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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  E01H
管理番号 1409773
総通号数 29 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-12-16 
確定日 2024-04-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第4372742号発明「洗浄作業用バン型自動車及びこれを用いた洗浄方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人らの負担とする。 
理由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第4372742号発明の特許請求の範囲の請求項1〜3、5〜9、11〜13に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

2 答弁の趣旨
本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人らの負担とする、との審決を求める。

第2 手続の経緯
本件は、請求人らが、被請求人が特許権者である特許第4372742号(以下「本件特許」という。平成17年10月21日出願、平成21年9月11日登録、請求項の数は13である。)の特許請求の範囲の請求項1〜3、5〜9、11〜13に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯(無効理由に係る主張に関するもの。)は、以下のとおりである。
令和 4年12月16日提出:審判請求書
令和 5年 1月25日提出:手続補正書(請求人ら、証拠説明書)
同年 4月26日提出:審判事件答弁書
同年 7月24日付け:審理事項通知
同年 8月21日差出:口頭審理陳述要領書(請求人ら)
同年 9月 4日差出:口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 9月15日差出:上申書(請求人ら)
同年10月25日 :第1回口頭審理

なお、請求人らが提出した審判請求書、口頭審理陳述要領書は、それぞれ、請求書、請求人陳述要領書と、被請求人が提出した審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書は、それぞれ、答弁書、被請求人陳述要領書ということがある。

第3 本件発明
本件特許の請求項1〜3、5〜9、11〜13に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、また、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜3、5〜9、11〜13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
乗員室(Cf)と、その乗員室(Cf)の後側に連続すると共に後端が車体(F)後面に開口する荷室(Cr)とを備え、その荷室(Cr)の後端開口部を、車体(F)後端に設けたテールゲート(G)で開閉できるようにした洗浄作業用バン型自動車において、
前記荷室(Cr)には、水を貯めるタンク(T)と、このタンク(T)内の水を吸引し得るポンプ(P)と、このポンプ(P)を駆動する内燃機関(E)と、その内燃機関(E)から延びる排気管(Ex)に介装される排気消音器(M)とが収納、固定され、
車体(F)の、前記荷室(Cr)下方の床部(Ff)には、前記ポンプ(P)の吐出側より延出する圧送管(A)を挿通させて該圧送管(A)を車外に引き出すための圧送管挿通部(Ha)と、前記排気消音器(M)より下流側の前記排気管(Ex)を挿通させて該排気管(Ex)の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部(Hb)とが設けられることを特徴とする、洗浄作業用バン型自動車。
【請求項2】
前記圧送管(A)の下流端が、前記ポンプ(P)から吐出された水を車外の被洗浄部(SH)に噴射するための水噴射手段(SG)に対し着脱可能であることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項3】
前記タンク(T)には、そのタンク(T)内の水を車外に任意に排水するための排水手段(D)が付設されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項5】
前記乗員室(Cf)には、前後2列のシート(Sf,Sr)が配設され、その後列シート(Sr)の後側に隣接して前記タンク(T)が配置されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項6】
前記タンク(T)は、そのタンク本体(Tm)の高さを後列シート(Sr)の高さよりも低く設定されることを特徴とする、請求項5に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項7】
前記タンク(T)内には、タンク(T)内の水の流動を抑える波消し板(10)が設けられることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項8】
前記荷室(Cr)には、前記水噴射手段(SG)を所定位置に保持し得る保持手段(21)が設けられることを特徴とする、請求項2に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項9】
前記タンク(T)には、その貯水量を表示する水位計(L)が、前記荷室(Cr)の後端開口部より視認できるように配設されることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項11】
前記圧送管挿通部(Ha)および前記排気管挿通部(Hb)は、車体(F)の前記床部(Ff)に相互に間隔をおいて固定され且つ該床部(Ff)を貫通して下方に延びる一対の筒体(2,2′)より構成されることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項12】
車体(F)の後端下部には、前記圧送管挿通部(Ha)を通して車外に引き出された前記圧送管(A)の基部を後向きに案内支持し得る案内支持部(8)が設けられることを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載の洗浄作業用バン型自動車。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の洗浄作業用バン型自動車(V)を用いた洗浄方法であって、
そのバン型自動車(V)を洗浄作業場所の近くまで移動させた後、前記テールゲート(G)を開け、次いで前記圧送管(A)を前記圧送管挿通部(Ha)を通して車外に引き出してその圧送管(A)の下流端に前記水噴射手段(SG)を接続し、また前記排気消音器(M)より下流側の前記排気管(Ex)を前記排気管挿通部(Hb)を通して該排気管(Ex)の下流端を車外の大気に開放し、しかる後に前記内燃機関(E)を始動して前記ポンプ(P)を駆動し、そのポンプ駆動状態のまま前記テールゲート(G)並びに前記自動車(V)のドア及び窓を全部閉めて、前記圧送管(A)から出た水を利用した水洗浄作業を行うことを特徴とする、洗浄作業用バン型自動車を用いた洗浄方法。」

第4 請求人らの主張及び証拠方法
1 請求人らの主張の概要
(1)無効理由(進歩性欠如)
特許第4372742号発明の請求項1〜3、5〜9、11〜13に係る特許発明は、甲第1〜7号証(枝番を含む)に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
請求人らは、証拠方法として、下記甲第1号証〜甲第7号証(枝番号を含む)を請求書に添付し、下記甲第8号証〜甲第10号証を請求人陳述要領書に添付して提出した。
甲第1号証 :実願昭61−33318号
(実開昭62−144592号)のマイクロフィルム
甲第2号証−1:車両外観三面図;低騒音型排水管洗浄車
甲第2号証−2:FAX送信のご案内、いすゞ自動車首都圏株式会社
アチューマット部 営業課 三好、令和4年7月14日
甲第3号証 :中古車情報「H15エルフ 5速MT 高圧洗浄車 東
京いすゞ アチューマット」の印刷物、
令和4年7月25日(印刷日)
<URL>https://www.truck-bank.net/modules/truck
/index.php?action=DataView&data_id=245929
甲第4号証−1:中古車情報「いすゞエルフトラック その他/独自仕様
/表記なし」の印刷物、令和4年6月29日(印刷日)
<URL>https://annai-center.com/usedcar/u-70007 0757430220607001/
甲第4号証−2:YouTube「平成16年式いすゞエルフ0.4トン高圧洗
浄車3480」
<URL>https://www.youtube.com/watch?v=sdHTSsim
dXA
甲第4号証−3:動画「平成16年式いすゞエルフ高圧洗浄車」
甲第5号証 :特開2000−234318号公報
甲第6号証 :実願昭59−102599号
(実開昭61−17655号)のマイクロフィルム
甲第7号証 :特開2000−128290号公報
甲第8号証 :中古車情報「トヨタ タウンエースバン(全国)の中古
車」の印刷物、令和5年8月17日(印刷日)
<URL>https://carview.yahoo.co.jp/usedcar/mode
l/toyota/townace-van/?year_max=2005
甲第9号証 :中古車情報「トヨタ タウンエーストラック(全国)の
中古車」の印刷物、令和5年8月17日(印刷日)
<URL>https://carview.yahoo.co.jp/usedcar/mode
l/toyota/townace-truck/?year_max=2005
甲第10号証 :中古車情報「エルフバン − いすゞ 原動機 4JG 2 5速 左サイドスライドドア」の印刷物、
令和5年8月8日(印刷日)
<URL>https://car.biglobe.ne.jp/used_car/detai
l-pub-700060087930220408001/
(以下、各甲号証を、その番号により「甲1」等ということがある。)

第5 被請求人の主張
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、請求人らの主張する無効理由には理由がない旨主張する。

2 証拠方法
被請求人は、証拠方法として、答弁書に添付して、以下の乙第1号証ないし乙第19号証(枝番を含む)を提出した。
乙第1号証の1:【2022年版】高圧洗浄車 メーカー6社一覧、
<URL>https://metoree.com/categories/3537/
乙第1号証の2:会社概要|産業用製品メーカー比較のメトリー、
<URL>https://metoree.com/company/
乙第2号証 :「高圧洗浄車・強力吸引車開発の変遷と最新機種」、
公益社団法人日本下水道管路管理業協会、
下水道管路施設管理の専門誌JASCOMA、
17巻34号、12〜21頁、平成23年1月31日
乙第3号証 :東京いすゞ自動車(株)清水 敏明、
「高圧洗浄車と配管の洗浄」、配管技術18巻11号、
157〜165頁、日本工業出版発行、1976年9月
乙第4号証 :三栄管理興業株式会社、「下水道管渠清掃」、
<URL>https://san-eikanri.co.jp/pages/33/
乙第5号証 :公益財団法人高速道路調査会
高速道路の施設技術史に関する調査研究委員会編集、
「高速道路の施設技術史−施設技術のアーカイブス−」
507〜509頁、公益財団法人高速道路調査会発行、
2019年12月
乙第6号証 :木原通太郎外1名、
「10年を経過した高機能舗装の路面性能細見と事故対
策の検証−高圧洗浄車による事故抑制効果の検証−」、
舗装42巻3号4〜8頁、2007年
乙第7号証 :日本建設機械化協会編、1998年版日本建設機械要覧
4〜23頁、28〜32頁、平成10年3月20日
乙第8号証 :兼松エンジニアリング株式会社、製品情報、
<URL>http://www.kanematsu-eng.jp/product/
乙第9号証 :株式会社シンショー、高圧洗浄車、
<URL>http://www.ss-shinsho.co.jp/senjosha.html
乙第10号証の1:特装車 高圧洗浄車「ハイプレクリーナー○R」、
<URL>https://www.morita-econos.com/specia1/pr
essured.html(当審注:○Rは登録商標マークを表す。

乙第10号証の2:会社情報 企業データ
<URL>https://www.morita-econos.com/company/pr
ofile.html
乙第11号証 :新明和工業株式会社、カタログ
「ジェットクリーナ高圧洗浄車シリーズ」、
2019年2月
乙第12号証 :いすゞ自動車首都圏株式会社、
「アチューマット車「ATUMAT」」、
<URL>https://www.isuzu-syutoken.co.jp/product
s/atumat/
乙第13号証 :株式会社カンツール、「KANTOOL PRODUC
TS CATALOG 2023」、
<URL>https://kantool.co.jp/product/%E7%B7%8F%
E5%90%88%E3%82%AB%E3%82%BP%E3%83%AD%E3%82%B0-2023%
E5%B4%E7%89%88%e3%80%80/
乙第14号証 :株式会社カンツール、製品情報、
高圧洗浄車ECO ACE JET、
<URL>https://kantool.co.jp/product_category/e
co-ace-jet/
乙第15号証の1:有限会社エーテル産業、
エーブルファインの営業のリーフレット
「次世代型多目的バン型高圧洗浄車エーテルファイン」
乙第15号証の2:エーブルファインの営業のリーフレットの作成日を証
明する情報の画像
乙第16号証 :関東クリーンシステム株式会社、
ワンBOXカスタム高圧洗浄車EJWシリーズ、
<URL>https://kanto-cs.jimdofree.com/%E9%AB%98
%E5%9C%A7%E6%B4%97%E6%B5%84%E8%BB%8A%EF%BD%85%EF%B
D%8A%EF%BD%97%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/
乙第17号証 :Google検索「バン型 高圧洗浄車」、
<URL>https://www.google.com/search?q=%E3%83%9
0%E3%83%B3%E5%9E%8B+%E9%AB%98%E5%9C%A7%E6%B4%97%E6
%B5%84%E8%BB%8A&rlz=1C1TKQJ_jaJP1056JP1056&oq=%E3%
83%90%E3%83%B3%E5%9E%8B+%E9%AB%98%E5%9C%A7%E6%B4%9
7%E6%B5%84%E8%BB%8A&aqs=chrome..69i57jOi546j69i60.
793jOj7&sourceid= UTF-8
乙第18号証 :Google検索「ミニバン型 高圧洗浄車」、
<URL>https://www.google.com/search?q=%E3%83%9
F%E3%83%8B%E3%83%90%E3%83%B3%E5%9E%8B+%E9%AB%98%E5
%9C%A7%E6%B4%97%E6%B5%84%E8%BB%8A&rlz=1CTKQJ_jaJP1
056JP1056&oz=%E3%83%9P%E3%83%8B%E3%83%90%E3%80%80%
E9%AB%98%E5%9C%A7%E6%B4%97%E6%B5%84%E8%BB%8A&aqs=c
hrome..69i57j0i54615.612jOj15&sourceid=chrome&ie=U
TF-8
乙第19号証 :トラック王国ジャーナル、「トラックの荷台で役立つ知
識!荷台寸法・はみ出し対策まで!」、
<URL>https://www.55truck,com.journa1/17.html
(以下、各乙号証を、その番号により「乙1」等ということがある。)

第6 当審の判断
1 甲号証の記載事項
(1)甲1
ア 甲1に記載された事項
請求人らが無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲1には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
(ア)「2.実用新案登録請求の範囲
(1) 荷台上を覆う囲鈑と、囲鈑の左右側部に設けたスライド式扉と、囲鈑の後部に設けた旋回式扉から成る荷物室を有する自動車において、水タンクと、エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置と、ホースリールとを荷台に固設してなり、前記高圧水ポンプ装置を組成する高圧水ポンプの出水側ホースはホースリールに適宜巻付け、かつホース先端にノズルを取付けたことを特徴とする高圧水洗滌ポンプ車。
(2) 水タンクの排水管は路面に向けて荷台に取付けたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の高圧水洗滌ポンプ車。
(3) エンジンにおけるマフラーの排気管は路面に向けて荷台に取付けたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の高圧水洗滌ポンプ車。
(4) スライド式扉は囲鈑の掛止具と扉側の受止具を着脱自在に掛止める構造としたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の高圧水洗滌ポンプ車。」
(イ)「3.考案の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本考案は、高圧水洗滌ポンプ車、特に高層マンション、アパート等の鉄筋コンクリートに埋設された排水管や外壁を高圧水によって洗滌する際等に用いる高圧水洗滌ポンプ車に係り、このポンプ車には、洗滌作業に必要な水タンク、エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置及びホースリールを荷台の適所に固設すると共に、これらの附属品も収容して、洗滌機材の運搬を便利にし、併せて洗滌作業を効率よく行い、騒音と危険のない高圧水洗滌ポンプ車に関するものである。
〔従来の技術〕
従来から、被洗滌物に高圧水を噴射して洗滌する高圧水洗滌装置は公知である。例えば、鉄筋コンクリート壁内に配管されている排水管は長期間使用していると、汚水中の汚物が排水管に付着し、排水の流れが細くなり、遂には排水を通さなくなることから、この排水管の汚物による閉塞を防止するため、各種形状のノズルより高圧水を排水管に噴射注入して汚物層を除去する装置がある。
〔考案が解決しようとする問題点〕
従来の洗滌装置は、現場で洗滌機材を組合せて行う作業であり、これに用いる高圧水ポンプ装置は、その駆動源としてエンジンを使用している。ところが、エンジン駆動方式によると、騒音が発生するという問題があり、又洗滌作業に用いる機材、例えば、水タンク、高圧水ポンプ装置、高圧ホース、ホースリール及び工具類を自動車の荷台に積込み運搬させることができるが、これらの機材を単に荷台に積み込むのでは積み卸し、運搬及び保管の作業が厄介であり、加えて自動車の荷物室に収容された高圧水ポンプ装置の保守、点検及び修理が煩雑であるという問題がある。
〔考案の目的〕
本考案は、上記の如く事情に鑑みてなされたもので、高圧水洗滌用のエンジンとしては防音型のものを使用し、このエンジン、水タンク、高圧水ポンプ、ホースリール等主要機材を自動車の荷台に適宜固設すると共に、ホース及びノズル等の附属品も収容して、坂道やカーブの多い道路、或いは狭い道路等にも洗滌機材を荷台上に安定させた状態で運搬し、現場ではノズルおよびホースを取り出すのみの操作で簡単にエンジンを駆動して洗滌作業をおこない、更に荷台に全閉型の囲鈑を形成して機材の安全運搬に加えてエンジンの防音材と囲鈑という二重の防音構成により駆動音を消音して洗滌し、併せて囲鈑の側部及び後部に取付けた扉を開けて機材の修理点検を容易におこなうことを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本考案に係る高圧水洗滌ポンプ車は、荷台上を覆う囲鈑と、荷台の左右側部に設けたスライド式扉と、後部に旋回式扉を設けた荷物室を有する自動車において、水タンクと、防音型のエンジンと、そのエンジンと接続して駆動する高圧水ポンプと、ホースリールとを荷台上に適宜固設してなり、前記高圧水ポンプの出水側のホースは、ホースリールに巻付け、かつそのホース先端にノズルを取付けていることを特徴とする。
〔作用〕
斯かる構成によれば、洗滌作業に必要な機材、即ち、水タンク、エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置、及びホースリールが荷台の適所に固設されており、その上高圧水ホース、ノズル及び工具類が一括して自動車の荷台の適所に積載されているため、自動車の走行と共に洗滌機材を安定させた状態で運搬することができ、又囲鈑の左右側部のスライド式扉と後部の旋回式扉の開口部より保守点検作業を容易に行うことができ、更にエンジンは防音型で、その外側を囲鈑で覆うという二重防音の構成を採ったのでエンジンの騒音を外部に極力漏洩させずに洗滌作業を行うことができる。
〔実施例〕
以下本考案を実施例に基いて説明する。
第1図は高圧水洗滌ポンプ車の扉の配置を説明する側面図、第2図は高圧水洗滌ポンプ車の洗滌機材の配置を説明する一部切欠斜視図、第3図は第1図のA−A’線断面図、第4図は第2図のB−B′線断面図、第5図は第1図における荷台の左右側部のスライド扉の掛止装置を説明する斜視図である。
本考案の高圧水洗滌ポンプ車は第1図及び第2図に示すように運転室11と荷物室27とからなる自動車1であり、荷物室27の荷台2を覆う囲鈑3と、囲鈑3の左右側部の前半部にはスライド式扉4、又囲鈑3の後部には蝶番27’によって開閉される旋回式扉5を設けている。
この荷台2上には、前方から水タンク6と、エンジン17により駆動する高圧水ポンプ20より組成されたエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7とホースリール13が各々荷台2に対し螺子止又は溶接等の方法で固設されている。但し、各機材の配設位置は実施例に限るものではない。
このホースリール13のホース24先端に把持部8を介して高圧水の噴射ノズル9が取付けられ、更にエンジン及び高圧水ポンプの他側に工具類の棚10が立設されている。
水タンク6は荷台2上の前部に固設されていて、自動車の進行方向に対し囲鈑の左側部に洗滌水の給水管12,洗滌水余水の排水管14,高圧水ポンプ20に接続された送水管15及び高圧水ポンプ20に接続された洗滌水の戻水管16が集中して配設されている。
なお、第2図の一部点線で示す如く、水タンク6の水量が増加し、オーバーフローしたときの洗滌水を逃がす洗滌水余水の排水管14は、水タンク6に沿って下方の路面に向けて荷台に取付けている。
次にエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7は、エンジン17と高圧水ポンプ20との組合せから成る。エンジン17は本体と排気マフラー18と、図示しない燃料タンクと、バッテリーと、ラジエータ等から構成されていて、エンジンのボンネットの内側に発泡性材料からなる防音材21を張設してある。
なおエンジン17の排気マフラー18に接続されている排気管19は、第3図に示すように路面方向に排気するように荷台に取付けている。
以上のように構成すると、エンジン17自体が防音構造となり、又排気マフラー18からの排気ガスは排気管19を通って荷台下方に排気されるので、エンジン17からの騒音が消音されることになる。
次にエンジン17の出力側と、高圧水ポンプ20の入力側とはベルト等により接続されていて、高圧水ポンプ20の計器パネル22は荷台2の後部旋回式扉5の方向に向って設けてあり、高圧水ポンプ20の操作パネル22は、図示しないがスタータスイッチ,スローダウンスイッチ,圧力計,積算時間計,リモコンスイッチ,高圧水配管,給水管及び排水管等が設けられている。このエンジン騒動防音型の高圧水ポンプの計器パネル22を操作すると、高圧洗滌水は、高圧水送出管23を介してホースリール13に取付けられたホース24を通り、把持部8の先端に取付けられたノズル9から高圧洗滌水が噴射される。工具類の棚10は、前記水タンク6の後部にエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7と並設して設けられ、その上部に工具類を載置するようにし、下部が開放されるように設けられている。
又前記した囲鈑の左右側部の扉は自動車1の運転台側から荷台2の中間部に向って上下のレール28,28’上を回動するローラ29,29’によって開口されるスライド式のものであるため、水タンク6及びエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7の保守、点検を容易に行うことができる。又第5図に示すように囲鈑のスライド式扉4と囲鈑3との間に掛止装置が設けられ、スライド式扉が不意に閉口しないように構成されているので坂道等に停車していてもスライド式扉の自動閉口による事故を防止できる。
即ち囲鈑3の左右側部に固定した伸縮材料から形成された掛止具25と、スライド式扉4を開いた状態の端部にL字形の受止具26とが着脱自在に掛止させている。但し、本考案は扉の不時の閉塞を解消するための掛止手段を提供するものであるから掛止構造は実施例に限るものではない。
次に本考案の動作について説明する。
水タンク6に配管12を介して水道水を供給する。
次にエンジンのスイッチ及び高圧水ポンプの計器パネル22のスイッチを入れて高圧水ポンプ20を作動させると、洗滌水は水タンクから送水管15を介して前記高圧水ポンプ20に入り、高圧水ポンプ20で所望の高圧水が得られ、送水管23及びホース24を圧送し、ノズル9より噴出される高圧水により汚水管等を容易に高圧洗滌することができ、又前記高圧水ポンプを停止すると、余水は戻水管16を介して、水タンク6に戻り、更に水タンク内で余水となると排水管14から路面に排出される。
実施例によれば、水タンク6,エンジン,高圧水ポンプ20,ホースリール13を荷台上に固設すると共に棚10が適所に配設されていて工具を載置するものであるから、扉を開くだけで作業者一人で機械の点検,洗滌及び修理の作業が簡単に、しかも短時間で行うことができ、更に水タンク6の配管は左側に、又エンジン駆動防音型ポンプ装置7のパネルを後部に設けているため道路の片側に駐車して作業が可能である等の優れた効果を有するものである。
以上本考案の実施例について説明したが、本考案は種々変更が可能であり、例えば水タンクのパネルを右側に設け、その後部の右側に防音型の高圧水ポンプ、左側に工具類の棚を並設することをあげることができる。
〔考案の効果〕
本考案は、自動車の荷台に水タンク,高圧水ポンプ装置,ホースリール及び工具類等の棚を配設し、囲鈑の左右一側部と後部に各々スライド式扉と旋回式扉を設けた高圧水洗滌ポンプ車であって、本考案によれば次のような優れた効果がある。
(1) 自動車の荷物室内に高圧水洗滌に必要な機材を固設したため、洗滌作業は自動車の運転手一人ででき、作業効率が高く、経済性に優れたものである。
(2) 自動車の荷物室の荷台上に水タンク,エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置及びホースリールを固設してあるから走行中、これらの重量機材が乱りに動くことがなくなって安全運転を達成できると共に機械同志の移動接触による損傷を解消できる。
(3) 自動車の荷物室の荷台上に水タンク,エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置およびホースリールを固設してあるから坂道,カーブの多い道路,狭い住宅道路枠にも機材を安定させた状態で運搬でき、加えて全閉型の囲鈑を施してあるから運搬時の安全性も高い。
(4) 自動車の囲鈑側部と後部に各々スライド式と旋回式の扉を有する荷物室の荷台に必要な機材を積載し、操作し易いようにパネル板を扉の開口部側に設けると共に順序よく配置したため、点検・洗滌及び修理の各作業が簡単に行うことができる。
(5) 荷物室内の片側に主要機材、すなわち、水タンク,エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置及びホースリールを順に並べて配設し、他側を工具類等の棚としたため、修理点検等をする場合、機材をおろさずに扉を開くだけで行うことができ、作業時間を短縮できる。
(6) 荷物室内の機材が整理され且つ固設されているため、空間部が有効に利用できる。
(7) 高圧水ポンプのエンジンを防音構造のものとし、エンジンマフラーの排気及び洗滌水の排水を荷台の下部から路面に排水するようにし、更に、囲鈑の左右両側面の扉を閉じたまま洗滌作業を行うことができるので、家屋の密集した場所や夜間作業をおこなう場合、騒音公害を周囲の人に与えることがなく、安心して洗滌作業を行うことができる。
(8) 囲鈑の扉を開いたとき、置版の掛止具を扉の受止具に掛止ることにより、開扉状態で扉の不意な移動をなくし、傾斜のある道路上でも作業ができると共に不時の閉扉により人体がはさまれる等の事故を未然に防ぐことが可能である。
4.図面の簡単な説明
図面は本考案の実施例を示すもので、第1図は高圧水洗滌ポンプ車の扉の配置を説明する側面図、第2図は高圧水洗滌ポンプ車の洗滌機材の配置を説明する一部切欠斜視図、第3図は第1図のA―A′線断面図、第4図は第2図のB―B′線一部切欠断面図、第5図は第1図荷台の左右両側部のスライド扉の掛止装置を説明する部分斜視図である。」
(ウ)第1図ないし第4図は以下のとおり。
第1図

第2図

第3図

第4図

(エ) a 上記(ウ)の第1図、第2図からは、高圧水洗滌ポンプ車が、荷物室27が運転室11の後側に設けられたトラック型の自動車であることが看取される。
b 上記(ウ)の第1図ないし第4図からは、荷物室27の荷台2に、排気マフラー18の下流側に接続されている排気管19を挿通させるための挿通部が設けられ、排気管19の下流端が荷物室27外に位置することが看取される。
イ 甲1発明
上記アより、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
特に高層マンション、アパート等の鉄筋コンクリートに埋設された排水管や外壁を高圧水によって洗滌する際等に用いる高圧水洗滌ポンプ車であって、
高圧水洗滌ポンプ車は、運転室11と運転室11の後側に設けられた荷物室27とからなるトラック型の自動車1であり、荷物室27の荷台2を覆う囲鈑3と、囲鈑3の左右側部の前半部にはスライド式扉4、又囲鈑3の後部には蝶番27’によって開閉される旋回式扉5を設けており、
この荷台2上には、水タンク6と、エンジン17により駆動する高圧水ポンプ20より組成されたエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7とホースリール13が各々荷台2に対し固設されており、
エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7は、エンジン17と高圧水ポンプ20との組合せから成り、エンジン17は本体と排気マフラー18と、燃料タンクと、バッテリーと、ラジエータ等から構成され、
荷物室27の荷台2に、エンジン17の排気マフラー18の下流側に接続されている排気管19を挿通させるための挿通部が設けられ、排気管19は、排気管19の下流端が荷物室27外に位置し、路面方向に排気するように荷台に取付けており、
洗滌水は水タンクから前記高圧水ポンプ20に入り、高圧水ポンプ20で所望の高圧水が得られ、送水管23及びホース24を圧送し、ノズル9より噴出される高圧水により汚水管等を容易に高圧洗滌することができる、
高圧水洗滌ポンプ車。

(2)公然実施発明
ア 甲3
(ア)甲3に記載された事項
請求人らが無効理由に係る証拠として提出した甲3には、次の事項が記載されている。
a 「H15 エルフ 5速MT 高圧洗浄車 東京いすゞ アチューマット
小型 平成15年式
いすゞ エルフ 清掃車
販売価格 2,300,000円」
(1枚目、表題部分)
b 「


(6枚目、写真画像4 of 28)
c 「


(10枚目、写真画像8 of 28)
d 「


(30枚目、写真画像28 of 28)
e 「

」(31枚目)
f(a)上記aの記載を踏まえると、上記bないしdの写真画像からは、運転室と運転室の後側に設けられた荷室とからなるトラック型の高圧洗浄車の荷室の床部の後端に、円筒形のドラムと、後方側が荷室外に開放された切欠が設けられたことが看取される。車両が高圧洗浄車であることから、技術常識を踏まえると、円筒形のドラムにホースが巻回されることは明らかであり、円筒形のドラムと切欠との位置関係からみて、高圧洗浄車に後部扉を閉じた状態においてホースを荷室外へ通すことができる、後方側が荷室外に開放された切欠が設けられたことは自明である。
(b)上記eの自動車検査証からは、初年度登録年月 平成15年09月との記載が読み取れる。
(イ)甲3公然実施発明
上記(ア)f(b)によれば、甲3に係る高圧洗浄車は平成15年9月に登録されたものであり、本件特許が出願された平成17年10月21日より前に、公然実施されたものと認められる。
よって、以下の発明が本件特許の出願前に公然実施されたものと認められる(以下「甲3公然実施発明」という。)
(甲3公然実施発明)
「運転室と運転室の後側に設けられた荷室とからなるトラック型の高圧洗浄車であって、荷室の床部の後端に、後部扉を閉じた状態においてホースを荷室外へ通すことができる、後方側が荷室外に開放された切欠が設けられた高圧洗浄車。」
イ 甲4−1
(ア)甲4−1に記載された事項
請求人らが無効理由に係る証拠として提出した甲4−1には、次の事項が記載されている。
a 「いすゞ エルフトラック その他/独自仕様/表記なし 高圧洗浄車 全低床 リアシャッター 3ペダル 5MT 0.4トン 坂道発進補助装置 左電格ミラー 外寸498−190−216」(1頁 表題部分)
b 「基本仕様
・・・
年式(初年度登録)2004(平成16)年」(2頁)
c 「


d 「


e 「


f 上記aの記載を踏まえると、上記cないしeの写真画像からは、運転室と運転室の後側に設けられた荷室とからなるトラック型の高圧洗浄車の荷室の床部の後端に、後部シャッターを閉じた状態においてホースを荷室外へ通すことができる、後方側が荷室外に開放された切欠が設けられたことが看取される。
(イ)甲4公然実施発明
上記(ア)a及びbによれば、甲4−1に係る高圧洗浄車は平成16年に登録されたものであり、本件特許が出願された平成17年10月21日より前に、公然実施されたものと認められる。
よって、以下の発明が本件特許の出願前に公然実施されたものと認められる(以下「甲4公然実施発明」という。)
(甲4公然実施発明)
「運転室と運転室の後側に設けられた荷室とからなるトラック型の高圧洗浄車であって、荷室の床部の後端に、後部シャッターを閉じた状態においてホースを荷室外へ通すことができる、後方側が荷室外に開放された切欠が設けられた高圧洗浄車。」
公然実施発明
上記ア(イ)及びイ(イ)によれば、以下の発明が本件特許の出願前に公然実施されたものと認められる(以下「公然実施発明」という。)
なお、甲2−1〜2の記載からは、甲2−1〜2の図面に示された物品が本件特許の出願日である平成17年(2005年)10月21日より前に公然実施された、ないし公然知られたものであるのかは不明であり、また、甲2−1〜2に係る上記物品と甲3、甲4−1に係る高圧洗浄車との関係も不明であるから、甲2−1〜2を公然実施発明の認定の基礎としていないが、甲2−1〜2には甲3及び甲4から認定される公然実施発明以上の事項は開示されていないから、仮に甲2−1〜2を採用して公然実施発明を認定したとしても、認定される公然実施発明は、甲3及び甲4から認定する以下のものと同様である。
公然実施発明)
「運転室と運転室の後側に設けられた荷室とからなるトラック型の高圧洗浄車であって、荷室の床部の後端に、後部開口を閉じた状態においてホースを荷室外へ通すことができる、後方側が荷室外に開放された切欠が設けられた高圧洗浄車。」

(3)甲5
ア 甲5に記載された事項
請求人らが無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、車両等に組み込まれる移動型加圧式清掃システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】移動型加圧式清掃システムは空中のほこりやオイル、酸やその他の汚染物質によって汚れた外面を清掃するのに有効なものとして広く使用されている。種々の内側表面や機械類や商業車やボート等も同様に、その外観を元通りに回復させるためにきれいにされ、また腐食を阻止したり、たまったほこりや汚染物質等による有害な影響を受けないようにきれいにする。
【0003】従来の移動型加圧式清掃システムの有効な配置は例えば、米国特許第4821958号に示されており、この特許は本願発明の譲受人に譲渡されたもので、本文に参考として引用している。上記特許は量産される商業用バン型車両の内部に加圧式清掃ユニットを取り付けたものを開示している。このユニットは原動機、典型的には一対の高圧ポンプを駆動するディーゼルエンジンを有する。
【0004】ポンプの1つは、例えば酸やアルカリ、洗剤やワックスのような化学物質の添加剤と共に、又はそれを含まないで冷水や温水を供給するようにしている。第2のポンプは高圧のすすぎ用冷水のみを供給する。その車両には、水や化学物質からなる添加剤や燃料用の適切なタンクや、水のヒーターも配備されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そのような設備を、一つのユニットとして内蔵し、しかも量産車のバンの中に十分な量の水と化学物質の貯蔵容量をうまく配分し、同時に保守や修理をする装置にすぐに到達できるようにすることは困難である。
【0006】また、従来の高圧洗浄用流体分配システムでは、一人のオペレータが種々の化学物質を噴出させることは可能であるが、第2のオペレータは冷水のすすぎ水をかけることのみに制限されていた。従来のシステムのもう一つの欠点は、エンジン用のディーゼル燃料と水の加熱のための石油とを収容するために燃料貯蔵システムを2つ必要としたことである。
【0007】さらに、従来の水を加熱するヒーターは水平方向に配置されていたので、十分な性能を出そうとすると効率が幾分低下し、縦方向に配置したヒーターより保守をより多く必要とする。本願発明は上述のような課題の解決を目的としたものである。」
(イ)「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本願発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。移動型加圧式清掃システム10は、走行用車両26からなり、その中には、内燃機関11と、その内燃機関により駆動される高圧ポンプ12,13と、水用ヒーター14,15と、給水タンクまたは外部給水装置16と、添加剤タンク17〜20と、燃料タンク21〜23を内蔵する。
【0020】この車両は、好ましくは1トン車のフォードエコノライン(フォード社商品名、米国登録商標)のような大量生産される商用バンである。以下にさらに詳述するように、この清掃システム10は2つの互いに独立して作動する完全な機能を備えたホース接続部28,29を有し、それによって2人のオペレータの各々に完全な清掃機能を与える。即ち、2人のオペレータが個々にそれぞれ清掃作業を行うことができる。
【0021】原動機、即ち内燃機関11は、約18馬力のディーゼルエンジンが好ましい。この内燃機関11は水冷式でラジエータ36を有する。 図示のように、内燃機関11とラジエーター36は、鋼管による矩形フレーム37の上方部分に装着される。
【0022】また、そのフレーム37には、内燃機関の下方に、一対の高圧ポンプ12,13が装着され、それらポンプは容積移送式のピストンまたはプランジャー型ポンプである。このポンプ12,13は縦並びのタンデム配置にし、それらのポンプ軸が共軸をなし、内燃機関11のクランク軸と平行をなすようにしてある。
【0023】内燃機関11はそのクランク軸のプーリー39、Vベルト38、及び一方のポンプ13の軸41にあるプーリー40を介して、ポンプ12,13を駆動する。ポンプ13の軸41は2つの端部を有し、反対側の端部はカプリング42を介して他方のポンプ12を駆動できるようになっている。
【0024】ここに開示した例に適するポンプは、モデルNo.5CPプランジャーポンプの名称で、ミネソタ州ミネアポリスのキャト・ポンプス社から市販されている。フレーム37には制御パネル46も取り付けられており、この制御パネル46には、前述の米国特許第4821958号に示す方法で、所望の清掃機能を発揮するように種々のスイッチ及び電気装置が設けられている。
【0025】フレーム37はトラック車両26の床板45に取り外し自在にボルト締めされ、フレーム37を積込み台として利用することによって、内燃機関11、ポンプ12,13、及び制御パネル46を車両に設置したり取り外したりできるようになっている。」
(ウ)「【0030】図1〜3より、縦向きの水用ヒーターシェル52が内燃機関11及びポンプ12,13の前方かつ側方に配置されていることがわかる。このような配置にすることによって、車両26の後部ドア65から検査や保守及び修理のために内燃機関11及びポンプ12,13の反対側へ容易かつ簡便に到達できる。また、このような配置にすることにより、水のヒーターユニット14,15を破損させることなしに車両の後部から内燃機関11やポンプ12、13を取り出して、例えばそれらの部分の大がかりな保守や修理を必要時に行うことができる。
・・・
【0032】以下に詳述するように、各ホース接続部28,29には手動レバー操作弁72を有するスプレー器具71が取り付けられるようになっている。各スプレー器具71は他のスプレー器具71を使用するか否かに拘わらず、タンク17〜20に貯えられる4種類の化学物質の添加物の1つを加えて、あるいは加えないで高圧温水又は高圧冷水を噴射する。
【0033】ここで図4を参照すれば、高圧ポンプ12,13は、共通の車内給水タンク16からそれぞれの管路76,77を通ってポンプの入口78,79で受水する。ポンプ12,13は内燃機関11が運転される限り連続的に駆動される。各ポンプ12,13は管路81,82によってアンローダ弁83,84に接続される出口を有する。アンローダ弁83,84の出口には、簡単接続型ホースカプラー85,86が取り付けられる。アンローダ弁83,84の他の出口は管路89,90によってそれぞれの水用ヒーター14,15に接続される。
・・・
【0037】図3、4、5に示す回路の実施例の操作において、加圧式清掃はスプレー器具71,72が取り付けられるホース130,131を、接続部28,29のうちの1方の接続部のカプラー85又は96,86又は97の1つに取り付けることによって開始し、2人のオペレータが作業する場合には他方の接続部のカプラーの1つに取り付けることによつて開始する。」
(エ)【図1】〜【図4】は以下のとおり。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

(オ)上記(ウ)段落【0030】の記載を踏まえると、上記(エ)の【図3】からは、ホース130,131は、車両26の後部ドア65が開閉する後端開口部から車外に引き出される様子が看取される。
イ 甲5発明
上記アより、甲5には、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲5発明)
空中のほこりやオイル、酸やその他の汚染物質によって汚れた外面を清掃するのに有効なものとして広く使用されている移動型加圧式清掃システムを組み込んだ車両であって、
車両は、好ましくは1トン車の商用バンであり、
中には、内燃機関11と、その内燃機関により駆動される高圧ポンプ12,13と、水用ヒーター14,15と、給水タンクまたは外部給水装置16と、添加剤タンク17〜20と、燃料タンク21〜23を内蔵し、
内燃機関11は水冷式でラジエータ36を有し、内燃機関11とラジエーター36は、鋼管による矩形フレーム37の上方部分に装着され、フレーム37には、内燃機関の下方に、一対の高圧ポンプ12,13が装着され、
高圧ポンプ12,13は、車内給水タンク16から受水し、アンローダ弁83,84に接続され、アンローダ弁83,84の出口には、簡単接続型ホースカプラー85,86が取り付けられ、スプレー器具71,72が取り付けられるホース130,131は、カプラー85,86に取り付けられるものであり、
ホース130,131は、車両26の後部ドア65が開閉する後端開口部から車外に引き出される、車両。

(4)甲6
ア 甲6に記載された事項
請求人らが無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲6には、次の事項が記載されている。
(ア)「2.実用新案登録請求の範囲
車台に高圧水発生装置と、該装置に接続される高圧水圧送ホースを巻回したドラムと、管路内撮像カメラ用ケーブルを巻回したドラムと、排水装置と、モニタテレビジヨンと、上記高圧水発生装置、排水装置、高圧水圧送ホース巻回ドラム、カメラ用ケーブル巻回ドラムを制御する制御盤と、管路内撮像カメラおよび上記高圧水圧送ホースの先端に取付ける先端ノズルと、上記排水装置に接続する吸水ホースおよび排水ホースと搭載してなり、上記高圧水圧送ホース巻回ドラムおよび管路内撮像カメラ用ケーブル巻回ドラムは上記車台上部の最後部に並列して配設され、上記排水装置は上記車台下部に配設され、上記高圧水圧送ホースおよびカメラ用ケーブルにはグラスウールを合成樹脂で固めた剛性層を設けたことを特徴とする管路点検洗浄車。」(明細書1頁4行〜20行)
(イ)「3.考案の詳細な説明
(産業上の利用分野)
本考案は、地下に埋設された電気通信ケーブル管路等の小口径管路の管内洗浄ならびに管内点検調査用の設備、排水用の設備を搭載した車輛に関するものである。
(従来の技術)
従来、地下管路の点検調査、洗浄にあたつては、洗浄車(車載型式でない洗浄装置)、給水車、排水車、工事材料運搬車、管内撮像カメラ装置等を搭載した車等を作業現場に配置し、マンホール内の溜り水排水作業、管路内洗浄作業および発生水排水作業、撮像カメラ装置による管路内点検調査作業の順で作業を行つていた。
(考案が解決しようとする問題点)
このため、作業現場に持ち込む工事車輛は5〜6台必要となり、道路上での作業帯確保に問題がある他、作業工程が変わるごとに作業車輛の入替や装置の配置替が必要となり作業性が極めて悪かつた。
・・・高圧水発生装置の大型化により高圧水洗浄装置も大型化し、車台スペースおよび積載重量の点から管路撮像カメラ装置及び排水装置等の洗浄車への搭載が困難であつた。
・・・
本考案は、上記の点にかんがみ、一台のしかも比較的小型の車輌に高圧水洗浄用設備、管路点検調査用設備、排水用設備等を装備できまた高圧水圧送ホースおよび管路内撮像カメラ用ケーブル自体で管路内へ長距離挿入できるような剛性をもたせるようにしたものである。」(明細書2頁1行〜4頁8行)
(ウ)「(実施例)
第1図ないし第3図は本考案の実施例を示し、1は車台、2は制御盤、・・・10は高圧水発生装置であつて、油圧モータを用い、吐出圧力100Kg/cm2、吐出水量16l/min程度のものよりなり制御盤の隣に配設される。11は高圧水圧送ホース巻回ドラムであつて、車台1の最後部に設けられ、高圧水発生装置10と連結ホース12を介して接続される。・・・13はドラム11に巻回された高圧水圧送ホースであつて、その先端には先端ノズル14が取外し自在に取付けられる。」(明細書5頁7行〜6頁7行)
(エ)「第7図は管路内洗浄作業時の使用状態を示す。制御盤2を操作して高圧水圧送ホース巻回ドラム11をゆつくり回転させて高圧水圧送ホース13を繰り出し、ホース13に取り付けた先端ノズル14をマンホールに入つた作業者が洗浄しようとする管路に挿入した後、制御盤2を操作して高圧水発生装置10を駆動し、給水車29を給水源として高圧水を発生させ、ホース13を通して先端ノズル14から高圧水を噴射させながら高圧水圧送ホース13を管路内へ押込んでいく。」(明細書9頁7〜16行)
(オ)「(考案の効果)
本考案は以上のように、高圧水圧送ホースにはグラスフアイバを合成樹脂で固めた剛性層を有していることより高圧水発生装置を小型化でき、また高圧水圧送ホースドラムと管路内撮像カメラ用ケーブルドラムとを並設して車台上部の最後部に設け、排水ポンプを車台下に設け、各装置の制御を制御盤で行なわせるようにしたことにより搭載スペースが少なくなり、比較的小型の車輛一台で高圧水洗浄機能、管路内点検調査機能およびマンホール溜水排水機能を持たせたものにできる。従つて作業現場に持ち込む車は、他に給水車と道路上の安全施設を運搬する車との3台程度でよく、交通支障問題の緩和、作業車輔経費の削減ができること、作業工程が変る毎に作業車輌の入替や装置の配置替が不要となつて作業時間の短縮ができること並びに制御盤で各装置の制御を集中して行えることより作業員数の削減ができること、排水作業および管路内洗浄作業が同時に行えること等の利点がある。」(明細書11頁3行〜12頁2行)
(カ)第7図は以下のとおり。

(キ)上記(ウ)及び(エ)の記載を踏まえると、上記(カ)の第7図からは、高圧水圧送ホース13は、管路内洗浄作業時に車台1の最後部において開閉できるように設けられた開口から車外に引き出される様子が看取される。
イ 甲6発明
上記アより、甲6には、以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲6発明)
地下に埋設された電気通信ケーブル管路等の小口径管路の管内洗浄ならびに管内点検調査用の設備、排水用の設備を搭載した車輛であって、
制御盤2、油圧モータを用いる高圧水発生装置10、車台1の最後部に設けられ、高圧水発生装置10と連結ホース12を介して接続される高圧水圧送ホース巻回ドラム11、ドラム11に巻回された、先端に先端ノズル14が取外し自在に取付けられる高圧水圧送ホース13が車台1に搭載され、
高圧水圧送ホース13は、管路内洗浄作業時に車台1の最後部において開閉できるように設けられた開口から車外に引き出される、
給水車29を給水源として高圧水を発生させる、車輛。

(5)甲7
ア 甲7に記載された事項
請求人らが無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲7には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、ビール、発泡酒、清涼飲料等の飲料等を注出する流体用ディスペンサーの洗浄装置に関する。」
(イ)「【0018】
【発明の実施の形態】−第1の実施の形態−
以下、図1〜図6を用いて本発明によるディスペンサー洗浄装置の第1の実施の形態について説明する。第1の実施の形態はビールディスペンサーを洗浄するための洗浄装置であって、洗浄のための設備一式を自走式の車両に搭載したものである。
【0019】図1〜図4に示すように、第1の実施の形態の洗浄装置は、アルカリ性薬液、温水、酵素剤および電解水等の供給、回収、あるいは循環を制御する洗浄機本体1と、洗浄水(温水)を蓄えるための容量100リットルの温水タンク2と、温水タンク2の水を加熱するための給湯機3と、洗浄に用いた排水を中和するための容量100リットルの中和タンク4と、アルカリ性薬液を蓄えるための容量50リットルの薬液タンク5と、ガソリンエンジンを内蔵し洗浄に必要な発電を行う発電機6と、ディスペンサー内から薬液や洗浄水を排出するための圧搾空気を作り出すコンプレッサー7と、給湯機3に燃料ガスを供給するためのLPGガスボンベ9とを備える。これらの洗浄機本体1、温水タンク2、給湯機3、中和タンク4、薬液タンク5、発電機6、コンプレッサー7およびガスボンベ9は自走式の車両100に搭載されている。」
(ウ)「【0081】
・・・
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の流体用ディスペンサー洗浄装置の構成を示す平面図。
【図2】図1のII−II線方向から見た図。
【図3】図1のIII−III線方向から見た図。
【図4】第1の実施の形態の洗浄装置における水および薬液の回路を示す回路図。
・・・」
(エ)【図1】ないし【図4】は以下のとおり。
【図1】


【図2】

【図3】

【図4】

イ 甲7発明
上記アより、甲7には、以下の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲7発明)
ビールディスペンサーを洗浄するための洗浄装置が備える、アルカリ性薬液、温水、酵素剤および電解水等の供給、回収、あるいは循環を制御する洗浄機本体1、洗浄水を蓄えるための容量100リットルの温水タンク2、温水タンク2の水を加熱するための給湯機3、洗浄に用いた排水を中和するための容量100リットルの中和タンク4、ガソリンエンジンを内蔵し洗浄に必要な発電を行う発電機6、ディスペンサー内から薬液や洗浄水を排出するための圧搾空気を作り出すコンプレッサー7および給湯機3に燃料ガスを供給するためのLPGガスボンベ9が搭載されている自走式の車両100。

(6)甲8及び甲9
摘記は省略するが、甲8には年式が2005年以前のトヨタタウンエースバンの中古車情報が、甲9には年式が2005年以前のトヨタタウンエーストラックの中古車情報が、それぞれ、記載されている。

(7)甲10
請求人らが無効理由に係る証拠として提出した甲10には、次の事項が記載されている。
ア 「エルフバン−いすゞ 原動機 4JG2 5速 左サイドスライドドア・・・年式 2001年・・・」(表題)
イ 「

」(37枚の写真画像中の36枚目)

2 乙号証の記載事項
(1)乙8
乙8には、以下の記載がある。
ア 「

」(2枚目)

(2)乙9
乙9には、以下の記載がある。
ア 「

」(1枚目)
イ 「

」(2枚目)

(3)乙10の1
乙10の1には、以下の記載がある。
ア 「

」(1枚目)

(4)乙11
乙11には、以下の記載がある。
ア 「

」(6頁)

(5)乙19
乙19には、以下の記載がある。
ア 「

」(2/39下方)
イ 「

」(3/39)

3 本件発明1
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア(ア)対比に先だって、「バン型」の自動車と「トラック型」の自動車の構造の異同とそれに伴う乗員室、荷室の構成の異同について、検討する。
(イ)「バン型」の自動車は、運転席及び荷室の空間を形成する壁、天井等が、運転席及び荷室の床部と一体となって全体が一つの車体とされる。
(ウ)一方、「トラック型」の自動車は、運転席の空間を形成する壁、天井等が運転席及びタイヤ等が取り付けられる床部分と一体となって車体とされ、その車体の上に荷物を収容する荷室(バン)等が架装される(上記2(5)乙19)。
(エ)上記(イ)及び(ウ)の構造の異同から、運転席となる空間である「乗員室」は、「バン型」の自動車も「トラック型」も、ともに「車体」として形成される。
(オ)また、上記(イ)及び(ウ)の構造の異同から、「荷室」となる空間は、「バン型」の自動車は運転席の空間の後側に連続し、車体の一部とされる一方、「トラック型」の自動車は、「車体」ではなく、「車体」に架装されるものとして形成されるため、両者は異なる。
(カ)上記検討を踏まえて、以下、本件発明1と甲1発明とを対比する。
イ 甲1発明の「運転室11」は、本件発明1の「乗員室」に相当する。
ウ 上記イの対比を踏まえると、本件発明1の「その乗員室の後側に連続すると共に後端が車体後面に開口する荷室」と、甲1発明の「運転室11の後側に設けられた荷物室27」とは、「乗員室の後側の荷室」の点で共通する。
エ 本件発明1の「その荷室の後端開口部を、車体後端に設けたテールゲートで開閉できるようにした洗浄作業用バン型自動車」と、甲1発明の「囲鈑3の後部には蝶番27’によって開閉される旋回式扉5を設けて」いる「高圧水洗滌ポンプ車」とは、「その荷室の後端開口部を、荷室後端に設けたテールゲートで開閉できるようにした洗浄作業用自動車」の点で共通する。
オ 甲1発明の「水タンク6」、「洗滌水」が「水タンクから」入る「高圧水ポンプ20」及び「高圧水ポンプ20」を「駆動」させる「エンジン17」は、それぞれ、本件発明1の「水を貯めるタンク」、「このタンク内の水を吸引し得るポンプ」及び「このポンプを駆動する内燃機関」に相当する。
カ 甲1発明の「エンジン17」は、「本体」と「排気マフラー18」を備えて構成され、さらに「排気マフラー18」に「排気管19」が「接続」されているものであるから、甲1発明においても、「エンジン」から延びる「排気管」に「排気マフラー」が「介装」されているといえる。従って、甲1発明は、本件発明1の「その内燃機関から延びる排気管に介装される排気消音器」との構成を備える。
キ 上記ウ、オ及びカの対比を踏まえると、甲1発明の「荷物室27」の「荷台2上には、水タンク6と、エンジンにより駆動する高圧水ポンプ20より組成されたエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7と」が「各々荷台2に対し固設されて」いることは、本件発明1の「前記荷室には、水を貯めるタンクと、このタンク内の水を吸引し得るポンプと、このポンプを駆動する内燃機関と、その内燃機関から延びる排気管に介装される排気消音器とが収納、固定され」ることに相当する。
ク 上記ウの対比を踏まえると、本件発明1の「車体の、前記荷室下方の床部には、前記ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部と、前記排気消音器より下流側の前記排気管を挿通させて該排気管の下流端を車外の大気に開放するための排気管挿通部とが設けられる」ことと、甲1発明の「荷物室27の荷台2に、排気マフラー18の下流側に接続されている排気管19を挿通させるための挿通部が設けられ、排気管19は、排気管19の下流端が荷室外に位置し、路面方向に排気するように荷台に取付けている」こととは、「荷室」の「下方の床部には、前記排気消音器より下流側の前記排気管を挿通させて該排気管の下流端を荷室外の大気に開放するための排気管挿通部とが設けられる」点で共通する。
ケ 上記イないしクより、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を備える。
(一致点)
乗員室と、その乗員室の後側の荷室とを備え、その荷室の後端開口部を、荷室後端に設けたテールゲートで開閉できるようにした洗浄作業用自動車において、
荷室には、水を貯めるタンクと、このタンク内の水を吸引し得るポンプと、このポンプを駆動する内燃機関と、その内燃機関から延びる排気管に介装される排気消音器とが収納、固定され、
荷室の下方の床部には、前記排気消音器より下流側の前記排気管を挿通させて該排気管の下流端を荷室外の大気に開放するための排気管挿通部が設けられる、洗浄作業用自動車。
(相違点)
本件発明1は、
(ア)「バン型」の洗浄作業用自動車であって、
(イ)荷室は、「乗員室の後側に連続すると共に後端が車体後面に開口する」ものであり、
(ウ)テールゲートは、「車体」後端に設けたものであり、
(エ)排気管挿通部は、「車体」の、前記荷室下方の床部に設けられるものであり、
(オ)「車体の、前記荷室下方の床部には、前記ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部」が設けられるのに対し、
甲1発明は、
(ア’)「トラック型」の「特に高層マンション、アパート等の鉄筋コンクリートに埋設された配水管や外壁を高圧水によって洗滌する際等に用いる」自動車であって、
(イ’)荷物室は、「乗員室の後側に連続する」ものではなく、また、「荷物室」は「車体」ではないため、後端が「車体」後面に開口するといえるものでもなく、
(ウ’)「荷物室」は「車体」ではないため、旋回式扉5(本件発明1の「テールゲート」に相当。)は、「車体」後端に設けたものではなく、
(エ’)「荷物室」は「車体」ではないため、「排気管挿通部」が設けられるのは「車体」の、荷室下方の床部ではなく、
(オ’)「荷物室」は「車体」ではないため、荷室下方の床部は「車体」の、荷室下方の床部ではなく、また、「前記ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部」が設けられるものでもない点。
引用発明の認定及び対比についての請求人らの主張について
(ア)請求人らは、甲1から、「・・・運転室11と連続しない後端が車体後面に開口する荷物室27とを備え」、「車両後端に設けた旋回扉5」、「車体の、荷物室27下方の荷台2には、・・・排気管挿通部(排気管19が荷台を貫く部位・・・が設けられる」、「高圧水洗浄ポンプ車」と引用発明1を認定し(請求書14頁11行〜15頁8行)、本件発明1と対比した。その際、甲1発明の「荷物室」について、「荷物室」が「車体」であることを本件発明1との一致点とした上で、以下の2点を相違点としている。
a 相違点1:乗員室と、荷室とが、本件発明1では、連続するのに対し、引用発明1では、連続しない点(請求書20頁4、5行)。
b 相違点2:車体の荷室の下方の床部に、本件発明1では、圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部を有するのに対し、引用発明1では、ホース24を車外に引き出すための圧送管挿通部を有さない点(請求書20頁15〜19行)。
(イ) a(a)請求人らは、「・・・相違点1は、高圧洗浄車のベース車として、バンを採用するか、荷室付きトラックを採用するかの違いであって・・・」(請求書20頁6、7行)と主張しており、甲1発明が「トラック型」の洗浄作業用自動車であることは実質的に認めているから、請求人らの認定した引用発明1と、合議体が認定した甲1発明とにおける差は、結局、「トラック型」の洗浄作業用自動車の荷室を「車体」と認定するか否かであると認められる。
(b)この点については、上記アにおいて検討したとおりであり、「トラック型」の洗浄作業用自動車の荷室は「車体」ではない。
b そうすると、荷室が「車体」後面に開口し、「車体」後端にテールゲートを設けた洗浄作業用「バン型」自動車であって、「車体」の床部に排気管挿通部が設けられるものであることは、甲1発明には開示されておらず、本件発明1との相違点である。
(ウ)よって、当審においては、上記ケのように甲1発明及び本件発明1と甲1発明の一致点、相違点を認定した。

(2)判断
ア 上記(1)ケの相違点のうち(ア)−(ア’)、(イ)−(イ’)、(ウ)−(ウ’)について
(ア)上記(1)ケの相違点のうち(ア)−(ア’)、(イ)−(イ’)、(ウ)−(ウ’)の相違点は、いずれも、ベースとなる自動車が「バン型」であるか「トラック型」であるかによるものであるといえるので、以下、甲1発明の「特に高層マンション、アパート等の鉄筋コンクリートに埋設された配水管や外壁を高圧水によって洗滌する際等に用いる」自動車を「トラック型」の自動車から、「バン型」の自動車とすることが、当業者が容易になし得たことであるかについて検討する。
(イ) a 甲1発明におけるベースとなる自動車は、上述のように「トラック型」の自動車である。「トラック型」の自動車は、乙19に示されるように運転席の空間を形成する壁、天井等が運転席及びタイヤ等が取り付けられる床部分と一体となって車体とされ、その車体の上に荷物を収容する荷室(バン)等を架装することができるものであり、その荷室は、車体とは別体であることから、荷室に対する装置の設置等の自由度が高く、荷室に積載できる荷物に許容される重量や形状の自由度の範囲は大きい。
一方、「バン型」の自動車は、運転席及び荷室の空間を形成する壁、天井等が、運転席及び荷室の床部と一体となって全体が一つの車体とされる。そして、当該荷室に積載できる装置の大きさは通常「トラック型」の自動車よりも小さく、積載可能な重量も通常「トラック型」の自動車よりも軽量であり、荷室が車体の一部であることから、荷室に対する装置の設置の自由度も、荷台が車体と別に架装される「トラック型」の自動車よりも低いものと認められる。
b 高圧洗浄装置を搭載した自動車の具体例についてみる。
(a)「トラック型」の自動車を用いる高圧洗浄車として、例えば、乙11に示された「ビルメンテナンス仕様「2トン車級PTO駆動式高圧洗浄車」」は、「一般家庭からアパート、マンション、事務所など」のビルメンテナンスを行う「小型」の高圧洗浄車として「適用シャシ2トン車級」の自動車が用いられ、用いられる水タンクの容量は1020Lである。
この高圧洗浄車のほか、乙8の兼松エンジニアリング株式会社の製品情報に示される高圧洗浄車がビルメンテナンス用のものを含め全て「トラック型」の自動車であり、乙9の株式会社シンショーに示される高圧洗浄車が全て「トラック型」の自動車であり、乙10の1及び乙10の2に示される、モリタエコノス株式会社の壁面や床面の洗浄に使用できる高圧洗浄車が「トラック型」の自動車であり、乙11に示される新明和工業株式会社の排水管洗浄作業に用いられる高圧洗浄車も全て「トラック型」の自動車であるように、従来より排水管や外壁の高圧洗浄装置は「トラック型」の自動車に積載されており、「バン型」の自動車に積載されていない。
(b)一方、「バン型」の自動車を用いる高圧洗浄車として、例えば、甲5発明は、「内燃機関11」、「高圧ポンプ12,13」、「給水タンク」等を備える「移動型加圧式清掃システム」を「商用バン」に積載するものであるが、「移動型加圧式清掃システム」は「空中のほこりやオイル、酸やその他の汚染物質によって汚れた外面を清掃するのに有効なものとして広く使用されている」ものであって、「排水管や壁面」を洗浄するものではなく、また、「好ましくは1トン車」とされているところからみて、「トラック型」の自動車よりも積載可能な重量が小さい。また、甲6発明の車輛は、「地下に埋設された」「小口径管路の管内洗浄」を「高圧水」により行うものであるが、清掃のための給水源として当該「バン型」の自動車とは別の「給水車」を用いるものであって、「バン型」の自動車の荷室は水タンクを積載できない大きさないし積載荷重であることが推認される。なお、甲7発明の「車両100」が搭載する「ビールディスペンサーを洗浄するための洗浄装置」は高圧水を用いないから、甲7発明は、そもそも高圧洗浄装置を搭載した自動車ではない。
c 甲1発明の高圧水洗滌ポンプ車の荷物室27の荷台2上に固設された水タンク6、エンジン17により駆動する高圧水ポンプ20より組成されたエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7、ホースリール13等は、高圧水洗滌ポンプ車が「トラック型」の自動車であって「特に高層マンション、アパート等の鉄筋コンクリートに埋設された配水管や外壁を高圧水によって洗滌する際等に用いる」ものであることから、上記b(a)の「トラック型」の自動車を用いる高圧洗浄車と同様、相当な重量を有していると認められる。また、形状について、甲1の第1図(上記1(1)ア(ウ))をみると、運転室11の屋根の高さよりも、水タンク6、エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7の上端の高さの方が高いことがわかる。
d そして、甲1発明の水タンク6やエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7、ホースリール13等の自動車への積載の可能性について、上記a及びbにおいて検討した「トラック型」の自動車と「バン型」の自動車の特性に鑑みて検討すると、上記cで検討したように甲1発明の水タンク6、エンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7は、その大きさが「バン型」の自動車に搭載することが困難なほどのものであるとともに重量も「バン型」の自動車では積載することが難しい重量を有するものと推認されるから、当業者が、甲1発明のベース車を「トラック型」の自動車から「バン型」の自動車にする動機付けがあるということはできない。
e 以上のとおりであるから、甲1発明の「特に高層マンション、アパート等の鉄筋コンクリートに埋設された配水管や外壁を高圧水によって洗滌する際等に用いる」自動車を「トラック型」の自動車から、「バン型」の自動車とすることにより、上記相違点(ア)−(ア’)、(イ)−(イ’)、(ウ)−(ウ’)に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
f なお、請求人らが提出した甲1〜10のいずれにも、水を貯めるタンクを含む排水管や外壁の高圧洗浄装置が、「バン型」の自動車に搭載可能な程度の重量及び形状のものであることや、実際に高層マンション等の排水管や外壁の高圧洗浄装置を「バン型」の自動車に積載することは示されていない。
イ 上記(1)ケの相違点のうち(エ)−(エ’)について
(ア)甲1発明において洗浄作業用自動車を「バン型」の自動車とすることは、上記アにおいて検討したように当業者が容易になし得たことではない。そうすると、「排気管挿通部」が設けられるのを、「バン型」の自動車の「車体」の、荷室下方の床部とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(イ)甲1発明は、荷物室27が運転室11と独立しており、荷台2と荷台2を覆う囲鈑3とを備えたものとされる。一方、「バン型」の自動車は、通常、乗員室と荷室は1個の車体として設けられ、床部は車体の床部として構成されているものである。そうすると、甲1発明のような「トラック型」の自動車と「バン型」の自動車とは、床部の構造において違いがあると認められ、「トラック型」の自動車の荷室の床部の構造を、「バン型」の自動車の「車体」の荷室下方の床部に採用することが可能であるとただちにいえるものではない。
よって、「床部」について、甲1発明において「排気管挿通部」が設けられるのを、「トラック型」の荷室下方の床部から、「バン型」の自動車の「車体」の荷室下方の床部とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 上記(1)ケの相違点のうち(オ)−(オ’)について
(ア)公然実施発明は、「トラック型」の高圧洗浄車において、後部扉を閉じた状態においてホースを荷室外へ通すことができる、後方側が荷室外に開放された切欠を設けている。しかし、公然実施発明は「トラック型」の高圧洗浄車であって、上記(1)アにおいて検討したように、「荷室」は「車体」ではないから、「切欠」(後部扉を閉じた状態においてホースを荷室外へ通すことができる、後方側が荷室外に開放された部分)は「乗員室の後側に連続すると共に後端が車体後面に開口する」荷室における「車体」の床部に設けられたものではない。
(イ)また、甲1発明において洗浄作業用自動車を「バン型」の自動車とすることは、上記アにおいて検討したように、当業者が容易になし得たことではないから、「圧送管挿通部」が設けられるのを「車体」の、荷室下方の床部とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ)念のため、「バン型」の高圧洗浄車とされる甲5〜甲7について「前記ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出す」ための構成を確認すると、甲5発明は、「高圧ポンプ12,13」に接続される「ホース130,131」は、「車両26の後部ドア65が開閉する後端開口部から車外に引き出される」ものであり、甲6発明は、「高圧水圧送ホース13は、管路内洗浄作業時に車台1の最後部において開閉できるように設けられた開口から車外に引き出される」ものであり、甲7発明は、そもそも高圧洗浄水を発生するものではないから、甲5発明、甲6発明、甲7発明のいずれにも、「前記ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出す」ための「圧送管挿通部」を「バン型」の高圧洗浄車の「車体」の、荷室下方の床部に設けることについて記載も示唆もない。
(エ)そうすると、公然実施発明、甲5発明、甲6発明及び甲7発明のいずれにも、上記(1)ケの相違点のうち(オ)−(オ’)に係る本件発明1の、「車体の、前記荷室下方の床部には、前記ポンプの吐出側より延出する圧送管を挿通させて該圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部」を設けることについて記載も示唆もなく、甲1発明、公然実施発明、甲5発明、甲6発明及び甲7発明から上記(1)ケの相違点のうち(オ)に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者といえども容易になし得たことではない。
エ 判断についての請求人らの主張について
(ア) a 請求人らは、甲1発明が、「乗員室(Cf)と、その乗員室(Cf)の後側に連続すると共に後端が車体(F)後面に開口する荷室(Cr)とを備え」る「洗浄作業用バン型自動車」の車体では無いという相違点1と、甲1発明が、「車体の荷室の下方の床部に圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部を有する」ものではないという相違点2とは、独立(適用に順番が無いという意味)した相違点であるから、相違点1にかかる副引例(設計的事項、甲5、甲6、甲7)を適用の後、更に相違点2にかかる副引例(甲第2号証−1〜甲第4号証−3)を適用するならば、実質的に、相違点1にかかる副引例と相違点2にかかる副引例との適用の動機付け判断をしていることに等しく、相違点適用の順番を考慮することは、誤りである旨、主張する(請求人陳述要領書11頁3〜10行、21行〜12頁4行)。
b しかし、上記(1)において合議体は、「トラック型」の洗浄作業用自動車の荷室は「車体」ではないとしており、請求人らの主張する一致点及び相違点は、合議体が認定したものとそもそも異なる。また、上記(1)ケにおいて認定したように、合議体においては、本件発明1と甲1発明の相違点として1つの相違点を認定した。判断においては、便宜上分割して検討したが、分割したいずれの相違点も、「バン型」の自動車であること、またはその「バン型」の自動車の車体の床部であることを相違点として含むところ、上記アにおいて判断したように甲1発明の自動車を「トラック型」から、「バン型」とすることが当業者が容易になし得たことではない以上、相違点適用の順序を考慮するしないにかかわらず、本件発明1が甲1発明から出発して当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
(イ) a 請求人らは、請求人陳述要領書に添付して甲8ないし甲10を提出し、甲8のトヨタタウンエースバンと甲9のタウンエーストラックとは、「トラック型」の自動車と「バン型」の自動車とで部品の共通化がされ、販売者及び需要者が共通することを主張した上、いすゞエルフトラック(甲2−1〜甲4−3)についてもブランドを共通とするいすゞエルフバン(甲10)が販売されていたことを示し、「バン型」の自動車と「トラック型」の自動車とは、販売者及び需要者が隣接する隣接品であり、「バン型」の自動車と「トラック型」の自動車との違いは、運転席と荷台とが連続しているか、不連続であるかの違いに過ぎず、洗浄作業においては本質的な違いとはなり得ないから、洗浄車のベース車として、「トラック型」の自動車を採用するか、「バン型」の自動車を採用するかは、公知材料の中からの最適材料の選択、均等物による置換、ないし技術の具体的適用に過ぎない旨主張する(請求人陳述要領書4頁9〜23行)。
b しかし、甲8のトヨタタウンエースバンと甲9のタウンエーストラックにブランドや部品等において共通性があり、甲8のトヨタタウンエースバンと甲9のタウンエーストラックのどちらを採用するかについては、適宜なし得た程度のことであるといえる場合があるとしても、上記アにおいて検討したとおり、甲1発明の水タンク6やエンジン駆動防音型高圧水ポンプ装置7は、その形状や重量において「バン型」の自動車に搭載することに困難性を有するものであると認められるから、甲1発明を「バン型」の自動車とすることが容易になし得たこととはいえない。
(ウ) a 請求人らは、「バン型」の自動車と「トラック型」の自動車との違いは運転席と荷台とが連続しているか、不連続であるかの違いに過ぎないことを前提として、甲1発明の床部に、公然実施発明の「車体の荷室の下方の床部に圧送管を車外に引き出すための圧送管挿通部を有する」構成を採用する一方で、車体を、設計変更または甲5ないし甲7に記載の周知ないし公知の技術を採用して「トラック型」の自動車に代えて「バン型」の自動車を採用すれば、「バン型」の自動車の床部に後部扉を閉じた状態においてホースを車外へ通すことができる部分を設けることになるから、本件発明1を構成することは容易である、と主張しているとも考えられるので、以下、「バン型」の自動車と「トラック型」の自動車との違いは運転席と荷台とが連続しているか、不連続であるかの違いに過ぎず、「トラック型」の自動車を「バン型」の自動車に置換するとともに、公然実施発明を採用して、「バン型」の自動車の「車体の、荷室下方の床部」に「後部扉を閉じた状態においてホースを車外へ通すことができる部分」を「圧送管挿通部」として設けることが当業者が容易になし得たことであるのかについて、検討する。
b(a)乙19に示されるように、「トラック型」の自動車は、一般にシャシーの上に荷物を収容する荷室(バン)等が架装されるものであり、甲1発明においても荷物室27は、運転室11と独立しており、荷台2と荷台2を覆う囲鈑3とを備えたものとされる。このような「トラック型」の自動車の荷室は、車体と別に誂えられて車体に架装されるものであるから、荷室の床部に対する適所への穿孔等の構造の変更は、比較的容易に行うことができるものであると認められる。
一方、「バン型」の自動車は、通常、乗員室と荷室は1個の車体として設けられ、床部は車体の床部として構成されているものであり、「車体」として機能する必然性から、荷室の床部に対する穿孔等の構造の変更に関し、車体に架装される荷室よりも、制約が大きいことは自明である。
そうすると、一般的には、「トラック型」の自動車と「バン型」の自動車との違いは、運転席と荷台とが連続しているか、不連続であるかの違いのみではなく、床部の構造においても違いがあると認められ、構造変更の容易性において、「バン型」の自動車の車体の荷室の床部は、「トラック型」の自動車の荷室の床部と同視できるものとはいえない。そうすると、「トラック型」の荷室の床部に設けた「排気管挿通部」を、「バン型」の自動車の「車体」の荷室下方の床部に同様に採用することが可能であるとただちにいえるものではない。
(b)また、請求人らの主張を総合しても、「バン型」の自動車の床部が、構造変更の容易性において甲1発明の「トラック型」の自動車の床部と同視できる程度のものであるということはできない。
(c)公然実施発明のいすゞエルフトラックについて、請求人らは、甲10を挙げて、ブランドを共通とするバン(いすゞエルフバン)が存在することを主張する。甲10には上記1(7)イに示す床部下面の写真画像が示されるものの、公然実施発明のいすゞエルフトラックの「荷室の床部」に設けられた「後部扉を閉じた状態においてホースを車外へ通すことができる、後方側が車外に開放された切欠」を、いすゞエルフバンの床部に設けることが容易にできるといえる程度にいすゞエルフトラックの床部といすゞエルフバンの床部とが共通化されていることが甲10に示されたものとはいえない。
(d)請求人らは、甲8及び甲9を示し、トヨタタウンエースバンとトヨタタウンエーストラックについて、部品等の共通化がなされている旨主張するものの、甲1発明の「トラック型」の自動車または公然実施発明において使用されるいすゞエルフトラックと甲8のトヨタタウンエーストラックとが床部の構造上同様といえるものではなく、甲1発明の「トラック型」の自動車及び公然実施発明のいすゞエルフトラックについて、「バン型」の自動車の床部が構造変更の容易性において同視できる程度であるとはいえないことは、上記(a)及び(b)において指摘したとおりである。なお、トヨタタウンエースバンとトヨタタウンエーストラックについても、トヨタタウンエースバンの床部がトヨタタウンエーストラックのそれと同様であって構造変更の容易性において同視できるものであるか否かは、提出された証拠からは不明である。
c そうすると、公然実施発明が「トラック型」の自動車の荷室の床部に後部扉を閉じた状態においてホースを車外へ通すことができる部分(切欠)を設けることを開示するものであるとしても、「トラック型」の自動車と「バン型」の自動車との違いは、運転席と荷台とが連続しているか、不連続であるかの違いのみではなく、床部の構造においても異なり、構造変更の容易性において同視できるものとはいえない以上、仮に、甲1発明において「トラック型」の自動車から「バン型」の自動車に変更することを当業者が想到し得たとしても、「バン型」の自動車の「車体」の「床部」に「後部扉を閉じた状態においてホースを車外へ通すことができる部分」を設けることが当業者が容易になし得たこととはいえない。さらに、「ホースを車外へ通すことができる部分」が、本件発明1は「圧送管挿通部」であるのに対し公然実施発明は「一側面が車外に開放された切欠」であることも相違点であり、「バン型」の自動車の「車体」の「床部」に「後部扉を閉じた状態においてホースを車外へ通すことができる圧送管挿通部」を設けることについて、甲1発明、公然実施発明、甲5、甲6、甲7発明のいずれにも記載も示唆もないのであるから、甲1発明から出発して、「バン型」の自動車の「車体」の「床部」に「後部扉を閉じた状態においてホースを車外へ通すことができる圧送管挿通部」とすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。
(エ)以上のとおりであるから、請求人らの主張は、採用することができない。

(3)小括
以上検討したとおり、本件発明1は、甲1発明、公然実施発明、甲5発明、甲6発明及び甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件発明2〜3、5〜9、11〜13について
本件発明2〜3、5〜9、11〜13は、本件発明1のすべての特定事項を有し、さらに限定を付加したものである。
そうすると、上記3のとおり、本件発明1が、甲1発明、公然実施発明、甲5発明、甲6発明及び甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2〜3、5〜9、11〜13も同様に、甲1発明、公然実施発明、甲5発明、甲6発明及び甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人らの主張及び証拠方法によっては、本件請求項1〜3、5〜9、11〜13に係る発明の特許を無効とすることはできない。
そして、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人らが負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2024-01-26 
結審通知日 2024-01-31 
審決日 2024-02-19 
出願番号 P2005-307590
審決分類 P 1 123・ 121- Y (E01H)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 土屋 真理子
古屋野 浩志
登録日 2009-09-11 
登録番号 4372742
発明の名称 洗浄作業用バン型自動車及びこれを用いた洗浄方法  
代理人 江間 布実子  
代理人 中野 浩和  
代理人 中島 崇晴  
代理人 中野 浩和  
代理人 永野 真理子  
代理人 益弘 圭  
代理人 中島 崇晴  
代理人 黒田 博道  
代理人 黒田 博道  
代理人 石下 雅樹  

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