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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F |
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管理番号 | 1409903 |
総通号数 | 29 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-04-10 |
確定日 | 2024-05-14 |
事件の表示 | 特願2018− 33989「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月 5日出願公開、特開2019−146804、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年2月27日の特許出願であって、令和3年2月25日に上申書及び手続補正書が提出され、令和4年1月19日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月22日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年7月27日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年9月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和5年1月25日付け(送達日:同年1月31日)で、令和4年9月28日にされた手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、令和5年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審より令和6年1月29日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について ・請求項 1 ・引用文献等 A <引用文献等一覧> A.「CR 009 RE:CYBORG 演出動画」,Youtube[online][video],2014年12月07日,[2022年7月27日検索],https://www.youtube.com/watch?v=945WOHgYoLs 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由1(進歩性)について ・請求項 1 ・引用文献等 1〜3 <引用文献等一覧> 1.「【発表会・展示会】パチンコ新台「CR遠山の金さん 二人の遠山桜」試打動画」,YouTube[online][video],2016年05月17日,[2024年1月17日検索],https://www.youtube.com/watch?v=N7_9vMZsdbM 2.特開2004−216030号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2014−124270号公報(周知技術を示す文献) 第4 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年3月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(符号A等は分説するために合議体が付した。また、それぞれの符号により分説された事項を、以下では「構成A」等という。)。 「【請求項1】 A 複数種類の画像を表示可能な第1表示領域および第2表示領域を備える表示手段と、 B 第1の方向に沿って移動する第1の演出を実行可能な第1の役物と、 C 前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動する第2の演出を実行可能な第2の役物と、を備えた遊技機であって、 D 前記第1表示領域と前記第2表示領域とは鉛直方向に並んでおり、 E 前記第1の方向は、前記第1の役物が前記表示手段に向かって移動する方向に沿った方向とは異なる方向であり、 F 前記第1の役物が前記第1の演出を実行し、前記第2の役物が前記第2の演出を実行していないときに、前記第1表示領域と前記第2表示領域の両方に、前記第1の方向に沿って移動する第1の画像が表示され、 G 前記第2の役物が前記第2の演出を実行し、前記第1の役物が前記第1の演出を実行していないときに、前記第1表示領域に、前記第2の方向に沿って移動する第2の画像が表示され、前記第2表示領域には前記第2の画像が表示されない、 H ことを特徴とする遊技機。」 第5 引用発明 1 引用文献等1の動画について 当審拒絶理由にて引用文献等1として引用された、【発表会・展示会】パチンコ新台「CR遠山の金さん 二人の遠山桜」試打動画,YouTube[online][video],2016年05月17日,https://www.youtube.com/watch?v=N7_9vMZsdbM(以下「引用文献等1」という。)を見ると、画面左上に「YouTube」と表示され、動画枠直下に「【発表会・展示会】パチンコ新台「CR遠山の金さん 二人の遠山桜」試打動画」と表示され、さらにその下方に「2016/05/17」と表示されている。ここで、株式会社藤商事のHPにて製品情報を紹介する「パチンコ・パチスロ機種ラインナップ」の「発売年」が「2016年」のページにおいて、「CR遠山の金さん二人の遠山桜」(URL:https://www.fujimarukun.co.jp/products/?search_keyword=&search_type=0&search_year=2016)という機種が紹介されていることを考慮すると、引用文献等1の動画は、本願の出願前である2016年(平成28年)5月17日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「CR遠山の金さん 二人の遠山桜」という機種のパチンコ機(以下、単に「パチンコ機」という。)のYouTube動画であることが分かる。 2 引用文献等1の動画から見て取れる事項 引用文献等1の動画を視聴することで、以下の事項が見て取れる。ここで、例えば、「<1分12秒>」は、動画の再生開始からの経過時間を示すものである。 (1) <1分12秒〜1分16秒>(参考として下に画像を示す。) ア 動画枠の上辺部中央に「遠山の金さん」との金色の文字が横書きで表示されているのが見て取れ、動画枠の下方中央に7個の銀色の円が横に並んで表示されているのが見て取れるところ、パチンコ機には、「遠山の金さん」との横書きの文字の下端付近を上辺とし、横に並ぶ複数の円の下端付近を下辺とする表示装置が備えられている様子が見て取れる。 イ 上記表示装置の右側には、薄赤色の四角枠とその内側に「杉良太郎」との薄赤色の文字が縦書きで表示されているのが見て取れ、当該四角枠とその内側の「杉良太郎」との文字が左右方向に揺動する様子が見て取れる。 ウ 上記四角枠と「杉良太郎」との文字が左右方向に揺動をしているときに、これに隣接して、上記表示装置の表示領域のうち、上端付近から、上記表示装置の下端付近であって上記横に並んで表示される複数の円の上端よりも若干上までの領域(以下「上側表示領域」という。)において上下に延び、振動しながら左右方向に移動する、黄色の稲光様の画像が表示される様子が見て取れる。 エ 上記表示領域のうち、上記上側表示領域よりも下側となる領域(以下「下側表示領域」という。)には、上記稲光様の画像は表示されない様子が見て取れる。 オ 上記上側表示領域には、上記稲光様の画像以外にも瓦屋根を有するお屋敷の画像が見て取れ、上記下側表示領域には、上記横に並んで表示される複数の円の画像が表示される様子が見て取れる。 「<1分13秒> 」 「<1分14秒> 」 (2) <4分11秒〜4分17秒>(参考として下に画像を示す。) ア 上記表示装置の上側に金色で表示されていた「遠山の金さん」の文字が白色に変わり、上下方向に沿って移動する様子が見て取れる。 イ 上記「遠山の金さん」の文字が上下方向に沿って移動しているときに、上記上側表示領域と上記下側表示領域の両方を跨いで、上下方向に沿って移動する白色の紙片又は花びら様の画像が表示される様子が見て取れる。 「<4分15秒>その1 (補足説明)表示領域における「遠山の金さん」の文字表示の「さ」と「ん」付近、つまり、上記上側表示領域に、上記白色の紙片又は花びら様の画像が確認できる。 」 「<4分15秒>その2 (補足説明)上記白色の紙片又は花びら様の画像が、上下方向に沿って移動して、上記下側表示領域に表示されていることが確認できる。 」 3 認定事項 上記2(1)及び(2)の引用文献等1の動画から見て取れる事項より、引用文献等1は、以下の事項を開示していると認められる。 (1)認定事項1 上記2(1)ア、オから、引用文献等1には、「パチンコ機が、稲光様の画像や瓦屋根を有するお屋敷の画像を表示する上側表示領域および横に並んで表示される複数の円の画像を表示する下側表示領域を備える表示装置を備える」ことが開示されていると認められる(以下「認定事項1」という。)。 (2)認定事項2 上記2(1)ア、(2)アから、表示装置の上側に表示される「遠山の金さん」の文字は、表示装置の上側に備えられ上下方向に沿って移動する可動体(以下「上可動体」という。)に表示されるものといえるから、引用文献等1には、「パチンコ機が、表示装置の上側に、上下方向に沿って移動可能な上可動体を備える」ことが開示されていると認められる(以下「認定事項2」という。)。 (3)認定事項3 上記2(1)イから、表示装置の右側において左右方向に揺動する「杉良太郎」の文字は、表示装置の右側に備えられ左右方向に揺動する可動体(以下「右可動体」という。)に表示されるものといえるから、引用文献等1には、「パチンコ機が、表示装置の右側に、左右方向に揺動可能な右可動体を備える」ことが開示されていると認められる(以下「認定事項3」という。)。 (4)認定事項4 上記2(1)ウ、エから、下側表示領域は、上側表示領域よりも下側となる領域であるから、二つの領域は鉛直方向に並ぶこととなる。 よって、引用文献等1には、「上側表示領域と下側表示領域とは鉛直方向に並んでいること」が開示されていると認められる(以下「認定事項4」という。)。 (5)認定事項5 上記2(2)ア、イから、上可動体が上下方向に沿って移動しているときに、上側表示領域と下側表示領域の両方に跨がって、上下方向に沿って移動する白色の紙片又は花びら様の画像が表示されることが開示されていると認められ、ここで、上記2(1)イのとおり、右可動体は左右方向に揺動可能であるところ、上記の上可動体が上下方向に沿って移動している期間において、右可動体は左右方向に揺動していない。 よって、引用文献等1には、「上可動体が上下方向に沿って移動しているときであって、右可動体が左右方向に揺動していないときに、上側表示領域と下側表示領域の両方に、上下方向に沿って移動する白色の紙片又は花びら様の画像が表示される」ことが開示されていると認められる(以下「認定事項5」という。)。 (6)認定事項6 上記2(1)イ、ウ、エから、右可動体が左右方向に揺動しているときに、上側表示領域に、左右方向に沿って移動する稲光様の画像が表示され、下側表示領域には当該稲光様の画像が表示されないことが開示されていると認められ、ここで、上記2(2)アのとおり、上可動体は上下方向に沿って移動可能であるところ、上記の右可動体が左右方向に揺動している期間において、上可動体は上下方向に沿って移動していない。 よって、引用文献等1には、「右可動体が左右方向に揺動しているときであって、上可動体が上下方向に沿って移動していないときに、上側表示領域に、左右方向に沿って移動する稲光様の画像が表示され、下側表示領域には稲光様の画像が表示されないこと」が開示されていると認められる(以下「認定事項6」という。)。 4 引用発明 上記3の認定事項から、引用文献等1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認められる(a〜hの符号は、本願発明の構成A〜Hに概ね対応させて合議体が付した。)。 「a 稲光様の画像や瓦屋根を有するお屋敷の画像を表示する上側表示領域および横に並んで表示される複数の円の画像を表示する下側表示領域を備える表示装置と(認定事項1)、 b 表示装置の上側に、上下方向に沿って移動可能な上可動体と(認定事項2)、 c 表示装置の右側に、左右方向に揺動可能な右可動体と(認定事項3)、を備えたパチンコ機であって(認定事項1〜3)、 d 上側表示領域と下側表示領域とは鉛直方向に並んでおり(認定事項4)、 f 上可動体が上下方向に沿って移動しているときであって、右可動体が左右方向に揺動していないときに、上側表示領域と下側表示領域の両方に、上下方向に沿って移動する白色の紙片又は花びら様の画像が表示され(認定事項5)、 g 右可動体が左右方向に揺動しているときであって、上可動体が上下方向に沿って移動していないときに、上側表示領域に、左右方向に沿って移動する稲光様の画像が表示され、下側表示領域には稲光様の画像が表示されない(認定事項6)、 h パチンコ機(認定事項1〜3)。」 第6 周知技術 1 引用文献2について (1) 引用文献2の記載事項 当審拒絶理由にて引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004−216030号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。 ア「【0022】 中央飾り枠25の後面には、図8に示すように、左右両側部に位置してベース37が固定されている。これら各ベース37の上面には、図6に示すように、後端部に位置して垂直な軸38および39が形成されており、各ベース37の軸38および39には、図1に示すように、カムアーム40の後端部および補助アーム41の後端部が回動可能に装着されている。 【0023】 各ベース37のカムアーム40および補助アーム41には前端部に位置して上プレート42の垂直な軸43および44が回動可能に装着されている。これら各上プレート42はカムアーム40および補助アーム41を相手側に対して平行な姿勢に連結するものであり、各上プレート42には、図6に示すように、軸43および44に比べて径大な柱45が形成され、各上プレート42の軸43および44・柱45は抜止め用の下プレート46に固定されている。 ・・・ 【0027】 各上プレート42には、図5の(b)に示すように、垂直な取付プレート54が形成されている。これら各取付プレート54には、図5の(a)に示すように、可動部材に相当する役物55がネジ止めされており、各役物モータ47の駆動時には役物55がカムアーム40によって左右方向へ移動操作される。これら各役物55は人の手を模した立体形状をなすものであり、各補助アーム41は役物55がカムアーム40に対してぐらつくことを防止し、役物55を手の甲が前方へ指向する安定姿勢に保持する。 ・・・ 【0029】 中央飾り枠25には、図8に示すように、横長な長方形状の窓58が形成されている。この窓58は貫通孔からなるものであり、中央飾り枠25の後面には、図9および図10に示すように、窓58の周縁部に位置して図柄表示器23が固定されている。この図柄表示器23はカラー液晶表示器からなるものであり、図15および図16に示すように、窓58に相当する横長な表示領域HEを有している。これら図15および図16は図柄表示器23の表示内容を示すものであり、パチンコ球Pが特別図柄始動口19内に入賞していない状態では、図15の(a)および図16の(a)に示すように、表示領域HE内に特別図柄として数字図柄が横3列に静止表示される。尚、数字図柄は大当りおよび外れを識別する識別図柄に相当するものである。 ・・・ 【0033】 各役物55の初期状態ではピン52がカム溝53内の長手方向中央部に保持されており、各役物モータ47の出力軸48が原点位置から正方向(矢印A方向)へ回転したときにはピン52がカム溝53に沿って役物55側へ移動することに基いて役物55が初期状態から図柄表示器23側へ移動する。即ち、操作機構59は役物55を初期状態から図柄表示器23側へ移動操作する場合に役物55の移動に要する操作力を移動の進行に応じて小さくするように構成されている。 【0034】 図7の(a)の二点鎖線は役物55が内側の終期状態に移動した様子を示すものであり、図1の(b)は役物55が終期状態に移動した場合のカムアーム40およびピン52等の状態を示している。これら各役物55の終期状態でピン52が正方向へ回動したときにはカムアーム40および補助アーム41が中央飾り枠25の外側へ向って回動し、ピン52が原位置に復帰することに基いて初期状態にリセットされる。即ち、各操作機構59は役物モータ47が正転することに基いて役物55を初期状態から終期状態を経て初期状態に往復操作することができるように構成されたものである。」 イ「【0063】 <完全外れ用の動作パターン> 右列の通常変動状態で上下方向中央部に設定図柄が表示されると、図16の(d)に示すように、右方の役物55が初期状態から図柄未達状態に移動し、図柄未達状態で一旦停止した後に終期状態を経由して初期状態に復帰する。この図柄未達状態とは初期状態および終期状態の中間状態を称するものであり、図柄未達状態では右方の役物55が右列の設定図柄に視覚的に届かない。この右方の役物55の一連の移動は役物モータ47を原点位置から正転させることに基いて行われるものであり、遊技者は右方の役物55が巧く動作せずに数字図柄を止めることができなかった印象を受ける。 ・・・ 【0070】 役物55を図1の(a)の初期状態から図2の(a)の図柄到達状態および図2の(b)の図柄未達状態に移動操作するときには役物モータ47の回転方向を正方向に設定し、役物55を図2の(a)の図柄到達状態および図2の(b)の図柄未達状態から図1の(a)の初期状態に移動操作するときには役物モータ47の回転方向を逆方向に設定する。そして、役物モータ47を設定結果に応じた方向へ回転させ、可動部材50を短い移動距離で目標位置に移動操作する。」 ウ「【0085】 また、上記第1〜第2実施例においては、役物55の動作に連動して数字図柄の変動状態に変化を付与したが、これに限定されるものではなく、例えば数字図柄以外の絵柄や背景の形状・色彩・大きさ・表示位置・これらの組合せ等に変化を付与しても良い。 また、上記第1〜第2実施例においては、図柄制御装置72が役物モータ47を駆動制御する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えばメイン制御装置62が駆動制御する構成としても良い。 また、上記第1〜第2実施例においては、図柄表示器23に大当り図柄が表示されることに基づいて大当り動作が行われる1種のパチンコ機に本発明を適用したが、これに限定されるものではなく、例えば2種または3種のパチンコ機に適用しても良い。」 エ「【図7】 」 オ「【図8】 」 カ「【図10】 」 (2) 引用文献2の記載から認定できる事項 上記(1)アの、【0022】の「中央飾り枠25の後面には、・・・右・・・側部に位置してベース37が固定されている。」、【0023】の「ベース37のカムアーム40および補助アーム41には前端部に位置して上プレート42の垂直な軸43および44が回動可能に装着されている。」、【0027】の「上プレート42には、・・・垂直な取付プレート54が形成されている。・・・取付プレート54には、・・・可動部材に相当する役物55がネジ止めされており、」、【0029】の「中央飾り枠25には、・・・横長な長方形状の窓58が形成されている。・・・窓58の周縁部に位置して図柄表示器23が固定されている。」との記載、及び上記(1)エ〜カの【図7】、【図8】、【図10】の図示、特に上記【図10】に示された図柄表示器23と役物55の位置関係から、引用文献2には「図柄表示器23の右側部に役物55が備えられる」ことが記載されていると認められる(以下「認定事項2−1」という。)。 (3) 引用文献2に記載の技術 上記(1)の引用文献2の記載事項、及び上記(2)の引用文献2の記載から認定できる事項より、引用文献2には以下の技術(以下「引用文献2に記載の技術」という。)が開示されているものと認められる。 「図柄表示器23の右側部に役物55が備えられ(認定事項2−1)、 役物モータ47の出力軸48が原点位置から正方向へ回転したときにはピン52がカム溝53に沿って役物55側へ移動することに基いて役物55が初期状態から図柄表示器23側へ移動し(【0033】)、役物55の終期状態でピン52が正方向へ回動したときには、ピン52が原位置に復帰することに基いて初期状態にリセットされ、即ち、役物モータ47が正転することに基いて役物55を初期状態から終期状態を経て初期状態に往復操作することができるように構成されたものであって(【0034】)、 図柄未達状態とは初期状態および終期状態の中間状態を称するものであり(【0063】)、役物55を初期状態から図柄未達状態に移動操作するときには役物モータ47の回転方向を正方向に設定し、役物55を図柄未達状態から初期状態に移動操作するときには役物モータ47の回転方向を逆方向に設定する(【0070】)、 パチンコ機(【0085】)に関する技術。」 2 引用文献3について (1) 引用文献3の記載事項 当審拒絶理由にて引用文献3として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014−124270号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。 ア「【0201】 上部演出装置400が上装飾部243の取付凹部243aに設置された状態では、当該上部演出装置400は、センターケース34の開口部(表示窓部)34a内であって、変動表示装置35の表示部35aの上方に位置している(図3参照)。また、右部演出装置500が右装飾部242の取付凹部242aに設置された状態では、当該右部演出装置500は、センターケース34の開口部(表示窓部)34a内であって、変動表示装置35の表示部35aの右側方に位置している(図3参照)。 ・・・ 【0226】 図21及び図26に示すように、右部演出装置500は、右装飾部242の取付凹部242aに固定される側部固定ユニット510と、側部固定ユニット510に対して左右方向にスライド移動可能に配設される可動装飾ユニット550と、から構成されている。 ・・・ 【0242】 図28Bに示すように、遊技機1において遊技が進行して所定の遊技状態となった場合には、駆動機構540の駆動モータ541が正転駆動され、カムリンク542のリンクピン542aが図28Bにおいて時計回り方向に旋回する。リンクピン542aが旋回してスライダー543の長孔543aを摺動しながら右限位置から左方に移動すると、リンクピン542aの位置に応じてスライダー543も左方向に移動する。これにより、スライダー543に連結されている連結ボス561がガイド溝532に沿って移動し、可動装飾ユニット550が側部固定ユニット510に対して左方向にスライド移動する。 【0243】 リンクピン542aが右限位置から左限位置まで旋回すると、可動装飾ユニット550が初期位置から左側方の左限位置までスライド移動し、側部固定ユニット510の装飾カバー部材530の文字装飾が視認可能な状態となる。この後、リンクピン542aが左限位置から右限位置まで旋回するように駆動モータ541が逆転駆動されると、可動装飾ユニット550は初期位置までスライド移動する。 ・・・ 【0245】 なお、右部演出装置500はスライダー543の位置を検出する位置検出センサ(図示省略)を備えており、この位置検出センサに基づいて可動装飾ユニット550が初期位置にあるか左限位置にあるかが判定される。また、右部演出装置500では、駆動モータ541の正転及び逆転を交互に繰り返すことで、可動装飾ユニット550を左右に振動させる振動演出を実行することもできる。」 イ「【1093】 本発明の遊技機は、上記実施形態に示されるようなパチンコ遊技機に限られるものではなく、アレンジボール遊技機や雀球遊技機等の遊技球を使用する遊技機にも適用可能である。」 (2) 引用文献3に記載の技術 上記(1)の引用文献3の記載事項より、引用文献3には以下の技術(以下「引用文献3に記載の技術」という。)が開示されていると認められる。 「右部演出装置500は、変動表示装置35の右側方に位置しており(【0201】)、 右部演出装置500は、左右方向にスライド移動可能に配設される可動装飾ユニット550から構成され(【0226】)、駆動モータ541が正転駆動されると、可動装飾ユニット550が左方向にスライド移動し(【0242】)、駆動モータ541が逆転駆動されると、可動装飾ユニット550は初期位置までスライド移動するものであって(【0243】)、 駆動モータ541の正転及び逆転を交互に繰り返すことで、可動装飾ユニット550を左右に振動させる振動演出を実行することもできる(【0245】)、 パチンコ遊技機(【1093】)に関する技術。」 3 周知技術 上記1(3)の引用文献2に記載の技術、及び上記2(2)の引用文献3に記載の技術から、「表示装置の右側に備えられた可動体を左右方向に沿って往復移動させる、パチンコ機に関する技術」は、従来周知の技術(以下「周知技術」という。)である。 第7 対比及び判断 1 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)本願発明の構成Aについて 引用発明の構成aの「稲光様の画像」、「瓦屋根を有するお屋敷の画像」及び「横に並んで表示される複数の円の画像」は、本願発明の「複数種類の画像」に相当する。 また、引用発明の構成aの「上側表示領域」、「下側表示領域」及び「表示装置」は、それぞれ、本願発明の「第1表示領域」、「第2表示領域」及び「表示手段」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Aに相当する構成を備える。 (2)本願発明の構成Bについて 引用発明の構成bの「上下方向」及び「上可動体」は、それぞれ、本願発明の「第1の方向」及び「第1の役物」に相当する。 また、引用発明の上可動体は演出に用いられるものであるから、引用発明の構成bの「上可動体」の「上下方向に沿っ」た「移動」は、本願発明の「第1の役物」の「第1の方向に沿って移動する第1の演出」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Bに相当する構成を備える。 (3)本願発明の構成Cについて 引用発明の構成cの「左右方向」及び「右可動体」は、それぞれ、本願発明の「前記第1の方向とは異なる第2の方向」及び「第2の役物」に相当する。 また、引用発明の右可動体は演出に用いられるものであるから、引用発明の構成cの「右可動体」の「左右方向」の「揺動」は、本願発明の「第2の役物」の「第2の演出」に相当する。 ここで、本願発明の構成Cの、「第2の役物」の「前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿っ」た「移動」である「第2の演出」と、引用発明の構成cの、「右可動体」の「左右方向」の「揺動」は、いずれも、「第2の役物(「右可動体」)」が「前記第1の方向とは異なる第2の方向(「左右方向」)に」動作している点で共通する。 してみると、本願発明の構成Cと引用発明の構成cは、「前記第1の方向とは異なる第2の方向に」動作する「第2の演出を実行可能な第2の役物」を備える点で共通する。 (4)本願発明の構成Dについて 引用発明の構成dの「上側表示領域と下側表示領域とは鉛直方向に並んで」いることは、本願発明の「前記第1表示領域と前記第2表示領域とは鉛直方向に並んで」いることに相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を備える。 (5)本願発明の構成Eについて 本願発明は「第1の方向に沿って移動する第1の演出を実行可能な第1の役物」を備え(本願発明の構成B)、当該「第1の方向」について、本願発明の構成Eは「前記第1の方向は、前記第1の役物が前記表示手段に向かって移動する方向に沿った方向とは異なる方向であ」ることを特定している。 これに対して、引用発明は「表示装置の上側に、上下方向に沿って移動可能な上可動体」を備えており(引用発明の構成b)、上可動体の移動方向である上下方向(第1の方向)は、上可動体(第1の役物)が表示装置(表示手段)に向かって移動する方向に沿った方向である上下方向と同じ方向である。 (6)本願発明の構成Fについて 引用発明の構成fの「上可動体が上下方向に沿って移動しているとき」は、上記(2)から、本願発明の「前記第1の役物が前記第1の演出を実行し」ているときに相当する。 また、引用発明の構成fの「右可動体が左右方向に揺動していないとき」は、上記(3)から、本願発明の「前記第2の役物が前記第2の演出を実行していないとき」に相当する。 そして、引用発明の構成fの「白色の紙片又は花びら様の画像」は、本願発明の「第1の画像」に相当し、引用発明の構成fの「上側表示領域と下側表示領域の両方に、上下方向に沿って移動する白色の紙片又は花びら様の画像が表示され」ることは、本願発明の「前記第1表示領域と前記第2表示領域の両方に、前記第1の方向に沿って移動する第1の画像が表示され」ることに相当する。 してみると、引用発明の構成fの「上可動体が上下方向に沿って移動しているときであって、右可動体が左右方向に揺動していないときに、上側表示領域と下側表示領域の両方に、上下方向に沿って移動する白色の紙片又は花びら様の画像が表示され」ることは、本願発明の「前記第1の役物が前記第1の演出を実行し、前記第2の役物が前記第2の演出を実行していないときに、前記第1表示領域と前記第2表示領域の両方に、前記第1の方向に沿って移動する第1の画像が表示され」ることに相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Fに相当する構成を備える。 (7)本願発明の構成Gについて 引用発明の構成gの「右可動体が左右方向に揺動しているとき」は、上記(3)から、本願発明の「前記第2の役物が前記第2の演出を実行し」ているときに相当する。 また、引用発明の構成gの「上可動体が上下方向に沿って移動していないとき」は、上記(2)から、本願発明の「前記第1の役物が前記第1の演出を実行していないとき」に相当する。 そして、引用発明の構成gの「稲光様の画像」は、本願発明の「第2の画像」に相当し、引用発明の構成gの「上側表示領域に、左右方向に沿って移動する稲光様の画像が表示され、下側表示領域には稲光様の画像が表示されない」ことは、本願発明の「前記第1表示領域に、前記第2の方向に沿って移動する第2の画像が表示され、前記第2表示領域には前記第2の画像が表示されない」ことに相当する。 してみると、引用発明の構成gの「右可動体が左右方向に揺動しているときであって、上可動体が上下方向に沿って移動していないときに、上側表示領域に、左右方向に沿って移動する稲光様の画像が表示され、下側表示領域には稲光様の画像が表示されない」ことは、本願発明の「前記第2の役物が前記第2の演出を実行し、前記第1の役物が前記第1の演出を実行していないときに、前記第1表示領域に、前記第2の方向に沿って移動する第2の画像が表示され、前記第2表示領域には前記第2の画像が表示されない」ことに相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Gに相当する構成を備える。 (8)本願発明の構成Hについて 引用発明の構成hの「パチンコ機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Hに相当する構成を備える。 2 一致点、相違点の判断 上記1の対比の結果、本願発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 (1)一致点 「A 複数種類の画像を表示可能な第1表示領域および第2表示領域を備える表示手段と、 B 第1の方向に沿って移動する第1の演出を実行可能な第1の役物と、 C’前記第1の方向とは異なる第2の方向に動作する第2の演出を実行可能な第2の役物と、を備えた遊技機であって、 D 前記第1表示領域と前記第2表示領域とは鉛直方向に並んでおり、 F 前記第1の役物が前記第1の演出を実行し、前記第2の役物が前記第2の演出を実行していないときに、前記第1表示領域と前記第2表示領域の両方に、前記第1の方向に沿って移動する第1の画像が表示され、 G 前記第2の役物が前記第2の演出を実行し、前記第1の役物が前記第1の演出を実行していないときに、前記第1表示領域に、前記第2の方向に沿って移動する第2の画像が表示され、前記第2表示領域には前記第2の画像が表示されない、 H 遊技機。」 (2)相違点1(構成C) 本願発明の「第2の演出」は、「第2の役物」が「前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動する」ものであるのに対し、引用発明の「右可動体」の「左右方向」の「揺動」は、右可動体が左右方向に沿って移動することにより実現しているものであるか否か不明である点。 (3)相違点2(構成E) 「第1の役物」が「第1の演出」を実行する際の移動方向である「第1の方向」について、本願発明では、「前記第1の方向は、前記第1の役物が前記表示手段に向かって移動する方向に沿った方向とは異なる方向であ」るのに対し、引用発明では、上可動体の移動方向である上下方向(第1の方向)は、上可動体(第1の役物)が表示装置(表示手段)に向かって移動する方向に沿った方向である上下方向と同じ方向となっている点。 (4)相違点についての判断 ア 相違点1について 上記第6の3のとおり、「表示装置の右側に備えられた可動体を左右方向に沿って往復移動させる、パチンコ機に関する技術」は周知技術である。 引用発明と周知技術は、ともにパチンコ機の表示装置の右側に備えられた可動体についての技術に関するものであるところ、引用発明に周知技術を適用して、「右可動体」の「左右方向」の「揺動」を、右可動体の左右方向に沿った往復移動により実現することは、当業者であれば容易になし得たことである。 イ 相違点2について 上記1(5)のとおり、引用発明では、上可動体の移動方向である上下方向(第1の方向)は、上可動体(第1の役物)が表示装置(表示手段)に向かって移動する方向に沿った方向である上下方向と同じ方向となっている。 そして、引用文献等1〜3に開示されている事項及び本願出願前の周知技術を考慮しても、当該引用発明に係る構成を、相違点2に係る構成のように、上可動体の移動方向と、上可動体が表示装置に向かって移動する方向に沿った方向を、互いに異なる方向とすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。 仮に、上可動体の表示装置に対する配置位置を変更することや、上可動体の移動方向を変更することは、設計変更又は周知技術であると仮定し、上可動体(第1の役物)が表示装置(表示手段)に向かって移動する方向に沿った方向と異なる方向(第1の方向)に移動可能とすることは、当業者であれば容易になし得たことであると仮定しても、上可動体の位置や移動方向の変更に伴い、さらに、当該上可動体(第1の役物)の移動方向(第1の方向)と、右可動体(第2の役物)の移動方向(第2の方向)と、白色の紙片又は花びら様の画像の表示領域(第1表示領域と第2表示領域の両方)及び移動方向(第1の方向)と、稲光様の画像(第2の画像)の表示領域(第1の表示領域)及び移動方向(第2の方向)の関係を、本願発明と同様となるように変更することは、当業者であっても容易になし得たことではない。 第8 当審及び原査定の拒絶理由についての判断 上記第7の2(4)イでの検討のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものでない。 また、原査定で引用された引用文献等Aも、少なくとも、上記相違点2に係る構成(構成E)を開示しておらず、同様にして、本願発明は、引用文献等Aに基づいて当業者が容易に発明できたものでない。 第9 むすび 以上のとおりであるから、本願については、当審及び原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2024-04-30 |
出願番号 | P2018-033989 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A63F)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 俊久 |
特許庁審判官 |
阿部 知 長井 真一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 田邊 淳也 |