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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1415227
総通号数 34 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2024-06-03 
確定日 2024-09-19 
事件の表示 特願2020−182746「発光ダイオード供給基板の製造方法、発光ダイオードディスプレイの製造方法、及び発光ダイオードディスプレイの分割ユニットの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月17日出願公開、特開2022− 73007〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年10月30日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 9月14日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月12日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月 3日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年6月3日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和6年6月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書について補正するものであって、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
複数の発光ダイオードを供給先に移載するための発光ダイオード供給基板の製造方法であって、
供給基板上に複数の発光ダイオードを搭載する第1搭載工程と、
前記供給基板上の不良な発光ダイオードを選択的に除去する選択除去工程と、
前記供給基板上の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを移載する第2搭載工程と
を含むことを特徴とする発光ダイオード供給基板の製造方法。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
複数の発光ダイオードを供給先に移載するための発光ダイオード供給基板の製造方法であって、
石英基板と、該石英基板上に設けられた粘着層とを含む供給基板上に複数の発光ダイオードを、該複数の発光ダイオードが前記供給基板の前記粘着層の表面に粘着するように搭載する第1搭載工程と、
前記供給基板上の不良な発光ダイオードに向けて前記供給基板の裏面側からレーザ光を選択的に照射し、前記不良な発光ダイオードを選択的に除去する選択除去工程と、
前記供給基板上の前記粘着層の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを移載する第2搭載工程と
を含み、
前記供給基板に搭載された複数の発光ダイオードは、出発基板から移載された発光ダイオードである、ことを特徴とする発光ダイオード供給基板の製造方法。」

2 本件補正の目的について
(1) 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1について、次のアからオに示す限定をするものである。
ア 「供給基板上に複数の発光ダイオードを搭載する第1搭載工程」における「供給基板」を「石英基板と、該石英基板上に設けられた粘着層とを含む供給基板」に限定すること。
イ 「供給基板上に複数の発光ダイオードを搭載する第1搭載工程」における複数の発光ダイオードを搭載する態様を「該複数の発光ダイオードが前記供給基板の前記粘着層の表面に粘着するように」搭載するものに限定すること。
ウ 「前記供給基板上の不良な発光ダイオードを選択的に除去する選択除去工程」について、「前記供給基板上の不良な発光ダイオードに向けて前記供給基板の裏面側からレーザ光を選択的に照射し、前記不良な発光ダイオードを選択的に除去する」ものに限定すること。
エ 「前記供給基板上の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを移載する第2搭載工程」における「前記供給基板上の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置」を「前記供給基板上の前記粘着層の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置」に限定すること。
オ 前記「第1搭載工程」において「供給基板上に」「搭載された」「複数の発光ダイオード」を、「出発基板から移載された発光ダイオード」に限定すること。

(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である
(3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

(1) 本件補正発明について
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に示した、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、本件補正発明の構成を便宜上次のように構成Xと構成A1、A2、B及びCに分説する。また、参考図として、本願の第2実施形態(本願明細書【0190】〜【0192】参照)に対応する【図4】及び【図5】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
X 複数の発光ダイオードを供給先に移載するための発光ダイオード供給基板の製造方法であって、
A1 石英基板と、該石英基板上に設けられた粘着層とを含む供給基板上に複数の発光ダイオードを、該複数の発光ダイオードが前記供給基板の前記粘着層の表面に粘着するように搭載する第1搭載工程と、
B 前記供給基板上の不良な発光ダイオードに向けて前記供給基板の裏面側からレーザ光を選択的に照射し、前記不良な発光ダイオードを選択的に除去する選択除去工程と、
C 前記供給基板上の前記粘着層の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを移載する第2搭載工程と
を含み、
A2 前記供給基板に搭載された複数の発光ダイオードは、出発基板から移載された発光ダイオードである、
ことを特徴とする
X 発光ダイオード供給基板の製造方法。

<参考図>



イ 課題・作用効果に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、本件補正発明の技術上の意義の概略を理解するために、発明が解決しようとする課題及び作用効果に関連する記載等を一部抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は合議体による。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード供給基板の製造方法、発光ダイオードディスプレイの製造方法、発光ダイオードディスプレイの分割ユニットの製造方法、及び素子供給基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミニ発光ダイオード及びマイクロ発光ダイオードを用いたディスプレイの開発が盛んに行われている。それらの実用化に向けた製造上の大きな課題の一つは、微小な発光ダイオードをディスプレイパネルに配置する製造手段である。その組み立て手段として、スタンプを用いた微小構造体移載技術が注目されている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
この技術を用いてFHD(1920×1080)のディスプレイパネルを組み立てる場合、発光ダイオード供給基板から1個ずつ発光ダイオードを移載するとすれば、2,073,600画素分の移載が必要となる。カラーディスプレイを製造する場合、1画素に対して少なくとも赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3種類のミニ発光ダイオード若しくはマイクロ発光ダイオードの移載が必要となる。仮に1素子ずつ移載するとなれば、約600万回以上の移載が必要となる。これが4Kディスプレイともなれば、2,400万回以上の移載動作が必要になってしまう。このような労力を払ってディスプレイ組み立てを行っても、多量の不良発光ダイオードが交じった供給基板を使用した場合、ディスプレイパネル基板上で正常な発光ダイオードを再配置、すなわち、リペアをしなければならいという問題を有している。そのため、正常な発光ダイオードのみ搭載された供給基板が切望されている。なお、この問題は、供給基板からディスプレイパネル基板に一括転写する場合であっても、本質的な共通問題である。
【0004】
スタンプ方式に代わるより高速、かつ、高効率な移載手段として、レーザリフトオフ法がある。特許文献2において、移載対象の微小機能素子と基板との間に剥離層を設けて、レーザ照射時に剥離層がアブレーションして基板と素子とを分離させる方法が示されている。この方式を用いた場合の欠点は、剥離層の材料が微小機能素子の側に付着した状態になるため、移載後洗浄する必要が生じるため必ずしも良い方法とは言えない。剥離層を用いない方法として、シリコーン樹脂であるPDMS(PolyDiMethylSiloxane)の感圧接着性を利用する方法がある(特許文献3、非特許文献2)。この方法を用いると、微小機能素子がレーザリフトオフされた後に余計な付着物が微小機能素子に付着しないため、シリコーン樹脂を用いたレーザリフトオフ法への期待が高まっている。微小機能素子をレーザリフトオフ法により移載するための装置の一例は、特許文献4に示されている。」
「【0012】
しかしながら、このようにスタンプ法よりも高速に移載できるレーザリフトオフ法を用いてディスプレイを製造したとしても、多量の不良発光ダイオードが交じった供給基板を使用した場合、ディスプレイ基板上で正常な発光ダイオードを再配置、すなわち、リペアをしなければならいという問題を有している。そのため、正常な発光ダイオードのみ搭載された供給基板が切望されている。」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上説明したように、スタンプ法、レーザリフトオフ法のいずれの方法を用いた場合でも、ディスプレイパネル基板に発光ダイオードを供給する供給基板(図9の第2の供給基板5)上に搭載された発光ダイオードの中に不良の発光ダイオードが含まれている場合、不良発光ダイオードをディスプレイパネル基板にそのまま移載してしまうため、正常な移載歩留まりが低下するという問題を有していた。
【0016】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、複数の正常な発光ダイオードを供給先に移載できる発光ダイオード供給基板を製造することができる発光ダイオード供給基板の製造方法、高歩留まりの発光ダイオードディスプレイの製造方法、高歩留まりの発光ダイオードディスプレイの分割ユニットの製造方法、及び複数の正常な素子を供給先に移載できる素子供給基板を製造することができる素子供給基板の製造方法を提供することを目的とする。」

(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された特開2019−140400号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したもので、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に付した。
a 【請求項1】、【請求項6】
「【請求項1】
欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを事前排除する事前排除方法であって、
レーザー透過性の基板における欠陥のあるマイクロ発光ダイオードの欠陥パターンを取得することと、
欠陥パターンに従って、レーザー透過性の基板側からレーザーでレーザー透過性の基板を照射することにより、レーザー透過性の基板から欠陥のあるマイクロ発光ダイオードをリフトオフすることと、
を含むことを特徴とする事前排除方法。」
「【請求項6】
レーザー透過性の基板において、リフトオフされたマイクロ発光ダイオードの箇所に良好なマイクロ発光ダイオードを形成することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の事前排除方法。」

b 段落【0001】〜【0007】
「【技術分野】
【0001】
本発明は表示に用いられるマイクロ発光ダイオードに関し、より具体的には、欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを事前排除する方法、マイクロ発光ダイオード装置を製造する方法、マイクロ発光ダイオード装置及びマイクロ発光ダイオード装置を含む電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ発光ダイオード(Micro LED)技術は、マイクロサイズのLEDアレイを基板に高密度集積することである。現在、マイクロ発光ダイオード技術は発展し始め、産業界では、高品質マイクロ発光ダイオード製品の市場登場が期待されている。高品質マイクロ発光ダイオード製品は、既に市場に登場している例えばLCD/OLEDのような従来の表示製品に対し多大な影響を与えている。
【0003】
マイクロ発光ダイオードの製造過程において、まずドナーウェハにマイクロ発光ダイオードを形成し、続いてマイクロ発光ダイオードを、例えばディスプレイスクリーンである受け基板に転写する。
【0004】
マイクロ発光ダイオードの製造過程における1つの難題は、如何にマイクロ発光ダイオードをドナーウェハから受け基板に転写するかである。従来技術において、一般的に静電型ピックアップの方式により前記転写を実行する。静電型ピックアップの過程には転写ヘッドアレイを使用する必要がある。転写ヘッドアレイは、その構造が比較的複雑であり、その信頼性を考慮しなければならない。転写ヘッドアレイを製造するには余分なコストがかかる。転写ヘッドアレイによるピックアップの前には相変化を発生させる必要がある。また、転写ヘッドアレイによる製造過程に、マイクロ発光ダイオードの相変化に用いられるサーマルバジェットは制限され、一般的に350℃より小さく、又は、より具体的には、200℃より小さく、そうでなければ、マイクロ発光ダイオードの性能が劣化する。一般的に、転写ヘッドアレイによる製造過程に2回転写する必要があり、すなわち、ドナーウェハからキャリアウエハまでの転写及びキャリアウエハから受け基板までの転写である。
(中略)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの目的は、欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを事前排除する新しい技術的解決手段を提供することである。」

c 段落【0097】〜【0109】、【図5】
「【0097】
図5は本発明によるマイクロ発光ダイオードの転写に用いられる方法のもう一つの例示的な実施例を示すフローチャートである。
【0098】
図5に示すように、ステップS3100において、少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードをオリジナル基板から支持体に転写する。例えば、オリジナル基板はレーザー透明性を有する。」
「【図5】


「【0099】
一例において、該ステップは、マイクロ発光ダイオードが形成されているオリジナル基板を、表面に光放出接着剤がある支持体に取り付けることと、オリジナル基板側からレーザーでオリジナル基板を照射して、オリジナル基板から前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードをリフトオフすることと、支持体側から光を照射することにより、リフトオフされていないマイクロ発光ダイオードを剥離することとを含むことができる。この実例において、支持体は透光性を有する。
【0100】
例えば、前記光放出接着剤は紫外線照射テープ(UVTape)であってもよい。例えば、支持体は剛性のものである。転写過程に、マイクロ発光ダイオードの転位は最終的製品の品質に影響を与える。本願の発明者は、剛性の支持体を用いることによって、このような転位を減少させることを発見した。これは当業者にまだ注目されていないところである。例えば、支持体の材料はPETであってもよい。
【0101】
一般的に、赤色マイクロ発光ダイオードは、例えばサファイア基板などのレーザー透明性の基板に形成されにくい。そのため、一実例において、予め赤色マイクロ発光ダイオードを形成し、その後赤色マイクロ発光ダイオードをオリジナル基板に転写することによって、最終的に受け基板に転写することができる。例えば、該実施例において、成長基板に赤色マイクロ発光ダイオードを形成することができる。続いて、赤色マイクロ発光ダイオードを中間基板に転写する。その後、赤色マイクロ発光ダイオードを中間基板からオリジナル基板に転写する。
【0102】
ステップS3200において、前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードを支持体からスペア基板に転写する。
【0103】
例えば、スペア基板はその表面にエラストマー又はポリマーを有する。例えば、エラストマー又はポリマーを介して前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードをスペア基板に接合させる。
【0104】
一実例において、該ステップは、さらに、前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードを有する支持体をスペア基板に接合させることと、支持体側から光を照射して、前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードを剥離することと、を含むことができる。
【0105】
ステップS3300において、前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードをスペア基板から受け基板に転写する。
【0106】
一実例において、該ステップは、さらに、前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードと受け基板における接続パッドを位置合わせすることと、エラストマー又はポリマーを介して前記少なくとも1つのマイクロ発光ダイオードをリフトオフすることとを含むことができる。
【0107】
例えば、それぞれ赤色マイクロ発光ダイオード、青色マイクロ発光ダイオードと緑色マイクロ発光ダイオードに対して上記転写ステップを実行することができる。ここで、詳細な説明を省略する。
【0108】
上記処理の後、マイクロ発光ダイオードに対して通常の後続処理を実行することができる。例えば、後続処理は、マイクロ発光ダイオードを有する受け基板にポリマーを塗布することと、ポリマーを硬化させることと、ポリマーをエッチングすることによって、マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル層を露出させることと、マイクロ発光ダイオードのエピタキシャル層にN電極を形成することと、N電極においてパッケージングを行うことと、を含むことができる。
【0109】
本発明の発明者は、マイクロ発光ダイオードの転写過程に、一般的にオリジナル基板における一部のマイクロ発光ダイオードのみを転写することを発見した。直接マイクロ発光ダイオードを受け基板に転写する場合、オリジナル基板に残されたマイクロ発光ダイオードを汚染させやすい。この実施例において、中間支持体を経由する転写により、このような汚染を減少させることができる。」

d 段落【0113】〜【0119】、【図6A】〜【図6F】
「【0113】
一般的に、赤色マイクロ発光ダイオードは、例えばサファイア基板などのレーザー透過性のオリジナル基板に直接形成されることができない。そのため、予め別の基板に赤色マイクロ発光ダイオードを形成し、その後、サファイア基板に転写しなければならない。図6A〜図6(当審注:「図6A〜図6F」の誤記と認められる。)は本発明による赤色マイクロ発光ダイオードの転写に用いられる実例を示す。
【0114】
図6Aに示すように、例えばGaAs基板などの成長基板301に赤色マイクロ発光ダイオード302を形成する。」
「【図6A】


「【0115】
図6Bに示すように、仮接合のポリマー303を介して、赤色マイクロ発光ダイオード302と例えばシリコン基板などの中間基板304を接合させる。ポリマー303は、例えば、熱リフトオフテープ(TRT)である。」
「【図6B】


「【0116】
図6Cに示すように、例えば、湿式エッチングにより成長基板301を除去する。」
「【図6C】


「【0117】
図6Dに示すように、例えばサファイア基板などのオリジナル基板306にフォトレジスト305が塗布されている。フォトレジスト305により、オリジナル基板306は赤色マイクロ発光ダイオード302に接合される。フォトレジスト305は、200℃以上の温度に耐えられるが、一般的には250℃以上である。」
「【図6D】


「【0118】
図6Eに示すように、200℃より小さい温度で、ポリマー303を処理して、中間基板304を除去する。」
「【図6E】


「【0119】
図6Fに示すように、各赤色マイクロ発光ダイオード302を隔離するために、フォトレジスト305に対するO2プラズマエッチングを実行する。」
「【図6F】



e 段落【0170】〜【0182】、【図11】
「【0170】
図11は、本発明のまた別の実施例によるマイクロ発光ダイオードの欠陥を修復する方法を示すフローチャートである。
【0171】
図11に示すように、ステップS5100において、受け基板におけるマイクロ発光ダイオードの欠陥パターンを取得する。
【0172】
例えば、自動目視検査、フォトルミネッセンス、電子光学検知、電気特性測定などにより、欠陥パターンを取得することができる。これらの検出方式は本発明の改善されたところではなく、従来技術であってもよいため、ここで、その詳細な説明を省略する。」
「【図11】


「【0173】
ステップS5200において、レーザー透過性の修復キャリア基板に欠陥パターンに対応するマイクロ発光ダイオードを形成する。
【0174】
一実例において、まず欠陥パターンでマイクロ発光ダイオードを仮基板に取り付けることができる。
【0175】
例えば、前記仮基板は剛性のもの、例えばPET板である。例えば、仮基板には接着剤、例えば、紫外線照射テープが塗布されている。よって、レーザー透過性のオリジナル基板におけるマイクロ発光ダイオードを接着剤と接触させることができる。続いて、欠陥パターンに従って、レーザーでオリジナル基板を照射し、オリジナル基板からマイクロ発光ダイオードをリフトオフする。接着剤の部分剥離によって、欠陥パターンに従ったリフトオフ後のマイクロ発光ダイオードは仮基板に残し、リフトオフされていないマイクロ発光ダイオードを剥離する。接着剤の部分剥離された後、リフトオフされていないマイクロ発光ダイオードは依然としてオリジナル基板に残される。接着剤の部分剥離とは、剥離後、接着剤の残留接着力は既にリフトオフされたマイクロ発光ダイオードを十分にオリジナル基板から分離させるが、リフトオフされていないマイクロ発光ダイオードはオリジナル基板から分離させることができないことを指す。
【0176】
続いて、仮基板におけるマイクロ発光ダイオードを修復キャリア基板に転写する。
【0177】
例えば、まず仮基板におけるマイクロ発光ダイオードを修復キャリア基板に接合させることができる。仮基板におけるマイクロ発光ダイオードは、例えば、ポリマーフィルムを介して修復キャリア基板に接合されることができる。続いて、接着剤の完全剥離によって、マイクロ発光ダイオードを仮基板からリフトオフする。例えば、マイクロ発光ダイオードを仮基板からリフトオフした後にポリマーフィルムの少なくとも一部、例えば、マイクロ発光ダイオードの間のポリマーフィルム部分を除去する。
【0178】
例えば、UV露光により前記接着剤の部分剥離と接着剤の完全剥離を実行することができる。
【0179】
一般的に、接着剤の部分剥離に使用される露光時間又はエネルギーは標準露光時間又はエネルギーより小さく、すなわち、部分剥離の露光時間は標準時間より小さく、及び/又は、部分剥離のエネルギーは標準エネルギーより小さい。接着剤の完全剥離に使用される露光時間又はエネルギーは標準露光時間又はエネルギーより大きい又は等しく、すなわち、完全に剥離される露光時間は標準時間より大きい又は等しく、及び/又は、完全に剥離されるエネルギーは標準エネルギーより大きい又は等しい。標準露光時間又はエネルギーとは、ちょうど、接着剤を完全に剥離させるために必要な露光時間又はエネルギーであってもよく、又は公称露光時間又はエネルギーであってもよいことを指す。
【0180】
ステップS5300において、修復キャリア基板におけるマイクロ発光ダイオードを受け基板における欠陥位置に合わせ、欠陥位置の接続パッドと接触させる。
【0181】
ステップS5400において、修復キャリア基板側からレーザーで修復キャリア基板を照射することにより、修復キャリア基板からマイクロ発光ダイオードをリフトオフする。
【0182】
例えば、修復キャリア基板はサファイア基板である。上記のように、本発明において、採用される基板はレーザー透明性を有する。言い換えると、リフトオフされるマイクロ発光ダイオードのデバイスなどに比べ、照射しようとするレーザーに対して、該基板は透明であり、すなわち、更に高い透光率を有する。そのため、照射される時、レーザーのエネルギーは主にその後側のデバイス(マイクロ発光ダイオード)に吸収され、リフトオフを実現する。当然ながら、レーザー透過性の基板とデバイスの間の透光率の差が大きいほど、リフトオフの効果は良い。」

f 段落【0187】〜【0192】、【図12A】〜【図12F】
「【0187】
図12A〜図12Fは本発明によるマイクロ発光ダイオードの欠陥を修復するのに用いられる一実例を示す。
【0188】
図12Aに示すように、オリジナル基板701にはマイクロ発光ダイオード703が形成されている。マイクロ発光ダイオード703は、欠陥のあるマイクロ発光ダイオードと良好なマイクロ発光ダイオードを含む。マイクロ発光ダイオードを接着剤層704を介して仮基板705に取り付ける。接着剤層704は、例えば紫外線照射テープである。前記仮基板705は、例えばPET板である。欠陥パターンに従って、レーザー702でオリジナル基板701を照射することにより、オリジナル基板から良好なマイクロ発光ダイオードをリフトオフする。」
「【図12A】


「【0189】
図12Bに示すように、仮基板705側から紫外線706で接着剤層(紫外線照射テープ)704を部分的に露光させる。」
「【図12B】


「【0190】
図12Cに示すように、部分的に露光された後、接着剤層704は依然として一定の残留接着性を有し、既にレーザーリフトオフされたマイクロ発光ダイオード703bを十分にオリジナル基板から分離させるが、レーザーリフトオフされていないマイクロ発光ダイオード703aは依然としてオリジナル基板に残される。欠陥パターンでマイクロ発光ダイオードに対するレーザーリフトオフを実行するため、接着剤層704(又は仮基板705)には欠陥パターンに基づいて配列された良好なマイクロ発光ダイオードがある。」
「【図12C】


「【0191】
図12Dに示すように、接着剤層704におけるマイクロ発光ダイオード703bはポリマーフィルム708を介して修復キャリア基板707に仮接合させる。続いて、接着剤層704を完全に露光させる。図12Eに示すように、接着剤層704はマイクロ発光ダイオード703bから分離される。図12Fは修復を行うのに用いられる修復キャリア基板707及びその上の欠陥パターンに基づくマイクロ発光ダイオード703bを示している。図12Fに示すように、更に、マイクロ発光ダイオード703bの間の接合ポリマーフィルム708を除去し、マイクロ発光ダイオード703bと基板707との間のフィルム部分だけを残すことができる。
【0192】
続いて、レーザーリフトオフの方式により、修復キャリア基板707を受け基板における欠陥を修復するのに用いることができる。」
「【図12D】


「【図12E】


「【図12F】



g 段落【0193】〜【0203】、【図13】
「【0193】
図13は本発明のまた別の例示的な実施例による欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを事前排除するのに用いられる方法を示すフローチャートである。」
「【図13】


「【0194】
図13に示すように、ステップS6100において、レーザー透過性の基板における欠陥のあるマイクロ発光ダイオードの欠陥パターンを取得する。
【0195】
例えば、自動目視検査、フォトルミネッセンス、電子光学検知又は電気特性測定により、欠陥パターンを取得することができる。
【0196】
ステップS6200において、欠陥パターンに従って、レーザー透過性の基板側からレーザーでレーザー透過性の基板を照射することにより、レーザー透過性の基板から欠陥のあるマイクロ発光ダイオードをリフトオフする。
【0197】
一実例において、リフトオフされたマイクロ発光ダイオードがレーザー透過性基板から分離するように、接触の方式により作用力を印加する。例えば、レーザー透過性の基板におけるマイクロ発光ダイオードを紫外線照射テープに取り付けることができる。例えば、紫外線照射テープは剛性の支持体に取り付けられている。レーザーを介して欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを紫外線照射テープにリフトオフし、UV露光により欠陥のないマイクロ発光ダイオードをレーザー透過性の基板に残す。
【0198】
別の実例において、非接触の作用力を利用して、レーザー透過性基板から欠陥のあるマイクロ発光ダイオードをリフトオフすることができる。前述のように、非接触の作用力は接触の方式により印加する必要がない。例えば、非接触の作用力は重力、静電気力と電磁力の少なくとも1つである。前述の方式でこれらの作用力を印加することができる。
【0199】
本発明によれば、マイクロ発光ダイオードが受け基板に転写された後に修復を行うことができる以外に、又は、更に前記転写の前にレーザー透過性の基板において修復を行うこともできる。例えば、レーザー透過性の基板において、リフトオフされたマイクロ発光ダイオードの位置に良好なマイクロ発光ダイオードを形成する。前述の修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好なマイクロ発光ダイオードを形成することができる。
【0200】
また別の実施例において、本発明は、更にマイクロ発光ダイオード装置を製造する方法を提供する。該製造方法は、前記実施例による欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを事前排除する方法を使用してレーザー透過性の基板における欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを事前排除することを含む。前記受け基板は、例えば、ディスプレイパネル又は表示基板である。前記マイクロ発光ダイオード装置は、例えば表示装置である。
【0201】
該また別の実施例において、本発明は、更にマイクロ発光ダイオード装置、例えば表示装置を提供する。前記実施例によるマイクロ発光ダイオード装置を製造する方法を使用することで前記マイクロ発光ダイオード装置を製造することができる。
【0202】
該また別の実施例において、本発明は、更に電子機器を提供する。該電子機器は、前記実施例によるマイクロ発光ダイオード装置を含む。該電子機器は、例えば、携帯電話、タブレットPCなどであってもよい。
【0203】
従来技術において、転写を行う時、基板における良好なマイクロ発光ダイオードと欠陥のあるマイクロ発光ダイオードは、いずれも受け基板に転写される。しかし、本発明の技術的解決手段によれば、周知の良好なマイクロ発光ダイオードのみが受け基板に転写される。」

h 段落【0204】〜【0207】、【図14A】〜【図14C】
「【0204】
図14A〜図14Cは本発明による欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを事前排除するのに用いられる一実例を示す。
【0205】
この実例において、まず例えば、自動目視検査、フォトルミネッセンス、電子光学検知又は電気特性測定などによりレーザー透過性の基板における欠陥パターンを取得する。続いて、レーザー透過性の基板を紫外線照射テープに取り付ける。図14Aに示すように、紫外線照射テープ804は支持体805に位置する。レーザー透過性の基板801は、マイクロ発光ダイオード803を介して紫外線照射テープ804に取り付けられる。欠陥パターンに従って、レーザー802で基板801を照射し、基板801から欠陥のあるマイクロ発光ダイオードをリフトオフする。」
「【図14A】


「【0206】
図14Bに示すように、支持体805側から紫外線806で紫外線照射テープ804を部分的に露光させる。」
「【図14B】


「【0207】
図14Cに示すように、部分的に露光された後、紫外線照射テープ804は依然として一定の残留接着性を有し、既にレーザーリフトオフされたマイクロ発光ダイオード803bを十分に基板801から分離させ、レーザーリフトオフされていないマイクロ発光ダイオード803aは依然として基板801に残される。」
「【図14C】



(イ) 引用文献1の記載から認定した事項
a(a) 引用文献1の段落【0199】には、次の記載がある。
「本発明によれば、マイクロ発光ダイオードが受け基板に転写された後に修復を行うことができる以外に、又は、更に前記転写の前にレーザー透過性の基板において修復を行うこともできる。例えば、レーザー透過性の基板において、リフトオフされたマイクロ発光ダイオードの位置に良好なマイクロ発光ダイオードを形成する。前述の修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好なマイクロ発光ダイオードを形成することができる。」
(b) 引用文献1においては【0117】及び【図6D】等に「サファイヤ基板などのオリジナル基板306」及び「赤色マイクロ発光ダイオード302」が示されていることを踏まえると、引用文献1の【0193】〜【0203】、【図13】に記載された技術事項については、「レーザ透過性の基板」として【図6D】等に記載された「レーザ透過性のオリジナル基板306」に適用したもの、すなわち、「レーザ透過性の基板」及び「マイクロ発光ダイオード」を「レーザ透過性のオリジナル基板306」及び「赤色マイクロ発光ダイオード302」と読み替えた、次の技術事項(以下「認定事項1」という。)を当業者は認識することができる。なお、読み替えた部分を〔〕でくくって示した。
<認定事項1>
「【0193】
図13は本発明のまた別の例示的な実施例による欠陥のある〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を事前排除するのに用いられる方法を示すフローチャートである。
【0194】
図13に示すように、ステップS6100において、〔レーザ透過性のオリジナル基板306〕における欠陥のある〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕の欠陥パターンを取得する。
【0195】
例えば、自動目視検査、フォトルミネッセンス、電子光学検知又は電気特性測定により、欠陥パターンを取得することができる。
【0196】
ステップS6200において、欠陥パターンに従って、〔レーザー透過性のオリジナル基板306〕側からレーザーでレーザー透過性の基板を照射することにより、レーザー透過性の基板から欠陥のある〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕をリフトオフする。
【0197】
一実例において、リフトオフされた〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕が〔レーザー透過性のオリジナル基板306〕から分離するように、接触の方式により作用力を印加する。例えば、〔レーザー透過性のオリジナル基板306〕における〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を紫外線照射テープに取り付けることができる。例えば、紫外線照射テープは剛性の支持体に取り付けられている。レーザーを介して欠陥のある〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を紫外線照射テープにリフトオフし、UV露光により欠陥のない〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を〔レーザー透過性のオリジナル基板306〕に残す。
【0198】
別の実例において、非接触の作用力を利用して、〔レーザー透過性のオリジナル基板306〕から欠陥のある〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕をリフトオフすることができる。前述のように、非接触の作用力は接触の方式により印加する必要がない。例えば、非接触の作用力は重力、静電気力と電磁力の少なくとも1つである。前述の方式でこれらの作用力を印加することができる。
【0199】
本発明によれば、〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕が受け基板に転写された後に修復を行うことができる以外に、又は、更に前記転写の前にレーザー透過性の基板において修復を行うこともできる。例えば、レーザー透過性の基板において、リフトオフされた〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕の位置に良好な〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を形成する。前述の修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好な〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を形成することができる。」

b(a) 前記a(a)に摘記した【0199】には「前述の修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好なマイクロ発光ダイオードを形成することができる。」(下線は合議体による。)との記載があるので、修復方法に関する【0180】〜【0183】及び【図3】の記載を参酌すると、段落【0180】には、次の記載がある。
「【0180】
ステップS5300において、修復キャリア基板におけるマイクロ発光ダイオードを受け基板における欠陥位置に合わせ、欠陥位置の接続パッドと接触させる。」
(b) 上記(a)に示した【0180】と【0199】の記載から、当業者は、次の技術事項(以下「認定事項2」という。)を認識することができる。なお、読み替えた部分を〔〕でくくって示した。
<認定事項2>
「修復キャリア基板における〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を〔レーザー透過性のオリジナル基板306〕における欠陥位置に合わせ、〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を欠陥位置の場所に相当する部分と接触させるという修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好な〔赤色マイクロ発光ダイオード302〕を形成することができる。」

(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、図13及び図6に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用文献の図も理解の助けとするため参考図として掲載する。
<引用発明>
方法であって、
赤色マイクロ発光ダイオードは、例えばサファイア基板などのレーザー透過性のオリジナル基板に直接形成されることができないため、予め別の基板(成長基板301)に赤色マイクロ発光ダイオード302を形成し、その後、サファイア基板などのレーザー透過性のオリジナル基板306に転写する一連のステップを有し、(【0113】、【図6A】〜【図6F】)
最終的に受け基板に転写することができものであり、(【0101】)
例えばGaAs基板などの成長基板301に赤色マイクロ発光ダイオード302を形成し、(【0114】、【図6A】)
【参考図:図6A】

仮接合のポリマー303を介して、赤色マイクロ発光ダイオード302と例えばシリコン基板などの中間基板304を接合させ、ポリマー303は、例えば、熱リフトオフテープ(TRT)であり、(【0115】、【図6B】)
【参考図:図6B】

例えば、湿式エッチングにより成長基板301を除去し、(【0116】、【図6C】)
【参考図:図6C】

例えばサファイア基板などのオリジナル基板306にフォトレジスト305が塗布されており、フォトレジスト305により、オリジナル基板306は赤色マイクロ発光ダイオード302に接合され、(【0117】、【図6D】)
【参考図:図6D】


200℃より小さい温度で、ポリマー303を処理して、中間基板304を除去し、(【0118】、【図6E】)
【参考図:図6E】

各赤色マイクロ発光ダイオード302を隔離するために、フォトレジスト305に対するO2プラズマエッチングを実行するステップを有し、(【0119】、【図6F】)
【参考図:図6F】

レーザ透過性のオリジナル基板306における欠陥のある赤色マイクロ発光ダイオード302の欠陥パターンを取得し、(認定事項1の【0194】)
欠陥パターンに従って、レーザー透過性のオリジナル基板306側からレーザーでレーザー透過性の基板を照射することにより、レーザー透過性の基板から欠陥のある赤色マイクロ発光ダイオード302をリフトオフし、(認定事項1の【0196】)
非接触の作用力を利用して、レーザー透過性のオリジナル基板306から欠陥のある赤色マイクロ発光ダイオード302をリフトオフすることができ、例えば、非接触の作用力は重力であり、(認定事項1の【0198】)
欠陥のない赤色マイクロ発光ダイオード302をレーザー透過性のオリジナル基板306に残す段階を経るものであり、(認定事項1の【0197】)
レーザー透過性の基板において、リフトオフされた赤色マイクロ発光ダイオード302の位置に良好な赤色マイクロ発光ダイオード302を形成するものであり、修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好な赤色マイクロ発光ダイオード302を形成することができ、(認定事項1の【0199】)
修復キャリア基板における赤色マイクロ発光ダイオード302をレーザー透過性のオリジナル基板306における欠陥位置に合わせ、赤色マイクロ発光ダイオード302を欠陥位置の場所に相当する部分と接触させるという修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好な赤色マイクロ発光ダイオード302を形成することができ、(認定事項2)
受け基板は、例えば、ディスプレイパネル又は表示基板である、(【0200】)
方法。

イ 引用文献5、6に記載された事項及び周知技術1の認定
(ア) 引用文献5の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献(Kristin M. Charipar, Raymond C.Y. Auyeung, Heungsoo Kim, Nicholas A.
Charipar and Alberto Pique、"Use of an Elastomeric Donor for LIFT of Metal Foils"、JLMN-Journal of Laser Micro/Nanoengineering、2018年9月、Vol. 13、No. 2、p. 85-89)(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。括弧内に当合議体による日本語訳を付す。なお、当該文献は、本願の明細書において、非特許文献2として引用されているものである。
a 第85ページのアブストラクトの欄
「 The use of laser induced forward transfer (LIFT) techniques
for printing materials for sensor and electronics applications is
growing as additive manufacturing expands into the fabrication of
functional structures. In many LIFT applications, a sacrificial or
donor layer is required despite the fact that it must be replenished after being completely vaporized when illuminated with a laser
pulse. A better solution would be to employ a reusable donor layer
to which the transferable ink or metal foil is attached and then
released by a laser pulse but without the donor undergoing damage,
therefore allowing repeated use for subsequent transfers. In this
work, we describe the use of an elastomeric donor layer based on
poly(dimethylsiloxane) or PDMS for LIFT with UV (λ = 355 nm) laser pulses. Metal foils of varying size and thickness were attached to
PDMS release layers initially spin-coated onto glass substrates and then printed onto silicon substrates by LIFT. A parametric study
involving both the laser pulse intensity and the gap between the
donor substrate and receiving substrate was conducted to determine
placement accuracy as a function of laser fluence and gap distance. The effect of these two parameters, fluence and gap is discussed for the transfers of 25 and 50 μm thick copper foils, together with
the applications of this technique for the printing of more complex foil shapes of metals and other materials.」
(積層造形法が機能的構造の製造に進出するにつれて、センサー及び電子機器用途のための材料を印刷するためのレーザー誘起前方転写(LIFT)法の使用が増大している。LIFTを利用する多くの場合、犠牲層又はドナー層が必要とされるが、レーザーパルスが照射されて完全に気化した後に補充しなければならないという事情がある。より良い解決策は、再利用可能なドナー層を使用することであり、これは転写可能なインク又は金属箔が付着された後でレーザーパルスによって放出されてもドナーが損傷を受けることは無く、その後の転写のために繰り返し使用することが可能である。本研究において、本研究者らは、UV(λ=355 nm)レーザーパルスを用いたLIFTのためのポリ(ジメチルシロキサン)又はPDMSに基づくエラストマードナー層を使用すること説明する。様々なサイズ及び厚さの金属箔を、最初にガラス基板上にスピンコーティングされたPDMS剥離層に付着させ、次いでLIFTによってシリコン基板上に印刷した。レーザーパルス強度及びドナー基板と受容基板の間のギャップの両方を含むパラメーターに関する研究を行って、レーザーフルエンス及びギャップ距離の関数としての配置精度を決定した。これらの二つのパラメータ、フルエンス及びギャップの効果は、25及び50μm厚の銅箔の転写について、より複雑な箔形状の金属及びその他の材料の印刷のための本技術の適用とともに議論する。)

b 第85ページ左欄第1行〜右欄第26行
「1. Introduction
Laser-induced Forward Transfer or LIFT is capable of achieving
high speed/throughput, high resolution patterns of a wide range of
materials over many types of substrates for applications in
flexible-hybrid electronics [1].…(中略)…
This sacrificial donor layer, known as the dynamic re-lease layer or DRL, is first deposited onto the donor sub-strate. The desired
material to be transferred is then subsequently applied to the DRL
surface. The DRL, is responsible for absorbing most of the laser
intensity, and provides upon vaporization, the forward energy
required to propel a fraction of the donor material towards the
receiving substrate.(後略)」
(1.序論
レーザー誘起前方向転写、すなわち、LIFTは、フレキシブルハイブリッドエレクトロニクスにおける用途のために、多くのタイプの基板にわたって広範囲の材料の高速/スループット、高解像度パターンを達成することができる[1]。…(中略)…
この犠牲ドナー層はダイナミックリリース層又はDRLと呼ばれ、最初にドナー基板上に堆積される。次に、転写する材料がDRL表面に塗布される。DRLはレーザー強度の大部分を吸収する役割を担い、蒸発時にドナー材料の一部を受容基板に向けて推進するために必要な前進エネルギーを提供する。(後略))

c 第85ページ右欄第28行〜第86ページ左欄第32行
「1.2 Reusable Donor Layers in LIFT
Despite these successes, the use of LIFT with a sacrificial DRL
requires the preparation of a new donor layer after the laser
transfers have been completed. A simpler and more practical approach would be to use a reusable donor layer to which the structures to
be transferred are attached. This would allow repeated transfers
with the same donor layer in a process analogous to mechanical
stamping. John Rogers and his group at the University of Illinois at Urbana-Champaign have demonstrated laser-based printing of small
devices using PDMS as a viscoelastic stamp. The laser-assisted
delamination process that propels the device or structures forward
off of the PDMS donor layer is driven by a difference in
thermo-mechanical response between the device and the PDMS [12].
This process enables the non-contact printing of various materials
and devices.
In this work, we present results of LIFT of copper metal foils
using such a reusable donor layer. The reusable layer was made from UV transparent poly(dimethylsiloxane), also known as PDMS,
spin-coated onto a quartz wafer. PDMS is a type of polymeric
organosilicon which is optically clear and chemically inert with
viscoelastic properties determined by its preparation conditions. We find that for a wide range of laser pulse energies at or slightly
above the transfer threshold, the PDMS donor surface exhibit minimal signs of visible damage and the same region in the donor layer can be reused more than once. We studied the effect of laser fluence and donor-to-receiving substrate gap distance in the transfers of 25
and 50 μm thick copper foils ranging in size from 〜2,500 to
〜20,000 μm2. We conclude by discussing the advantages and
limitations of reusable donor layers for LIFT and their scalability and versatility across a wide range of printing processes based on
LIFT.」
(1.2 リフト内の再利用可能なドナー層
これらの成功にもかかわらず、犠牲DRLと共にLIFTを使用するには、レーザー転写が完了した後に新しいドナー層を準備する必要がある。より単純でより実用的なアプローチは、転写される構造が付着される再使用可能なドナー層を使用することである。これは、機械的スタンピングに類似したプロセスにおいて、同じドナー層を用いた反復転写を可能にする。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のジョン・ロジャーズ及び彼のグループは、粘弾性スタンプとしてPDMSを使用する小型デバイスのレーザーベースの印刷を実証している。デバイス又は構造をPDMSドナー層から前方に推進させるレーザー支援剥離プロセスは、デバイスとPDMSの間の熱機械的応答の差によって駆動される[12]。このプロセスは、様々な材料及びデバイスの非接触印刷を可能にする。
この研究において、我々は、そのような再使用可能なドナー層を用いた銅金属箔のLIFTの結果を提示する。再利用可能な層は、石英ウエハ上にスピンコーティングされた、PDMSとしても知られるUV透過性ポリ(ジメチルシロキサン)から作製された。PDMSは、光学的に透明で化学的に不活性であり、その調製条件によって決定される粘弾性特性を有するポリマー有機ケイ素の一種である。本研究者らは、転写閾値又は転写閾値をわずかに上回るエネルギーの広範囲のレーザーパルスでは、PDMSドナー表面には目に見える損傷の兆候がほとんど見られず、ドナー層内の同じ領域を複数回再利用できることを見い出した。本研究者らは、約2500〜約20000μm2のサイズの範囲の25及び50μm厚の銅箔の転写におけるレーザーフルエンス及びドナー−受容基板間ギャップ距離の効果を研究した。我々は、LIFTのための再利用可能なドナー層の利点及び制限、並びに、LIFTに基づく広範囲の印刷プロセスにわたるそれらのスケーラビリティ及び汎用性を議論することによって結論を述べる。)

d 第86ページ左欄第34〜51行
「2. Experimental Details
A schematic of the LIFT setup used for these tests is shown in
Figure 1. Further details of the LIFT apparatus and setup used for
this work can be found in previous publica-tions [13,14]. The donor substrate (“ribbon”) consisted of a 2” dia. x 1.8 mm thick quartz disk coated with PDMS. First, the quartz wafer was cleaned in
Nochromix solution for 5 min. A solution of PDMS was prepared by
mixing Dow Syl-gard 184 Base with its curing agent in a 10:1 ratio
and then mixing for 1 minute at 2000 rpm in a planetary centrifugal mixer. The PDMS solution was then spin-coated onto the substrates
and baked at 125°C for 4 min which resulted in 30 to 60 μm thick
PDMS layers (depending on spin-coater settings). This PDMS mixture
was used to coat both the quartz donor and the Au coated silicon
receiving substrates. The latter PDMS layer was used to facilitate
the adhesion of the Cu foils to the receiving substrate and prevent their de-lamination during characterization.」
(2. 実験の詳細
これらのテストに使用したLIFTセットアップの概略図を図1に示す。この研究に使用したLIFT装置とセットアップの詳細については、以前に発行された論文[13,14]を参照。ドナー基板(「リボン」)は、PDMSでコーティングされた直径2インチx厚さ1.8mmの石英ディスクで構成されている。まず、石英ウェハーをNochromix溶液で5分間洗浄した。PDMS溶液は、Dow Syl-gard 184 Baseとその硬化剤を10:1の比率で混合し、次に遊星遠心ミキサーで2000rpmで1分間混合して調製した。次に、PDMS溶液を基板上にスピンコートし、125℃で4分間焼成して、30〜60μmの厚さのPDMS層(スピンコーターの設定に依存する。)を作成した。このPDMS混合物を使用して、石英ドナーと金コーティングされたシリコン受容基板の両方をコーティングした。後者のPDMS層は銅箔と受容基板の接着を容易にし、特性評価中に剥離するのを防ぐために使用した。)


Fig. 1 Schematic (not to scale) of the laser transfer of Cu foils
using a PDMS donor layer.」
(図1 PDMSドナー層を使用した銅箔のレーザー転写の概略図(縮尺は正確でない。)

e 第86ページ右欄第1−15行
「A frequency-tripled Nd:YVO4 pulsed laser (JDSU Q301-HD,
λ = 355 nm, 30 ns FWHM) was used to fabricate the Cu foils from 25 and 50 μm thick oxygen-free high conductivity copper foils (99.95% Cu from Shop-Aid Inc.) on the ribbon and subsequently to laser
transfer them onto the receiving substrates. To ensure stable pulse energies, the laser was operated at a constant repetition rate
(10 kHz for LIFT, 30 kHz for patterning Cu fliers) while an
acousto-optic modulator (AOM) selected individual pulses and their
timing. A galvanometric scan head with a 10 cm F-Theta objective
(Scanlab, HurrySCAN 10) was used to fabricate the Cu fliers and a
5 cm fl lens was used for the laser transfers. The 5 cm fl lens was in-line with a CCD camera which provided a view of the ribbon and
substrate as seen by the laser beam.」
( 周波数の3倍波のNd:YVO4パルスレーザー(JDSU Q301-HD、λ = 355 nm、30 ns FWHM)を使用して、リボン上の25及び50μm厚の無酸素高伝導銅箔(Shop-Aid Inc.製、99.95% Cu)から銅箔を作製し、続いてそれを受信基板にレーザー転写した。安定したパルスエネルギーを確保するために、レーザーは一定の繰り返し速度(LIFTの場合は10kHz、Cuフライヤーのパターン化の場合は30kHz)で動作し、音響光学変調器(AOM)が個々のパルスとそのタイミングを選択した。10cm F-Theta対物レンズ(Scanlab、HurrySCAN 10)を備えたガルバノメトリックスキャンヘッドを使用してCuフライヤーを作製し、レーザー転写には5cmのflレンズを使用した。5cmのflレンズはCCDカメラと直列に配置されており、レーザービームから見たリボンと基板の映像を提供する。)

f 第89ページ左欄第1〜12行
「 The implementation of a PDMS donor layer with LIFT is
compatible with the transfer of more complex shapes of metal foils
and other materials including ceramics, composites and multilayer
stacks, in addition to functional components or devices such as
semiconductor bare die. Furthermore, the ability to reuse the donor layer simplifies the steps required for preparation of the donor
substrate and facilitates its implementation in roll-to-roll
processes. Roll-to-roll donor preparation can be combined with
in-line laser transfer for applications requiring laser printing of large number of devices at high throughput rates. These capabilities help make LIFT more compatible with industrial applications.」
( LIFTを用いたPDMSドナー層の実装は、半導体ベアチップなどの機能的構成要素又はデバイスに加えて、より複雑な形状の金属箔及びセラミック、複合材料及び多層スタックを含む他の材料の転写に適合する。さらに、ドナー層を再利用する能力は、ドナー基板の調製に必要とされる工程を単純化し、ロールツーロールプロセスにおけるその実施を容易にする。ロール・ツー・ロールドナー調製は、高いスループット速度で多数のデバイスのレーザー印刷を必要とする用途のために、インラインレーザー転写と組み合わせることができる。これらの能力は、LIFTを工業用途により適合させるのに役立つ。)

g 第89ページ左欄第14行〜右欄第2行
「4. Summary
The use of a PDMS donor layer for LIFT has been shown for the
transfer of Cu foils of various sizes (〜2.5x103 to 〜2x104 μm2)
and two thicknesses (25 and 50 μm). The foils can be laser
transferred with positional errors below 10 μm (total radial
displacement) when transferred across donor to receiving substrate
gaps up to 125 μm. The amount of rotation in the foils during
transfer was also evaluated and found to be less than 10 degrees for gaps up to 250 μm.
This work also demonstrated the ability of the PDMS donor ribbon
to be used multiple times for LIFT of Cu foils without significant
degradation. This feature shows that PDMS can act as a reusable DRL on a donor substrate greatly simplifying the application of DRL for large scale LIFT applications involving the transfer of solid metal foils and other types of solid structures or functional devices.」
(4.まとめ
LIFTのためのPDMSドナー層の使用を、様々なサイズ(約2.5×103〜約2×104μm2)及び二つの厚さ(25及び50μm)の銅箔の転写に関して示した。箔は、125μmまでの受容基板ギャップにドナーを横切って転写される場合、10μm未満の位置誤差(全半径方向変位)でレーザー転写され得る。転写中の箔の回転量も評価し、250μmまでの間隙に対して10度未満であることが分かった。
本研究は、また、PDMSドナーリボンが有意な劣化無く銅箔のLIFTのために複数回使用されるPDMSドナーリボンの能力を実証した。この特徴は、PDMSがドナー基板上で再利用可能なDRLとして作用することができ、固体金属箔及び他のタイプの固体構造又は機能デバイスの転写を含む大規模LIFT用途のためのDRLの適用を大幅に単純化することを示す。)

(イ) 引用文献6の記載事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された米国特許第9555644号明細書(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。括弧内に当合議体による日本語訳を付す。なお、当該文献は、本願の明細書において、特許文献3として引用されているものである。
a 第2欄第5〜67行
「 The present invention encompasses a non-contact approach for
manipulation and heterogeneous integration that uses controlled
release of an object from a transfer device, or stamp, to transfer
print objects from one substrate to another. Upon actuation of a
transfer device, a physical force, such as a pressure change, a
thermal change, an electrostatic change, and/or a mechanical change, leads to release of ink disposed on the transfer surface. The
physics of the delamination process that govern this non-contact
transfer and methods of printing objects with a wide range of sizes and shapes onto a variety of substrates are described.
In contrast with prior art printing processes that build devices
on a receiving substrate, the present invention provides a facile,
non-contact transfer printing process that transfers objects, such
as prefabricated micro- and/or nano-devices, from a
growth/fabrication substrate to a functional receiving substrate
that is incapable of supporting device growth and/or fabrication
processes. Thus, the present invention may not only be used in place of existing printing processes to fabricated devices, it may also
be used in conjunction with existing printing processes for
downstream transfer of devices fabricated by existing printing
processes onto unique substrates.
In one embodiment, the present invention exploits a mismatched thermo-mechanical response of the prefabricated device (ink) and a
transfer surface (stamp) to a force incident on the ink-stamp
interface to cause delamination of the ink from the stamp and its
transfer to the target/receiving substrate. This process operates at lower temperatures than ablation processes, thus avoiding damage to the functional devices. More importantly, because the transfer does not substantially damage the stamp material, the same area of the
stamp can be used multiple times, enabling a pick-print-repeat
cycle. This non-contact “pick-and-place” technique provides an
important combination of capabilities that is not offered by other
assembly methods, such as those based on ablation techniques, wafer bonding, or directed self-assembly.
Besides providing the desired mismatch in thermo-mechanical
response with commonly-used semiconductor materials, stamps of the
present invention make it possible to directly and selectively
pick-up micro- or nano-devices from growth or donor substrates by
using well-developed techniques [4-8], such as that described in
U.S. Pat. No. 7,622,367, which is hereby incorporated by reference
in its entirety. These techniques overcome one of the major
limitations of using LIFT-type printing processes for assembling
devices, i.e., the transfer of the micro- or nano-devices from the
growth/fabrication substrate to the stamp [9]. The present invention therefore combines the facile elegance of transfer-printing
processes in taking prefabricated devices directly from their growth substrates to functional substrates with the flexibility of
non-contact LIFT processes that are relatively independent of
surface properties of the receiving substrate onto which the devices are transferred. The ability to transfer the prefabricated devices enables, for example, the embedding of high-performance electronic
and optoelectronic components into polymeric substrates to realize
new capabilities in emerging areas such as flexible and large-area
electronics, displays and photovoltaics.」
( 本発明は、転写デバイス又はスタンプからオブジェクトを制御された状態で放出し、印刷オブジェクトをある基板から別の基板に転写する、操作及び異種集積のための非接触アプローチを包含する。転写デバイスを作動させると、圧力変化、熱変化、静電変化及び/又は機械的変化などの物理的力によって、転写面に配置されたインクが解放される。この非接触転写を制御する剥離プロセスの物理的性質及びさまざまなサイズ及び形状のオブジェクトをさまざまな基板に印刷する方法について説明する。
受容基板上にデバイスを構築する従来の印刷プロセスとは対照的に、本発明は、成長/製造基板から、デバイスの成長及び/又は製造プロセスをサポートできない機能的な受容基板に、前もって製造されたマイクロデバイス及び/又はナノデバイスなどのオブジェクトを転送する、容易な非接触転写印刷プロセスを提供する。したがって、本発明は、製造されたデバイスへの既存の印刷プロセスの代わりに使用できるだけでなく、既存の印刷プロセスと組み合わせて、既存の印刷プロセスによって製造されたデバイスを独自の基板上に下流に転送するためにも使用できる。
一つの実施形態では、本発明は、インクとスタンプの界面に作用する力に対する前もって製造されたデバイス(インク)と転写面(スタンプ)の不一致な熱機械応答を利用して、スタンプからインクを剥離し、それをターゲット/受容基板に転写する。このプロセスはアブレーションプロセスよりも低温で動作するため、機能デバイスへの損傷を回避できる。さらに重要なことは、転写によってスタンプ材料が実質的に損傷されないため、スタンプの同じ領域を複数回使用でき、ピック・プリント・繰り返しサイクルが可能になることである。この非接触の「ピック・アンド・プレース」技術は、アブレーション技術、ウェーハボンディング又は指向性自己組織化に基づくものなどの他のアセンブリ方法では提供されない重要な機能の組合せを提供する。
本発明のスタンプは、一般的に使用される半導体材料との熱機械応答の望ましい不一致を提供するだけでなく、米国特許第7,622,367号に記載されているような十分に開発された技術[4-8]を使用して、成長基板又はドナー基板からマイクロデバイス又はナノデバイスを直接かつ選択的にピックアップすることを可能にする。この特許は、本明細書にその全体が参照により組み込まれる。これらの技術は、デバイスを組み立てるためにLIFTタイプの印刷プロセスを使用する際の大きな制限の一つ、すなわち、成長/製造基板からスタンプへのマイクロデバイス又はナノデバイスの転写を克服する[9]。したがって、本発明は、事前に製造されたデバイスを成長基板から機能基板に直接移す転写印刷プロセスの容易で洗練された機能と、デバイスが転写される受容基板の表面特性に比較的依存しない非接触LIFTプロセスの柔軟性とを組み合わせる。前もって製造されたデバイスを転送する機能により、たとえば、高性能の電子部品や光電子部品をポリマー基板に埋め込むことが可能になり、フレキシブルで大面積の電子機器、ディスプレイ、太陽光発電などの新興分野で新しい機能を実現できる。)

b 第5欄第55行〜第6欄第11行
「 In one embodiment, a contact surface of the ink is provided in physical contact with the transfer device, wherein the contact
surface has a surface area selected over the range of 106 nm2 to
1 mm2. The ink may, for example, be a material selected from the
group consisting of a semiconductor, a metal, a dielectric, a
ceramic, a polymer, a glass, a biological material or any
combination of these. In one embodiment, the ink is a micro-sized or nano-sized prefabricated device or component thereof. The
prefabricated device may be a printable semiconductor element, a
single crystalline semiconductor structure, or a single crystalline semiconductor device. For example, the prefabricated device may have a shape selected from the group consisting of a ribbon, a disc, a
platelet, a block, a column, a cylinder, and any combination
thereof. The prefabricated device may comprise an electronic,
optical or electro-optic device or a component of an electronic,
optical or electro-optic device selected from the group consisting
of: a P-N junction, a thin film transistor, a single junction solar cell, a multi-junction solar cell, a photodiode, a light emitting
diode, a laser, a CMOS device, a MOSFET device, a MESFET device, a
HEMT device, a photovoltaic device, a sensor, a memory device, a
microelectromechanical device, a nanoelectromechanical device, a
complementary logic circuit, and a wire.」
(一実施形態では、インクの接触面は転写デバイスと物理的に接触するように設けられ、接触面は106nm2から1mm2の範囲で選択される表面積を有する。インクは、例えば、半導体、金属、誘電体、セラミック、ポリマー、ガラス、生物材料又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される材料であってもよい。一実施形態では、インクは、マイクロサイズ又はナノサイズの前もって製造されたデバイス又はそのコンポーネントである。前もって製造されたデバイスは、印刷可能な半導体素子、単結晶半導体構造又は単結晶半導体デバイスであってもよい。例えば、前もって製造されたデバイスは、リボン、ディスク、プレートレット、ブロック、柱、円筒及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される形状を有してもよい。前もって製造されたデバイスは、P-N接合、薄膜トランジスタ、単接合太陽電池、多接合太陽電池、フォトダイオード、発光ダイオード、レーザー、CMOSデバイス、MOSFETデバイス、MESFETデバイス、HEMTデバイス、光起電デバイス、センサー、メモリデバイス、マイクロ電気機械デバイス、ナノ電気機械デバイス、相補型論理回路及びワイヤからなる群から選択される電子、光学若しくは電気光学のデバイス又は電子、光学又は電気光学のデバイスのコンポーネントを含むことができる。)

c 第6欄第26〜49行
「 In some methods of the present invention, the force applied to the transfer device, the ink, or both of the transfer device and
the ink does not substantially degrade the transfer device. For
example, in one embodiment, the steps may be repeated using a single transfer device between 20-25 times before substantial degradation of the transfer device is detectable.
In one embodiment, the transfer device comprises at least one
elastomer layer having a thickness selected over the range of
1 micron to 1000 microns and/or a Young's Modulus selected over the
range of 1 MPa to 10 GPa. The transfer device may, for example,
comprise an elastomeric stamp, elastomeric mold, or elastomeric
mask. In one embodiment, the transfer device comprises at least one elastomer layer operably connected to one or more polymer, glass or metal layers. In some embodiments, the transfer device is at least
partially transparent to electromagnetic radiation having
wavelengths in ultraviolet, visible or infrared regions of the
electromagnetic spectrum. In one embodiment, the transfer device
comprises a material selected from the group consisting of glass and silica. In one embodiment, the transfer device is an elastomeric
transfer device. For example, the transfer device may comprise
polydimethylsiloxane.」
(本発明のいくつかの方法では、転写デバイス、インク又は転写デバ装置とインクの両方に加えられる力によって、転写デバイスが実質的に劣化することはない。例えば、一実施形態では、転写デバイスの実質的な劣化が検出可能になるまで、単一の転写デバイスを使用して、ステップを20〜25回繰り返すことができる。
一実施形態では、転写デバイスは、1ミクロンから1000ミクロンの範囲で選択された厚さ及び/又は1MPaから10GPaの範囲で選択されたヤング率を有する少なくとも一つのエラストマー層を含む。転写デバイスは、例えば、エラストマースタンプ、エラストマーモールド又はエラストマーマスクを含むことができる。一実施形態では、転写デバイスは、一つ以上のポリマー、ガラス又は金属層に動作可能に接続された少なくとも一つのエラストマー層を含む。いくつかの実施形態では、転写デバイスは、電磁スペクトルの紫外線、可視光線又は赤外線領域の波長を有する電磁放射に対して少なくとも部分的に透明である。一実施形態では、転写デバイスは、ガラス及びシリカからなる群から選択された材料を含む。一実施形態では、転写デバイスはエラストマー転写デバイスである。例えば、転写デバイスは、ポリジメチルシロキサンを含むことができる。)

d 第16欄第23行〜第17欄第43行、Figure 1-4
「 EXAMPLE 1
Laser-Driven Non-Contact Transfer Printing (LNTP)
Mietl [10] describes a transfer printing process involving both
the pick-up of microstructures from a donor substrate and their
deposition or ‘printing’ onto a receiving substrate using an
elastomeric stamp. The present invention also starts with an
elastomeric stamp made of PDMS and optionally patterned with posts, to selectively engage the desired nano- or micro-devices on the
donor or inking substrate. The mechanism for inking the stamp is
similar to previously described mechanisms [4-8], relying on the
strong adhesive forces between PDMS and the nano- or micro-devices
to extract the ink from the donor or inking substrate. For
deposition, however, the inked stamp is brought close (between 3 to 10 microns) to the receiving substrate onto which the devices are to be deposited. A pulsed laser beam is focused on the interface
between the stamp and the devices to release and drive the device to the receiving substrate. The wavelength of the laser is chosen so
that the stamp material is transparent, while the ink is more
absorbing. FIG. 1 shows a schematic of the Laser-driven Non-contact Transfer Printing (LNTP) process.」
( 実施例1
レーザー駆動非接触転写印刷(LNTP)
Mietl[10]は、ドナー基板から微細構造をピックアップし、エラストマースタンプを使用して受容基板上にそれらを堆積又は「印刷」する転写印刷プロセスについて説明している。本発明はまた、PDMSで作られ、オプションでポストがパターン化されたエラストマースタンプから始まり、ドナー又はインク基板上の所望のナノ又はマイクロデバイスを選択的に係合する。スタンプにインクを塗るメカニズムは、以前に説明したメカニズム[4-8]と似ており、PDMSとナノ又はマイクロデバイス間の強力な接着力を利用して、ドナー又はインク基板からインクを抽出する。ただし、堆積のために、インクを塗ったスタンプは、デバイスを堆積する受容基板に近づける(3〜10ミクロン)。パルスレーザービームをスタンプとデバイス間のインターフェースに焦点を合わせ、デバイスを解放して受容基板に送る。レーザーの波長は、スタンプ材料が透明で、インクがより吸収性になるように選択される。図1は、レーザー駆動非接触転写印刷(LNTP)プロセスの概略図を示している。)



「 To realize this process, a LNTP print head is created by using an electronically pulsed 30 W 805 nm laser diode with a minimum
pulse width of 1 ms. The laser is coupled into the system through a 250 μm core optical fiber. At the end of the fiber are a 4 mm
diameter collimator and a focusing lens with a 30 mm focal distance to focus the laser beam on a circular area with a diameter of
approximately 400-800 μm. FIG. 2 shows a schematic and photograph
of the LNTP print head. The laser beam is brought in through the
side of the print head, bent through 90 degrees by a dichroic mirror and focused onto the surface of a (typically, 200×200 μm, 100 μm tall) post patterned on the PDMS stamp. An objective directly above the stamp along with a CCD camera and suitable optics allows the
observation of the process with pixel resolution of 1 μm.」
( このプロセスを実現するために、最小パルス幅1msの電子パルス30W 805nmレーザーダイオードを使用してLNTPプリントヘッドが作成される。レーザーは、250μmコア光ファイバーを介してシステムに結合される。ファイバーの端には、直径4mmのコリメーターと、焦点距離30mmの集束レンズがあり、直径約400〜800μmの円形領域にレーザービームを集束する。図2は、LNTPプリントヘッドの概略図と写真を示している。レーザービームはプリントヘッドの側面から取り込まれ、ダイクロイックミラーによって90度曲げられ、PDMSスタンプ上にパターン化されたポスト(通常、200×200μm、高さ100μm)の表面に集束される。スタンプの真上にある対物レンズとCCDカメラ及び適切な光学系により、1μmのピクセル解像度でプロセスを観察できる。)




「 The laser print head is tested by using a 2×2 mm, 1 mm thick PDMS stamp with a 200×200 μm, 100 μm tall post patterned on it.
The stamp is affixed to a glass backing. For the ink, a donor
substrate is fabricated using conventional fabrication processes to obtain anchored, but undercut, 100×100×3 μm square single crystal silicon chips. An automated printer is constructed by integrating a programmable, computer-controlled xyz positioning stage, with the
print head, high-resolution optics and vacuum chucks for the donor and receiving substrates. As depicted in the process schematic of
FIG. 1, the printer moves and locates the stamp enabling the pick up of a single chip. The stage is then moved to locate the chip
directly above a receiving substrate (for example in FIG. 3(a), an
RC1 cleaned, patterned silicon substrate with 50 micron gold traces) at a distance of 10 microns from it. The laser pulse width was set to 2 ms and the laser power was gradually increased until
delamination was observed. FIG. 3(a) shows the results of this
printing protocol.」
( レーザープリントヘッドは、200×200μm、高さ100μmのポストがパターン化された2×2mm、厚さ1mmのPDMSスタンプを使用してテストされる。スタンプはガラスの裏に貼り付けられる。インクについては、従来の製造プロセスを使用してドナー基板を製造し、支持されているが下が切断された100×100×3μmの正方形の単結晶シリコンチップを取得する。自動プリンターは、プログラム可能なコンピューター制御のxyz位置決めステージ、プリントヘッド、高解像度の光学系及びドナー基板と受容基板用の真空チャックを統合して構築される。図1のプロセス図に示すように、プリンターはスタンプを移動して配置し、一つのチップをピックアップできるようにする。次に、ステージを移動して、チップを受容基板(たとえば、図3(a)では、50ミクロンの金トレースを備えたRC1洗浄されたパターン化されたシリコン基板)の真上に10ミクロンの距離で配置する。レーザーパルス幅は2msに設定され、剥離が観察されるまでレーザー出力を徐々に増加させた。図3(a)は、この印刷プロトコルの結果を示している。)



「 A second feasibility test is conducted to demonstrate the
construction of 3-dimensional assemblies using such a process. Here a 3-layer pyramid, shown in FIG. 3(b), is constructed of the same
100×100×3 μm silicon squares. In a third test, simulating the
printing of microstructures into other functional structures, the
same square silicon chip is printed onto an AFM cantilever,
something that would be difficult to achieve with other processes.
(See FIG. 3(c).) Finally, FIG. 3(d) shows a 320 nm thick silicon
chip printed onto a structured surface. This verifies the claim that the process is independent of the properties of the receiving
substrate and demonstrates the ability of the process to print ultrathin microstructures.」
( 2回目の実現可能性テストは、このようなプロセスを使用して三次元アセンブリを構築することを実証するために実施する。ここでは、図3(b)に示す三層ピラミッドが、同じ100×100×3μmのシリコン正方形で構築される。3回目のテストでは、他の機能構造へのマイクロ構造の印刷をシミュレートし、同じ正方形のシリコンチップをAFMカンチレバーに印刷する。これは、他のプロセスでは実現が難しいことである(図3(c)を参照)。最後に、図3(d)は、構造化された表面に印刷された320nm厚のシリコンチップを示す。これは、プロセスが受容基板の特性に依存しないという主張を検証し、超薄型マイクロ構造を印刷するプロセスの能力を実証する。)
「 Transfer printing of an InGaN-based μ-LED onto a CVD-grown
polycrystalline diamond on silicon substrate is demonstrated in
FIG. 4. These InGaN-based μ-LEDs comprise epitaxial layers on a
(111) silicon wafer. The active device layers comprise a p-type GaN layer (110 nm of GaN:Mg), multiple quantum well (MQW)
(5× InGaN/GaN:Si of 3 nm/10 nm), and an n-type layer (1700 nm of
GaN:Si). Metal layers of Ti/Al/Mo/Au (15 nm/60 nm/20 nm/100 nm) and Ni/Au (10 nm/10 nm) are deposited and annealed in optimized
conditions to form ohmic contacts to n-GaN and p-GaN, respectively. These LEDs are printed utilizing a single 1 ms laser pulse.
FIG. 4(a) shows an InGaN-based μ-LED printed onto a structured
silicon substrate while FIG. 4(b) shows a schematic of the stacks of the InGaN-based μ-LED. FIG. 4(c) shows that the μ-LED is
functional after having been printed onto a silicon substrate coated with a CVD-grown polycrystalline diamond film.」



( 図4は、シリコン基板上のCVD成長多結晶ダイヤモンド上へのInGaNベースμ-LEDの転写印刷を示している。これらのInGaNベースμ-LEDは、(111)シリコンウェハ上のエピタキシャル層で構成されている。アクティブデバイス層は、p型GaN層(110nmのGaN:Mg)、多重量子井戸(MQW)(5×InGaN/GaN:Si、3nm/10nm)及びn型層(1700nmのGaN:Si)で構成されている。Ti/Al/Mo/Au(15nm/60nm/20nm/100nm)及びNi/Au(10nm/10nm)の金属層を堆積し、最適化された条件でアニールして、それぞれn-GaN及びp-GaNへのオーミックコンタクトを形成する。これらのLEDは、単一の1msレーザーパルスを使用して印刷される。図4(a)は、構造化されたシリコン基板上に印刷されたInGaNベースのμ-LEDを示しており、図4(b)は、InGaNベースのμ-LEDの層の概略図を示している。図4(c)は、CVD成長多結晶ダイヤモンド膜でコーティングされたシリコン基板上に印刷した後、μ-LEDが機能していることを示している。)

(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)において示した摘記事項に例示されるように、次に示す事項は、本願出願前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
[周知技術1]
「石英(シリカ)の基板上にポリジメチルシロキサン(PDMS)層を形成したスタンプを用いて、半導体チップなどのマイクロサイズのデバイスをドナー基板から受容基板へ転写する技術であって、
粘着層の粘着力によってデバイスをドナー基板からピックアップするステップと、
デバイスを転写先の受容基板に近づけるステップと、
スタンプの背面側からPDMS層とデバイスの間にレーザーパルスを照射することで、PDMS層とデバイスに熱機械応答の差を生じさせてPDMS層とデバイスを剥離して、デバイスを受容基板に転写するステップと、からなり、
レーザーパルスの照射後もスタンプのPDMS層は同じ領域を再利用可能である、転写技術」

(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。

(ア) 構成Xの観点(「発光ダイオード供給基板の製造方法」)
a 引用発明は、方法の発明であるところ、「予め別の基板(成長基板301)に赤色マイクロ発光ダイオード302を形成し、その後、サファイア基板などのレーザー透過性のオリジナル基板306に転写する」ものであるから、「赤色マイクロ発光ダイオード302」が転写された「オリジナル基板306」の製造方法の発明であるといえる。
b(a) 引用発明における(多数あることは自明の)「赤色マイクロ発光ダイオード302」は、本件補正発明における「(複数の)発光ダイオード」に相当する。
(b) 引用発明においては、「予め赤色マイクロ発光ダイオードを形成し、その後赤色マイクロ発光ダイオードをオリジナル基板に転写することによって、最終的に受け基板に転写することができ」、「受け基板は、例えば、ディスプレイパネル又は表示基板である」ところ、引用発明における「受け基板」は本件補正発明における「供給先」に相当し、引用発明における「オリジナル基板306」は、「複数の発光ダイオードを供給先に移載するための発光ダイオード供給基板」に相当する。
c そうすると、引用発明は、「複数の発光ダイオードを供給先に移載するための発光ダイオード供給基板の製造方法」の発明であるといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「複数の発光ダイオードを供給先に移載するための発光ダイオード供給基板の製造方法」の発明である点。

(イ) 構成A1の観点(「第1搭載工程」)
a 引用発明における「サファイア基板などのレーザー透過性のオリジナル基板306」は、本件補正発明における「石英基板」と、「レーザー透過性の基板」である点において共通する。
b 引用発明においては、「オリジナル基板306にフォトレジスト305が塗布されて[いる]」ものであって、「フォトレジスト305」により、「オリジナル基板306」は「赤色マイクロ発光ダイオード302」に「接合され[る]」ものであるから、引用発明における「フォトレジスト305」は、「オリジナル基板306」上に設けられた層であり、「赤色マイクロ発光ダイオード302」を、「赤色マイクロ発光ダイオード302」が「オリジナル基板306」の「フォトレジスト305」に接合するように搭載するものである。
そうすると、本件補正発明における「粘着層」と、引用発明における「フォトレジスト305」は、「レーザー透過性の基板」上に設けられた接合層である点において共通する。
c(a) 以上をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「レーザー透過性の基板と、該レーザー透過性の基板上に設けられた接合層とを含む供給基板上に複数の発光ダイオードを、該複数の発光ダイオードが前記供給基板の前記接合層に接合するように搭載する第1搭載工程」を含む点。
(b) 他方、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
本件補正発明においては、
レーザー透過性の供給基板の材料が「石英基板」であって、
接合層が「粘着層」であり、粘着層の表面に粘着するように複数の発光ダイオードを前記供給基板に搭載するのに対して、
引用発明においては、
レーザー透過性のオリジナル基板(「供給基板」に相当する。)は「サファイア基板などのレーザー透過性の基板」であって、
接合層が「フォトレジスト305」であり、「フォトレジスト305」に接合するように複数の発光ダイオードを前記供給基板に搭載する点。

(ウ) 構成A2の観点
a 引用発明においては、「赤色マイクロ発光ダイオードは、例えばサファイア基板などのレーザー透過性のオリジナル基板に直接形成されることができないため、予め別の基板(成長基板301)に赤色マイクロ発光ダイオード302を形成[する]」のであるから、「GaAs基板などの成長基板301」は、本件補正発明における「出発基板」に相当する。
b 引用発明においては、「予め別の基板(成長基板301)に赤色マイクロ発光ダイオード302を形成し、その後、サファイア基板などのレーザー透過性のオリジナル基板306に転写する」ものであるから、引用発明における「赤色マイクロ発光ダイオード302」は、「成長基板301」から「オリジナル基板306」に移載されたものであるといえる。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記供給基板に搭載された複数の発光ダイオードは、出発基板から移載された発光ダイオードである」点。

(エ) 構成Bの観点(「選択除去工程」)
a 引用発明における「欠陥のある赤色マイクロ発光ダイオード302」は、本件補正発明における「不良な発光ダイオード」に相当する。
b 引用発明においては、「欠陥パターンに従って、レーザー透過性のオリジナル基板306側から照射し、レーザーでレーザー透過性の基板を照射することにより、レーザー透過性の基板から欠陥のある赤色マイクロ発光ダイオード302をリフトオフ[する]」ものであるから、「レーザー透過性のオリジナル基板306」上の「欠陥のある赤色マイクロ発光ダイオード302」に向けて「レーザー透過性のオリジナル基板306」の裏面側からレーザーを選択的に照射し、「欠陥のある赤色マイクロ発光ダイオード302」を選択的に除去しているといえる。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記供給基板上の不良な発光ダイオードに向けて前記供給基板の裏面側からレーザー光を選択的に照射し、前記不良な発光ダイオードを選択的に除去する選択除去工程」を含む点。

(オ) 構成Cの観点(「第2搭載工程」)
a 引用発明における「良好なマイクロ発光ダイオード」は、本件補正発明における「正常な発光ダイオード」に相当する。
b 引用発明は、「修復キャリア基板における赤色マイクロ発光ダイオード302をレーザー透過性のオリジナル基板306における欠陥位置に合わせ、赤色マイクロ発光ダイオード302を欠陥位置の場所に相当する部分と接触させるという修復方法を利用することによって、欠陥位置に良好なマイクロ発光ダイオードを形成する」ものである。
当該工程を本件補正発明の「前記供給基板上の前記粘着層の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを移載する第2搭載工程」と比較すると、両者は「前記供給基板上の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを移載する第2搭載工程」である点において共通するといえる。
c(a) したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記供給基板上の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを移載する第2搭載工程」を含む点。
(b) 他方、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
前記不良な発光ダイオードが配置されていた前記供給基板上の位置であって、正常な発光ダイオードが移載される位置に、
本件補正発明においては、前記粘着層があるのに対して、
引用発明においては、前記粘着層が存在していない点。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
「複数の発光ダイオードを供給先に移載するための発光ダイオード供給基板の製造方法であって、
レーザー透過性の基板と、該レーザー透過性の基板上に設けられた接合層とを含む供給基板上に複数の発光ダイオードを、該複数の発光ダイオードが前記供給基板の前記接合層に接合するように搭載する工程と、
前記供給基板上の不良な発光ダイオードに向けて前記供給基板の裏面側からレーザー光を選択的に照射し、前記不良な発光ダイオードを選択的に除去する選択除去工程と、
前記供給基板上の前記不良な発光ダイオードが配置されていた位置に、正常な発光ダイオードを形成する工程と
を含み、
前記供給基板に搭載された複数の発光ダイオードは、出発基板から移載された発光ダイオードである、
発光ダイオード供給基板の製造方法」である点。

(イ) 相違点
本件補正発明においては、
レーザー透過性の供給基板の材料が「石英基板」であって、
接合層が「粘着層」であり、
「第1搭載工程」において、粘着層の表面に粘着するように複数の発光ダイオードを前記供給基板に搭載するものであり、
「第2搭載工程」において、前記不良な発光ダイオードが配置されていた前記供給基板上の位置であって、正常な発光ダイオードが移載される位置に、前記粘着層があるのに対して、
引用発明においては、
レーザー透過性のオリジナル基板(「供給基板」に相当する。)は「サファイア基板などのレーザー透過性の基板」であって、
接合層が「フォトレジスト305」であり、
「フォトレジスト305」に接合するように複数の発光ダイオードを前記供給基板に搭載するものであり、
前記不良な発光ダイオードが配置されていた前記供給基板上の位置であって、正常な発光ダイオードが移載される位置に、前記粘着層が存在していない点。

(4) 相違点についての判断
ア 前記(2)イ(エ)において周知技術1として示したとおり、次に示す技術事項は、本願の出願前に周知の技術であり、特に従来のLIFT法に比較すると、「接合層」の役割をする部分である「PDMS層」が同じ領域を繰り返し用いることができるという利点が知られている。
「石英(シリカ)の基板上にポリジメチルシロキサン(PDMS)層を形成したスタンプを用いて、半導体チップなどのマイクロサイズのデバイスをドナー基板から受容基板へ転写する技術であって、
粘着層の粘着力によってデバイスをドナー基板からピックアップするステップと、
デバイスを転写先の受容基板に近づけるステップと、
スタンプの背面側からPDMS層とデバイスの間にレーザーパルスを照射することで、PDMS層とデバイスに熱機械応答の差を生じさせてPDMS層とデバイスを剥離して、デバイスを受容基板に転写するステップと、からなり、
レーザーパルスの照射後もスタンプのPDMS層は同じ領域を再利用可能である、転写技術」
イ(ア) そうすると、引用発明において、「接合層」の役割をする部分が再利用可能とするために、前記周知技術1を採用することは、当業者にとっては、自明の設計変更にすぎないといえる。
(イ) 引用発明1において周知技術1を適用すると、レーザー透過性のオリジナル基板(「供給基板」に相当する。)の材料を「サファイア基板などのレーザー透過性の基板」に包摂される「石英基板」とし、接合層である「フォトレジスト305」を「PDMS層」(本件補正発明の「粘着層」に相当する。)に代えることとなる。
そして、PDMS層は同じ領域を再利用可能であることから、「レーザー透過性の基板において、リフトオフされた赤色マイクロ発光ダイオード302の位置」には粘着層であるPDMS層が残り、「良好なマイクロ発光ダイオード」をその表面に粘着によって保持することになる。
すなわち、引用発明1において周知技術1を適用すると、前記相違点2に係る構成を備えることとなる。
ウ なお、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
エ 以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5) 審判請求書における請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、引用発明は、実際は、例えば段落0188の記載から明らかなように、本件補正発明の「出発基板」に対応する「オリジナルの基板」から欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを除去し、欠陥のあるマイクロ発光ダイオードを除去したオリジナル基板から、支持体やバックアップ基板や受け基板に良好なマイクロ発光ダイオードをリフトオフする発明であるのに対して、本件補正発明の発光ダイオード供給基板の製造方法は、出発基板とは異なる供給基板であって、石英基板と、該石英基板上に設けられた粘着層とを含む供給基板に対して不良な発光ダイオードの選択除去工程を行う点で少なくとも引用発明とは異なり、この点はいずれの文献に記載も示唆もないから、本件補正発明は進歩性を有する旨主張している。
イ 合議体は、請求人の上記主張は失当であるから採用できないと判断するところ、その理由は次のとおり。
前記(2)ア(イ)aにおいて示したとおり、引用文献1の段落【0199】には、「本発明によれば、マイクロ発光ダイオードが受け基板に転写された後に修復を行うことができる以外に、又は、更に前記転写の前にレーザー透過性の基板において修復を行うこともできる。」と記載されており、【0117】及び【図6D】等に「サファイヤ基板などのオリジナル基板306」が示されていることを踏まえると、「レーザ透過性のオリジナル基板306」において修復を行うことも認識できる。
そうすると、前記(3)ア(ア)b(b)において示したとおり、引用発明における「フォトレジスト305」を備える「オリジナル基板306」は、本件補正発明における「供給基板」に相当するものである。そして、(3)ア(ウ)aにおいて検討したとおり、引用発明において本件補正発明の「出発基板」に相当するものは、「GaAs基板などの成長基板301」である。

(6) 独立特許要件についての判断のまとめ
前記(4)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2において示したとおり却下したから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に示した、本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

進歩性の欠如)
本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用文献に記載された発明等
引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の3(2)アにおいて示したとおりである。

4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)においてアからオとして示した限定を省いたものであるところ、本件補正発明と引用発明の前記相違点は、全て、当該限定により生じたものであるから、合議体が認定した引用発明と本願発明の間には、相違点はない。
(2) 原審は、本願発明に進歩性がないと判断したところ、これは、引用文献1の【0199】の記載を示唆として見て、当該示唆に基づいて本願発明は想到容易と評価したものであって、引用発明として認定した技術事項が少ないこと自体は問題がなく、合議体が認定した引用発明と本願発明の間には相違点が無いのであるから、本願発明が引用文献1に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである点が結論において誤りがないことは、明らかである。


第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2024-07-18 
結審通知日 2024-07-23 
審決日 2024-08-07 
出願番号 P2020-182746
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 中塚 直樹
田辺 正樹
発明の名称 発光ダイオード供給基板の製造方法、発光ダイオードディスプレイの製造方法、及び発光ダイオードディスプレイの分割ユニットの製造方法  
代理人 大塚 徹  
代理人 小林 俊弘  
代理人 好宮 幹夫  

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