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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 特29条の2 C08L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L |
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管理番号 | 1411277 |
総通号数 | 30 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2024-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-03-17 |
確定日 | 2024-03-27 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第7169127号発明「熱可塑性エラストマー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7169127号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 特許第7169127号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7169127号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成30年8月30日に出願された特願2018−161478号に係る出願であって、令和4年11月1日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年3月17日付けで特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下、「申立人1」という。)により特許異議の申立てがされるとともに、同年4月18日付けで特許異議申立人 浅野 幸義(以下、「申立人2」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後、令和5年8月31日付けで取消理由通知が通知された後、その指定期間内である同年11月30日付けで特許権者であるアロン化成株式会社(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年12月14日付けで特許法第120条の5第5項の通知後、申立人2より令和6年1月9日付けで意見書が提出され、申立人1より同年同月16日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年11月30日付けの訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「酸化防止剤C 0.1〜10質量部」と記載されているのを、「酸化防止剤C 0.3〜3質量部」に訂正する。 また、請求項1の記載を引用する請求項2〜4も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物を含有する」と記載されているのを、「前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である」に訂正する。 また、請求項1の記載を引用する請求項2〜4も同様に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし4について、請求項2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1による訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「酸化防止剤C」の含有量を「0.1〜10質量部」から「0.3〜3質量部」と数値範囲を狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 また、「酸化防止剤C」の含有量の下限値「0.3質量部」及び上限値「3質量部」については、願書に添付した明細書の段落【0040】及び【0098】の表5(実施例6)に記載されている。そうすると、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし4も同様である。 (2)訂正事項2による訂正について 訂正事項2による請求項1についての訂正は、「エステル交換触媒失活剤B」を「酸性リン酸エステル化合物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項2による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書の段落【0023】及び【0098】表5の実施例に記載されているから、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし4も同様である。 4 むすび 以上のとおり、請求項1ないし4についての本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし4を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、エステル交換触媒失活剤B 0.1〜10質量部、及び酸化防止剤C 0.3〜3質量部を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である、熱可塑性エラストマー組成物(ただし、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものを除く)。 【請求項2】 酸化防止剤Cが芳香族アミン系酸化防止剤を含有する、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項3】 さらに、ポリアミド系樹脂Dを含有する、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項4】 さらに、カルボジイミド化合物Eを含有する、請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、証拠方法及び取消理由の概要等 1 申立人1が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法 (1)申立理由1−1(甲第1号証に基づく拡大先願) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願(甲第1号証)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)証拠方法 甲第1号証:特願2017−64411号(特開2018−168212号) 2 申立人2が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法 (1)申立理由2−1(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2−2(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由2−3(甲第2号証に基づく拡大先願) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願(甲第2号証)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由2−4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由2−5(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由2−6(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (7)証拠方法 甲第1号証:特開2012−255068号公報 甲第2号証:特願2017−64411号(特開2018−168212号) 甲第3号証:特開平8−277358号公報 甲第4号証:国際公開2017/104707号 以下、順に「甲2−1」ないし「甲2−4」という。 なお、甲2−2は、申立人1が提出した甲第1号証と同じものである。 3 取消理由の概要 令和5年8月31日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(甲2−1に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2−1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(甲2−2に基づく拡大先願) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲2−2に示される特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)取消理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 4 令和5年11月30日付けの意見書に添付された証拠方法 乙第1号証:実験成績証明書(作成日;令和5年11月27日 作成者;アロン化成株式会社エラストマー事業部エラストマー開発グループ 早川祐生 目的;エステル交換触媒失活剤B (酸性リン酸エステル)を含有する熱可塑性エラストマー組成物における酸化防止剤Cの併用による耐熱老化性の効果の確認) 乙第2号証:高橋雅之、「リン系酸化防止剤の研究開発動向」、マテリアルライフ(Materials Life)、1993年10月、第5巻、第4号、p.89〜95 乙第3号証:プラスチック用添加剤 アデカスタブ 製品一覧、株式会社ADEKA、表紙、目次、p.6及び奥付 以下、順に「乙1」ないし「乙3」という。 第5 当審の判断 1 取消理由通知書に記載した取消理由について 申立理由2−1(甲2−1に基づく新規性)、申立理由2−2(甲2−1に基づく進歩性)は、取消理由1(甲2−1に基づく進歩性)と主引用文献を同じくするものであるから、取消理由1と併せて検討する。また、申立人1の申立理由1(甲第1号証に基づく拡大先願)、申立人2の申立理由2−3(甲2−2に基づく拡大先願)は、取消理由2(甲2−2に基づく拡大先願)と先願を同じくするものであるから、取消理由2と併せて検討する。さらに、申立理由2−4(サポート要件)は、取消理由3(サポート要件)と主旨を同じくするものであるから、取消理由3と併せて検討する。 (1)取消理由1(甲2−1に基づく進歩性)、申立理由2−1(甲2−1に基づく新規性)、申立理由2−2(甲2−1に基づく進歩性)について ア 甲2−1に記載される発明の認定 甲2−1の実施例12に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「環状ポリエステルオリゴマー(成分B−1)750gを2リットル容のカップに計量した後、スパーテルを用いて手で成分Bを攪拌しながら、ポリエステル重合触媒(成分C−1)13.5gをスポイトで滴下し、ついで攪拌を継続し、液状の成分Cに濃度的な偏りが無くなったのを目視で確認して、攪拌を完了し、さらに、該混合物を室温で30分放置し、養生した後、反応性基含有エラストマー(成分A−1)1750gに添加し、均一に混合して原料混合物を得、温度(C1、C2:120℃、C3〜C8:240℃、D:240℃、C1〜C8は上流側からのバレル番号であり、Dはダイである)に設定した25φの同方向平行二軸押出機(ブラベンダー(株)製 DSE25型、L/D=54、ダイ形状:3mmφストランド)の原料ホッパーに原料混合物を投入し、計量フィーダー回転数12r/minで、押出機内に定量的に原料を供給し、押出機スクリュー回転数120r/minで溶融混合して得られた反応混合物(熱可塑性エラストマー)100重量部に対して、熱安定剤(成分E−2)0.3重量部を添加し、温度(C1:180℃、C2:200℃、C3〜C5:230℃、C6〜C8:240℃、D:240℃、C1〜C8は上流側からのバレル番号であり、Dはダイである)に設定した25φの同方向平行二軸押出機(ブラベンダー(株)製 DSE25型、L/D=54、ダイ形状:3mmφストランド)の原料ホッパーに混合物を投入し、計量フィーダー回転数12r/minで、押出機内に定量的に原料を供給し、押出機スクリュー回転数120r/minで溶融混合して得られた熱可塑性エラストマー。 成分A−1:(株)クラレ製アクリルエラストマー「クラリティー LA2330」 Tg=−23℃、Tm=180℃ 成分B−1:Cyclics Corp.製「CBT−100」(環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー) 成分C−1:チタン系ポリエステル重合触媒、マツモトファインケミカル(株)製 「オルガチックスTC−400」 成分E−2:(株)アデカ製「アデカスタブAX−71」モノ及びジ−ステアリルアシッドホスフェートの混合物」(以下、「甲2−1発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明の技術的意義について 本件特許明細書の一般的記載を見てみると、段落【0039】に、「酸化防止剤はそれ自体に熱可塑性ポリエステル系エラストマーの耐熱老化性を向上させる効果があるが、その効果は持続性がなく、酸化防止剤自身の分解に伴って徐々に効果を失う。しかしながら、本発明は、酸化防止剤Cをエステル交換触媒失活剤Bと併用したときには相乗効果を生じ、長期間にわたって耐熱老化性を維持し続けるという特徴を有する。」と記載されていることから、本件特許発明は、「酸化防止剤Cをエステル交換触媒失活剤Bと併用したときに耐熱老化性に相乗効果を生じ、長期間にわたって耐熱老化性を維持し続ける」という効果を奏することが記載されているといえる。 次いで、本件特許明細書の実施例、比較例を見てみると、例えば、酸化防止剤Cとして、芳香族アミン系酸化防止剤1質量部を含有する実施例1と比較例3を対比すると、エステル交換触媒失活剤Bを併用しない比較例3は、250hrの伸び保持率が「13%」、500hrの伸び保持率が「崩壊」となっているのに対し、エステル交換触媒失活剤B(酸性リン酸エステルA:(株)アデカ製「AX−71」)0.5質量部を併用した実施例1は、250hrの伸び保持率が「83%」、500hrの伸び保持率が「21%」となっている。 そして、特許権者は、令和5年11月30日付けの意見書に添付して以下に示す乙1の実験成績証明書を提出している。 乙1によると、エステル交換触媒失活剤B(酸性リン酸エステルA)0.5質量部を含有するものの、酸化防止剤Cを併用しない実験例1は、250hrの伸び保持率及び500hrの伸び保持率が共に「崩壊」となっており、エステル交換触媒失活剤B(酸性リン酸エステルA)0.5質量部を含有すると共に、酸化防止剤C(芳香族アミン系酸化防止剤)を0.1、0.2、0.3質量部含有する実験例2〜4は、500hrの伸び保持率が、各々「崩壊」、「崩壊」、「1%」となっている。 実施例1、比較例3、追加の実験例1の結果を参酌すると、酸化防止剤C、エステル交換触媒失活剤Bを単独で使用した場合には、500hrの伸び保持率が「崩壊」となるのに対し、酸化防止剤Cをエステル交換触媒失活剤Bと併用した実施例1では、500hrの伸び保持率が「21%」となっており、耐熱老化性について「相乗効果」が生じていることが裏付けられているといえる。 そうすると、本件特許発明は、「酸化防止剤Cをエステル交換触媒失活剤Bと併用したときに耐熱老化性に相乗効果を生じ、長期間にわたって耐熱老化性を維持し続ける」という技術的意義を有するものである。 (イ)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2−1発明とを対比する。 甲2−1発明の「反応混合物(熱可塑性エラストマー)」は、「環状ポリエステルオリゴマー(成分B−1)」と「反応性基含有エラストマー(成分A−1)」を反応させて得られていることから、本件特許発明1の「熱可塑性ポリエステル系エラストマーA」に相当する。 甲2−1発明の「熱安定剤(成分E−2)」である「(株)アデカ製「アデカスタブAX−71」モノ及びジ−ステアリルアシッドホスフェートの混合物」は、本件特許発明1の実施例で使用されているのと同じ製品であり、本件特許発明1の「酸性リン酸エステル化合物」及び「エステル交換触媒失活剤B」に相当する。 また、甲2−1発明の「熱安定剤(成分E−2)」は、反応混合物(熱可塑性エラストマー)100重量部に対して、0.3重量部添加しているから、甲2−1発明は、本件特許発明1の「該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、エステル交換触媒失活剤B 0.1〜10質量部を含有してなる」事項と重複一致する。 さらに、甲2−1発明の「熱可塑性エラストマー」は、「反応混合物(熱可塑性エラストマー)」と「熱安定剤(成分E−2)」を溶融混合して得られたものであり、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものではないから、本件特許発明1の「熱可塑性エラストマー組成物(ただし、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものを除く)」に相当する。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1−1>で相違する。 <一致点> 熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、エステル交換触媒失活剤B 0.1〜10質量部を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である、熱可塑性エラストマー組成物(ただし、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものを除く)。 <相違点1−1> 本件特許発明1が「該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、酸化防止剤C 0.3〜3質量部を含有してなる」ものであるのに対し、甲2−1発明は酸化防止剤を含有していない点 そこで、<相違点1−1>について検討する。 まず、当該相違点は、実質的な相違点であるため、本件特許発明1は甲2−1発明ではなく、新規性を有する。 次いで、本件特許発明1の進歩性について検討する。 甲2−1の段落【0047】には、「熱安定剤Eとしては、リン含有化合物、ヒドラジド化合物、有機イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられるが、その他ポリエステル重合触媒Cとキレート形成するなどして該触媒の活性を低減させる化合物も利用可能である。」と、熱安定剤Eとして、リン含有化合物と同列に、酸化防止剤を利用可能であることが記載されている。 しかしながら、甲2−1には、熱安定剤として、酸性リン酸エステル化合物などのリン含有化合物と共に酸化防止剤を併用することは明記されていないし、さらに、両者を併用することで耐熱老化性に相乗効果が生じることについては記載も示唆もされていない。 また、申立人2が提出した甲2−2ないし甲2−4にも、酸性リン酸エステル化合物と共に酸化防止剤を併用することで、耐熱老化性に相乗効果が生じることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲2−1発明において、熱安定剤として、酸化防止剤を積極的に併用する動機付けがあるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、耐熱老化性に相乗効果を生じ、長期間にわたって耐熱老化性を維持し続ける、という効果を奏するものであるところ、当該効果が奏されることは、甲2−1ないし甲2−4に記載も示唆もされておらず、また、当業者の技術常識を参酌したとしても当業者が予測し得るものではない。 したがって、本件特許発明1は、甲2−1発明、すなわち甲2−1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、甲2−1に記載された発明ではないし、また、甲2−1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の主張 申立人1は、令和6年1月16日付けの意見書において、以下の主張を行っている。 ・主張a「・・・本件訂正発明1では、酸化防止剤Cの種類は特に限定されていない。そうすると、たとえば、実施例8において酸化防止剤の合計は1質量部であり、上記実施例1、3、6と同列である。上記表5に示されるように、実施例8では、500hrでの伸び保持率が2%である。これに対し、比較例8では、500hrでの伸び保持率が1%である。そうすると、実施例3、実施例8、比較例8は、いずれも500hrでの伸び保持率がわずか1〜3%程度である。・・・実施例3、実施例8において示されるごとく、伸び保持率がわずか2〜3%程度であることは、すなわち、本来100伸びるものが、たかが2や3だけでも伸ばせば破断してしまうほど劣化しているのであり、著しく劣化しているという点においては、「崩壊」と比べて「決定的な差異がある」とまで到底言い切れず、まして耐熱老化性が向上しているともいえないことが明らかである。また、上記のとおり、比較例8では1%であった伸び保持率が、わずか2%や3%となった程度では、結局のところ、比較例とはほとんど差異がなく、何ら顕著な効果ともいえないことが明らかである。・・・以上のとおりであるから、上記訂正事項1が盛り込まれた本件訂正発明1は、依然として甲2−1に基づいて容易に想到し得るし、その効果に関しても、進歩性を有すると判断され得るような有利な効果ではない。」(第4ページ下から第1行〜第6ページ第3行) また、申立人2は、令和6年1月9日付けの意見書において、以下の主張を行っている。 ・主張b「表5の実施例6は、成分Cとして芳香族アミン系酸化防止剤を使用した例にすぎず、広く酸化防止剤一般に通用する上限値の数値の根拠とすることは到底できないものである。表5の成分Cには、酸化防止剤Cとして芳香族アミン系以外にヒンダードフェノール系、チオエーテル系、ホスファイト系が挙げられており、このように酸化防止剤の系統の種類が変われば、その効果も大きく変動するのは技術常識である。 そうすると、訂正請求で行なった請求項1中の酸化防止剤Cの含有割合の上限値(3質量部)の限定は、酸化防止剤Cを芳香族アミン系に限定しない限り、本件特許明細書には技術的裏付けとなる根拠がないと言わざるをえない。 さらに述べると、訂正請求で行なった請求項1中の酸化防止剤Cの含有割合の下限値(0.3質量部)の限定についても、本件特許明細書の段落【0040】において言及された広い範囲の記載に基づくものであり、表5の実施例から見て、その広い範囲の含有割合の下限値(0.3質量部)についても、その効果を裏付ける板拠がない。・・・ そうすると、訂正請求で行なった請求項1中の酸化防止剤Cの含有割合の下限値(0.3質量部)についてもまた、酸化防止剤を芳香族アミン系に限定しない限り、本件特許明細書には技術的な裏付けとなる根拠がないと言わざるをえない。また、訂正した請求項1中の酸化防止剤Cの含有割合の下限値(0.3質量部)は、その効果から見て、表5の実施例3に基づいて0.5質量部に限定しない限り、同様に根拠がない。」(第2ページ第1行〜下から第1行) ・主張c「特許権者は、酸化防止剤Cの含有割合が0.3%以下の4例を実験例と称して、実験成績証明書を提出している。まず第一に、この実験成績証明書の形での実験例の提出は、出願時に認識していない効果又は実証できていない効果を出願後の知的作業で顕著にさせようとするものであり、到底認められるべきものではない・・・」(第3ページ下から第8行〜第3ページ下から第3行) ・主張d「酸化防止剤の含有割合の下限値(0.5質量部)をとる表5の実施例3の耐熱老化性の伸び保持率(150℃)の500hrを見ると、3%と低い値をとっており、崩壊(0%)に極めて近いことがわかる。 即ち、本件特許明細書によれば、芳香族アミン系酸化防止剤の含有割合が0.5質量部では、耐熱老化性の効果が極めて低く、本件特許発明の目的を達成できない。 この点から、酸化防止剤Cは、その系統種類を芳香族アミン系に限定するだけでなく、その含有割合の下限値を他の効果がある実施例に基づいてせめて1質量部まで上げなければ、実験成績報告書の提出を仮に認めたとしても、効果(b)(当審注:エステル交換触媒失活剤B(酸性リン酸エステル)を含有するエラストマー組成物における酸化防止剤Cの併用による耐熱老化性の効果)の主張は到底認められないことは言うまでもない。」(第4ページ第3〜13行) (イ)申立人の主張の検討 ・主張a、主張b及び主張dについて これらの主張は、要するに、酸化防止剤Cとしてヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用した場合しか、その含有割合の下限値(0.3質量部)及び上限値(3質量部)について技術的な裏付けとなる根拠はないし、500hrの伸び保持率の値の低さから、訂正後の本件特許発明は、顕著な効果が奏されない範囲を含むというものである。 そこで、以下、検討する。 酸化防止剤Cとして、ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.5質量部及びチオエーテル系酸化防止剤0.5質量部を使用した実施例7の500hrの伸び保持率は「14%」となっており、芳香族アミン系酸化防止剤を使用した実施例1と同じく、顕著な効果を奏しているといえる。 そうすると、「酸性リン酸エステル化合物」を併用することにより耐熱老化性が向上する効果は、「酸化防止剤」の種類は問わないものと当業者は理解するものである。 そして、酸化防止剤の含有割合が0.5質量部の実施例3の耐熱老化性の500hrの伸び保持率は、「3%」と一見して低い数値ではであるものの、比較例1、3において「崩壊」となっている結果に比べてみれば、有意な差があるといえる。 よって、上記主張a、主張b及び主張dを首肯することができない。 ・主張cについて 申立人が主張するように、出願時に認識していない効果又は実証できていない効果を出願後の知的作業によって顕著にさせる場合にあっては、先願主義の観点から、実験成績証明書等の提出を認めるべきではない。 しかしながら、本件にあっては、本件特許明細書の一般的記載において、「酸化防止剤Cをエステル交換触媒失活剤Bと併用したときに耐熱老化性に相乗効果を生じ、長期間にわたって耐熱老化性を維持し続ける」という事項が記載されている。そして、乙1である実験成績証明書は、取消理由において、「本件特許明細書には、酸化防止剤Cを用いず、エステル交換触媒失活剤Bのみを配合した比較例が示されておらず、相乗効果か相加効果のいずれであるのか評価することができないため、本件特許発明1に「エステル交換触媒失活剤B及び酸化防止剤C」を併用したことによる相乗効果を直ちに認めることはできない。」と通知したことに対して行われたものである。そして、追加の実験例1〜3は比較対象としてのものであるため、申立人が主張するような、出願時に認識していない効果又は実証できていない効果を出願後の知的作業によって顕著にさせるものとまではいえない。 よって、上記主張cを首肯することができない。 エ 小括 したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから請求項1ないし4に係る特許は、取消理由1、申立理由2−1及び申立理由2−2によっては取り消すことはできない。 (2)取消理由2(甲2−2に基づく拡大先願)、申立理由1(甲第1号証(甲2−2)に基づく拡大先願)及び申立理由2−3(甲2−2に基づく拡大先願)について ア 先願発明の認定 甲2−2として示される特許出願の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下、「先願明細書」という。)の実施例9に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「下記熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)89重量%、下記熱可塑性ポリエステルエラストマー(B−1)10重量%、下記酸性リン酸エステル(C)1重量%を、V−ブレンダーを用いて混合し、直径45mmで3条ネジタイプのスクリューを有する2軸押出機を用いて200℃で溶融混練して得られたペレット。 [熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)] 結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)となるテレフタル酸443部及びイソフタル酸190部、脂肪族ポリエーテル単位及び脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)となる数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール177部、さらに1,4−ブタンジオール327部、チタンテトラブトキシド1.8部をヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行い、反応混合物に“イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5部を添加した後、243℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせ、得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとしたもの。 [熱可塑性ポリエステルエラストマー(B−1)] 結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)となるテレフタル酸329部及びイソフタル酸96部、脂肪族ポリエーテル単位及び脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)となる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール467部、さらに1,4−ブタンジオール200部、チタンテトラブトキシド1.8部をヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行い、反応混合物に“イルガノックス1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5部を添加した後、243℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせ、得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとしたもの。 [酸性リン酸エステル(C)] モノ/ジオクタデシルホスフェート、“AX−71”、(株)ADEKA社製」(以下、「先願発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と先願発明とを対比する。 先願発明の「熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)」及び「熱可塑性ポリエステルエラストマー(B−1)」は、本件特許発明1の「熱可塑性ポリエステル系エラストマーA」に相当する。 先願発明の「酸性リン酸エステル(C)」である「(モノ/ジオクタデシルホスフェート、“AX−71”、(株)ADEKA社製)は、本件特許発明1の実施例でも使用されているのと同じ製品であり、本件特許発明1の「酸性リン酸エステル化合物」及び「エステル交換触媒失活剤B」に相当する。また、先願発明の「酸性リン酸エステル(C)」は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(B−1)100重量部に対して、1.01重量部添加しているから、先願発明は、本件特許発明1の「該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、エステル交換触媒失活剤B 0.1〜10質量部を含有してなる」事項と重複一致する。 さらに、先願発明の「ペレット」は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)と熱可塑性ポリエステルエラストマー(B−1)と酸性リン酸エステル(C)を溶融混練して得られたものであり、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものではないから、本件特許発明1の「熱可塑性エラストマー組成物(ただし、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものを除く)」に相当する。 そして、先願発明の「“イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)」は、本件特許発明1の「酸化防止剤」に相当する。先願発明のペレット中の「“イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)」の含有量について計算すると、先願発明の「熱可塑性ポリエステルエラストマー(A)」及び「熱可塑性ポリエステルエラストマー(B−1)」100質量部に対して、0.044質量部(=(89×0.5/(0.5+443+190+177+327)×100+(10×0.5/(0.5+329+96+467+200)×100)×100/(89+10))である。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点2−1>で相違する。 <一致点> 熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、エステル交換触媒失活剤B 0.1〜10質量部、及び酸化防止剤Cを含有してなる熱可塑性エラストマーであって、前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である、熱塑性エラストマー組成物(ただし、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものを除く)。 <相違点2−1> 熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対する酸化防止剤Cの含有量が、本件特許発明1は「0.3〜3質量部」であるのに対し、先願発明は「0.044質量部」である点 そこで、<相違点2−1>について検討する。 先願明細書の段落【0045】には、「さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、目的を損なわない範囲で必要に応じて、酸化防止剤・・・を添加することができる。」と記載されている。 しかしながら、先願明細書には、酸化防止剤の含有量の範囲についての記載はなく、また、酸性リン酸エステル化合物と共に酸化防止剤を併用することにより耐熱老化性に相乗効果が生じることについては記載も示唆もされていない。 そして、酸性リン酸エステル化合物と共に酸化防止剤を併用することで、耐熱老化性に相乗効果が生じることが本件特許出願時点の技術常識ともいえない。 そうすると、先願発明において,熱可塑性ポリエステル系エラストマーに添加する酸化防止剤Cの含有量を「0.044質量部」から「0.3〜3質量部」に変更することは、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえない。 よって、本件特許発明1は、先願発明と実質的に相違するものである。 (イ)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、先願発明と実質的に相違するものである。 ウ 申立人の主張の検討 申立人1は、令和6年1月16日付けの意見書において、以下の主張を行っている。 「取消理由1に関連して上記したとおり、本件訂正発明1において、酸化防止剤Cを0.3〜3質量部となるよう含んでいることにより奏される効果は、本件訂正発明1の熱可塑性エラストマー組成物が、500hrの伸び保持率の評価において、崩壊はせずとも、わずか2〜3%の伸び保持率を示す程度であったことから、何ら相乗効果も認められないし、顕著な効果であるとも言えない。 そうすると、今般の訂正によって、酸化防止剤(C)の含有量の範囲がわずかに減縮されたとはいえ、取消理由通知書で述べられたとおり、甲2−3、甲2− 4に示されるように、相違点2−1から減縮された訂正事項1は、周知の技術的事項であり、また、酸化防止剤を併用する相乗効果も認められない。 その結果、依然として訂正事項1は課題解決のための具体化手段における微差に過ぎず、本件訂正発明1は、甲2−2発明と実質同一であり・・・」 そこで、上記主張について検討するに、上記(1)ウ(イ)「・主張a、主張b及び主張dについて」で説示したように、酸化防止剤の含有割合が0.5質量部の実施例3の耐熱老化性の500hrの伸び保持率は、「3%」と一見して低い数値ではあるものの、比較例1、3において「崩壊」となっている結果に比べてみれば、有意な差があるといえる。 そして、上記(ア)で説示したように、先願明細書には、酸性リン酸エステル化合物と共に酸化防止剤を併用することにより耐熱老化性に相乗効果が生じることについては記載も示唆もされていない以上、上記相違点は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえない。 よって、申立人1の上記主張は首肯できない。 エ 小括 したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえないから請求項1ないし4に係る特許は、取消理由2、申立理由1及び申立理由2−3によっては取り消すことはできない。 (3)取消理由3(サポート要件)及び申立理由3(サポート要件)について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、上記判断基準にしたがって、以下検討する。 イ 本件特許発明の課題 本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0008】等より、「柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性に優れたポリエステル系の熱可塑性エラストマー組成物を提供すること」であるものと認められる。 ウ 検討 (ア)本件特許明細書の一般的記載を見てみると、段落【0009】に、「本発明者らが前記課題に対し鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル系エラストマーを、エステル交換触媒失活剤と酸化防止剤と混合することで、耐熱老化性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載され、段落【0039】に、「酸化防止剤はそれ自体に熱可塑性ポリエステル系エラストマーの耐熱老化性を向上させる効果があるが、その効果は持続性がなく、酸化防止剤自身の分解に伴って徐々に効果を失う。しかしながら、本発明は、酸化防止剤Cをエステル交換触媒失活剤Bと併用したときには相乗効果を生じ、長期間にわたって耐熱老化性を維持し続けるという特徴を有する。」と記載されている。 これらの記載から、酸化防止剤を配合した熱可塑性ポリエステル系エラストマーにおいて、エステル交換触媒失活剤を併用することにより、耐熱老化性が向上することが記載されているといえる。 そして、エステル交換触媒失活剤Bの含有量について、段落【0029】に、「エステル交換触媒失活剤Bの含有量は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.3〜8質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。」と記載され、酸化防止剤Cの含有量について、段落【0040】に、「酸化防止剤Cの含有量は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.3〜8質量部、より好ましくは0.7〜5質量部である。」と記載されている。 (イ)次いで、本件特許明細書の【実施例】には、エステル交換触媒失活剤Bと酸化防止剤Cを併用した12の実施例と8の比較例がある。これらについて見ていくと、例えば、ポリエステルエラストマーAのみの比較例1は、D硬度が「46」、引張破壊応力が「25MPa」、破断伸び率「699%」、250hrの伸び保持率、500hrの伸び保持率が共に「崩壊」となり、ポリエステルエラストマーAに酸化防止剤C(芳香族アミン系酸化防止剤)1質量部のみを配合した比較例3は、D硬度が「49」、引張破壊応力が「24MPa」、破断伸び率「620%」、250hrの伸び保持率が「13%」、500hrの伸び保持率が「崩壊」となっている。一方、ポリエステルエラストマーAに、エステル交換触媒失活剤B(オクタデシルアシッドフォスフェート)0.5質量部と酸化防止剤C(芳香族アミン系酸化防止剤)1質量部を併用した実施例1は、D硬度が「49」、引張破壊応力が「26MPa」、破断伸び率「744%」、250hrの伸び保持率が「83%」、500hrの伸び保持率が「21%」となっており、熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性に優れた結果となっている。 また、エステル交換触媒失活剤B(オクタデシルアシッドフォスフェート)を0.25〜1質量部と酸化防止剤C(芳香族アミン系酸化防止剤)の含有量を0.5〜1質量部に変化させた実施例3〜6も、実施例1と同様に、柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性に優れた結果となっている。 そして、エステル交換触媒失活剤Bである酸性リン酸エステル化合物として、アルキル(C12,C14,C16,C18)アシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェートを使用した実施例9及び10も、オクタデシルアシッドフォスフェートを使用した実施例1と同様に、柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性に優れた結果となっている。 これらの結果を考察すると、酸化防止剤C(芳香族アミン系酸化防止剤)を配合した熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、「酸性リン酸エステル化合物」の置換基の種類にかかわらず、「酸性リン酸エステル化合物」を併用することにより、熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性が向上するものと当業者は理解するものである。 加えて、酸化防止剤Cとして、ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.5質量部及びチオエーテル系酸化防止剤0.5質量部を使用した実施例7も芳香族アミン系酸化防止剤を使用した実施例1と同様に、柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性に優れた結果となっている。このため、「酸性リン酸エステル化合物」を併用することにより耐熱老化性が向上する事項は、「酸化防止剤」は、芳香族アミン系酸化防止剤に限られるものではなく、その種類は問わないものと当業者は理解するのが相当である。 (ウ)上記実施例・比較例の結果から考察される知見は、本件特許明細書の上記一般的記載を裏付けるものとなっている。そうすると、「熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーAに対して、エステル交換触媒失活剤B0.1〜10質量部、及び酸化防止剤C 0.1〜10質量部を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である、熱可塑性エラストマー組成物」である技術的事項により、本件特許発明の課題が解決できるものと認められる。 そして、本件特許発明1及び請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし4は、当該技術的事項を備えるものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できるものである。 したがって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 エ 取消理由3(サポート要件)及び申立理由2−4(サポート要件)の具体的理由について (ア)具体的理由 令和5年8月31日付けで通知した取消理由3(サポート要件)の具体的理由の概要は以下のとおりである。 理由a「本件特許発明1は、エステル交換触媒失活剤Bが「酸性リン酸エステル化合物1質量%、ヒドラジン系金属不活化剤99質量%」からなるものを包含するが、このような耐熱老化性が不十分となるエステル交換触媒失活剤を多く含むものが、本件特許発明の課題を解決し得るとは直ちに認めることはできない。」 また、申立理由2−4(サポート要件)の具体的理由の概要は、 理由b「本件特許発明1では、「前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物を含有する」と規定されており、「エステル交換触媒失活剤B」が「酸性リン酸エステル化合物」以外のものも含有する場合も権利請求しているが、本件特許明細書では、「エステル交換触媒失活剤B」として「酸性リン酸エステル化合物」以外のものを使用できることは何ら説明されていない。また、「酸性リン酸エステル化合物」以外のものを使用した場合に同様の効果を奏するとは限らない。 そうすると、実施可能要件又はサポート要件の点からは、本件特許発明1の上記の「含有する」と表現する規定は、「前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である」に限定されるべきである。」(申立書第36ページ第6〜15行) 理由c「本件特許明細書0039段落では、「本発明は、酸化防止剤Cをエステル交換触媒失活剤Bと併用したときには相乗効果を生じ、長期間にわたって耐熱老化性を維持し続けるという特徴を有する。」と記載され、「酸性リン酸エステル化合物」と「酸化防止剤」の併用による「相乗効果」を主張しているが、このような「相乗効果」は、特定の「酸性リン酸エステル化合物」と「酸化防止剤」の組み合わせにおいてしか認められない。 そうすると、本件特許発明1における「酸性リン酸エステル化合物」と「酸化防止剤」の組み合わせも、本件特許明細書の実施例で効果を示した特定の組み合わせに限定されるべきである。」(申立書第35ページ第19〜27行) (イ)検討 そこで、上記の理由について検討する。 a 理由a及び理由bについて 本件訂正により、エステル交換触媒失活剤Bが「酸性リン酸エステル化合物である」ものに限定され、本件特許発明は、上記ウで示した本件特許発明の課題が解決できる発明特定事項を有するものとなった。 よって、理由a及び理由bは解消された。 b 理由cについて 上記ウで説示したように、エステル交換触媒失活剤Bである「酸性リン酸エステル化合物」として、オクタデシルアシッドフォスフェートを使用した実施例1以外にも、アルキル(C12,C14,C16,C18)アシッドホスフェートを使用した実施例9、テトラコシルアシッドホスフェートを使用した実施例10があり、これらすべての実施例において、柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性に優れた結果となっている。すなわち、これらの結果より、具体的な作用機構が不明であっても、酸化防止剤C(芳香族アミン系酸化防止剤)を配合した熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、「酸性リン酸エステル化合物」の置換基の種類にかかわらず、「酸性リン酸エステル化合物」を併用することにより、熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性が向上するものと当業者は理解するものである。 加えて、酸化防止剤Cとして、ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.5質量部及びチオエーテル系酸化防止剤0.5質量部を使用した実施例7も芳香族アミン系酸化防止剤を使用した実施例1と同様に、柔軟性及び機械的強度を損なうことなく、耐熱老化性に優れた結果となっている。これらの結果より、「酸性リン酸エステル化合物」を併用することにより耐熱老化性が向上する事項は、「酸化防止剤」の種類は問わないものと当業者は理解するのが相当である。 そして、申立人は、実施例以外の「酸性リン酸エステル化合物」と「酸化防止剤」を組み合わせた場合に、本件特許発明の課題が解決し得ないことを具体的証拠を示して立証していない。 そうすると、実施例・比較例の結果から考察される知見を、特定の実施例に限定して解釈すべき根拠は乏しい。 よって、申立人2の主張する理由cを首肯することができない。 オ 小括 したがって、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由3及び申立理由2−4によっては取り消すことはできない。 2 取消理由に採用しなかった申立理由について (1)申立理由2−5(実施可能要件)について ア 判断基準 本件特許発明1ないし4はいずれも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、上記判断基準に従って、検討する。 イ 検討 本件特許発明は、熱可塑性エラストマー組成物に係るものであるところ、本件特許明細書には、12の実施例があると共に、発明を実施するための一般的な記載がある。 そうすると、当業者は、本件特許発明1ないし4を発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく実施することができるものである。 ウ 申立人の主張 申立人の申立理由2−5(実施可能要件)に関する具体的理由は、上記1(3)エ(ア)の申立理由2−4(サポート要件)の具体的理由cと同じくするものであるところ、当該具体的理由は、実質、サポート要件に関するものであって、上記の実施可能要件の判断基準に沿って判断すべき理由とはいえない。 よって、申立人2の主張を採用することができない。 エ 小括 したがって、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2−5によっては、取り消すことはできない。 (2)申立理由2−6(明確性要件)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。 そこで、上記判断基準に従って、検討する。 イ 検討 本件特許発明1は、「熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA 100質量部に対して、エステル交換触媒失活剤B 0.1〜10質量部、及び酸化防止剤C 0.3〜3質量部を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である、熱可塑性エラストマー組成物(ただし、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものを除く)。」であるところ、特に不明確となるような記載はない。 ウ 申立人の主張 申立人2は、申立書において以下の具体的理由による主張を行っている。 「本件特許発明では、耐熱老化性を課題としており(本件特許明細書0008段落)、耐熱老化性の向上のために酸性リン酸エステル化合物を添加するのである(本件特許明細書0012段落)から、「エステル交換触媒失活剤」と称するのは不適切である。このような不適切な表現は、本件特許発明1を不明確にするものである。」(申立書第36ページ下から第3〜7行) そこで、上記主張について検討するに、「酸性リン酸エステル化合物」が耐熱老化性の向上のために添加するものではあっても、「酸性リン酸エステル化合物」が「エステル交換触媒失活剤」であること自体は、例えば、乙3であるアデカスタブのカタログの6ページに、「酸性リン酸エステル化合物」である「AX−71」の特徴として、ポリエステル系樹脂の触媒失活効果を有することが記載されていることから、技術的に矛盾するものではない。 そうすると、「酸性リン酸エステル化合物」を「エステル交換触媒失活剤」と称する表現が、本件特許発明1を不明確にするものともいえない。 よって、申立人2の上記主張を首肯することができない。 エ 小括 したがって、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2−6によっては、取り消すことはできない。 第5 結語 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱可塑性ポリエステル系エラストマーAと、該熱可塑性ポリエステル系エラストマーA100質量部に対して、エステル交換触媒失活剤B 0.1〜10質量部、及び酸化防止剤C 0.3〜3質量部を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、前記エステル交換触媒失活剤Bが酸性リン酸エステル化合物である、熱可塑性エラストマー組成物(ただし、難燃剤としてホスフィン酸塩及び/又はジスホスフィン酸塩を含むものを除く)。 【請求項2】 酸化防止剤Cが芳香族アミン系酸化防止剤を含有する、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項3】 さらに、ポリアミド系樹脂Dを含有する、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項4】 さらに、カルボジイミド化合物Eを含有する、請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2024-03-14 |
出願番号 | P2018-161478 |
審決分類 |
P
1
651・
16-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L) P 1 651・ 536- YAA (C08L) P 1 651・ 537- YAA (C08L) P 1 651・ 121- YAA (C08L) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
藤原 浩子 |
特許庁審判官 |
細井 龍史 瀧澤 佳世 |
登録日 | 2022-11-01 |
登録番号 | 7169127 |
権利者 | アロン化成株式会社 |
発明の名称 | 熱可塑性エラストマー組成物 |
代理人 | 細田 芳徳 |
代理人 | 細田 芳徳 |