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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1411227
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-05-02 
確定日 2024-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6958550号発明「化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6958550号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認める。 特許第6958550号の請求項1〜11に係る特許を維持する。 特許第6958550号の請求項12に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6858550号の請求項1〜12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2017年(平成29年)5月26日(優先権主張 2016年5月26日 (JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和3年10月11日にその特許権の設定登録がされ、同年11月2日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人真角侑子(以下「申立人」という。)による特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和4年 5月 2日 特許異議の申立て
同年12月26日付け 取消理由通知書
令和5年 3月 3日 特許権者より意見書
同年 4月12日 申立人より上申書
同年 6月30日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 9月 1日 特許権者より訂正請求書及び意見書
なお、令和5年9月29日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知をしたが、その指定期間内に意見書の提出はされなかった。

第2 訂正の適否
令和5年9月1日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)、(2)のとおりである(下線は訂正箇所である。)。
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「 前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であることを特徴とする化粧材。」
と記載されているのを
「 前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であり、
前記第1艶調整層を構成する樹脂組成物は、メラミン系、アミノアルキッド系、または、尿素系の樹脂であり、前記第2の艶調整層を構成する樹脂組成物は、アミノアルキッド系の樹脂であることを特徴とする化粧材。」
に訂正する(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2〜11も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項12を削除する。

(3)一群の請求項
本件訂正の請求は、一群の請求項1〜12について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「第1艶調整層」及び「第2艶調整層」の材質について特定がなかったのを、「前記第1艶調整層を構成する樹脂組成物は、メラミン系、アミノアルキッド系、または、尿素系の樹脂であり、前記第2の艶調整層を構成する樹脂組成物は、アミノアルキッド系の樹脂である」との事項の限定をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記事項は、訂正前の請求項12及び段落【0023】に列挙される樹脂組成物から、「第1艶調整層」及び「第2艶調整層」のそれぞれについて、さらに限定したものであるので、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項12を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおり、訂正事項1、2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1〜11に係る発明(以下「本件発明1〜11」ともいう。また、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、
前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、相対的に艶の低い艶調整層に、粒径が層厚の1.0倍以上の艶消し剤が添加されており、
前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であり、
前記第1艶調整層を構成する樹脂組成物は、メラミン系、アミノアルキッド系、または、尿素系の樹脂であり、前記第2の艶調整層を構成する樹脂組成物は、アミノアルキッド系の樹脂であることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、
前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層と重なる部分に形成され、前記柄インキ層の柄模様と前記第2の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、
前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、
前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分に形成され、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項4】
前記第2の艶調整層は、露出していることを特徴とする請求項3に記載の化粧材。
【請求項5】
前記艶消し剤は、無機材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項6】
前記艶消し剤は、前記艶消し剤が添加された前記艶調整層を構成する樹脂組成物100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下の範囲内で添加されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項7】
前記艶消し剤は、相対的に艶の高い艶調整層にも添加されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項8】
前記第1の艶調整層に添加する前記艶消し剤の粒径は、前記第2の艶調整層に添加する前記艶消し剤の粒径と同じであることを特徴とする請求項7に記載の化粧材。
【請求項9】
前記第1の艶調整層に添加された前記艶消し剤の含有量は、前記第2の艶調整層に添加された前記艶消し剤の含有量よりも多いことを特徴とする請求項7または8に記載の化粧材。
【請求項10】
前記艶消し剤の粒径は、2μm以上15μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項11】
前記艶消し剤の粒径は、前記艶消し剤が添加された前記艶調整層の層厚の3.0倍以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項12】
(削除)」

第4 取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和5年6月30日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。



請求項及び引用文献の関係(申立人が提出した甲第○号証は、甲○と略記する。)
・甲1主引例
請求項1、2、5〜12 :甲1、甲3〜7
請求項2〜12 :甲1、甲2、甲3〜7
・甲2主引例
請求項1〜12 :甲2、甲3〜7

・引用文献一覧
甲1:国際公開第2015/046568号
甲2:特開2009−113386号公報
甲3:日本シリカ工業株式会社営業本部 赤崎忠行、同技術開発部 福永登志一、「ゲル法シリカの特徴と応用」、東ソー研究・技術報告第45巻、2001年、65〜69頁
甲4:特開平7−166091号公報
甲5:特開平7−3182号公報
甲6:特表2012−508804号公報
甲7:特表平11−504354号公報
(甲3〜7は周知技術を示す例示文献。)

第5 当審の判断
1 引用文献及び周知技術を示す例示文献の記載事項等
(1)甲1について
ア 記載事項
・「請求の範囲
[請求項1] 少なくとも、基材層と、第1の保護層と、前記第1の保護層の一部の上に設けられた第2の保護層とをこの順に有し、
前記第1の保護層が、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されてなる、加飾シート。
・・・
[請求項11] 前記基材層と前記第1の保護層との間に、絵柄層をさらに有する、請求項1〜10のいずれかに記載の加飾シート。
・・・」
・「[0020] [第1の保護層2]
第1の保護層2は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性などを高め、さらに後述の第2の保護層3と共に加飾シートに高い立体感を付与するために設けられる層である。第1の保護層2は、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されてなる。具体的には、第1の保護層2は、当該電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている。本発明の加飾シートにおいては、第1の保護層2が、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートという特定の電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されていることにより、後述の第2の保護層3と共に加飾シートに高い立体感を表出し、さらに後述の射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によっても、第1の保護層2の一部の上に設けられた後述の第2の保護層3によって形成された凹凸形状が保持され、加飾シートに表出されていた高い立体感の劣化が効果的に抑制される。この理由の詳細は必ずしも明らかではないが、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の弾性が高いために、射出成形時などにおける熱と圧力が第2の保護層3に加わった際に、当該弾性の高い硬化物により構成された第1の保護層2がこの圧力を吸収し、結果として第2の保護層3の凸形状が効果的に保持され、高い立体感の劣化が効果的に抑制されるものと考えられる。」
・「[0044] また、第1の保護層2は、無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方を含んでいてもよい。なお、第1の保護層2において、無機粒子及び樹脂粒子は、主に、第1の保護層2の艶を低下させる機能を有し、艶を低下させる機能は、一般には無機粒子の方が樹脂粒子よりも大きい傾向がある。第1の保護層2に無機粒子または樹脂粒子が含まれる場合、これらの粒子は、第1の保護層2中に分散されている。
[0045] 無機粒子としては、無機化合物により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子が挙げられ、これらの中でも好ましくはシリカ粒子が挙げられる。無機粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。無機粒子の粒子径としては、例えば0.5〜20μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。なお、本発明において、無機粒子の粒子径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2100を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する、噴射型乾式測定方式により測定される値である。
[0046] 第1の保護層2が無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量としては、特に制限されないが、上述の電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部程度、より好ましくは10〜40質量部程度が挙げられる。無機粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。」
・「[0049] なお、第1の保護層2において、無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方が含まれる場合、第1の保護層2の表面からこれらの粒子の一部が突出していてもよいし、第1の保護層2の内部に粒子が埋没していてもよい。」
・「[0051] 第1の保護層2の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、例えば、0.1〜20μm程度、好ましくは0.5〜10μm程度、さらに好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐傷付き性等の表面保護層としての十分な物性が得られる。また、第1の保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物に対して電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。一方、加飾シートの耐摩耗性を特に高める観点からは、第1の保護層2の硬化後の厚みとしては、好ましくは4μm以上、より好ましくは5〜10μm程度が挙げられる。なお、第1の保護層2が上述の無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方を含む場合、第1の保護層2の厚みとは、無機粒子または樹脂粒子が第1の保護層2の表面に位置していない部分の厚みをいう。」
・「[0054][第2の保護層3]
第2の保護層3は、本発明の加飾シートにおいて、第1の保護層2の一部の上に設けられており、これにより形成された凹凸形状によって、加飾シートに高い立体感を付与している。また、第2の保護層3と第1の保護層2との間に艶差を設けることよって、加飾シートに高い立体感を付与することができる。例えば、第2の保護層3を高艶状態(グロス)とし、第1の保護層2を低艶状態(マット)とし、両層間、ひいては第2の保護層3の形成部と非形成部との間に艶差を発現させることにより、加飾シートに高い立体感を付与することができる。」
・「[0057] 第2の保護層3における熱硬化性樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。」
・「[0060] 第2の保護層3は、無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方を含んでいてもよい。無機粒子及び樹脂粒子としては、それぞれ、第1の保護層2で例示した無機粒子及び樹脂粒子と同じものが例示できる。なお、第2の保護層3において、無機粒子及び樹脂粒子は、主に、第2の保護層3の艶を低下させる機能を発揮する。上述の通り、第1の保護層2と第2の保護層3とに艶差を設けることによって、加飾シートに高い立体感を付与することができる。第2の保護層3に無機粒子及び樹脂粒子が含まれる場合、これらの粒子は、第2の保護層3に分散されている。」
・「[0061] 第2の保護層3に含まれる無機粒子の粒子径としては、特に制限されないが、好ましくは0.5〜15μm程度、より好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。また、樹脂粒子の粒子径としては、特に制限されないが、好ましくは0.1〜20μm程度、より好ましくは0.5〜15μm程度が挙げられる。
[0062] 第2の保護層3が無機粒子を含む場合、第2の保護層3に含まれる無機粒子の含有量としては、特に制限されず、第2の保護層3に含まれる上記の樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部程度、より好ましくは5〜30質量部程度が挙げられる。また、樹脂粒子の含有量としては、特に制限されず、第2の保護層3に含まれる上記の樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部程度、より好ましくは10〜150質量部程度が挙げられる。」
・「[0064] 第2の保護層3の厚みは、特に制限されないが、加飾シートに立体感を与えるとともに、成形後においても、第2の保護層3によって形成された凹凸形状が保持され、加飾シートに表出されていた高い立体感の劣化を効果的に抑制する観点からは、好ましくは0.1〜20μm程度、より好ましくは0.5〜10μm程度、さらに好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。なお、第2の保護層3が上述の無機粒子及び樹脂粒子の少なくとも一方を含む場合、第2の保護層3の厚みとは、無機粒子または樹脂粒子が第2の保護層3の表面に位置していない部分の厚みをいう。」
・「[0075][絵柄層4]
絵柄層4は、樹脂成形品に装飾性を与える層であり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。絵柄層4によって形成される模様は、特に制限されず、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様も挙げられる。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。」
・「[0110]<実施例1〜6及び比較例1〜3>
(加飾シートの作製)
基材層としてのABS樹脂フィルム(厚み400μmm)上に、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル系共重合体樹脂を含むインキを用いて、グラビア印刷により絵柄層(厚み5μm)を形成した。絵柄層の模様は、木目模様とした。次に、絵柄層の上に表1に記載の組成を有する樹脂組成物を用いて、グラビア印刷により第1の保護層(厚み3μm)を形成した。次に、第1の保護層の上に、表1の組成を有する樹脂組成物を用いて、絵柄層の木目模様の導管部に対応する位置が非形成部となるように、木目模様と同調した第2の保護層(厚み3μm)をパターン状に形成した。次に、第2の保護層側から電子線を照射(加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad))して、第1の保護層及び第2の保護層を硬化して、表1に示されるような構成を有する、基材層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された加飾シートを得た。」

・図1、3は次のとおりである。




イ 甲1発明
上記アより、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「少なくとも、基材層1と、第1の保護層2と、前記第1の保護層2の一部の上に設けられた第2の保護層3とをこの順に有し、
前記第1の保護層が、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されてなり、第2の保護層3が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂により形成されてなる加飾シートであって、
第1の保護層2は、第1の保護層2の艶を低下させる機能を有する無機粒子を含んでおり、
第2の保護層3を高艶状態(グロス)とし、第1の保護層2を低艶状態(マット)とし、両層間、ひいては第2の保護層3の形成部と非形成部との間に艶差を発現させることにより、加飾シートに高い立体感を付与することができるものであり、
第1の保護層2の硬化後の厚みについては、例えば、0.1〜20μm程度、好ましくは0.5〜10μm程度、さらに好ましくは1〜5μm程度であり、
無機粒子の粒子径としては、例えば0.5〜20μm程度、好ましくは1〜10μm程度である、加飾シート。」

(2)甲2について
ア 記載事項
・「【請求項1】
基材上に少なくとも表面保護層と該表面保護層上に部分的に設けられた低艶層を有する加飾シートであって、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであり、該熱可塑性樹脂のゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量が9万〜12万の範囲であり、表面保護層の厚さが1〜1000μmであり、かつ低艶層が電離放射線硬化性樹脂に艶消剤を1〜50質量%含有する樹脂組成物を架橋硬化したものである加飾シート。」
・「【0010】
本発明の加飾シートは、高い耐摩耗性及び耐擦傷性を有し、かつ、成形性が良好で、インサート成形法や射出成形同時加飾法においても、表面保護層にクラック等が入らない上、加飾成形品に高い意匠性を付与することができる。」
・「【0018】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール(ブチラール樹脂)、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン,α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でもよいし、それぞれの樹脂を混合して用いてもよい。」
・「【0027】
本発明の加飾シートの表面保護層を構成する樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の質量比が75:25〜25:75の範囲である。この範囲であると、架橋硬化して表面保護層を形成した後の成形性及び表面の耐摩耗性、耐擦傷性のバランスが良好となる。以上の点から、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の質量比は、60:40〜25:75の範囲がさらに好ましい。」
・「【0031】
次に、本発明の加飾シートの構成について図1を用いて詳細に説明する。
図1はインサート成形に用いる場合の本発明の加飾シート10の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材11上に絵柄層12、隠蔽層13及び接着剤層14を有し、かつ、基材11の絵柄層12の反対側に表面保護層15及び低艶層16を有するものである。ここで、表面保護層15は上述の表面保護層形成用樹脂組成物を架橋硬化して形成されるものである。また、基材11と表面保護層15の間にプライマー層を設けてもよい。」
・「【0043】
表面保護層15の形成は上述の表面保護層形成用樹脂組成物を含有する塗工液を調製し、これを塗布し、架橋硬化することで得ることができる。なお、塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、調製された塗工液を、基材11の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
【0044】
本発明の加飾シートは、表面保護層15の上に部分的に設けられた低艶層16を有することが特徴である。この低艶層16は表面保護層15との間での艶差によって、加飾シート10に艶差を付与し、特に前述の絵柄層12と同調させることによって、質感を付与するものである。具体的には、例えば、絵柄層12が木目柄である場合には、その導管部と低艶層16を同調させることによって、木目柄にリアル感を持たせることができる。
低艶層16と表面保護層15との間での艶差を発現するために、少なくとも低艶層16には後述する艶消剤が配合されるが、表面保護層15に該艶消剤を配合してもよく、両層における艶消剤の配合量、種類、粒子径等を制御することで、相対的に表面保護層15を高艶状態(グロス)、低艶層16を低艶状態(マット)とし、両層間の艶差を発現させるものである。
【0045】
低艶層16は電離放射線硬化性樹脂に艶消剤を1〜50質量%含有する樹脂組成物を架橋硬化したものであり、電離放射線硬化性樹脂については、表面保護層15の説明において記載したものと同様のものを用いることができ、特に電子線硬化性樹脂が好ましい。艶消剤の含有量については、5〜20質量%の範囲がさらに好ましい。
また、艶消剤については、化粧シートに通常使用されるものであれば特に制限はなく、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーや架橋アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ポリエチレン等の有機のフィラーなどの微粉末が挙げられる。これらのうち、意匠性、塗工安定性などの点からシリカが好ましい。
【0046】
上記艶消剤の平均粒子径については、0.1〜10μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であると十分な艶消し効果が見られ、一方、10μm以下であると、艶消剤が均一に分散して美麗な艶消し面を形成し得る。以上の観点から、艶消剤の平均粒子径は0.2〜5μmの範囲がさらに好ましく、1〜4μmの範囲が特に好ましい。」
・「【0063】
実施例1
電子線硬化性樹脂(以下「EB樹脂」という)である4官能のウレタンアクリレート(EB−1、第1表参照)25質量部に、メタクリル酸メチル(以下「MMA」という)とアクリル酸メチル(以下「MA」という)のモル比100:5であって、重量平均分子量(Mw)1.0×105、数平均分子量(Mn)0.60×105、多分散度(Mw/Mn)1.67の共重合体(PMMA−1、第1表参照)を75質量部混合し、表面保護層形成用電子線硬化性樹脂組成物を得た。EB樹脂:PMMA−1の質量比は25:75である。
次に、基材として、両面コロナ放電処理を施した厚さ60μmの透明ポリプロピレン系フィルムを用い、該フィルムの裏面に、2液硬化型ウレタンインキを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成した。次いで、絵柄層を施していない表面に、アクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明プライマー層を形成した。該プライマー層の上に、上記表面保護層形成用電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが3μmとなるように塗工した。次いで、上記表面保護層形成用として用いたのと同一のEB樹脂100質量部に対し、平均粒子径2μmのシリカを10質量部含有させた低艶層形成用電子線硬化性樹脂組成物を用い、上記絵柄層の木目柄の導管部に同調するように、また、硬化後の厚さが1μmとなるように、グラビア印刷により塗工し、低艶層(未硬化)を得た。
この未硬化樹脂層(表面保護層及び低艶層)に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ、次に該シートの絵柄層側に膜厚10μmの2液硬化型ウレタン系樹脂接着剤を施し、バッカーフィルムである膜厚400μmの隠蔽着色ABS樹脂シートとラミネートして加飾シートを得た。
該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
【0064】
実施例2〜4
EB樹脂とPMMA−1の質量比を第2表に記載するように変化させたこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。
・・・
【0073】
実施例24
実施例2において、表面保護層形成用電子線硬化性樹脂組成物に、さらに平均粒子径2μmのシリカを3質量部含有させたこと以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートについて上記方法にて評価した。評価結果を第2表に示す。」
・図1は次のとおりである。


イ 甲2発明
上記アより、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。
「基材11上に少なくとも表面保護層15と該表面保護層15上に部分的に設けられた低艶層16を有する加飾シート10であって、
表面保護層15が電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであり、
基材11として、厚さ60μmの透明ポリプロピレン系フィルムを用い、
該フィルムの裏面に、2液硬化型ウレタンインキを用い、グラビア印刷により木目柄の絵柄層を形成し、
艶消し剤としての平均粒子径2μmのシリカを10質量部含有させた低艶層形成用電子線硬化性樹脂組成物を用い、上記絵柄層の木目柄の導管部に同調するように、また、硬化後の厚さが1μmとなるように、グラビア印刷により塗工し、硬化させて低艶層16を得て、
相対的に表面保護層15を高艶状態(グロス)、低艶層16を低艶状態(マット)とし、両層間の艶差を発現させた、加飾シート10。」

(3)甲3の記載事項
・66〜67ページ




(4)甲4の記載事項
・「【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】シリカはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と鉱酸との中和反応によって製造することができ、その製造方法は湿式法と呼ばれている。湿式法は中性またはアルカリ性下で反応させて比較的濾過しやすい沈殿シリカを得る沈殿法と、酸性下で反応させゲル状のシリカを得るゲル法に分類される。従来より、微粉状シリカは塗料の艶消し剤、粘度調整剤等に使用されている。このうち塗料用艶消し剤には、分散が容易で、かつ高い艶消し性能を有することから、専ら湿式法沈殿シリカが使用されている。」

(5)甲5の記載事項
・「【0002】
【従来の技術】シリカはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と鉱酸の中和反応によつて製造することができ、その製造方法は湿式法と呼ばれている。湿式法は中性またはアルカリ性下で反応させ比較的濾過し易い沈澱ケイ酸を得る沈澱法と、酸性下で反応させゲル状のケイ酸を得るゲル法とに分類される。
【0003】沈澱法シリカは、例えば、特公昭39−1207号等に開示されているように、中和反応によって構造性を有するように一次粒子を成長させて得られた沈澱ケイ酸を、乾燥および引き続いて粉砕し製品とされる。即ち静置乾燥あるいは噴霧乾燥の後に、目的に応じて適当な粉砕機、例えばビンなどの間での衝撃剪断・摩擦作用を利用して粉砕するビンミル、或は高圧のジエツト気流に粒子をまきこんで相互衝突により粉砕するジエツト粉砕機等(最新超微粉砕プロセス技術:ソフト技研出版部編、新技術情報センター発行、1985年、8〜10頁)を用いて粉砕される。これらの方法によって知られる一般的な沈澱法シリカは、BET比表面積が通常100〜400m2/gの範囲であり、主として汎用のゴム補強充填剤、農薬の吸着担体、塗料の艶消し剤、或は種々の媒体の粘度調整剤等として使用されている。
【0004】一般的な沈澱法シリカは、塗料分野において艶消し剤として高い艶消し効果を発揮するが、塗膜の透明性を重視し例えばサンドミル等の高シェアー下で分散させるような使用分野においては、粒子が砕け易い性質の為かその効果が失われてしまうという傾向がある。そのため合成皮革、プラスチック等のコーティングの分野において艶消しに有用な添加剤としては利用されていなかつた。」

(6)甲6の記載事項
・「【0030】
一般に、低光沢組成物は、ポリマー基体、例えばポリプロピレン組成物を本発明に包含されるシリカ添加剤と溶融混合することによって、好都合に形成される。
【0031】
本発明は、次のものから選択される、殊に化学的に製造された及び/又は熱分解法シリカ添加剤に関する:例えばACEMATT(登録商標)なる商品名でDegussaから市販されているもの、例えば表面変性された熱分解法シリカ;例えばレーザー回折で測定された約9μmの粒度d50値を有するシリカ、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)3300、沈殿法で得られ、3μmの平均凝集物粒度(平均TEM)を有する未処理のシリカ、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)HK400又はACEMATT(登録商標)HK450、それぞれ、2.5μmの平均凝集物粒度(平均TEM)を有する、沈殿法、熱沈殿法で得られた未処理のシリカ、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)HK460、有機表面−処理され、3μmの平均凝集物粒度(平均TEM)を有する、容易に分散可能な沈降シリカ剤、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)OK412、有機表面−処理され及び3μmの平均凝集物粒度(平均TEM)を有する、容易に分散可能な沈降シリカ、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)OK500又はACEMATT(登録商標)OK520、それぞれ、有機表面処理され及び2μmの平均凝集物粒度(平均TEM)を有する、容易に分散可能な、非常に微細な沈降シリカ、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)OK607、4μmの平均凝集物粒度(平均TEM)を有する、熱処理されていない沈降/熱沈降シリカ、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)TS100、レーザー回折(ISO 13320−1と類似の)で測定された約9.5μmの粒度d50値を有する、シリカ添加剤をベースとする熱分解法シリカ又は殊に沈降法で得られた未処理のシリカ、例えばDegussaからのACEMATT(登録商標)HK440(CAS No.:112926−00−8)である。"Degussa"は、Evonik Degussa GmbH,Frankfurt,Germanyである。」

(7)甲7の記載事項
・「【特許請求の範囲】
1. 凝集シリカゲルであって、合成もしくは天然の層化シリケート(フィロシリケート)、高温分解(ピロジェニック)二酸化ケイ素および水溶性もしくは水分散性有機ポリマーから選択される結合剤と粒子サイズが1から20μmで表面が200から1000m2/gで比細孔容積が0.4から2.5ml/gのシリカゲル粒子から生じさせた凝集シリカゲル。
・・・
11. 請求の範囲第1から5項いずれか記載の製品または請求の範囲第6から10項いずれかに従って製造した製品の使用であって、コーティング用艶消し剤としての使用。
・・・」

2 対比・判断
2−1 甲1を主引例とする場合
2−1−1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
・後者の「基材層1」、「加飾シート」は、前者の「基材」、「化粧材」にそれぞれ相当する。
・後者の「無機粒子」は「艶を低下させる機能を有する」ものであるから、前者の「艶消し剤」に相当する。
・後者の「第2の保護層3」は「高艶状態(グロス)」とし、「第1の保護層2」は「低艶状態(マット)」としているものであるから、前者の「第1の艶調整層」、「第2の艶調整層」にそれぞれ相当する。また、後者の「第1の保護層2」は「低艶状態(マット)」としているものであるから、前者の「相対的に艶の低い艶調整層」にも相当する。

そして、上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
・後者の「少なくとも、基材層1と、第1の保護層2と、前記第1の保護層2の一部の上に設けられた第2の保護層3とをこの順に有し」、「第2の保護層3を高艶状態(グロス)とし、第1の保護層2を低艶状態(マット)とし、両層間、ひいては第2の保護層3の形成部と非形成部との間に艶差を発現させることにより、加飾シートに高い立体感を付与することができるものであ」ることは、前者の「基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え」ることに相当する。
・後者の「第1の保護層2は、第1の保護層2の艶を低下させる機能を有する無機粒子を含んでおり、」「第2の保護層3を高艶状態(グロス)とし、第1の保護層2を低艶状態(マット)とし、両層間、ひいては第2の保護層3の形成部と非形成部との間に艶差を発現させることにより、加飾シートに高い立体感を付与することができるものであ」ることと、前者の「前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、相対的に艶の低い艶調整層に、粒径が層厚の1.0倍以上の艶消し剤が添加されており」ということとは、「前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、相対的に艶の低い艶調整層に、艶消し剤が添加されて」いることにおいて共通する。

・以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1〕
「基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、相対的に艶の低い艶調整層に、艶消し剤が添加されている、化粧材。」

〔相違点1−1〕
艶消し剤の粒径に関し、本件発明1では、「粒径が層厚の1.0倍以上」であるのに対し、甲1発明では、そのような特定がされていない点。

〔相違点1−2〕
艶消し剤に関し、本件発明1では、「1次粒子が2次凝集して形成された粒子である」のに対し、甲1発明では、そのような特定がされていない点。

〔相違点1−3〕
第1艶調整層及び第2艶調整層に関し、本件発明1では、「前記第1艶調整層を構成する樹脂組成物は、メラミン系、アミノアルキッド系、または、尿素系の樹脂であり、前記第2の艶調整層を構成する樹脂組成物は、アミノアルキッド系の樹脂である」という事項を有するのに対し、甲1発明では、「第1の保護層」(第2の艶調整層に相当)が、「多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されてなり」、「第2の保護層」(第2の艶調整層に相当)が、「エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂により形成されてなる」ものであり、上記事項を有していない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず、相違点1−3について検討する。
申立人が提出した甲8(国際公開第2008/129667号)には、以下の記載がある。
・「[0037] 上記第1保護層7と第2保護層9は、高強度の塗膜を形成する反応性硬化型樹脂で、アミノアルキッド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル樹脂等を主成分としており、両者は同一の樹脂であっても異なった樹脂であってもよい。
[0038] 第1保護層には上記樹脂に適宜艶消剤を添加するが、その艶消剤としては、一般的な従来のシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレイ、タルク等の無機質微粉末でよい。
[0039] 第2保護層9に関しても、前記樹脂に球状粒子8を添加して形成される。・・・」

また、申立人が提出した甲9(特開2008−87269号公報)には、以下の記載がある。
・「【0018】
次に、第1の表面保護層4及び第2の表面保護層5は硬化性樹脂組成物の架橋硬化したもので構成される。硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物に用いる熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂が挙げられる。・・・」
・「【0025】
本発明の化粧シートは、第1の表面保護層4の上に第2の表面保護層5が部分的に設けられ、第1の表面保護層4には艶消剤が含まれる。艶消剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の無機塩類やシリカ、タルク等の無機粉体が用いられ、通常、該艶消剤の平均粒子径は0.1〜5μmの範囲である。艶消剤の添加量は、化粧シートに望まれる艶消し感の程度によって適宜設定すればよく、通例、表面保護層を構成するための樹脂組成物に対して1〜30質量%(固形分換算)の範囲である。
また、第2の表面保護層5には艶消剤が含有されていてもよく、後に詳述するように、艶消剤を配合することで、化粧シートの最表面において、第2の表面保護層部分8と第1の表面保護層の露出した部分9の光沢差を繊細に制御することができる。第2の表面保護層5に用いられる艶消剤としては、第1の表面保護層4で用いられるものと同様のものを用いることができる。」

ここで、甲1発明は、「第1の保護層」(第2の艶調整層に相当)が、「多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されてなる」という事項を要するものであり、当該事項により、甲1の段落[0020]に記載の作用効果(上記1(1)ア参照。)を奏するものと認められる。
しかしながら、甲8、甲9には、それらに記載された樹脂が同様の作用効果を奏することは示されていないし、それらに記載された樹脂が同様の作用効果を奏することが技術常識であると認めるに足る証拠もないことから、甲1発明において、甲8、甲9に記載された樹脂を適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
なお、艶消し剤としてのシリカとして、1次粒子が2次凝集して形成された粒子を用いることが周知技術であることの例示文献である甲3〜7(上記1(3)〜(7)参照。)にも、上記相違点1−3に係る本件発明1の事項の開示はない。
したがって、甲1発明において、上記相違点1−3に係る本件発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。

(3)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲8、甲9に記載された事項、及び周知技術(甲3〜7)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2−1−2 本件発明2〜11について
本件発明2〜11は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記2−1−1で説示したのと同様の理由により、甲1発明、甲8、甲9に記載された事項、及び周知技術(甲3〜7)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2−2 甲2を主引例とする場合
2−2−1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
・後者の「基材層11」、「加飾シート10」は、前者の「基材」、「化粧材」にそれぞれ相当する。
・後者の「艶消し剤としての」「シリカ」は、前者の「艶消し剤」に相当する。
・後者の「表面保護層15」は「高艶状態(グロス)」とし、「低艶層16」は「低艶状態(マット)」としているものであるから、前者の「第1の艶調整層」、「第2の艶調整層」にそれぞれ相当する。また、後者の「低艶層16」は「低艶状態(マット)」としているものであるから、前者の「相対的に艶の低い艶調整層」に相当する。

そして、上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
・後者の「基材11上に少なくとも表面保護層15と該表面保護層15上に部分的に設けられた低艶層16を有」し、「相対的に表面保護層15を高艶状態(グロス)、低艶層16を低艶状態(マット)とし、両層間の艶差を発現させた」ことは、前者の「基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え」ることに相当する。
・後者の「艶消し剤としての平均粒子径2μmのシリカを10質量部含有させた低艶層形成用電子線硬化性樹脂組成物を用い、上記絵柄層の木目柄の導管部に同調するように、また、硬化後の厚さが1μmとなるように、グラビア印刷により塗工し、硬化させて低艶層を得て、相対的に表面保護層15を高艶状態(グロス)、低艶層16を低艶状態(マット)とし、両層間の艶差を発現させた」ことは、シリカの平均粒子径が低艶層16の厚さの2倍となることから、前者の「前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、相対的に艶の低い艶調整層に、粒径が層厚の1.0倍以上の艶消し剤が添加されて」いることに相当する。

・以上のことから、本件発明1と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2〕
「基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、
前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、相対的に艶の低い艶調整層に、粒径が層厚の1.0倍以上の艶消し剤が添加されている、化粧材。」

〔相違点2−1〕
艶消し剤に関し、本件発明1では、「1次粒子が2次凝集して形成された粒子である」のに対し、甲2発明では、そのような特定がされていない点。

〔相違点2−2〕
第1艶調整層及び第2艶調整層に関し、本件発明1では、「前記第1艶調整層を構成する樹脂組成物は、メラミン系、アミノアルキッド系、または、尿素系の樹脂であり、前記第2の艶調整層を構成する樹脂組成物は、アミノアルキッド系の樹脂である」という事項を有するのに対し、甲2発明では、「表面保護層15」(第1の艶調整層に相当)が「電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであ」り、「低艶層16」(第2の艶調整層に相当)が、「低艶層形成用電子線硬化性樹脂組成物を用い」ているものであって、上記事項を有していない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず、相違点2−2について検討する。
甲8、甲9には、上記2−1−1(2)で示した樹脂が記載されている。
ここで、甲2発明は、「表面保護層15」(第1の艶調整層に相当)が「電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を75:25〜25:75の比率(質量比)で含む樹脂組成物を架橋硬化したものであ」るという事項を要するものであり、当該事項により、甲2の段落【0010】、【0027】に記載の作用効果(上記1(2)ア参照。)を奏するものと認められる。
しかしながら、甲8、甲9には、それらに記載された樹脂が同様の作用効果を奏することは示されていないし、それらに記載された樹脂が同様の作用効果を奏することが技術常識であると認めるに足る証拠もないことから、甲2発明において、甲8、甲9に記載された樹脂を適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
なお、艶消し剤としてのシリカとして、1次粒子が2次凝集して形成された粒子を用いることが周知技術であることの例示文献である甲3〜7(上記1(3)〜(7)参照。)にも、上記相違点2−2に係る本件発明1の事項の開示はない。
したがって、甲2発明において、上記相違点2−2に係る本件発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。

(3)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲8、甲9に記載された事項、及び周知技術(甲3〜7)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2−2−2 本件発明2〜11について
本件発明2〜11は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記2−2−1で説示したのと同様の理由により、甲2発明、甲2、甲8、甲9に記載された事項、及び周知技術(甲3〜7)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由
取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。
(1)理由A:新規性(特許法第29条第1項第3号
訂正前の請求項1〜12に係る発明は、甲1に記載された発明、または、甲2に記載された発明である。

(2)理由B:明確性要件(特許法第36条第6項第2号
訂正前の請求項1〜12に係る発明は、明確でない。

(3)理由C:サポート要件(特許法第36条第6項第1号
訂正前の請求項1〜12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(4)理由D:実施可能要件(特許法第36条第4項第1号
発明の詳細な説明は、訂正前の請求項1〜12に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

2 当審の判断
(1)理由Aについて
上記第5の2で説示したとおり、本件発明1〜11と、甲1発明または甲2発明との間には、実質的な相違点が存在するのであるから、本件発明1〜11は、甲1発明または甲2発明ではない。

(2)理由Bについて
申立人は、特許異議申立書(21〜35ページ参照。)において、本件発明の「粒径」の定義が不明確である旨主張する。
しかしながら、粒径は粒状製品の仕様として一般に用いられるものであり、本件発明において、そのような仕様の粒子を用いていることを示すにすぎないことは、本件明細書の段落【0048】、【0049】から明らかであり、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明確ではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(3)理由Cについて
申立人は、特許異議申立書(36〜45ページ参照。)において、本件発明の「粒径」の定義が不明確であるから、サポート要件を満たしていないし、また、「相対的に艶の低い艶調整層に、粒径が層厚の1.0倍以上の艶消し剤が添加されて」いることは、サポート要件を満たしておらず、さらに、艶消し剤自体の粒径や材質が特定されていないからサポート要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら、「粒径」については、上記(2)で説示したとおりであるし、本件明細書の段落【0038】に、艶消し剤の機序として、艶調整層の表面に凹凸を付与することにより、斜めから観察しても光沢度が上昇しないことが記載されていることから、1.0倍以上であればそのような作用を奏することが理解できるし、上限値の限定がなくとも、凹凸が付与されれば、そのような作用を奏することも理解でき、また、艶消し剤自体の粒径や材質によらずとも、層の厚さと艶消し剤の粒径が関連していることも理解できるので、サポート要件を満たしていないとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(4)理由Dについて
申立人は、特許異議申立書(45〜47ページ参照。)において、本件発明は、「粒径」に関する規定が不明確であり、また、層厚に対する艶消し剤の粒径の比率の上限値の特定もないから、過度の試行錯誤を必要とするものであり、実施可能要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら、「粒径」については上記(2)で述べたとおりであるし、上記(3)で述べたとおり、本件明細書の段落【0038】に艶消し剤の機序も記載されていることから、本件発明の実施に過度の試行錯誤を要するような事情は見当たらない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

3 小括
以上のとおりであるから、理由A〜Dにより、本件請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項12に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、本件請求項12に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、
前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、相対的に艶の低い艶調整層に、粒径が層厚の1.0倍以上の艶消し剤が添加されており、
前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であり、
前記第1の艶調整層を構成する樹脂組成物は、メラミン系、アミノアルキッド系、または尿素系の樹脂であり、前記第2の艶調整層を構成する樹脂組成物は、アミノアルキッド系の樹脂であることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、
前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層と重なる部分に形成され、前記柄インキ層の柄模様と前記第2の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、
前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、
前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分に形成され、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項4】
前記第2の艶調整層は、露出していることを特徴とする請求項3に記載の化粧材。
【請求項5】
前記艶消し剤は、無機材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項6】
前記艶消し剤は、前記艶消し剤が添加された前記艶調整層を構成する樹脂組成物100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下の範囲内で添加されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項7】
前記艶消し剤は、相対的に艶の高い艶調整層にも添加されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項8】
前記第1の艶調整層に添加する前記艶消し剤の粒径は、前記第2の艶調整層に添加する前記艶消し剤の粒径と同じであることを特徴とする請求項7に記載の化粧材。
【請求項9】
前記第1の艶調整層に添加された前記艶消し剤の含有量は、前記第2の艶調整層に添加された前記艶消し剤の含有量よりも多いことを特徴とする請求項7または8に記載の化粧材。
【請求項10】
前記艶消し剤の粒径は、2μm以上15μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項11】
前記艶消し剤の粒径は、前記艶消し剤が添加された前記艶調整層の層厚の3.0倍以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項12】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2024-03-15 
出願番号 P2018-519656
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 536- YAA (B32B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 八木 誠
一ノ瀬 覚
登録日 2021-10-11 
登録番号 6958550
権利者 TOPPANホールディングス株式会社
発明の名称 化粧材  
代理人 宮坂 徹  
代理人 宮坂 徹  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 廣瀬 一  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 廣瀬 一  

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