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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1411208 |
総通号数 | 30 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2024-01-15 |
確定日 | 2024-05-16 |
事件の表示 | 特願2021−50614「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和4年10月6日出願公開、特開2022−148796〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和3年3月24日に出願した特許出願(特願2021−50614)であって、本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和 5年 3月29日 :上申書、手続補正書の提出 6月15日付け:拒絶理由通知書 8月24日 :意見書、手続補正書の提出 10月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 同月17日 :原査定の謄本の送達 令和 6年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年1月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月15日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 令和6年1月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおり補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審合議体が付した。また、符号A等は、分説するために当審合議体が付した。以下、A等を付した事項を「特定事項A」等という。)。 「【請求項1】 A 時刻を調整可能な時刻調整画面が表示可能であり、 B 遊技機で発生し得る或る事象を検知可能であり、 C 或る事象に関する履歴を或る事象が検知された順番で表示可能な履歴画面が表示手段に表示可能であり、 D 履歴画面には或る事象に関する時刻が表示可能であり、 E 履歴画面に表示可能な或る事象には所定の異常を含み、 F 時刻調整画面にて変更操作がされると時刻が変更可能であり、時刻調整画面にて決定操作がされると変更操作により変更された時刻に決定可能であり、 G 履歴画面が表示されていない状況であり、且つ時刻調整画面で或る時刻に変更操作がされてから決定操作がされた後のタイミングで前記所定の異常を検知し、その後、時刻調整画面で当該或る時刻よりも前の時刻に変更操作がされてから決定操作がされ、その後、当該或る時刻よりも前の時刻となっているタイミングで特定の事象を検知し、その後、履歴画面が表示されたときは、当該特定の事象に関する履歴が当該所定の異常に関する履歴よりも後に検知されたことを示す順番となるように履歴画面が表示手段に表示可能である H 遊技機。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の令和5年8月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 A 時刻を調整可能な時刻調整画面が表示可能であり、 B 遊技機で発生し得る或る事象を検知可能であり、 C 或る事象に関する履歴を或る事象が検知された順番で表示可能な履歴画面が表示手段に表示可能であり、 D 履歴画面には或る事象に関する時刻が表示可能であり、 E’ 履歴画面に表示可能な或る事象には所定の事象を含み、 F 時刻調整画面にて変更操作がされると時刻が変更可能であり、時刻調整画面にて決定操作がされると変更操作により変更された時刻に決定可能であり、 G’ 履歴画面が表示されていない状況であり、且つ時刻調整画面で或る時刻に変更操作がされてから決定操作がされた後のタイミングで前記所定の事象を検知し、その後、時刻調整画面で当該或る時刻よりも前の時刻に変更操作がされてから決定操作がされ、その後、当該或る時刻よりも前の時刻となっているタイミングで特定の事象を検知し、その後、履歴画面が表示されたときは、当該特定の事象に関する履歴が当該所定の事象に関する履歴よりも後に検知されたことを示す順番となるように履歴画面が表示手段に表示可能である H 遊技機。」 2 補正の適否 (1) 本件補正 本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正は、「履歴画面に表示可能な或る事象」に含まれる「所定の事象」について、本件補正前に「事象」としていたのを、本件補正後に「異常」とするとともに、これに合わせて、「前記所定の事象」及び「当該所定の事象」についても、本件補正前に「事象」としていたのを、本件補正後に「異常」とすることによって、「所定の事象」の種類を「所定の異常」に限定するものである。 また、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 (2) 補正目的 そうすると、本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正は、前記(1)のとおり、補正前に記載の発明特定事項に限定を加えるものであり、また、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 (3) 新規事項 本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0644】〜【0645】、【0652】、【0673】〜【0676】等の記載からみて、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。 3 本件補正発明の独立特許要件についての検討 前記2(2)のとおり、本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1) 本件補正発明の認定 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記1(1)に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献について 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2020−99381号公報(令和2年7月2日出願公開。以下「引用文献」という。)には、「遊技機」(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている(下線は当審合議体が付した。以下同様。)。 ア 記載事項 (ア) 「【0015】 図1は、この実施の形態に係るパチンコ遊技機1の正面図である。パチンコ遊技機1は、遊技盤2と、遊技機用枠3とを備えている。その他、パチンコ遊技機1は、遊技機用枠3を回動可能に支持する外枠などを備えている。遊技盤2は、遊技盤面を構成するゲージ盤である。遊技機用枠3は、遊技盤2を固定する台枠である。遊技盤2には、ガイドレールなどによって囲まれた遊技領域が形成されている。発射装置から発射された遊技球(遊技媒体)は、発射通路を通過して、遊技領域に打ち込まれる。遊技機用枠3には、ガラス窓を有するガラス扉枠が回動可能に設けられている。 【0016】 遊技盤2の所定位置には、第1特別図柄表示装置4A、第2特別図柄表示装置4B、画像表示装置5、普通入賞球装置6A、普通可変入賞球装置6B、特別可変入賞球装置7、普通図柄表示器20、第1保留表示器25A、第2保留表示器25B、普図保留表示器25C、通過ゲート41などが設けられている。その他、遊技領域における遊技盤面には、風車や多数の障害釘、一般入賞口、アウト口などが設けられていればよい。遊技領域の周辺部には遊技効果ランプ9が設けられている。遊技機用枠3の左右上部位置にはスピーカ8L、8Rが設けられている。 【0017】 遊技機用枠3の右下部位置には、打球操作ハンドル(操作ノブ)が設けられている。打球操作ハンドルは、遊技球を遊技領域に向けて発射するために遊技者等によって操作され、その操作量(回転量)に応じて遊技球の弾発力が調整される。遊技領域の下方における遊技機用枠3の所定位置には、遊技球を保持(貯留)する上皿(打球供給皿)と、上皿からの余剰球などを保持(貯留)する下皿(余剰球貯留皿)が設けられている。下皿を形成する部材にはスティックコントローラ31Aが取り付けられ、上皿を形成する部材にはプッシュボタン31Bが設けられている。 (中略) 【0020】 図2は、各種基板や周辺装置などの構成例を示すブロック図である。パチンコ遊技機1には、例えば図2に示すような主基板11、演出制御基板12、ランプ出力基板13、バックアップメモリ基板14、演出データメモリ基板16といった、各種基板が搭載されている。その他、中継基板15、演出制御用中継基板17、音声出力基板18、ドライバ基板19なども搭載されている。さらに、例えば電源基板、払出制御基板、情報端子基板、発射制御基板、インタフェース基板、タッチセンサ基板などといった、各種の基板が搭載されてもよい。各種制御基板は、導体パターンが形成されて電気部品が実装されるプリント配線板などの電子回路基板だけではなく、電子回路基板に電気部品が実装(搭載)されて特定の電気的機能を実現するように構成された電子回路実装基板を含む概念である。 (中略) 【0026】 主基板11には、遊技盤2の前面を開閉可能に覆うガラス扉枠の開放を検知する扉開放センサ90といった、各種のセンサが接続されており、こうしたセンサから出力される検知信号に基づいて、各種の異常(エラー)の発生を判定する機能も備えている。主基板11のスイッチ回路110には、電源基板からのリセット信号、電源断信号、クリア信号が取り込まれ、遊技制御用マイクロコンピュータ100に伝送される。主基板11の背面中央には、表示モニタ29が配置され、表示モニタ29の側方には表示切替スイッチ30が配置されている。表示モニタ29は、例えば7セグメントのLED表示装置を用いて、構成されていればよい。表示モニタ29および表示切替スイッチ30は、遊技機用枠3を開放した状態で遊技盤2の裏面側を視認した場合に、主基板11を視認する際の正面に配置されている。 (中略) 【0033】 主基板11から演出制御基板12に向けて伝送される制御信号は、中継基板15によって中継される。中継基板15を介して主基板11から演出制御基板12に対して伝送される制御コマンドは、例えば電気信号として送受信される演出制御コマンドである。演出制御コマンドには、表示制御コマンドが含まれていてもよい。表示制御コマンドは、画像表示装置5における画像表示動作を制御するために用いられる。演出制御コマンドには、音声制御コマンドが含まれていてもよい。音声制御コマンドは、スピーカ8L、8Rからの音声出力を制御するために用いられる。演出制御コマンドは、点灯制御コマンドを含んでいてもよい。点灯制御コマンドは、遊技効果ランプ9や演出用LED61の点灯動作などを制御するために用いられる。可動制御コマンドは、演出用モータ60の駆動力による演出用可動部材の動作制御などに用いられる。これらのコマンドは、それぞれが別個に演出制御コマンドを構成してもよいし、一部または全部の組合せが演出制御コマンドを構成してもよい。 (中略) 【0037】 図3は、演出制御基板12に搭載された各種回路の構成例を示している。演出制御基板12に搭載された演出制御用マイクロコンピュータ120、外部ROM121、外部RAM122といった電子部品のうち、一部または全部の部品は、コネクタソケットに対してコネクタピンを挿抜することなどにより着脱可能に取り付けられてもよく、他の部品は、半田付けなどにより実装可能に取り付けられてもよい。演出制御基板12には、これらの電子部品とともに、コネクタ150〜156が実装されている。演出制御用マイクロコンピュータ120は、CPU131、内部ROM132、内部RAM133、ウォッチドッグタイマ134、タイマ回路135、割込コントローラ136、シリアル通信回路137、クロック回路138、VDP(Video Display Processor)140、音声処理回路141、ランプ制御回路142、モータ制御回路143といった、複数の電子部品を含んで構成されている。演出制御用マイクロコンピュータ120は、これらの電子部品を統合化した演出制御用のマイクロプロセッサであればよい。CPU131は、演出制御用のコンピュータプログラムに従い制御処理を実行する。内部ROM132は、例えばファームウェアといった、CPU131によって実行される制御処理の基本プログラムや、演出制御用マイクロコンピュータ120に固有のシステム設定データなどを固定的に記憶する。内部RAM133は、CPU131のワークエリアを提供する。ウォッチドッグタイマ134は、内蔵レジスタの設定に基づいてカウントアップまたはカウントダウンするカウンタ回路を有し、計測時間が監視時間(タイムアウト時間)を経過してタイムアウトが発生したときに、時間経過信号となるタイムアウト信号を発生させる。CPU131は、ウォッチドッグタイマ134を定期的にクリアしリスタートさせる。何らかの障害などによりCPU131の処理に遅延が生じて、ウオッチドッグタイマ134をクリアできずに計測時間が監視時間を経過したときには、タイムアウト信号が発生してCPU131による処理がリセットされる。 (中略) 【0057】 図5は、主基板11において、遊技制御用マイクロコンピュータ100のCPU103が実行する遊技制御メイン処理の一例を示すフローチャートである。遊技制御メイン処理では、割込禁止に設定する(ステップS1)。続いて、必要な初期設定を行う(ステップS2)。初期設定には、スタックポインタの設定、内蔵デバイス(CTC(カウンタ/タイマ回路)、パラレル入出力ポート等)のレジスタ設定、RAM102をアクセス可能状態にする設定等が含まれる。 (中略) 【0060】 ステップS5の設定確認処理では、予め定められた設定確認条件が成立したか否かを判定する。例えば、設定確認条件は、ステップS5の設定確認処理が実行される電力供給の開始時にて、扉開放センサ90からの出力信号がオンであること、および、設定キー51がオンであることが、ともに満たされた場合に成立する。扉開放センサ90からの出力信号がオフである場合や、設定キー51がオフである場合には、設定確認条件が成立しなかったと判定し、設定確認処理を終了する。扉開放センサ90からの出力信号がオンである場合であって、なおかつ設定キー51がオンである場合には、設定確認条件が成立したと判定する。なお、ステップS5の設定確認処理が実行されるのは、ステップS3において、クリアスイッチがオフであることを含めた復旧条件が成立した場合である。したがって、設定確認条件が成立し得るのは、クリアスイッチがオフである場合となるので、クリアスイッチがオフであることも、設定確認条件に含めることができる。ステップS5の設定確認処理では、設定確認条件が成立した場合に、パチンコ遊技機1において設定されている設定値を確認可能な設定確認状態となり、主基板11から演出制御基板12に対して、設定確認開始コマンドが送信される。パチンコ遊技機1が設定確認状態であるときには、パチンコ遊技機1における遊技の進行を停止させる遊技停止状態としてもよい。遊技停止状態であるときには、打球操作ハンドルの操作による遊技球の発射、各種スイッチによる遊技球の検出などが停止され、また、第1特別図柄表示器4Aや第2特別図柄表示器4B、普通図柄表示器20において、はずれ図柄などを停止表示したり、はずれ図柄とは異なる遊技停止状態に対応した表示が行われたりするように制御すればよい。設定確認状態においては、パチンコ遊技機1にて設定されている設定値を表示モニタ29の表示により確認することが可能となっている。設定確認状態を終了するときには、これに伴う遊技停止状態が終了し、主基板11から演出制御基板12に対して、設定確認終了コマンドが送信される。 (中略) 【0065】 CPU103が実行する遊技制御用タイマ割込処理は、スイッチ処理、メイン側エラー処理、情報出力処理、遊技用乱数更新処理、特別図柄プロセス処理、普通図柄プロセス処理、コマンド制御処理を含んでいればよい。スイッチ処理は、CPU103がスイッチ回路110を介して各種スイッチから受信する検出信号の有無を判定する処理である。メイン側エラー処理は、パチンコ遊技機1の異常診断を行い、診断結果に応じて必要ならば警告を発生可能とする処理である。情報出力処理は、例えばパチンコ遊技機1の外部に設置されたホール管理用コンピュータに供給される大当り情報(大当りの発生回数等を示す情報)、始動情報(始動入賞の回数等を示す情報)、確率変動情報(確変状態となった回数等を示す情報)などのデータを出力可能とする処理である。遊技用乱数更新処理は、主基板11の側で用いられる遊技用乱数の少なくとも一部をソフトウェアにより更新可能とする処理である。特別図柄プロセス処理は、特図ゲームの実行および保留の管理や、大当り遊技状態や小当り遊技状態の制御、遊技状態の制御などを実現可能とする処理である。普通図柄プロセス処理は、ゲートスイッチ21からの検出信号に基づく(通過ゲート41に遊技球が通過したことに基づく)普図ゲームの実行および保留の管理や、「普図当り」に基づく可変入賞球装置6Bの開放制御などを実現可能とする処理である。コマンド制御処理は、送信設定された演出制御コマンドを演出制御基板12などのサブ側の制御基板に対して伝送可能とする処理である。」 (イ) 「【0118】 図14および図15は、メンテナンス履歴画面を表示する具体例を示している。パチンコ遊技機1への電力供給が開始されたときに、遊技制御メイン処理のステップS5にて設定確認処理が実行され、設定確認条件が成立すると、主基板11から演出制御基板12に対して設定確認開始コマンドが送信される。この設定確認開始コマンドを受信すると、演出制御用マイクロコンピュータ120のCPU131は、例えば演出制御用タイマ割込処理のステップS78にてメンテナンスモード処理が実行されたときに、図14(A)に示すような設定確認中表示を行う。設定確認中表示は、例えば画像表示装置5において「設定確認中です」などの文字表示を行う。設定確認中表示には、画像表示装置5において「プッシュボタン押下でメンテナンスモードに移行します」などの文字表示が含まれている。このように、設定確認中表示では、メンテナンスモードに移行するための操作を促す表示が行われる。このとき、遊技場の係員や製造業者の担当者がプッシュボタン31Bを押下する動作の検出があると、画像表示装置5では、図14(B)に示すようなメンテナンスモードメニュー画面が表示され、メンテナンスモードに移行する。メンテナンスモードメニュー画面には、「メンテナンス履歴」、「設定変更/確認履歴」、および「現在時刻設定」の選択肢が表示されているとともに、現在時刻が表示されている。 【0119】 メンテナンスモードメニュー画面において、「メンテナンス履歴」の選択肢012IW106を選択すると、画像表示装置5では、図14(C)に示すようなメンテナンス履歴画面の表示に切り替わる。メンテナンス履歴画面では、日時とログ内容とが対応付けて表示され、最新のログ情報が上位となるように順に表示される。一例として、VDP140にて内部状態の異常が発生したことを示すVDPエラー、第1大入賞口や第2大入賞口などの入賞口への不正入賞を検出したことを示す不正入賞エラー、カウントスイッチ23など各種スイッチの異常を検出したことを示すスイッチ異常エラー、賞球異常を検出したことを示す賞球異常エラー、異常磁気を検出したことを示す磁石エラーの各ログ情報、さらには、確変不成立を検出したことを示すログ情報が表示される。メンテナンス履歴画面が複数ページある場合には、次のページの選択操作を行うと、図14(D)に示すようなメンテナンス履歴画面の2ページ目に移行する。この場合には、設定変更の開始や設定変更の終了のログ情報、電断日時や電源投入日時のログ情報、さらには、左打ち報知や満タン報知のログ情報が表示される。さらに次のページがある場合には、次のページの選択操作を行うと、図15(E)に示すようなメンテナンス履歴画面の3ページ目に移行する。このときには、設定確認の開始や設定確認の終了のログ情報、設定確認中のメンテナンスモード中に現在時刻設定が行われた旨のログ情報、初期化処理によるRAMクリアが実行されたことを示すログ情報などが表示される。さらに次のページの選択操作を行うと、図15(F)に示すようなメンテナンス履歴画面の4ページ目に移行する。ここでは、パチンコ遊技機1への電源投入時に何らかのRAM異常が発生したことを示すRWM異常エラーのログ情報、それより後の日時に対応した電断日時や電源投入日時のログ情報が表示される。これらのログ情報により、RWM異常エラーが発生したことから、遊技場の係員が一旦はパチンコ遊技機1の電力供給を停止した後にクリアスイッチをオンしながら電源を再投入して、初期化処理によるRAMクリアが行われたことを、事後的に確認できる。また、CPU131において例外事象が発生したことを示すCPU例外事象のログ情報、それより後の日時に対応した電断日時や電源投入日時のログ情報が表示される。これらのログ情報により、CPU例外事象が発生したことから、遊技場の係員がパチンコ遊技機1の電力供給を停止したが、次の日に電源を投入したときには、CPU例外事象が発生しなくなったことを、事後的に確認できる。 【0120】 なお、図15(E)に示すようなメンテナンス履歴画面の3ページ目では、現在時刻設定が行われた旨のログ情報として、設定確認が開始された旨のログ情報よりも、早い時刻を示すログ情報が表示されている。例えば設定確認が開始されたのが2018/03/21(水)の09:36:28であるのに対して、現在時刻を設定したのが2018/03/21(水)の09:36:16とされている。このように、現在時刻設定の前後で日時の不整合が生じるのは、現在時刻設定が行われると、設定後の日時情報を読み出してログ情報が記録されるためである。この例では、ログ情報が発生した順にログ領域にログ情報が記録され、現在時刻設定の前後で日時が整合しなくなる場合であっても、ログ情報が発生した順にログ情報が表示される。 (中略) 【0122】 メンテナンス履歴画面にて表示可能なログ情報は、バックアップデータに示されるログ情報の全部であってもよいし、バックアップデータに示されるログ情報の一部であってもよい。例えば、メンテナンス履歴画面では、CPU131の例外事象といった、制御装置の内部状態に応じて成立可能な事象の発生条件に対応するログ情報を表示可能である。また、メンテナンス履歴画面では、VDP140のエラー割込要求といった、処理装置の内部状態に応じて成立可能な事象の発生条件に対応するログ情報を表示可能である。メンテナンス履歴画面では、演出制御中バックアップ処理におけるエラー発生時、時刻変更時、電源再投入時の判定といった、CPU131による処理結果に応じて成立可能な特定事象の発生条件に対応するログ情報を表示可能である。その一方で、メンテナンス履歴画面では、演出制御中バックアップ処理における遊技者履歴データのデータ更新時、節電設定時、名称設定時の判定といった、特定事象以外の事象の発生条件に対応するログ情報を表示しない。このように、バックアップデータとして記憶されるログ情報は、メンテナンス履歴画面にて表示されないログ情報を含んでいてもよい。あるいは、通常のメンテナンス履歴画面では表示されないが、特別なメンテナンス履歴画面では表示可能なログ情報を設けてもよい。特別なメンテナンス画面は、例えばスティックコントローラ31Aやプッシュボタン31Bに対する所定操作となる動作の検出結果といった、任意の検出結果に応じて表示可能であればよい。この場合に、スティックコントローラ31Aやプッシュボタン31Bに対する操作手順は、遊技場の係員には通知されず、パチンコ遊技機1の製造業者における担当者が認識可能なものであればよい。検出結果に限定されず、任意の制御や処理に応じて、特別なメンテナンス履歴画面を表示可能であればよい。このように、複数種類のログ情報のうち特定種類のログ情報という範囲では、メンテナンス履歴画面に表示されないという限界としての制限が設けられてもよい。特定種類以外のログ情報という範囲では、メンテナンス履歴画面に表示可能であればよい。あるいは、複数種類のログ情報のうち特定種類のログ情報という範囲では、特別なメンテナンス履歴画面にのみ表示可能となり通常のメンテナンス履歴画面に表示されないという限界としての制限が設けられてもよい。 【0123】 図16は、メンテナンスモード中に設定変更/確認履歴の選択操作が行われた場合の具体例を示している。図16(A)に示すような設定確認中表示が行われているときに、遊技場の係員や製造業者の担当者によるプッシュボタン31Bを押下する動作の検出に応じて、図16(B)に示すようなメンテナンスモードメニュー画面が表示される。そして、「設定変更/確認履歴」の選択肢012IW107が選択操作される。この場合に、画像表示装置5では、図16(C)に示すような設定変更/確認履歴画面の表示に切り替わる。設定変更/確認履歴画面では、日時と、設定変更であるか設定確認であるかと、変更後の設定値または確認した設定値とが対応付けて表示され、最新のログ情報が上位となるように順に表示される。なお、メンテナンスモードメニュー画面の表示中に「現在時刻設定」の選択肢が選択操作された場合には、画像表示装置5において現在時刻設定画面の表示に切り替わる。現在時刻設定画面では、スティックコントローラ31Aの左右の傾倒操作により年、月、日、曜日、時、分、または秒の項目が選択され、スティックコントローラ31Aの前後の傾倒操作により項目毎の数字が選択される。現在時刻設定画面が表示された後に、遊技場の係員や製造業者の担当者がプッシュボタン31Bを押下すると、現在表示中の日時に現在の日時が設定される。」 (ウ) 「 」 (エ) 「 」 (オ) 「 」 イ 引用発明 前記アの記載事項から、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「パチンコ遊技機1には(【0015】)、画像表示装置5が設けられ(【0016】)、スティックコントローラ31A、プッシュボタン31Bが設けられ(【0017】)、 パチンコ遊技機1には、主基板11、演出制御基板12が搭載され(【0020】)、演出制御基板12に搭載された演出制御用マイクロコンピュータ120はVDP140を含み(【0037】)、主基板11から演出制御基板12に対しては、制御コマンドが伝送され(【0033】)、 主基板11において実行する遊技制御メイン処理にて、設定確認処理が実行され、設定確認条件が成立すると、主基板11から演出制御基板12に対して設定確認開始コマンドが送信され、この設定確認開始コマンドを受信すると、メンテナンスモードに移行するための操作を促す設定確認中表示を画像表示装置5において行い、プッシュボタン31Bを押下する動作の検出があると、画像表示装置5ではメンテナンスモードメニュー画面が表示されてメンテナンスモードに移行し、メンテナンスモードメニュー画面には、「メンテナンス履歴」、「設定変更/確認履歴」、および「現在時刻設定」の選択肢が表示され(【0057】、【0118】)、 メンテナンスモードメニュー画面において、「メンテナンス履歴」の選択肢を選択すると、メンテナンス履歴画面の表示に切り替わり、メンテナンス履歴画面では、日時とログ内容とを対応付けて、VDP140にて内部状態の異常が発生したことを示すVDPエラー、各種スイッチの異常を検出したことを示すスイッチ異常エラー、電断や電源投入、満タン報知、設定確認の開始や設定確認の終了、設定確認中のメンテナンスモード中に現在時刻設定が行われた旨のログ情報などが、最新のログ情報が上位となるように順に表示され(【0119】)、 メンテナンスモードメニュー画面の表示中に「現在時刻設定」の選択肢が選択操作された場合には、画像表示装置5において現在時刻設定画面の表示に切り替わり、現在時刻設定画面では、スティックコントローラ31Aの左右の傾倒操作により年、月、日、曜日、時、分、または秒の項目が選択され、スティックコントローラ31Aの前後の傾倒操作により項目毎の数字が選択され、現在時刻設定画面が表示された後にプッシュボタン31Bを押下すると、現在表示中の日時に現在の日時が設定され(【0123】)、 メンテナンス履歴画面では、ログ情報が発生した順にログ領域にログ情報が記録され、現在時刻設定が行われると、設定後の日時情報を読み出してログ情報が記録されるために、現在時刻設定の前後で日時が整合しなくなる場合であっても、ログ情報が発生した順にログ情報が表示される(【0120】) パチンコ遊技機1(【0015】)。」 (3) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 特定事項A及び特定事項Fについて 引用発明において、「画像表示装置5」に「表示され」る「現在時刻設定画面」は、当該画面で、「スティックコントローラ31Aの左右の傾倒操作により年、月、日、曜日、時、分、または秒の項目が選択され、スティックコントローラ31Aの前後の傾倒操作により項目毎の数字が選択され、現在時刻設定画面が表示された後にプッシュボタン31Bを押下すると、現在表示中の日時に現在の日時が設定され」るものであるから、本件補正発明の特定事項Aの「時刻を調整可能な時刻調整画面」に相当する。 そして、引用発明における、「現在時刻設定画面」(時刻調整画面)で「スティックコントローラ31Aの左右の傾倒操作により年、月、日、曜日、時、分、または秒の項目が選択され、スティックコントローラ31Aの前後の傾倒操作により項目毎の数字が選択され」ること、「現在時刻設定画面」(時刻調整画面)で「現在時刻設定画面が表示された後にプッシュボタン31Bを押下すると、現在表示中の日時に現在の日時が設定され」ることは、それぞれ、本件発明の特定事項Fの「時刻調整画面にて変更操作がされると時刻が変更可能」であること、「時刻調整画面にて決定操作がされると変更操作により変更された時刻に決定可能」であることに相当する。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項A(「時刻を調整可能な時刻調整画面が表示可能であり、」)及び特定事項F(「時刻調整画面にて変更操作がされると時刻が変更可能であり、時刻調整画面にて決定操作がされると変更操作により変更された時刻に決定可能であり、」)を備えている。 イ 特定事項Bについて 引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本件補正発明の特定事項Bの「遊技機」に相当し、この点を踏まえると、引用発明における、「VDP140にて内部状態の異常が発生したことを示すVDPエラー」、「各種スイッチの異常を検出したことを示すスイッチ異常エラー」、「電断や電源投入」、「満タン報知」、「設定確認の開始や設定確認の終了」、「設定確認中のメンテナンスモード中に現在時刻設定が行われた旨」(以下、これらを総称して、「VDPエラー等」という。)は、いずれも、本件補正発明の特定事項Bの「遊技機で発生し得る或る事象」に相当する。 そして、上記した、引用発明の「VDPエラー等」(遊技機で発生し得る或る事象)は、「日時」と「対応づけ」て「ログ情報」となるのであるから、その発生の日時において「検知可能」であることが明らかである。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項B(「遊技機で発生し得る或る情報を検知可能であり、」)を備えている。 ウ 特定事項C、特定事項D及び特定事項Eについて 上記イで検討した、引用発明の「VDPエラー等」(或る事象)を、「日時とログ内容とを対応付け」て、「最新のログ情報が上位となるように順に表示」することは、本件補正発明の特定事項Cの、「或る事象に関する履歴を或る事象の検知された順番で表示」することに相当し、引用発明において、この表示がなされる「メンテナンス履歴画面」、「画像表示装置5」は、それぞれ、本件補正発明の特定事項Cの「履歴画面」、「表示手段」に相当する。 そして、上記したように、引用発明の「メンテナンス履歴画面」(履歴画面)では、「VDPエラー等」(或る事象)について、「日時とログ内容とを対応付け」て「表示」するのであるから、引用発明が、本件補正発明の特定事項Dの、「履歴画面には或る事象に関する時刻が表示」される構成を備えることは明らかである。 さらに、引用発明において、「メンテナンス履歴画面」(履歴画面)でログ情報を表示する、「VDPエラー等」(或る事象)は、「VDP140にて内部状態の異常が発生したことを示すVDPエラー」、「各種スイッチの異常を検出したことを示すスイッチ異常エラー」を含むところ、これらの「エラー」は、本件補正発明の特定事項Eにおける、「或る事象」が「含」む「所定の異常」に相当する。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項C(「或る事象に関する履歴を或る事象が検知された順番で表示可能な履歴画面が表示手段に表示可能であり、」)、特定事項D(「履歴画面には或る事象に関する時刻が表示可能であり、」)及び特定事項E(「履歴画面に表示可能な或る事象には所定の異常を含み、」)を備えている。 エ 特定事項Gについて 引用発明の「ログ情報」には、「VDP140にて内部状態の異常が発生したことを示すVDPエラー」、「各種スイッチの異常を検出したことを示すスイッチ異常エラー」等の「エラー」(所定の異常;所定の事象)が含まれるところ、当該「ログ情報」は、「日時とログ内容とを対応付け」たものであるから、「ログ内容」に対応する「日時」を取得するために、「現在時刻設定画面」(時刻調整画面)で現在時刻の設定が予めなされていることは明らかである。そして、上記「現在時刻設定画面」(時刻調整画面)は、「メンテナンスモードメニュー画面において、「メンテナンス履歴」の選択肢を選択」して「切り替わ」る「メンテナンス履歴画面」(履歴画面)とは異なるものであるから、上記アにおける特定事項Fについての検討(時刻の変更)及び上記イにおける特定事項Bについての検討(或る事象の検知)も踏まえて、引用発明は、本件補正発明の特定事項Gにおける「履歴画面が表示されていない状況であり、且つ時刻調整画面で或る時刻に変更操作がされてから決定操作がされた後のタイミング」での「所定の異常」を「検知」することを可能とする構成を備えているといえる。 続いて、引用発明では、「現在時刻設定が行われると、設定後の日時情報を読み出してログ情報が記録されるために、現在時刻設定の前後で日時が整合しなくなる場合」を想定していることから、引用発明において、現在時刻の設定の「後」に、改めて、それよりも「前」の時刻に現在時刻を設定することがあることは明らかであり、その場合の、現在時刻の設定の「後」の「ログ情報」に係る「VDPエラー等」(或る事象)は、本件補正発明の特定事項Gの「特定の事象」に相当するから、引用発明は、本件補正発明の特定事項Gにおける「その後、時刻調整画面で当該或る時刻よりも前の時刻に変更操作がされてから決定操作がされ、その後、当該或る時刻よりも前の時刻となっているタイミングで特定の情報を検知」することを可能とする構成を備えているといえる。 そして、引用発明では、「画像表示装置5」(表示手段)で表示する「メンテナンス履歴画面」(履歴画面)に、「現在時刻設定の前後で日時が整合しなくなる場合であっても、ログ情報が発生した順にログ情報が表示される」ところ、前段及び前々段で検討したように、現在時刻の設定の後に、「エラー」(所定の異常)を検知し、その後に、現在時刻を、前の設定よりも前の時刻に設定し、その後に、「VDPエラー等」(特定の事象)を検知した場合に、「画像表示装置5」(表示手段)で表示する「メンテナンス履歴画面」(履歴画面)に、「ログ情報が発生した順にログ情報が表示される」のであるから、引用発明は、本件補正発明の特定事項Gの「履歴画面が表示されたときは、特定の事象に関する履歴が所定の異常よりも後に検知されたことを示す順番となるように履歴画面が表示手段に表示」される構成を備えるといえる。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項G(「履歴画面が表示されていない状況であり、且つ時刻調整画面で或る時刻に変更操作がされてから決定操作がされた後のタイミングで前記所定の異常を検知し、その後、時刻調整画面で当該或る時刻よりも前の時刻に変更操作がされてから決定操作がされ、その後、当該或る時刻よりも前の時刻となっているタイミングで特定の事象を検知し、その後、履歴画面が表示されたときは、当該特定の事象に関する履歴が当該所定の異常に関する履歴よりも後に検知されたことを示す順番となるように履歴画面が表示手段に表示可能である」)を備えている。 オ 特定事項Hについて 上記イで述べたように、引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。 そうすると、引用発明は、本件補正発明の特定事項H(「遊技機。」)を備えている。 (4) 当審合議体の判断 上記(3)からみて、引用発明は本件補正発明の特定事項Aから特定事項Hのすべてを備えていることから、本件補正発明と引用発明とは相違するところがない。 したがって、本件補正発明は引用発明である。 (5) 請求人の主張について 請求人は審判請求書において、次の主張をしている。 「(前略) 3.本願発明について (中略) 1−2)請求項1に係る本願発明の特徴および効果 請求項1に係る本願発明(以下、「本願発明」といいます。)は、履歴画面が表示されておらず且つ時刻調整画面で或る時刻に変更操作が行われてから決定操作がされた後のタイミングで所定の異常を検知し、当該所定の異常の検知後、時刻調整画面で上記或る時刻よりも前の時刻に変更操作がされてから決定操作がされ、その後、上記或る時刻よりも前の時刻となっているタイミングで特定の事象を検知した場合において、当該特定の事象の検知後に履歴画面が表示されたときは、その履歴画面において、上記特定の事象に関する履歴が上記所定の異常に関する履歴よりも後に検知されたことを示す順番になるという特徴構成を具備しております。 ・ 本願発明によれば、このような特徴構成を有することによって、例えば、不正行為を行う者が不正行為の発覚を困難にする、または不正行為の手順を分かりにくくするために、現在時刻を適当に変更し、事象の発生時刻を改竄することにより各事象の発生順序を前後させられてしまうのを防ぐことができる(当初明細書の段落[0676]参照)という効果を奏すると思います。 4.引用文献について ・ 引用文献1の段落[0123]には、メンテナンスモードメニュー画面の表示中に「現在時刻設定」の選択肢が選択操作された場合は、画像表示装置5において現在時刻設定画面の表示に切り替わり、当該画面においてスティックコントローラ31Aにより年、月、日、曜日、時、分、または秒を設定可能であり、プッシュボタン31Bが押下されると、現在の日時を設定した日時に更新されることが記載されております。 ・ 引用文献1の段落[0026]には、主基板11に各種センサが接続されており、これらセンサから出力される検知信号に基づいて、各種異常(エラー)の発生を判定する機能を備えていることが記載されております。 ・ 引用文献1の段落[0119]および図14、図15には、メンテナンス履歴画面に、各種エラー、電断、電源投入、設定変更の開始や終了を含む各種ログ情報が日時情報と対応付けて表示され、最新のログ情報が上位となるように順に表示されることが記載されております。 ・ 引用文献1の段落[0120]および図15(E)には、現在時刻設定が行われると、設定後の日時情報を読み出してログ情報が記録され、現在時刻設定の前後で日時が整合しなくなる場合であっても、ログ情報が発生した順にログ情報が表示されることが記載されております。 5.本願発明と引用文献との対比 1)理由1について ・ 本願発明は、前述したように、履歴画面が表示されておらず且つ時刻調整画面で或る時刻に変更操作が行われてから決定操作がされた後のタイミングで所定の異常を検知し、当該所定の異常の検知後、時刻調整画面で上記或る時刻よりも前の時刻に変更操作がされてから決定操作がされ、その後、上記或る時刻よりも前の時刻となっているタイミングで特定の事象を検知した場合において、当該特定の事象の検知後に履歴画面が表示されたときは、その履歴画面において、上記特定の事象に関する履歴が上記所定の異常に関する履歴よりも後に検知されたことを示す順番になる、という特徴構成を具備しております。 ・ なお、令和6年1月15日に提出した手続補正書において、上記の特徴構成について「所定の事象」を「所定の異常」に限定し、例えば「設定確認の開始」のような事象が含まれないようにする補正を行いました。 ・ まず、引用文献1の段落[0118]には、遊技制御メイン処理(引用文献1の図5参照)のステップS5の設定確認処理によって主基板11から送信された設定確認開始コマンドを受信し、かつ、プッシュボタン31Bが押下されると、「現在時刻設定」の選択肢を含んだメンテナンスモードメニュー画面(引用文献1の図14(B)参照)が表示されることが記載されております。そして引用文献1の段落[0123]には、メンテナンスモードメニュー画面内の「現在時刻設定」の選択肢が選択操作されると、現在時刻の設定が可能になることが記載されております。 ・ ここで、引用文献1の遊技機におけるエラー(異常)の検知は、2ミリ秒ごとに実行される遊技制御用タイマ割込処理によって行われております(引用文献1の段落[0065]参照)。 ・ 一方、設定確認開始コマンドが主基板11から送信されるのは、上述したように遊技機に電源供給が開始されたときに実行される遊技制御メイン処理内の設定確認処理が行われたときであり(引用文献1の段落[0060]参照)、このとき割込処理は禁止されております(引用文献1の段落[0057]参照)。 ・ したがって、引用文献1の遊技機では主基板11から設定確認開始コマンドが送信されるとき(すなわちメンテナンスモードへ移行している間)は、異常の検知が行われないことになると考えます。 ・ 以上のことから、引用文献1には上記の特徴構成が開示または示唆されておらず、本願発明と引用文献1に記載された発明とが同一ではないことは明らかになったものと思料致します。 2)理由2について ・ 本願発明は、引用文献1に開示されていない前述の特徴構成を有するが故に、前述したような顕著な効果が得られますが、引用文献1ではこのような効果が期待できない、または少なくともこのような効果が得られることは開示も示唆もされておりません。 ・ 以上のような特徴構成および効果の相違に鑑みれば、たとえ当業者といえども引用文献1に記載された発明に基づいて本願発明に容易に想到できたものではないと思料致します。 (後略)」 しかし、本件補正発明において、「特定の事象に関する履歴が」「後に検知されたことを示す順番となるように」「履歴が」「表示」される「所定の異常」については、「履歴画面に表示可能な」「遊技機で発生し得る或る事象」に「含」まれ、「履歴画面が表示されていない状況であり、且つ時刻調整画面で或る時刻に変更操作がされてから決定操作がされた後のタイミング」で「検知」されることは特定されているが、「時刻調整画面」等が表示されうる設定確認(明細書の【0645】に記載。)中に検知されるものであることは特定されていない。 そうすると、本件補正発明の「所定の異常」と対比する上で、引用発明の「VDP140にて内部状態の異常が発生したことを示すVDPエラー」、「各種スイッチの異常を検出したことを示すスイッチ異常エラー」等の「エラー」(所定の異常)を、エラー処理を実行する割込処理が禁止されている「主基板から設定確認開始コマンドが送信されてメンテナンスモードへ移行している間」(設定確認中)に発生したものに限定する理由はなく、引用発明において、設定確認中ではないときに発生した上記「エラー」(所定の異常)は、検知されて、「ログ情報が発生した順にログ情報が表示される」のであるから、検知された「所定の異常」の表示について本件補正発明と引用発明に相違するところはなく、上記(3)エで述べたように、引用発明は本件補正発明の特定事項Gを備えている。 よって、審判請求書における請求人の主張を採用することはできない。 (6) まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。 4 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年8月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は前記第2[理由]1(2)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含んでいる。 「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 ●理由1(新規性)について ・請求項 1 ・引用文献等 1 <引用文献等一覧> 1.特開2020−99381号公報」 3 引用文献 (1) 引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、前記第2[理由]3(2)アに示したとおりである。 (2) 引用発明 前記第2[理由]3(2)アに示した引用文献1の記載事項はから認定される引用発明は、前記第2[理由]3(2)イに示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明における、「履歴画面に表示可能な或る事象には所定の異常を含」むことについて、「所定の異常」とした限定を上位概念化して「所定の事象」とし、これにあわせて、本件補正発明において、「前記所定の異常」及び「当該所定の事象」とした限定を上位概念化して「前記所定の事象」としたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3(6)で述べたとおり、引用文献に記載された発明であるから、本願発明も、引用文献に記載された発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、他の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2024-03-18 |
結審通知日 | 2024-03-19 |
審決日 | 2024-04-01 |
出願番号 | P2021-050614 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼川 康史 |
特許庁審判官 |
太田 恒明 小林 俊久 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 大西 正悟 |