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審決分類 |
審判 補正却下の決定 5項独立特許用件 H01L |
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管理番号 | 1012192 |
審判番号 | 審判1998-1263 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-06-06 |
種別 | 補正却下の決定 |
確定日 | 2000-01-14 |
事件の表示 | 平成7年特許願第305647号「半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 平成10年2月23日付けの手続補正を却下する。 |
理由 |
1.本願の経緯および本願発明の要旨 本願は、平成7年11月24日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、平成9年10月27日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(なお、平成10年2月23日付けの手続補正書は平成11年9月7日付けの補正却下の決定により却下されている。) 「半導体基板上に設けた所望の回路と、前記回路を含む表面に設けた層間膜と、前記層間膜に設けたコンタクト孔と、前記コンタクト孔の下層の回路とを接続する二層以上の高融点金属配線を有する半導体装置の製造方法において、前記二層以上の高融点金属配線のうちの一層を、窒化処理等を施さず、前記基板上に直接、化学気相成長法によりシリコンを含まない非晶質状態あるいは微細結晶状態の高融点金属膜で形成する工程と、前記二層以上の高融点金属配線形成後にBPSG膜を形成する工程と、熱処理により前記BPSG膜をリフローさせる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原審の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平5-102328号公報(以下、「引用例1」という)には、 「つぎに、上記実施例2の半導体装置の製造方法について説明する。まず、金属Tiからなるターゲットを用いてスパッタリング法により、図3の(a)に示すように、Si基板1上にチタン膜2を約1000Å形成する。ついで、チタン膜2が形成されたSi基板1をアンモニアガスが充填された炉内に配置し、800〜900℃、10〜120秒の熱処理を施し、図3の(b)に示すように、Si基板1上に粒状の微結晶構造を有する窒化チタン膜3を形成する。さらに、金属Wからなるターゲットを用いてスパッタリング法により、図3の(c)に示すように、窒化チタン層3上に配線層であるタングステン層4を2000Å形成する。 その後、エッチングが施され、Si基板1上に、窒化チタン層3とタングステン層4との2層構造の配線パターンが形成される。ここで、窒化チタン層3はSi基板1とタングステン層4との間に設けられるバリア層として形成されている。 さらに、窒化チタン層3とタングステン層4との2層構造の配線パターンが形成されたSi基板1上に、有機系ガラス材料を堆積し、800〜900℃の熱処理を施して、Si基板1の表面の凹凸を平坦化した後、上配線工程を行い、多層配線構造の高集積の半導体装置を製造している。 ここで、平坦化工程における高温処理を施しても、Si基板1から窒化チタン膜3を通ってSi原子1aがタングステン層4に拡散することによって生じるWのシリサイド化にともなう体積膨張、ならびにタングステン層4の配線の剥離は確認されなかった。」(【0022】〜【0025】)、 「つぎに、上記実施例3の製造方法について説明する。まず、図4の(a)に示すように、金属Tiからなるターゲットを用いスパッタリング法により、パターン形成を施したSi基板1上にチタン層5を50〜300Å形成する。ついで、図4の(b)に示すように、TiNからなるターゲットを用いスパッタリング法により窒化チタン層6を形成する。この窒化チタン層6は直接窒化膜の形態で成膜されているので柱状の結晶構造を有している。さらに、図4の(c)に示すように、金属チタンからなるターゲットを用いスパッタリング法によりチタン膜7を形成する。 ここで、アンモニアガス雰囲気中で、700〜1000℃の温度範囲で、10秒〜30分の熱処理を施す。この時、窒化および結晶化は柱状の結晶構造を有する窒化チタン層6で抑えられ、図4の(d)に示すように、外側のチタン層7のみが窒化して粒状の微結晶構造を有する窒化チタン層3となる。その後、図4の(e)に示すように、Wからなるターゲットを用いスパッタリング法により配線層であるタングステン層4を形成し、エッチングにより所望の配線パターンを形成する。ここでバリア層は、チタン層5,柱状の結晶構造を有する窒化チタン層6および粒状の微結晶構造を有する窒化チタン層3の3層で構成されている。」(【0028】〜【0029】)、 「なお、上記各実施例では、チタン層2,6を金属チタンをターゲットとするスパッタリング法により形成して説明しているが、チタン膜の形成方法は、スパッタリング法に限らず、例えば真空蒸着法、CVD法を用いることができる。」(【0034】)が、図3,図4とともに記載されている。 したがって、上記各記載から、引用例1には、「Si基板上にチタン膜を形成し、該チタン膜をアンモニアガス雰囲気中で熱処理を施すことにより粒状の微結晶構造を有する窒化チタン膜を形成する工程と、窒化チタン層上にタングステン層を形成する工程と、その後エッチングを施すことで、Si基板上に窒化チタン層とタングステン層との2層構造の配線パターンを形成する工程と、前記2層構造の配線パターンを形成した後に有機系ガラス材料を堆積する工程と、熱処理を施してSi基板の表面の凹凸を平坦化する工程を含む半導体装置の製造方法」が記載されているものと認められる。 同じく原審の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平4-87328号公報(以下、「引用例2」という)には、「半導体基板上に、全面に、絶縁膜を積層し、コンタクト部を形成した後、これをタングステン膜で埋め込むに際して、(i)コンタクト部形成後、絶縁膜を含む半導体基板上に、全面に、CVD法を用いてタングステンシリサイド、チタンシリサイド、又はチタンナイトライドからなる微結晶もしくは非晶質構造のバリア膜を積層し、(ii)続いて、全面に、CVD法でタングステン膜を積層することを特徴とする半導体装置の製造方法。」(特許請求の範囲)、 「この発明におけるバリア層は周知のCVD法を用いて形成される。しかもこの発明のバリア層は特定の膜、すなわちタングステンシリサイド(・・・)、チタンシリサイド(・・・)又はチタンナイトライド(TiN)で形成されるのが好ましい。CVD法によって形成されたこれら特定の膜は、柱状結晶のような、いわゆる大粒の結晶構造ではなく、微結晶構造もしくは非晶質(アモルファス)構造を有する膜を構成するからである。」(第2頁右上欄第3〜11行)と記載されている。 したがって、上記各記載から、引用例2には、「半導体基板上に、全面に、絶縁膜を積層し、コンタクト部を形成した後、これをタングステン膜で埋め込むに際して、コンタクト部形成後、絶縁膜を含む半導体基板上に、全面に、CVD法を用いてチタンナイトライドからなる微結晶もしくは非晶質構造のバリア膜を積層し、続いて、全面に、CVD法でタングステン膜を積層することを特徴とする半導体装置の製造方法。」が記載されているものと認められる。 3.対比 本願第1発明と引用例1記載の発明とを対比すると、本願第1発明の「半導体基板」、「二層以上の高融点金属配線」、「非晶質状態あるいは微結晶状態の高融点金属膜」、「リフロー」は、それぞれ引用例1記載の発明の「Si基板」、「窒化チタン層とタングステン層との2層構造の配線パターン」、「微結晶構造を有する窒化チタン膜」、「熱処理を施してSi基板の表面の凹凸を平坦化する」に相当する。 一方、引用例1には、「半導体基板上に設けた所望の回路」及び「前記回路を含む表面に設けた層間膜と前記層間膜に設けたコンタクト孔」は、明示されていない。しかしながら、引用例1に記載された発明は「配線パターンを形成する工程を含む半導体装置の製造方法」に係るものであることを鑑みれば、引用例1に記載された発明において、該配線パターンが接続するSi基板上に所望の回路が設けられていること、及び、該配線パターンと該Si基板との間には両者の接触を妨げる層間膜が設けられ、該配線パターンが該Si基板と接続する箇所には該接続を成す為のコンタクト孔が該層間膜に設けられることは自明であるといえる。 したがって、本願第1発明と引用例1に記載された発明は、「半導体基板上に設けた所望の回路と、前記回路を含む表面に設けた層間膜と、前記層間膜に設けたコンタクト孔と、前記コンタクト孔の下層の回路とを接続する二層以上の高融点金属配線を有する半導体装置の製造方法において、前記二層以上の高融点金属配線のうちの一層を、前記基板上に直接、非晶質状態あるいは微細結晶状態の高融点金属膜で形成する工程と、前記二層以上の高融点金属配線形成後に絶縁膜を形成する工程と、熱処理により前記絶縁膜をリフローさせる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」である点で一致し、 本願第1発明では、高融点金属膜が、「窒化処理等を施さず、化学気相成長法によりシリコンを含まない高融点金属膜」として形成されているのに対して、引例例1に記載された発明では、「Si基板上にチタン膜を形成し、該チタン膜をアンモニアガス雰囲気中で熱処理を施すこと」により形成されている点(相違点1)、 二層以上の高融点金属配線形成後に形成して、その後熱処理によりリフローする絶縁膜が、本願第1発明では、「BPSG膜」であるのに対して、引用例1に記載された発明では、「有機系ガラス材料」である点(相違点2)において相違する。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 引用例1に記載された発明と引用例2に記載された発明は、いずれも微結晶構造を有する窒化チタン層を、バリア層として使用する半導体装置の製造方法という点において発明の属する技術分野を共通とするものである。 してみれば、引用例1に記載された発明における、アンモニアガス雰囲気中での熱処理による微結晶構造を有する窒化チタン層の形成方法に代えて、引用例2に記載された、化学気相成長法を用いた窒化チタン層の形成方法を採用することは当業者が適宜なし得たことであると認められる。そしてまた、化学気相成長法による窒化チタン膜の形成方法が窒化処理等を施すものでないこと、及びシリコンを含む窒化チタン層を形成するものでないことも明らかである。 (相違点2について) 配線形成後に形成して、その後熱処理によりリフローする絶縁膜として、BPSG膜は半導体装置の製造という技術分野において慣用されている。したがって、引用例1に記載された発明の、配線形成後に形成して、その後熱処理によりリフローする絶縁膜として、引用例1に記載された「有機系ガラス材料」に代えて、「BPSG膜」を採用することは当業者が容易になし得たことであると認められる。 したがって、上記各相違点は当業者が容易に想到し得たことと認められる。 そして、本願第1発明は、前記各引用例に記載されたものから予測し得ない効果を奏するということもできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
決定日 | 1999-09-07 |
出願番号 | 特願平7-305647 |
審決分類 |
P
1
93・
575-
(H01L)
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前審関与審査官 | 瀧内 健夫 |
特許庁審判長 |
今野 朗 |
特許庁審判官 |
橋本 武 加藤 浩一 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 河合 信明 |