• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D
管理番号 1410063
総通号数 29 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-07-24 
確定日 2024-04-30 
事件の表示 特願2021−170415「燃料性状判定装置及び車両」拒絶査定不服審判事件〔令和5年4月28日出願公開、特開2023−60689、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和3年10月18日の出願であって、令和4年12月5日付けで拒絶理由通知がされ、令和5年2月3日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和5年4月13日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和5年7月24日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和5年4月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1−6に係る発明は、以下の引用文献1−6に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.韓国公開特許第10−2010−0058371号公報
2.米国特許出願公開第2020/0355098号明細書(周知技術を示す文献)
3.米国特許第10260407号明細書(周知技術を示す文献)
4.米国特許第06412472号明細書(周知技術を示す文献)
5.特開2021−042734号公報
6.国際公開第2014/049646号

第3 本願発明
本願の請求項1−6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明6」という。)は、令和5年2月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
エンジンの燃料としてタンクに貯留された液化天然ガスの成分を判定する燃料性状判定装置であって、
前記エンジンが駆動中である場合では、第1推定方法により前記液化天然ガスのメタン価を推定し、前記エンジンが停止状態から再始動する場合では、前記第1推定方法とは異なる第2推定方法により前記液化天然ガスのメタン価を推定する推定部と、
前記第1推定方法または前記第2推定方法により推定された前記液化天然ガスのメタン価が閾値未満である場合、前記液化天然ガスが性状変化した旨の通知を行うように通知装置を制御する制御部と、を有し、
前記第1推定方法は、
前記エンジンのノッキングを回避するための点火リタード制御量を算出し、前記点火リタード制御量に関する指標値に基づいて、前記液化天然ガスのメタン価を推定する方法である、
燃料性状判定装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。
ア [0001]−[0007]




(当審訳)
本発明はノッキング防止エンジン制御方法に関する。
一般的に排気ガス低減効果がすぐれた液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)は、メタン−エタン−プロパン−ブタンなどの組成で成り立っており、CO2及びNOxの排出量が少なくて親環境エネルギーで新たに浮び上がっている。
しかし、摂氏-164度でガスタンクの中に保管されている前記液化天然ガスを長期間放置する場合に、ガスタンク内のメタン(Methane)が自然蒸発して減少されながら液化天然ガスの組成比が変わるようになって、エンジン損傷を起こし得る問題がある。
すなわち、メタンが減った圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)で始動させて運転する場合に、オクタン価低下及び発熱量増加でエンジンにノッキングが発生して、ピストンなどエンジン運動系が損傷される問題がある。これをウェザーリング(Weathering)現象と呼ぶ。
仮に前記ウェザーリングに対する対処なしに液化天然ガス車両が4日以上の長時間を常温で放置される場合に、エンジンの燃焼不安定によって生ずるノッキング(Knocking)によるエンジン損傷が発生する問題がある。
本発明は、ノッキングをあらかじめチェックしてエンジンを保護するノッキング防止エンジン制御方法を提供することに目的がある。」
イ [0022]−[0028]


(当審訳)
前記第2段階(S200)であるキーオン(Key on)段階は、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)車両の運転手がキーを挿入させてキーオン位置にキーが位置された状態であり、まだキーを回転させて始動させない状態であり、キーオンになったことはエンジン制御装置(ECU:Engine Control Unit)(100)に伝達する。
そして第3段階(S300)であるエンジン状態判断過程は、前記エンジン制御装置(100)が運転手にスターター駆動を待機するように知らせる指示灯をつけて、以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部の燃料容量を判断して、車両が以前最終運転終了時点からどのくらい運行されなかったのかを判断して燃料タンク内部のガス組成比を計算する過程である。
前記指示灯がともると運転手はノッキング保護モードに突入されうるということを認知するようになって、前記エンジン制御装置(100)では、前記燃料タンク内部のガス組成比計算を通じて燃料のメタン含有量が計算される。
この過程で、以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部に残っている燃料容量が小さいほど、そして車両が以前最終運転終了時点から運転されないほど、燃料タンク内部の燃料に含有されたメタン量は減るようになる。
前記減ったメタン量は、燃料で蒸発されたことで燃料タンクと連結されたレギュレーターに送られる。
前記エンジン制御装置(100)が前記燃料タンク内部のガス組成比を直接測定しにくいので前記のような判断過程が進行される。
一方、前記エンジン制御装置(100)には以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部の燃料容量を判断するためにキャン(CAN:Control Area Network)通信を利用して電子制御警報装置(ETACS:Electronic Time & Alarm Control System)などの車両制御装置からタンク状態やガス量を確認して、前記以前最終運転終了時点からどのくらい運行されなかったのかを判断するために時計装置が内部に用意される。」
ウ [0034]−[0035]


(当審訳)
一般的に知られたところのように、LNG燃料はメタンの含有量が少なくなるほど着火時間が短縮される性質を有する。
そして、ノッキングが発生することで判断される燃料はメタンの含有量が少ない状態なので、一般的なエンジン状態より点火時期が延ばして行くように点火時期の遅角補正が成り立たなければならない。」

(2)認定事項
ア 上記(1)イの「前記第2段階(S200)であるキーオン(Key on)段階は、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)車両の運転手がキーを挿入させてキーオン位置にキーが位置された状態であり、まだキーを回転させて始動させない状態であり」及び「そして第3段階(S300)であるエンジン状態判断過程は、前記エンジン制御装置(100)が運転手にスターター駆動を待機するように知らせる指示灯をつけて」の記載より、第2段階(S200)及び第3段階(S300)は、エンジンが停止状態から再始動する段階であることが理解できる。
イ 上記(1)イの「第3段階(S300)であるエンジン状態判断過程は、・・・以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部の燃料容量を判断して、車両が以前最終運転終了時点からどのくらい運行されなかったのかを判断して燃料タンク内部のガス組成比を計算する過程である。」、及び「前記エンジン制御装置(100)では、前記燃料タンク内部のガス組成比計算を通じて燃料のメタン含有量が計算される。」の記載より、第3段階(S300)では、以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部の燃料容量と、車両が以前最終運転終了時点からどのくらい運行されなかったのかとに基づいて、燃料のメタン含有量を計算することが理解できる。

(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載事項及び上記(2)の認定事項によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「液化天然ガス車両の燃料タンク内部のガス組成比を計算するエンジン制御装置(100)であって、
前記エンジンが停止状態から再始動する段階では、以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部の燃料容量と、車両が以前最終運転終了時点からどのくらい運行されなかったのかとに基づいて、燃料のメタン含有量を計算する
エンジン制御装置(100)」

2.引用文献2について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「[0002] Reciprocating engines, such as dual fuel engines, are known which use natural gas or bio-gas as an energy source for combustion. Such gaseous fuels, i.e. fuels which under normal conditions are in a gaseous state, typically comprise a blend of different hydrocarbons such as methane and higher hydrocarbons as well as inert gases.
(当審訳)
[0002] 二元燃料エンジンのような、往復エンジンは燃焼のためのエネルギー源として天然ガス又はバイオガスを使用することが知られている。そのような気体燃料、すなわち通常の条件下で気体状である燃料は、通常、メタンおよび高級炭化水素ならびに不活性ガスなど種々の炭化水素の混合物を含む。」
イ 「[0066] Alternatively or additionally, the device may be configured for setting the different charge-changing modes as a function of at least one fuel parameter being indicative of the property of fuel to be combusted. The at least one fuel parameter may include or be indicative of at least one of a fuel composition, a methane number and a lower heating value of the fuel to be combusted. For taking into account these parameters, the control unit 50 of the adjustment unit 36 is configured to receive the at least one fuel parameter from a fuel analysis unit 64, as depicted in FIG. 1.
[0067] The fuel analysis unit 64 may be provided in the form of a measuring unit configured to measure the fuel parameter. Alternatively or additionally, the fuel analysis unit 64 may be configured to determine the at least one fuel parameter as a function of the at least one operating parameter by means of a mathematical model, a mathematical function or a characteristic diagram. For example, the fuel analysis unit 64 may be configured to calculate a fuel parameter being indicative of the fuel composition and/or the methane number based on the cylinder pressure determined by the monitoring unit 62 and/or based on the engine load determined by the engine control system 60 based on a mathematical model, a mathematical function or a characteristic diagram.
(当審訳)
[0066] あるいは、または加えて、装置は、異なる充電モードを、少なくとも1つの燃料パラメータ、燃焼される燃料の性状の指標の関数として設定するように構成することができる。少なくとも1つの燃料パラメータ、または燃焼すべき燃料組成物、及び燃料の低位発熱量のうちの少なくとも1つを示すことができる。これらのパラメータを考慮に入れるために、調整ユニット36の制御ユニット50は、図1に示されているように、解析ユニット64から少なくとも1つの燃料パラメータを受信するように構成される。
[0067] 解析ユニット64は、パラメータを測定するように構成された測定ユニットの形態で提供することができる。代替的または追加的に、解析ユニット64は、数学モデル、数学的関数または特性曲線を介して少なくとも1つの動作パラメータの関数として、少なくとも1つの燃料パラメータを算出するように構成することができる。例えば、解析ユニット64は、燃料組成および/または監視ユニット62によって決定された筒内圧力に基づいて、及び/又は数学モデル、数学的関数又は特性マップに基づいて、エンジン制御システム60によって決定された機関負荷に基づいてメタン価を示す燃料パラメータを計算するように構成されてもよい。」

3.引用文献3について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 第1欄第36−42行
「Unique systems, methods and apparatus for controlling operation of dual fuel engines, including an estimation of one or more parameters relating to natural gas quality are disclosed. In one embodiment, natural gas quality parameters are estimated from natural gas properties derived from various sensed parameters of the dual fuel engine.
(当審訳)
天然ガスの品質に関する1つ又は複数のパラメータの推定を含む、二元燃料エンジンの動作を制御するための独自のシステム、方法、および装置が開示される。一実施形態では、天然ガス品質パラメータは、二元燃料エンジンのさまざまな感知パラメータから導出される天然ガス特性から推定される。」
イ 第9欄第56行−第10欄第20行
「In certain embodiments, subsystem 300 may determine a methane number which can be utilized by controller 150 in controlling or preventing engine knock by controlling fueling, EGR, and/or air handling parameters. In an exemplary form, subsystem 300 may determine a flow sensor ratio (FSR), for example, as described in connection with equation (5) below, determine one of a thermal conductivity value (TC) such as from the output of a thermal conductivity sensor structured to measure thermal conductivity characteristics of gaseous fuel and a speed of sound (SOS) value such as from the output of a speed of sound sensor structured to measure speed of sound in the gaseous fuel, and determine the methane number from these values. Where input is received from a thermal conductivity sensor, the determination may be made directly based upon a predetermined relationship between the methane number and the product of TC and FSR (TC*FSR), for example, the linear relationship illustrated in FIG. 4C. Where input is received from a speed of sound sensor, the determination may be made directly based upon a predetermined relationship between the methane number and the product of SOS and FSR (SOS*FSR) which may be a linear relationship similar to the linear relationship illustrated in FIG. 4B for the thermal conductivity sensor. Subsystem 300 may be structured to directly determine a methane number using such a predetermined relationship in a number of manners, for example, by using a lookup table structure storing values representing the predetermined relationship, using an array, graph or other data structure to store values representing the predetermine relationship, or by performing a calculation based on a formula representing or approximating the predetermined relationship.
(当審訳)
特定の実施形態では、サブシステム300は、コントローラ150が燃料供給、EGR、および/または空気処理パラメータを制御することによってエンジンノックを制御または防止する際に利用できるメタン価を決定することができる。例示的な形態では、サブシステム300は、例えば、以下の式(5)に関連して説明されるように流量センサー比(FSR)を決定し、気体燃料の熱伝導率特性を測定するように構成された熱伝導率センサーの出力などからの熱伝導率値(TC)および気体燃料の音速を測定するように構成された音速センサーの出力などからの音速(SOS)値の内の1つを決定し、これらの値からメタン価を決定する。入力が熱伝導率センサーから受信される場合、決定は、メタン価とTCとFSR の積 (TC*FSR) との間の所定の関係、たとえば、図4Cで図示された線形関係に基づいて直接行われる。.入力が音速センサーから受信される場合、決定は、熱伝導率センサー用の図4Bで図示された線形関係と同様の線形関係である、メタン価とSOSとFSRの積(SOS*FSR)との間の所定の関係に基づいて直接行われる。サブシステム300は、いくつかの手段での所定の関係を使用して、例えば、所定の関係を表す値を格納するルックアップテーブル構造を使用することによって、所定の関係を表す値を格納するための配列、グラフ、または他のデータ構造を使用することによって、あるいは、所定の関係を表す、もしくは近似する式に基づいて計算を実行することによって、メタン価を直接決定するように構成することができる。」

4.引用文献4について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア 第3欄第55行−第4欄第29行
「The method according to the invention comprises a particular calculation of methane number IM as explained hereafter in connection with FIG. 1.
The calculation can be initiated from known values R(0), Q(O) defined as standards for each working point of the engine or reference point. An engine working point can be conventionally defined by the rotating speed of the engine and by the load of the engine. This load can notably be defined by the pressure prevailing in the inlet manifold, by the throttle position,
After filling the vehicle with natural gas, the composition of the gas contained in the tank has probably varied for the reasons explained above.
When the vehicle is used thereafter, the computer stores the new flow of gas required to reach the reference working point and to meet the set mixture strength.
It is in fact necessary to vary the flow of gas in order to reach the set mixture strength for this reference working point. This flow variation leads to a variation of the air/fuel ratio (R) for the stoichiometric conditions. According to the present invention, and for a given working point of the engine, the relationship exists:
R(1)=K1/[Q( 1 )] and R(2)=K1/[Q(2)].
Q(2) and Q(1) can be determined by measurement,
K1 being a known given constant,
R(1) being the ratio stored before filling,
R(2), which is the final ratio after filling which is deduced from the following relationship:



The methane number IM of the gas contained in the tank is then determined by means of the formula as follows:



A corrective ignition advance value is thus applied according to the value of the calculated methane number IM.
(当審訳)
本発明による方法は、図1に関連して以下に説明するように、メタン価IMの特定の計算を含む。
計算は、エンジンの各動作点または基準点の標準として定義された既知の値 R(0)、Q(0) から開始できる。エンジン動作点は、従来的に、エンジンの回転速度とエンジンの負荷とによって定義することができる。この負荷は、特にインレットマニホールド内に広がる圧力によって、スロットル位置によって定義することができる。
車両に天然ガスを充填した後、タンク内に含まれるガスの組成は、おそらく上で説明した理由により変化していると考えられる。
その後車両が使用されると、コンピューターは、基準動作点に到達し設定混合強度を満たすために必要な新しいガス流量を保存する。
実際、この基準動作点のための設定混合強度に到達するためには、ガス流量を変える必要がある。この流量の変化は、理論空燃比の条件における空燃比 (R) の変化につながる。本発明によれば、エンジンの所与の動作点に対して、次の関係が存在する。
R(1)=K1/[Q(1)]、R(2)=K1/[Q(2)]
Q(2) と Q(1) は測定によって決定でき、
K1 は既知の所定の定数であり、
R(1) は充填前に保存された比率であり、
R(2)、これは次の関係から推定される充填後の最終比率である:



タンク内に含まれるガスのメタン価IMは、次の式によって求められる。



したがって、補正点火進角値は、計算されたメタン価IMの値に従って適用される。」

5.引用文献5について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0030】
そしてステップS104で、ECU100は、検出された実際の空気過剰率λと、所定の目標空気過剰率λtとの差である過剰率差Δλを算出する。過剰率差Δλは式:Δλ=λt−λから算出される。目標空気過剰率λtは例えば1である。
【0031】
ステップS105で、ECU100は、過剰率差Δλに基づき、燃料噴射量を補正するための補正値である補正係数αを算出する。そしてステップS106で、ECU100は、基本噴射量Qbに補正係数αを乗じて最終噴射量Qfを算出する(Qf=α×Qb)。最後にステップS107で、ECU100は、最終噴射量Qfに等しい量の燃料をインジェクタ7から噴射させる。具体的には、最終噴射量Qfに相当する噴射時間もしくは噴射幅だけ、インジェクタ7をオンする。」
イ 「【0046】
ECU100は、定常運転中でないと判断したとき、ルーチンを終了する一方、定常運転中であると判断したときには、ステップS202に進んで、ステップS105で算出された補正係数αの値を取得する。
【0047】
次いでステップS203で、ECU100は、取得した補正係数αが前述の所定の閾値αs以下か否かを判断する。ECU100は、閾値αsより大きいと判断したとき、ルーチンを終了する一方、閾値αs以下と判断したときには、ステップS204に進んで図示しない警告装置を起動させる。具体的にはECU100は、ステップS204において、燃料のメタン価Mが問題視する程に低下し、燃料が重質化したと実質的に判定する。そしてその旨をユーザーに知らせるべく警告装置を起動させる。警告装置は、車両の運転席に設けられた一般的な警告灯、および通信装置を介して車外の運行管理者等に通知する無線システムの少なくとも一方を含むことができる。こうした警告を行うことにより、新たな基準燃料の補充または基準燃料への交換をユーザーに促すことができ、重質化した燃料でエンジンが運転され続けることを回避することができる。
【0048】
次にステップS205で、ECU100は、補正係数αに対応するメタン価Mを図4のマップから算出する。これにより燃料のメタン価Mが実質的に検出される。補正係数αが閾値αs以下のときのみメタン価Mを検出するので、バラツキ要因と区別して検出精度を向上できる。
【0049】
そしてステップS206で、ECU100は、算出したメタン価Mに基づき、点火プラグ8の点火時期θを補正するための補正値すなわち補正係数βを、図6に示すようなマップから算出する。」
ウ 「【図4】




6.引用文献6について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「[0035] ノッキング抵抗指数センサ51は、ガス燃料の性状として、ガスエンジン1(例えば主室33)内でのノッキングの生じにくさを定量的に示すノッキング抵抗指数を検出する。ノッキング抵抗指数には、例えばメタン価を好適に適用可能である。一般的な傾向として、軽質の炭化水素の濃度が高くなると、混合気が着火しにくくなり、それにより主室33内でのノッキングが生じにくくなる。そして、軽質の炭化水素の濃度が高くなると、ガス燃料のメタン価は高くなる。重質の炭化水素の濃度が高い場合は、これと逆に主室33内でのノッキングが生じやすくなるとともにガス燃料のメタン価が低くなる。このような観点から、ノッキング抵抗指数センサ51には、燃料ライン15中のガス燃料のメタン価を検出するメタン価センサを好適に適用することができる。また、ガス燃料の組成に応じてメタン価が決まるし、ガス燃料の着火性が決まることから、ノッキング抵抗指数センサ51には、ガスクロマトグラフィーを好適に適用することができる。」
イ 「[0059] 図6及び図7に示すように、ノッキング抵抗指数が高ノッキング抵抗性を示すほど、点火時期を基準とした主室33のノッキング限界(主室33内でノッキングが発生するか否かの閾値となる点火時期)が進角側にシフトする。すなわち、高ノッキング抵抗性を有するガス燃料(例えば、高メタン価のガス燃料)を用いているときには、点火時期をより進角して高出力及び高効率を達成しながら、主室33内のノッキングの発生を抑えることができる。一方、低ノッキング抵抗性を有するガス燃料を用いているとき(図7におけるメタン価低下の場合)には、点火時期をより遅角させ、主室33内のノッキングを抑えながら、なるべく高出力及び高効率を達成することが求められる。つまり、高出力及び高効率の達成とノッキングの発生の抑制とを両立するため、通常、点火時期は、主室33のノッキング限界付近に設定される。」
ウ 「[図6]




第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「燃料タンク」は、本願発明1における「タンク」に相当し、以下同様に、「液化天然ガス車両の燃料タンク内部のガス組成比」は、「ガス」が「液化天然ガス」のことであり、車両のエンジンは当該ガスを燃料としていることから「エンジンの燃料としてタンクに貯留された液化天然ガスの成分」に、「(組成比を計算する)エンジン制御装置(100)」は「(成分を判定する)燃料性状判定装置」に、それぞれ相当する。そうすると、引用発明における「液化天然ガス車両の燃料タンク内部のガス組成比を計算するエンジン制御装置(100)」は、本願発明1における「エンジンの燃料としてタンクに貯留された液化天然ガスの成分を判定する燃料性状判定装置」に相当するといえる。
イ 引用発明における「前記エンジンが停止状態から再始動する段階」は、本願発明1における「前記エンジンが停止状態から再始動する場合」に相当する。
ウ 引用発明の「以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部の燃料容量と、車両が以前最終運転終了時点からどのくらい運行されなかったのかとに基づいて、」と本願発明1の「前記第1推定方法とは異なる第2推定方法により」とは、「ある方法により」の限りにおいて共通する。
エ 引用発明における「燃料のメタン含有量を計算する」は、引用発明の「燃料」が「液化天然ガス」であるから、本願発明1における「前記液化天然ガスのメタン価を推定する」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「エンジンの燃料としてタンクに貯留された液化天然ガスの成分を判定する燃料性状判定装置であって、
前記エンジンが停止状態から再始動する場合では、ある方法により前記液化天然ガスのメタン価を推定する
燃料性状判定装置。」

(相違点1)
メタン価の推定に関し、本願発明1は、「前記エンジンが駆動中である場合では、第1推定方法により前記液化天然ガスのメタン価を推定し、前記エンジンが停止状態から再始動する場合では、前記第1推定方法とは異なる第2推定方法により前記液化天然ガスのメタン価を推定する推定部」を有し、「前記第1推定方法は、前記エンジンのノッキングを回避するための点火リタード制御量を算出し、前記点火リタード制御量に関する指標値に基づいて、前記液化天然ガスのメタン価を推定する方法である」のに対し、引用発明は、エンジンが駆動中である場合にメタン価を推定しているか不明であるとともに、エンジンが停止状態から再始動する場合のメタン価の推定方法(第2推定方法)が「以前最終運転が終わった状態での燃料タンク内部の燃料容量と、車両が以前最終運転終了時点からどのくらい運行されなかったのかとに基づいて、燃料のメタン含有量を計算する」ものである点。
(相違点2)
液化天然ガスが性状変化した旨の通知を行うことに関し、本願発明1は、「前記第1推定方法または前記第2推定方法により推定された前記液化天然ガスのメタン価が閾値未満である場合、前記液化天然ガスが性状変化した旨の通知を行うように通知装置を制御する制御部」を有するのに対し、引用発明はそのような構成を有しない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
ア 上記「第4」2.〜4.で挙げた引用文献2〜4に記載されているとおり、「エンジンが駆動中である場合に、何らかの推定方法により天然ガスのメタン価を推定すること」は、周知であるといえる(以下、「周知技術」という。)。
しかしながら、上記引用文献2〜4に記載されたメタン価の推定方法は、本願発明1の「エンジンのノッキングを回避するための点火リタード制御量を算出し、前記点火リタード制御量に関する指標値に基づいて、前記液化天然ガスのメタン価を推定する方法」とは異なる方法である。また、上記「第4」5.〜6.で挙げた引用文献5〜6にも、メタン価の推定方法が記載されているものの、いずれも本願発明1の第1推定方法とは異なるものである。
そうすると、いずれの文献にも、本願発明1におけるメタン価の推定方法である「エンジンのノッキングを回避するための点火リタード制御量を算出し、前記点火リタード制御量に関する指標値に基づいて、前記液化天然ガスのメタン価を推定する方法」は記載されていないといえる。
イ 上記「第4」6.(1)ウで挙げた引用文献6の図6には、エンジンのノッキングを回避するための点火リタード制御量(点火時期のノッキング限界)と液化天然ガスのメタン価(ノッキング抵抗指数)との間には、関連性があること(以下、「引用文献6に記載された事項」という。)が開示されている。
しかしながら、引用文献6に記載された発明は、ノッキング抵抗指数(メタン価)に基づいて点火時期(点火リタード制御量)を制御するものであり、点火時期に基づいてノッキング抵抗指数を求めるものではない。また、引用文献6には、点火時期に基づいてノッキング抵抗指数を求めることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、当業者にとって、引用文献6に記載された事項から、本願発明1の「エンジンのノッキングを回避するための点火リタード制御量を算出し、前記点火リタード制御量に関する指標値に基づいて、前記液化天然ガスのメタン価を推定する方法」を導き出すことが容易であったということはできない。
ウ よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明に上記周知技術及び引用文献6に記載された事項を適用して当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

(3)小括
よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、上記周知技術及び引用文献6に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−6について
本願発明2−6も、本願発明1の上記「エンジンのノッキングを回避するための点火リタード制御量を算出し、前記点火リタード制御量に関する指標値に基づいて、前記液化天然ガスのメタン価を推定する方法」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、上記周知技術及び引用文献6に記載された事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1−6は、当業者が引用発明、上記周知技術及び引用文献6に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2024-04-16 
出願番号 P2021-170415
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02D)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 倉橋 紀夫
青木 良憲
発明の名称 燃料性状判定装置及び車両  
代理人 弁理士法人鷲田国際特許事務所  
代理人 弁理士法人鷲田国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ