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審決分類 |
審判 全部無効 発明同一 無効としない B65D |
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管理番号 | 1012006 |
審判番号 | 審判1994-15281 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1983-05-02 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1994-09-08 |
確定日 | 2000-01-14 |
事件の表示 | 発明の名称を「熱可塑性材料から成形された容器、その製造方法および装置」とする第1730290号特許無効審判事件〔(平成4年3月30日出願公告、特公平4-19100号)、特許請求の範囲に記載された発明の数(3)〕について特許庁がした平成8年2月20日付審決に対し、東京高等裁判所において審決中、特許第1730290号発明の明細書の特許請求の範囲第2項、第3項に記載された発明についての特許を無効とする部分を取消すとの判決〔平成8年(行ケ)第162号、平成9年12月24日判決言渡〕があったので、さらに審理の上、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第1730290号発明の明細書の特許請求の範囲第2項、第3項に記載された発明についての本件審判の請求は、成り立たない。 審判の費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
I 手続の経緯 1、特許無効審判の請求 (1)請求人は、平成6年9月8日、本件特許につき無効の審判を請求した。 (2)同請求は、本事件として審理され、特許第1730290号発明の明細書の特許請求の範囲第2項、第3項に記載された発明についての特許を無効とする、特許第1730290号発明の明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての審判請求は、成り立たない、と審決された。 2、特許無効審決取消の訴え 被請求人は、平成8年8月8日、本件請求の請求人を被告として、結論同旨の判決を求めた。 3、訂正審判の請求 (1)被請求人は、上記裁判継続中の平成8年8月9日、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を訂正する旨の訂正審判を請求した。 (2)同請求は、平成8年審判第13419号として審理され、平成9年5月2日、訂正を認める、と審決された。 4、訂正された本件発明 (1)本件発明の要旨は、訂正した明細書と図面の記載からみて、特許請求の範囲第2項、第3項に記載された次のとおりのものである。 『(2)閉成された主型内に設定され、垂直方向に延びる細長い中空チューブ形状を有する押出された長さのパリソンから直立容器を成形する方法であって、 主型組立体内のパリソンから容器胴部が成形される際に、容器をモールド成形して充填を行うための吹込み・充填用組立体の挿入に適合する閉成された主型よりも上にあるパリソンの残部長さ部分の頂部に開口を維持し、その後、前記パリソンの頂部開口から前記吹込み・充填用組立体を移動させ、次いで、モールド成形され充填された容器の頂部を密封する方法において、 前記容器胴部が成形された後、▲1▼少なくとも一時的に、前記パリソンの頂部開口を維持し、かつ▲2▼容器を密封するに先立って、モールド成形された容器胴部におけるパリソンの頂部開口、すなわち閉成された主型よりも上にあるパリソンの残部長さ部分におけるパリソンの頂部開口を介して二次操作を実施することから成る付加的手順を含み、 その二次操作が、パリソンの残部長さ部分にインサート物を設定し、該インサート物の少なくとも一部に向って前記残部長さ部分の一部を押圧することにより前記容器を前記インサート物に対して密閉状態にする工程を含み、かつ、その押圧する工程が、前記パリソンの一部を前記インサート物に対してさらに押圧することにより破損し易い肉厚の薄いウェブで一体に結合される第一部分と第二部分とを有し、前記インサート物に当接する周辺壁を形成する工程を含むことを特徴とする前記方法。』 『(3)閉成された主型内に設定され、垂直方向に延びる細長い中空チューブ形状を有する押出された長さのパリソンから容器を成形するための装置であって、 ▲1▼頂部開口を有する容器胴部を、最初に成形するための第一型すなわち主型装置と、▲2▼第一型よりも上で上方へ延びるパリソンの一部長さ部分におけるパリソン頂部に開口を維持するための把持装置と、▲3▼モールド成形された容器の頂部を密封するための第二型すなわちシール用型装置とを有する前記容器成形装置において、 モールド成形された容器胴部におけるパリソンの頂部開口、すなわち上方へ延びる部分におけるパリソンの頂部開口を介して二次操作を行うための二次操作装置を具備し、 その二次操作装置が、容器胴部の頂部開口にインサート物を設定するための装置と、パリソンを前記インサート物の少なくとも一部に向って押圧することにより前記容器を前記インサート物に対して密閉状態にするとともにパリソンの一部をさらに押圧することにより、破損し易い肉圧の薄いウェブで結合される第一部分と第二部分とを有し、前記インサート物に当接する周辺壁を形成する装置とを含むことを特徴とする前記装置。』(以下、これらの特許請求の範囲第2項及び第3頃に記載された各発明をそれぞれ「本件第2発明」及び「本件第3発明」という。またこれらを総称して単に「本件発明」という。) II 請求人の主張及び被請求人の答弁 1、請求人の主張 これに対し、請求人は、本件特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、との請求をなし、その理由として、本件発明は、本件発明の出願の優先権主張の日前に出願され、その出願後に出願公開された特願昭56-115014号(特開昭57-55806号公報参照)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であって、本件発明は、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであり、本件特許は、特許法第123条第1項の規定により無効とされるべきである旨主張するものである。 2、被請求人の答弁 一方、被請求人は、本件発明は、請求人の提示する先願明細書に記載された発明とは別異のものであり、特有の効果を奏するものであるから、請求人の主張には根拠がない趣旨の答弁を行うものである。 III 当審の判断 1、先願明細書に記載された発明 先願明細書には、ヒートシール性プラスチック管を吹込み成形によって容器とし、容器の既に成形された部分に充填し、容器の密閉時に容器上部を成形する操作を一工程で行なうことからなる充填されかつ密閉された容器の製造法であって、押出機から垂直方向下方に押出されたヒートシール性プラスチック管を一対の真空保持フランジと一対の下部割型によって受け止め、真空保持フランジによってプラスチック管を保持しながら、吹込み・充填ノズルを用いて、プラスチック管の下部割型内に位置する部分を吹込み成形して容器胴体となし、かつ充填物を充填し、充填の後に吹込み・充填ノズルをプラスチック管の頂部開口から移動させ、ゴム栓受取り部位からゴム栓を保持したゴム栓保持部材を移動させて、プラスチック管の頂部開口部を介して吹込み成形後の容器胴体上部ヘゴム栓を装着し、その後に一対の側部締付具によりプラスチック管にゴム栓の周囲及びその上部を一部分被覆せしめて、ゴム栓領域の成形を行い、そして上部割型により容器頭部にブレークストッパーを形成して容器頭部を完全に密閉するようになした充填されかつ密閉された容器の製造法が記載されており、更に、押出機から押出されて垂直方向に延びるヒートシール性プラスチック管から容器を成形するための成形製造装置であって、頂部開口を有する容器胴部を最初に成形するための水平方向に開閉可能な一対の下部割型と、一対の下部割型の上で上方に延びるヒートシール性プラスチック管の一部分を吸引保持してプラスチック管頂部に開口を維持するための一対の真空保持フランジと、吹込み成形された容器の頂部を密閉するための水平方向に開閉可能な一対の上部割型であって、上部割型内に割型とは別個に独自に作動しうるように設けられた側部締付具を備えた上部割型と、下部割型と上部割型からなる製造型の上方に上下移動可能に設けられ、下部割型内のヒートシール性プラスチック管を吹込み成形して容器胴体を成形しかつ充填物を充填する吹込み・充填ノズルと、ゴム栓受取り部位から装着部位ヘゴム栓を運搬すべく移動可能に設けられ、ゴム栓を吹込み成形後の容器胴体上部ヘプラスチック管の頂部開口部を介して装着するゴム栓保持部材を備えた容器成形製造装置 が記載されていることが認められる。 2、対比・判断 そこで、本件発明と先願明細書に記載された発明とを比較検討する。 先ず、本件第2発明と先願明細書に記載された容器製造法に関する発明を対比するに、先願明細書に記載された容器製造法においては、押出機から押出されたヒートシール性プラスチック管の下部割型内に位置する部分を吹込み・充填ノズルによって吹込み成形して容器胴体を成形しかつ充填物を充填した後に、ゴム栓保持部材によって、ゴム栓をプラスチック管の頂部開口部を介して容器胴体上部へ装着し、そして一対の上部割型により、容器の頭部にブレークストッパーを形成して容器を密閉しているところであって、先願明細書に記載された容器製造法における「一対の下部割型」、「押出機から押出されたヒートシール性プラスチック管」、「吹込み・充填ノズル」及び「吹込み成形」は、それらの機能並びに形状、構造からみて、本件第2発明における「主型」、「中空チューブ形状を有する押出された長さのパリソン」、「吹込み・充填用組立体」及び「モールド成形」にそれぞれ相当し、更に、先願明細書に記載された容器製造法におけるゴム栓保持部材によるプラスチック管の頂部開口部を介してのゴム栓の容器胴体上部への装着は、容器胴体の成形後であって、プラスチック管の頂部開口部を真空保持フランジによって開口を維持した状態で、かつ容器を密封するに先だって行われており、これは、本件第2発明における「容器頂部が成形された後、▲1▼少なくとも一時的に、パリソンの頂部開口を維持し、かつ▲2▼容器を密封するに先立って、モールド成形された容器胴部におけるパリソンの頂部開口を介して二次操作を実施することから成る付加的手順」に相当するから、両発明は、閉成された主型内に設定され、垂直方向に延びる細長い中空チューブ形状を有する押出された長さのパリソンから容器を成形する方法であって、主型組立体内のパリソンから容器胴部が成形される際に、容器をモールド成形して充填を行うための吹込み・充填用組立体の挿入に適合する閉成された主型よりも上にあるパリソンの残部長さ部分の頂部に開口を維持し、その後、パリソンの頂部開口から吹込み・充填用組立体を移動させ、次いで、モールド成形され充填された容器の頂部を密封する方法において、容器胴部が成形された後、▲1▼少なくとも一時的に、パリソンの頂部開口を維持し、かつ▲2▼容器を密封するに先立って、モールド成形された容器胴部におけるパリソンの頂部開口、すなわち閉成された主型よりも上にあるパリソンの残部長さ部分におけるパリソンの頂部開口を介して二次操作を実施することから成る付加的手順を含み、その二次操作が、パリソンの残部長さ部分にインサート物を設定し、該インサート物の少なくとも一部に向って前記残部長さ部分の一部を押圧することにより前記容器を前記インサート物に対して密閉状態にする工程を含む容器製造方法である点で一致しているものの、本件第2発明においては、二次操作の押圧する工程が、前記パリソンの一部を前記インサート物に対してさらに押圧することにより破損し易い肉厚の薄いウェブで一体に結合される第一部分と第二部分とを有し、前記インサート物に当接する周辺壁を形成する工程を含むものであるのに対し、先願明細書に記載された容器製造法においては、前記周辺壁形成工程を具備していない点で、両発明は相違する。 以上みたように、本件第2発明は、先願明細書に記載された容器製造法と同一であるとすることができないから、本件第2発明についての請求人の主張は採用できない。 次いで、本件第3発明と先願明細書に記載された容器成形製造装置に関する発明とを対比するに、先願明細書に記載された容器成形製造装置における「押出機から押出されるヒートシール性プラスチック管」、「吹込み成形」、「一対の下部割型」、「一対の真空保持フランジ」及び「一対の上部割型」は、それらの機能並びに形状、構造からみて、本件第3発明における「細長い中空チューブ形状を有する押出し長さのパリソン」、「モールド成形」、「第一型すなわち主型装置」、「把持装置」及び「第二型すなわちシール用型装置」に相当し、また、先願明細書に記載された容器成形製造装置においては、下部割型内に位置するヒートシール性プラスチック管を吹込み・充填ノズルによって吹込み成形して容器胴体を成形しかつ充填物を充填した後に、ゴム栓保持部材によって、ゴム栓をプラスチック管の頂部開口部を介して容器胴体上部へ装着し、そして一対の上部割型により、容器の頭部にブレークストッパーを形成して容器を密閉しているところであり、これらのゴム栓保持部材や上部割型が、本件第3発明における「モールド成形された容器胴部におけるパリソンの頂部開口、すなわち上方へ延びる部分におけるパリソンの頂部開口を介して二次操作を行うための二次操作装置」に相当することが認められるものの、パリソンの一部をさらに押圧することにより、破損し易い肉圧の薄いウェブで結合される第一部分と第二部分とを有し、前記インサート物に当接する周辺壁を形成する装置を具備するものではなく、また、この周辺壁形成装置を窺わせる記載もない。 以上みたように、本件第3発明は、先願明細書に記載された容器成形製造装置と同一であるとすることができないから、本件第3発明についての請求人の主張は採用できない。 IV むすび 以上のとおりであるから、本件第2発明及び本件第3発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるとすることができないから、請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、これを無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-07-09 |
結審通知日 | 1999-07-23 |
審決日 | 1999-08-12 |
出願番号 | 特願昭57-147513 |
審決分類 |
P
1
112・
161-
Y
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 八巻 惺 |
特許庁審判長 |
佐藤 久容 |
特許庁審判官 |
藤原 稲治郎 船越 巧子 鈴木 美知子 三原 彰英 |
登録日 | 1993-01-29 |
登録番号 | 特許第1730290号(P1730290) |
発明の名称 | 熱可塑性材料から成形された容器、その製造方法および装置 |
代理人 | 戸田 利雄 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 辻本 重喜 |
代理人 | 白浜 吉治 |
代理人 | 石田 敬 |