I))。
すなわち、本願補正発明1の化合物類の化合物は、部分構造のみが特定されるだけで、その化学構造全体の特定がされていない化合物である。

c そして、本願明細書等には、製造に関連する一般的な説明として、摘記のとおり、
摘記(A):細菌株培養と発酵ブロスからの単離、
摘記(B):異性体の説明と取得の一般論、
摘記(C):工学操作という用語の説明、
摘記(D):マクロ環式化合物の定義と説明、
摘記(E):「結合に関与する」等の用語の説明、
摘記(F):低分子と標的タンパク質との相互作用の一般論、
摘記(G)及び(H):化合物の構造例とそのLC−MSのデータ等、
摘記(I):リンカーの一般論、
摘記(J):低分子と標的タンパク質との相互作用について説明、
摘記(K):プレゼンタータンパク質/化合物複合体の相互作用の説明や医薬組成物の一般論、
が記載されているだけである。

そこで、本願補正発明1の化合物類の化合物に関する製造の一般的な記載について、まず検討する。

d 本願明細書等には、細菌株培養と発酵ブロスから化合物を単離する工程を経る製造についての一般的な記載(摘記(A)及び(C))、一般的なラセミ混合物の分割及び互変異性による変換のロックによる特定異性体の取得の記載(摘記(B))、化学構造が特定された化合物「F1」〜「F25」の例示とともに、化合物が天然化合物又は天然化合物の変異体(半合成化合物)であって、天然化合物の変異体は、環サイズを参照天然化合物と共有するもの、又は、1個以上の置換基の同一性のみが参照天然化合物と異なるものであること(摘記(G)の【0181】及び摘記(H))、並びに、参照野生型細胞に対して遺伝子操作された細胞により調製される化合物、化合物の生成を増強するように改変された培養条件で細胞により生成される化合物という工学操作された化合物(摘記(G)の【0189】)が記載されているとしても、天然化合物又は半合成化合物は、細胞により生成される化合物に由来する限定的な化合物にすぎないから、化学構造全体の特定がないマクロ環式化合物全般が取得できることの参考にはならない。

e また、本願明細書等には、「工学操作された化合物」として、「化学合成により調製される化合物」も挙げられているが、その詳しい一般的な説明はなく(摘記(G)の【0189】)、本願補正発明1に該当しない「マクロ化合物」についての文献の提示(摘記(D)及び摘記(G)の【0190】:「スウィーニー,Z.K.(Sweeney,Z.K.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、2014年、epub ahead of print」の文献は、「Zachary K.Sweeney et al.,J.Med.Chem.2014,57,7145−7159」であるとした。)や化合物の説明(摘記(F)及び(J))もあるが、いずれも天然のマクロ環式化合物由来の化合物の説明であるか、化合物の化学合成に関する記載が実質的にない説明であり、化学構造全体の特定がないマクロ環式化合物全般が取得できることの参考にはならない。

f さらに、本願補正発明1の化合物類の化合物の「リンカー」についても本願明細書等には記載があり(摘記(I))、一般的な連結反応の説明や「式XIX:A1−(B1)a−(C1)b−(B2)c−(D)−(B3)d−(C2)e−(B4)f−A2」などの「リンカー」が例示されているものの、2つの部分構造のみが特定され、その化学構造全体の特定がない任意の「14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物」である本願補正発明1の化合物類の化合物に対して、どのように各構造単位(「ビルディングブロック」とも称することがある。)を決定し、かつ、どのような工程順により製造にあたるのか、詳しい具体的な説明はなく、このような一般的な記載によって、化学構造全体の特定がないマクロ環式化合物全般が具体的に製造できるとはいえない。

g そして、医薬組成物に関する一般的な調製についての記載(摘記(E)及び(K))では、製剤化の説明がなされるだけで、本願補正発明1の「マクロ環式化合物」自体の製造に関する追加的な説明は何らなされていない。

つぎに、具体的な実施例の記載(摘記(L)〜(N))を検討する。

h 本願明細書等には、具体的に実施例1〜3において、「株:FKBPリガンド(例:F1、F2、F3、又はそれらの構造類似化合物及びアナログ)を生成する細菌株、たとえば、ストレプトマイセス・マレーシエンシス(Streptomyces malaysiensis)DSM41697、他の生成種、又は遺伝子修飾誘導体」の培養物を用いて生成発酵し、特定の化合物を生成する株の発酵ブロスを上清から分離し、標的化合物を抽出・精製すること、実施例4において、生合成した「マクロ環式化合物」を一部飽和化又は互変異性化することが記載され(摘記(L))、本願補正発明1の化合物類の化合物に該当する「F2、F3、F11、F22、F24及びF25」のわずか6つの化合物のみが、生合成又は生合成による化合物を単に飽和化又は互変異性化することによって実際に得られているといえる。
ここで、「F5、F20及びF21」の化合物は、摘記(N)の表6(【0305】)に示されるとおり、「FKBP12への結合親和性」が測定されているものの、どのような株を用いて生合成(副生成物としての生成も含む。)したのか、また、それぞれ「F3、F2及びF1」の化合物を修飾・変換したとしても、いかなる半合成をしているのか、その製造手法は示されていないし、「F1、F4、F6〜F10、F12〜F19及びF23」の化合物は、そもそも本願補正発明1に該当する化合物類に関する例ではない。
さらに、実施例5〜7(摘記(M))は本願補正発明1に該当する化合物類に関する例ではなく、環式ペプチド化合物であって、その製造工程はアミノ酸を構成単位とするペプチド結合反応が主体であって、本願補正発明1の化合物類の製造に、特に参考となるものではない。
そうすると、「F2、F3、F11、F22、F24及びF25」という6つの化合物以外については、具体的な製造方法とともに得られた化合物の特性が記載されているとはいえない。

i 実施例8〜13では、実施例1〜7で合成した化合物を用いて、複合体形成のための「結合親和性」、「ΔG」及び「結晶構造」などを検討しているが(摘記(N))、本願補正発明1の化合物類の製造自体に関する記載ではない。

j 本願補正発明1の化合物類の「14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物」は、部分構造のみが特定され、その化学構造全体の特定がない任意の化学構造を含む化合物であるところ、その具体的な製造方法で得られた化合物は、上記hで述べたとおり、生合成によるか、生合成による化合物を単に飽和化又は互変異性化したわずか6つの化合物のみである。
ここで、培養などの生合成による場合、得られる化合物自体を意図的に設計することはできず、かつ、生合成で得られた化合物を改変するとしても、基本構造をある程度保持した状態で、飽和化、互変異性化又は置換基の変換程度の技術常識は確認できても(摘記(G)の【0181】及び摘記(H))、生合成したマクロ環式化合物に、1〜20個程度の環原子となるリンカーを導入したり、既存のリンカーを変更したり、結合部位の結合方向を逆にしたり、特定位置にのみ置換基を導入することについての技術常識は確認できないし、化学構造全体の特定がないマクロ環式化合物を自由に生合成及び化学改変できるという技術常識も確認できない。
また、本願明細書等には、上記c〜iで示したとおり、本願補正発明1の「マクロ環式化合物」の生合成の工程を経ない化学合成を主体とした製造方法について、反応スキーム及び参考となる技術文献の一般的な例示は一切なく、かつ、化学構造が特定できる個々の化合物(たとえば、F2の化合物)でさえ、原料や製造工程、及び反応条件等の開示を伴った化学合成による実施例は全く記載されていないし、化学構造全体の特定がないマクロ環式化合物を自由に化学合成できるという技術常識も確認できない。

k そうすると、「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」及び「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」の位置関係の特定がなく、膨大な可能性のある任意の「リンカー」を有し、化学構造全体が特定されていない「14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物」類である本願補正発明1の製造において、上記摘記(H)の「F2、F3、F11、F22、F24及びF25」というわずか6個の化合物類の製造以外は、具体的にいかなる生合成、半合成又は全合成の工程を有する製造方法とすれば、本願補正発明1の化合物類を製造することができるかについて、本願明細書等には一切の記載がなく、これらのことが本願出願時の技術常識であったことも確認できないから、本願補正発明1の化合物類は、その製造のために、当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を要する化合物を多数含んでいるというべきである。

l 以上のとおり、本願補正発明1の化合物類は、当業者が、本願明細書等の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、製造できるとはいえない。

(イ) 請求人の主張について
a 請求人の主張の概要
請求人は、令和4年6月7日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書(以下、単に「補正された審判請求書」という。)において、「補正後の請求項1に記載のマクロ環式化合物を、当業者が本願明細書及び出願時の技術常識製造に基づいて製造できる」旨とともに、その具体的な理由として、以下の(a)〜(c)の点を主張している。

(a) 本願明細書の実施例1には一般的発酵プロトコルが記載されており、実施例2、3には、化合物F2、F3、F22の製造、単離、特徴付けについて記載されている。また、明細書には、例示的化合物F11、F24、F25を化学的に半合成する方法が記載されている。本願明細書に記載した生合成方法によって、さらに、本願出願時において当業者に知られていた、単離された化合物に対する化学的修飾によって本願請求項1の化合物を製造することは当業者の能力の範囲内であると思料する。

(b) 当業者は、実施例に記載した生合成方法および半合成方法に加え、実施例1−4に記載した事項と本願出願時の技術的常識を踏まえた、本願請求項に特定した化合物の新たな(de novo)合成法を実施可能であったと思料する。

(c) 以下は、請求項1の化合物の例示的な全合成方法である。この全合成方法は、直鎖中間体の合成(反応スキーム1)、中間体Aの合成(反応スキーム2)、中間体B、C、Dの合成(反応スキーム3)、マクロ環化(反応スキーム4)、請求項1の化合物を製造するための環化(反応スキーム5)により構成されており、以下、個別に説明する。これら反応スキーム1−5は、文献名を併記したように、いずれも本願出願時において公知の有機反応であるから、当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく、これら反応スキーム1−5に従って製造工程を実施すること及び適宜改変することを実行できるものと思料する。
すなわち、当業者であれば、本願明細書の記載及び技術常識に基づき、まず、任意に置換基を有し得る比較的簡単な中間体(ビルディングブロック)A〜Dを合成し(反応スキーム1、2、3)、その後、MOM脱保護工程、エステルカップリング工程、F’moc脱保護工程、カルボン酸エステル加水分解工程、ペプチドカップリング工程、MB脱保護工程、デスマーチン酸化工程、TBAF脱保護工程(反応スキーム1、2、3:審決注:反応スキーム4、5の誤記とした。)を実施可能である。

b 請求人の主張についての当審合議体の判断
(a) 上記a(a)の単離された化合物に対する化学的修飾によって本願請求項1の化合物を製造することは当業者の能力の範囲内であるとの主張に関し、単に不飽和の炭素−炭素2重結合のみを全て飽和化したり、互変異性の関係にある化合物に変換したりすることは、本願明細書等に実施例4が例示されている。しかしながら、本願補正発明1は、上述のとおり、化学構造全体及び骨格構造さえ明確にされていない化合物に係る発明であり、請求人の主張する化学改変がたとえ製造に関しての一部プロセスに有用であったとしても、当業者が最終化合物を製造できる程度に本願明細書等が明確かつ十分に記載されているとは到底いえない。すなわち、マクロ環式化合物におけるフェニル環の特定の位置に水素に変えて置換基を導入したり、任意の化学構造を有するリンカーを導入したりすることなどは、本願明細書等には全く記載がなく、このような化合物の修飾や環の部分構造の導入について、過度の試行錯誤等を要することなく当業者が製造できることを具体的に示す技術常識は確認できないないから、当該主張は上記(ア)の判断を左右するものではない。

(b) 上記a(b)及び(c)において、請求人は、本願明細書等に全く記載のない化合物の全合成法を審判請求書において説明しているが、これらの記載は、本願明細書等の記載の補足とはいえず、上記主張はその前提において失当である。
また、各反応スキームを念のため検討しても、当業者であろうと、過度の実験を必要とすることなく、これら反応スキーム1−5に従って製造工程を実施すること及び適宜改変することを実行できるものとはいえないから、当該主張も上記(ア)の判断を左右するものではない。
たとえば、請求人が主張する反応スキーム1〜3において、目的とする環式マクロ化合物のどの部分を各中間体(ビルディングブロック)とし、また、どの順序で各中間体を結合させるのか、その指針や技術常識が本願出願前において明らかであったとする文献などの根拠を、請求人は補正された審判請求書等において示していないし、実際の化学合成においては、その選択が当業者にとって過度の試行錯誤となることが少なくないものである。
すなわち、単に、各中間体が製造可能であることを示す文献を後から提示しても、マクロ環式化合物の各中間体の決定及び各中間体の結合順序についてまで、本願出願前において技術常識であったという根拠が見当たらないし、そもそもそのような文献が本願発明に対して有用な文献であるとする根拠もない。
さらに、請求人が主張する反応スキーム4及び5については、文献などの根拠の提示はないし、本願出願前における技術常識であるとすることはできないし、また、そのような技術常識も確認できない。

(c) 以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。

エ 本願補正発明8について
(ア) 検討
a 本願補正発明8は、「医薬組成物」という物の発明であって、「請求項1〜6のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩」と「薬学的に許容可能な賦形剤」を含む医薬用途発明である。
そうすると、上記ア(イ)で説示したように、本願明細書等の記載が、本願補正発明8について実施可能要件を満たすためには、本願明細書等において、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、「請求項1〜6のいずれか一項に記載のマクロ環式化合物またはその薬学的に許容可能な塩」を含む「医薬組成物」を製造することができることに加えて、医薬用途に使用できることにつき、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項を記載し、出願時の技術常識に照らして、当該用途の医薬として使用できることを当業者が理解できることが必要である。

b 本願明細書の発明の詳細な説明には、上記ウ(ア)で説示したとおり、本願補正発明8の医薬組成物が含む本願補正発明1の化合物類全般の製造方法について記載されておらず、上記ウで述べたとおり、本願補正発明1の化合物類は、当業者が、本願明細書等の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願補正発明1に係る化合物類全般を製造できるとはいえないから、本願補正発明8の医薬組成物を製造できるものとはいえない。
さらに、摘記(E)、(K)及び(N)〜(P)を参照しても、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明8の医薬組成物に関し、医薬用途に使用できることを裏付ける、具体的な薬理データ等の実際に薬理作用を有することを当業者が把握できるような記載が十分にあるとはいえない。
すなわち、本願明細書等には、本願補正発明8が含む本願補正発明1の化合物類が、プレゼンタータンパク質及び標的タンパク質に結合し、トリバータイト複合体を形成し、癌、炎症、感染症などの疾患及び障害の治療に有用であることが形式的に記載されているが(摘記(O)及び(P))、上記化合物類のうち、実際にトリバータイト複合体の形成が確認されているのは、F2とF11の化合物類のみであって(摘記(N))、「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」及び「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」の位置関係の特定がなく、膨大な可能性のある任意の「リンカー」を有し、化学構造全体が特定されていない「14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物」類である本願補正発明1の全てについて、トリバータイト複合体の形成が可能で、かつ、標的タンパク質の活性をモジュレートし薬理活性を示すとすることの客観的根拠を確認できないから、本願補正発明8の医薬組成物が含む化合物類全てが、トリバータイト複合体を形成し、かつ、薬理活性を実際に有することを、当業者が認識できるとはいえない。
そして、たとえば本願明細書等の摘記(K)の【0249】に記載のように、「結合相互作用の少なくとも70%は、ファンデルワールス相互作用及び/又はπ効果相互作用」によるものであって、実際にトリバータイト複合体が形成できるかどうかは、各部分構造の相対的位置や向きだけでなく、リンカーなどの他の部分構造が相互作用を阻害しないことも必要であるといえるから、上記化合物類全てについて、F2とF11の化合物類と同様に、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項が記載されているとはいえない。

c 以上のとおり、本願補正発明8の医薬組成物が含む本願補正発明1の化合物類は、当業者が、本願明細書等の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、製造できるとはいえないから、本願補正発明8の医薬組成物を製造できるものとはいえないし、本願明細書等の記載は、本願補正発明8の医薬組成物がその用途に使用できることにつき、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項を十分に記載したものでなく、かつ、本願出願時の技術常識に照らして、当該組成物が当該用途に使用できることを当業者が理解できるものではないから、本願明細書等の記載は、本願補正発明8について実施可能要件を満たすものとはいえない。

(イ) 請求人の主張について
請求人は、補正された審判請求書において、特に、本願補正発明8の医薬組成物について、本願補正発明1の化合物類が製造できることを主張するにとどまり、そもそも薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項が明細書等に十分に記載されているかどうかについては主張していない。
そうすると、上記ウ(イ)bに述べたとおり、当業者が、本願明細書等の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願補正発明8に係る化合物類全てを製造できるとはいえないものであるから、請求人の主張は採用できないし、さらに、本願明細書等には、本願補正発明1の化合物類全般に対応した本願補正発明8について、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項についての十分な記載があるものでもない。

オ 理由A(実施可能要件)についてのまとめ
以上のとおり、本願明細書等の記載は、当業者が本願補正発明1及び本願補正発明8の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3) 理由B(サポート要件)について
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(参考判決例としては、知財高判平17.11.11(平17(行ケ)10042号)が挙げられる。)

イ 検討
本願明細書等には、上記(2)イに摘記したとおりの事項が記載されているところ、当該明細書等の記載(特に、摘記(O)及び(P))によれば、本願補正発明1の課題は、「アンドラッガブル標的の機能をモジュレート可能な新しい分子モダリティーであって、プレゼンタータンパク質及び標的タンパク質に結合することにより、生物学的プロセスをモジュレート可能なマクロ環式化合物類の提供」であり、本願補正発明8の課題は、「トリパータイトプレゼンタータンパク質/マクロ環式化合物/標的タンパク質複合体を形成できるマクロ環式化合物類を含有することにより、癌、炎症、感染症などの疾患及び障害の治療で有用な医薬組成物の提供」にあるものと認める。
しかしながら、上記(2)ウで詳述したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、出願時の技術常識に照らし、本願補正発明1の化合物類の製造ができるように記載されておらず、そもそも本願補正発明1の化合物類は、「(a)式IXの構造式を有する哺乳動物標的タンパク質相互作用部分」及び「(b)式VI又はVIIの構造式を有するプレゼンタータンパク質結合部分」の位置関係の特定がなく、膨大な可能性のある任意の「リンカー」を有し、化学構造全体が特定されていない「14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物」類であって、本願明細書等には、本願補正発明1の化合物類全般の製造方法について十分な記載があるとはいえないから、本願補正発明1は、上記の本願補正発明1の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
また、本願補正発明8の医薬組成物についても、サポート要件を満たさない本願補正発明1の化合物類を含むものであることに加えて、本願明細書等には、「トリパータイトプレゼンタータンパク質/マクロ環式化合物/標的タンパク質複合体」の形成について、「F2、F3、F11、F22、F24及びF25」の化合物類以外を含有する場合については、薬理データ又はこれと同視することができる程度の事項が十分に記載されているとはいえないから、本願補正発明8は、上記の本願補正発明8の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
したがって、本願補正発明1及び本願補正発明8は、発明の詳細な説明に記載した発明でない。

ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の概要
請求人は、補正された審判請求書において、当業者であれば、本願明細書及び出願時の技術常識製造に基づいて請求項1に記載のマクロ環式化合物を製造でき、発明の詳細な説明の記載は、出願時の技術常識に照らせば、多種多様な構造を有する請求項1に記載のマクロ環式化合物全般を製造でき、かつ、使用できるように記載されているものと思料する旨を主張している。

(イ) 請求人の主張についての当審合議体の判断
上記イで説示したとおり、本願補正発明1及び本願補正発明8は、本願補正発明1及び本願補正発明8の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえず、また、出願時の技術常識に照らし、当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものともいえないから、請求人の上記主張は採用できない。

エ 理由B(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、本願補正発明1及び本願補正発明8は、本願明細書等に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(4) 独立特許要件についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおり、本願明細書等の記載は、本願補正発明1及び本願補正発明8について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、また、本願の特許請求の範囲の記載は、本願補正発明1及び本願補正発明8について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明1及び本願補正発明8は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本願補正発明1及び本願補正発明8は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、令和3年7月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1及び8に係る発明は、上記第2の1(A)に摘記したとおりのものである(以下、当該請求項1及び8に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」及び「本願発明8」という。)。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「この出願については、令和 3年 1月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由2,3によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、その理由2は、
「2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものであり、その理由3は、
「3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」
というものである。

そして、令和3年1月15日付け拒絶理由通知書では、上記理由2及び3について、次の点が指摘されている。

「●理由2(サポート要件)、理由3(実施可能要件)について
・・・
発明の詳細な説明の記載から、本願発明の課題は、「アンドラッガブル標的の機能をモジュレート可能な新しい分子モダリティーを発見すること」であると認められる。
一方、請求項1には、14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物であって、前記化合物が、(a)哺乳動物標的タンパク質相互作用部分と、(b)プレゼンタータンパク質結合部分とを含む、マクロ環式化合物が記載されており、該標的タンパク質及び該プレゼンタータンパク質には、多種多様なタンパク質が包含され、該マクロ環式化合物にも、多種多様な化学構造を有するマクロ環式化合物が包含されるが、発明の詳細な説明において、プレゼンタータンパク質であるFKBP12及び標的タンパク質であるCEP250に結合することが具体的に記載されているのは、F2及びF11で示されるマクロ環状化合物のみである。
また、発明の詳細な説明の段落[0062]-[0064]には、本願発明の化合物を調製する方法としてストレプトマイセス属の細菌株を培養し、その発酵ブロスから化合物を単離できる旨の一般的な記載があるものの、ストレプトマイセス属の細菌株として何を用いるのかについては何ら記載されていない。
ここで、ストレプトマイセス属の細菌株には様々なものがある上に、どの細菌株がどのような化合物を生産するかは、既に知られているものを除き、実際に個々の細菌株を培養し、その発酵ブロスから単離して同定してみないと、わからないことは技術常識である。
そして、本願請求項1の14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を生産するストレプトマイセス属の細菌株が本願出願前に知られていたわけでもない。
そうすると、段落[0062]-[0064]の記載と技術常識を参酌しても、本願請求項1の14〜40個の環原子を含むマクロ環式化合物又はその薬学的に許容可能な塩を取得又は合成する方法が当業者に明らかであるとはいえない。
さらに、明細書に記載の一般的プロトコル及び実施例等の記載をみても、本願請求項1に記載の化合物全般が製造でき、かつ、使用できるように記載されているとはいえない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
また、上記のような発明の詳細な説明の記載、及び、出願時の技術常識を考慮すると、請求項1に包含されるマクロ環状化合物全般を製造し、そのタンパク質結合活性を確認するためには、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤が必要であると認められる。
したがって、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
そして、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2−5についても同様である。」

また、原査定では、上記理由2及び3ついて、概略、次の点が指摘されている。

「●理由2(特許法第36条第6項第1号)、理由3(特許法第36条第4項第1号)について
・・・
確かに、本発明の例示的な化合物を示す図1には、F1〜F13,F16,F17,F19〜F22,F24,F25で示されるマクロ環式化合物の構造式、分子量、化学式、cLogPの値、得られたLC−MS[M+Na]+の値がそれぞれ記載されており、明細書の実施例には、FKBPリガンドを生成する細菌株として、例えばストレプトマイセス・マレーシエンシス(Streptomyces malaysiensis)DSM41697、他の生成種、又は遺伝子修飾誘導体を使用できること、特定の化合物を生成する細菌株を培養し、その発酵ブロスから遠心分離や抽出、精製等の操作を経て、化合物を単離する一般的なプロトコルが記載され、F2に相当する化合物を原料とし、この化合物のYの繰り返し部分のジエン構造を接触水素化することによりF11を合成したこと、化合物F3を原料とし、この化合物のYの繰り返し部分のジエン構造を接触水素化することによりF24を合成したこと、さらに、F24を原料とし、テトラヒドロピラン環部分が異性化してオキセパン環となったF25を合成したことが記載されている。
しかしながら、・・・さらに、F4〜F10、F12〜F22については、FKBP12への結合親和性等の結果が記載されるものの、いずれの化合物も請求項1に記載のマクロ環式化合物には包含されないものであることに加え、いかなる細菌株を用い、いかなる反応を用いたのか、これらの化合物の取得方法や合成方法は明らかにされていない。
そして、ストレプトマイセス属の細菌株には様々なものがある上に、どの細菌株がどのような化合物を生産するかは、既に知られているものを除き、実際に個々の細菌株を培養し、その発酵ブロスから単離して同定してみないと、わからないことは技術常識である。
また、当該分野では、様々な開環反応、閉環反応及び置換基変換反応が知られるものの、本願の発明の詳細な説明において具体的にその取得方法又は合成方法が開示されているF1〜F3、F22、F11、F24、F25を原料として、いかなる反応を用いてこれらの化合物とマクロ環を構成する環原子及び/又は置換基が異なる請求項1に記載のマクロ環式化合物を製造できるのか、当業者に自明であるともいえない。
さらに、標的タンパク質とのスクリーニングと同定ができる手法が知られているとしても、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から、多種多様な構造を有する請求項1に記載のマクロ環式化合物全般を製造でき、かつ、使用できるように記載されているとはいえない。
そうすると、請求項1−6に記載のマクロ環式化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、また、発明の詳細な説明の記載又はその示唆、あるいは、本願出願時の技術常識に照らして、当業者が本願発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるとすることはできない。
また、上記で指摘したように、請求項1に記載のマクロ環式化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、本願の発明の詳細な説明において具体的にその取得又は合成方法が開示されておらず、また、本願の発明の詳細な説明の記載又は示唆、本願出願時の技術常識に照らしても、どのように取得又は合成できるのかが不明である。
さらに、請求項6に記載のマクロ環式化合物のうち、発明の詳細な説明において具体的にその取得方法又は合成方法が開示されているF1〜F3、F22、F11、F24、F25以外の化合物は、いかなる細菌株を用い、具体的にどのような条件で必要な化学的修正を加え、合成できるのか、当業者に自明であるとはいえない。
そうすると、請求項1−6に記載のマクロ環式化合物、又はその薬学的に許容可能な塩について、本願の発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び本願出願当時の技術常識に基づき、当業者がこれを生産又は合成することができるとはいえない。
そして、請求項1−6のいずれかを引用する請求項7及び8についても同様である。

よって、上記出願人の主張は採用できないものであり、補正後の請求項1−8に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」

3 当審における合議体の判断
(1) 理由3(実施可能要件)について
ア 本願発明1について
上記第2の2で説示したとおり、本願補正発明1は、本願発明1における「マクロ環式化合物」類において、誤記の訂正とともに、置換基及び分子骨格を更に限定したものである。
そうすると、本願発明1と比べて、化合物類が限定された本願補正発明1について、上記第2の3(2)ウで説示したとおり、本願明細書等の記載が実施可能要件を満たしていないのであるから、本願発明1についても、本願明細書等の記載は実施可能要件を満たしていない。

イ 本願発明8について
上記第2の2で説示したとおり、本願補正発明8は、本願発明8の医薬組成物が含む化合物を限定するとともに、明瞭でない記載の釈明をしたものである。
そうすると、本願発明8と比べて、化合物が限定された本願補正発明8について、上記第2の3(2)エで説示したとおり、本願明細書等の記載が実施可能要件を満たしていないのであるから、本願発明8についても、本願明細書等の記載は実施可能要件を満たしていない。

ウ まとめ
したがって、本願明細書等の記載は、当業者が本願発明1及び本願発明8の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2) 理由2(サポート要件)について
本願発明1及び本願発明8と本願補正発明1及び本願補正発明8との関係は、上記(1)で述べたとおりである。
そうすると、本願発明1と比べて、化合物類が限定された本願補正発明1について、上記第2の3(3)で説示したとおり、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていないのであるから、本願発明1についても、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。
また、本願発明8と比べて、化合物が限定された本願補正発明8が、上記第2の3(3)で説示したとおり、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていないのであるから、本願発明8についても、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。

したがって、本願発明1及び本願発明8は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項1及び8に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、請求項1及び8に係る発明が、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、そのほかの理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀬良 聡機
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2023-11-20 
結審通知日 2023-11-21 
審決日 2023-12-04 
出願番号 P2019-211918
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C07D)
P 1 8・ 536- Z (C07D)
P 1 8・ 575- Z (C07D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 関 美祝
野田 定文
発明の名称 協同的結合に関与する化合物及びその使用方法  
代理人 本田 淳  
代理人 中村 美樹  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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