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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F |
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管理番号 | 1411178 |
総通号数 | 30 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-09-13 |
確定日 | 2024-06-04 |
事件の表示 | 特願2020−203488「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月20日出願公開、特開2022− 90907、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和2年12月8日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和 4年10月17日付け:拒絶理由通知書 12月14日 :意見書、手続補正書の提出 令和 5年 3月 6日付け:拒絶理由通知書 4月25日 :意見書、手続補正書の提出 7月 5日付け:補正の却下の決定 7月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 7月11日 :原査定の謄本の送達 9月13日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2008−054750号公報 第3 審判請求時の補正 1 補正の内容 審判請求時の補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載についてする補正を含むものであって、令和4年12月14日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に (本件補正前の請求項1) 「【請求項1】 遊技の進行を制御可能な主制御基板と、 特定入賞口への遊技球の入球し易さが変化するように前記主制御基板により開閉動作が制御される特定入賞口開閉部材と、を備える遊技機において、 前記主制御基板は、 操作可能な特別操作手段を備え、 遊技の進行を制御可能な遊技モード、又は遊技の進行を制御不能にしつつ前記特定入賞口開閉部材が複数回開閉動作することで当該特定入賞口開閉部材の駆動を確認可能な駆動確認モードに設定可能であり、 前記特別操作手段が操作されると、前記駆動確認モードに設定可能であることを特徴とする遊技機。」 とあったものを、 (本件補正後の請求項1) 「【請求項1】 A 遊技の進行を制御可能な主制御基板と、 B 特定入賞口への遊技球の入球し易さが変化するように前記主制御基板により開閉動作が制御される特定入賞口開閉部材と、を備える遊技機において、 C 前記主制御基板は、 操作可能であって当該主制御基板に記憶されている遊技の進行に係る情報を消去可能なRAMクリア操作手段を備え、 D 遊技の進行を制御可能な遊技モード、又は遊技の進行を制御不能にしつつ前記特定入賞口開閉部材が複数回開閉動作することで当該特定入賞口開閉部材の駆動を確認可能な駆動確認モードに設定可能であり、 E 前記RAMクリア操作手段が操作されると、前記駆動確認モードに設定可能であり、 前記駆動確認モードに設定されているときに前記RAMクリア操作手段が操作されると、当該駆動確認モードを終了可能であり、 F 前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す G ことを特徴とする遊技機。」 とする補正を含むものである(なお、符号A等は、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)を分説するために当審合議体が付した。以下、符号A等が付された事項を「特定事項A」等という。また、下線は補正前後の箇所を明示するために当審合議体が付した。)。 2 補正の目的 本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「特別操作手段」を、「当該主制御基板に記憶されている遊技の進行に係る情報を消去可能なRAMクリア操作手段」(特定事項C)と限定し(補正事項1)、「駆動確認モード」の設定及び終了に関し、補正事項1により限定された「RAMクリア操作手段」が操作されると、前記駆動確認モードに設定可能であるとし、「前記駆動確認モードに設定されているときに前記RAMクリア操作手段が操作されると、当該駆動確認モードを終了可能であり」(特定事項E)を付加する(補正事項2)ことで、「駆動確認モード」の設定及び終了について規定し、さらに、「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す」こと(特定事項F)を付加する(補正事項3)ことで、「駆動確認モード」における動作を限定するものである。 そうすると、本件補正発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 3 新規事項の追加の有無について 補正事項1〜3を含む本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0115】、【0186】〜【0188】、【0233】〜【0234】、【図16】、【図28】等の記載からみて、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 4 独立特許要件について 本件補正発明は、以下の「第4 本件補正発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、独立特許要件を満たすものであり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合する。 5 まとめ 上記1〜4により、本件補正は、適法にされたものと認められる。 第4 本件補正発明 前記第3のとおり、本件補正は適法にされたものであるから、本願請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記第3の1に(本件補正後の請求項1)として記載したとおりのものである。 第5 引用発明、引用発明の記載事項 1 引用文献1 原査定において引用文献1として引用された特開2008−54750号公報(平成20年3月13日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審合議体が付与した。以下同様。)。 (1)記載事項 ア 「【0009】 上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の遊技機は、画像を表示する演出表示手段(液晶表示装置21)と、遊技の進行を制御する遊技制御手段(主制御回路200のメインCPU201)と、遊技装置(大入賞装置15、始動入賞装置18、特別図柄表示器24)の演出動作の態様を示す遊技動作データが記憶された遊技動作データ記憶手段(メインROM202)と、遊技制御手段の制御に応じた遊技動作データを遊技動作データ記憶手段より抽出し、当該抽出した遊技動作データに対応する遊技装置に対して、当該遊技動作データに応じた演出動作を行わせる制御を行う遊技動作制御手段(主制御回路200のメインCPU201)と、所定の条件が成立したときに、当該所定の条件に対応する遊技動作データを遊技動作データ記憶手段から読み出す遊技動作データ読出手段(主制御回路200のメインCPU201)と、遊技動作データ読出手段により遊技動作データが読み出されたときに、当該遊技動作データに対応する遊技装置の正常な動作を示す確認用データを所定の記憶媒体(プログラムROM302)から読み出す確認用データ読出手段(サブCPU301)と、遊技動作データ読出手段により遊技動作データが読み出されたときに、当該読み出された遊技動作データに対応する遊技装置に対して、当該遊技動作データに応じた演出動作を行わせる制御を行う遊技動作テスト手段(主制御回路200のメインCPU201)と、遊技動作テスト手段により遊技装置の演出動作の制御が行われているときに、当該遊技装置が確認用データ読出手段により読み出された確認用データに応じた演出動作を行う様子を示す演出画像を演出表示手段に表示させる制御を行う対比表示制御手段(サブCPU301)とを備えたことを特徴とする。」 イ 「【0030】 図1および図2に示すように、パチンコ遊技機(遊技機)1は、遊技盤2(図2)が装着される本体枠3aがヒンジ3cを介して島設備に固定される外枠3bに回動可能に取り付けられ(すなわち、本体枠3aは、本体枠3aの一方端を回動支点として支持されて当該外枠3bに開閉可能に取り付けられる。)、これら本体枠3aおよび外枠3bで遊技機本体3が構成されている。そして、このような遊技機本体3の本体枠3aに対して、本体枠3a上部の左右に固定されたスピーカ6a,6b(図3)を保護するスピーカカバー60a,60bを備える装飾ユニット60、液晶表示装置(LCD)21、遊技盤2を視認可能に被うガラス扉9a、上皿部4、下皿部5および発射ハンドル7が取り付けられるようになっている。 (中略) 【0032】 遊技盤2(図2)は、レール6に包囲され、遊技球の転動流下が行われる遊技領域2aを有している。そして、その遊技領域2aには、多数の遊技くぎや風車などの障害物(図示せず)、一般入賞装置12、通過ゲート13、始動入賞装置18、大入賞装置15、アウト口16などの遊技装置が配置されている。」 ウ 「【0040】 大入賞装置15は、扉15aおよび遊技球の受け入れ口を有するいわゆるアタッカー式の開閉装置であって、扉15aが閉じて遊技球の入賞が困難となる閉鎖状態と、扉15aが開放して遊技球の入賞が容易となる開放状態との開閉動作が行われるようになっている。さらに、大入賞装置15の内部には、大入賞装置15に入賞した遊技球の通過が可能な通過領域が設けられている。」 エ 「【0048】 また、遊技機1の裏面には、テストボタン40(図3)が配置されている。但し、テストボタン40の位置は、遊技機1の裏面に限られず、他の位置に配置されていてもよい。また、テストボタン40は、遊技機1の制御系の制御が正確に行われるか否かを確認する検査(信頼性テスト)を実施するためのボタンであるため、遊技者により操作されがたい位置に配置されていることが望ましい。 【0049】 このテストボタン40は、後述する主制御回路200のメインCPU201(図3)に電気的に接続されており、そして、テストボタン40が押下されると、遊技モード変更信号が主制御回路200のメインCPU201に入力されるようになっている。 【0050】 なお、遊技モード変更信号とは、現在の遊技モードを変更するための信号である。本実施の形態において、メインCPU201は、通常の遊技が行われる通常モード中に当該信号の入力を受けた場合、遊技モードを、遊技装置(大入賞装置15、始動入賞装置18、特別図柄表示器24)の信頼性テストを実施可能なテストモードに移行させる制御を行い、一方、テストモード中に当該信号の入力を受けた場合、遊技モードを、通常モードに移行させる制御を行う。なお、メインCPU201によりテストモードに移行されると、当該メインCPU201からサブCPU301へとテストモードコマンドが送信され、これにより、液晶表示装置21にメンテナンス画面400(図15)が表示される。また、メインCPU201によりテストモードから通常モードに変更されると、当該メインCPU201からサブCPU301へとテストモード終了コマンドが送信され、これにより、テストモードに関連する表示(例えば、後述するメンテナンス画面400、テスト対象選択メニュー401、検査履歴表示画面402、始動入賞装置画像450等の表示)等が終了する。」 オ 「【0076】 また、遊技者に有利な大当り遊技状態とは、例えば後述する大入賞装置ソレノイド72Sが、大入賞装置15に対して、開放状態から閉鎖状態に変化するまでの一連の開閉動作(以下、大当り遊技状態中における大入賞装置15の一連の開閉動作のことを「ラウンド動作」という)を繰り返し行わせることで、通常遊技状態よりも多くの遊技球を入賞させやすくする遊技状態のことである。」 カ 「【0084】 主制御回路200には、予め設定されたプログラムに従ってパチンコ遊技機1の遊技の進行を制御するメインCPU(超小型演算処理装置)201、異常時や電源投入時に各種設定を初期値に戻すためのリセット信号を生成する初期リセット回路204、LED等の表示制御を行うランプ制御回路207、メインCPU201が動作する上で必要な各種データを記憶するメインRAM203が実装されている。 【0085】 そしてさらに主制御回路200には、メインCPU201が遊技機1の遊技動作を処理制御するためのプログラム、大当り遊技への移行に当選するか否かの抽選処理(以下、「大当り抽選処理」という)をする際に参照される大当り抽選テーブル、乱数抽選によって普通当り抽選をする際に参照される普通当り抽選テーブル、乱数抽選によって変動表示パターンコマンドを決定する際に参照される変動表示パターンコマンド決定テーブルおよびその他の演出を抽選する際に参照される各種確率テーブルを格納しているメインROM202が実装されている。 【0086】 また、メインROM202は、遊技装置(大入賞装置15、始動入賞装置18、特別図柄表示器24等)の演出動作の態様を示す遊技動作データが記憶される遊技動作データ記憶手段でもある。 【0087】 例えば、遊技動作データ記憶手段であるメインROM202は、大入賞装置15の開閉動作を行うための大入賞装置開閉動作データ、始動入賞装置18の開閉動作を行うための始動入賞装置開閉動作データ、特別図柄表示器24を点灯表示させるためのランプデータ等を、遊技動作データとして記憶している。」 キ 「【0101】 また、通常モードは、通常の遊技が可能である替わりに、信頼性テストを実施することができないようになっており、一方、テストモードは、信頼性テストを実施することができる替わりに、通常の遊技を行うことができないようになっている。」 ク 「【0116】 また、遊技動作制御手段であるメインCPU201は、遊技制御手段により大当り遊技状態の制御が行われた場合(すなわち、遊技状態が大当り遊技状態に移行した場合)、当該大当り遊技状態に対応するデータである大入賞装置開閉動作データをメインROM202から抽出し、当該抽出した大入賞装置開閉動作データに対応する遊技装置(大入賞装置15)に対して、当該大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作(大入賞装置15を開放状態としてから閉鎖状態に切り替えるまでの一連のラウンド動作)を所定回数(例えば、15回)行わせるために大入賞装置ソレノイド72Sを制御する。」 ケ 「【0118】 遊技動作データ読出手段は、所定の条件が成立したとき(選択ボタン42の押下に応じてテスト対象が選択されたとき)に、当該選択されたテスト対象に対応する遊技動作データをメインROM(遊技動作データ記憶手段)202から読み出す手段である。 【0119】 例えば、遊技動作データ読出手段は、電動チューリップ401aが選択された場合には、当該電動チューリップ401aに対応するデータである始動入賞装置開閉動作データをメインROM202より読み出し、そして、大入賞口401bが選択された場合には、当該電動チューリップ401aに対応するデータである大入賞装置開閉動作データをメインROM202より読み出す。また、LED401cが選択された場合には、当該LED401cに対応するデータであるランプデータをメインROM202より読み出す。 【0120】 遊技動作テスト手段は、遊技動作データ読出手段により遊技動作データが読み出されたときに、当該読み出された遊技動作データに対応する遊技装置に対して、当該遊技動作データに応じた演出動作を行わせる制御を行う手段である。 【0121】 例えば、始動入賞装置開閉動作データが読み出された場合には、可動部材ソレノイド71Sを駆動制御することにより、始動入賞装置18に対して、当該始動入賞装置開閉動作データに応じた開閉動作を行わせる。また、大入賞装置開閉動作データが読み出された場合には、大入賞装置ソレノイド72Sを駆動制御することにより、大入賞装置15に対して、当該大入賞装置開閉動作データに応じた開閉動作を行わせる。また、ランプデータが読み出された場合には、ランプ制御回路207を制御することにより、特別図柄表示器24に対して、当該ランプデータに応じた点灯表示を行わせる。 【0122】 また、本実施の形態においては、遊技動作テスト手段によって遊技装置の演出動作の制御が行われる場合には、当該遊技装置が正常に動作する様子が、後述する対比表示制御手段によって、演出画像として液晶表示装置21に表示されるようになっている。 【0123】 これによれば、特別な技術を有していなくとも、遊技動作データに応じて演出動作する遊技装置と、当該液晶表示装置21に表示される演出画像との演出の差違を点検するのみで、信頼性テストを行うことが可能となる。これにより、熟練していない作業者であっても、信頼性テストの時間を短縮させることができる。」 コ 「【0180】 また、後述するステップS126−5−41(図10)にて、大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作を大入賞装置15に対して行わせるための設定が行われた場合、遊技動作テスト手段であるメインCPU201は、当該設定に応じて、大入賞装置ソレノイド72Sを駆動制御する。」 サ 「【0252】 ステップS126−5−41において、遊技動作テスト手段であるメインCPU201は、ステップS126−5−4にて読み出された大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作を、大入賞装置15に対して行わせるための設定を行う。 【0253】 ここで、当該設定が行われることにより、ステップS150において、大入賞装置15が、上記大入賞装置開閉動作データに応じて開閉動作する。」 (2) 引用発明 上記(1)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「予め設定されたプログラムに従ってパチンコ遊技機1の遊技の進行を制御する遊技制御手段としてのメインCPU(超小型演算処理装置)201、異常時や電源投入時に各種設定を初期値に戻すためのリセット信号を生成する初期リセット回路204、LED等の表示制御を行うランプ制御回路207、メインCPU201が動作する上で必要な各種データを記憶するメインRAM203(【0009】、【0084】)、大入賞装置15の開閉動作を行うための大入賞装置開閉動作データを遊技動作データとして記憶しているメインROM202が、主制御回路200に実装され(【0084】、【0085】、【0087】)、 遊技機本体3を構成する本体枠3aに遊技盤2が装着され(【0030】)、遊技盤2は、その遊技領域2aには、大入賞装置15などの遊技装置が配置され(【0032】)、大入賞装置15は、扉15aおよび遊技球の受け入れ口を有するいわゆるアタッカー式の開閉装置であって、扉15aが閉じて遊技球の入賞が困難となる閉鎖状態と、扉15aが開放して遊技球の入賞が容易となる開放状態との開閉動作が行われるようになっており(【0040】)、 信頼性テストを実施するためのボタンとして配置されている(【0048】)テストボタン40が押下されると、遊技モード変更信号が主制御回路200のメインCPU201に入力されるようになっており(【0049】)、メインCPU201は、通常の遊技が行われる通常モード中に当該信号の入力を受けた場合、遊技モードを、遊技装置(大入賞装置15)の信頼性テストを実施可能なテストモードに移行させる制御を行い、一方、テストモード中に当該信号の入力を受けた場合、遊技モードを、通常モードに移行させる制御を行い(【0050】)、 通常モードは、通常の遊技が可能である替わりに、信頼性テストを実施することができないようになっており、一方、テストモードは、信頼性テストを実施することができる替わりに、通常の遊技を行うことができないようになっており(【0101】)、 メインCPU201は、遊技制御手段により大当り遊技状態の制御が行われた場合、当該大当り遊技状態に対応するデータである大入賞装置開閉動作データをメインROM202から抽出し、当該抽出した大入賞装置開閉動作データに対応する遊技装置(大入賞装置15)に対して、当該大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作(大入賞装置15を開放状態としてから閉鎖状態に切り替えるまでの一連のラウンド動作)を所定回数(例えば、15回)行わせるために大入賞装置ソレノイド72Sを制御し(【0116】)、 遊技動作テスト手段は、テスト対象に対応する遊技動作データをメインROM202から読み出す手段である遊技動作データ読出手段により遊技動作データが読み出されたときに、当該読み出された遊技動作データに対応する遊技装置に対して、当該遊技動作データに応じた演出動作を行わせる制御を行う手段であり(【0118】、【0120】)、遊技動作テスト手段によって遊技装置の演出動作の制御が行われる場合には、当該遊技装置が正常に動作する様子が、演出画像として液晶表示装置21に表示されるようになっており(【0122】)遊技動作データに応じて演出動作する遊技装置と、当該液晶表示装置21に表示される演出画像との演出の差違を点検するのみで、信頼性テストを行うことが可能となり(【0123】)、 大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作を大入賞装置15に対して行わせるための設定が行われた場合、遊技動作テスト手段であるメインCPU201は、当該設定に応じて、大入賞装置ソレノイド72Sを駆動制御し(【0180】)、遊技動作テスト手段であるメインCPU201は、読み出された大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作を、大入賞装置15に対して行わせるための設定を行い(【0252】)、ここで、当該設定が行われることにより、大入賞装置15が、上記大入賞装置開閉動作データに応じて開閉動作する(【0253】) パチンコ遊技機(遊技機)1(【0009】)。」 第6 対比・判断 1 本件補正発明についての対比・判断 (1)本件補正発明と引用発明の対比 ア 特定事項Aについて 引用発明の「遊技の進行を制御する遊技制御手段(主制御回路200のメインCPU201)」は、本件補正発明の「遊技の進行を制御可能な主制御基板」と、「遊技の進行を制御」できる点で共通する。 また、引用発明の「主制御回路200」には、「予め設定されたプログラムに従ってパチンコ遊技機1の遊技の進行を制御するメインCPU(超小型演算処理装置)201、異常時や電源投入時に各種設定を初期値に戻すためのリセット信号を生成する初期リセット回路204、LED等の表示制御を行うランプ制御回路207、メインCPU201が動作する上で必要な各種データを記憶するメインRAM203」、「大入賞装置15の開閉動作を行うための大入賞装置開閉動作データを遊技動作データとして記憶しているメインROM202」が「実装され」るところ、CPU、RAM、ROM又は回路は、基板に実装されることが技術常識であるから、引用発明の「遊技の進行を制御する遊技制御手段(主制御回路200のメインCPU201)」、「大入賞装置15の開閉動作を行うための大入賞装置開閉動作データを遊技動作データとして記憶しているメインROM202」を実装する「主制御回路200」は、本件補正発明の「遊技の進行を制御可能な主制御基板」に相当する。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項A(「遊技の進行を制御可能な主制御基板と、」)に相当する構成を備える。 イ 特定事項Bについて 引用発明の「大入賞装置15」の「遊技球の受け入れ口」、「遊技球」、「大入賞装置15」の「扉15a」、「パチンコ遊技機(遊技機)1」は、それぞれ、本件補正発明の「特定入賞口」、「遊技球」、「特定入賞口開閉部材」、「遊技機」に相当する。 また、引用発明において「扉15aが閉じて遊技球の入賞が困難となる閉鎖状態と、扉15aが開放して遊技球の入賞が容易となる開放状態との開閉動作が行われる」ところ、「入賞」は、「遊技球の受け入れ口」への「遊技球」の入球を意味するから、引用発明の「扉15aが閉じて遊技球の入賞が困難となる閉鎖状態と、扉15aが開放して遊技球の入賞が容易となる開放状態との開閉動作」は、本件補正発明の「特定入賞口への遊技球の入球し易さが変化する」「開閉動作」に相当する。 そして、引用発明の「メインCPU201」は、「当該抽出した大入賞装置開閉動作データに対応する遊技装置(大入賞装置15)に対して、当該大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作(大入賞装置15を開放状態としてから閉鎖状態に切り替えるまでの一連のラウンド動作)」を「行わせるために大入賞装置ソレノイド72Sを制御」をするから、引用発明において、「メインCPU201」により「開閉動作」が制御されると言え、上記アにおける検討(主制御基板)を踏まえると、引用発明の「メインCPU201」により「開閉動作」が「制御」されることは、本件補正発明の「主制御基板により開閉動作が制御される」ことに相当する。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項B(「特定入賞口への遊技球の入球し易さが変化するように前記主制御基板により開閉動作が制御される特定入賞口開閉部材と、を備える遊技機において、」)に相当する構成を備える。 ウ 特定事項Cについて 引用発明の「テストボタン40」は、「押下」されるものであるから、本件補正発明の「操作可能であって当該主制御基板に記憶されている遊技の進行に係る情報を消去可能なRAMクリア操作手段」と、「操作可能」な「操作手段」の点で共通する。 エ 特定事項Dについて 引用発明の「通常の遊技が可能である」「通常モード」は、本件補正発明の「遊技の進行を制御可能な遊技モード」に相当する。 また、引用発明の「遊技装置(大入賞装置15)の信頼性テスト」「を実施することができる替わりに、通常の遊技を行うことができない」「テストモード」は、本件補正発明の「遊技の進行を制御不能にしつつ前記特定入賞口開閉部材が複数回開閉動作することで当該特定入賞口開閉部材の駆動を確認可能な駆動確認モード」と、「遊技の進行を制御不能にしつつ」遊技装置の動作を「確認可能な駆動確認モード」である点で共通である。 さらに、引用発明において、「遊技動作テスト手段によって遊技装置の演出動作の制御が行われ」、「演出の差違を点検するのみで、信頼性テストを行うことが可能」とされているところ、「遊技動作テスト手段であるメインCPU201は、読み出された大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作を、大入賞装置15に対して行わせるための設定」を行い、「大入賞装置15が、上記大入賞装置開閉動作データに応じて開閉動作」するときに、「演出動作」として、「大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作(大入賞装置15を開放状態としてから閉鎖状態に切り替えるまでの一連のラウンド動作)を所定回数(例えば、15回)行わせる」と、「大入賞装置15」の「扉15a」は、複数回開閉動作をするものになるといえる。 そして、「複数回開閉動作をする」「大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作」「を点検する」ときは、本件補正発明の「特定入賞口開閉部材が複数回開閉動作することで当該特定入賞口開閉部材の駆動を確認可能な駆動確認モード」に相当する。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項D(「遊技の進行を制御可能な遊技モード、又は遊技の進行を制御不能にしつつ前記特定入賞口開閉部材が複数回開閉動作することで当該特定入賞口開閉部材の駆動を確認可能な駆動確認モードに設定可能であり、」)に相当する構成を備える。 オ 特定事項Eについて 引用発明において、「遊技モードを、通常モードに移行させる」とき、「遊技モード」は終了することが明らかである。 そして、引用発明の、「テストボタン40が押下されると、遊技モード変更信号が主制御回路200のメインCPU201に入力され」、「メインCPU201は、通常の遊技が行われる通常モード中に当該信号の入力を受けた場合、遊技モードを、遊技装置(大入賞装置15)の信頼性テストを実施可能なテストモードに移行させる制御を行い、一方、テストモード中に当該信号の入力を受けた場合、遊技モードを、通常モードに移行させる制御を行」うことは、上記ウにおける検討(操作手段)を踏まえると、本件補正発明の「前記RAMクリア操作手段が操作されると、前記駆動確認モードに設定可能であり、前記駆動確認モードに設定されているときに前記RAMクリア操作手段が操作されると、当該駆動確認モードを終了可能」であることと、「操作手段が操作されると、前記駆動確認モードに設定可能であり、前記駆動確認モードに設定されているときに」「操作手段が操作されると、当該駆動確認モードを終了可能」である点で共通する。 カ 特定事項Fについて 引用発明において、「通常の遊技が行われる通常モード中に当該信号の入力を受け」「テストモードに移行」してから、「テストモード中に当該信号の入力を受け」「通常モードに移行させる」までは、本件補正発明の「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで」に相当する。 また、上記エにおいて検討したように、引用発明において、「複数回開閉動作をする」「大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作」「を点検する」ところ、これは、「テストモードに移行」してから、「通常モードに移行させる」間になされるから、このときの、引用発明における「複数回開閉動作をする」「大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作」と、本件補正発明の「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す」は、「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了する」間に、「開閉動作を繰返す」点で共通する。 キ 特定事項Gについて 上記イで述べたように、引用発明の「パチンコ遊技機(遊技機)1」は、本件補正発明の特定事項Gの「遊技機」に相当する。 ク 上記ア〜キからみて、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> A 遊技の進行を制御可能な主制御基板と、 B 特定入賞口への遊技球の入球し易さが変化するように前記主制御基板により開閉動作が制御される特定入賞口開閉部材と、を備える遊技機において、 C’前記主制御基板は、 操作可能である操作手段を備え、 D 遊技の進行を制御可能な遊技モード、又は遊技の進行を制御不能にしつつ前記特定入賞口開閉部材が複数回開閉動作することで当該特定入賞口開閉部材の駆動を確認可能な駆動確認モードに設定可能であり、 E’ 前記操作手段が操作されると、前記駆動確認モードに設定可能であり、 前記駆動確認モードに設定されているときに操作手段が操作されると、当該駆動確認モードを終了可能であり、 F’ 前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了する間に、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す G 遊技機 <相違点1>[特定事項C、Eについて] 「操作手段」について、本件補正発明は、「主制御基板」に備わる、「当該主制御基板に記憶されている遊技の進行に係る情報を消去可能なRAMクリア操作手段」であるのに対し、引用発明は、そのような「RAMクリア操作手段」ではない点。 <相違点2>[特定事項F]について 本件補正発明は、「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す」のに対し、引用発明は、「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了する間に、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す」といえるものの、本件補正発明のように、「駆動確認モードが終了するまで」「開閉動作を繰返す」とはされていない点。 (2) 検討 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 引用発明において、「遊技動作テスト手段であるメインCPU201は、読み出された大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作を、大入賞装置15に対して行わせる」ところ、「大入賞装置開閉動作データに応じた演出動作」とは異なる、「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す」ことは、引用発明には記載されていない。 また、引用発明において、「遊技動作データに応じて演出動作する遊技装置と、当該液晶表示装置21に表示される演出画像との演出の差違を点検するのみで、信頼性テストを行うことが可能」であるところ、「演出動作」とは異なる、「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す」動作とすることは、演出の差違を点検することに反するから、「前記駆動確認モードが開始されてから前記駆動確認モードが終了するまで、前記特定入賞口開閉部材の開閉動作を繰返す」ことが、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、本件補正発明は、上記相違点2に係る特定により、「遊技場の従業員がテストモードに設定されていることを忘れた場合に、テストモードに設定されていることに気付き易くすることが可能である」(発明の詳細な説明【0233】から摘記)という効果を奏するものであると言える。 したがって、相違点1について判断するまでもなく、本件補正発明は、当業者であっても引用発明の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとは言えない。 第7 原査定について 前記第6で説示したとおり、本件補正発明は、原査定において引用された引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとは言えないから、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2024-05-21 |
出願番号 | P2020-203488 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A63F)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 俊久 |
特許庁審判官 |
北川 創 三橋 健二 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 弁理士法人コスモス国際特許商標事務所 |