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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1410976
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-05-01 
確定日 2024-05-16 
事件の表示 特願2017−248576「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月11日出願公開、特開2019−111245〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成29年12月26日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和 2年12月25日 :上申書、手続補正書の提出
令和 3年10月 8日付け:拒絶理由通知
令和 3年12月 8日 :意見書の提出
令和 4年 4月13日付け:拒絶理由通知
令和 4年 6月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年10月 4日付け:拒絶理由通知
令和 4年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 3月10日付け:補正の却下の決定(令和4年12月5日提出の手続補正書による補正を却下)、拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 5年 3月14日 :原査定の謄本の送達
令和 5年 5月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和5年5月1日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和5年5月1日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和4年6月15日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「【請求項1】
当否抽選の当選態様として、獲得できる遊技球の期待値が所定数以上である大当たりと、遊技球を獲得することができないまたは困難な小当たりとが設定された遊技機であって、
それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群が変動を開始する変動開始時点から当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点までの報知演出を構成する演出として、
所定演出と、
前記変動停止時点に至るよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記小当たりに当選している可能性があるものの、前記大当たりに当選している可能性はなくなる小当たり用演出と、
前記変動停止時点に至るよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記大当たりに当選している可能性があるものの、前記小当たりに当選している可能性はなくなる大当たり用演出と、
を実行することが可能な演出実行手段を備えることを特徴とする遊技機。」
とあったものを、
「【請求項1】
当否抽選の当選態様として、獲得できる遊技球の期待値が所定数以上である大当たりと、遊技球を獲得することができないまたは困難な小当たりとが設定された遊技機であって、
それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群が変動を開始する変動開始時点から当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点までの報知演出を構成する演出として、
所定演出と、
前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記小当たりに当選している可能性があるものの、前記大当たりに当選している可能性はなくなる小当たり用演出と、
前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記大当たりに当選している可能性があるものの、前記小当たりに当選している可能性はなくなる大当たり用演出と、
を実行することが可能な演出実行手段を備えることを特徴とする遊技機。」
とする補正である(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付したものである。)。

2 補正の適否について
2−1 補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「小当たり用演出」及び「大当たり用演出」について、本件補正前には、「前記変動停止時点に至るよりも前」「に開始される演出であ」ることが特定されていたものを、「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前」に「開始される演出であ」ることを特定するものである。
ここで、本願明細書の【0034】には、「対象の当否抽選の結果を報知する報知演出の時間、すなわち当該対象の当否抽選の結果を報知する複数の識別図柄群10gが変動を開始してから変動を停止する(当否抽選の結果を示す組み合わせで停止する)までの変動時間として、その長さが互いに異なる複数の時間が設定されているとする。」ことが記載されており、(当該対象の当否抽選の結果を報知する複数の識別図柄群10gが変動を停止する(当否抽選の結果を示す組み合わせで停止する))「変動停止時点」に至れば「当否抽選結果が確定する」ことは技術常識から明らかである。そうすると、本願明細書及び技術常識を参酌しても、本件補正前の「前記変動停止時点に至るよりも前」と、本件補正後の「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前」により特定される事項に差異があるという理由は見出せない。
また、請求人は、審判請求書の(3)において、本件補正について、
「上記補正は、発明の内容を実質的に変更するものではない。
当否抽選結果を報知する識別図柄の変動が停止する変動停止時点(0034等参照)が、当否抽選結果が確定する時点であることは本件技術分野における常識であるから、補正前の段階から実質的に特定されていたといえる。」
と主張している。
以上に鑑みれば、本件補正前の「前記変動停止時点に至るよりも前」と、本件補正後の「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前」とは、表現の違いがあるのみで、請求項1に係る発明は、本件補正の前後で実質的な違いはないことから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「請求項の削除」、同第3号に掲げる「誤記の訂正」、同第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明」のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。

2−2 本件補正の目的が特許請求の範囲の減縮である場合について
上記2−1で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号〜第4号に掲げる目的のいずれを目的とするものともいえないところ、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、特許法第17条の2第3項に規定する「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」したものであると仮定した場合についても、予備的に検討する。
本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである場合には、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定。以下「独立特許要件」という。)から、本願補正発明が、独立特許要件を満たすものであるかについて検討する。

(1) 本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(符号A等は、分説するため合議体が付した。)。

(本願補正発明)
「A 当否抽選の当選態様として、獲得できる遊技球の期待値が所定数以上である大当たりと、遊技球を獲得することができないまたは困難な小当たりとが設定された遊技機であって、
B それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群が変動を開始する変動開始時点から当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点までの報知演出を構成する演出として、
C 所定演出と、
D 前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記小当たりに当選している可能性があるものの、前記大当たりに当選している可能性はなくなる小当たり用演出と、
E 前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記大当たりに当選している可能性があるものの、前記小当たりに当選している可能性はなくなる大当たり用演出と、
F を実行することが可能な演出実行手段を備える
G ことを特徴とする遊技機。」

(2) 引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶理由において引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017−12849号公報(公開日:平成29年1月19日。以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を示すために合議体が付した。)。

「【0015】
第1の実施形態.
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)2と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤2には、ガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域が形成されている。この遊技領域には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。」

「【0019】
遊技盤2における遊技領域の中央付近には、画像表示装置5が設けられている。画像表示装置5は、例えばLCD(液晶表示装置)等から構成され、各種の演出画像を表示する表示領域を形成している。画像表示装置5の表示領域では、特図ゲームにおける第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の可変表示や第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の可変表示のそれぞれに対応して、例えば3つといった複数の可変表示部となる飾り図柄表示エリアにて、各々を識別可能な複数種類の識別情報(装飾識別情報)である飾り図柄が可変表示される。この飾り図柄の可変表示も、可変表示ゲームに含まれる。この可変表示ゲームにおいて、遊技者は、遊技領域の中央付近に設けられた画像表示装置5による飾り図柄の可変表示に注目し、遊技領域の右側方に設けられた第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の可変表示や第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の可変表示をあまり見ることはない。」

「【0021】
このように、画像表示装置5の表示領域では、第1特別図柄表示装置4Aにおける第1特図を用いた特図ゲーム、または、第2特別図柄表示装置4Bにおける第2特図を用いた特図ゲームと同期して、各々が識別可能な複数種類の飾り図柄の可変表示を行い、可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示(あるいは単に「導出」ともいう)する。なお、例えば特別図柄や飾り図柄といった、各種の表示図柄を導出表示するとは、飾り図柄等の識別情報を停止表示(完全停止表示や最終停止表示ともいう)して可変表示を終了させることである。これに対して、飾り図柄の可変表示を開始してから可変表示結果となる確定飾り図柄が導出表示されるまでの可変表示中には、飾り図柄の変動速度が「0」となって、飾り図柄が停留して表示され、例えば微少な揺れや伸縮などを生じさせる表示状態となることがある。このような表示状態は、仮停止表示ともいい、可変表示における表示結果が確定的に表示されていないものの、スクロール表示や更新表示による飾り図柄の変動が進行していないことを遊技者が認識可能となる。なお、仮停止表示には、微少な揺れや伸縮なども生じさせず、所定時間(例えば1秒間)よりも短い時間だけ、飾り図柄を完全停止表示することなどが含まれてもよい。」

「【0069】
特図ゲームにおける確定特別図柄として、ハズレ図柄となる特別図柄が停止表示(導出)される場合には、飾り図柄の可変表示が開始されてから、飾り図柄の可変表示状態がリーチ状態となったことに対応して、リーチ演出が実行された後に、あるいは、リーチ演出が実行されずに、所定のリーチ組合せとなる確定飾り図柄が停止表示されることがある。このような飾り図柄の可変表示結果は、可変表示結果が「ハズレ」となる場合における「リーチ」(「リーチハズレ」ともいう)の可変表示態様と称される。」

「【0088】
演出制御基板12は、主基板11とは独立したサブ側の制御基板であり、中継基板15を介して主基板11から伝送された制御信号を受信して、画像表示装置5、スピーカ8L、8R及び遊技効果ランプ9といった演出用の電気部品による演出動作を制御するための各種回路が搭載されている。すなわち、演出制御基板12は、画像表示装置5における表示動作や、スピーカ8L、8Rからの音声出力動作の全部または一部、遊技効果ランプ9などにおける点灯/消灯動作の全部または一部といった、演出用の電気部品に所定の演出動作を実行させるための制御内容を決定する機能を備えている。」

「【0140】
ステップS114の大当り開放前処理は、特図プロセスフラグの値が“4”のときに実行される。この大当り開放前処理には、可変表示結果が「大当り」となったことなどに基づき、大当り遊技状態においてラウンドの実行を開始して大入賞口を開放状態とするための設定を行う処理などが含まれている。このときには、例えば大当り種別が「非確変」、「確変」、「突確」のいずれであるかに対応して、大入賞口を開放状態とする期間の上限を設定するようにしてもよい。一例として、大当り種別が「非確変」または「確変」に対応して、大入賞口を開放状態とする期間の上限を「29秒」に設定するとともに、ラウンドを実行する上限回数となる大入賞口の開放回数を「15回」に設定することにより、通常開放大当り遊技状態とする設定が行われればよい。一方、大当り種別が「突確」に対応して、大入賞口を開放状態とする期間の上限を「0.1秒」に設定するとともに、ラウンドを実行する上限回数となる大入賞口の開放回数を「15回」に設定することにより、短期開放大当り遊技状態とする設定が行われればよい。このときには、特図プロセスフラグの値が“5”に更新される。」

「【0144】
ステップS118の小当り開放前処理は、特図プロセスフラグの値が“8”のときに実行される。この小当り開放前処理には、可変表示結果が「小当り」となったことに基づき、小当り遊技状態において大入賞口を開放状態とするための設定を行う処理などが含まれている。一例として、可変表示結果が「小当り」となったときには、可変表示結果が「大当り」で大当り種別が「突確」となったときと同様に、大入賞口を開放状態とする期間の上限を「0.1秒」に設定するとともに、大入賞口の開放回数を「15回」に設定することにより、小当り遊技状態とする設定が行われればよい。このときには、特図プロセスフラグの値が“9”に更新される。」

「【0287】
図28(D)に示すように特定組合せを構成する確定飾り図柄が停止表示されると、画像表示装置5においてキャラクタが他のキャラクタと戦う示唆演出が実行される(図28(E)〜(G)または(H))。これらの示唆演出は、図27(B)または図27(C)に示される示唆演出に相当する。示唆演出は、例えば大当り(または小当り)である場合に、特定組合せを構成する確定飾り図柄が停止表示された後に実行され、大当り種別や、大当りであるか否かを示唆する。例えば、示唆演出後に通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当りと、示唆演出後に短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当りとのいずれであるかを示唆する場合には、図28(E),(F),(G)に示すように他のキャラクタに勝利する演出が行われることで通常開放大当り遊技状態に制御されることを示唆し、図28(E),(F),(H)に示すように他のキャラクタに敗北する演出が行われることで短期開放大当り遊技状態に制御されることを示唆する。」

「【0290】
上述の例に限らず、示唆演出は、大当り(または小当り)である場合に、いずれの大当り種別であるかを示唆することができる。また、示唆演出において、確定的に結果を示すようにしてもよいし、あくまでも結果を示唆するようにしてもよい。すなわち、図28(E),(F),(G)に示すように他のキャラクタに勝利する演出を行うことで、通常開放大当り遊技状態に制御されることが確定したことを報知するようにしてもよいし、通常開放大当り遊技状態に制御される可能性を示唆するようにしてもよい。」

「【0292】
図29に示す例では、図27に示す例と異なり、図5のステップS240にて特図表示結果が「大当り」または「小当り」にすると決定されている場合には、飾り図柄の変動表示は、確定特別図柄が停止表示されるタイミング過ぎても継続し、示唆演出が終了するタイミングで終了する。例えば、「大当り」または「小当り」にすると決定されている場合に選択される変動パターンに対して、特図変動時間より長い変動時間を予め設定しておくことによって実現できる。このように、確定特別図柄が停止表示されるタイミングをまたいで飾り図柄の変動表示が行われることによって、停止表示前のリーチ演出と停止表示後の示唆演出とで演出の連続性を高めることができる。なお、図29に示す例では、確定特別図柄が停止表示されるタイミングでリーチ演出が終了し、示唆演出の実行が開始されているが、リーチ演出と示唆演出とがまとめられた1つの演出を実行するようにしてもよい。」

「【図28】



「【図29】



イ 認定事項
引用文献の【0292】の「タイミング過ぎても継続し」は、「タイミングを過ぎても継続し」の誤記であると認められる(以下「認定事項1」という。)。

ウ 引用発明
上記ア、イによれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「a 可変表示結果が「大当り」となったことなどに基づき、大当り遊技状態においてラウンドの実行を開始して大入賞口を開放状態とするための設定を行い、大当り種別が「非確変」または「確変」に対応して、大入賞口を開放状態とする期間の上限を「29秒」に設定するとともに、ラウンドを実行する上限回数となる大入賞口の開放回数を「15回」に設定することにより、通常開放大当り遊技状態とする設定が行われ(【0140】)、可変表示結果が「小当り」となったことに基づき、小当り遊技状態において大入賞口を開放状態とするための設定を行い、可変表示結果が「小当り」となったときには、大入賞口を開放状態とする期間の上限を「0.1秒」に設定するとともに、大入賞口の開放回数を「15回」に設定することにより、小当り遊技状態とする設定が行われる(【0144】)パチンコ遊技機1であって(【0015】)、
bcde 画像表示装置5の表示領域では、複数の可変表示部となる飾り図柄表示エリアにて、各々を識別可能な複数種類の識別情報(装飾識別情報)である飾り図柄が可変表示され(【0019】)、第1特別図柄表示装置4Aにおける第1特図を用いた特図ゲーム、または、第2特別図柄表示装置4Bにおける第2特図を用いた特図ゲームと同期して、各々が識別可能な複数種類の飾り図柄の可変表示を行い、可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示(あるいは単に「導出」ともいう)し(【0021】)、特図ゲームにおける確定特別図柄として、ハズレ図柄となる特別図柄が停止表示(導出)される場合には、飾り図柄の可変表示が開始されてから、飾り図柄の可変表示状態がリーチ状態となったことに対応して、リーチ演出が実行された後に、あるいは、リーチ演出が実行されずに、所定のリーチ組合せとなる確定飾り図柄が停止表示されることがあり(【0069】)、特定組合せを構成する確定飾り図柄が停止表示されると、画像表示装置5においてキャラクタが他のキャラクタと戦う示唆演出が実行され、示唆演出は、大当り(または小当り)である場合に、特定組合せを構成する確定飾り図柄が停止表示された後に実行され、大当り種別や、大当りであるか否かを示唆し、示唆演出後に通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当りと、示唆演出後に短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当りとのいずれであるかを示唆する場合には、他のキャラクタに勝利する演出が行われることで通常開放大当り遊技状態に制御されることを示唆し、他のキャラクタに敗北する演出が行われることで短期開放大当り遊技状態に制御されることを示唆し(【0287】)、特図表示結果が「大当り」または「小当り」にすると決定されている場合には、飾り図柄の変動表示は、確定特別図柄が停止表示されるタイミングを過ぎても継続し、示唆演出が終了するタイミングで終了し、確定特別図柄が停止表示されるタイミングをまたいで飾り図柄の変動表示が行われ、確定特別図柄が停止表示されるタイミングでリーチ演出が終了し、示唆演出の実行が開始され(【0292】、図29、認定事項1)、
f 演出制御基板12は、画像表示装置5における表示動作といった、演出用の電気部品に所定の演出動作を実行させるための制御内容を決定する機能を備えている(【0088】)
g パチンコ遊技機1(【0015】)。」

エ 引用文献に記載の事項
引用文献の【0290】には、以下の事項(以下「引用文献に記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

(引用文献に記載の事項)
「示唆演出において、確定的に結果を示すようにしてもよく、他のキャラクタに勝利する演出を行うことで、通常開放大当り遊技状態に制御されることが確定したことを報知するようにしてもよい。」

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(a) 引用発明において、「可変表示結果が「大当り」となったことなどに基づき、大当り遊技状態においてラウンドの実行を開始して大入賞口を開放状態とするための設定を行い、大当り種別が「非確変」または「確変」に対応して、大入賞口を開放状態とする期間の上限を「29秒」に設定するとともに、ラウンドを実行する上限回数となる大入賞口の開放回数を「15回」に設定することにより、通常開放大当り遊技状態とする設定が行われ」ることは、本願補正発明の「当否抽選の当選態様として、獲得できる遊技球の期待値が所定数以上である大当たり」「が設定され」ることに相当する。
引用発明において、「可変表示結果が「小当り」となったことに基づき、小当り遊技状態において大入賞口を開放状態とするための設定を行い、可変表示結果が「小当り」となったときには、大入賞口を開放状態とする期間の上限を「0.1秒」に設定するとともに、大入賞口の開放回数を「15回」に設定することにより、小当り遊技状態とする設定が行われる」ことは、本願補正発明の「当否抽選の当選態様として」、「遊技球を獲得することができないまたは困難な小当たり」「が設定され」ることに相当する。
引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明の構成Aに相当する構成を備える。

(b) 引用発明の「各々を識別可能な複数種類の識別情報(装飾識別情報)である飾り図柄」は、本願補正発明の「複数種の識別図柄」に相当する。そして、引用発明において、「複数の可変表示部となる飾り図柄表示エリアにて、各々を識別可能な複数種類の識別情報(装飾識別情報)である飾り図柄が可変表示され」ることから、「複数の可変表示部となる飾り図柄表示エリアにて」「可変表示され」る「各々を識別可能な複数種類の識別情報(装飾識別情報)である飾り図柄」の集合は、本願補正発明の「それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群」に相当する。
引用発明の「画像表示装置5の表示領域で」、「各々が識別可能な複数種類の飾り図柄の可変表示」を開始する時点、及び「可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示」する時点は、それぞれ本願補正発明の「それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群が変動を開始する変動開始時点」及び「当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点」に相当する。
引用発明において、「飾り図柄の可変表示が開始されてから、飾り図柄の可変表示状態がリーチ状態となったことに対応して、リーチ演出が実行され」ること、「リーチ演出が終了し、示唆演出の実行が開始され」ること、「飾り図柄の変動表示は、確定特別図柄が停止表示されるタイミングを過ぎても継続し、示唆演出が終了するタイミングで終了」することから、引用発明の「リーチ演出」及び「示唆演出」は、「飾り図柄の可変表示が開始され」る時点から、「飾り図柄の変動表示」が「終了」する時点までに実行される演出であり、本願補正発明の「それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群が変動を開始する変動開始時点から当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点までの報知演出を構成する演出」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明の構成Bに相当する構成を備える。

(c) 引用発明の「リーチ演出」は、本願補正発明の「所定演出」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明の構成Cに相当する構成を備える。

(d) 「飾り図柄の変動表示」が「終了」すると、「可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示」することは、技術常識と認められるところ、引用発明において、「特図表示結果が「大当り」または「小当り」にすると決定されている場合には、飾り図柄の変動表示は、確定特別図柄が停止表示されるタイミングを過ぎても継続し、示唆演出が終了するタイミングで終了し、確定特別図柄が停止表示されるタイミングをまたいで飾り図柄の変動表示が行われ、確定特別図柄が停止表示されるタイミングでリーチ演出が終了し、示唆演出の実行が開始され」ることから、引用発明の「特図表示結果が」「「小当り」にすると決定されている場合」の「示唆演出」は、「飾り図柄の変動表示」が「終了」して、「可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示」するよりも前であり、「リーチ演出が終了し」てから実行が開始される演出であるといえ、このことは、本願補正発明の「小当たり用演出」が、「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であ」ることに相当する。
引用発明の「示唆演出後に通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当りと、示唆演出後に短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当りとのいずれであるかを示唆する場合」の「他のキャラクタに敗北する演出が行われることで短期開放大当り遊技状態に制御されることを示唆」する「示唆演出」は、本願補正発明の「小当たり用演出」と、「開始されたときには前記小当たりに当選している可能性がある」点で共通する。
したがって、本願補正発明と引用発明は、「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記小当たりに当選している可能性がある」「小当たり用演出」を実行することが可能である点で共通する。

(e) 上記(d)における検討と同様に、引用発明の「特図表示結果が「大当り」」「にすると決定されている場合」の「示唆演出」は、「飾り図柄の変動表示」が「終了」して、「可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示」するよりも前であり、「リーチ演出が終了し」てから実行が開始される演出であって、このことは、本願補正発明の「大当たり用演出」が、「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であ」ることに相当する。
引用発明の「示唆演出後に通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当りと、示唆演出後に短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当りとのいずれであるかを示唆する場合」の「他のキャラクタに勝利する演出が行われることで通常開放大当り遊技状態に制御されることを示唆」する「示唆演出」は、本願補正発明の「大当たり用演出」と、「開始されたときには前記大当たりに当選している可能性がある」点で共通する。
したがって、本願補正発明と引用発明は、「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記大当たりに当選している可能性がある」「大当たり用演出」を実行することが可能である点で共通する。

(f) 引用発明の「演出制御基板12」は、「画像表示装置5における表示動作といった、演出用の電気部品に所定の演出動作を実行させるための制御内容を決定する機能を備えている」ことから、「リーチ演出」(本願補正発明の「所定演出」)及び「特図表示結果が「大当り」または「小当り」にすると決定されている場合」の「示唆演出」(本願補正発明の「小当たり用演出」及び「大当たり用演出」)を実行することが可能であることは明らかであるから、本願補正発明の(所定演出、小当たり用演出、大当たり用演出を実行することが可能な)「演出実行手段」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明の構成Fに相当する構成を備える。

(g) 引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明の構成Gに相当する構成を備える。

以上によれば、本願補正発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

(一致点)
「A 当否抽選の当選態様として、獲得できる遊技球の期待値が所定数以上である大当たりと、遊技球を獲得することができないまたは困難な小当たりとが設定された遊技機であって、
B それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群が変動を開始する変動開始時点から当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点までの報知演出を構成する演出として、
C 所定演出と、
D’前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記小当たりに当選している可能性がある小当たり用演出と、
E’前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記大当たりに当選している可能性がある大当たり用演出と、
F を実行することが可能な演出実行手段を備える
G 遊技機。」

(相違点1)
本願補正発明の「小当たり用演出」が、「開始されたときには」「大当たりに当選している可能性はなくなる」のに対して、引用発明の「示唆演出後に通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当りと、示唆演出後に短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当りとのいずれであるかを示唆する場合」の「他のキャラクタに敗北する演出が行われることで短期開放大当り遊技状態に制御されることを示唆」する「示唆演出」は、「大当たりに当選している可能性はなくなる」ものではない点。

(相違点2)
本願補正発明の「大当たり用演出」が、「開始されたときには」「小当たりに当選している可能性はなくなる」のに対して、引用発明の「示唆演出後に通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当りと、示唆演出後に短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当りとのいずれであるかを示唆する場合」の「他のキャラクタに勝利する演出が行われることで通常開放大当り遊技状態に制御されることを示唆」する「示唆演出」は、「小当たりに当選している可能性はなくなる」ものではない点。

(4) 判断
ア 相違点について
相違点1及び相違点2について検討する。
引用発明において、上記(2)エに記載の引用文献に記載の事項、すなわち「示唆演出において、確定的に結果を示すようにしてもよく、他のキャラクタに勝利する演出を行うことで、通常開放大当り遊技状態に制御されることが確定したことを報知するようにしてもよい。」との事項を採用して、「他のキャラクタに勝利する演出が行われることで通常開放大当り遊技状態に制御されることを示唆」する「示唆演出」を、「通常開放大当り遊技状態に制御されること」が「確定したことを報知する」演出とし、同様に、「他のキャラクタに敗北する演出が行われることで短期開放大当り遊技状態に制御されることを示唆」する「示唆演出」を、「短期開放大当り遊技状態に制御されること」が「確定したことを報知する」演出とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、引用発明は、「示唆演出後に通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当りと、示唆演出後に短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当りとのいずれであるかを示唆する」ものであるところ、上記のように、引用文献に記載の技術を採用して、「示唆演出」を、通常開放大当り遊技状態又は短期開放大当り遊技状態に制御されることが確定したことを報知する演出とすることにより、「通常開放大当り遊技状態に制御されること」が「確定したことを報知する」演出が実行される場合には、「短期開放大当り遊技状態に制御される突確大当りまたは小当り」に当選している可能性はなく、「短期開放大当り遊技状態に制御されること」が「確定したことを報知する」演出が実行される場合には、「通常開放大当り遊技状態に制御される非確変大当りまたは確変大当り」に当選している可能性はないこととなり、相違点1及び相違点2に係る本願補正発明の構成となる。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本願補正発明の奏する効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献に記載の事項から、当業者が予測することができた程度のものである。

ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、以下の旨を主張する。

(請求人の主張1)
「4−1)取消事由1
令和4年12月5日付意見書にて、出願人は以下の主張を行っている。
『(イ)まず、引用発明において「飾り図柄の変動表示は、確定特別図柄が停止表示されるタイミング過ぎても継続し、示唆演出が終了するタイミングで終了する」ようになるのは、当否抽選結果が「「大当り」または「小当り」にすると決定されている場合」に限られている(段落0292、図29から明らか)。つまり、当否抽選結果が「はずれ」である場合には、このように制御されないこと(図29(A)のように制御されること)は明らかである。
本願発明は、補正前の段階から、「当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点」と規定している。当否抽選結果は「当たり」(大当たり、小当たり)だけでなく、「はずれ」もあることは当然であり、「当たり」のみならず「はずれ」の報知がなされることをもって当否抽選結果の報知が完了するというべきである。よって、「当たり」となる場合のみを抽出して(「はずれ」となる場合を除いて)、あたかも本願発明の特定事項と一致するかのように論理づけることは妥当性を欠く。
引用発明において、当否抽選結果がはずれとなる場合には、図29(A)に示すように「示唆演出が終了するタイミング」は存在しないのであるから、当該「示唆演出が終了するタイミング」を、本願発明の変動停止時点に相当するとするのは不適当である。』
補正却下決定においては、上記出願人の主張を「反論2」と記載した上で、
『上記発明特定事項1は、ハズレの場合にも成立することが必須要件であるとは認められないので、上記反論2は請求項1に係る発明に基づかない主張であり、採用できない。』
と判断している。
しかしながら、本願発明は「当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点」と特定している(補正却下決定にて「発明特定事項1」とされた事項の一部)。「当否」とは、「あたりはずれ」という意味なのである(「否」が「はずれ」の意味であることは明らかである)から、当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点とは、「当たり」(本願でいえば大当たり、小当たり)・「はずれ」の報知が完了する時点であるといえる。本願明細書等の記載を考慮して「当否」(「否」)の意味を解釈する(特許法第70条2項の規定に基づいて解釈する)としても、当然に「当否」には「はずれ」が含まれると解釈されるべきである。
以上の通り、出願人は、請求項の記載に基づいた主張を行っているのであるから、審査(補正却下決定)における『上記発明特定事項1は、ハズレの場合にも成立することが必須要件であるとは認められないので、上記反論2は請求項1に係る発明に基づかない主張であり、採用できない。』とする判断(「当否」と記載しているのに、「ハズレ」について規定していないと本願発明を認定して出願人の主張を退けたこと)は明らかに失当である。
よって、本願は当該審査における判断が正しいことを前提とした拒絶理由を包含するものではない。」

(請求人の主張2)
「4−2)取消事由2
引用文献1には、「確定特別図柄」について、以下の記載がある(下線は出願人が付した)。
・0044
第1特別図柄表示装置4Aや第2特別図柄表示装置4Bによる特図ゲームでは、特別図柄の可変表示を開始させた後、特図変動時間としての可変表示時間が経過すると、特別図柄の可変表示結果となる確定特別図柄(特図表示結果)を導出表示する。このとき、確定特別図柄として特定の特別図柄(大当り図柄)が停止表示されれば、特定表示結果としての「大当り」となり、大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示されれば、所定表示結果としての「小当り」となる。また、大当り図柄や小当り図柄とは異なる特別図柄が確定特別図柄として停止表示されれば「ハズレ」となる。
・0046
この実施の形態におけるパチンコ遊技機1では、一例として、「3」、「5」、「7」の数字を示す特別図柄を大当り図柄とし、「2」の数字を示す特別図柄を小当り図柄とし、「−」の記号を示す特別図柄をハズレ図柄としている。
・0053
小当り図柄となる「2」の数字を示す特別図柄が特図ゲームにおける確定特別図柄として導出された後には、特殊遊技状態としての小当り遊技状態に制御される。
・0055
大当り図柄となる「1」、「3」、「5」、「7」の数字を示す特別図柄のうち、「3」、「7」の数字を示す特別図柄は通常開放ラウンド大当り図柄となり、「5」の数字を示す特別図柄は短期開放ラウンド大当り図柄となり、「1」の数字を示す特別図柄は特殊開放ラウンド大当り図柄となる。
上記の記載からすれば、引用発明において、確定特別図柄が表示されることは、当否抽選結果が確定した状態であるといえる。
審査においては、引用文献1の図29に記載される例を引用発明としていると認められるところ、当該図29に記載される例における「特図ゲーム終了」とは、確定特別図柄が停止表示された時点であることは、段落0044の記載(第1特別図柄表示装置4Aや第2特別図柄表示装置4Bによる特図ゲームでは、特別図柄の可変表示を開始させた後、特図変動時間としての可変表示時間が経過すると、特別図柄の可変表示結果となる確定特別図柄(特図表示結果)を導出表示する。このとき、確定特別図柄として特定の特別図柄(大当り図柄)が停止表示されれば、特定表示結果としての「大当り」となり、大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示されれば、所定表示結果としての「小当り」となる。また、大当り図柄や小当り図柄とは異なる特別図柄が確定特別図柄として停止表示されれば「ハズレ」となる。)等から明らかである。
よって、引用発明における「特図ゲーム終了」時は、「当否抽選結果が確定した状態」である。
つまり、引用発明は、リーチ演出と示唆演出との間で、「当否抽選結果が確定する」ものであること、すなわち示唆演出が「当否抽選結果が確定した」後開始されるものであることは、図29(B)(C)から明らかである。
一方、本願発明は、
「前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記小当たりに当選している可能性があるものの、前記大当たりに当選している可能性はなくなる小当たり用演出と、
前記変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記大当たりに当選している可能性があるものの、前記小当たりに当選している可能性はなくなる大当たり用演出と、」
と特定する。
つまり、小当たり用演出や当たり用演出は「変動停止時点に至り当否抽選結果が確定するよりも前」に開始されることを特定するのであるから、引用発明の「当否抽選結果が確定した」後開始される示唆演出とは根本的に相違する。
かかる点において本願発明と引用発明は明確に相違するのであり、当該相違点にかかる構成を想到するに至る動機づけとなる記載も引用文献1に存在しないから、本願発明は引用発明から容易想到ではない。」

(イ) 請求人の主張1について
請求人の主張1について検討する。請求人の主張のとおり、「当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点とは、「当たり」(本願でいえば大当たり、小当たり)・「はずれ」の報知が完了する時点であるといえる」としても、令和5年3月10日付けの補正の却下の決定により却下された令和4年12月5日提出の手続補正書における特許請求の範囲は、
「【請求項1】
当否抽選の当選態様として、獲得できる遊技球の期待値が所定数以上である大当たりと、遊技球を獲得することができないまたは困難な小当たりとが設定された遊技機であって、
それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群が変動を開始する変動開始時点から当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点までの報知演出を構成する演出として、
所定演出と、
前記変動停止時点に至るよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記小当たりに当選している可能性があるものの、前記大当たりに当選している可能性はなくなる小当たり用演出と、
前記変動停止時点に至るよりも前であり、かつ、前記所定演出の終了後連続的に開始される演出であって、開始されたときには前記大当たりに当選している可能性があるものの、前記小当たりに当選している可能性はなくなる大当たり用演出と、
を実行することが可能な演出実行手段を備えることを特徴とする遊技機。
ただし、二以上の前記報知演出が連続して実行される場合、先に実行される前記報知演出の前記変動停止時点は、それに続く前記報知演出の前記変動開始時点になるものとする。」
というものであり(以下「補正却下発明」という。)、その構造は、
「・・・報知演出を構成する演出として、
所定演出と、
・・・小当たり用演出と、
・・・大当たり用演出と、
を実行することが可能な演出実行手段を備えることを特徴とする遊技機。
・・・。」
というものであるから、小当たり用演出及び大当たり用演出については特定がなされているが、「はずれ」の報知が行われる場合に、どのような演出が行われるかについて特定されていない。
仮に、補正却下発明において、「はずれ」の報知が行われる場合にも、「所定演出を実行することが可能な演出手段を備える」ことが特定されているとしても、引用発明は、「ハズレ図柄となる特別図柄が停止表示(導出)される場合には、飾り図柄の可変表示が開始されてから、飾り図柄の可変表示状態がリーチ状態となったことに対応して、リーチ演出が実行された後に、あるいは、リーチ演出が実行されずに、所定のリーチ組合せとなる確定飾り図柄が停止表示されることがあ」ることから、当該事項に相当する構成を備えており、相違点とはならない。
また、引用発明において、「はずれ」の報知が行われる場合に、補正却下発明の「ただし、二以上の前記報知演出が連続して実行される場合、先に実行される前記報知演出の前記変動停止時点は、それに続く前記報知演出の前記変動開始時点になるものとする。」の構成を備えることは、技術常識から明らかであり、少なくとも当業者が容易になしえたことである。
したがって、請求人の主張1は採用することができない。

(ウ) 請求人の主張2について
請求人の主張2について検討する。上記(3)(b)で検討したように、引用発明の「飾り図柄が可変表示され」る「複数の可変表示部となる飾り図柄表示エリア」は、本願補正発明の「それぞれが複数種の識別図柄を含む複数の識別図柄群」に相当し、引用発明の「画像表示装置5の表示領域で」、「可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示」する時点は、本願補正発明の「当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点」に相当するところ、補正却下発明についても同様である。
請求人の主張2は、引用発明における「特図ゲーム終了」時が、補正却下発明の「当該複数の識別図柄群の変動が停止して当該複数の識別図柄群のそれぞれから選択された前記識別図柄の組み合わせが示されることにより当否抽選結果の報知が完了する変動停止時点」に相当するものとしてなされているものと認められる。しかしながら、引用文献の【0019】に、「この可変表示ゲームにおいて、遊技者は、遊技領域の中央付近に設けられた画像表示装置5による飾り図柄の可変表示に注目し、遊技領域の右側方に設けられた第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の可変表示や第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の可変表示をあまり見ることはない。」と記載されているように、引用発明において、「第1特別図柄表示装置4Aにおける第1特図を用いた特図ゲーム」及び「第2特別図柄表示装置4Bにおける第2特図を用いた特図ゲーム」は、「飾り図柄の可変表示」とは別のものであって、引用発明における「特図ゲーム終了」時は、「画像表示装置5の表示領域で」、「可変表示結果となる確定飾り図柄を導出表示」する時点ではないから、補正却下発明の上記「変動停止時点」に相当するものではない。
したがって、請求人の主張2は採用することができない。

2−3 補正の却下についてのむすび
上記2−1で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号〜第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、同法第17条の2第5項の規定に違反するものである。
また、上記2−2で検討したとおり、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであったとしても、本願補正発明は、引用発明及び引用文献に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、上記第2の1に示した(本件補正前の請求項1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。

進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2017−12849号公報

3 引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明は、上記第2の2−2(2)ウにおいて「引用発明」として認定したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、上記第2の2−2(2)エにおいて「引用文献に記載の事項」として認定した事項が記載されている

4 対比・判断
上記第2の1でみたように、本願発明は、上記第2の2−2で独立特許要件を検討した本願補正発明のうち、「小当たり用演出」及び「大当たり用演出」が開始されるのが「当否抽選結果が確定するよりも前」であるとの特定(以下「特定事項」という。)を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記特定事項を特定したものである本願補正発明が、上記第2の2−2(4)に検討したとおり、引用発明及び引用文献に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることから、上記特定事項を削除した本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2024-03-13 
結審通知日 2024-03-19 
審決日 2024-04-03 
出願番号 P2017-248576
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 北川 創
太田 恒明
発明の名称 遊技機  
代理人 弁理士法人上野特許事務所  

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