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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1411226
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-25 
確定日 2024-03-14 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6966109号発明「包装用容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6966109号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第6966109号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6966109号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年8月30日に出願した特願2017―165467号の一部を令和2年4月9日に新たな特許出願としたものであって、令和3年10月25日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月10日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。

令和4年4月25日 :特許異議申立人神谷高伸(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和4年8月30日付け :取消理由通知
令和4年9月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年1月24日 :申立人による意見書の提出
令和5年3月31日付け :取消理由通知(決定の予告)
令和5年5月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和5年7月7日 :申立人による意見書の提出

なお、本件訂正請求がされたことにより、令和4年9月26日に提出された訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正の適否
1. 訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6966109号の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、「該脚部の底面は、第一面部と第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、」とあるのを、「該脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、」に訂正する。

(2) 訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2において、「該脚部の底面は、第一面部と第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、」とあるのを、「該脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、」に訂正する。

2. 訂正の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア. 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「第一面部」及び「第二面部」をそれぞれ、「該脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第一面部」及び「該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第二面部」に、それぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ. 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件特許明細書の【0022】、【0023】、【0024】及び【0027】の記載並びに図2、図3及び図5の図示、とりわけ、「第一面部23は、水平面状に形成してあり、・・・。第一面部23及び第二面部24は、平面視において、屈曲部又は湾曲部を有する形状とするのが好ましく、」(【0023】)及び「第二面部24は、水平面状に形成してあり」(【0024】)との記載から理解できるように、「第一面部23」と「第二面部24」が両者とも「水平面状」であるとの記載、及び、図3及び図5にそれぞれ図示された「第一面部23」と「第二面部24」との境界線の形状に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ. 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、課題を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

(2) 訂正事項2について
ア. 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に記載された「第一面部」及び「第二面部」をそれぞれ、
「平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第一面部」及び「第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第二面部」に、それぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ. 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件特許明細書の【0022】、【0023】、【0024】及び【0027】の記載、並びに図2、図3及び図5の図示、とりわけ、「第一面部23は、水平面状に形成してあり、・・・。第一面部23及び第二面部24は、平面視において、屈曲部又は湾曲部を有する形状とするのが好ましく、」(【0023】)及び「第二面部24は、水平面状に形成してあり」(【0024】)との記載から理解できるように、「第一面部23」と「第二面部24」が両者とも「水平面状」であるとの記載、及び、図3及び図5にそれぞれ図示された「第一面部23」と「第二面部24」との境界線の形状に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ. 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのように訂正前の請求項2における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、課題を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1及び2を「本件発明」と総称することがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
合成樹脂シートからなり、容器本体及び蓋体を備えた包装用容器であって、
該容器本体は、該容器本体の底面部に下方に膨出する凹状の脚部を、間隔を開けて備え、
該脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、
該第一面部は、容器内側に位置し、該蓋体の天面部に載せ置き可能としてあり、
該第二面部は、該第一面部よりも容器外側の下方に位置し、かつ、該第一面部に対して幅広とし、
該第一面部と該第二面部との間の側面部は、該容器本体を該蓋体の上側に載せ置いた際、該蓋体の側壁面部に沿う形状とし、
該脚部の側面部に、高さ方向に延びる突起部を設け、
該蓋体に、該蓋体の内側に向かい突出し、該容器本体に係止する嵌合部を備え、
該蓋体が該容器本体に嵌合した状態において該脚部の上方になる位置に該嵌合部を設けた、
包装用容器。
【請求項2】
合成樹脂シートからなり、容器本体及び蓋体を備えた平面視正方形乃至長方形状の包装用容器であって、
該容器本体は、該容器本体の底面部の各隅部に下方に膨出する凹状の脚部を備え、
該脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、
該第一面部は、容器内側に位置し、該蓋体の天面部に載せ置き可能としてあり、
該第二面部は、該第一面部よりも容器外側の下方に位置し、かつ、該第一面部に対して幅広とし、
該第一面部と該第二面部との間の側面部は、該容器本体を該蓋体の上側に載せ置いた際、該蓋体の側壁面部に沿う形状とし、
該脚部の側面部に、高さ方向に延びる突起部を設け、
該蓋体の各隅部付近に、該蓋体の内側に向かい突出し、該容器本体に係止する嵌合部を備えた、
包装用容器。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1. 取消理由(進歩性
本件発明1及び2は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、当該発明に係る特許は取り消されるべきものである。



<引 用 文 献 等 一覧>
甲1:特許第6049226号公報
甲2:特許第5916832号公報

第5 当審の判断
1. 甲1及び甲2に記載した事項及び発明
(1) 甲1
ア. 甲1の【0022】には、「底面部10の下面の周縁部には下方に向けて脚部15が突設されている。該脚部15の形状は任意であって周縁部に沿って例えば全周に亘って形成されていてもよいが、好ましくは、底面部10の角部に形成される。本実施形態では底面部10が長方形状であるため、その四つの角部(四隅)にそれぞれ独立した状態で脚部15が合計四つ形成されているが、少なくとも対向する二箇所の角部に形成されることが好ましい。」(下線は理解の便のため、当審が付与した。)との記載があり、脚部15は間隔を開けて備えられているといえる。
イ. 甲1の【0040】には、「尚、図11では、容器本体1の底面主部16が平坦な平面であってその底面主部16に下側の容器の蓋2の天面部20が全体に亘って当接している状態を図示しているが、蓋2の天面部20の全体が容器本体1の底面主部16に当接しなくてもよい。例えば、図13(a)のように、底面主部16の中央部が上方に向けて膨出する形状、即ち、底面主部16の下面が部分的に凹んだ形状であってもよく、蓋2の天面部20の少なくとも四つの角部が容器本体1の底面主部16に当接する形態であってもよい。」との記載があり、図13(a)には、蓋2の天面部20の少なくとも四つの角部が当接する容器本体1の底面主部16の面(以下「面部A」という。)を設けることが図示(当審注:以下に、甲1の【図13】(a)に対し、「面部A」の語句と指示線を付した。)されていることを踏まえると、当該面部A及び脚部15の底面は、面部Aと面部15aとを備えた段状構造であるといえる。
ウ. 甲1の図13(a)から、面部15aは、面部Aよりも容器外側の下方に位置し、かつ、該面部Aに対して幅広であることが看取できる。
エ. 甲1の図13(a)から「蓋2の面取部211bと面部Aの端部とは近接しており、蓋2の側面主部211aは面取部211bから下方へ延びており、容器本体1の面部Aと面部15aとの間の側面部は、面部Aの端部から下方へ延びており、上記側面主部211aと上記側面部とは、並んで下方へ延びていること」が看取できることや、【0042】の「特に、脚部15の内側且つ近傍における底面部10の部分が下側の容器の蓋2の積み重ね用突部によって支持されると、脚部15と積み重ね用突部の角部との係合による水平方向の位置ずれの効果と相まって、安定した積み重ね状態が得られる。」との記載から、面部Aと面部15aとの間の側面部は、容器本体1を蓋2の上側に載せ置いた際、蓋2の側面主部211aに沿う形状であるといえる。
オ. 甲1の図1、5から、係止突起25は、蓋2が容器本体1に嵌合した状態において脚部15の上方になる位置に設けられることが看取できる。


カ. そうすると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(【0009】、【0018】、【0022】、【0026】、【0028】、【0035】、【0040】、【0042】、図1、2、5、13(a)参照。)。
「合成樹脂シートからなり、容器本体1及び蓋2を備えた蓋付き容器であって、
該容器本体1は、該容器本体1の底面部10から下方に向けて突出する面部A及び脚部15を、底面部10の角部に備え、且つ、脚部15を間隔を開けて備え、
該面部A及び脚部15の底面は、面部Aと面部15aとを少なくとも備えた段状構造としてあり、
該面部Aは、容器内側に位置し、該蓋2の天面部20に載せ置き可能としてあり、
該面部15aは、該面部Aよりも容器外側の下方に位置し、かつ、該面部Aに対して幅広とし、
該面部Aと該面部15aとの間の側面部は、該容器本体1を該蓋2の上側に載せ置いた際、該蓋2の側面主部211aに沿う形状とし、
該蓋2に、該蓋2の内側に向かい突出し、該容器本体1に係止する係止突起25を備え、
該蓋2が該容器本体1に嵌合した状態において該脚部15の上方になる位置に該係止突起25を設けた、
蓋付き容器。」

2. 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「容器本体1」は本件発明1の「容器本体」に相当し、以下同様に、「蓋2」は「蓋体」に、「蓋付き容器」は「包装用容器」に、「底面部10」は「底面部」に、「面部A及び脚部15」は「脚部」に、「天面部20」は「天面部」に、「側面主部211a」は「側壁面部」に、「係止突起25」は「嵌合部」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「面部A」は本件発明1の「第一面部」と、「面部α」である限りにおいて一致する。
また、甲1発明の「面部15a」は本件発明1の「第二面部」と、「面部β」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の<一致点>で一致し、かつ、<相違点1>及び<相違点2>で相違する。

<一致点>
合成樹脂シートからなり、容器本体及び蓋体を備えた包装用容器であって、
該容器本体は、該容器本体の底面部に下方に膨出する凹状の脚部を、備え、
面部αと面部βとを少なくとも備えた段状構造において、
面部αは、容器内側に位置し、該蓋体の天面部に載せ置き可能としてあり、
面部βは、面部αよりも容器外側の下方に位置し、かつ、面部αに対して幅広とし、
面部αと面部βとの間の側面部は、該容器本体を該蓋体の上側に載せ置いた際、該蓋体の側壁面部に沿う形状とし、
該蓋体に、該蓋体の内側に向かい突出し、該容器本体に係止する嵌合部を備え、
該蓋体が該容器本体に嵌合した状態において該脚部の上方になる位置に該嵌合部を設けた、
包装用容器。

<相違点1>
本件発明1は、「脚部を、間隔を開けて備え」、該「脚部の底面」が「第一面部」と「第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり」、該「脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第二面部」であるのに対して、甲1発明は、「面部A」と「脚部15」の「底面」とが「段状構造」を構成し、「面部A及び脚部15を、底面部10の角部に備え、且つ、脚部15を間隔を開けて備え」ているものの、「面部A」が間隔を開けて備えていることが特定されておらず、そのため「脚部15」の「底面」が第一面部及び第二面部に係る事項を有しない点。

<相違点2>
脚部の側面部に設ける突起部について、本件発明1は、「該脚部の側面部に、高さ方向に延びる突起部を設け」るのに対して、甲1発明には、側面部に突起部を設けることが特定されていない点。

(2) 当審の判断
ア. <相違点1>について
甲1発明の「段状構造」を構成する一方の「面部A」は、他方の「脚部15」の「底面」に側面部を介して配置される面部であるから、「脚部15」の「底面」自体を段状構造とし、当該「底面」に「第一面部」及び「第二面部」に係る上記相違点に係る本件発明1の具体化された構造とすることの動機付けはない。
そして、甲2〜甲4を参照しても、甲1発明において、「脚部15」の「底面」を具体化された「第一面部」及び「第二面部」とすることについての記載ないし示唆はない。
したがって、<相違点1>に係る本件発明1の構成は、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

イ. 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲2〜甲4に記載された事項に基づき、当業者が容易になし得たものではない。

3. 本件発明2について
(1) 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記本件発明1と甲1発明との対比で検討したことと同様に、少なくとも以下の<相違点3>において相違する。

<相違点3>
本件発明2は、「底面部の各隅部に下方に膨出する凹状の脚部」の「底面」が「第一面部」と「第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり」、該「脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第二面部」であるのに対して、甲1発明は、「面部A」と「脚部15」の「底面」とが「段状構造」を構成するものの、「面部A」は「底面部の各隅部に下方に膨出する」「脚部15」の「底面」に含まれるものではなく、そのため「脚部15」の「底面」が第一面部及び第二面部に係る事項を有しない点。

(2) 当審の判断
上記2(2)ア及びイで示した判断と同様に、<相違点3>に係る本件発明2の構成は、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

第6 取消理由通知に採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1. 取消理由(新規事項)
(1) 申立人の主張概要
本件特許の出願当初の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、蓋体の嵌合部について、本体の被嵌合部29aに嵌まる記載があるのみであったが、審判請求時の補正により、「容器本体に係止する」と蓋体の嵌合部の機能のみを限定する記載となっており、このような被嵌合部の存在を前提としないような構成は当初明細書等には全く記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。よって、当該補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない発明に対して付与されたものである。
(2) 当審の判断
「嵌合」とは、「軸が穴にかたくはまり合ったり、滑り動くようにゆるくはまり合ったりする関係をいう語。かんごう。」(広辞苑第六版)という意味であり、該「はまり合う」関係にある2つ部材、すなわち「嵌合部」及び「被嵌合部」について、特許請求の範囲において、2つのうちの1つの部材を用いて蓋体が容器本体に係止することを特定することが新たな技術的事項を導入したとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

2. 取消理由(サポート要件)
(1) 申立人の主張概要
請求項1に関して、本件特許明細書に記載された実施形態は、嵌合部と被嵌合部を設けて蓋体を容器本体に嵌合させる実施形態しか記載されていないにもかかわらず、被嵌合部を設けずに嵌合部のみを設けて蓋体を容器本体に嵌合させる構成は、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
(2) 当審の判断
「嵌合部」と「被嵌合部」について、特許請求の範囲において、2つのうちの1つの部材を用いて蓋体が容器本体に係止することの発明の特定は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートからなり、容器本体及び蓋体を備えた包装用容器であって、
該容器本体は、該容器本体の底面部に下方に膨出する凹状の脚部を、間隔を開けて備え、
該脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、屈曲又は湾曲する形状とした第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、
該第一面部は、容器内側に位置し、該蓋体の天面部に載せ置き可能としてあり、
該第二面部は、該第一面部よりも容器外側の下方に位置し、かつ、該第一面部に対して幅広とし、
該第一面部と該第二面部との間の側面部は、該容器本体を該蓋体の上側に載せ置いた際、該蓋体の側壁面部に沿う形状とし、
該脚部の側面部に、高さ方向に延びる突起部を設け、
該蓋体に、該蓋体の内側に向かい突出し、該容器本体に係止する嵌合部を備え、
該蓋体が該容器本体に嵌合した状態において該脚部の上方になる位置に該嵌合部を設けた、
包装用容器。
【請求項2】
合成樹脂シートからなり、容器本体及び蓋体を備えた平面視正方形乃至長方形状の包装用容器であって、
該容器本体は、該容器本体の底面部の各隅部に下方に膨出する凹状の脚部を備え、
該脚部の底面は、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第一面部と、該第一面部と並行状に配し、平面視における形状を、幅に対して該容器本体の周方向の長さが長く延び、直線の両端を同じ向きに折り曲げた形状とした第二面部とを少なくとも備えた段状構造としてあり、
該第一面部は、容器内側に位置し、該蓋体の天面部に載せ置き可能としてあり、
該第二面部は、該第一面部よりも容器外側の下方に位置し、かつ、該第一面部に対して幅広とし、
該第一面部と該第二面部との間の側面部は、該容器本体を該蓋体の上側に載せ置いた際、該蓋体の側壁面部に沿う形状とし、
該脚部の側面部に、高さ方向に延びる突起部を設け、
該蓋体の各隅部付近に、該蓋体の内側に向かい突出し、該容器本体に係止する嵌合部を備えた、
包装用容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2024-03-05 
出願番号 P2020-070178
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (B65D)
P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 久保 克彦
西本 浩司
登録日 2021-10-25 
登録番号 6966109
権利者 シーピー化成株式会社
発明の名称 包装用容器  
代理人 弁理士法人市澤・川田国際特許事務所  
代理人 弁理士法人市澤・川田国際特許事務所  

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