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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1413983
総通号数 33 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-09-12 
確定日 2024-08-22 
事件の表示 特願2021−185139「ペット介護支援装置、ペット介護支援方法、および、ペット介護支援プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 5月24日出願公開、特開2023− 72523〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和3年11月12日の出願であって、令和5年1月20日付けの拒絶理由の通知に対し、同年3月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年6月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年9月12日に審判請求がされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。そして、その後、令和6年3月13日付けで当審における拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知したが、請求人からの応答はなかった。

第2 本願発明
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
ペットの映像、前記ペットの生体情報、および、前記ペットの居住空間の環境情報を入力とし、前記ペットの生命に対する危険度を出力するよう学習されたモデルであって、かつ、ペットの映像、ペットの生体情報、および、ペットの居住空間の環境情報を教師データとして学習し、前記ペットの映像に映っている前記ペットの行動、前記ペットの生体情報、および、前記ペットの居住空間の環境情報から、当該ペットの生命がどれほど危険であるかを示す度合いである危険度を出力できるよう学習されたモデルを前記ペットの種類および前記ペットの健康状態ごとに記憶する記憶部と、
監視対象のペットの映像、前記ペットの生体情報、前記ペットの居住空間の環境情報、およびユーザ設定情報を取得する取得部と、
取得した前記監視対象のペットの映像と、前記生体情報と、前記ペットの居住空間の環境情報と、前記ユーザ設定情報とを前記ペットの種類および前記ペットの健康状態に基づき選択された前記モデルに入力することにより、入力データの種類に応じた所定の重み付けを行って前記ペットの生命に対する危険度を算出し、前記ペットの生命に対する危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記ペットの生命に対する危険度が所定の閾値を超えると判定された場合、所定の連絡先へ通知を行う通知部と、
を備えることを特徴とするペット介護支援装置。
【請求項2】
前記閾値は、
前記ペットの種類および前記ペットの健康状態ごとに用意された値である
ことを特徴とする請求項1に記載のペット介護支援装置。
【請求項3】
前記監視対象のペットの映像、前記ペットの生体情報、および、前記ペットの居住空間の環境情報を用いて、前記モデルの学習を行うモデル学習部
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のペット介護支援装置。
【請求項4】
前記ペットの飼い主により指定された端末装置の連絡先に、当該ペットの居住空間の施錠を解錠するためのキー情報を送信する解錠処理部
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のペット介護支援装置。
【請求項5】
前記通知部は、さらに、
判定された前記ペットの生命に対する危険度の高さに応じて、前記所定の連絡先へ通知内容を通知する
ことを特徴とする請求項1に記載のペット介護支援装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する方法であって、
ペットの映像、前記ペットの生体情報、および、前記ペットの居住空間の環境情報を入力とし、前記ペットの生命に対する危険度を出力するよう学習されたモデルであって、かつ、ペットの映像、ペットの生体情報、および、ペットの居住空間の環境情報を教師データとして学習し、前記ペットの映像に映っている前記ペットの行動、前記ペットの生体情報、および、前記ペットの居住空間の環境情報から、当該ペットの生命がどれほど危険であるかを示す度合いである危険度を出力できるよう学習されたモデルを前記ペットの種類および前記ペットの健康状態ごとに記憶する記憶工程と、
監視対象のペットの映像、前記ペットの生体情報、前記ペットの居住空間の環境情報、およびユーザ設定情報を取得する取得工程と、
取得した前記監視対象のペットの映像と、前記生体情報と、前記ペットの居住空間の環境情報と、前記ユーザ設定情報とを前記ペットの種類および前記ペットの健康状態に基づき選択された前記モデルに入力することにより、入力データの種類に応じた所定の重み付けを行って前記ペットの生命に対する危険度を算出し、前記ペットの生命に対する危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定工程と、
前記ペットの生命に対する危険度が所定の閾値を超えると判定された場合、所定の連絡先へ通知を行う通知工程と、
を含むことを特徴とするペット介護支援方法。
【請求項7】
ペットの映像、前記ペットの生体情報、および、前記ペットの居住空間の環境情報を入力とし、前記ペットの生命に対する危険度を出力するよう学習されたモデルであって、かつ、ペットの映像、ペットの生体情報、および、ペットの居住空間の環境情報を教師データとして学習し、前記ペットの映像に映っている前記ペットの行動、前記ペットの生体情報、および、前記ペットの居住空間の環境情報から、当該ペットの生命がどれほど危険であるかを示す度合いである危険度を出力できるよう学習されたモデルを前記ペットの種類および前記ペットの健康状態ごとに記憶する記憶ステップと、
監視対象のペットの映像、前記ペットの生体情報、前記ペットの居住空間の環境情報、およびユーザ設定情報を取得する取得ステップと、
取得した前記監視対象のペットの映像と、前記生体情報と、前記ペットの居住空間の環境情報と、前記ユーザ設定情報とを前記ペットの種類および前記ペットの健康状態に基づき選択された前記モデルに入力することにより、入力データの種類に応じた所定の重み付けを行って前記ペットの生命に対する危険度を算出し、前記ペットの生命に対する危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定ステップと、
前記ペットの生命に対する危険度が所定の閾値を超えると判定された場合、所定の連絡先へ通知を行う通知ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするペット介護支援プログラム。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、請求項1に記載された「判定部」の構成は不明確であるから、請求項1に係る発明は明確であるとはいえず、また、請求項2〜5は請求項1を引用する請求項であり、請求項6及び請求項7は、請求項1とカテゴリーが異なるのみの請求項であって、これらの請求項に係る発明も、請求項1に係る発明と同様、明確であるとはいえないから、本願は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、というものである。

第4 当審における判断
1 特許法36条6項2号について
特許法36条6項2号は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うなど第三者の利益が不当に害されることがあり得ることから、特許を受けようとする発明が明確であることを求めるものである。そして、その充足性の判断は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から行うべきものと解される。
そこで、これを判断の基礎として、以下、検討する。

2 判断
(1) 特許請求の範囲の請求項1について
請求項1の記載は、上記第2の【請求項1】のとおりであるところ、「判定部」については、「取得した前記監視対象のペットの映像と、前記生体情報と、前記ペットの居住空間の環境情報と、前記ユーザ設定情報とを前記ペットの種類および前記ペットの健康状態に基づき選択された前記モデルに入力することにより、入力データの種類に応じた所定の重み付けを行って前記ペットの生命に対する危険度を算出し、前記ペットの生命に対する危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部」と記載され、そのうち、「前記ユーザ設定情報」については、「取得部」が「監視対象のペットの映像、前記ペットの生体情報、前記ペットの居住空間の環境情報、およびユーザ設定情報を取得する」ことが記載されている(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
しかしながら、「ユーザ設定情報」とは、どのような情報であるのか、請求項1では何ら特定されておらず、モデルに入力された「ユーザ設定情報」が「判定部」の判定にどのように寄与するのかも不明である。
そして、「判定部」、「ユーザ設定情報」及び「モデル」の関係については、例えば、本願明細書の発明の詳細な説明の【0030】に関連する記載があるところ、【0030】には、「ここで判定部125がペットの危険度を算出する際、入力データの種類(例えば、ペットの映像、生体情報、環境情報)に応じ、所定の重み付けを行ってもよい。重み付けは、例えば、判定部125が、1つのモデルを用いてペットの危険度を算出する場合、ユーザ設定情報に基づき、モデルのパラメータ値を調整することにより行われる。また、判定部125が、複数のモデルを用いてペットの危険度を算出する場合、ユーザ設定情報に基づき、各モデルが出力する分析結果に重み付けを行うことにより行われる。」と記載されているように、1つのモデルの場合、モデルのパラメータ値を調整し、複数のモデルの場合、各モデルが出力する分析結果に重み付けを行うものであって、「ユーザ設定情報」は「前記モデルに入力する」ものではないし、「ユーザ設定情報」をモデルに入力することが、本件出願当時の当業者の技術常識であったとも認められない。
また、「入力データ」についてみても、請求項1では、どのようなデータであるのか何ら特定されていないため、「入力データの種類」とは、様々な種類が考えられるから、請求項1に係る発明の独占権が及ぶ範囲が一義的に定まらず、独占権の予測可能性を第三者から奪うものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1に記載された「判定部」は、本願明細書の記載や、本件出願当時の当業者の技術常識を含めて検討しても不明確であるから、請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。

(2) 特許請求の範囲の請求項2〜7について
請求項2〜7の記載は、上記第2の【請求項2】〜【請求項7】のとおりであるところ、請求項2〜5は請求項1を引用する請求項であり、請求項6及び請求項7は、請求項1とカテゴリーが異なるのみの請求項であるから、これらの請求項に係る発明の「判定部」も、上記(1)と同様、不明確である。
したがって、請求項2〜7に係る発明は明確であるとはいえない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1〜7に係る発明は明確であるとはいえないから、本願は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2024-06-19 
結審通知日 2024-06-25 
審決日 2024-07-10 
出願番号 P2021-185139
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G06Q)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 伏本 正典
特許庁審判官 緑川 隆
梶尾 誠哉
発明の名称 ペット介護支援装置、ペット介護支援方法、および、ペット介護支援プログラム  
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所  

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