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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04B
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  E04B
管理番号 1412305
総通号数 31 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-02-05 
確定日 2024-06-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第7320713号発明「コンテナハウス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7320713号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第7320713号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜6に係る特許についての出願は、令和2年7月17日に出願され、令和5年7月27日にその特許権の設定登録がされ、同年8月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜6に係る発明の特許に対し、令和6年2月5日に特許異議申立人株式会社バローワークス(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第7320713号の請求項1〜6の特許に係る発明(以下、それぞれをその請求項番号により「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
1または複数のコンテナが基礎または土台の上に設置されてなるコンテナハウスであって、
前記コンテナは、六面体状である枠体を備え、
前記枠体は、鋼材からなり上下方向に延びる縦架材と、鋼材からなり前後方向又は左右方向に延びる横架材と、該枠体の壁面、天井面又は床面となる部分に設けられる鋼板パネルとを有し、
前記縦架材は、第1縦板部分と、前記第1縦板部分に対し直交する方向に延びる第2縦板部分とを有する山型の鋼材であり、前記第1及び第2縦板部分に前記横架材の端部が溶接により接合されているものであり、
前記縦架材の下方端部に、取付穴を具備し該縦架材の断面形状に対応する大きさの矩形状鋼板が、該縦架材の長手方向に直交するように取り付けられ、
前記縦架材と前記横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されていて、
前記床面に対応する横架材と、前記天井面に対応する横架材とは、平行に延びる第1及び第2横板部分と、前記第1及び第2横板部分に直交する方向に延びそれらに結合されて両側に溝部を形成している連結板部分とを有するH型の鋼材であることを特徴とする、コンテナハウス。
【請求項2】
さらに、前記縦架材の上方端部に、取付穴を具備し該縦架材の断面形状に対応する大きさの矩形状鋼板が、該縦架材の長手方向に直交するように取り付けられている、
請求項1記載のコンテナハウス。
【請求項3】
前記床面に対応する横架材と、前記天井面に対応する横架材とが、同じ大きさの断面を有するH型の鋼材である、
請求項1又は2記載のコンテナハウス。
【請求項4】
前記横架材は、前記溝部にガセットプレートが取り付けられている、
請求項1乃至3のいずれか1項記載のコンテナハウス。
【請求項5】
前記床面に対応する横架材と、前記天井面に対応する横架材とに、H型の鋼材に代えて、角型鋼管を用いる、
請求項1又は2記載のコンテナハウス。
【請求項6】
前記基礎は、地盤調査によって、直接基礎、又は杭基礎を選択する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンテナハウス。」

第3 特許異議申立理由の概要及び証拠
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、申立書に添付して、以下の2に示す各甲号証(以下、各甲号証をそれぞれ「甲1」等ということがある。)を証拠として提出している。
(1)特許法36条6項2号
本件発明1〜6は、特許を受けようとする発明が明確でない。
(2)特許法29条1項2号
本件発明1及び5は、いずれも、特許出願がされた令和2年7月17日前に日本国内において公然実施をされていたものである(甲2の1〜甲5の証拠から立証される)。
(3)特許法29条2項
本件発明2〜4及び6は、令和2年7月17日前に日本国内において公然実施をされた発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 申立書に添付して提出された証拠
甲1の1:平成元年7月18日付け建設省住指発第239号 特定行政庁建築主務部長宛建設省住宅局建築指導課長通達
甲1の2:平成16年12月6日付け国住指2174号 各都道府県建築主務部長宛国土交通省住宅局建築指導課長通達
「コンテナを利用した建築物の取扱いについて(技術的助言)」
甲1の3:平成26年12月26日付け国住安第5号 都道府県建築主務部長宛国土交通省住宅局建築指導課建築安全調査室長通達
「コンテナを利用した建築物に係る違反対策の徹底について」
甲2の1:株式会社コンテナハウス2040.jpが運営するサイト内の「建築確認対応」のページ、令和6年2月3日出力
<URL:https://2040.jp/new-customers/related-laws/>
甲2の2:株式会社コンテナハウス2040.jpが運営するサイト内の「施工事例」のページ、令和6年2月3日出力
<URL:https://2040.jp/cases/>
甲3 :株式会社コンテナワークスが運営するサイト内の「コンテナ活用事例」のページ、令和6年2月3日出力
<URL:https://containerworks.jp/gallery>
甲4 :有限会社LIFIXが運営するサイト内の「WORKS」のページ、令和6年2月3日出力
<URL:https://www.ih-tetsuya.com/gallery>
甲5 :株式会社ハーミットクラブデザイン HDAが運営するサイト内の「実績・計画中物件」のページ、令和6年2月3日出力<URL:https://container-ism.com/category/container-portfolio>

第4 証拠の記載
1 甲2
(1)甲2の1
ア 甲2の1に記載された事項
甲2の1には以下の記載がある。
(ア)「POINT 2
JIS 鋼材とラーメン構造によりコンプライアンスとデザイン性を両立させる
コンテナハウス 2040JP が使用するコンテナは JIS 鋼材で造られた建築専用コンテナです。さらに、壁全体で建物の重さを支える壁構造ではなく、柱と梁で建物の重さを支えるラーメン構造を採用しているため、ドアや窓を設置するための開口部を壁に設けても強度に影響はないことから、建物として自由なデザインが可能になります。弊社が取り扱うのは、建築確認申請を出し、完了検査を受ける物件のみです。」
(2枚目下側)

(2)甲2の2
ア 甲2の2の記載事項
甲2の2には以下の記載がある(手書きの番号は、申立人が付与した。以下同様。)。
(ア)「

」(3枚目)
(イ)「


」(4枚目)
(ウ)「

」(5枚目)
(エ)「

」(6枚目)
(オ)「

」(7枚目)
(カ)「

」(8枚目)

イ 上記アから把握できる事項

上記画像は、ア(ア)の「22」の「作業スペース−阿部蒲鉾店泉工場」に関し、甲2のURLから転記した画像である。当該画像から以下の事実を把握できる。(下線は当審において付した。)
(ア)作業スペース−阿部蒲鉾店泉工場は、コンテナハウスの事例であって、画像の下に「2019年11月13日」と記載されている。
(イ)複数のコンテナが基礎上に設置されてなるコンテナハウスである。
(ウ)コンテナは、上下方向に延びる縦架材と、前後方向又は左右方向に延びる横架材と、壁面となるパネルとを有する。
(エ)手前隅部の縦架材は、第1縦板部分と、前記第1縦板部分に対し直交する方向に延びる第2縦板部分とを有する山型であり、横架材の端部が縦架材に接合されている。
(オ)前記縦架材の上方端部に、穴を具備する矩形状板が、該縦架材の長手方向に直交するように取り付けられる。

ウ 上記「22」の事例について、上記イ(ア)に示したように画像の下に「2019年11月13日」と記載されていることから、遅くとも2019年11月13日には建設されていたものと認められる。そして、インターネットに掲載されていることに鑑みると、上記「22」の事例について、守秘義務が課されていたと認める事情はない。そうすると、上記「22」の事例のコンテナハウスは、本件特許の出願日である令和2年(2020年)7月17日よりも前に公然実施されたものであると認められる。

エ 甲2発明
甲2の2のコンテナハウスの事例のうち、上記イの「22」の「作業スペース−阿部蒲鉾店泉工場」に注目し、上記ウの事情を勘案すると、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が公然実施されたものと認められる。
(甲2発明)
複数のコンテナが基礎上に設置されてなるコンテナハウスであって、
コンテナは、上下方向に延びる縦架材と、前後方向又は左右方向に延びる横架材と、壁面となるパネルとを有し、
縦架材は、第1縦板部分と、前記第1縦板部分に対し直交する方向に延びる第2縦板部分とを有する山型であり、横架材の端部が縦架材に接合されている、
コンテナハウス。

2 甲3
(1)甲3に記載された事項
甲3には以下の記載がある。
ア「

」(1枚目上)
イ「

」(2枚目下)
ウ「

」(3枚目)

3 甲4
(1)甲4に記載された事項
甲4には以下の記載がある。
ア「

」(1枚目)
イ「

」(2枚目)
ウ「

」(3枚目)

4 甲5
(1)甲5に記載された事項
甲5には以下の記載がある。
ア「

」(1枚目上)
イ「


」(2枚目下及び3枚目上)

第5 当審の判断
明確性要件について
(1)申立人の主張
申立人は、本件発明1〜6は、いずれも、横架材と縦架材との接合について、概略以下の主張をする。
ア 「接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」るが、ここにいう「接合される端部が互いに斜めに切断されて行うフルペネ溶接」が一般的な溶接手法であるフルペネ溶接(完全溶込み溶接)とどのように違うのかが明確でないため、特許を受けようとする発明が明確でない。
イ すなわち、コンテナハウスの建築において、一般的に縦架材と横架材はフルペネ溶接で接合されており、その際には、架材の端部が斜めに切断されることは技術常識である。
ウ 特許請求の範囲の「互いに」が「同一の」溶接個所において縦架材と横架材がいずれも斜めに切断されていることを指しているのか、全体としてみると縦架材と横架材がそれぞれ斜めに切断されて接合されているといえることを指しているのか判然としない。
エ 「同一の」溶接個所を指す場合において、縦架材と横架材を接合するすべての箇所において「接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接」が行われる趣旨であるのか不明である。

(2)主張の検討
フルペネ溶接は完全溶込み溶接とも呼称される周知の溶接手法であり、一般的に、溶接される部分において部材が開先加工され、接合される端部が互いに斜めに配されるものとなる。
そして、本件発明1の「前記縦架材と前記横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されていて、」との記載は、「縦架材」と「横架材」における「接合される端部」が「互いに斜め」となるように「切断され」て「フルペネ溶接により結合されてい」るものであると理解することができる。
また、本件発明1において「コンテナ」は「六面体状である枠体」であり、「縦架材」は「枠体」の「上下方向に延びる」「鋼材」、「横架材」は「枠体」の「前後方向又は左右方向に延びる」「鋼材」と特定されるものであり、「前記縦架材と前記横架材と」が接合される箇所において「接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接」されるものであると理解できる。
そうすると、申立人が主張するように「互いに」の解釈によって不明確であるものではなく、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2〜6は明確である。

(3)小括
本件発明1〜6は、発明が明確である。

新規性公然実施)について
(1)本件発明1
ア 甲2の記載に基づく公然実施について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「複数のコンテナが基礎上に設置されてなるコンテナハウス」は、本件発明1の「1または複数のコンテナが基礎または土台の上に設置されてなるコンテナハウス」に相当する。
b 甲2発明は、コンテナが一般に鋼製であり、縦架材と横架材を含み六面体状である枠体を備え、枠体は壁面、天井面又は床面となる部分に設けられるパネルを有するものである。ことを踏まえると、甲2発明は、本件発明1の「前記コンテナは、六面体状である枠体を備え」るに相当する構成を備えるといえる。
c コンテナが一般に鋼製であり、縦架材と横架材を含み六面体状である枠体を備え、枠体は壁面、天井面又は床面となる部分に設けられるパネルを有するものであることを踏まえると、「上下方向に延びる縦架材と、前後方向又は左右方向に延びる横架材と、壁面となるパネルとを有」する甲2発明も、一般的なコンテナと同様であるといえ、甲2発明は本件発明1の「前記枠体は、鋼材からなり上下方向に延びる縦架材と、鋼材からなり前後方向又は左右方向に延びる横架材と、該枠体の壁面、天井面又は床面となる部分に設けられる鋼板パネルとを有し」に相当する構成を備えるといえる。
d 甲2発明の「前記縦架材は、第1縦板部分と、前記第1縦板部分に対し直交する方向に延びる第2縦板部分とを有する山型の鋼材」は、本件発明1の「前記縦架材は、第1縦板部分と、前記第1縦板部分に対し直交する方向に延びる第2縦板部分とを有する山型の鋼材であ」ることに相当する。
e 上記dの対比を踏まえると、本件発明1の「前記第1及び第2縦板部分に前記横架材の端部が溶接により接合されているものであ」ることと、甲2発明の「前記第1及び第2縦板部分に前記横架材の端部が接合されているものであ」ることとは、第2縦板部分とを有する山型の鋼材であり、前記第1及び第2縦板部分に前記横架材の端部が接合されている」点で共通する。
f 以上から、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
1または複数のコンテナが基礎または土台の上に設置されてなるコンテナハウスであって、
前記コンテナは、六面体状である枠体を備え、
前記枠体は、鋼材からなり上下方向に延びる縦架材と、鋼材からなり前後方向又は左右方向に延びる横架材と、該枠体の壁面、天井面又は床面となる部分に設けられる鋼板パネルとを有し、
前記縦架材は、第1縦板部分と、前記第1縦板部分に対し直交する方向に延びる第2縦板部分とを有する山型の鋼材であり、前記第1及び第2縦板部分に前記横架材の端部が接合されているものであり、
前記縦架材と前記横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されている、
コンテナハウス。
(相違点1)
前記第1及び第2縦板部分に対する前記横架材の端部の接合が、本件発明1は「溶接によ」ると特定されているのに対し、甲2発明は、接合の態様が不明である点。
(相違点2)
本件発明1は「前記縦架材の下方端部に、取付穴を具備し該縦架材の断面形状に対応する大きさの矩形状鋼板が、該縦架材の長手方向に直交するように取り付けられ」ると特定されているのに対し、甲2発明は、下方の端部について詳細は不明である点。
(相違点3)
本件発明1は、「前記縦架材と前記横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」るのに対し、甲2発明は結合の詳細が不明である点。
(相違点4)
本件発明1は、「前記床面に対応する横架材と、前記天井面に対応する横架材とは、平行に延びる第1及び第2横板部分と、前記第1及び第2横板部分に直交する方向に延びそれらに結合されて両側に溝部を形成している連結板部分とを有するH型の鋼材である」のに対し、甲2発明は、横架材の詳細が不明である点。

(イ)判断
上記相違点1〜4は実質的な相違点であって、本件発明1は甲2発明と同一ではない。
また、甲2の2の事例のうち、22を選択して対比したが、甲2の2の15〜57の事例のいずれを甲2発明として認定したとしても、同様に、本件発明1と同一ではない。

(ウ)申立人の主張について
a 申立人の主張
申立人は、縦架材と横架材とフルペネ溶接により結合されていることについて、特許権者が令和5年4月4日付の意見書において「本願発明は、縦架材である山型鋼と横架材であるH鋼又は角型鋼管とが、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されていることで、溶接される部分を大きくしてフルペネ溶接を用いることで強固に接合でき、これにより高い強度のコンテナハウスとなるもので、これにそれ以外の発明特定事項を全て備えることではじめて、建築基準法を満たす高い強度のコンテナハウスとすることができるものであり、当業者が容易になし得る事項であるとは言えません。」と特許権者が主張したことを挙げた上で、「株式会社コンテナハウス2040.jpが掲載する施工事例はすべて完了検査を受ける物件であるということであるので(甲2の1)、結局のところ、被請求人の説明をひとまずの前提にすれば、縦架材と横架材の端部が互いに斜めに切断されて行うフルペネ溶接」が実施されているということになる」と主張する。
b 主張の検討
上記主張について検討する。
(a)甲2の1は、令和6年2月3日に出力されたものであるから、本願出願日の令和2年7月17日より前に公開がされた施工事例と、甲2の1の内容との関係は不明であって、甲2の1を根拠として、甲2の2の令和2年7月17日より前に公開がされた施工事例が建築基準法を満たすといえるものではない。
(b)また、甲2の1の証拠の日付についてはひとまず措いて、甲2の2のコンテナハウスの施工事例が建築基準法を満たすものであると仮定しても、甲2の1には「柱と梁で建物の重さを支えるラーメン構造を採用している」ことが記載されているのみであって、縦架材と横架材とをフルペネ溶接するものではないから、甲2の2のコンテナハウスの施工事例が、当然に縦架材と横架材とをフルペネ溶接するものであるともいえない。
(c)仮に、甲2の1の内容が甲2の2のコンテナハウスの施工事例にも該当し、甲2の2のコンテナハウスの施工事例が建築基準法を満たすものであり、また、特許権者の意見書に、縦架材と横架材とのフルペネ溶接によって強固に接合し、それ以外の発明特定事項を全て備えることではじめて、建築基準法を満たす高い強度のコンテナハウスとすることができるものであるとの主張があるとしても、フルペネ溶接をしなければ建築基準法を満たすコンテナハウスとすることはできず、建築基準法を満たすことと縦架材と横架材とのフルペネ溶接とが同視できる事項とはいえないから、甲2の1に縦架材と横架材とをフルペネ溶接することが示されていない以上、甲2の2のコンテナハウスの施工事例が、当然に縦架材と横架材とをフルペネ溶接するものであるとはいえない。
(d)よって、申立人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明と同一ではない。
また、甲2の2に記載されたいずれのコンテナハウスの事例によっても、本件発明1が、特許出願がされた令和2年7月17日前に日本国内において公然実施されていた発明であるとはいえない。

イ 甲3の記載に基づく公然実施について
(ア) a 甲3に記載された事項は、上記第4の2(1)アに示したとおりであり、施工事例としてコンテナハウスの画像が示されているものの、日付については示されておらず、本件発明1は、甲3によって本件特許出願がされた令和2年7月17日前に公然実施された発明とはいえない。
b 申立人は、甲3の10〜16の7の事例について、各事例のリンク先の記載内容及びそこに掲載されている写真から確認できるとするが、各事例のリンク先は証拠として提出されていない。
(イ) また、甲3の10〜16の7の事例について、日付についてはひとまず措いて、甲3の10〜16の画像から把握できるコンテナハウスについて検討しても、甲3の10〜16の画像に示されたコンテナハウスは、「縦架材と横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」るか不明であり、また、「床面に対応する横架材と、天井面に対応する横架材と」が「平行に延びる第1及び第2横板部分と、前記第1及び第2横板部分に直交する方向に延びそれらに結合されて両側に溝部を形成している連結板部分とを有するH型の鋼材である」か否か不明であるから、本件発明1と上記相違点3及び相違点4と同様の相違点を有する。
そして、上記相違点3及び相違点4は実質的な相違点であるから、仮に甲3のコンテナハウスが令和2年7月17日前に公然実施されたものであるとしても、甲3の10〜16の画像に示されたコンテナハウスによって、本件発明1が、本件特許出願がされた令和2年7月17日前に日本国内において公然実施されていた発明であるということはできない。

ウ 甲4の記載に基づく公然実施について
甲4は、コンテナハウスが実施された日付が示されていないから、甲4によって、本件発明1は、本件特許出願がされた令和2年7月17日前に公然実施された発明ということはできない。

エ 甲5の記載に基づく公然実施について
甲5の4の画像に示されたコンテナハウスは、縦架材の縦板部分に横架材の端部が溶接されているか不明であり、そのため、当然、「縦架材と横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」るか不明である。
そうすると、本件発明1と甲5の4の画像に示されたコンテナハウスとは、本件発明1が「縦架材と横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」るのに対し、甲5の4に示されたコンテナハウスはそのようなものか不明である点で少なくとも相違する。
よって、甲5の4の画像に示されたコンテナハウスによって、本件発明1が、本件特許出願がされた令和2年7月17日前に公然実施された発明であるということはできない。

(2)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1を引用し、横架材の形状以外本件発明1と同様の構成を有するところ、上記(1)で本件発明1について検討したのと同様、甲3及び甲4はコンテナハウスが実施された日付が不明であり、甲2、甲3及び甲5の4の画像に示されたコンテナハウスは、少なくとも、「縦架材と横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」るか不明であるから、甲5の4の画像に示されたコンテナハウスによって、本件発明5が、本件特許出願がされた令和2年7月17日前に公然実施された発明であるとはいえない。

進歩性について
(1)本件発明2〜4及び6
ア 甲2に示されたコンテナハウスを主引用発明とする進歩性について
(ア)対比、判断
本件発明2〜4及び6はいずれも本件発明1を直接または間接的に引用するものであるため、本件発明2〜4及び6と甲2発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記2(1)ア(ア)eの相違点1〜3で相違する。
そして、申立人が提出した証拠及び技術常識を勘案しても、甲2発明において、上記相違点1〜3に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことではない。
(イ)小括
以上のとおりであるから、本件発明2〜4及び6は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲2の2に記載されたいずれのコンテナハウスの事例によっても、本件発明1が、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 甲3、甲4に示されたコンテナハウスを主引用発明とする進歩性について
(ア)対比、判断
甲3、甲4に示されたコンテナハウスは、実施された日付が示されておらず、甲3、甲4によっては本件特許出願がされた令和2年7月17日前に公然実施された発明が認定できないから、本件発明2〜4及び6は、甲3または甲4に示されたコンテナハウスに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)小括
以上のとおりであるから、本件発明2〜4及び6は、本願出願日前に甲3、甲4に示されたコンテナハウスに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 甲5の4に示されたコンテナハウスを主引用発明とする進歩性について
(ア)対比、判断
本件発明2〜4及び6はいずれも本件発明1を引用するものであるため、本件発明2〜4及び6と甲5の4に示されたコンテナハウスとを対比すると、本件発明2〜4及び6は、「縦架材と横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」るのに対し甲5の4に示されたコンテナハウスはそのようなものか不明である点で少なくとも相違する。
そして、申立人が提出した証拠及び技術常識を勘案しても、甲5の4に示されたコンテナハウスにおいて、「縦架材と横架材とは、接合される端部が互いに斜めに切断されてフルペネ溶接により結合されてい」る構成とすることは当業者が容易になし得たことではない。
(イ)小括
以上のとおりであるから、本件発明2〜4及び6は、甲5の4の画像に示されたコンテナハウスに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2024-06-07 
出願番号 P2020-123218
審決分類 P 1 651・ 112- Y (E04B)
P 1 651・ 537- Y (E04B)
P 1 651・ 121- Y (E04B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 古屋野 浩志
特許庁審判官 西田 秀彦
土屋 真理子
登録日 2023-07-27 
登録番号 7320713
権利者 株式会社ALDO
発明の名称 コンテナハウス  
代理人 水野 泰孝  

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