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審決分類 審判 一部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない B24B
審判 一部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない B24B
管理番号 1006779
審判番号 審判1995-19395  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1975-07-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 1995-09-06 
確定日 1999-10-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第933560号発明「ガラス板面取り加工方法及びその装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.本件特許第933560号発明は、昭和48年11月28日の出願であって、昭和53年11月30日に設定の登録がなされたものである。これに対して、昭和59年8月27日付けで訂正審判の請求がなされ、昭和62年7月7日付けで該訂正を認めるとする審決がなされ、この審決は確定している。
上記訂正を認められた後の特許請求の範囲第1項(以下本件発明という)は、次のとおり記載されている。
「(1)ガラス板を1対の搬送手段で挾持搬送しながらガラス板の一端縁部を研削手段で面取り加工する方法において、前記ガラス板を、搬送方向に直交するその断面形状が研削手段の位置する側に向って前記一端縁部近傍まで延設された彎曲状の支持面により凹面状に曲げられた状態で、搬送することを特徴とするガラス板面取り加工方法。」
II.請求人は、甲第1〜4号証を提出し、このうち甲第2〜4号証の証拠からみて本件発明は特許法第36条第4項または第5項の規定を満たしていないから、同法123条第3項の規定により無効とすべきである旨主張しており、該主張は大略次の通りである。
甲第4号証刊行物(米国特許第2,754,956号明細書)に記載されたガラスの面取り加工装置において、重量のあるガラス板を砥石で研削中に移動しないようしっかりと保持するためには、ゴムベルト面あるいはゴムパッド面を、ガラス板との摩擦面を多くするために真平面か中央が低くなった中低湾曲状に加工する必要があることは当業者にとって容易想到の範囲のものである。
ところで該甲第4号証刊行物における如きゴムパッドの面はガラス板を強固に挟めればよく、特に加工精度を要求されるものではないから、その加工は甲第3号証刊行物である「削り加工の普通許容差」に関するJIS規格に示される中級または粗級程度の等級で行えばよいものであるところ、甲第2号証である「形状および位置の精度の許容値の図示方法」に関するJIS規格は、平面度についての図示方法についてのものであって、該甲号証中図16には、加工面を0.05mmの許容差の範囲の中て「中高ヲ許サナイ」という条件で加工することが示されており、この条件に従って甲第4号証におけるゴムパッド面を加工すれは、その加工面は中低の湾曲面となるものであって、本件発明の「彎曲状の支持面」と区別がつかないものとなる。
しかるに本件発明明細書及び図面には湾曲の程度を知り得る記載はなく、また「彎曲状の支持面」を使用することにより明細書記載の効果が得られる理由ないし根拠も示されていない。従って本件特許は、特許法第36条第4項または第5項に規定する要件を満たしていないものに対してなされたものであるから、無効である。
III.そこで検討すると、甲第4号証刊行物には、ガラスを挟持するゴムパッドのガラス当接面を、請求人のいう中低湾曲面とすることについて全く記載されていないし、そのように加工することが技術的に当然のことと認めるべき根拠もない(ちなみに請求人が請求理由の中で、「重量のあるガラス板を砥石で研削中に移動しないように確りと保持するためには、ゴムベルト面またはゴムパッド面を、ガラス板との摩擦面を多くするために真平面か、・・・いわゆる「中低」に加工される必要がある」と述べているように、ゴムパッド面は真平面でもよく、中低湾曲面とすることが必然のこととはみられないのである。)。また甲第2、3号証刊行物はいすれもJIS規格についてのものであり、これらは当然のことに、ある特定の物品の加工について規定したものではなく、従ってまた甲第4号証刊行物にかかるガラス板支持用ゴムパッドの支持面の加工形状や程度について規定するものでも、示唆するものでもないことは明瞭である。
そうしてみると、甲第2、3号証に記載された事項のうちの特定の加工態様を甲第4号証のものに適用することを前提にした上で、その結果出来上がったゴムパッド加工面と本件発明の「彎曲状の支持面」との区別がつかないから、本件発明明細書に記載不備があるとする請求人の主張は、その前提自体が何の技術的根拠もないものであって、到底採用できないものである。また湾曲の程度については本件発明にかかる訂正明細書中には、「この方法が適用できるガラス板は湾曲(最大変位量は約数百ミクロンから数ミリメートル、但し、ガラス板の大きさにより異なる。)し得る薄さであることが必要であり」(特許審判請求公告第584号公報第3頁左欄第6〜9行目参照)と記載されており、本件発明の方法を適用するときにガラス板が受けるべき湾曲変位量の一例が、概略的に示されているものと認めることができる。
さらに「彎曲状の支持面」を使用することにより明細書記載の効果が得られる理由ないし根拠が示されていないとする点についてみると、上記訂正明細書には、「ガラス板が押圧ローラにより両側のベルトを介して挟持されると、このカラス板は当て板の彎局面に添って変形し、ガラス板は研削手段側が凹面状に彎曲された状態で搬送される。従って当て板のガラス板に対する抵抗力は特にガラス板の下端部即ち面取り加工部の近傍部に集中することになり、その面取り加工部は確実に保持される砥石による研削荷重によりガラス板が後方に逃げ、また振動を起こすことがない。従ってガラス板は始端から終端までの全長に亘り均一且つ正確に面取り加工される。」(上記特許審判請求公告第584号公報第5頁左欄最終行〜右欄第11行目参照)等と記載されているが、この記載内容は、研削手段側が凹面状に湾曲された状態でガラス板が搬送されることが面取り加工部に所定の力学的影響を及ぼし、それによって研削荷重によるガラス板の逃げが防止できることを述べたものであり、合理的なものと認められる。それ故この点でも請求人の主張は根拠がないというべきである。
なお請求人は弁駁書と共に甲第5号証を提出し、甲第4号証装置におけるガラス板支持用ゴムパッドのガラス支持面を中低としたものと平面としたものとで試験した結果、これらのパッドの差による面取り加工の仕上がり具合には特に差異はみられなかったから、本件特許明細書に記載した効果を得るためには、その湾曲面を特定できる諸条件を明示すべきであるのに、それがなされておらず不備があるという。しかしながら、本件発明のように研削手段側が凹面状に湾曲された状態てカラス板が搬送されることによって、ガラス板には湾曲方向に予め負荷が加えられており、これと逆方向の負荷となる面取り加工時の研削荷重に対しより大きく耐えることができ、結果として研削荷重によるガラス板の逃げ等が生じなくなることについては技術的な疑いを入れる余地はないとみられる。また請求人の実験により本件発明にかかるガラス支持搬送態様に特段の作用効果が認められなかったとする点も、該実験が唯1種類の厚さのガラス板についてのみなされたものに過ぎないこと、湾曲程度も11〜16ミクロンであって上記した本件発明における湾曲度合いとみられる「約数百ミクロンから数ミリメートル」とは大きく異なっていること等からみて、これのみをもって直ちに本件発明の作用効果を云々することはできないというべきである。
IV.以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許を無効にすることはできない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1997-03-27 
結審通知日 1997-04-04 
審決日 1997-04-21 
出願番号 特願昭48-134483
審決分類 P 1 122・ 531- Y (B24B)
P 1 122・ 532- Y (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 徹  
特許庁審判長 野上 智司
特許庁審判官 桐本 勲
播 博
登録日 1978-11-30 
登録番号 特許第933560号(P933560)
発明の名称 ガラス板面取り加工方法及びその装置  
代理人 萼 経夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 加藤 勉  
代理人 中村 壽夫  
代理人 高田 武志  

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