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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B66B
管理番号 1414170
総通号数 33 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2024-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-07-21 
確定日 2024-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第7268209号発明「エレベータシステム及び呼び登録方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7268209号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕、〔8〜10〕について訂正することを認める。 特許第7268209号の請求項1、3〜8、10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7268209号の請求項1〜10に係る特許についての出願は、令和4年1月4日に出願され、令和5年4月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年5月2日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和5年7月21日に特許異議申立人角田朗(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、取消理由を令和5年12月27日付けで通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年3月4日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行った。その訂正の請求に対する特許異議申立人からの意見書の提出はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は次のとおりである(下線は、訂正個所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示することを特徴とするエレベータシステム。」
と記載されているのを、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とするエレベータシステム。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜7も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示することを特徴とする呼び登録方法。」
と記載されているのを、
「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする呼び登録方法。」
に訂正する(請求項8の記載を直接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0007】に、
「 一実施形態に係るエレベータシステムは、呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行う。上記エレベータシステムは、エレベータの物件データを管理するサーバを備え、上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示することを特徴とする。」と記載されているのを、
「 一実施形態に係るエレベータシステムは、呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行う。上記エレベータシステムは、エレベータの物件データを管理するサーバを備え、上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする。」
に訂正する。

(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1〜7について、請求項2〜7は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであるから、訂正事項1は、一群の請求項〔1〜7〕に対して請求されたものである。また、訂正前の請求項8〜10について、請求項9及び10は請求項8の記載を直接的に引用しているものであるから、訂正事項2は、一群の請求項〔8〜10〕に対して請求されたものである。さらに、明細書に係る訂正である訂正事項3は、一群の請求項〔1〜7〕及び〔8〜10〕に対してされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明においては、「呼び登録に関わる機能を制限する」とし、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれていたのを、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と訂正することにより、呼び登録の機能を全て制限するものを排除することとしたものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項1に関する説明として、明細書の段落【0062】には、「保守契約物件である物件Aに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」,「手動呼び登録」のすべてが可能である。」と記載され、段落【0063】には、「一方、非保守契約物件である物件Bに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」は不可であり、「手動呼び登録」のみが可能である。」と記載され、さらに、段落【0072】には、「このように本実施形態によれば、非保守契約物件であっても、呼び登録アプリ26の機能を制限することで、呼び登録を行うことができる。」と記載されているから、呼び登録に関する機能の全てではなく、一部を制限しつつも、保守契約の有無に関係なく呼び登録を可能とするという技術的事項は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項であるといえる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、訂正前の請求項1の技術的範囲に含まれていなかったものが、訂正後に含まれることとなるということはなく、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明においては、「呼び登録に関わる機能を制限する」とし、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれていたのを、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と訂正することにより、呼び登録の機能を全て制限するものを排除することとしたものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項2に関する説明として、明細書の段落【0062】には、「保守契約物件である物件Aに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」,「手動呼び登録」のすべてが可能である。」と記載され、段落【0063】には、「一方、非保守契約物件である物件Bに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」は不可であり、「手動呼び登録」のみが可能である。」と記載され、さらに、段落【0072】には、「このように本実施形態によれば、非保守契約物件であっても、呼び登録アプリ26の機能を制限することで、呼び登録を行うことができる。」と記載されているから、呼び登録に関する機能の全てではなく、一部を制限しつつも、保守契約の有無に関係なく呼び登録を可能とするという技術的事項は願書に添付した明細書等に記載した事項であるといえる。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、訂正前の請求項2の技術的範囲に含まれていなかったものが、訂正後に含まれることとなるということはなく、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正にともなう、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正にともなう、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるところ、訂正事項1及び2は、上記(1)イ及び(2)イで述べたように、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることから、訂正事項3も願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正にともなう、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるところ、訂正事項3によって、訂正前の請求項1及び2の技術的範囲に含まれていなかったものが、訂正後に含まれることとなるということはなく、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕、〔8〜10〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
[本件発明1]
「呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行うエレベータシステムにおいて、
エレベータの物件データを管理するサーバを備え、
上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、
上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とするエレベータシステム。」
[本件発明2]
「上記呼び登録に関わる機能として、上記アプリケーションソフトに予め設定済みの利用者の出発階と行先階を上記エレベータに登録する自動呼び登録機能と、上記アプリケーションソフトを起動して、利用者の出発階と行先階を手動操作により上記エレベータに登録する手動呼び登録機能を含み、
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、上記自動呼び登録機能を制限し、上記手動呼び登録機能で呼び登録させることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。」
[本件発明3]
「上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、保守契約物件よりも上記広告情報の表示範囲を広く、情報量を多くすることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。」
[本件発明4]
「上記非保守契約物件では、広告配信業者から一方的に提供される情報が上記広告情報として表示されることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。」
[本件発明5]
「上記保守契約物件では、上記保守契約物件の周辺情報が上記広告情報として表示されることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。」
[本件発明6]
「上記保守契約物件では、上記広告情報の表示/非表示が切り替えられることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。」
[本件発明7]
「上記携帯端末が上記サーバから保守契約物件に関する物件データを取得する場合にパスワードが要求されることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。」
[本件発明8]
「呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行うための呼び登録方法において、
エレベータの物件データをクラウド上のサーバで管理し、
上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、
上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする呼び登録方法。」
[本件発明9]
「上記呼び登録に関わる機能として、上記アプリケーションソフトに予め設定済みの出発階と行先階を上記エレベータに登録する自動呼び登録機能と、上記アプリケーションソフトを起動して出発階と行先階を手動操作により上記エレベータに登録する手動呼び登録機能を含み、
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、上記自動呼び登録機能を制限し、上記手動呼び登録機能で呼び登録させることを特徴とする請求項8記載の呼び登録方法。」
[本件発明10]
「上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、保守契約物件よりも上記広告情報の表示範囲を広く、情報量を多くすることを特徴とする請求項8記載の呼び登録方法」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、3〜8、10に係る特許に対して、当審が通知した令和5年12月27日付け取消理由の概要は次のとおりである。

本件の特許請求の範囲の請求項1には、「保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限する」という発明特定事項を備えた発明が記載されている。かかる発明特定事項からすれば、請求項1に係る発明には、保守契約が無い(非保守契約物件である)場合に、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれる。しかし、本件の発明の詳細な説明には、非保守契約物件であっても、呼び登録アプリの機能を制限することで呼び登録を行うことができるもの(非保守契約物件である場合、呼び登録アプリの機能を制限しつつも呼び登録は行うことができるもの)が記載されているのみであり、呼び登録に関わる機能を全て制限するものまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。したがって、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、という特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足しない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3〜7の記載についても上記と同様に、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、という特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足しない。本件の請求項8は、請求項1に係る発明を方法の発明として記載したものであるから、上記請求項1についてのサポート要件違反の理由が同様に該当する。したがって、請求項8及び請求項8の記載を引用する請求項10の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること、という特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足しない。

2 当審の判断
発明の詳細な説明には、本件の課題は、エレベータの呼び登録機能はエレベータ製造メーカが管理する物件データが必要であるが、製造メーカとの保守契約がなされていない物件であっても利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行えるようにすること(【0005】参照)であり、当該課題を解決するための手段として、エレベータ制御装置13にはクラウドサーバ29が接続されており、クラウドサーバ29はエレベータの物件データを管理する管理用サーバとして用いられること(【0020】【0022】参照)、携帯端末25の制御部43は、物件データの管理サーバとして用いられるクラウドサーバ29から物件データを取得する機能、この物件データを用いて利用者の出発階−行先階を設定して、エレベータ11に呼び登録する機能などを備えること(【0029】【0031】参照)が記載されている。
一方、本件訂正請求の訂正事項1により、訂正前の請求項1に係る発明においては、「呼び登録に関わる機能を制限する」とされ、呼び登録に関わる機能を全て制限するものも含まれていたのを、訂正後の請求項1において、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と訂正することにより、訂正後の請求項1に係る発明において、呼び登録の機能を全て制限するものが排除され、請求項1には、「エレベータの物件データを管理するサーバを備え、」「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に」「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」ことが記載されることとなった。
特許請求の範囲の請求項1における記載と発明の詳細な説明の記載とを対比すると、請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足するものとなったといえる。
請求項8の記載についても、請求項1と同様の理由により、特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足するものとなったといえる。
また、請求項3〜7は直接的又は間接的に請求項1を引用しており、請求項10は請求項8を引用しているから、これらの請求項の記載についても、請求項1と同様の理由により、特許法第36条第6項第1号の規定する要件(サポート要件)を満足するものとなったといえる。

第5 取消理由に採用しなかった特許異議申立人の主張について
サポート要件違反について特許異議申立人は、概略次のように主張する。
「本件特許の請求項1に、「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限する」と記載されている。ここで、「保守契約の有無に応じて呼び登録に関わる機能を制限する」場合には、・・・(α)保守契約がある場合に呼び登録に関わる機能を制限せず、保守契約がない場合に呼び登録に関わる機能を制限する場合と、(β)保守契約がある場合に呼び登録に関わる機能を制限し、保守契約がない場合に呼び登録に関わる機能を制限しない場合とが含まれ得る。・・・一方で、発明の詳細な説明には、・・・上記(β)の場合については一切説明がなされていない。したがって、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。・・・本件特許発明8・・・についても同様である。」(異議申立書第4頁第19行〜第5頁第10行)

しかしながら、本件の課題及び課題解決手段は上記「第4」2で述べたとおりであり、そして、訂正事項1及び2により、請求項1及び8について「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」と特定することにより、訂正後の請求項1及び8に係る発明においては、呼び登録の機能を全て制限するものが排除され、「エレベータの物件データを管理するサーバを備え、」「上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に」「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」ことが記載されることとなった。
すなわち、仮に(β)の場合が含まれるとしても、請求項1及び8に係る発明は、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」という構成を備えることで、本件の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
そうすると、出願時の技術常識に照らせば、請求項1及び8に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

また、特許異議申立人は、サポート要件違反について、次のようにも主張する。
「本件発明が解決する課題は、本件明細書の0006段落に記載されているように「保守契約されていない物件であっても、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うことができるようにする」ことである。一方、本件特許の請求項1には「保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を制限する」と記載されているが、「機能を制限する」という表現には、当該機能の全てを利用できなくすることが含まれ得る。・・・、本件特許発明1には、保守契約がない場合に携帯端末を利用した呼び登録を行うことができなくなるものが含まれ得る。そして、かかる場合は、上記課題を解決することができない。したがって、本件特許発明1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を請求するものである。また、・・・本件特許発明8・・・についても同様である。」(異議申立書第5頁第11行〜第6頁第8行)。
しかしながら、訂正事項1及び2により、訂正後の請求項1及び8に係る発明において、「呼び登録に関わる機能を一部制限する、とともに」、「保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とする」とすることにより、請求項1及び8に係る発明において、呼び登録の機能を全て制限するものを排除しつつ、保守契約の有無に関係なく呼び登録が可能とすることにより、「保守契約されていない物件であっても、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うことができるようにする」という本件発明が解決しようとする課題が達成できるといえる。
したがって、請求項1及び8には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が特定されているといえる。
よって、特許異議申立人の上記主張も採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、3〜8、10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3〜8、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】エレベータシステム及び呼び登録方法
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステム及び呼び登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の各階の乗場には、乗場呼びを登録するための乗場呼びボタンが設置されている。エレベータの利用者が乗場呼びボタンを操作すると、乗りかごが乗場呼びの登録階に応答する。利用者が乗りかごに乗り込み、かご操作盤の行先階ボタンを操作すると、行先階が登録され、乗りかごがその行先階に移動する。
【0003】
ここで、近年、利用者が持つ携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムが考えられている。これは、携帯端末に予め呼び登録のためのアプリケーションソフトをインストールしておき、利用者が任意の階の乗場に来たときに、「ビーコン」と呼ばれる無線信号装置から発信される無線電波を用いて当該アプリケーションソフトを起動して乗りかごを呼び、その乗りかごに利用者の行先階を登録するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6321124号公報
【特許文献2】特開2018−111606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した呼び登録の機能は、エレベータ製造メーカが提供する呼び登録用のアプリケーションソフトを利用者の携帯端末にインストールすることで実現される。この場合、物件データ(建物の階床などに関するデータ)の継続的な管理を必要とすることから、その物件データを管理している製造メーカとの保守契約が前提となり、製造メーカとの保守契約がなされていない物件では当該機能を利用することができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、保守契約されていない物件であっても、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うことのできるエレベータシステム及び呼び登録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行う。上記エレベータシステムは、エレベータの物件データを管理するサーバを備え、上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
【図2】図2は上記エレベータシステムに備えられたエレベータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は上記エレベータシステムに備えられた無線信号装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は上記エレベータシステムで用いられる携帯端末の外観構成の一例を示す図である。
【図5】図5は上記携帯端末の機能構成を示すブロック図である。
【図6】図6は上記携帯端末に設けられた物件乗車テーブルの一例を示す図である。
【図7】図7は上記エレベータシステムで用いられるクラウドサーバの構成を示す図である。
【図8】図8は上記エレベータシステムに必要な通信設備を説明するための図である。
【図9】図9は呼び登録アプリのダウンロードを説明するための図である。
【図10】図10は物件データの管理方法を説明するための図である。
【図11】図11は上記物件データの取得方法を説明するための図である。
【図12】図12は呼び登録アプリの構成を説明するための図である。
【図13】図13は上記呼び登録アプリの構成を説明するための図である。
【図14】図14は上記呼び登録アプリの構成を説明するための図である。
【図15】図15はアプリ画面のメイン利用物件表示部を説明するための図である。
【図16】図16は上記アプリ画面の呼び設定表示部を説明するための図である。
【図17】図17は上記アプリ画面の次回点検表示部を説明するための図である。
【図18】図18は上記アプリ画面の広告表示部を説明するための図である。
【図19】図19は上記アプリ画面の広告表示部を説明するための図である。
【図20】図20はメイン利用物件がある場合のアプリ画面の構成を示す図であり、無線信号を受信していない状態を示す図である。
【図21】図21は上記メイン利用物件がある場合のアプリ画面の構成を示す図であり、無線信号を受信中の状態を示す図である。
【図22】図22はメイン利用物件がない場合のアプリ画面の構成を示す図であり、無線信号を受信していない状態を示す図である。
【図23】図23は上記メイン利用物件がない場合のアプリ画面の構成を示す図であり、無線信号を受信中の状態を示す図である。
【図24】図24は上記呼び登録アプリに関わる各機能と保守契約の有無との関係を示す図である。
【図25】図25は上記エレベータシステムのクラウドサーバの処理動作を示すフローチャートである。
【図26】図26は上記エレベータシステムの携帯端末の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
例えばオフィスビルなどの建物にエレベータ11が設置されている。エレベータ11は、乗りかご12とエレベータ制御装置13を備える。乗りかご12は、昇降路内に立設された一対のガイドレールに昇降自在に支持されており、乗場呼びまたはかご呼びに応答して各階を移動する。
【0011】
「乗場呼び」とは、各階の乗場で登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、かご室内で登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。後述するように、本システムでは、利用者の携帯端末25を利用して乗場呼びとかご呼びを登録可能であり、乗場やかご室内でのボタン操作(乗場ボタン23や行先階ボタン17の操作)は不要となる。なお、「かご呼びの登録」のことを「行先階の登録」とも言う。
【0012】
乗りかご12の出入口にはかごドア14が開閉自在に取り付けられており、そのかごドア14の近傍にはかご操作盤15が設けられている。かご操作盤15には、乗りかご12の現在位置や運転方向などを表示するための表示器16の他、建物の各階に対応した行先階ボタン17、戸開ボタン18a、戸閉ボタン18bなどを含む各種操作ボタンが配設されている。
【0013】
エレベータ制御装置13は、「制御盤」とも呼ばれ、建物内の最上部に設けられた図示せぬ機械室あるいは昇降路内の上部に設置され、乗りかご12の運転制御を含むエレベータ全体の制御を行う。
【0014】
一方、各階の乗場20において、乗りかご12の到着口に乗場ドア21が開閉自在に取り付けられており、その乗場ドア21の近傍には乗場操作盤22が設けられている。乗場ドア21は、乗りかご12が到着したときに、かごドア14と共に開閉動作する。駆動源(ドアモータ)はかごドア14側にあり、乗場ドア21は、かごドア14に係合して開閉動作する。乗場操作盤22には、乗りかご12を乗場20に応答させるための乗場ボタン23が設けられている。乗場ボタン23は、利用者の行先方向を指定するための上方向ボタンと下方向ボタンからなる(最下階では上方向ボタンのみ、最上階では下方向ボタンのみで構成される)。
【0015】
ここで、本実施形態において、乗場20の任意の箇所に例えばBluetooth(登録商標)等からなる無線信号装置27が設置されている。無線信号装置27は、「乗場ビーコン(beacon)」として用いられ、所定周波数帯の無線信号を発信する。無線信号装置27の設置箇所は、例えば乗場ドア21付近の壁などであるが、特に限定されるものではなく、乗場20に来た利用者(乗客)が持つ携帯端末25に無線信号が届く範囲であればどこでも良い。
【0016】
無線信号装置27は、基準階を含む各階の乗場20に設置されている。無線信号装置27は、エレベータ制御装置13と乗場操作盤22に有線あるいは無線で接続されており、エレベータ11(乗りかご12)の運転中は常時ONして、乗場呼びの登録に関する情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。上記乗場呼びの登録に関する情報には、「物件ID」,「現在階」などが含まれる。
【0017】
また、乗りかご12内に無線信号装置28が設置されている。無線信号装置28は、「かご内ビーコン(beacon)」として用いられ、かご呼び登録に必要な情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。無線信号装置28の設置箇所は、例えばかごドア14付近の壁などであるが、特に限定されるものではなく、乗場20に来た利用者(乗客)が持つ携帯端末25に無線信号が届く範囲であればどこでも良い。無線信号装置28は、エレベータ制御装置13とかご操作盤15に有線または無線で接続されており、エレベータ11(乗りかご12)の運転中は常時ONして、かご呼びの登録に必要な情報を所定周波数帯の電波で発信する機能を有する。上記かご呼びの登録に必要な情報には、「物件ID」,「現在階」,「行先方向」などが含まれる。
【0018】
利用者が所持する携帯端末25は、一般的な携帯電話機やスマートフォンなどである。この携帯端末25には、予め呼び登録用のアプリケーションソフト26(以下、呼び登録アプリあるいは単にアプリと称す)がインストールされている。この呼び登録アプリ26は、エレベータ11の関連企業によって開発されたものであり、携帯端末25のOS(Operating System)に依存するWebサイトから自由にダウンロードできる。
【0019】
この呼び登録アプリ26を用いて、複数の物件毎に利用者の乗車情報を設定しておくことができる。ここで言う「物件」とは、監視対象とするエレベータが設置された建物のことである。後述するように、利用者の乗車情報には、物件毎にグループ名,乗車階,行先階の情報が含まれる(図6参照)。
【0020】
また、本実施形態では、エレベータ制御装置13にクラウドサーバ29が接続されている。クラウドサーバ29は、インターネット上に設けられ、エレベータ制御装置13と協働して、エレベータの呼び登録に関する各種処理を実行する。上記呼び登録アプリ26は、クラウドサーバ29にインターネット接続して、携帯端末25に備えられた制御部43(図5参照)に乗場呼びとかご呼びの登録処理を実行させる機能を有する。この場合、携帯端末25からクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に接続して、呼び登録(乗場呼びとかご呼び)を行うことになる。
【0021】
無線信号装置27,28が信号受信機能を備えている場合には、携帯端末25から無線信号装置27を介してエレベータ制御装置13に接続して乗場呼びを行い、続いて、携帯端末25から無線信号装置28を介してエレベータ制御装置13に接続してかご呼びを行うことも可能である。
【0022】
また、クラウドサーバ29は、エレベータの物件データを管理する管理サーバとして用いられる。呼び登録アプリ26を用いて呼び登録を行うに際し、携帯端末25からクラウドサーバ29にアクセスし、呼び登録と対象となる物件のデータを取得しておく。
【0023】
図2はエレベータ制御装置13の構成を示すブロック図である。
エレベータ制御装置13は、制御部31と記憶部32と通信部33とを備える。制御部31は、プログラムの起動によりエレベータ11の運転に必要な各種処理を実行する部分であり、ここでは運転制御部31a、かご位置検出部31b、戸開閉制御部31cを有する。
【0024】
運転制御部31aは、乗りかご12の運転制御を行う。詳しくは、運転制御部31aは、乗場20で登録された乗場呼びに基づいて乗りかご12を利用者の乗車階に応答させた後、利用者の行先階に向けて乗りかご12を運転する。かご位置検出部31bは、乗りかご12の現在位置を検出する。検出方法としては、例えば巻上機の回転に同期して出力されるパルスエンコーダのパルス信号をカウントした値から乗りかご12の現在位置を算出するなどの方法がある。
【0025】
戸開閉制御部31cは、乗りかご12が乗場20に到着したときのかごドア14の開閉動作を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31cは、図示せぬ着床検出装置によって乗りかご12が乗場20に着床したことを検出すると、かごドア14を戸開方向に移動させて全開する。そして、所定時間経過後に、戸開閉制御部31cは、かごドア14を戸閉方向に移動させて全閉する。なお、かごドア14の移動と共に乗場ドア21も同じ方向に移動する。
【0026】
記憶部32は、利用者の携帯端末25から送られてきた乗場呼びとかご呼びの情報を記憶する。制御部31は、記憶部32に記憶された情報に基づいて乗りかご12の運転制御を行う。通信部33は、携帯端末25やエレベータ制御装置13との間の通信処理を行う。
【0027】
図3は無線信号装置27,28の構成を示すブロック図である。
無線信号装置27と無線信号装置27,28は、基本的に同じ構成であり、制御部34と通信部35とを備える。制御部34は、呼び登録に関わる無線信号の処理を行う。通信部35は、予め設定された周波数帯の無線信号の送信/受信処理を行う。
【0028】
図4は携帯端末25の外観構成の一例を示す図である。
携帯端末25は、例えば携帯電話機やスマートフォンなどであり、通信機能を備えた小型の端末装置からなる。携帯端末25には、上述した呼び登録アプリ26がインストールされている。図中の26aは呼び登録アプリ26がインストールされていることを示すアイコンである。上述したように、乗場20に設置された無線信号装置(乗場ビーコン)27から所定周波数帯の無線信号を携帯端末25が受信すると、この呼び登録アプリ26が起動される。
【0029】
図5は携帯端末25の機能構成を示すブロック図である。
利用者が持つ携帯端末25には、入力部41、表示部42、制御部43、音声入出力部44、記憶部45、GPS(Global Positioning System)モジュール46、通信部47などが備えられている。
【0030】
入力部41は、各種キーやボタンなどからなり、データの入力や指示を行う。表示部42は、例えばLCDからなり、データの表示を行う。なお、入力部41として、例えば透明のタッチパネルを用い、表示部42の画面上でデータ入力・指示を行う構成でも良い。
【0031】
制御部43は、CPUからなり、所定のプログラムの起動により各種機能を実行する。制御部43は、物件データの管理サーバとして用いられるクラウドサーバ29から物件データを取得する機能、この物件データを用いて利用者の出発階一行先階を設定して、エレベータ11に呼び登録する機能などを備える。
【0032】
音声入出力部44は、音声を入力するためのマイクと、音声を出力するためのスピーカで構成される。記憶部45は、ROMやRAM等のメモリデバイスからなり、呼び登録アプリ26を含む各種プログラムが記憶されている。また、この記憶部45には、物件データ記憶部45aと、物件乗車テーブルT1が設けられている。物件データ記憶部45aは、クラウドサーバ29から取得した物件データが物件毎に記憶される。
【0033】
図6に示すように、物件乗車テーブルT1には、予め呼び登録アプリ26を使用して、物件毎に任意に設定された利用者の乗車情報が記憶されている。乗車情報には、利用者の乗車階と行先階の情報を含む。図中の物件a,b,cは、例えば住居マンション、本社ビル、支店ビルなどであり、利用者が日常的に利用しているエレベータが設置された物件である。さらに、上記乗車情報に、例えばバンクなどのグループ名を含めても良い。例えば高層ビルでは、複数の乗りかごを低層バンクと高層バンクに分けて運転することがある。利用者は、自分の行先階に応じて低層バンクの乗りかご、または、高層バンクの乗りかごに乗車する。図中のAバンク,Bバンクは、例えば低層バンクと高層バンクのことである。物件a,b,cに関する物件データは、クラウドサーバ29に物件別に管理されており、必要に応じて携帯端末25にダウンロードされる。
【0034】
後述するように、保守契約物件では、呼び登録アプリ26に利用者の乗車情報(乗車階と行先階)を設定しておくことで、利用者が当該物件の乗場に来たときに、携帯端末25を鞄等に入れたままの状態(ハンズフリー状態)で、上記乗車情報に基づいて呼び登録を自動的に行うことができる。一方、エレベータ製造メーカと保守契約されていない物件似下、非保守契約物件と称す)では、その都度、呼び登録アプリ26を起動して、利用者の乗車情報(乗車階と行先階)を手動操作により登録する必要がある。
【0035】
GPSモジュール46は、現在位置を検出するために用いられる。通信部47は、外部との間で無線通信を行うための汎用のインタフェフェースであり、公衆回線網を利用した長距離無線通信及びBluetooth(登録商標)、Wi−Fi等の近接無線通信を可能とする。
【0036】
図7はクラウドサーバ29の機能構成を示すブロック図である。
クラウドサーバ29は、一般的なコンピュータの構成として、制御部51、記憶部52、通信部53、管理部54などを備える。制御部51は、エレベータ制御装置13と協働して、利用者の携帯端末25を利用した呼び登録に関わる各種処理を実行する。記憶部52には、制御部51の動作に必要なプログラを含む各種情報が記憶される。また、記憶部52は、利用者の携帯端末25から送られて来る乗車情報などをユーザIDと関連付けて履歴として保持する。通信部53は、携帯端末25やエレベータ制御装置13との間の通信処理を行う。
【0037】
管理部54は、各物件に関するエレベータの物件データを管理している。この物件データには、建物の階床数や運転停止階など、エレベータの運転に関わる建物の情報の他に、エレベータの保守契約の有無に関する情報が含まれる。
【0038】
ここで、呼び登録アプリ26の機能は、物件データを必要とするため、エレベータ製造メーカと保守契約がなされていることを前提として利用できる。これは、呼び登録アプリ26がエレベータ製造メーカによって提供されたアプリであり、エレベータ製造メーカは保守契約によって物件データの管理費を得ているからである。しかし、物件によっては、建物の管理者がエレベータ製造メーカ以外の保守会社に当該物件に設置されたエレベータの保守点検を委託することがある。そこで、本実施形態では、呼び登録アプリ26を広く普及されるため、非保守契約物件であっても、呼び登録の機能を制限すること利用可能とし、さらに、当該機能の利用時に広告表示を行うことで、物件データの管理費の代わりに、広告会社から広告費を得るような仕組みとしている。
【0039】
以下に、(a)前提条件、(b)アプリ構成、(c)画面構成に分けて、詳しく説明する。
【0040】
(a)前提条件
図8は本システムに必要な通信設備を説明するための図である。
本システムにおける呼び登録の機能は、通信設備として、ビーコンと呼ばれる無線信号装置27,28を必要とする。無線信号装置27,28を新設する場合には有償付加仕様、既設の場合には改修工事で対応する。
【0041】
図9は呼び登録アプリのダウンロードを説明するための図である。
呼び登録アプリ26は、ネットワークNT上に存在するアプリケーションストア60から利用者の携帯端末25に無料でダウンロードできる。ただし、呼び登録アプリ26をダウンロードしたときに、物件データは登録されていない。なお、ダウンロード時に携帯端末25に広告表示を行うようにしても良い。
【0042】
図10は物件データの管理方法を説明するための図である。
上記通信装置が設置された物件に関するデータ(物件データ)は、クラウドサーバ29で管理する。クラウドサーバ29は、エレベータ製造メーカで用意した管理サーバであり、ネットワークNT上に存在する
図11は物件データの取得方法を説明するための図である。
なお、以下では呼び登録アプリ26に着目して説明するが、実際には、呼び登録アプリ26がインストールされた携帯端末25が当該呼び登録アプリ26の下でデータの送受信、データの保存、画面表示等を行う。
【0043】
乗場20に設置された通信装置(無線信号装置27)から発信される物件IDを呼び登録アプリ26が受信した際に、呼び登録アプリ26内に当該物件IDに対応した物件データが保存されていなければ、クラウドサーバ29にアクセスして物件データを取得する。別の方法として、建物の管理会社が配布したQRコード(登録商標)61を利用者の携帯端末25で読み取り、クラウドサーバ29にアクセスして物件データを取得する。この方法は、例えば利用者が自宅等で目的の建物の物件データを事前に取得しておく場合や、来訪予定の顧客に物件データを登録してもらう場合などに利用される。
【0044】
物件データには、保守契約の有無を示す情報が含まれている。つまり、保守契約物件だけではなく、非保守契約物件についても、物件データ(階床数等)をエレベータ製造メーカ側で管理し、アプリ登録済みの利用者に提供している。ただし、非保守契約物件に対しては、呼び登録アプリ26の機能が制限される。なお、非保守契約物件であっても、アプリダウンロード時から無償保守期間(例えば3ヵ月)の間は、保守契約物件として扱うようにしても良い。
【0045】
(b)アプリ構成
図12乃至図14は呼び登録アプリ26の構成を説明するための図である。
呼び登録アプリ26は、登録物件を表示する機能を備える。「登録物件」とは、呼び登録アプリ26に物件データを登録した物件のことである。
【0046】
所定の操作により、図12に示すような物件一覧画面G11が携帯端末25に表示される。この物件一覧画面G11は、物件名を表示する物件名表示部G11−1と、メイン利用物件を選択するための物件選択部G11−2を備える。星マークが保守契約物件であることを示す。図12の例では、物件A,物件Bが保守契約物件、物件Cが非保守契約物件である。保守契約物件が複数ある場合には、星マークをタップしてメイン利用物件を選択する。メイン利用物件が選択されると、星マークの表示形態が変更される(例えば白星→黒星の形に変更)。図13の例のように、保守契約物件が1つの場合には、その物件がメイン利用物件になる。
【0047】
物件データは、物件側の都合(例えば工事により不停止階が設定されるなど)によって変更されるため、呼び登録アプリ26は、定期的(例えば月単位)にクラウドサーバ29にアクセスして物件データの更新状態を確認する。そのときに、保守契約の状況も確認する。上述した無償保守期間(例えば3ヵ月)を有する物件の場合、その無償保守期間が経過して保守契約されていない場合には、非保守契約物件として扱われる。
【0048】
保守契約物件については、図14に示すようなパスワード入力画面G12を表示し、パスワード入力部G12−1に入力されたパスワードを認証できたときに、更新後の物件データを再登録する。なお、保守契約物件については、物件データの不正利用を防ぐために、パスワード変更を可能とし、常に最新のパスワードをクラウドサーバ29側で管理することが好ましい。
【0049】
図15はアプリ画面G10のメイン利用物件表示部E1を説明するための図である。
アプリ起動時に基本画面として表示されるアプリ画面G10は、メイン利用物件表示部E1、呼び設定表示部E2、次回点検表示部E3、広告表示部E4から構成される。図15に示すように、メイン利用物件表示部E1には、利用者がメインで利用している保守契約物件名が表示される。保守契約物件がない場合には、メイン利用物件名が「物件一覧」と表示される。
【0050】
アプリ画面G10のメイン利用物件画面E1をタップすると、図12で説明した物件一覧画面G11に遷移する。この物件一覧画面G11の物件名表示部G11−1の中で任意の物件名をタップすると、呼び設定画面G14が表示される。この設定画面G14には、当該物件に対する利用者の出発階と行先階を設定するための利用階設定部14−1と、自動呼び登録/手動呼び登録を設定するための登録設定部14−2が設けられている。なお、自動呼び登録(ハンズフリーによる呼び登録)は保守契約物件のみ設定可能であり、非保守契約物件は手動呼び登録のみである。
【0051】
図16はアプリ画面G10の呼び設定表示部E2を説明するための図である。
呼び設定表示部E2には、図15の呼び設定画面G14で設定された内容(利用者の出発階と行先階自動/手動)が最大2件などの条件付きで表示される。この呼び設定表示部E2はタップしても反応しない。保守契約物件が対象であり、保守契約物件がない場合には呼び設定の内容は表示されない。
【0052】
図17はアプリ画面G10の次回点検表示部E3を説明するための図である。
次回点検表示部E3には、メイン利用物件の点検目が表示される。次回点検表示部E3をタップすると、保守契約物件の点検目一覧画面G15に遷移する。この点検目一覧画面G15の物件名表示部G15−1の中で任意の物件名をタップすると、点検目確認画面G16が表示される。この点検目確認画面G16で点検スケジュールや点検内容を確認でき、点検完了通知を設定できる。点検目は保守契約物件が対象であり、非保守契約物件では表示されない。
【0053】
図18および図19はアプリ画面G10の広告表示部E4を説明するための図である。
アプリ画面G10の広告表示部E4をタップすると、図示せぬ広告画面に遷移する。保守契約の有無で広告表示部E4をタップしたときの動作が変わる。
・保守契約物件の場合、図18に示すように、メイン利用物件周辺の情報が表示される。メイン利用物件周辺の情報とは、例えば交通状況やイベントの情報などである。利用者がジャンルを任意に選択可能であり、利用者が選択したジャンルの情報をクラウドサーバ29側で定期的にダウンロードして配信する。
・非保守契約物件の場合、ブラウザが起動され、広告サイトに接続される。図19に示すように、広告配信業者が選定した広告が表示される。
【0054】
保守契約の有無で広告表示の範囲が変わる。
・保守契約物件の場合、広告表示の範囲が小さい。
・非保守契約物件の場合、広告表示の範囲が大きい。
保守契約の有無で広告表示の情報量が変わる。
・保守契約物件の場合、メイン利用物件周辺の情報が1〜2項目程度表示される。
・非保守契約物件の場合、アプリ起動時に更新され、広告配信業者が選定した様々な広告が一方的に表示される。
【0055】
(c)画面構成
図20および図21はメイン利用物件がある場合(保守契約物件がある場合)のアプリ画面G10の構成を示す図である。図20は無線信号装置27から発信される無線信号を受信していない状態、図21は無線信号装置27から発信される無線信号を受信中の状態である。
【0056】
図20に示すように、無線信号未受信のときは、アプリ画面G10のメイン利用物件表示部E1、次回点検表示部E3、広告表示部E4をタップすることで、それぞれに対応した詳細画面に遷移する。
【0057】
図21に示すように、無線信号受信中は、呼び設定表示部E2をタップすることで、利用階を設定できる。また、広告表示部E4をタップすることで、詳細画面として広告画面G17に遷移する。保守契約物件では、広告画面G17に当該物件の周辺情報が表示される。なお、保守契約物件では、利用者の操作によって広告情報を表示/非表示に任意に切り替えられるようにしても良い。
【0058】
図22および図23はメイン利用物件がない場合(保守契約物件がない場合)のアプリ画面G10の構成を示す図である。図20は無線信号装置27から発信される無線信号を受信していない状態、図21は無線信号装置27から発信される無線信号を受信中の状態である。
【0059】
図22に示すように、無線信号未受信のときは、アプリ画面G10のメイン利用物件表示部E1に「物件一覧」と表示され、そこをタップすることで、「物件一覧」の詳細画面として物件一覧画面G11が表示される。また、広告表示部E4のエリアがアプリ画面G10の半分以上を占める。広告表示部E4をタップすることで、広告の詳細画面である広告画面G17に遷移する。非保守契約物件では、広告画面G17に広告配信業者が選定した様々な広告情報が表示される。
【0060】
図23に示すように、無線信号受信中は、呼び設定表示部E2をタップすることで、利用階を設定できる。また、広告表示部E4をタップすることで、広告の詳細画面である広告画面G17に遷移する。なお、非保守契約物件では、広告画面G17を一定時間表示してからでないと、利用階を設定できないようにしても良い。
【0061】
図24は呼び登録アプリ26に関わる各機能と保守契約の有無との関係を示す図である。この例では、物件Aが保守契約物件、物件Bが非保守契約物件である。
【0062】
保守契約物件である物件Aに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」,「手動呼び登録」のすべてが可能である。なお、「サービス階切り離し」とは、建物の管理者側の設定で運転サービス階を不停止階に切り替えた場合を示す。このようなサービス階切り離しは、保守契約物件でないと管理できない。また、物件Aに対する広告表示は小さく(広告表示なしに設定することも可能)、情報量も少ない。
【0063】
一方、非保守契約物件である物件Bに対しては、「パスワード設定・変更」,「サービス階切り離し」,「自動呼び登録」は不可であり、「手動呼び登録」のみが可能である。また、物件Bに対する広告表示は大きく、様々な広告情報が一方的に表示される。
【0064】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図25は本システムのクラウドサーバ29の処理動作を示すフローチャートである。上述したように、クラウドサーバ29には、建物の階床数や運転停止階など、エレベータの運転に関わる建物の情報を含んだ物件データが物件毎に管理されている。上記物件データには、保守契約の有無に関する情報が含まれる。また、利用者の携帯端末25には、予め呼び登録アプリ26がインストールされているものとする。
【0065】
携帯端末25から物件データの要求があった場合、クラウドサーバ29は、その物件データに含まれる保守契約に関する情報に基づいて、保守契約物件か否かを判断する(ステップS11)。保守契約物件であった場合(ステップS11のYes)、クラウドサーバ29は、パスワードを要求し(ステップS12)、携帯端末25から正しいパスワードが送られてきた場合にのみ、当該物件データを携帯端末25に送る(ステップS13)。その際、クラウドサーバ29は、呼び登録アプリ26に対して呼び登録の機能に制限を設けず、通常通りに利用可能な状態とする(ステップS14)。また、クラウドサーバ29は、物件周辺の情報を広告情報として携帯端末25に表示する(ステップS15)。保守契約物件の場合、呼び登録アプリ26により、この広告情報を非表示に設定することも可能である。
【0066】
一方、非保守契約物件であった場合(ステップS11のNo)、クラウドサーバ29は、パスワードを要求せずに、当該物件データを携帯端末25に送る(ステップS16)。その際、クラウドサーバ29は、呼び登録アプリ26に対して呼び登録の機能に制限を設け、手動呼び登録だけを利用可能な状態とする(ステップS17)。また、クラウドサーバ29は、広告配信業者が選定した様々な広告情報を携帯端末25に表示する(ステップS18)。非保守契約物件の場合、この広告情報は常に表示状態にある。
【0067】
図26は本システムの携帯端末25の処理動作を示すフローチャートである。いま、図1の例のように、利用者が携帯端末25を持って、ある物件の乗場20に来たとする。携帯端末25には、クラウドサーバ29から取得した物件データが登録されている。
【0068】
初期状態では、「乗場呼び登録モード」に設定されている(ステップS21)。「乗場呼び登録モード」のとき、携帯端末25は、無線信号装置27の信号(以下、乗場ビーコン信号と称す)をスキャンする(ステップS22)。乗場ビーコン信号が受信されると(ステップS23のYes)、携帯端末25は、無線信号装置27を通じて乗場呼びの登録処理を実行する(ステップS24)。
【0069】
ここで、保守契約物件であれば、利用者はハンズフリーの状態で呼び登録できる。つまり、携帯端末25は、無線信号装置27から発信される物件IDに基づいて、図6の物件乗車テーブルT1から当該物件に対して設定された乗車情報(出発階と行先階の情報)を無線信号装置27またはクラウドサーバ29を介してエレベータ制御装置13に送る。これにより、エレベータ制御装置13によって、利用者の行先方向(上方向または下方向)が乗場操作盤22に乗場呼びとして登録される。一方、非保守契約物件であれば、その都度、呼び登録アプリ26を起動して、乗車階と行先階を手動操作により設定する必要がある。
【0070】
乗場呼びの登録が完了すると、「乗場呼び登録モード」から「かご呼び登録モード」に切り替えられる(ステップS25)。「かご呼び登録モード」のとき、携帯端末25は、無線信号装置28から発信される信号(以下、かご内ビーコン信号と称す)をスキャンする(ステップS26)。
【0071】
かご内ビーコン信号が受信されると(ステップS27のYes)、携帯端末25は、無線信号装置28を通じてかご呼びの登録処理を実行する(ステップS28)。詳しくは、無線信号装置28から乗りかご12の現在階行先方向などを含む運転情報が発信されている。携帯端末25は、利用者の乗車情報と無線信号装置28から発信される乗りかご12の運転情報とを比較する。両者の情報が一致すれば、携帯端末25は、無線信号装置28またはクラウドサーバ29を介して、利用者の行先階をエレベータ制御装置13に送る。これにより、乗りかご12のかご操作盤15に利用者の行先階がかご呼びとして登録される。
【0072】
このように本実施形態によれば、非保守契約物件であっても、呼び登録アプリ26の機能を制限することで、呼び登録を行うことができる。これにより、呼び登録アプリ26を広く普及させることができ、保守契約の有無に関係なく、利用者が各物件で携帯端末25を利用して呼び登録できようになる。
【0073】
また、非保守契約物件で呼び登録アプリ26を利用する場合には広告表示を行うことで、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
1.「アプリ内広告」で収入が得られる。
2.管理サーバ(クラウドサーバ29)の運用費が「アプリ内広告」の収入で賄える。したがって、非保守契約物件について、管理サーバで物件データを管理する構成としてもビジネス的に成立する。
3.建物の管理者がエレベータ製造メーカ以外の保守会社にエレベータの保守契約を委託した場合に、アプリ機能が制限され、その都度、アプリを起動して呼び登録する必要がある。つまり、ハンズフリーの呼び登録である自動呼び登録の機能を使えないため、アプリ提供者であるエレベータ製造メーカに保守契約を戻す可能性で出てくる。
4.呼び登録画面には広告表示部分があるため、保守契約の有無に関わらず、収入を得るビジネスが成立する。なお、派生形として、一定時間広告表示後に呼び登録画面に遷移させることで、広告表示による収入を上げることができる。
5.非保守契約物件に対しては、広告情報が多くなるため、広告価格を高く設定しておくことで、エレベータ製造メーカ側から見れば、保守契約の費用が得られない不利な物件の方が広告収入を大きく取ることのできるビジネスモデルを実現できる。
【0075】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、非保守契約物件であっても、利用者の携帯端末を利用して呼び登録を行うことのできるエレベータシステム及び呼び登録方法を提供することができる。
【0076】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
11…エレベータ、12…乗りかご、13…エレベータ制御装置、14…かごドア、15…かご操作盤、16…表示器、17…行先階ボタン、18a…戸開ボタン、18b…戸閉ボタン、20…乗場、21…乗場ドア、22…乗場操作盤、23…乗場ボタン、25…携帯端末、26…呼び登録用のアプリケーションソフト(呼び登録アプリ)、26a…アイコン、27…無線信号装置(乗場ビーコン)、28…無線信号装置(かご内ビーコン)、29…クラウドサーバ、31…制御部、32…記憶部、33…通信部、34…制御部、35…通信部、41…入力部、42…表示部、43…制御部、44…音声入出力部、45…記憶部、46…GPSモジュール、47…通信部、51…制御部、52…記憶部、53…通信部、54…管理部。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行うエレベータシステムにおいて、
エレベータの物件データを管理するサーバを備え、
上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、
上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
上記呼び登録に関わる機能として、上記アプリケーションソフトに予め設定済みの利用者の出発階と行先階を上記エレベータに登録する自動呼び登録機能と、上記アプリケーションソフトを起動して、利用者の出発階と行先階を手動操作により上記エレベータに登録する手動呼び登録機能を含み、
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、上記自動呼び登録機能を制限し、上記手動呼び登録機能で呼び登録させることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、保守契約物件よりも上記広告情報の表示範囲を広く、情報量を多くすることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項4】
上記非保守契約物件では、広告配信業者から一方的に提供される情報が上記広告情報として表示されることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。
【請求項5】
上記保守契約物件では、上記保守契約物件の周辺情報が上記広告情報として表示されることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。
【請求項6】
上記保守契約物件では、上記広告情報の表示/非表示が切り替えられることを特徴とする請求項3記載のエレベータシステム。
【請求項7】
上記携帯端末が上記サーバから保守契約物件に関する物件データを取得する場合にパスワードが要求されることを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項8】
呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行うための呼び登録方法において、
エレベータの物件データをクラウド上のサーバで管理し、
上記物件データに保守契約の有無に関する情報を含ませておき、
上記携帯端末が上記サーバから上記物件データを取得した際に、保守契約の有無に応じて上記呼び登録に関わる機能を一部制限するとともに、上記携帯端末に広告情報を表示し、保守契約の有無に関係なく上記呼び登録を可能とすることを特徴とする呼び登録方法。
【請求項9】
上記呼び登録に関わる機能として、上記アプリケーションソフトに予め設定済みの出発階と行先階を上記エレベータに登録する自動呼び登録機能と、上記アプリケーションソフトを起動して出発階と行先階を手動操作により上記エレベータに登録する手動呼び登録機能を含み、
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、上記自動呼び登録機能を制限し、上記手動呼び登録機能で呼び登録させることを特徴とする請求項8記載の呼び登録方法。
【請求項10】
上記携帯端末が非保守契約物件で呼び登録を行う場合に、保守契約物件よりも上記広告情報の表示範囲を広く、情報量を多くすることを特徴とする請求項8記載の呼び登録方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2024-06-28 
出願番号 P2022-000105
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (B66B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小川 恭司
特許庁審判官 尾崎 和寛
内田 博之
登録日 2023-04-24 
登録番号 7268209
権利者 東芝エレベータ株式会社
発明の名称 エレベータシステム及び呼び登録方法  
代理人 弁理士法人スズエ国際特許事務所  
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