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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1415055
総通号数 34 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-11-24 
確定日 2024-09-19 
事件の表示 特願2021− 8312「情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月 2日出願公開、特開2022−112437〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和 3年 1月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 9月28日付け:拒絶理由通知書
令和 4年12月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 3月13日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 9月 8日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 5年11月24日 :審判請求
令和 6年 4月17日付け:拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
令和 6年 6月14日 :意見書、手続補正書の提出

第2 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由1(実施可能要件
この出願は、発明の詳細な説明の記載について、当業者が請求項1〜14に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の請求項1〜14の記載に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 当審拒絶理由についての検討
上記1の当審拒絶理由におけるなお書きのとおり、本願明細書に記載された発明の詳細な説明は、令和4年12月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜14に係る発明について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、請求項1〜14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないため、原査定の理由である進歩性(特許法第29条第2項)の判断については留保する旨を通知していたところ、当審拒絶理由に対して令和6年6月14日に提出された手続補正書による補正により、上記1で示した理由1及び理由2は解消した。
そこで、原査定の理由が解消されているか否かについて、以下で検討する。

第3 原査定の概要
原査定(令和5年9月8日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、この出願の請求項1〜8、10〜14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2〜4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:韓国登録特許第10−2188099号公報
引用文献2:特開2006−318325号公報
引用文献3:特開2019−000102号公報
引用文献4:国際公開第2016/185742号

第4 本願発明について
本願請求項1〜14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」などという。)は、令和6年6月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「利用者によって飼育されるペットに関するペット情報に含まれる当該ペットの摂取に関する摂取情報に基づいて、当該ペットが摂取した食物の熱量値を算出する算出部と、
前記熱量値と、所定の期間内に摂取する必要がある食物の総熱量の理論値であって前記ペット情報に含まれる当該ペットの属性に関する属性情報に基づく理論値との差に基づいて選択された商品に関する商品情報を前記利用者に提供する提供部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

第5 引用文献の記載、及び引用発明
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された引用文献である、引用文献1(韓国登録特許第10−2188099号公報。2020年(令和2年)12月7日公開。)には、次の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)




(当審訳:
[0001] 本発明はペットの成長管理システムに関するものである。より具体的には、本発明はペットの現在の成長データに基づいて適切な成長管理情報、特に飼料などの献立情報を提供するための成長管理システムに関するものである。)




(当審訳:
[0003] 動物を飼う飼い主、つまりユーザは、たまに手作りの餌を作ることもあるが、飼料を餌として与えるのが一般的だ。飼料は通常、ペットの年齢、大きさ、品種に合わせて十分な栄養を提供するように作られる。このように飼料が栄養分に重点を置いて作られるため、たびたび飼料を与えたり、活動量が不足した状態で飼料を摂取し続けたりすると、太り過ぎを招き、糖尿病など多くの病気にかかる恐れがある。このような場合、ユーザは単純に飼料を変えたり、食事療法を実施する場合があるが、ペット現在の客観的な成長データを基にしない限り、効果的な結果を期待することは難しい。)




(当審訳:
[0008] したがって、本発明はペットの成長を助け、有効な情報を提供し、適切な飼料を決定して供給することができるペットの成長管理システムを提供することを目的とする。)




(当審訳:
[0021] 図1で本発明の成長管理システム(1)は、ペットを飼うユーザ側(2)と接続される。成長管理システム(1)はメモリ、演算部およびインターフェースを持つサーバまたはステーションであることができる。ユーザ機器(2)は携帯電話、PDA、ノートパソコン、コンピュータなどあらゆる電子機器を含む。ユーザ機器(2)は成長管理システム(1)とインターネットなど無線通信を通じて接続される。)




(当審訳:
[0023] ユーザは機器を利用してペットの情報を入力する。ユーザが入力した情報は成長管理システム(1)の入力データ(22)に保存される。ペットの情報は基礎データ(24)として、犬や猫といった動物の種類、品種、年齢、性別、去勢・避妊手術の有無、疾病履歴情報を含む。基礎データ(4)のうち、去勢・避妊手術の有無と疾病履歴情報は更新できるが、年齢、性別および品種は固定されたデータである。ペットの情報はまた、生活データ(26)として、体重、活動量、飼料給食量、給水量を含む。生活データ(26)はペットの保護者が直接入力するか、または健康管理機器(体重計、トラッカー、給食機、給水機)使用時にプログラムやアプリケーションと連動して自動的に入力できる。
[0024] 成長管理システム(1)は、後述するようにペットの成長状態を分析したレポートをユーザ機器(2)に配信する。また、成長管理システム(1)が推薦または決定した飼料情報をユーザ機器(2)に伝送し、ユーザの入力を待機する。
[0025] 次に、本発明の成長管理システム(1)は、図3に示すように、入力データ(22)の情報を基にペットの成長状態を分析する成長状態分析部(30)と、成長状態分析部(30)の分析結果を基に成長管理のための処方を表示し、飼料を決定する成長管理処方部(40)とを含む。成長状態分析部(30)と成長状態処方部(40)は、飼料情報テーブル(50)を参照する。飼料情報テーブル(50)には、現在流通または販売されているペット飼料の情報−名前、メーカー、充重量、成分、栄養情報、適切な年齢帯−が保存されている。飼料情報は成長管理システム(1)に常時更新され、最新データが保存される。これらの情報は飼料製品の包装紙からも確認できる。)





(当審訳:
[0026] 図4は、本発明の成長状態分析部(30)のペット成長状態分析過程を示すフローチャートである。
[0027] まず、成長状態分析部(30)は入力データ(22)の種類、品種及び体重データを参照してペットのサイズを分類する(S10)。例えば、犬の場合、ベルナール(Bernard)犬種で、成熟時体重の平均である67kgを超えると超大型に分類する。テリア(terrier)犬種であり、成熟時体重平均の6.3kgを超えると小型に分類する。好ましくは、超小型、小型、中型、大型及び超大型の5段階に分類することができる。猫の場合、ほとんど中型だが、メインクン(main coon)は大型で、シャム猫は小型の3段階に分類できる。
[0028] 次に、入力された年齢を基に成長段階を分類する(S12)。成長段階は、例えば幼児期、成長期、成熟期および老齢期の4段階に分類できる。
[0029] 次に、入力された年齢、品種及び体重のデータを基に、これらを当該ペットの成長曲線と比較する(S14)。比較結果は、痩せ、正常、ぽっちゃり、肥満の4段階で表示することができる。
[0030] 図6は犬の12品種に対して年齢(週齢; X軸)と体重(Y軸)を示した成長曲線の一例である。本発明は、最初は成長曲線モデルとして図6のような基礎モデルを基にするが、成長状態分析部(30)の分析データの蓄積により新しく学習された成長曲線モデルを利用して分析する点に特徴がある。そうすれば、外国種でも国内での飼育環境によって異なる成長モデルを適切に構築することができる。これによって、例えば痩せと肥満の基準も変わる可能性がある。成長曲線モデルに基づいて、年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値を決定することができる。
[0031] 次に、入力された飼料給食量と給水量のデータを基に、当該ペットが現在摂取しているエネルギーを計算し、正常体重の場合の必要エネルギーと比較する(S16)。エネルギーは一日または食事単位にすることができる。この時、前述したように飼料情報テーブル(50)を参照し、ここに保存された成分と栄養素データを利用してペットが摂取するエネルギー総量と共に、タンパク質、炭水化物、脂肪、カルシウム、リン、オメガ3およびオメガ6など各栄養素の摂取状態も分析する。)




(当審訳:
[0032] 図5は、本発明の成長管理処方部(40)が成長管理分析部(30)が遂行したルーチンを基に後続して遂行するペット成長管理処方過程を示すフローチャートである。
[0033] 成長管理処方部(40)は、成長管理分析部(30)が導き出した正常体重と必要エネルギーを基に、ここに到達できる時間と目標エネルギーを算出する。ペットが肥満の場合、目標エネルギーは減少値であり、痩せている場合は増加するだろう。
[0034] 次に、飼料情報テーブル(50)を参照し、目標エネルギーに到達できる適切な飼料を選択して表示する(S24)。飼料は複数個選択して推薦することができる。タンパク質、炭水化物、脂肪、カルシウム、リンなどの栄養素情報を示し、これらそれぞれのエネルギーを合計して目標エネルギーに到達できる飼料には優先権を与え、例えば「プレミアム」と表示することができる。
[0035] 本発明の特徴の一つは、段階(S24)で以上のような既存の飼料情報だけでなく、目標エネルギーを満たすことができる手作り飼料情報を提供してユーザが自由に選択できるようにした点にある。手作り飼料情報はペットの年齢や体重などを考慮して、現在特に必要な栄養素を補完し、不要な過剰栄養素を減らすことを提案することで、既成の飼料情報が与える画一化の欠点を克服することができる。手作り飼料は水分が少ない乾燥製品で、お菓子やビスケット型にオーダーメイドで製造することができる。)

2 引用発明
上記1の摘記事項から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ペットの現在の成長データに基づいて適切な成長管理情報、特に飼料などの献立情報を提供するための成長管理システムであって、([0001])
成長管理システム(1)はメモリ、演算部およびインターフェースを持つサーバまたはステーションであって、インターネットなど無線通信を通じてユーザ機器(2)と接続され、([0021])
ユーザが機器を利用して、犬や猫といった動物の種類、品種、年齢、性別、去勢・避妊手術の有無、疾病履歴情報を含む基礎データ(24)と、体重、活動量、飼料給食量、給水量を含む生活データ(26)である、ペットの情報を入力すると、ユーザが入力した情報は成長管理システム(1)の入力データ(22)に保存され、([0023])
成長管理システム(1)は、成長管理システム(1)が推薦または決定した飼料情報をユーザ機器(2)に伝送するものであって、([0024])
成長管理システム(1)は、入力データ(22)の情報を基にペットの成長状態を分析する成長状態分析部(30)と、成長状態分析部(30)の分析結果を基に成長管理のための処方を表示し、飼料を決定する成長管理処方部(40)とを含み、成長状態分析部(30)と成長状態処方部(40)は、現在流通または販売されているペット飼料の情報−名前、メーカー、充重量、成分、栄養情報、適切な年齢帯−が保存されている飼料情報テーブル(50)を参照するものであり、([0025])
成長状態分析部(30)のペット成長状態分析過程では、([0026])
まず、入力データ(22)の種類、品種及び体重データを参照してペットのサイズを分類し、([0027])
次に、入力された年齢を基に成長段階を分類し、([0028])
次に、入力された年齢、品種及び体重のデータを基に、これらを当該ペットの成長曲線と比較し、最初は成長曲線モデルとして基礎モデルを基にするが、成長状態分析部(30)の分析データの蓄積により新しく学習された成長曲線モデルを利用して分析することにより、成長曲線モデルに基づいて、年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値を決定し、([0029]、[0030])
次に、入力された飼料給食量と給水量のデータを基に、当該ペットが現在摂取しているエネルギーを一日または食事単位で計算し、正常体重の場合の必要エネルギーと比較し、この時、飼料情報テーブル(50)を参照し、ここに保存された成分と栄養素データを利用してペットが摂取するエネルギー総量と共に、各栄養素の摂取状態も分析し、([0031])
成長管理処方部(40)が後続して遂行するペット成長管理処方過程([0032])では、成長管理分析部(30)が導き出した正常体重と必要エネルギーを基に、ここに到達できる時間と目標エネルギーを算出し([0033])、次に、飼料情報テーブル(50)を参照し、目標エネルギーに到達できる適切な飼料を選択して表示する、([0034])
成長管理システム。」

第6 対比・判断
1 対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。

(1)引用発明の「成長管理システム」は、「メモリ、演算部およびインターフェースを持つサーバまたはステーション」であって、「ペットの現在の成長データに基づいて適切な成長管理情報、特に飼料などの献立情報を提供するための」情報処理を行うものであることは明らかであるから、引用発明の「成長管理システム」は、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

(2)引用発明の「成長管理システム」は、ユーザが機器(ユーザ機器)を利用して入力した「ペットの情報」を「入力データ(22)」に保存するものである。ここで、引用発明の「ユーザ」は、本願発明1の「利用者」に相当し、引用発明において、「ユーザ」が機器を利用して入力した「ペットの情報」における「ペット」とは、「ユーザ」によって飼育されるペットであることは明らかであるから、引用発明の「ペットの情報」は、本願発明1の「利用者によって飼育されるペットに関するペット情報」に相当する。

(3)引用発明の上記「ペットの情報」には、「体重、活動量、飼料給食量、給水量」を含む「生活データ(26)」が含まれるところ、「生活データ(26)」に含まれる「飼料給食量、給水量」は、ペットが摂取した食物の量に関するデータであるから、引用発明の「飼料給食量、給水量」は、本願発明1の「ペット情報に含まれる当該ペットの摂取に関する摂取情報」に相当する。
そして、引用発明の「成長管理システム」に含まれる「成長状態分析部(30)」は、「入力データ(22)の情報を基にペットの成長状態を分析する」ものであり、そのペット成長状態分析過程において、「入力された飼料給食量と給水量のデータを基に、当該ペットが現在摂取しているエネルギーを一日または食事単位で計算」するものである。ここで、引用発明において、「入力された飼料給食量と給水量のデータ」を基に計算される「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」は、本願発明1の「当該ペットが摂取した食物の熱量値」に相当する。
したがって、上記(2)の検討を踏まえると、引用発明において、「入力された飼料給食量と給水量のデータ」を基に「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」を計算する「成長状態分析部(30)」は、本願発明1の「利用者によって飼育されるペットに関するペット情報に含まれる当該ペットの摂取に関する摂取情報に基づいて、当該ペットが摂取した食物の熱量値を算出する算出部」に相当する。

(4)引用発明の上記「ペットの情報」には、上記「生活データ(26)」のほか、「犬や猫といった動物の種類、品種、年齢、性別」等を含む「基礎データ(24)」が含まれるところ、「基礎データ(24)」に含まれる「犬や猫といった動物の種類、品種、年齢、性別」の各情報は、本願発明1の「前記ペット情報に含まれる当該ペットの属性に関する属性情報」に相当する。また、本願明細書の段落【0045】には、「例えば、属性情報は、ペットの名称や、ペットの種別や、年齢や、性別や、体重や、ボディコンディショニングスコア等である。」と記載されているように「体重」が含まれるところ、上記(3)で示したように、「生活データ(26)」には「体重」が含まれており、引用発明の「生活データ(26)」に含まれる「体重」に関しても、本願発明1の「前記ペット情報に含まれる当該ペットの属性に関する属性情報」に相当する。
そして、引用発明の「成長状態分析部(30)」は、「入力データ(22)の種類、品種及び体重データを参照してペットのサイズを分類し」、「入力された年齢を基に成長段階を分類し」、「入力された年齢、品種及び体重のデータを基に、これらを当該ペットの成長曲線と比較し」、「成長状態分析部(30)の分析データの蓄積により新しく学習された成長曲線モデルを利用して分析することにより、成長曲線モデルに基づいて、年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値を決定」するものである。引用発明の「成長状態分析部(30)」におけるこれら一連の処理は、「入力データ(22)」に含まれる「年齢」、「種類」、「品種」、「体重」に基づいて、「成長曲線モデル」を基に「年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値」を決定する処理であって、ここでいう「適切なエネルギー(カロリー)数値」とは、「年齢と体重」を「成長曲線モデル」に照らすことにより決定される、「摂取する必要がある食物の総熱量」の理論的な値を指すものといえるから、引用発明の「年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値」は、本願発明1の「摂取する必要がある食物の総熱量の理論値であって前記ペット情報に含まれる当該ペットの属性に関する属性情報に基づく理論値」に相当する。他方、引用発明の「年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値」は、「所定の期間内」に「摂取する必要がある食物の総熱量の理論値」であるか定かではない点で、本願発明1と相違する。

(5)引用発明の「成長状態分析部(30)」は、上記(3)、(4)で示した処理に加え、上記(3)で検討した「入力された飼料給食量と給水量のデータ」を基に計算される「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」を、「正常体重の場合の必要エネルギー」と「比較」し、「現在流通または販売されているペット飼料の情報」が保存された「飼料情報テーブル(50)」を参照することにより、「ペットが摂取するエネルギー総量と共に、各栄養素の摂取状態も分析」するものであり、ここでいう「正常体重の場合の必要エネルギー」とは、上記(4)で示した「年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値」を意味するものであるといえる。
また、引用発明の「飼料情報テーブル(50)」に保存された「ペット飼料の情報」は、「現在流通または販売されている」ものであるから、本願発明1の「商品に関する商品情報」に相当する。
そして、引用発明の「成長管理システム」は、「ペットの現在の成長データに基づいて適切な成長管理情報、特に飼料などの献立情報を提供するため」に、「推薦または決定した飼料情報をユーザ機器(2)に伝送する」ものであるから、上記の「成長管理処方部(40)」において、「適切な飼料を選択して表示する」とは、適切な飼料に関する「飼料情報」をユーザ機器(2)のユーザに提供することであって、引用発明において、「飼料情報テーブル(50)を参照し、目標エネルギーに到達できる適切な飼料を選択して表示する」「成長管理処方部(40)」は、本願発明1の「選択された商品に関する商品情報を前記利用者に提供する提供部」に相当する。
してみると、引用発明において、「成長状態分析部(30)」が「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」と「正常体重の場合の必要エネルギー」を「比較」して分析した結果に基づいて、「飼料情報テーブル(50)」に保存された「飼料情報」の中から「適切な飼料を選択して表示する」「成長管理処方部(40)」は、「前記熱量値と、摂取する必要がある食物の総熱量の理論値であって前記ペット情報に含まれる当該ペットの属性に関する属性情報に基づく理論値との比較に基づいて選択された商品に関する商品情報を前記利用者に提供する提供部」である点で、本願発明1と一致する。他方、上記(4)で示した相違点に加え、「商品に関する商品情報」の選択に際し、本願発明1の「提供部」は、「前記熱量値」と「属性情報に基づく理論値」の両者の「差」に基づいて選択するのに対し、引用発明の「成長管理処方部(40)」は、両者の「比較」に基づいて選択するものの、「差」に基づくものであるか定かではない点で相違する。

(6)上記(1)〜(5)によれば、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「利用者によって飼育されるペットに関するペット情報に含まれる当該ペットの摂取に関する摂取情報に基づいて、当該ペットが摂取した食物の熱量値を算出する算出部と、
前記熱量値と、摂取する必要がある食物の総熱量の理論値であって前記ペット情報に含まれる当該ペットの属性に関する属性情報に基づく理論値との比較に基づいて選択された商品に関する商品情報を前記利用者に提供する提供部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

[相違点1]
「当該ペットの属性に関する属性情報に基づく理論値」に関し、本願発明1は、「所定の期間内」に「摂取する必要がある食物の総熱量の理論値」であるのに対し、引用発明の「年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値」は、「摂取する必要がある食物の総熱量の理論値」であるものの、「所定の期間内」に「摂取する必要がある食物の総熱量の理論値」であるか定かではない点。

[相違点2]
「提供部」における「商品に関する商品情報」の選択に際し、本願発明1は、「前記熱量値」と「属性情報に基づく理論値」の両者の「差」に基づいて選択するのに対し、引用発明の「成長管理処方部(40)」は、両者の「比較」に基づいて選択するものの、「差」に基づくものであるか定かではない点。

2 相違点についての判断
以下、事案に鑑み、相違点1、2についてまとめて検討する。

(1)相違点1、2について
上記1(3)で示したように、引用発明の「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」(「当該ペットが摂取した食物の熱量値」に相当)は、「一日または食事単位で計算」されて「正常体重の場合の必要エネルギー」と比較されるものであるところ、「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」が一日単位で計算される場合、当該エネルギーは「所定の期間内」において摂取されたエネルギーである。
そして、引用発明において、そのような「所定の期間内」に「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」を、「正常体重の場合の必要エネルギー」と比較する場合に、比較対象の「正常体重の場合の必要エネルギー」についても同一の期間の長さである「所定の期間内」における必要エネルギーの量で比較を行うことにより、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が当然に行うことである。
また、上記1(3)、1(4)で示したように、引用発明において、「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」と「正常体重の場合の必要エネルギー」(「年齢と体重に該当する適切なエネルギー(カロリー)数値」)は数値であり、同一の「所定の期間内」における「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」と「正常体重の場合の必要エネルギー」を「比較」する際に、両者の「差」を求めることは、当業者が一般的に行うことであって、上記相違点2に係る相違点は、実質的な相違点ではない。仮にそうではないとしても、引用発明において、ともに数値として表される「当該ペットが現在摂取しているエネルギー」と「正常体重の場合の必要エネルギー」の「比較」を、両者の「差」を求めることにより行うことは、当業者が普通になし得たことであり、上記相違点2に係る構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

(2)作用効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 小括
したがって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2024-07-22 
結審通知日 2024-07-23 
審決日 2024-08-06 
出願番号 P2021-008312
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G06Q)
P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 伏本 正典
特許庁審判官 緑川 隆
古川 哲也
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム  
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所  

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