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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1411094
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-07-18 
確定日 2024-05-02 
事件の表示 特願2022−122944「決済管理装置、決済管理方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、令和4年8月1日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :令和 4年11月10日(起案日)
意見書・手続補正書 :令和 5年 1月16日
拒絶査定 :令和 5年 4月12日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :令和 5年 7月18日
手続補正 :令和 5年 7月18日

2.原査定
原審での拒絶査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1−13に係る発明(令和5年1月16日にされた手続補正による)は、下記引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


引用文献1:特開2021−096626号公報
引用文献2:特開2013−182489号公報
引用文献3:特開2022−015736号公報
引用文献4:特開2004−171527号公報
引用文献5:特開2021−81899号公報

第2 補正却下の決定
令和5年7月18日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》 令和5年7月18日にされた手続補正を却下する。

《理由》
1.本件補正
(1)本件補正前の請求項1−13の記載と本件補正後の請求項1−13の記載は、以下のとおりのものである。

ア 本件補正前の請求項1−13
【請求項1】
電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部と、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行う決済処理部と、を備え、
前記決済処理部は、前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して行う、
決済管理装置。
【請求項2】
前記複数の決済方法は、前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高を利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられた後払いを利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを利用した決済方法、または前記利用者の識別情報に対応付けられデビットカードを利用した決済方法のうちいずれかである、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項3】
前記第1の決済方法が、チャージ残高を利用した決済方法であり、且つ 前記第2の決済方法が、前記後払いを利用した決済方法、前記クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法である場合において、
前記決済処理部は、前記決済金額が前記チャージ残高を超える場合、前記決済金額のうち前記チャージ残高分の決済金額の電子決済を、前記チャージ残高を利用した決済方法を利用して行い、前記後払いを利用した決済方法、前記クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法を利用して超えた部分の全部または一部の金額の決済を行う、
請求項2に記載の決済管理装置。
【請求項4】
前記利用者の端末装置の表示部に、前記第1の決済方法および前記第2の決済方法を設定するためのインターフェース画面を表示させる表示制御部と、
前記利用者の前記インターフェース画面に対する操作に基づいて、前記第1の決済方法および前記第2の決済方法を設定する設定部と、を備える
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の決済管理装置。
【請求項5】
前記第1の決済方法は、前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高を利用した決済方法であり、
前記第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額は、設定された下限値を超えるチャージ残高の金額であり、
前記第2の決済方法は、前記後払いを利用した決済方法、前記クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法であり、
前記利用者の端末装置の表示部に、前記下限値を設定するためのインターフェース画面を表示させる表示制御部と、
前記利用者の前記インターフェース画面に対する操作に基づいて、前記下限値を設定する設定部と、を備え、
前記決済処理部は、
前記チャージ残高と前記設定部が設定した下限値との差分を前記決済金額が超える場合、前記差分の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記差分を超えた部分の全部または一部の金額の決済を、前記利用者の操作に依らずに第2の決済方法を利用して行う、
請求項2または3に記載の決済管理装置。
【請求項6】
前記第1の決済方法が、前記後払いを利用した決済方法、前記クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法であり、且つ
前記第2の決済方法が、チャージ残高を利用した決済方法である場合において、
前記決済処理部は、前記決済金額が前記後払いを利用した決済方法、前記クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法の上限額を超える場合、前記上限額分の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記チャージ残高を利用した決済方法を利用して超えた部分の全部または一部の金額の決済を行う、
請求項2に記載の決済管理装置。
【請求項7】
前記第1の決済方法は、前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられた後払いを利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法のうちいずれかであり、
前記第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額は、前記後払い、クレジットカード、またはデビットカードの利用の上限額であり、
前記第2の決済方法は、チャージ残高を利用した決済方法であり、
前記利用者の端末装置の表示部に、前記上限額を設定するためのインターフェース画面を表示させる表示制御部と、
前記利用者の前記インターフェース画面に対する操作に基づいて、前記上限額を設定する設定部と、を備え、
前記決済処理部は、
前記設定部が設定した上限額を前記決済金額が超える場合、前記上限額分の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記上限額を超えた部分の全部または一部の金額の決済を、前記利用者の操作に依らずに第2の決済方法を利用して行う、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項8】 前記決済処理部は、
前記利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得した場合において、
前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高が前記決済金額以上である場合、前記チャージ残高を利用して決済を行い、
前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高が前記決済金額未満であり、且つ前記利用者の識別情報に対して前記チャージ残高が前記決済金額未満であるとき前記第2の決済方法が利用されることが設定されている場合、前記決済金額のうち前記チャージ残高分の決済金額の電子決済を、前記チャージ残高を利用した決済方法を利用して行い、前記チャージ残高を超えた部分の全部または一部の前記決済金額を前記第2の決済方法で決済し、
前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高が前記決済金額未満であり、且つ前記利用者の識別情報に対して前記チャージ残高が前記決済金額未満であるとき前記第2の決済方法が利用されることが設定されていない場合、前記決済金額に係る決済を行えないことを示す情報を前記利用者の端末装置の表示部に表示させる、
請求項1または2に記載の決済管理装置。
【請求項9】
前記第1の決済方法が、チャージ残高を利用した決済方法であり、且つ
前記第2の決済方法が、前記後払いを利用した決済方法、前記クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法である場合において、
前記決済処理部は、
前記決済金額が前記チャージ残高である第1金額を超える場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額以上の金額を、前記利用者の操作に依らずに前記第2の決済方法の利用枠を利用してチャージする処理を実行し、
前記チャージされたチャージ残高を利用して前記決済金額を決済する、
請求項2に記載の決済管理装置。
【請求項10】
前記第1の決済方法が、チャージ残高を利用した決済方法であり、且つ
前記第2の決済方法が、後払いを利用した決済方法、クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法である場合において、
前記決済処理部は、
前記決済金額が第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超え、且つオートチャージ機能を利用して超えた決済額を決済できない場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の決済を、前記利用者の操作に依らずに第2の決済方法を利用して行い、
オートチャージ機能は、チャージ残高を利用した決済時にチャージ残高が不足している場合、前記決済処理部が、自動的に不足額以上の金額を指定先からチャージして決済を行う機能である、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項11】
ユーザが前記電子決済サービスの電子決済を行うときに、電子決済アプリが利用者を特定するための識別情報がエンコードされたコード情報を利用者の端末装置の表示部に表示させることで前記コード情報を店舗の端末装置に読み取らせて、または前記電子決済アプリが前記利用者の端末装置の撮像部を用いて店舗を特定するための識別情報がエンコードされたコード情報を取得して電子決済を行う電子決済サービスを提供する、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の決済管理装置。
【請求項12】
電子決済サービスを提供するコンピュータが、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得し、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行い、
前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して行う、
決済管理方法。
【請求項13】
電子決済サービスを提供するコンピュータに、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得させ、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行わせ、
前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して行わせる、
プログラム。

イ 本件補正後の請求項1−13(下線は補正箇所を示す。)
【請求項1】
電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部と、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行う決済処理部と、を備え、
前記決済処理部は、前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合において、前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記決済管理装置において前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカード、デビットカード、または後払いを自動で適用して決済を行うことを設定している場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法である前記クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち設定された決済方法を利用して決済を行う、
決済管理装置。
【請求項2】
電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部と、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して行って決済を完了させ、
前記第1の決済方法で電子決済を完了させることができなかった情報および前記第2の決済方法を利用したことを示す情報を含めずに前記決済が完了したことを示す情報を含む第1画面を前記利用者の端末装置の表示部に表示させ、
前記第1画面に対して所定の操作が行われた場合、前記第2の決済方法が利用されたことを示す情報を含む第2画面を前記表示部に表示させる、
決済管理装置。
【請求項3】
電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部と、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記利用者によって予め設定された第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合に前記利用者が第2の決済方法を利用するか否かを示す情報と前記第2の決済方法の種別とが対応付けられた対応情報を参照し、
前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合において、
前記利用者が前記第2の決済方法を利用することが対応情報において対応付けられている場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して行って決済を完了させ、
前記利用者が前記第2の決済方法を利用することが対応情報において対応付けられていない場合、前記決済金額に係る決済が行えないことを示す情報を表示部に表示させる、
決済管理装置。
【請求項4】
前記利用者の端末装置の表示部に、前記第1の決済方法および前記第2の決済方法を設定するためのインターフェース画面を表示させる表示制御部と、
前記利用者の前記インターフェース画面に対する操作に基づいて、前記第1の決済方法および前記第2の決済方法を設定する設定部と、を備える
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の決済管理装置。
【請求項5】
前記第1の決済方法は、前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高を利用した決済方法であり、
前記第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額は、設定された下限値を超えるチャージ残高の金額であり、
前記第2の決済方法は、前記利用者の識別情報に対応付けられた後払いを利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを利用した決済方法、または前記利用者の識別情報に対応付けられたデビットカードを利用した決済方法であり、
前記利用者の端末装置の表示部に、前記下限値を設定するためのインターフェース画面を表示させる表示制御部と、
前記利用者の前記インターフェース画面に対する操作に基づいて、前記下限値を設定する設定部と、を備え、
前記決済処理部は、
前記チャージ残高と前記設定部が設定した下限値との差分を前記決済金額が超える場合、前記差分の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記差分を超えた部分の全部または一部の金額の決済を、前記利用者の操作に依らずに第2の決済方法を利用して行う、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項6】
前記第1の決済方法が、前記利用者の識別情報に対応付けられた後払いを利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを利用した決済方法、または前記利用者の識別情報に対応付けられたデビットカードを利用した決済方法であり、且つ
前記第2の決済方法が、チャージ残高を利用した決済方法である場合において、
前記決済処理部は、前記決済金額が前記後払いを利用した決済方法、前記クレジットカードを利用した決済方法、またはデビットカードを利用した決済方法の上限額を超える場合、前記上限額分の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記チャージ残高を利用した決済方法を利用して超えた部分の全部または一部の金額の決済を行う、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項7】
前記第1の決済方法は、前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられた後払いを利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを利用した決済方法、または前記利用者の識別情報に対応付けられたデビットカードを利用した決済方法のうちいずれかであり、
前記第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額は、前記後払い、クレジットカード、またはデビットカードの利用の上限額であり、
前記第2の決済方法は、チャージ残高を利用した決済方法であり、
前記利用者の端末装置の表示部に、前記上限額を設定するためのインターフェース画面を表示させる表示制御部と、
前記利用者の前記インターフェース画面に対する操作に基づいて、前記上限額を設定する設定部と、を備え、
前記決済処理部は、
前記設定部が設定した上限額を前記決済金額が超える場合、前記上限額分の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記上限額を超えた部分の全部または一部の金額の決済を、前記利用者の操作に依らずに第2の決済方法を利用して行う、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項8】
前記決済処理部は、
前記利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得した場合において、
前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高が前記決済金額以上である場合、前記チャージ残高を利用して決済を行い、
前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高が前記決済金額未満であり、且つ前記利用者の識別情報に対して前記チャージ残高が前記決済金額未満であるとき前記第2の決済方法が利用されることが設定されている場合、前記決済金額のうち前記チャージ残高分の決済金額の電子決済を、前記チャージ残高を利用した決済方法を利用して行い、前記チャージ残高を超えた部分の全部または一部の前記決済金額を前記第2の決済方法で決済し、
前記決済管理装置が管理している、前記利用者の識別情報に対応付けられたチャージ残高が前記決済金額未満であり、且つ前記利用者の識別情報に対して前記チャージ残高が前記決済金額未満であるとき前記第2の決済方法が利用されることが設定されていない場合、前記決済金額に係る決済を行えないことを示す情報を前記利用者の端末装置の表示部に表示させる、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項9】
前記第1の決済方法が、チャージ残高を利用した決済方法であり、且つ
前記第2の決済方法が、前記利用者の識別情報に対応付けられた後払いを利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを利用した決済方法、または前記利用者の識別情報に対応付けられたデビットカードを利用した決済方法である場合において、
前記決済処理部は、
前記決済金額が前記チャージ残高である第1金額を超える場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額以上の金額を、前記利用者の操作に依らずに前記第2の決済方法の利用枠を利用してチャージする処理を実行し、
前記チャージされたチャージ残高を利用して前記決済金額を決済する、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項10】
前記第1の決済方法が、チャージ残高を利用した決済方法であり、且つ
前記第2の決済方法が、前記利用者の識別情報に対応付けられた後払いを利用した決済方法、前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを利用した決済方法、または前記利用者の識別情報に対応付けられたデビットカードを利用した決済方法である場合において、
前記決済処理部は、
前記決済金額が第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超え、且つオートチャージ機能を利用して超えた決済額を決済できない場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の決済を、前記利用者の操作に依らずに第2の決済方法を利用して行い、
オートチャージ機能は、チャージ残高を利用した決済時にチャージ残高が不足している場合、前記決済処理部が、自動的に不足額以上の金額を指定先からチャージして決済を行う機能である、
請求項1に記載の決済管理装置。
【請求項11】
ユーザが前記電子決済サービスの電子決済を行うときに、電子決済アプリが利用者を特定するための識別情報がエンコードされたコード情報を利用者の端末装置の表示部に表示させることで前記コード情報を店舗の端末装置に読み取らせて、または前記電子決済アプリが前記利用者の端末装置の撮像部を用いて店舗を特定するための識別情報がエンコードされたコード情報を取得して電子決済を行う電子決済サービスを提供する、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の決済管理装置。
【請求項12】
電子決済サービスを提供するコンピュータが、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得し、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行い、
前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合において、前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカード、デビットカード、または後払いを自動で適用して決済を行うことを設定している場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法である前記クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち設定された決済方法を利用して決済を行う、
決済管理方法。
【請求項13】
電子決済サービスを提供するコンピュータに、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得させ、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行わせ、
前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合において、前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカード、デビットカード、または後払いを自動で適用して決済を行うことを設定している場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法である前記クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち設定された決済方法を利用して決済を行わせる、
プログラム。

(2)本件補正の補正事項
以下、審判請求人の整理による補正事項を補正事項A、補正事項B等として示す。

審判請求書の記載によれば、本件補正は、以下のとおりの補正事項を含むものと整理できることになる。
ア 補正事項A
補正前請求項1を減縮し、補正後の請求項1とする。
イ 補正事項B
補正前請求項2及び補正前請求項3を削除する。
ウ 補正事項C
補正前請求項1を減縮し、補正後の請求項2とする。
エ 補正事項D
補正前請求項1を減縮し、補正後の請求項3とする。
オ 補正事項E
補正前請求項12と13を減縮し、それぞれ補正後の請求項12と13とする。

2.目的要件について
目的要件(特許法第17条の2第5項の規定に違反しているか否か)を検討する。
(1)補正事項Aについて
補正事項Aは、「決済処理部」について、以下の補正事項A1〜補正事項A3を含むものである。

(補正事項A1)
「決済処理部」が行う「決済」についての「第1の決済方法とは異なる第2の決済方法」が、「クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち設定された決済方法」である旨の限定を追加する補正。
(補正事項A2)(下線は、理解しやすいように当審で付加した。)
決済処理部の処理に関して、補正前は、「前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して行う」との事項について、「前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合」としていたものを、補正後は、「前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法である前記クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち設定された決済方法を利用して決済を行う」との事項について、「前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合において、前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記決済管理装置において前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカード、デビットカード、または後払いを自動で適用して決済を行うことを設定している場合」へと変更する補正。
(補正事項A3)
「決済処理部」が決済を「第2の決済方法を利用して行う」にあたって、補正前は「前記利用者の操作に依らずに」行うとしていたものを「前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに」行うとする補正。

このうち、補正事項A2は、発明特定事項とされていた処理の条件を他のものへと変更するものであって、発明特定事項の減縮に該当しない。
つまり、補正前にあっては、「前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合」には、「前記第1金額を超えた部分」の「全部または一部」は「前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法」を利用して行うものとされているから、「前記第1金額を超えた部分」の少なくとも一部の決済が「第1の決済方法」を利用して行われないことを特定している。
これに対して、補正後は、「前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合」であっても「前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記決済管理装置において前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカード、デビットカード、または後払いを自動で適用して決済を行うことを設定している場合」に該当しなければ、「前記第1金額を超えた部分」の全部を「第1の決済方法」を利用して行うものが含まれている。
(いうなれば、クレジットカード等の「第2の決済方法」の自動適用設定がない場合に、「第1の決済方法」である電子マネーによって全額の支払いを完結させる(オートチャージ機能(本願明細書段落【0059】【0060】)によって全額の支払いを完結させる)態様が、補正前の請求項1では排除されていたものが補正後の請求項1では含まれている。)
よって、補正事項Aは、特許請求の範囲の減縮(同条同項第2号)に該当しない。

(2)補正事項Bについて
ア 本件補正による補正前後の請求項数はいずれも13であり、請求項4〜請求項13については、本件補正による請求項番号の変更も生じていない。このことから、本件補正前後の請求項1−13は、本件補正後の請求項1−13に対応するものと認められ、本件補正は、同条同項第1号の請求項の削除を目的としたものに該当しない。
イ 審判請求書では、補正事項Bについて、請求項の削除を目的としたものとし、補正事項C及び補正事項Dについて、補正後の請求項2と3は補正前請求項1に対応するものとしている。
しかしながら、本件補正後の請求項2と請求項3が本件補正前の請求項2と請求項3に対応していることは、上記アに示したことに加え、補正後の請求項4と請求項11において「請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の決済管理装置」と記載されていることからも、明らかである。
つまり、仮に補正事項Bを補正事項C及び補正事項Dと異なる補正事項と捉え請求項の削除を目的とするものと認定すると、補正後の請求項2及び請求項3が補正前の請求項2及び請求項3に対応しないものとなり、(4)で後述するとおり、本件補正によって、請求項4と請求項11について、補正事項A〜補正事項Dによって、同条同項2号を目的としたものに該当しない補正がなされたことになるのであり、このことも踏まえれば、本件補正後の請求項2と請求項3が本件補正前の請求項2と請求項3に対応していることは明らかである。
ウ よって、補正事項Bは、同条同項第1号に掲げる事項を目的とする補正に該当しない。

(3)補正事項Cについて
補正事項Cは、補正前の請求項2において特定されていない、「決済処理部」が「前記第1の決済方法で電子決済を完了させることができなかった情報および前記第2の決済方法を利用したことを示す情報を含めずに前記決済が完了したことを示す情報を含む第1画面を前記利用者の端末装置の表示部に表示させ、前記第1画面に対して所定の操作が行われた場合、前記第2の決済方法が利用されたことを示す情報を含む第2画面を前記表示部に表示させる」旨の限定を付加する補正を含む。
そして、この限定は、形式的には「決済処理部」の処理の限定となっているものの、その実質は、「決済処理部」において「決済を行う」ことに加えて「第1画面」を利用者の端末装置の表示部に表示させ、この「第1画面に対して所定の操作が行われた場合」に「第2画面」を利用者の端末装置に表示させるという、「決済処理部」における「決済を行う」処理とは異なる処理を新たに追加するものである。本願明細書段落【0041】【0042】図13、【0052】図15(S124に関する記載)を参照しても、補正事項Cに含まれる、「第1画面に対して所定の操作が行われた場合」に「第2画面」を利用者の端末装置に表示させる処理を「決済管理装置」に対応する決済サーバ100で行うことは記載されておらず、このことからも、「決済処理部」における「決済を行う」処理とは異なる処理であることは、明らかである。
してみると、この補正は、発明特定事項である「決済処理部」が行う「決済を行う」処理を限定するものでないから、発明特定事項を限定する補正(同条同項第2号)に該当しない。

(4)補正事項A〜補正事項Dを総合した請求項4及び請求項11に係る補正について
審判請求書において、補正事項Bについて、請求項の削除を目的としたものとし、補正事項C及び補正事項Dについて、補正後の請求項2と3は補正前請求項1に対応するものとしていることから、請求項4と請求項11の「請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の決済管理装置」との記載についての検討を示す。
この記載における「請求項1から請求項3のうちのいずれか1項」は、択一的記載の要素である。そして、択一的記載の要素の付加は、特許請求の範囲を減縮する補正に該当しない(特許・実用新案審査基準 第IV部第4章2.1.1「補正が特許請求の範囲を減縮するものであること」の「(1) 特許請求の範囲を減縮する補正に該当しない具体例」を参照。)ことから、「X又はY」を「X1又はX2」や「X1、X2又はY」に変更する等、択一的記載の要素の付加を伴う択一的記載の変更は、特許請求の範囲の減縮に該当しない。
仮に、補正後の請求項2及び請求項3がいずれも補正前請求項1に対応するものであり、つまり、補正前の請求項2及び請求項3に対応するものでないとすると、本件補正によって、請求項4及び請求項11の上記記載は、記載そのものは形式的に補正されていないものの、実質的に択一的記載の要素の付加を伴う択一的記載の変更がなされたことになる。具体的にみても、補正事項Aと補正事項Cは、それぞれ上記(1)の補正事項A1〜A3及び上記(3)で検討した補正事項を含むものと捉えることはできるとしても、両者は全く異なる内容の補正である。よって、本件補正前の請求項4及び請求項11における「請求項1」という1の要素を「補正事項A」による補正後のものと「補正事項C」による補正後のものという2の要素にすることは、択一的記載の要素の付加に該当することが明らかである。
以上を踏まえると、審判請求人の整理による補正事項A〜補正事項Dは、請求項4及び請求項11の択一的記載の要素について、実質的に択一的記載の要素の付加を伴って変更するものであり、この点において、特許請求の範囲の減縮に該当しない補正を含むものである。
以上を踏まえれば、補正事項A〜補正事項Dを総合した請求項4及び請求項11に係る補正は、同条同項第2号に掲げる事項を目的とする補正に該当しない。

(5) 同条同項第3号及び同条同項第4号について
上記(1)、(3)の補正事項A及び補正事項Cは、いずれも、誤記の訂正や明りようでない記載の釈明に該当しないことが明らかであり、上記(2)の補正事項B及び上記(4)の補正事項A〜補正事項Dを総合した請求項4及び請求項11に係る補正についても同様である。してみると、本件補正は、同条同項第3号又は第4号に掲げる事項を目的とする補正に該当しない。

(6)まとめ(目的要件について)
以上のとおり、本件補正は、同条同項第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反している。

3.独立特許要件について
本件補正は、上記2.で検討したように、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、本件補正が、特許法第17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであると仮定して、以下検討する。
補正の目的が、特許法第17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである場合、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けるものでなければならない(特許法17条の2第6項)。
以下、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、補正後発明という。)の独立特許要件について検討する。

(1)補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、以下のとおりである。(再掲)

【請求項1】
電子決済サービスを提供する決済管理装置であって、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部と、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行う決済処理部と、を備え、
前記決済処理部は、前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合において、前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記決済管理装置において前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカード、デビットカード、または後払いを自動で適用して決済を行うことを設定している場合、前記第1金額の電子決済を前記第1の決済方法を利用して行い、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法である前記クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち設定された決済方法を利用して決済を行う、
決済管理装置。

(2)各引用文献の記載・引用発明
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2021−096626号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0004】
しかしながら、電子マネー決済の場合、決済の時点で電子マネーの残高が不足しているとエラーとなる。エラーになった場合、客は、電子マネーをチャージするか、クレジットカード決済等の別の決済方法を選択しなければならない。このように、決済の時点でエラーになると、そのエラーを解消するための操作が必要となり、決済が滞る懸念がある。」
「【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、商取引の決済方式としてプリペイド式の電子マネー決済を採用した場合において、決済の時点で電子マネーの残高不足が発覚して決済が滞るのを未然に防ぐことができる情報処理装置及びその制御プログラムを提供しようとするものである。」
「【0011】
図1は、一実施形態に係る登録決済システム1の概略構成を示す模式図である。
登録決済システム1は、携帯端末10、入口ゲート装置20、出口ゲート装置30、会員サーバ40、商品サーバ50、仮想POSサーバ60、決済サーバ70、アクセスポイント80及び通信ネットワーク90を含む。通信ネットワーク90は、例えばLAN(local area network)である。LANは、有線LANであってもよいし、無線LANであってもよい。」
「【0013】
携帯端末10は、携帯型の通信端末である。携帯端末10は、詳細については後述するが、少なくともバーコード、二次元コード等のデータコードを読み取るためのハードウェアを有している。例えば客が個人で所有するデジタルカメラを搭載したスマートフォン、タブレット端末等が携帯端末10として利用できる。」
「【0017】
会員サーバ40は、登録決済システム1が導入された店舗の利用者として登録された会員に関する情報を管理し、その会員に係わる種々の情報処理を実行するコンピュータである。
【0018】
商品サーバ50は、店舗で販売される各商品に関する情報を管理し、その商品に係わる種々の情報処理を実行するコンピュータである。
【0019】
仮想POSサーバ60は、携帯端末10と協働することで、その携帯端末10がPOS端末として機能しているように見せかけるための情報処理を実行するコンピュータである。
【0020】
決済サーバ70は、クレジットカード決済、プリペイド式の電子マネー決済等の決済に係る情報処理を実行するコンピュータである。」
「【0045】
図4は、会員サーバ40の要部回路構成を示すブロック図である。会員サーバ40は、プロセッサ41、メインメモリ42、補助記憶デバイス43、通信インターフェース44及びシステム伝送路45を備えている」
「【0052】
かかる構成の会員サーバ40は、補助記憶デバイス43において、会員データベース431を記憶している。会員データベース431は、会員登録を行った客毎に作成される会員データレコードを保存する。会員データレコードは、会員ID、端末ID、クレジットカード番号及び電子マネーユーザIDの項目を含む。会員IDは、客が登録決済アプリを携帯端末10にインストールして会員登録を行った際に生成される。端末IDは、会員登録が行われた携帯端末10から取得される。クレジットカード番号は、会員登録の際に客が登録したものである。電子マネーユーザIDは、客がプリペイド式の電子マネーを購入した際に発行されたものである。
【0053】
また会員サーバ40は、メインメモリ42における揮発性のメモリ領域において、客テーブル421を記憶している。客テーブル421のデータ構造を図5の模式図で示す。図示するように客テーブル421は、少なくとも会員ID、端末ID、電子マネーユーザID、電子マネー残高、クレジットカード番号及び優先フラグを関連付けて記憶するためのデータ構造となっている。優先フラグは、電子マネー決済を優先するか、クレジットカード決済を優先するかを識別するための1ビットデータである。本実施形態では電子マネー決済を優先する場合の優先フラグを“0”、クレジットカード決済を優先する場合の優先フラグを“1”とする。」
「【0070】
図9は、決済サーバ70の要部回路構成を示すブロック図である。決済サーバ70は、プロセッサ71、メインメモリ72、補助記憶デバイス73、第1通信インターフェース74、第2通信インターフェース75及びシステム伝送路76を備えている。」
「【0077】
第2通信インターフェース75は、インターネットまたはモバイル通信網等の外部ネットワーク77を介して接続される電子マネー管理サーバ78及び金融機関サーバ79との間でデータ通信を行うための回路である。
電子マネー管理サーバ78は、電子マネーユーザID毎に電子マネーの残高を管理するコンピュータである。
金融機関サーバ79は、クレジットカード番号によって特定される金融機関の口座情報を管理するコンピュータである。
【0078】
図10は、入口ゲート装置20のプロセッサ21が実行するチェックイン処理の要部手順を示す流れ図である。図11乃至図16は、会員サーバ40のプロセッサ41が制御プログラムに従って実行する主要な処理の要部手順を示す流れ図である。図17は、仮想POSサーバ60のプロセッサ61が制御プログラムに従って実行する主要な処理の要部手順を示す流れ図である。図18及び図19は決済サーバ70のプロセッサ71が制御プログラムに従って実行する主要な処理の要部手順を示す流れ図である。」
「【0080】
はじめに、客は、入店前に携帯端末10の登録決済アプリを起動する。登録決済アプリが起動すると、携帯端末10のタッチパネル14に会員IDを表すバーコードが表示されるので、客は、バーコードを入口ゲート装置20のリーダ26に翳す。このように、会員IDを表すバーコードをリーダ26に翳す操作をチェックイン操作という。因みに、入店した客が店舗を出る際には、出口ゲート装置30のリーダに会員IDを表すバーコードを翳す。この操作をチェックアウト操作という。
【0081】
入口ゲート装置20のプロセッサ21は、図10のACT101として会員IDの入力を待ち受けている。客が入口ゲート装置20に対してチェックイン操作を行うと、リーダ26を介してその客の会員IDが入力されるので、プロセッサ21は、ACT101においてYESと判定し、ACT102へと進む。プロセッサ21は、ACT102として会員サーバ40に対して会員通知を行うように、通信インターフェース24を制御する。この制御により、通信インターフェース24から会員サーバ40に宛てて会員通知コマンドが出力される。会員通知コマンドは、通信ネットワーク90を介して送信され、会員サーバ40で受信される。会員通知コマンドには、チェックイン操作によって入力された会員IDが含まれている。
【0082】
会員サーバ40のプロセッサ41は、通知コマンドを待ち受けている。通信インターフェース44を介して会員通知コマンドを受信すると、プロセッサ41は、図11の流れ図に示す手順の会員通知受信処理を開始する。
【0083】
プロセッサ41は、ACT211として会員通知コマンドから会員IDを検出する。会員IDを検出できたならば、プロセッサ41は、ACT212としてその会員IDで会員データベース431を検索し、当該会員IDに関連付けられた会員データレコードを取得する。プロセッサ41は、ACT213として入店を許可するか否かを確認する。例えば会員データベース431から会員データレコードを取得できない場合、プロセッサ41は、入店拒否と判定する。会員データベース431から会員データレコードを取得できた場合には、プロセッサ41は、入店許可と判定する。」
「【0091】
会員サーバ40のプロセッサ41は、通信インターフェース44を介して入店通知コマンドを受信すると、図12の流れ図に示す手順の入店通知受信処理を開始する。
【0092】
プロセッサ41は、ACT221として入店通知コマンドから会員IDを検出する。プロセッサ41は、ACT222としてその会員IDで会員データベースを検索して、当該会員IDを含む会員データを取得する。会員データには、会員ID、端末ID、クレジットカード番号及び電子マネーユーザID等が含まれる。
【0093】
プロセッサ41は、ACT223として決済サーバ70に対して電子マネーユーザIDで識別される電子マネーの残高を問い合わせる。この問合せにより、決済サーバ70は、電子マネー管理サーバ78で管理されている電子マネーの残高を取得し、会員サーバ40へと応答するので、プロセッサ41は、電子マネーの残高を取得する。
【0094】
こうして、会員データと電子マネーの残高とを取得したプロセッサ41は、ACT223として客テーブル421に会員ID、端末ID、電子マネーユーザID、電子マネー残高及びクレジットカード番号を記憶させる。またプロセッサ41は、優先フラグを“0”とする。このように本実施形態では、電子マネー決済を優先する。
【0095】
プロセッサ41は、ACT225として携帯端末10に対して購買登録画面SC1(図20を参照)の表示通知を行うように、通信インターフェース44を制御する。この制御により、通信インターフェース44から携帯端末10に宛てて購買登録画面SC1の表示通知コマンドが出力される。この表示通知コマンドは、通信ネットワーク90及びアクセスポイント80を介して送信され、携帯端末10で受信される。表示通知コマンドを受信した携帯端末10においては、タッチパネル14に購買登録画面SC1が表示される。
【0096】
図20は、購買登録画面SC1の一表示例である。図20に示すように購買登録画面SC1には、購買登録された商品の商品名及び代金と合計金額とを表示するための領域が形成される。また、会計を指示するための会計ボタンBT1の画像が表示される 図13の説明に戻る。」
「【0101】
さて、客は、売場にて購入したい商品に付されているバーコードにカメラ15のレンズを翳す。そうすると、カメラ15によってそのバーコードがスキャニングされる。バーコードは、商品の商品コードを含む。このバーコードがスキャニングされると、携帯端末10から会員サーバ40に宛てて購買通知コマンドが出力される。購買通知コマンドには、客を識別するための会員IDと、スキャニングされた商品の商品コードとが含まれている。
【0102】
会員サーバ40のプロセッサ41は、通信インターフェース44を介して購買通知コマンドを受信すると、図13の流れ図に示す手順の購買通知受信処理を開始する。
【0103】
プロセッサ41は、ACT231として購買通知コマンドから商品コードを検出する。そしてプロセッサ41は、ACT232としてその商品コードで商品サーバ50に商品の価格を問い合わせる。この問合せにより、商品サーバ50は、商品データベース531を検索して当該商品コードと関連付けられた価格を読出し、会員サーバ40に応答する。しかしてプロセッサ41は、商品の価格Aを取得する。
【0104】
プロセッサ41は、ACT233として購買通知コマンドから会員IDを検出する。そしてプロセッサ41は、ACT234としてその会員コードと関連付けて客テーブル421に記憶されている優先フラグを調べる。優先フラグが“0”、すなわち電子マネー決済が優先の場合、プロセッサ41は、ACT234においてYESと判定し、ACT235へと進む。プロセッサ41は、ACT235として仮想POSサーバ60に合計金額を問い合わせる。この問合せにより、仮想POSサーバ60は、会員コードと関連付けられた購買登録リスト621に登録されている代金の合計金額を会員サーバ40へと応答する。しかしてプロセッサ41は、合計金額Bを取得する。
【0105】
こうして、商品の価格Aと合計金額Bとを取得したプロセッサ41は、ACT236としてその価格Aと合計金額Bとの合算金額Cを算出する。プロセッサ41は、ACT237として購買通知コマンドから検出した会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている電子マネー残高を取得する。そしてプロセッサ41は、ACT238として合算金額Cが電子マネー残高を超えたか否かを確認する。
【0106】
合算金額Cが電子マネー残高を超えていない場合、プロセッサ41は、ACT238においてYESと判定し、ACT239へと進む。また優先フラグが“1”、すなわちクレジットカード決済が優先の場合、プロセッサ41は、ACT234においてNOと判定し、ACT239へと進む。プロセッサ41は、ACT239として仮想POSサーバ60に対して購買登録通知を行うように、通信インターフェース44を制御する。この制御により、通信インターフェース44から仮想POSサーバ60に宛てて購買登録通知コマンドが出力される。購買登録通知コマンドは、通信ネットワーク90を介して送信され、仮想POSサーバ60で受信される。購買登録通知コマンドには、購買通知コマンドから検出した会員IDと商品コードとが含まれる。購買登録通知を行ったプロセッサ41は、購買通知コマンドの受信処理を終了する。
【0107】
仮想POSサーバ60のプロセッサ61は、図17のACT301において通知コマンドを受信したことを検知し、ACT302においてその通知コマンドが購買登録リストの作成通知コマンドでないことを確認するとNOと判定し、ACT305へと進む。プロセッサ51は、ACT305としてその通知コマンドが購買登録通知コマンドであるか否かを確認する。この場合、購買登録通知コマンドを受信したので、プロセッサ61は、ACT305においてYESと判定し、ACT306へと進む。プロセッサ61は、ACT306として購買登録リスト621を更新する。
【0108】
具体的にはプロセッサ61は、購買登録通知コマンドに含まれる会員IDが登録されている購買登録リスト621を選択する。また、プロセッサ61は、同購買登録通知コマンドに含まれる商品コードで商品サーバ50に商品データを問い合わせる。この問合せにより、商品サーバ50は、商品データベース531を検索して当該商品コードと関連付けられた商品名、価格等の商品データを読出し、仮想POSサーバ60へと応答する。しかしてプロセッサ61は、商品データを取得する。プロセッサ61は、商品コード、商品名、価格、購買点数及び代金を、選択した購買登録リスト621に登録する。なお、購買点数は基本的には“1”である。代金は、価格に購買点数を乗算して算出した金額である。以上で、プロセッサ61は、図17の流れ図に示す手順の情報処理を終了する。」
「【0109】
図13の説明に戻る。
合算金額Cと電子マネー残高とを照合した結果、合算金額Cが電子マネー残高を超える場合には、プロセッサ41は、ACT237においてNOと判定し、図15のACT251へと進む。プロセッサ41は、ACT251として携帯端末10に対して残高不足通知画面SC2(図21を参照)の表示通知を行うように、通信インターフェース44を制御する。この制御により、通信インターフェース44から携帯端末10に宛てて残高不足通知画面SC2の表示通知コマンドが出力される。表示通知コマンドは、通信ネットワーク90及びアクセスポイント80を介して送信され、携帯端末10で受信される。表示通知コマンドを受信した携帯端末10においては、タッチパネル14に残高不足通知画面SC2が表示される。
【0110】
図21は、残高不足通知画面SC2の一表示例である。図21に示すように、残高不足通知画面SC2には、電子マネー残高が不足していることを通知するメッセージと、現在の電子マネー残高と、購買登録された商品の合計金額とが表示される。また残高不足通知画面SC2には、電子マネー残高が不足しているときの対処方法を選択するための操作子として、チャージボタンBT2、クレジットボタンBT3及び取消ボタンBT4の各画像が表示される。
【0111】
チャージボタンBT2は、電子マネー残高が不足しているときの対処方法として電子マネーのチャージを受け付けるためのボタン画像である。クレジットボタンBT3は、同対処方法としてクレジットカード決済への変更を受け付けるためのボタン画像である。取消ボタンBT4は、同対処方法として当該商品の購入取消を受け付けるためのボタン画像である。
【0112】
図15の説明に戻る。
表示通知コマンドの送信を制御した会員サーバ40のプロセッサ41は、ACT252としてチャージボタンBT2が入力されたか否かを確認する。チャージボタンBT2が入力されていない場合、プロセッサ41は、ACT252においてNOと判定し、ACT253へと進む。プロセッサ41は、ACT253としてクレジットボタンBT3が入力されたか否かを確認する。クレジットボタンBT3が入力されていない場合、プロセッサ41は、ACT253においてNOと判定し、ACT254へと進む。プロセッサ41は、ACT254として取消ボタンBT4が入力されたか否かを確認する。取消ボタンBT4が入力されていない場合、プロセッサ41は、ACT254においてNOと判定し、ACT252へと戻る。ここにプロセッサ41は、ACT252乃至ACT254の処理において、チャージボタンBT2が入力されるか、クレジットボタンBT3が入力されるか、取消ボタンBT4が入力されるのを待ち受ける。」
「【0114】
ACT252乃至ACT254の待ち受け状態において、クレジットボタンBT3が入力された場合には、プロセッサ41は、ACT253においてYESと判定し、ACT255へと進む。プロセッサ41は、ACT255として、購買通知コマンドから検出した会員IDと関連付けて客テーブル421で記憶されている優先フラグを“1”とする。その後、プロセッサ41は、図14のACT238へと進む。すなわちプロセッサ41は、仮想POSサーバ60に対して購買登録通知を行うように、通信インターフェース44を制御する。以上で、プロセッサ41は、購買通知コマンドの受信処理を終了する。」
「【0115】
ACT252乃至ACT254の待ち受け状態において、チャージボタンBT2が入力された場合には、プロセッサ41は、ACT252においてYESと判定し、図16のACT261へと進む。プロセッサ41は、ACT261として携帯端末10に対してチャージ金額入力画面SC3(図22を参照)の表示通知を行うように、通信インターフェース44を制御する。この制御により、通信インターフェース44から携帯端末10に宛ててチャージ金額入力画面SC3の表示通知コマンドが出力される。表示通知コマンドは、通信ネットワーク90及びアクセスポイント80を介して送信され、携帯端末10で受信される。表示通知コマンドを受信した携帯端末10においては、タッチパネル14にチャージ金額入力画面SC3が表示される。
【0116】
図22は、チャージ金額入力画面SC3の一表示例である。図22に示すようにチャージ金額入力画面SC3には、チャージ金額の入力ボタンBT5と、確定ボタンBT6と、チャージ金額の入力欄IN1とが表示されている。入力ボタンBT5は、「0」?「9」の数字ボタンと「円」の決定ボタンと、「C」のクリアボタンとを含む。電子マネーをチャージする客は、チャージ金額を数字ボタンで入力し、決定ボタンにタッチすればよい。チャージ金額をクリアする場合には、クリアボタンにタッチすればよい。なお、確定ボタンBT6は、当初はグレーアウトしており、操作入力が無効化されている。
【0117】
チャージ金額入力画面SC3を確認した客は、入力ボタンBT5を操作して所望のチャージ金額を入力する。チャージ金額は、入力欄IN1に表示される。また、チャージ金額の情報は携帯端末10から会員サーバ40へと送信される。
【0118】
チャージ金額入力画面SC3の表示を制御した会員サーバ40のプロセッサ41は、ACT262としてチャージ金額が入力されるのを待ち受ける。携帯端末10からチャージ金額の情報を受信すると、プロセッサ41は、ACT262においてYESと判定し、ACT263へと進む。プロセッサ41は、ACT263としてチャージ金額Dを取得する。そしてプロセッサ41は、ACT264として電子マネー残高にチャージ金額Dを加算した金額が合算金額C以上になったか否かを確認する。電子マネー残高にチャージ金額Dを加算した金額が合算金額C未満の場合には、プロセッサ41は、ACT264においてNOと判定し、ACT262へと戻る。プロセッサ41は、再びチャージ金額が入力されるのを待ち受ける。このときプロセッサ41は、携帯端末10に対してチャージ金額が不足していることを報知してもよい。
【0119】
ACT264において、電子マネー残高にチャージ金額Dを加算した金額が合算金額C以上になると、プロセッサ41はYESと判定し、ACT265へと進む。プロセッサ41は、ACT265としてチャージ金額入力画面SC3の確定ボタンBT6が有効化されるように制御する。そしてプロセッサ41は、ACT266として確定ボタンBT6が入力されるのを待ち受ける。
【0120】
確定ボタンBT6が有効化されたことを確認した客は、その確定ボタンBT6にタッチする。そうすることにより、携帯端末10から会員サーバ40に対して確定コマンドが送信される。
【0121】
確定コマンドを受信したプロセッサ41は、ACT266においてYESと判定し、ACT267へと進む。プロセッサ41は、ACT267として購買通知コマンドから検出した会員IDと関連付けて客テーブル421で記憶されている電子マネーユーザIDを取得する。またプロセッサ41は、ACT268として同客テーブル421で記憶されているクレジットカード番号を取得する。そしてプロセッサ41は、ACT269として決済サーバ70に対してチャージ要求コマンドを送信するように通信インターフェース44を制御する。この制御により、通信インターフェース44から決済サーバ70に宛ててチャージ要求コマンドが出力される。チャージ要求コマンドは、通信ネットワーク90を介して送信され、決済サーバ70で受信される。チャージ要求コマンドには、電子マネーユーザIDとクレジットカード番号とチャージ金額Dとが含まれる。
【0122】
チャージ要求コマンドを受信した決済サーバ70のプロセッサ71は、図18の流れ図に示す手順の情報処理を開始する。すなわちプロセッサ71は、ACT401としてチャージ要求コマンドからクレジットカード番号を取得する。そしてプロセッサ71は、ACT402として金融機関サーバ79に対して当該クレジットカード番号で管理されている口座からチャージ金額を引き落とすことを指令する。そしてプロセッサ71は、ACT403として引き落としが完了するのを待ち受ける。
【0123】
金融機関サーバ79から引き落とし完了の通知を受信すると、プロセッサ71は、ACT403においてYESと判定し、ACT404へと進む。プロセッサ71は、ACT404として電子マネー管理サーバ78に対して当該チャージ要求コマンドに含まれる電子マネーユーザIDで特定される電子マネー残高にチャージ金額をチャージすることを指令する。そしてプロセッサ71は、ACT405としてチャージが完了するのを待ち受ける。
【0124】
電子マネー管理サーバ78からチャージ完了の通知を受信すると、プロセッサ71は、ACT405においてYESと判定し、ACT406へと進む。プロセッサ71は、ACT406として会員サーバ40に対してチャージ終了通知を行うように第1通信インターフェース74を制御する。この制御により、第1通信インターフェース74から会員サーバ40に宛ててチャージ終了コマンドが出力される。チャージ終了コマンドは、通信ネットワーク90を介して送信され、会員サーバ40で受信される。チャージ終了コマンドには、チャージ後の電子マネー残高が含まれる。以上で、プロセッサ71は、チャージ要求コマンドの受信処理を終了する。」

「【0126】
このように、客が携帯端末10を用いて購入したい商品のバーコードを読取り操作すると、その商品を含む商取引の合計金額(合算金額C)と、その客の電子マネー残高とが比較される。そして、合計金額が電子マネー残高以下である場合には、当該商品の販売データが、当該客の会員IDと関連付けられた購買登録リスト621に登録される。
【0127】
合計金額が電子マネー残高を超える場合には、携帯端末10のタッチパネル14に残高不足通知画面SC2が表示される。この表示により、客は、当該商品を購入することによって、電子マネー残高が不足することを知り得る。その場合、客は、対処方法として、電子マネーをチャージするか、支払方法をクレジットカード決済に変更するか、当該商品の購入を取り止めるかを選択する。」
「 【0129】
支払方法をクレジットカード決済に変更する場合には、客は、同画面SC2のクレジットボタンBT3にタッチする。そうすると、当該客の会員IDと関連付けられて客テーブル421に記憶されている優先フラグが“0”から“1”に変更される。そして、当該商品の販売データが購買登録リスト621に登録される。」
「【0131】
さて、客は、購入したい商品を購入し終えると、購買登録画面SC1の会計ボタンBT1を入力する。会計ボタンBT1が入力されると、携帯端末10から会員サーバ40に宛てて会計通知コマンドが通信ネットワーク90を介して送信される。
【0132】
会員サーバ40のプロセッサ41は、通信インターフェース44を介して会計通知コマンドを受信すると、図14の流れ図に示す手順の会計通知受信処理を開始する。
【0133】
プロセッサ41は、ACT241として会計通知コマンドから会員IDを検出する。そしてプロセッサ41は、ACT242としてその会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている優先フラグを調べる。
【0134】
優先フラグが“0”の場合、プロセッサ41は、ACT242においてYESと判定し、ACT243へと進む。プロセッサ41は、ACT243として当該会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている電子マネーユーザIDを取得する。
【0135】
優先フラグが“1”の場合には、プロセッサ41は、ACT242においてNOと判定し、ACT244へと進む。プロセッサ41は、ACT244として当該会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されているクレジットカード番号を取得する。
【0136】
ACT243又はACT244の処理を終えると、プロセッサ41は、ACT245へと進む。プロセッサ41は、ACT245として決済サーバ70に対して決済要求を行うように通信インターフェース44を制御する。この制御により、通信インターフェース44から決済サーバ70に対して決済要求コマンドが出力される。決済要求コマンドは、通信ネットワーク90を介して送信され、決済サーバ70で受信される。決済要求コマンドには、会計通知コマンドから取得した会員IDと、客テーブル421から取得したクレジットカード番号又は電子マネーユーザIDとが含まれている。
【0137】
決済要求コマンドを受信した決済サーバ70のプロセッサ71は、図19の流れ図に示す手順の情報処理を開始する。すなわちプロセッサ71は、ACT411として仮想POSサーバ60に対して決済通知を行うように第1通信インターフェース74を制御する。この制御により、第1通信インターフェース74から仮想POSサーバ60に宛てて決済通知コマンドが出力される。決済通知コマンドは、通信ネットワーク90を介して送信され、仮想POSサーバ60で受信される。決済通知コマンドには、決済要求コマンドから取得した会員IDが含まれている。
【0138】
仮想POSサーバ60のプロセッサ61は、図17のACT301において通知コマンドを受信したことを検知し、ACT305においてその通知コマンドが購買登録通知コマンドでないことを確認するとNOと判定し、ACT307へと進む。プロセッサ61は、ACT307としてその通知コマンドが決済通知コマンドであるか否かを確認する。この場合、決済通知コマンドを受信したので、プロセッサ61は、ACT307においてYESと判定し、ACT308へと進む。プロセッサ61は、ACT308として決済通知コマンドに含まれている会員IDが登録された購買登録リスト621のデータを、決済サーバ70へと転送する。以上で、プロセッサ51は、図17の流れ図に示す手順の情報処理を終了する。」
「【0140】
決済通知コマンドの送信を制御した決済サーバ70のプロセッサ71は、ACT412として購買登録リスト621のデータを待ち受ける。仮想POSサーバ60から購買登録リスト621のデータを受信したならば、プロセッサ71は、ACT412においてYESと判定し、ACT413へと進む。プロセッサ71は、ACT413として電子マネー決済を実行するかクレジットカード決済を実行するかを判定する。すなわちプロセッサ71は、決済要求コマンドに、会員IDとともに電子マネーユーザIDが含まれていた場合には、電子マネー決済を実行すると判定する。プロセッサ71は、決済要求コマンドに、会員IDとともにクレジットカード番号が含まれていた場合には、クレジットカード決済を実行すると判定する。
【0141】
クレジットカード決済を実行する場合、プロセッサ71は、ACT413においてNOと判定し、ACT414へと進む。プロセッサ41は、ACT414として金融機関サーバ79と協働して、クレジットカード決済処理を実行する。
【0142】
電子マネー決済を実行する場合には、プロセッサ71は、ACT413においてYESと判定し、ACT415へと進む。プロセッサ41は、ACT415として電子マネー管理サーバ78と協働して、電子マネー決済処理を実行する。なお、クレジットカード決済処理及び電子マネー決済処理は周知の処理であるので、ここでの詳細な説明は省略する。」
「【0145】
このように、購入したい商品の購入を終えた客が、携帯端末10のタッチパネル14に表示されている会計ボタンBT1にタッチすると、決済サーバ70により決済処理が実行される。その場合において、買物の途中で電子マネー残高が不足し、支払方法を電子マネー決済からクレジットカード決済に変更した客に対しては、クレジットカード決済が実行される。一方、買物の途中で電子マネー残高が不足しなかった客については、電子マネー決済が実行される。また、買物の途中で電子マネー残高が不足したが、その時点で必要な金額をチャージした客に対しても、電子マネー決済が実行される。」
「【0158】
例えば前記実施形態では、電子マネーの残高が不足している場合の対処方法として、電子マネーのチャージと、クレジットカード決済への変更と、商品の購入取消とを例示した。対処方法はこれらの3つに限定されるものではない。例えば、クレジットカード決済への変更ではなく、別の決済方法への変更でもよい。また、対処方法はいずれか1つであってもよい。
【0159】
前記実施形態では、電子マネーの残高が不足した時点で残高不足通知画面SC2を携帯端末10に表示させて、客が対処方法を選択する場合を例示した。他の実施形態としては、客が予め対処方法を指定する。客が指定した対処方法を示すデータは、会員データベース431の会員データに含まれる。会員サーバ40は、電子マネーの残高が不足した時点で会員データの対処方法を示すデータを参照し、その対処方法に応じた処理を実行する。こうすることにより、対処方法として電子マネーのチャージを選択した客に対しては、残高不足通知画面SC2が表示されることなくチャージ金額入力画面SC3が表示される。したがって、チャージボタンBT2を入力する手間なく、客は直ぐに電子マネーをチャージすることができる。また、クレジットカード決済への変更を選択した客に対しては、クレジットカード決済に自動的に変更される。したがって、客は電子マネーの残高が不足していることを意識することなく、買物を継続することができる。」
【0161】
前記実施形態では、会員サーバ40を情報処理装置の一例として説明した。情報処理装置は、会員サーバ40に限定されるものではない。例えば、客が購入する商品の合計は商品サーバ50又は仮想POSサーバ60で算出することができる。また、会員サーバ40は、決済サーバ70を介して電子マネーの残高を取得している。したがって、会員サーバ40以外の単一のサーバで、あるいは複数のサーバが協働して、情報処理装置としての機能を実現させてもよい。
【0162】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。」




以上の引用文献1の記載によれば、以下のことがいえる。
(ア)【0011】の記載によれば、「登録決済システム1は、携帯端末10、会員サーバ40、商品サーバ50、仮想POSサーバ60、決済サーバ70、アクセスポイント80及び通信ネットワーク90等を含む」ことが記載されている。
(イ)【0101】、【0102】の記載によれば、「客は、売場にて購入したい商品に付されている商品の商品コードを含むバーコードにカメラ15のレンズを翳し、カメラ15によってそのバーコードがスキャニングされると、携帯端末10から会員サーバ40に宛てて、客を識別するための会員IDと、スキャニングされた商品の商品コードとが含まれている購買通知コマンドが出力され、会員サーバ40のプロセッサ41は、通信インターフェース44を介して購買通知コマンドを受信する」ことが記載されている。
(ウ)【0106】−【0108】の記載によれば「仮想POSサーバ60では、会員サーバ40のプロセッサ41からの通知コマンドが購買登録通知コマンドである場合、購買登録通知コマンドに含まれる会員IDが登録されている購買登録リスト621を選択し、購買登録通知コマンドに含まれる商品コードで商品サーバ50に商品データを問い合わせ、当該商品コードと関連付けられた商品名、価格等の商品データを商品サーバ50から取得し、商品コード、商品名、価格、購買点数及び代金を、選択した購買登録リスト621に登録することで購買登録リスト621を更新する」ことが記載されている。
(エ)【0103】の記載によれば、「会員サーバ40のプロセッサ41は購買通知コマンドから商品コードを検出し、その商品コードで商品サーバ50に商品の価格を問い合わせ、商品サーバ50から商品の価格Aを取得する」ことが記載されている。
(オ)【0104】、【0105】の記載によれば、「会員サーバ40のプロセッサ41は、購買通知コマンドから会員IDを検出し、客テーブル421に記憶されている優先フラグを調べ、優先フラグが“0”、すなわち電子マネー決済が優先の場合、仮想POSサーバ60から、会員コードと関連付けられた購買登録リスト621に登録されている代金の合計金額を取得し、商品の価格Aと合計金額Bとを取得したプロセッサ41は、その価格Aと合計金額Bとの合算金額Cを算出する」ことが記載されている。
(カ)【0105】、【0109】−【0114】の記載によれば、「会員サーバ40のプロセッサ41は購買通知コマンドから検出した会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている電子マネー残高を取得し、合算金額Cが電子マネー残高を超えたか否かを確認し、合算金額Cが電子マネー残高を超える場合には、携帯端末10に対して残高不足通知画面SC2を表示させ、残高不足通知画面SC2には、電子マネー残高が不足しているときの対処方法を選択するための操作子として、チャージボタンBT2、クレジットボタンBT3及び取消ボタンBT4の各画像が表示され、クレジットボタンBT3が入力された場合には、購買通知コマンドから検出した会員IDと関連付けて客テーブル421で記憶されている優先フラグを“1”とし、仮想POSサーバ60に対して購買登録通知を行うように、通信インターフェース44を制御する」ことが記載されている。
(キ)【0131】−【0136】の記載によれば「客は、購入したい商品を購入し終えると、購買登録画面SC1の会計ボタンBT1を入力し、携帯端末10から会員サーバ40に宛てて会計通知コマンドが通信ネットワーク90を介して送信され、会員サーバ40のプロセッサ41は、会計通知コマンドから会員IDを検出し、その会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている優先フラグを調べ、優先フラグが“0”の場合、当該会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている電子マネーユーザIDを取得し、優先フラグが“1”の場合には、当該会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されているクレジットカード番号を取得し、決済サーバ70に対して決済要求を行うように決済要求コマンドを出力」することが記載されている。
(ク)【0136】、【0137】の記載によれば、「決済サーバ70は、会計通知コマンドから取得した会員IDと、客テーブル421から取得したクレジットカード番号又は電子マネーユーザIDとが含まれている決済要求コマンドを受信し、決済要求コマンドを受信した決済サーバ70のプロセッサ71は、仮想POSサーバ60に対して決済通知を行うように、仮想POSサーバ60に宛てて、決済要求コマンドから取得した会員IDが含まれている決済通知コマンドを出力し、仮想POSサーバ60で受信される」ことが記載されている。
(ケ)【0138】の記載によれば「仮想POSサーバ60のプロセッサ61は、通知コマンドを受信したことを検知し、決済通知コマンドを受信した場合、決済通知コマンドに含まれている会員IDが登録された購買登録リスト621のデータを、決済サーバ70へと転送する」ことが記載されている。
(コ)【0140】−【0142】の記載によれば、決済サーバ70のプロセッサ71が、仮想POSサーバ60から購買登録リスト621のデータを受信したならば、電子マネー決済を実行するかクレジットカード決済を実行するかを判定し、クレジットカード決済を実行する場合、会員サーバ40のプロセッサ41が金融機関サーバ79と協働して、クレジットカード決済処理を実行し、電子マネー決済を実行する場合には、プロセッサ41が電子マネー管理サーバ78と協働して、電子マネー決済処理を実行することから、「決済要求コマンドに、会員IDとともに電子マネーユーザIDが含まれていた場合には、電子マネー決済を実行すると判定し、決済要求コマンドに、会員IDとともにクレジットカード番号が含まれていた場合には、クレジットカード決済を実行すると判定して、クレジットカード決済を実行する場合、会員サーバ40のプロセッサ41が金融機関サーバ79と協働して、クレジットカード決済処理を実行し、電子マネー決済を実行する場合には、プロセッサ41が電子マネー管理サーバ78と協働して、電子マネー決済処理を実行する」ことが記載されている。
(サ)【0115】−【0124】の記載によれば、客が携帯端末10に表示された残高不足通知画面SC2でチャージボタンBT2を入力した場合、客から電子マネー残高と加算した金額が合算金額C以上となるチャージ金額Dが入力され、会員サーバ40のプロセッサ41は、客の会員IDと関連付けて記憶されている電子マネーユーザIDとクレジットカード番号を取得し、決済サーバ70に、該電子マネーユーザID、該クレジットカード番号及び該チャージ金額Dを含むチャージ要求コマンドを送信し、チャージ要求コマンドを受信した決済サーバ70のプロセッサ71は、該クレジットカード番号で管理されている口座からのチャージ金額Dの引き落としとこの引き落としの完了を条件とする電子マネー残高へのチャージ金額Dのチャージを行うことが記載されている。
(シ)【0159】【0162】の記載によれば、「電子マネーの残高が不足した時点で残高不足通知画面SC2を携帯端末10に表示させて、客が対処方法を選択する場合」の実施形態は例示であって、発明の要旨を逸脱しない範囲での置き換えや変更等の変形が可能である旨、変形された他の実施形態(以下「態様」という。)として、電子マネーの残高が不足した時点で客が対処方法を選択するのではなく「予め対処方法を指定するもの」に変更された態様が示されている。そして、この態様においては、「客が指定した対処方法を示すデータは、会員データベース431の会員データに含まれ、会員サーバ40は、電子マネーの残高が不足した時点で会員データの対処方法を示すデータを参照し、クレジットカード決済への変更を選択した客に対しては、クレジットカード決済に自動的に変更され」、それによって、「客は電子マネーの残高が不足していることを意識することなく、買物を継続することができる」ことが記載されている。
(ス)以上(ア)から(シ)をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
登録決済システム1は、携帯端末10、会員サーバ40、商品サーバ50、仮想POSサーバ60、決済サーバ70、アクセスポイント80及び通信ネットワーク90等を含み、
客は、売場にて購入したい商品に付されている商品の商品コードを含むバーコードにカメラ15のレンズを翳し、カメラ15によってそのバーコードがスキャニングされると、携帯端末10から会員サーバ40に宛てて、客を識別するための会員IDと、スキャニングされた商品の商品コードとが含まれている購買通知コマンドが出力され、会員サーバ40のプロセッサ41は、通信インターフェース44を介して購買通知コマンドを受信し、
仮想POSサーバ60では、会員サーバ40のプロセッサ41からの通知コマンドが購買登録通知コマンドである場合、購買登録通知コマンドに含まれる会員IDが登録されている購買登録リスト621を選択し、購買登録通知コマンドに含まれる商品コードで商品サーバ50に商品データを問い合わせ、当該商品コードと関連付けられた商品名、価格等の商品データを商品サーバ50から取得し、商品コード、商品名、価格、購買点数及び代金を、選択した購買登録リスト621に登録することで購買登録リスト621を更新し、
会員サーバ40のプロセッサ41は、購買通知コマンドから会員IDを検出し、客テーブル421に記憶されている優先フラグを調べ、優先フラグが“0”、すなわち電子マネー決済が優先の場合、仮想POSサーバ60から、会員コードと関連付けられた購買登録リスト621に登録されている代金の合計金額を取得し、商品の価格Aと合計金額Bとを取得したプロセッサ41は、その価格Aと合計金額Bとの合算金額Cを算出し、
会員サーバ40のプロセッサ41は購買通知コマンドから検出した会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている電子マネー残高を取得し、合算金額Cが電子マネー残高を超えたか否かを確認し、合算金額Cが電子マネー残高を超える場合には、携帯端末10に対して残高不足通知画面SC2を表示させ、残高不足通知画面SC2には、電子マネー残高が不足しているときの対処方法を選択するための操作子として、チャージボタンBT2、クレジットボタンBT3及び取消ボタンBT4の各画像が表示され、クレジットボタンBT3が入力された場合には、購買通知コマンドから検出した会員IDと関連付けて客テーブル421で記憶されている優先フラグを“1”とし、仮想POSサーバ60に対して購買登録通知を行うように、通信インターフェース44を制御し、
客は、購入したい商品を購入し終えると、購買登録画面SC1の会計ボタンBT1を入力し、携帯端末10から会員サーバ40に宛てて会計通知コマンドが通信ネットワーク90を介して送信され、会員サーバ40のプロセッサ41は、会計通知コマンドから会員IDを検出し、その会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている優先フラグを調べ、優先フラグが“0”の場合、当該会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されている電子マネーユーザIDを取得し、優先フラグが“1”の場合には、当該会員IDと関連付けて客テーブル421に記憶されているクレジットカード番号を取得し、決済サーバ70に対して決済要求を行うように決済要求コマンドを出力し、
決済サーバ70は、会計通知コマンドから取得した会員IDと、客テーブル421から取得したクレジットカード番号又は電子マネーユーザIDとが含まれている決済要求コマンドを受信し、決済要求コマンドを受信した決済サーバ70のプロセッサ71は、仮想POSサーバ60に対して決済通知を行うように、仮想POSサーバ60に宛てて、決済要求コマンドから取得した会員IDが含まれている決済通知コマンドを出力し、仮想POSサーバ60で受信され、
仮想POSサーバ60のプロセッサ61は、通知コマンドを受信したことを検知し、決済通知コマンドを受信した場合、決済通知コマンドに含まれている会員IDが登録された購買登録リスト621のデータを、決済サーバ70へと転送し、
決済サーバ70のプロセッサ71は、仮想POSサーバ60から購買登録リスト621のデータを受信したならば、電子マネー決済を実行するかクレジットカード決済を実行するかを判定し、クレジットカード決済を実行する場合、会員サーバ40のプロセッサ41が金融機関サーバ79と協働して、クレジットカード決済処理を実行し、電子マネー決済を実行する場合には、このプロセッサ41が電子マネー管理サーバ78と協働して、電子マネー決済処理を実行し、
判定は、決済要求コマンドに、会員IDとともに電子マネーユーザIDが含まれていた場合には、電子マネー決済を実行すると判定し、決済要求コマンドに、会員IDとともにクレジットカード番号が含まれていた場合には、クレジットカード決済を実行すると判定することであり、
客が携帯端末10に表示された残高不足通知画面SC2でチャージボタンBT2を入力した場合、客から電子マネー残高と加算した金額が合算金額C以上となるチャージ金額Dが入力され、会員サーバ40のプロセッサ41は、客の会員IDと関連付けて記憶されている電子マネーユーザIDとクレジットカード番号を取得し、決済サーバ70に、該電子マネーユーザID、該クレジットカード番号及び該チャージ金額Dを含むチャージ要求コマンドを送信し、チャージ要求コマンドを受信した決済サーバ70のプロセッサ71は、該クレジットカード番号で管理されている口座からのチャージ金額Dの引き落としとこの引き落としの完了を条件とする電子マネー残高へのチャージ金額Dのチャージを行い、
電子マネーの残高が不足した時点で客が対処方法を選択するのではなく予め対処方法を指定するものに変更された態様において、客が指定した対処方法を示すデータは、会員データベース431の会員データに含まれ、会員サーバ40は、電子マネーの残高が不足した時点で会員データの対処方法を示すデータを参照し、クレジットカード決済への変更を選択した客に対しては、クレジットカード決済に自動的に変更され、これによって、客は電子マネーの残高が不足していることを意識することなく、買物を継続することができる、
登録決済システム1。

イ 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004−171527号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、決済用の金額を前払いし、その残高をサーバで管理し、決済を行うサーバ管理型決済システムに関する。更には、当該残高が不足する場合に、その不足額を更にクレジットカードの与信枠を利用して決済を可能とするサーバ管理型決済システムに関する。」
「【0084】
次にユーザが当該プリペイドカードを用いて店舗等で決済をする場合のプロセスの流れの一例を図3及び図1のフローチャート図を用いて説明する。
【0085】
ユーザは、クレジットカードと同様に、店舗等で商品の購入、サービスの購入等の際に、当該プリペイドカードを店員等に呈示する(S200)。ユーザからカードの呈示を受けた店員等は、クレジットカードと同様に、当該プリペイドカードをカードリーダ3に接触又は非接触によってプリペイドカードに記録されているプリペイドカード識別情報を読み取らせる。例えば、ユーザは5万円の商品を購入したとする。
【0086】
カードリーダ3は読み取ったプリペイドカード識別情報と決済金額とを、店舗・カード会社間通信回線6を介して送信する。上記例の場合では、プリペイドカード識別情報「9999999999」と決済金額5万円との情報が送信される。サーバ管理型決済システム1の決済情報受信手段10で、カードリーダ3からのプリペイドカード識別情報と決済金額とを受信すると、残高管理手段9は、残高データベース15に於ける当該プリペイドカード識別情報の口座に、決済金額以上の残高があるか否かのチェックを行い(S210)、残高がある場合には、その口座の残高を更新して決済を行う(S220)。上記例の場合、プリペイドカード識別情報「9999999999」の口座には残高が10万円あるので、そこから決済金額5万円を減額し、その残高を5万円に更新することとなる。またこの際に、金融機関資金移動手段13が金融機関・カード会社間通信回線7を介して金融機関端末4に対して、クレジットカード会社等の金融機関端末4に於ける口座から当該プリペイドカードを読み取ったカードリーダ3を有する店舗の口座に、当該決済金額(この場合は5万円)又は所定の手数料を減額した決済金額の振替指示を送信して即時決済を行わせても良いし、従来のクレジットカードによる場合と同様に、毎日、毎週、毎月等の予め定められた期限毎にその振替指示を送信しても良い。」
「【0091】
又ユーザが15万円の商品を購入した場合には、前述と同様に、プリペイドカード識別情報と決済金額とをカードリーダ3から送信する。その後S210の残高チェックの結果、残高不足であるので、残高が不足である旨の通知を残高管理手段9が店舗・カード会社間通信回線6を介してカードリーダ3に送信しても良いし、ユーザデータベース14に格納しているユーザの連絡先に電子メール等によって通知しても良い。又電子メールによる連絡の場合では、電子メールがユーザ端末2に届かない場合や大幅に遅延する可能性もあることから、IVR(自動音声応答システム)を用いて、ユーザ端末2に架電し音声通話による確認を行っても良い。入金を行う場合には、前述のようにS240及びS250を実行する。
【0092】
ユーザが入金を行わずに、クレジットカードによって不足額を支払うことを希望する場合には(S260)、その旨をカードリーダ3から店舗・カード会社間通信回線6を介して、又はユーザ端末2からインターネット5を介してサーバ管理型決済システム1の決済情報受信手段10に送信する。
【0093】
不足額をクレジットカードで支払うことを決済情報受信手段10で受信すると、残高管理手段9が、当該プリペイドカード識別情報「9999999999」の残高を0円に更新し(即ち全額決済を行い)、新たな残高にすると共に、その不足額の算出を行う(S270)。上記例の場合では、7万円の残高を0円にし、不足額8万円(12万円−15万円=−8万円)を算出する。
【0094】
残高管理手段9は、ユーザデータベース14から当該プリペイドカード識別情報の対応するユーザの有するクレジットカード番号を抽出し、クレジットカードによる決済金額(即ち不足額8万円)とクレジットカード番号とをクレジットカード決済手段11に送信する。
【0095】
クレジットカードによる決済金額とクレジットカード番号とを受信したクレジットカード決済手段11は、通常のクレジットカードと同様の決済を行い、クレジットカードデータベース16にその決済履歴や残高等を格納する(S280)。
【0096】
プリペイドカードによる決済及び不足額のクレジットカードによる決済の際に、金融機関資金移動手段13が金融機関・カード会社間通信回線7を介して金融機関端末4に対して、クレジットカード会社等の金融機関端末4に於ける口座から当該プリペイドカードを読み取ったカードリーダ3を有する店舗の口座に、当該決済金額(この場合は15万円)又は所定の手数料を減額した決済金額の振替指示を送信して即時決済を行わせても良いし、従来のクレジットカードによる場合と同様に、毎日、毎週、毎月等の予め定められた期限毎にその振替指示を送信しても良い。
【0097】
又S260に於いて、クレジットカードによる不足額の決済を行わない場合には、プリペイドカードによる決済を不許可にしても良いし、他の決済手段、例えば現金や小切手等による決済を、残高管理手段9からカードリーダ3に対して通知し、ユーザにその旨を促す(S290)。」

以上の記載によれば、引用文献4には、プリペイドカードを用いて店舗等で決済をするとき、プリペイドカードの残高チェックの結果、残高不足であるので、ユーザがクレジットカードによって不足額を支払うことを希望する場合には、プリペイドカードの残高を0円に更新し、不足額を算出し、不足額については、通常のクレジットカードと同様の決済を行うことが記載されている。

(3)対比
補正後発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「客」及び「客を識別するための会員ID」は、補正後発明の「利用者」及び「利用者の識別情報」に相当する。

イ 補正後発明の「決済」は「クレジットカード」や「デビッドカード」による決済を含み、補正後発明における「決済を行う」とは、電子決済サービスの運営者による決済や運営者が与信者となる「後払い」の「決済」のみならず、この運営者とは別主体であるクレジットカード会社との連携による「クレジット払い」による「決済」を行うことを含む(本願明細書の段落【0035】【0053】を参照。)。
このことに照らせば、引用発明の「会員サーバ40」及び「決済サーバ70」は、以下で検討するように、互いに協働して利用者に対して電子マネーやクレジットカードによる決済サービス(電子決済サービス)を提供するシステムを構成するものといえるから、「電子決済サービスを提供する決済管理システム」である点で、補正後発明の「電子決済サービスを提供する決済管理装置」と共通する。

ウ 引用発明の決済管理システムは、利用者(客)の会計ボタンBT1の入力により送信される会計通知コマンドを受信して「利用者の識別情報」である会員IDを検出する等して取得している。
さらに、この決済管理システムである決済サーバ70は、この会計通知コマンドを受信した仮想POSサーバ60から転送された購買登録リストを受信して、電子マネーとクレジットカードのいずれかによる決済を実行しており、このことから、引用発明における、会計通知コマンドを受信した仮想POSサーバ60から転送された購買登録リストは、利用者の会計ボタンの入力による決済の決済金額、を示す情報を含むことが明らかであることから、補正後発明の「決済金額を示す決済情報」に相当する。
そして、引用発明の決済管理システムは、「利用者の識別情報」及び「決済金額を示す決済情報」を取得していることを踏まえれば、補正後発明と同様に、「利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部」を備えるものといえる。

エ 引用発明の「電子マネー決済」及び「クレジットカード決済」は、「利用者が利用可能な複数の決済方法」に相当し、引用発明の決済サーバ70は、これらの決済方法を用いて決済を行う決済処理部であり、補正後発明の「決済処理部」に対応するものといえる。
そして、引用発明では、決済管理システムの会員サーバ40において、客テーブル421に会員IDと関連づけて電子マネー決済のための電子マネーユーザID及びクレジットカード決済のためのクレジットカード番号を記憶するとともにこれらのいずれが優先されるかを示す「“0”」又は「“1”」である「優先フラグ」の値をも記憶し、上記イの会計通知コマンドの受信に応じてこの会員IDと関連づけて記憶された優先フラグの値に応じて電子マネーユーザIDとクレジットカード番号のいずれが読み出されて上記イの決済情報に係る決済のための決済要求コマンドとして「決済処理部(決済サーバ70)」に送信され、「決済処理部(決済サーバ70)」において、当該決済のための決済要求コマンドに含まれている電子マネーユーザIDとクレジットカード番号のいずれかに応じて「利用者が利用可能な複数の決済方法」である「電子マネー決済」と「クレジットカード決済」のいずれを決済において用いるかが判断されるものであって、いうなれば、引用発明における、決済処理部における上記イの決済情報が示す決済金額の決済は、会員IDに対応する電子マネーID及びクレジットカード番号としてそれぞれ設定されている「利用者識別番号に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法」のうち、「優先フラグ」の値として設定された決済方法を用いて行われる。よって、補正後発明と引用発明の「決済処理部」は、いずれも、「前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額にかかる決済を行う」ものである。
以上を踏まえれば、引用発明の決済管理システムは、補正後発明と同様に、「前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額にかかる決済を行う決済処理部」を備えるものといえる。

オ(ア)引用発明の「電子マネー決済」と「電子マネーの残高」は、それぞれ、補正後発明の「第1の決済方法」と「第1の決済方法に対応づけられた決済可能な第1金額」に相当し、「クレジットカード決済」は、補正後発明の「前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法」に相当する。
(イ)さらに、引用発明の「前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法」(「クレジットカード決済」)は、会員IDに対応するクレジットカード番号により決済方法として設定されたものといえるから、引用発明は、補正後発明の「クレジットカード、デビットカード、または後払い」という択一事項のうちの「クレジットカード」を「利用者の識別情報に対応付けられた」ものとして「設定された決済方法」としたものに相当する。

カ(ア)引用発明では、利用者は、商品のバーコードの読み取り操作により「購入」するものであり、購入しようとする商品のうちの最後の商品のバーコードの読み取り操作によって「購入し終え」ることで、購入しようとする商品について決済の処理を開始すべく決済の処理のための会計ボタンBT1の入力に進むことになる。よって、引用発明における、利用者が購入しようとする商品を「購入し終え」た時点は、利用者が会計ボタンBT1の入力に進んで決済の処理を開始しようとする時点であるから、補正後発明における「電子決済しようとする時点」に相当する。
また、引用発明における、当該最後の商品の価格Aとその商品による更新前の購買登録リストに登録されている商品の代金の合計金額Bとの「合算金額C」は、上記イのとおり利用者の会計ボタンBT1の入力による会計通知コマンドの受信に応じて仮想POSサーバ60から転送される購買登録リストが含む情報が示す決済の決済金額を示すものであり、このことから、引用発明の「合算金額C」は、補正後発明の「前記決済金額」に相当するといえる。
(イ)引用発明の、電子マネーの残高が不足した時点で客が対処方法を選択するのではなく予め対処方法を指定するものに変更された態様では、決済管理システムの会員サーバ40において、電子決済しようとする時点(利用者が購入しようとする商品を「購入し終え」た時点)で、「優先フラグ」が「“0”」、つまり「電子マネー決済が優先」、の場合、上記の「合算金額C」である「前記決済金額」が、その時点の「電子マネーの残高」である「第1の決済方法に対応づけられた決済可能な第1金額」を超えない場合は、電子マネーユーザIDが読み出されて、「決済処理部(決済サーバ70)」において電子マネー決済と判断されてこの決済金額について「電子マネー決済」が行われるが、超える場合は、「自動的に」、つまり、利用者に問い合わせることなく且つ利用者の操作に依らずに、「優先フラグ」を「“1”」として、クレジットカード番号が読み出され、「決済処理部(決済サーバ70)」においてクレジットカード決済と判断されてこの「前記決済金額」についてクレジットカード決済を行うこととなる。
(ウ)さらに、「前記決済金額」は、電子マネー残高を超えるものとされた金額であることから、少なくとも「前記第1金額を超えた部分」の「一部」を含むことが明らかである。
(エ)以上を踏まえれば、引用発明は、「前記決済金額」が「電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応づけられた決済可能な第1金額を超える場合」に「前記第1金額を超えた部分の全部又は一部の金額」の「電子決済」を「前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに」「前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法」を利用して決済を行う点で、共通するといえる。
(オ)さらに上記(イ)の、予め対処方法を指定するものに変更された態様では、「電子決済しようとする時点」での上記決済金額が「第1の決済方法に対応づけられた決済可能な第1金額」を超える場合に「クレジットカード」である「設定された決済方法」が「自動的に」適用されて「第1金額を超える金額」の決済を行う場合を示すものであることから、補正後発明の「前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記決済管理装置において前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカード、デビットカード、または後払いを自動で適用して決済を行うことを設定している場合」に相当するものといえる。
(カ)以上を踏まえれば、補正後発明と引用発明とは、いずれも、「前記決済処理部」が「前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応づけられた決済可能な第1金額を超える場合において、前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記決済管理装置において前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを自動で適用して決済を行うことを設定している場合、前記第1金額を超えた部分の全部または一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法である前記クレジットカードである設定された決済方法を利用して決済を行う」ものである点で共通するといえる。

キ 以上まとめると、補正後発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

(一致点)
電子決済サービスを提供する決済管理システムであって、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部と、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行う決済処理部と、を備え、
前記決済処理部は、前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合において、前記利用者が前記第1金額を超える金額を前記決済管理システムにおいて前記利用者の識別情報に対応付けられたクレジットカードを自動で適用して決済を行うことを設定している場合、前記第1の金額を超えた部分の全部又は一部の金額の電子決済を、前記利用者に問い合わせることなく且つ前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法である前記クレジットカードである設定された決済方法を利用して決済を行う、
決済管理システム

(相違点)
相違点1
「決済管理システム」が、補正後発明では「決済管理装置」であるのに対し、引用発明では「会員サーバ」及び「決済サーバ」からなる点

相違点2
補正後発明では、前記第1の金額を超えた部分の全部又は一部の金額の電子決済を前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して決済を行うにあたって、「前記第1金額の電子決済」を「前記第1の決済方法を利用して行」うのに対し、引用発明では、「前記第1金額の電子決済」を第2の決済方法を利用して行う点

相違点3
「第1の決済方法とは異なる第2の決済方法」について、補正後発明では、「クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち設定された決済方法」であるのに対し、引用発明では、「クレジットカードである設定された決済方法」である点

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「会員サーバ」及び「決済サーバ」からなるシステムを、一つの装置とすることは、当業者が適宜為し得た設計事項の域を超えるものでない。引用文献1の段落【0161】にも、「会員サーバ」の機能を「決済サーバ」のようなそれ以外のサーバで実現してもよく、会員サーバ及び決済サーバを1つのサーバで実現してもよい旨、が記載されている。
してみると、引用発明の「決済管理手段」である「会員サーバ」及び「決済サーバ」を「決済管理装置」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
(ア)引用発明の電子マネーは、プリペイド式の電子マネーであるところ、そのような電子マネーは、支払いに充当可能なポイントによる支払い手段と等価なもの又はそれに類するものといえ、そのようなポイントによる支払い手段と現金やクレジットカード決済等の他の支払い手段とを併用して支払いするにあたっては、ポイントによる支払いを優先し、その支払い後の残額の支払いを他の支払い手段により行うことが広く行われている。また、上記(2)イに示したとおり、引用文献4には、プリペイドカードを用いて店舗等で決済をするとき、プリペイドカードの残高チェックの結果、残高不足であるので、ユーザがクレジットカードによって不足額を支払うことを希望する場合には、プリペイドカードの残高を0円に更新し、不足額を算出し、不足額については、通常のクレジットカードと同様の決済を行うことが記載されている。
これらを踏まえれば、プリペイド式の電子マネーを用いてその残高を超える金額の決済を行うにあたって、当該電子マネーの残高によって可能な範囲で当該電子マネーの残高による支払いを優先し、支払い後の当該電子マネーの残高を残さないものとして、その残額の支払いをクレジットカード決済等の他の支払い手段によって行うことは、周知技術である。
(なお、引用文献4の他、特開平11−2599577号公報(段落【0026】〜【0030】)及び特開2003−151011号公報(段落【0019】〜【0022】)も、この周知技術に関する周知例といえる。)
(イ)引用発明と(ア)の周知技術とは、いずれも、プリペイド式の電子マネーとクレジットカード決済等の他の支払い手段を用いた決済における、電子マネーの残高を超える金額の決済における対応についての取り決めを示すものであり、引用発明における取り決めとしてこの周知技術の取り決めを採用することは、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)したがって、引用発明において、上記周知技術の取り決めを採用して、支払い後の電子マネーの残高を残さないものとして、前記第1の金額を超えた部分の全部又は一部の金額の電子決済を前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して決済を行うにあたって「前記第1金額の電子決済」を「前記第1の決済方法を利用して行」うようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(エ)ちなみに、決済終了後の電子マネーの残高は、上記(ア)の周知技術においては「ゼロ」となり、引用発明のそれは「決済前と同じ」であるとの違いがある。この違いは、決済終了後に電子マネーへチャージする額の融通性に影響を与える要因と考えられる。つまり、周知技術においては、残高が「ゼロ」であるがゆえに、利用者が希望する額(もちろん、上限などの制限の範囲内であることは自明。)を電子マネーにチャージすることができるが、引用発明においては、クレジットカードを用いてチャージすることで電子マネーの残高を増やすことはできるものの、残高を減らすことはできないから、上記周知技術は電子マネーの利用に関して、引用発明よりも利用者の嗜好に柔軟に対応可能なものである。してみると、引用発明の支払い方法を上記周知技術の支払い方法に変更しようとする動機はあるといえる。
また、引用発明の決済サーバ70は、電子マネーユーザIDとクレジットカード番号の双方を含むコマンドを会員サーバ40から受信してこれを処理することが可能なものとなっている。
このように、引用発明の電子マネーや決済サーバの特徴を具体的に検討しても、引用発明において上記(ア)の周知技術の取り決めを採用することは阻害されるものとはいえない。

ウ 相違点3について
引用発明では、「第1の決済方法とは異なる第2の決済方法」について、「クレジットカードである設定された決済方法」しか特定されていないものの、そもそも補正後発明における「クレジットカード、デビットカード、または後払いのうち選択された決済方法」は、「クレジットカードである選択された決済方法」を選択肢として含む択一事項であることから、相違点3は、実質的な相違点でない。
また、決済の方法として、「クレジットカード」、「デビットカード」、「後払い」はいずれも置換可能な支払い方法として本願出願前周知のものであるから、仮に相違点3を実質的な相違点であると考えても、周知技術の範囲内で択一事項の選択肢を追加するにすぎず、当業者が適宜なし得たことである。

エ 効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、補正後発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない

オ 請求人の主張について
請求人の主張は、下記のとおり、いずれも採用することができない。
(ア)請求人は、引用文献1記載の発明について、決済金額に対して残高が不足しているとき、残高を利用することなく、予め設定された他の決済方法(例えばクレジットカード決済)を利用して、上記の決済金額を決済するものであり、優先的に第1の決済方法を利用することはできない旨を主張しており、この点は、上記(3)で認定した相違点2に関する主張であるといえる。
そして、相違点2については、上記(4)イに示したとおり、引用発明における取り決めとして周知技術の取り決めを採用することは、当業者が適宜なし得たことといえる。
(イ)補正後発明の効果について、請求人は、補正後発明では、「第1の決済方法を利用しつつ、不足分を第2の決済方法を利用して決済を完了させることができ」る旨、「例えば、レジで決済を行う場合に、自動で第2の決済方法が適用されるため、スムーズに電子決済が行われ」、「これにより、利用者は、レジの前で通知を受けたり操作をしたりせずにスムーズに決済を行うことができ」、「店員さんや順番待ちをしている他のユーザに対しても配慮した決済が行われ」て「利用者の利便性と周辺の人物への配慮とが同時に実現可能」である旨、「第1の決済方法での不足が店員さんや周りの人に気づかれずに決済を行うことができ」る旨を指摘し、補正後発明では、これらを同時に実現できると主張している。
しかし、「第1の決済方法を利用しつつ、不足分を第2の決済方法を利用して決済を完了させることができ」ることは、上記イにおいて示した周知技術の効果であり、その余の点は、引用発明の電子マネーの残高が不足した時点で客が対処方法を選択するのではなく予め対処方法を指定するものに変更された態様の効果であることから、いすれも格別顕著な効果とはいえないし、引用発明において同時に実現できないものともいえない。

カ したがって、補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.まとめ
上記2.のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同条第5項の規定に違反するものであり、また、上記3.のとおり、仮に、本件補正後が、同条同項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであったとしても、本件補正は、同条第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものである。
してみると、本件補正は、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和5年7月18日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項13に係る発明は、令和5年1月16日にされた手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前掲第2 1.(1)アの【請求項1】に記載された事項により特定されるものである。

2.各引用文献の記載・引用発明
各引用文献の記載及び引用発明は、上記第2 3.(2)に記載したとおりである。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)上記第2 3.(3)の補正後発明と引用発明との対比の説示のうち、ア〜エ、オ(ア)、カ(ア)〜(エ)の説示の趣旨は、本願発明と引用発明との対比の説示と共通することから、これらの説示を読み替えて引用する。

(2)してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(相違点1’及び相違点2’は、上記第2 3.(3)の相違点1及び相違点2とそれぞれ実質的に同じである。)

(一致点)
電子決済サービスを提供する決済管理システムであって、
利用者の識別情報と決済金額を示す決済情報とを取得する取得部と、
前記利用者の識別情報に対応付けられた前記利用者が利用可能な複数の決済方法のうち、設定された決済方法を用いて前記決済金額に係る決済を行う決済処理部と、を備え、
前記決済処理部は、前記決済金額が、電子決済しようとする時点で設定されていた第1の決済方法に対応付けられた決済可能な第1金額を超える場合、前記第1の金額を超えた部分の全部又は一部の金額の電子決済を、前記利用者の操作に依らずに前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して行う、
決済管理システム

(相違点)
相違点1’
「決済管理システム」が、本願発明では「決済管理装置」であるのに対し、引用発明では「会員サーバ」及び「決済サーバ」からなる点

相違点2’
本願発明では、前記第1の金額を超えた部分の全部又は一部の金額の電子決済を前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して決済を行うにあたって、「前記第1金額の電子決済」を「前記第1の決済方法を利用して行」うのに対し、引用発明では、「前記第1金額の電子決済」を第2の決済方法を利用して行う点

4.判断
(1)相違点1について
上記第2 3.(4)アの説示のとおりであり、これを引用する。
引用発明の「決済管理手段」である「会員サーバ」及び「決済サーバ」を「決済管理装置」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
上記第2 3.(4)イの説示のとおりであり、これを引用する。
引用発明において、上記第2 3.(4)イ(ア)の周知技術の取り決めを採用して、支払い後の電子マネーの残高を残さないものとして、前記第1の金額を超えた部分の全部又は一部の金額の電子決済を前記第1の決済方法とは異なる第2の決済方法を利用して決済を行うにあたって「前記第1金額の電子決済」を「前記第1の決済方法を利用して行」うようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(3)効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない

(4)したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2024-02-28 
結審通知日 2024-03-05 
審決日 2024-03-21 
出願番号 P2022-122944
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 相崎 裕恒
渡邊 聡
発明の名称 決済管理装置、決済管理方法、およびプログラム  
代理人 沖田 壮男  
代理人 酒井 太一  
代理人 松沼 泰史  
代理人 渡辺 伸一  

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