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審決分類 |
審判 補正却下の決定 2項進歩性 B09B 審判 補正却下の決定 5項独立特許用件 B09B |
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管理番号 | 1010394 |
審判番号 | 審判1998-7098 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-12-19 |
種別 | 補正却下の決定 |
確定日 | 1999-08-02 |
事件の表示 | 平成6年特許願第158020号「生塵の処理装置」拒絶査定に対する審判事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 平成10年6月1日付けの手続補正を却下する。 |
理由 |
I.補正の経緯 本件補正は、特許法第121条第1項の規定に基づく審判の請求の日から30日以内の平成10年6月1日付けでなされた同法第17条の2第1項第5号の規定による補正である。 II.補正の内容 本件補正の内容は、その手続補正書からみて、特許請求の範囲及び明細書の一部を補正するものであるところ、請求項1を以下のように補正している。 「生塵を供給して分解させる生塵分解チャンバー(2)と、生塵分解チャンバー(2)の内部に配設されて供給された生塵を攪拌する攪拌部材(3)と、この攪拌部材(3)を駆動するモーター(3A)と、モーター(3A)の運転を制御して設定された時間間隔でモーター(3A)を断続運転させる制御手段(18)と、生塵分解チャンバー(2)の空気を換気する換気手段(4)とを備える生塵の処理装置において、 生塵チャンバー(2)に、生塵を分解する好気性細菌を含むバクテリアが添加される吸湿部材(1)が生塵と共に充填され、この吸湿部材(1)と生塵が、攪拌部材(3)で攪拌されて生塵が分解され、 さらに、制御手段は(18)は、モーター(3A)の運転時間と休止時間とを記憶するタイマー(18A)と、攪拌部材(3)の負荷を検出するセンサー(18B)と、センサー(18B)から出力される信号を処理して攪拌部材(3)を逆転させる逆転手段(18C)を備え、 回転している攪拌部材(3)に設定値よりも大きい負荷がかかると、センサー(18B)がこのことを検出して逆転手段(18C)は攪拌部材(3)を逆転させ、さらに、逆転している状態で設定値よりも大きい負荷がかかると、攪拌部材(3)を回転している方向と反対方向に逆転させて、タイマー(18A)に設定されている運転時間は攪拌部材(3)を運転して、生塵と吸湿部材(1)とを攪拌するように構成されなることを特徴とする生塵の処理装置。」 III.補正の適否 ア)特許法第17条の2第3項の要件について 当該補正は、旧請求項1に係る発明において、「生塵チャンバー(2)に、生塵を分解する好気性細菌を含むバクテリアが添加される吸湿部材(1)が生塵と共に充填され、この吸湿部材(1)と生塵が、攪拌部材(3)で攪拌されて生塵が分解される」という構成をさらに付加するものであるから、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。 イ)独立特許要件について (補正後の本願発明) 補正後の本願請求項1に係る発明(以下「補正後の本願発明」という。)は、上記手続補正書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定されるものである。 (引用例記載の発明) 原査定において引用した引用例1、2には、以下の事項が記載されている。 ・引用例1:実願昭63-78679号(実開平2-1291号)のマイクロフィルム ▲1▼(イ)発酵槽内に投入した有機物を攪拌及び切り返しする攪拌羽根と、該攪拌羽根を回転駆動させる駆動機構とを有するものにおいて、 (ロ)前記攪拌羽根の回転異常を検出する異常検出手段と、 (ハ)前期異常検出手段が回転異常を検出したときに前記攪拌羽根を所定時間、逆転させた後、再び正転させる回転駆動手段と を設けたことを特徴とする有機物発酵装置。(明細書第1頁第4〜12行参照) ▲2▼一般家庭及びレストラン等から排出される生ゴミ等の有機物を(明細書第1頁第19〜20行参照) ▲3▼第1〜2図において、1は有機物発酵装置であり、主にアングル部材2を組み合わせて略直方体状に形成した枠体3と枠体3の中央に横架した発酵槽4と、発酵槽4内に投入した有機物Aを攪拌及び切り返しする攪拌羽根5と、該攪拌羽根5を回転駆動させる駆動モータ6とから構成する。(明細書第5頁第6〜12行参照) ▲4▼17は発酵槽4の右側壁4-2上部に開口した吸気孔、また18は発酵槽4の左側壁4-1上部に開口した排気孔、19は排気孔18と連通した発酵槽4の外壁に配設した排気ファン、19-1は排気筒である。排気ファン19が作動すると発酵槽4内が負圧になるために吸気孔17から新鮮な外気が発酵槽4内に流入し、発酵槽4内の発酵ガスと混合し排気孔18、排気ファン19、排気筒19-1を介して外部に排出される。(明細書第6頁第15行〜第7頁第3行参照) ▲5▼23は、制御回路部21と駆動モータ6とを接続する電線間に配設した過電流検出センサー(例えば、ショックリレー)であり、駆動モータ6に流れる電流値が所定値以上になったときに、攪拌羽根5の回転異常が発生したとして制御回路部21に検知信号を出力する機能を有する異常検出手段を構成する。(明細書第7頁第12〜18行参照) ▲6▼まず、操作盤の運転スイッチをONとすると制御装置が作動し、排気ファン19を起動させて以下の制御動作の実行をスタート(S100)させる。次に、駆動モータ6が正転し、攪拌羽根5を第5図に示す正転方向CWに回転(S110)させる。・・・次に、過電流検出センサー23が所定値以上の過電流を検出したか否か、即ち異常検出手段が攪拌羽根5の回転異常を検出したか否か判定(S120)する。・・・一方、前記(120)にて、YESの場合には、・・・攪拌羽根5が回転できない状態(回転異常)が発生したと判定し、直ちに駆動モータ6を停止(S140)し、攪拌羽根5を回転停止させる。次に、所定時間H1(5秒間)経過(S150)後、駆動モータ6を逆転させて攪拌羽根5を第5図に示す回転方向CCWに回転(S160)させる。・・・また、前記所定時間H1の間に過電流検出センサー23は、自動的にリセットされて再び過電流を検出できる状態になっている。次に前記(S120)のように過電流検出センサー23が過電流を検出したか否か、即ち異常検出手段が攪拌羽根5の回転異常を検出したか否か判定(S170)する。NOの場合には、所定時間H2(5分間)経過(S180)するまで駆動モータ6を逆転させる。YESの場合には、直ちに駆動モータ6を停止(S190)した後、再び前記(S110)にジャンプし、以後(S110)〜(S130)の正常な運転を開始する。(明細書第8頁第2行〜第10頁第9行参照) ・引用例2:特開平3-221183号公報 ▲1▼処理槽8内のほぼ全容積に対して機械的に間欠作用する攪拌爪14を処理槽8へ装置し、・・・生ごみなどの発酵処理装置。(公報第5頁左下欄第4〜12行参照) ▲2▼13は槽8に装置した攪拌軸であって、・・・14は左右に異なる捻じれ角を持って槽8内のほぼ全体に作用する多数個の攪拌爪で(公報第6頁右上欄第13〜16行参照) ▲3▼17は軸13を間欠に駆動するモータ(公報第6頁左下欄第1行参照) ▲4▼34はモータ17の駆動時間帯を規正する2回路式のタイマ(公報第6頁右下欄第2〜3行) ▲5▼その日中時間帯ではタイマ34の白目盛りに示すように軸13を例えば4時間毎に数回転程度の間欠稼動すると、・・・本実施例の方が電力消費を減じる効果も伴う。(公報第7頁右上欄第5〜18行参照) (対比・判断) 補正後の本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。 引用例1の上記▲1▼〜▲6▼の記載及び第1〜5図の記載からみて、引用例1には、以下の事項が記載されているものと認める。 「生ゴミ等の有機物を投入して発酵させる発酵槽と、発酵槽の内部に配設されて投入された有機物を攪拌する攪拌羽根と、この攪拌羽根を駆動する駆動モータと、駆動モータの運転を制御する制御回路部と、発酵槽の内部の空気を入れ換える排気ファンとを備える有機物発酵装置において、 制御手段が、攪拌羽根の駆動モータ過電流を検知するセンサーと、センサーから出力される検知信号を処理して攪拌羽根の回転方向を逆転させる駆動モータとを備え、回転している攪拌羽根を駆動するモータの過電流が所定値以上になったときに、センサーがこのことを検知して、所定時間(5秒間)駆動モーターを停止した後、攪拌羽根を逆転させ、さらに、逆回転している状態で設定値以上の過電流を検知したときには、駆動モータを停止した後、攪拌羽根を回転方向と反対に逆転させるように運転し、逆転している状態で所定時間過電流を検知しないときも、駆動モータを停止した後、撹搾羽根を回転方向とは反対方向に逆転させるように運転し、有機物を攪拌するように構成されてなることを特徴とする有機物発酵装置。」 ここで、引用例1の「生ゴミ等の有機物」、「発酵槽」、「攪拌羽根」、「排気ファン」、「攪拌羽根の駆動モータ過電流を検知するセンサー」、「攪拌羽根の回転方向を逆転させる駆動モータ」、「攪拌部材を逆転させる逆転手段」、「有機物発酵装置」は、それぞれ、補正後の本願請求項1に係る発明の「生塵」、「生塵分解チャンバー」、「攪拌部材」、「空気を換気する換気手段」、「攪拌羽根の負荷を検出するセンサー」、「生塵の処理装置」に相当する。 してみると、補正後の本願発明と引用例1記載の発明とは、 「生塵を供給して分解させる生塵分解チャンバー(2)と、生塵分解チャンバー(2)の内部に配設されて供給された生塵を攪拌する攪拌部材(3)と、この攪拌部材(3)を駆動するモーター(3A)と、モーター(3A)の運転を制御する制御手段(18)と、生塵分解チャンバー(2)の空気を換気する換気手段(4)とを備える生塵の処理装置において、 さらに、制御手段は(18)は、攪拌部材(3)の負荷を検出するセンサー(18B)と、センサー(18B)から出力される信号を処理して攪拌部材(3)を逆転させる逆転手段(18C)を備え、 生塵を攪拌するように構成されてなることを特徴とする生塵の処理装置。」である点で一致し、以下の4点で相違している。 ▲1▼制御手段が、補正後の本願発明では、「設定された時間間隔でモーターを断続運転させる」とともに、「モーターの運転時間と休止時間とを記憶するタイマーを備えている」のに対し、引用例1記載の発明では、このような制御をしていない点。 ▲2▼補正後の本願発明では、「回転している攪拌部材(3)に設定値よりも大きい負荷がかかると、センサー(18B)がこのことを検出して逆転手段(18C)は攪拌部材(3)を逆転させ、さらに、逆転している状態で設定値よりも大きい負荷がかかると、攪拌部材(3)を回転している方向と反対方向に逆転させ、タイマー(18A)に設定されている運転時間は撹拝部材(3)を運転している」のに対し、引用例1記載の発明では、「回転している攪拌羽根に設定値より大きい負荷がかかると、センサーがこのことを検出して、駆動モーターを所定時間(5秒)停止した後、駆動モーターを逆転させて攪拌羽根を逆転させ、さらに、逆転している状態で設定値よりも大きい負荷がかかると、駆動モーターを停止した後、攪拌羽根を回転している方向とは反対方向に逆転させ」ている点。 ▲3▼補正後の本願発明では採用していないが、引用例1記載の発明では、「逆転している状態で設定値より大きい負荷がかからない場合でも、所定時間経過後は、駆動モーターを停止した後、攪拌羽根を回転している方向とは反対方向に逆転させている」点。 ▲4▼補正後の本願発明では、「生塵を分解する好気性細菌を含むバクテリアが添加される吸湿部材(1)が生塵と共に充填され、この吸湿部材(1)と生塵が、攪拌部材(3)で攪拌されて、生塵を分解している」のに対し、引用例1記載の発明では吸湿部材について明記がない点。 まず、相違点▲1▼について検討する。 引用例2の上記▲1▼〜▲5▼及び図面の記載からみて、引用例2には、生ごみなどの発酵処理装置において、発酵槽内に配設されて生ごみ等を攪拌する攪拌爪を、タイマで規定された時間帯(すなわち、運転時間と休止時間がタイマに記憶されている)に断続運転することが開示されている。また、攪拌爪を間欠回転稼働させることにより、電力消費を減少させることは自明の効果であるから、同一技術分野に属する引用例1記載の発明において、電力消費節減の目的で、引用例2記載の技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことと認められ、効果においても格別のものが認められない。 次に、相違点▲2▼について検討する。 引用例1記載の発明においては、攪拌羽根の回転方向を逆転させる際に、攪拌羽根を一度停止させてから攪拌羽根を逆転させているが、この停止時間はわずか5秒であり、また、補正後の本願発明においても、攪拌部材の回転方向を逆転させるには、たとえ短時間でも攪拌部材の回転を停止する必要があることは明らかである。そして、回転方向を逆転させる際の攪拌部材の停止時間を、攪拌部材の継続運転に支障のない範囲内で適宜設定する程度のことは、当業者が適宜なし得る設計事項と認められる。 次に、相違点▲3▼について検討する。 引用例1記載の発明においては、逆転している状態で設定値より大きい負荷が攪拌羽根にかからない場合でも、所定時間経過後は、攪拌羽根を回転している方向とは反対方向に逆転させる構成を採用しているが、攪拌部材の回転方向の向きに技術的な意味を有するとは云えないから、引用例1記載の発明において、このような構成を省く程度のことも当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。 さらに、相違点▲4▼について検討する。 生ごみの分解処理装置において、補正後の本願発明の「生塵を分解する好気性細菌を含むバクテリアが添加される吸湿部材」に相当する樹木粉のような有機物分解微生物着床剤や保水性の発酵促進剤を、生ごみとともに充填し、攪拌し、分解処理効率を高めることは、当該技術分野において、周知の事項(例えば、特開平4-4084号公報、実願昭60-189669号(実開昭62-126337号)のマイクロフィルム参照)にすぎず、格別の作用効果も認められない。 以上のとおり、補正後の本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 ウ)むすび したがって、上記請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第4項の規定により準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるから、他の補正事項について論ずるまでもなく、本件補正は、特許法第159条第1項の規定により準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
決定日 | 1999-06-07 |
出願番号 | 特願平6-158020 |
審決分類 |
P
1
93・
121-
(B09B)
P 1 93・ 575- (B09B) |
前審関与審査官 | 斉藤 信人 |
特許庁審判長 |
沼澤 幸雄 |
特許庁審判官 |
野田 直人 井上 雅博 |
発明の名称 | 生塵の処理装置 |
代理人 | 豊栖 康弘 |