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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F |
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管理番号 | 1412008 |
総通号数 | 31 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2024-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-05-24 |
確定日 | 2024-07-09 |
事件の表示 | 特願2019− 66766「レンジフード」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月 8日出願公開、特開2020−165597、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年3月29日の出願であって、令和4年9月27日付けで拒絶理由が通知され、同年11月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和5年2月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して同年5月24日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本願の請求項1〜3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.特開2002−130761号公報 引用文献2.特開平6−117789号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3.特開2014−206325号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4.特開2004−190899号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5.特開2002−168495号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 令和5年5月24日の手続補正は、適法なものである。 よって、本願の請求項1〜3に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、令和5年5月24日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 天板と、前記天板の下方に配置され水平面に対して傾斜した傾斜板と、前記天板から下方へ下り前記傾斜板の周囲を囲む囲い板とを備え、下側が開口したフード本体と、 前記傾斜板の傾斜方向下側端部の下方に配置されたドレン受けと、 前記フード本体の上部で前記傾斜板の上側端部に位置し、前記傾斜板の下面側の空気を排気する排気口と、が設けられ、 前記傾斜板の下面は、傾斜方向上側に設けられ調理器具の上方に配置される親水性領域と、傾斜方向下側に設けられ前記親水性領域よりも親水性が小さい低親水性領域とを備えている、 レンジフード。 【請求項2】 前記親水性領域には、親水性処理が施されている、請求項1に記載のレンジフード。 【請求項3】 前記傾斜板を加熱する加熱装置を有している、請求項1または請求項2に記載のレンジフード。」 第4 引用文献及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002−130761号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「IHクッキングヒータ用レンジフード」に関して、次の記載事項及び図示事項がある(下線は、当審が付与した。以下同様。)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、IHクッキングヒータ(電磁誘導加熱調理器)用のレンジフードに関するものである。」 イ 「【0003】ガス器具は、調理する鍋等からの湯気と共に燃焼ガスを発生させ、その燃焼ガスの熱でフード体を暖め、電気コンロは、上昇気流の熱でフード体を暖める。それによって共に湯気の湿度を低下させる。それ故、結露を生じることはない。しかしながら、前記するIHクッキングヒータは、燃焼ガスや上昇気流を伴わないことから、調理時に発生する湯気がフード体に付着して結露し、それが徐々に大きな粒となり、やがてIHクッキングヒータ上に滴下し、汚してしまう。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、積極的に湯気を付着させる部位をスロープで構成し、そのスロープで結露を滴下することなく下方に案内して排水可能に受水することである。」 ウ 「【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を解決するために講じた技術的手段は、下方を開放したフード体に、湯気付着手段を設け、該湯気付着手段は、調理で発生する湯気を付着させると共に滴下させることなく下方に案内する傾斜面状とし、該湯気付着手段に受水手段を連絡していることを要旨とするものである。ここで、前記傾斜面状の湯気付着手段として、パネルを使用することができる。そのパネルに親水性処理を施している場合は、結露を滴下させずに案内するために少なくとも5度以上の傾斜角度を必要とし、撥水性処理を施している場合には、結露を滴下させずに案内するために少なくとも15度以上の傾斜角度で必要である。尚、双方の処理を施していないパネルでは、結露を滴下させずに案内するために少なくとも30度以上の傾斜角度が必要である。 【0006】これによって、調理で発生する湯気を傾斜面状の湯気付着手段に積極的に付着させた上にその傾斜による案内作用で結露を滴下させずに下方に案内して受水手段に集水させ、その受水手段から排水可能にする。尚、調理で発生する調理臭等は、フード体と湯気付着手段となるパネル端部との間に確保される間隙から吸気される。」 エ 「【0014】レンジフードAは、フード体1、そのフード体1内に設けた傾斜面状の湯気付着手段2、その湯気付着手段2下端の受水手段3、湯気付着手段2の背後に装設した排気装置4とを備えた構成になっている。 【0015】湯気付着手段2は、少なくとも表面に親水性処理、または撥水性処理を施したパネル12…複数枚から構成される。本実施の形態では、表裏両面に親水性処理を施したパネルを2枚使用しており、下記では上位のパネルを第1パネル12a、下位のパネルを第2パネル12bと称する。」 オ 「【0019】第1パネル12aは、調理容器から立ち昇る湯気が主に付着するエリアに相対してフード体1の天面21から離間して配置され、前記ガイド縁12a−3を下端にして、5度以上の傾斜角度をもってフード体1の背面31方向に下向きに斜設されている。無論、撥水性処理を施したものにあっては15度以上の傾斜角度をもって斜設される。 【0020】第2パネル12bは、前記第1パネル12aの下端部に対して上端部を、隙間Sを介してオーバーラップする構成にして、前記緩傾斜縁12b−3を下端にしてフード体1の背面31方向に下向き傾斜状に斜設してある。尚、この第2パネル12bは、当然のことながら、親水性処理を施した場合には5度以上の傾斜角度で、また撥水性処理を施したものにあっては、15度以上の傾斜角度で斜設されること言うまでもないものである。」 カ 「【0022】フード体1は、図1に示すように前記する第1、第2パネル12a、12bを上方から囲み且つその第1、第2パネル12a、12bで構成される湯気付着手段2の背後空間7に排気装置4を装設することができる程度の容積を有する下方を開放した先端先細状となる変形箱型形状を呈してなり、旧来と同様に左右側面11、11、背面31、天面21、更には仕切面41とから構成されており、その仕切面41は、第1、第2パネル12a、12bから構成される湯気付着手段2の下端部直下までその背面31から前方に向けて延設した面積になっている。」 キ 「【0025】斯様に構成されているIHクッキングヒータ(電磁誘導加熱調理器)用レンジフードは、調理に伴って発生する湯気を第1、第2パネル12a、12bの表面に付着させる。第1パネル12aの表面に付着して流下する結露はオーバーラップ代を介して第2パネル12bの裏面に案内されて同裏面を伝って水溜容器3に集水し、第2パネル12bの表面に生成される結露は同表面を伝って水溜容器3に集水される。排気は、フード体1の両側面11、11と第1パネル12a、第2パネル12bの左右端部との間に確保されている間隙S、フード体の前端と第1パネル12a前端との間に確保されている間隙S及び第1パネル12aと第2パネル12aとの間の間隙Sから行なわれ、グリスフィルタ14で調理臭に含有される油脂分を吸着除去し、排気装置4に接続される排気ダクト24から屋外に排気する。そして、フード体1の天面21内面に生成される結露は、第1パネル12a、第2パネル12bの裏面に滴下して水溜容器3に同様に案内され、またグリスフィルタ14に付着する湯気は結露して直接同容器3に集水される。」 ク 「【図1】 」 ケ 「【図2】 」 コ 「【図3】 」 (2)上記(1)から認められること ア 上記(1)の「エ」、「オ」、及び【図1】から、レンジフードAは、天面21と、天面21の下方に下向きに斜設された第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2を備えていることが把握できる。 イ 上記(1)の「カ」及び【図1】から、レンジフードAは、天面21から下方へ下り第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2を囲む左右側面11、背面31、仕切面41を備え、下側が開口したフード体1が設けられていることが把握できる。 ウ 上記(1)の「エ」及び【図1】から、レンジフードAは、第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2の下端に配置された受水手段3が設けられていることが把握できる。 エ 上記(1)の「オ」、「キ」及び【図1】から、レンジフードAは、フード体1の前端と第1パネル12a前端との間に排気をするための間隙Sが設けられていることが把握できる。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「天面21と、天面21の下方に下向きに斜設された第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2と、天面21から下方へ下り第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2を囲む左右側面11、背面31、仕切面41を備え、下側が開口したフード体1と、 第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2の下端に配置された受水手段3と、 フード体1の前端と第1パネル12a前端との間に排気をするための間隙Sが設けられ、 第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2は、表裏両面に親水性処理を施した、レンジフードA。」 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6−117789号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「熱交換器」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。 (1)引用文献2の記載事項 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はヒートポンプエアコン等に用いられる熱交換器に関するものである。」 イ 「【0009】また、撥水性表面の長フィン1の伝熱管4近傍に結露が起こると、水滴となって残留し、熱交換器の通風抵抗が高くなるが、これに隣接して親水性表面の短フィン2を配置しているので、撥水性表面の長フィン1に残留した水滴が大きく成長し、親水性表面の短フィン2と接触したとき、水滴が短フィン2に引き寄せられ、親水性表面を流れ落ちる。したがって、水滴がフィン表面でブリッジを作ることがなく、通風抵抗の増大が抑制される。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の従来の構成では、撥水性表面に保持された水滴が成長せず、微小なまま保持された場合、隣接した親水性表面に接触せず、長フィン上にとどまり、熱交換器の通風抵抗が増大するという課題を有していた。」 ウ 「【0020】図1および図2において、11はフィン、12は伝熱管挿入孔、13は伝熱管、14は熱交換器、15は外気である。また、11Aは撥水性表面、11Bは親水性表面である。 【0021】以上のように構成された熱交換器14について以下その動作を説明する。ヒートポンプで暖房運転を行う場合、室外側の熱交換器14の伝熱管13の内部に冷媒を流し、フィン11上に外気15を流入させることにより、伝熱管13の内部の冷媒が蒸発し、外気15の熱が冷媒に取り込まれる。このとき熱交換器14に流入する外気15は冷却され、フィン11の表面に空気中の水分が結露する。 【0022】このとき、外気15の温度が比較的高い場合(7゜C以上)には、結露により上部の親水性表面11Bでは水膜が形成され、下部の撥水性表面11Aでは微小な水滴が保持される。しかし親水性表面11Bで生成された水膜はやがて流下し、この際に下部の撥水性表面11Aに保持されている微小な水滴と合体し、落下する。このようにして熱交換器14の水切れ性が向上し、通風抵抗が低減される。」 エ 「【0025】以上のように本実施例によれば、外気15の温度が比較的高い場合(7゜C以上)には、フィンの下部を撥水性表面11Aとし、上部を親水性表面11Bとすることにより、熱交換器14の水切れ性が向上し、通風抵抗が低減される。」 オ 「【図1】 」 カ 「【図2】 」 (2)引用文献2に記載の技術事項 上記(1)から、引用文献2には、以下の技術事項が記載されているものと認められる。 「ヒートポンプエアコン等に用いられる熱交換器において、フィンの下部を撥水性表面とし、上部を親水性表面とすることにより、親水性表面で生成された水膜が流下して下部の撥水性表面に保持されている微小な水滴と合体して落下するようにして、熱交換器の水切れ性を向上し、通風抵抗を低減すること。」(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。) 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された特開2014−206325号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「空気調和機」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。 (1)引用文献3の記載事項 ア 「【0001】 本発明は着霜による性能低下を防ぐヒートポンプ式等の空気調和機に関するものである。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし、特許文献1に記載の発明は、熱交換器のフィン表面を撥水処理すると、フィン表面を伝って流れ落ちる結露水が、平行に配置されたフィン間と伝熱管の下端とで水滴となり保持されてしまう。室外機はプロペラファン等によりフィン間に外気を通して熱交換するが、この保持された水滴により通風が阻害され、熱交換効率が低下してしまうという課題があった。 【0006】 また、暖房運転時に、熱交換器のフィン表面に大気中の水蒸気が凝縮して霜が付着し、フィン間を閉塞することで熱交換効率が低下するため、その霜を融解させるために暖房運転とは逆サイクルの冷媒回路となる冷房運転を行い、定期的に熱交換器を凝縮器として放熱する除霜運転がある。しかし、この運転は霜の融解を目的としているため、融解熱の高い氷に対しては不十分であり、除霜に時間がかかり、暖房性能が低下してしまうという課題があった。また、除霜運転後に結露水が完全に排水されずに滞留すると、次回の暖房運転時に再び凝固して氷となり堆積してしまうという課題があった。 【0007】 本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、結露水の排水をスムースにすることができる空気調和機を提供することを目的としている。」 ウ 「【0023】 そこで、フィン21において、最下部の伝熱管挿入穴21aの上端から、その一つ上の伝熱管挿入穴21aの下端との間に境界線28を持ち、その境界線28からフィン21の最下端までを撥水処理、境界線28からフィン21の最上端までを親水処理する。 なお、撥水処理すると、暖房運転時に霜が生成されにくくなる反面、除霜運転時に水が滴状となるためフィン21表面に保持されやすい。一方、親水処理すると、暖房運転時に霜が生成されやすくなる反面、除霜運転時に水が膜状となってフィン21表面をすみやかに流れ落ちるという、相反する特性がある。 【0024】 上記のようにフィン21の上部を親水処理、下部を撥水処理することにより、暖房運転時にフィン21全体に付着した霜が除霜運転時に融解し、上部の親水性表面23に発生した結露水がすみやかに流下し、下部の撥水性表面22に保持されている微小な水滴と合体し、落下する。そのため、フィン21の上部から下部まで到達した結露水は、平行に配置されたフィン21間を通り、フィン21の下部で表面に滞留することなく底板6へ滴下し、排水される。結露水の排水をスムースにすることができるため、結露水の凝固を防ぐことができる。 また、境界線28の位置を底板6の周方向に形成された縁(側面)の上端に合わせると、フィン21の撥水性表面22は底板6の縁で覆われるため、暖房運転時に撥水処理された箇所のフィン21間と最下部の伝熱管18aの下端とで水滴が保持されても、通風への影響は小さい。」 エ 「【図5】 」 (2)引用文献3に記載の技術事項 上記(1)から、引用文献3には、以下の技術事項が記載されているものと認められる。 「ヒートポンプ式等の空気調和機において、フィンの上部を親水処理、下部を撥水処理することにより、上部の親水性表面に発生した結露水がすみやかに流下し、下部の撥水性表面に保持されている微小な水滴と合体して落下させて、結露水の排水をスムースにすること。」(以下、「引用文献3に記載の技術事項」という。) 4 引用文献4 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004−190899号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「IHクッキングヒータ用レンジフード」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。 (1)引用文献4の記載事項 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、システムキッチン等にIHクッキングヒータ(電磁誘導加熱調理器)を用いて、このIHクッキングヒータの上に取付けられるIHクッキングヒータ用レンジフードに関するものである。」 イ 「【0021】 本発明のIHクッキングヒータ用レンジフードAは、システムキッチン等に用いられる電磁誘導加熱調理器のことであって、この上方に用いられる料理品のレンジフードである。このIHクッキングヒータ用レンジフードAは、平面タイプのIHクッキングヒータ用レンジフード本体1に吸気口本体2を配設し、該IHクッキングヒータ用レンジフード本体1に吸気口本体2の位置に合致する開口部3を設けた着脱自在の整流蓋4を形成するとともに該整流蓋4の裏面側5に水分除去用ヒータ6を設けたものである。 【0022】 このとき、整流蓋4の裏面側5に設けられた水分除去用ヒータ6によって、レンジフード本体1の吸気口周囲に合致する開口部3を加熱するようにすれば整流蓋4の開口部3の周囲に吸引されて多く集まる水蒸気を加熱除去することができる。」 ウ 「【0030】 図2は、平面タイプのIHクッキングヒータ用レンジフード本体1の略中央に四角形状の吸気口本体2を配設するもので、この吸気口本体2の形状に合致する着脱自在の整流蓋4の裏面側5の周辺の平担部を含む開口部3に水分除去用ヒータ6を配設し、この水分除去用ヒータ6を接着剤やビスで固着したものである。そして、水蒸気が整流蓋4に付着すると水分センサー(図示せず)の働きにより水分除去用ヒータ6を自動的に加熱したり、水蒸気が付着したのを目視して、手動によりスイッチ(図示せず)をONして加熱除去したりするものである。」 エ 「【図2】 」 (2)引用文献4に記載の技術事項 上記(1)から、引用文献4には、以下の技術事項が記載されているものと認められる。 「レンジフードにおいて、整流蓋の裏面側に水分除去用ヒータを設けて加熱することにより、整流蓋の開口部の周囲に吸引されて多く集まる水蒸気を加熱除去すること。」(以下、「引用文献4に記載の技術事項」という。) 5 引用文献5 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002−168495号公報(以下、「引用文献5」という。)には、「IHクッキングヒータ用排気装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。 (1)引用文献5の記載事項 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、IHクッキングヒータ(電磁誘導加熱調理器)用の排気装置に関するものである。」 イ 「【0016】次に図2〜図4で示す第2の実施の形態を説明すると、調理によって発生して立ち昇る湯気が丁度衝突する部分であるフード体11の下側開放部部分に吸気効率を高めるべく整流板51をフィルタ31の上流側の部材として設け、その整流板51の内面に前記する加温する手段として前記発熱装置2を貼着もしくは塗装したものである。 【0017】前記整流板51は、仕切板21前方の下方開放部に着脱可能に設けられており、調理容器から立ち昇る湯気が付着するエリアを遮断するような格好で若干室内側に向けて上向き傾斜状に設けられている。本実施の形態では、前記仕切板21にも立ち昇る湯気が付着することを想定して、その内面にも前記発熱装置2を設けて付着する湯気を加温する構成にして、その熱気をも有効利用して湯気の飽和点を上げたり、蒸発できるようにしてある。」 ウ 「【図2】 」 (2)引用文献5に記載の技術事項 上記(1)から、引用文献5には、以下の技術事項が記載されているものと認められる。 「IHクッキングヒータ用の排気装置のフード体の整流板51の内面に発熱装置2を設けて湯気を蒸発できるようにすること。」(以下、「引用文献5に記載の技術事項」という。) 第5 対比及び判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 引用発明の「天面21」は、本願発明1の「天板」に相当する。 イ 引用発明の「天面21の下方に下向きに斜設された第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2」は、水平面に対して傾斜した傾斜板といえるものであるから、本願発明1の「前記天板の下方に配置され水平面に対して傾斜した傾斜板」に相当する。 ウ 引用発明の「天面21から下方へ下り第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2を囲む左右側面11、背面31、仕切面41」は、左右側面11、背面31、及び仕切面41が、傾斜板の周囲を囲む囲い板といえるものであるから、本願発明1の「前記天板から下方へ下り前記傾斜板の周囲を囲む囲い板」に相当する。 エ 引用発明の「下側が開口したフード体1」は、本願発明1の「下側が開口したフード本体」に相当する。 オ 引用発明の「第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2の下端に配置された受水手段3」は、傾斜板の傾斜方向下側端部の下方に配置されているものであるから、本願発明1の「前記傾斜板の傾斜方向下側端部の下方に配置されたドレン受け」に相当する。 カ 引用発明の「フード体1の前端と第1パネル12a前端との間に排気をするための間隙Sが設けられ」と本願発明1の「前記フード本体の上部で前記傾斜板の上側端部に位置し、前記傾斜板の下面側の空気を排気する排気口と、が設けられ」とは、「前記傾斜板の上側端部に位置し、空気を排気する排気口と、が設けられ」ている限りにおいて一致する。 キ 引用発明の「レンジフードA」は、本願発明1の「レンジフード」に相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。 〔一致点〕 「天板と、前記天板の下方に配置され水平面に対して傾斜した傾斜板と、前記天板から下方へ下り前記傾斜板の周囲を囲む囲い板とを備え、下側が開口したフード本体と、 前記傾斜板の傾斜方向下側端部の下方に配置されたドレン受けと、 前記傾斜板の上側端部に位置し、空気を排気する排気口と、が設けられた、 レンジフード。」 〔相違点1〕 「前記傾斜板の上側端部に位置し、空気を排気する排気口」について、本願発明1は、「前記フード本体の上部で」前記傾斜板の上側端部に位置し、「前記傾斜板の下面側の」空気を排気する排気口であるのに対して、引用発明は、「フード体1の前端と第1パネル12a前端との間に排気をするための間隙S」である点。 〔相違点2〕 本願発明1は、「前記傾斜板の下面は、傾斜方向上側に設けられ調理器具の上方に配置される親水性領域と、傾斜方向下側に設けられ前記親水性領域よりも親水性が小さい低親水性領域とを備えている」のに対して、引用発明は、「第1パネル12aと第2パネル12bからなる湯気付着手段2は、表裏両面に親水性処理を施した」ものである点。 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 引用発明は、レンジフードに関するものであるのに対して、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項は、ヒートポンプエアコン等に用いられる熱交換器に関するものであるから、両者の技術分野が異なる。また、引用発明は、斜設された湯気付着手段2から、湯気が結露してIHクッキングヒータ上に滴下することを防止することを課題とするのに対して(上記第4 1 (1)ア及びイを参照。)、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項は、熱交換器のフィン表面に付着した結露水により、熱交換器の通風抵抗が増大することを抑制することを課題とするものであるから(上記第4 2(1)イ及び上記第4 3(1)イを参照。)、両者の課題が共通するものでもない。 したがって、引用発明に引用文献2及び3に記載された技術事項を適用する動機付けがあるということはできない。 したがって、引用発明、引用文献2に記載の技術事項、及び引用文献3に記載の技術事項に基いて、当業者が上記相違点2に係る発明特定事項を容易に導くことができたということはできない。 また、引用文献4に記載の技術事項及び引用文献5に記載の技術事項も、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示するものではない。 そして、本願発明1は、「水滴の滴下をより抑制することができる」(段落【0015】)という格別な作用効果を奏する。 以上のとおりであるから、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用文献1〜5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2及び3について 本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1〜5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2024-06-27 |
出願番号 | P2019-066766 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F24F)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
間中 耕治 |
特許庁審判官 |
鈴木 充 村山 美保 |
発明の名称 | レンジフード |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 福田 浩志 |