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審決分類 |
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正 G11B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G11B |
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管理番号 | 1012306 |
異議申立番号 | 異議1999-73000 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-02-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-08-10 |
確定日 | 2000-02-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2855254号「回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2855254号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続の経緯 特許第2855254号の請求項1乃至6に係る発明についての出願は、平成6年7月15日の出願であって、平成10年11月27日にその特許の設定登録がなされ、その後、廣田修一より特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月19日に訂正請求がなされたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア.訂正請求書の請求項1乃至6に係る発明 訂正明細書の請求項1乃至6に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にバネ性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程を含む回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法 【請求項2】 露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去する手段が、エキシマレーザ光の照射法又は樹脂エッチング手法により行われる請求項1の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項3】 非感光性ポリイミド樹脂からなる可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にバネ性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を薬液によって除去し、前記メタルマスクの下面に残置する可撓性絶縁ベース材にキュアー処理を施し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程を含む回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項4】 前記非感光性ポリイミド樹脂は、可溶性ポリイミド樹脂又はポリイミド前駆体である請求項3の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項5】 感光性絶縁樹脂からなる可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にバネ性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を露光及び現像手段により除去し、前記メタルマスクの下面に残置する可撓性絶縁ベース材にキュアー処理を施し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程を含む回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項6】 前記感光性絶縁樹脂は、感光性ポリイミド樹脂又は感光性エポキシ樹脂もしくは感光性アクリル樹脂である請求項5の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。」 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 特許権者が求めている訂正の内容は以下のa,bのとおりである。 a.請求項2 「露出した部位の前記可擁性絶縁ベース材を除去する手段が、エキシマレーザ光の照射法又は樹脂エッチング手法或いはプラズマエッチング法により行われる請求項1の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。」を、 「露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去する手段が、エキシマレーザ光の照射法又は樹脂エッチング手法により行われる請求項1の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。」 と訂正し、 b.発明の詳細な説明の記載の特許掲載公報第3頁右欄第44行の記載「樹脂エッチング」の次に加入した「やプラズマエッチング手段」を削除するものである。 上記訂正aは、可撓性絶縁ベース材を除去するための複数の手段のうちの1つを削除して限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。また、上記訂正bは、訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明との整合を取るためになされたものであり、明瞭でない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ.独立特許要件の判断 訂正明細書の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)を引用してさらに限定するものであるところ、本件発明1及び2に対して、異議申立人の提出した異議申立の証拠である甲第1号証(特開平5-36048号公報)には、次の構成が記載されている。 (1)「可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にばね性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の上記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成した後、この回路配線パターン面に表面保護層を形成し、次いで上記ばね性金属層にフォトエッチング処理を施して所要形状のジンバルを形成し、更には上記回路配線パターンを形成した側からエキシマレーザを照射して外形分離用溝の形成処理と不要な可撓性絶縁ベース材部分及び表面保護層部分の除去処理とを加えた後、上記ジンバルに所要形状の曲げ加工を施すことを特徴とする磁気ヘッド用ジンバル配線体の製造法。」(請求項3) (2)「次に、同図(4)のとおり、所定の透孔溝8を備えたエキシマレーザ遮光用メタルマスク9を表面保護層6の上面に配置し、この状態でメタルマスク9の上方からエキシマレーザ光A1を照射してジンバル1の上に位置する不要な可撓性絶縁ベース材2の部分及び表面保護層6の部分をアプレーション除去することにより製品の外形を形成する。」(段落【0016】) (3)「以後、図3の(4)から(6)と同様に、製品外形形成の為のアプレーション工程、フィンガーリード状端子7の形成工程並びにジンバル1の曲げ形成加工工程を図4の(3)から(5)の如く順次行って磁気ヘッド用ジンバル配線体を製作できる。」(段落【0019】) 同じく甲第2号証(特開平3-71477号公報)には、次の構成が記載されている。 「どちらかの一体状金属層に液状ポリイミドを塗布し、次いで他方の一体状金属層をその液状ポリイミド上に置き、これらの金属層を両側から押圧してポリイミドを硬化させ、両金属層に密着させるようにしてもよい。金属層のエッチング及びポリイミド・シール中のギャップの形成はフレキシブル・ケーブルの製造において用いられているような通常の技術により行うことができる。」(第7頁右上欄第5〜12行目) 同じく甲第3号証(特開平5-37113号公報),甲第4号証(特開平5-190755号公報)及び甲第5号証には、フレキシブル・ケーブルの回路配線パターンを、可撓性絶縁ベース材をエキシマレーザによりアプレーション除去する際の遮光部として機能させることが、そして、甲第6号証(特開平5-218608号公報)には、表面保護層として感光性絶縁樹脂を残すものが、甲第7号証(特開平5-325316号公報)には、リフトオフ手法によって、マスク物質のパターン層の上に形成される膜を最終的に基板上に残すものがそれぞれ記載されている。 (対比・判断) 甲第1号証に記載された発明と本件発明1とを対比すると、甲第1号証には、「可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にばね性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の上記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成した後、この回路配線パターン面に表面保護層を形成し、次いで上記ばね性金属層にフォトエッチング処理を施して所要形状のジンバルを形成し、更には上記回路配線パターンを形成した側にメタルマスクを配置し、エキシマレーザを照射してメタルマスクから露出した可撓性絶縁ベース材部分及び表面保護層部分の除去処理とを加えた後、上記ジンバルに所要形状の曲げ加工を施すことを特徴とする磁気ヘッド用ジンバル配線体の製造法。」という構成が記載されているが、本件発明1の構成要件である、「積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチングを施して所要の回路配線パターンを形成」するという順序の工程が記載されていない。また、他の甲各号証のいずれも、本件発明を特定する事項である、上記の事項を備えていない。そして、本件発明1は、当該事項により本件特許掲載公報に記載の効果を奏するものである。 してみると、本件発明1が上記甲各号証刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。そして、本件発明2は、請求項1を引用してさらに限定するものであるから、本件発明1と同様に甲各号証から容易に発明することができたものとすることができない。 したがって、本件発明2は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 また、 エ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議の申立てについての判断 ア.申し立ての理由の概要 申立人廣田修一は、請求項1乃至6に係る発明は、甲第1〜8号証をもとに容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、また、平成6年2月3日付け手続き補正書により加わった構成は本件特許の出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定の要件を満たしていないので、本件特許は、同法第113条第1項第2号及び第1号の規定により特許を取り消すべきと主張している。 イ.判断 本件発明1は、上記(2)のウ.で示したように、異議申立人の示した甲第1乃至7号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものとすることはできない。 また、異議申立人の提出した甲第8号証(特開平6-28828号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「ハードディスクドライバの読みとり書込み用磁気ヘッドと動作用半導体素子との間の中継に用いられる導体パターンと絶縁性フィルムからなるフレキシブルプリント基板。」(段落【0006】) イ.「導体層としての圧延銅箔(厚み18μm)上にポリイミド前駆体溶液をキャスティング法によって塗布して乾燥し、イミド化を行って絶縁性フィルム(厚み13μm)を形成した。」(段落【0021】) しかしながら、上記した本件発明1の構成要件である「積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチングを施して所要の回路配線パターンを形成」するという順序の工程は記載されていない。 そして、請求項2乃至6に係る発明はいずれも請求項1を更に限定するものであるから、請求項1に係る発明に対する理由と同様の理由により、甲各号証から容易に発明をすることができたものとすることができない。 なお、平成9年2月3日付け手続き補正書により加えられた構成は、上記訂正請求により削除されたのでもはや特許法第113条第1項第1号には該当しないものとなった。 また、他に本件請求項1乃至6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にバネ性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程を含む回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項2】 露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去する手段が、エキシマレーザー光の照射法又は樹脂エッチング手法により行われる請求項1の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項3】 非感光性ポリイミド樹脂からなる可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にバネ性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を薬液によって除去し、前記メタルマスクの下面に残置する可撓性絶縁ベース材にキュアー処理を施し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程を含む回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項4】 前記非感光性ポリイミド樹脂は、可溶性ポリイミド樹脂又はポリイミド前駆体である請求項3の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項5】 感光性絶縁樹脂からなる可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にバネ性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を露光及び現像手段により除去し、前記メタルマスクの下面に残置する可撓性絶縁ベース材にキュアー処理を施し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程を含む回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【請求項6】 前記感光性絶縁樹脂は、感光性ポリイミド樹脂又は感光性エポキシ樹脂若しくは感光性アクリル樹脂である請求項5の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、磁気ディスク装置などに用いられる磁気ヘッド・サスペンション組立体の製造法に関する。更に具体的に云えば、本発明は、磁気ヘッド素子とリード・ライトアンプ部基板との接続の為の配線部材とサスペンションが一体に形成された回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法に関する。 【0002】 【従来技術とその問題点】 この種の磁気ディスク装置は、情報を磁気的に記録する為の少なくとも一枚の回転式ディスクと、このディスク上の各トラックに対するデータの読み取り又は書き込みを行う為の磁気ヘッド素子と、このヘッド素子に接続されて該ヘッド素子を所望のトラック位置に移動させると共にこのヘッド素子をそのトラック上方に維持する為のヘッド位置決めアクチュエーターとを具備する。 【0003】 従来の磁気ヘッド・サスペンション組立体の一例としては特開昭63-113917号公報に開示されている。この技術に於いて、磁気ヘッド素子はエポキシ樹脂等によってフレキシャに取付けられており、このフレキシャはロードビームにレーザー溶接等の手段で設けられている。そして、磁気ヘッド素子上に形成された電極にはウレタン被覆等を施した金メッキ銅線などが超音波接合や半田等で接続されて信号の外部回路への引出し配線部を構成している。更に、この配線部材は、所定の回数ターンさせられて可撓性絶縁樹脂チューブに納められ、サスペンションの一部をかしめる等の手段によりこのサスペンション上に取付けられている。 【0004】 このような磁気ヘッド・サスペンション組立体に於いては、磁気ヘッド素子上の電極と引出し配線との接続が作業性の制約から極めて非能率的であって生産性を向上させることは困難である。そして、近年に於ける磁気ヘッド素子の小型化とMR素子化による端子数の増加は、この問題を更に困難なものにしている。また、引出し配線部材の持つ剛性が磁気ヘッド素子の浮上に影響を与えて最適な浮上姿勢が得られないなどの問題もある。更に、この引出し配線部材が記録媒体の回転が引き起こす空気の流れによりその風圧を受け、磁気ヘッド素子の浮上姿勢に悪影響を与える等の問題がある。 【0005】 このような問題に対して、特開昭53-74414号公報の技術では、引出し配線部材とサスペンション機構を兼ねた可撓性回路基板を磁気ヘッド素子の支持機構として用いることを開示している。しかし、この技術ではサスペンション機構に本来的に求められる事項である磁気ヘッド素子の正確な位置決め、適正な荷重の付与や適正な浮上姿勢の確保という点では問題が多く、近年の高密度化した磁気ディスク装置に於いては採用することが困難である。 【0006】 そこで、一般に上記従来の引出し配線に関する問題に対しては、可撓性回路基板を用いて一括的に配線し、サスペンションバネに粘着剤等で貼着する手法を考えることができる。しかし、シーク動作の高速化等に伴い、サーボ系の機械要素としての機能を考えた場合、構成部材としてはより軽量化が求められるのに対して、別体に構成した可撓性回路基板とサスペンションバネとを貼り合わせる手法は、作業性の観点から軽量化を犠牲にしなければならないという問題がある。 【0007】 従って、引出し配線部材とサスペンションとを一体に構成することによって、引出し配線部材の磁気ヘッド浮上姿勢に与える影響を減少させると共に、磁気ヘッド素子の実装を容易に行えるような構造が要望される。 【0008】 【発明の目的及び構成】 本発明は、磁気ヘッド装置に於ける引出し配線部材とサスペンションとを一体に構成することが可能な回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法を提供するものである。 【0009】 その為に本発明では、可撓性絶縁ベース材の一方面に導電層を有すると共にその他方面にバネ性金属層を有する積層板を用意し、この積層板の前記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状のメタルマスクを形成した後、露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材をエキシマレーザー光の照射法又は樹脂エッチング手法で除去し、次いで前記メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程が採用される。 【0010】 ここで、上記積層板の可撓性絶縁ベース材としては、可溶性ポリイミド樹脂又はポリアミック酸などのポリイミド前駆体等からなる非感光性ポリイミド樹脂で構成するか、或いは感光性ポリイミド樹脂又は感光性エポキシ樹脂若しくは感光性アクリル樹脂等からなる感光性絶縁樹脂で構成することもできる。 【0011】 可撓性絶縁ベース材として上記のような材料を採用する場合には、上記の如きメタルマスクの形成工程後に、絶縁ベース材の除去手段としてエキシマレーザー光によるアブレーション除去処理やヒドラジン等の危険な薬液樹脂エッチング除去処理による加工を採用することなく、比較的穏やかな薬液による除去処理とキュアー工程により容易に所要の絶縁ベース材形状に形成することができる。 【0012】 このような絶縁ベース材形状の形成工程後には、上記と同様に、メタルマスクにフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターンを形成し、この回路配線パターンの表面に感光性絶縁樹脂を用いたフォトファブリケーション手法によって表面保護層を形成した後、前記バネ性金属層に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工とを施して所望の形状のサスペンションを形成する各工程を採用することができる。 【0013】 【実施例】 図1及び図2は、本発明による製造法を採用して構成された回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの概念的な斜視図である。両図に示す磁気ヘッド用サスペンションでは、磁気ヘッド素子とリード・ライトアンプ部基板との接続の為の配線部材とサスペンションが一体的に形成されている。 【0014】 図1に示す回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの構造では、全ての可撓性絶縁ベース材とこの絶縁ベース材上に形成されて表面保護層4で被覆された回路配線パターン3が、バネ性金属で形成されたサスペンション1上に形成されている。 【0015】 また、図2に示す回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの構造では、バネ性金属で形成されたサスペンション1の上面及びその外部に向かって伸長部9で伸長する可撓性絶縁べース材と、この絶縁ベース材上に形成されて表面保護層4で被覆された回路配線パターン3とを有し、伸長部9に形成された回路配線パターン3は端子7Aを有する引出しパターン部を形成している。 【0016】 これらの両図の構造に於いて、磁気ヘッド素子に対する接続端子部としては、表面保護層4の所定の部位に孔を形成して回路配線パターン3の一部が露出されており、その露出部には半田又は金等の表面処理層を形成して接続端子8が形成されている。なお、図1の構造ではサスペンション1の端部に同様な手段で形成された外部接続用の端子7を有する。 【0017】 図3は、図1及び図2のA-A線に沿った概念的な断面構成図である。図3に於いて、1はステンレス等のバネ性金属で形成されたサスペンションを示し、このサスペンション1の所定の表面には、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂等からなる可撓性絶縁ベース材2が必要な幅で被着形成されている。この可撓性絶縁ベース材2の表面上の所定の位置には所望の回路配線パターン3を形成してあり、更にその回路配線パターン3の表面には感光性絶縁樹脂等によって表面保護層4を形成してある。 【0018】 図4の(1)〜(5)は回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションを製作する為の本発明の一実施例による製造工程図であって、この製造工程図は図3と同様に図1及び図2のA-A線に沿った位置を図示している。 【0019】 図4(1)に於いて、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂等からなる可撓性絶縁ベース材2の一方面にはサスペンションを形成する為のステンレス等のバネ性金属層5を有すると共に、その他方面には銅箔等の導電層を有する積層板を用意する。そして、エキシマレーザー光の遮光の為に、上記導電層に対してフォトエッチング処理を施して所要のベース部材形状に合致したメタルマスク6を形成する。ここで、上記積層板はその構成部材間に接着剤の無い無接着剤型積層板を使用するのが柔軟性の点で好ましいが、エキシマレーザーを用いて加工する場合であれば接着剤で各層を積層した積層板を用いることも可能である。以下は無接着剤型積層板を使用した場合の工程を説明する。 【0020】 次に、同図(2)に示すように、メタルマスク6の側からエキシマレーザー光Aを照射することによって、露出している絶縁ベース材2の領域をアブレーション除去する。露出している絶縁ベース材2の除去加工は、このようなエキシマレーザー光による手段の他、メタルマスク6をエッチング用マスクとして用いることにより、ヒドラジン等の強アルカリ薬液による樹脂エッチング手段で行うことも可能である。 【0021】 そこで、同図(3)のように、メタルマスク6にフォトエッチング処理を施して所要の回路配線パターン3を形成した後、同図(4)の如く回路配線パターン3に対する感光性絶縁樹脂の塗布、露光、現像及びキュアー処理等の一連の工程を施して表面保護層4を形成する。 【0022】 最後に、同図(5)の如く、バネ性金属層5に対してフォトエッチング処理と所定の曲げ成形加工を施してサスペンション1を形成することにより、回路配線を一体的に形成した磁気ヘッド用サスペンションを得ることができる。 【0023】 図5の(1)〜(5)は本発明の他の実施例による上記同様な製造工程図である。この実施例の場合には、先ず可溶性ポリイミド樹脂又はポリアミック酸などのポリイミド前駆体等からなる非感光性ポリイミド樹脂を可撓性絶縁ベース材2として使用し、このような非感光性ポリイミド樹脂からなる可撓性絶縁ベース材2の一方面にはサスペンションを形成する為のステンレス等のバネ性金属層5を有すると共に、その他方面には銅箔等の導電層を有する積層板を用意する。 【0024】 ここで、このような積層板を得る方法としては、バネ性金属層か導電層の一方面に上記非感光性ポリイミド樹脂を被着形成した後、他方の金属層を積層し、次いでプリキュアー処理を施して積層板を形成するか、或いはプリキュアー処理後に他方の金属層を積層して積層板を得ることができる。また、他の方法としてはバネ性金属層の一方面及び導電層の一方面に各々上記非感光性ポリイミド樹脂を被着形成した後、プリキュアー処理を施して積層するか、或いは積層後にプリキュアー処理を施して積層板を構成することが可能である。 【0025】 このような手法により形成された積層板の導電層に対しては、図5(1)のように、フォトエッチング処理を施して所要の絶縁ベース部材形状に合致したメタルマスク6を形成する。そこで、同図(2)の如く、メタルマスク6をレジスト層として作用させながら露出している絶縁ベース材2の領域をその絶縁性樹脂に適した現像液を用いて除去加工した後、キュアー処理して図4(2)に示したものと同様の構成を得ることができる。 【0026】 以後、図4の(3)〜(5)の工程と同様に、回路配線パターン3を形成する工程、表面保護層4の形成工程及びサスペンション1の形成工程を図5の(3)〜(5)の如く順次行うことにより、上記実施例と同様に回路配線を一体的に形成した磁気ヘッド用サスペンションを製作することができる。 【0027】 ここで、図5の(1)〜(2)の工程は他の手法を採用することができる。この手法の場合には、可撓性絶縁ベース材2として感光性ポリイミド樹脂又は感光性エポキシ樹脂若しくは感光性アクリル樹脂等からなる感光性絶縁樹脂を使用するものである。 【0028】 このような感光性絶縁樹脂からなる可撓性絶縁ベース材2の一方面には上記と同様にサスペンションを形成する為のステンレス等のバネ性金属層5を有すると共に、その他方面には銅箔等の導電層を有する積層板を用意する。この積層板を得る方法としては、上記実施例に関して説明した場合と同様な手法を採用することができる。 【0029】 そこで、この手法により形成された積層板の導電層に対しては、図5(1)の如く、フォトエッチング処理を施して所要の絶縁ベース部材形状に合致したメタルマスク6を形成する。次いで、同図(2)の如く、メタルマスク6をレジスト層として作用させながら露出している絶縁ベース材2の領域を露光及び現像処理で除去加工した後、キュアー処理すると図4(2)に示したものと同様の構成を得ることができる。 【0030】 以下、上記工程と同様に、回路配線パターン3を形成する工程、表面保護層4の形成工程及びサスペンション1の形成工程を図5の(3)〜(5)の如く順次行うことにより、上記実施例と同様に回路配線を一体的に形成した磁気ヘッド用サスペンションを製作できる。 【0031】 【発明の効果】 本発明に従った回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法では、所要の回路配線とサスペンションとを一体に構成できるので、従来の如く別体に構成した可撓性回路基板とサスペンションを貼り合わせる必要はなく、従って作業性の観点から軽量化を犠牲にしなければならないという問題を解消できる。 【0032】 また、回路配線パターンを形成する為の導電層に対して最初のエッチング処理によりレーザー遮光の為又は樹脂エッチングの為のメタルマスクを形成できるので、別体の遮光用マスクやレジスト層を形成する工程は不要である。 【0033】 更に、積層板の可撓性絶縁ベース材を非感光性ポリイミド樹脂又は感光性絶縁樹脂で構成する場合には、ヒドラジン等の危険な薬液を使用することなく、穏やかな薬品を用いて所要の絶縁ベース材形状に形成することができる。 【0034】 このように、本発明の製造法によれば、サスペンションに本来的に求められる磁気ヘッド素子の正確な位置決め、適正な荷重の付与及び適正な浮上姿勢の確保等の機能を確保させながら、作業性の向上及び軽量化を実現できる回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションを安定的に提供できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の製造法により構成された回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの概念的な斜視図。 【図2】 同じく他の例による回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの概念的な斜視図。 【図3】 図1及び図2のA-A線に沿った概念的な断面構成図。 【図4】 (1)〜(5)は回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションを製作する為の本発明の一実施例による製造工程図。 【図5】 (1)〜(5)は本発明の他の実施例による製造工程図。 【符号の説明】 1 サスペンション 2 絶縁ベース材 3 回路配線パターン 4 表面保護層 5 バネ性金属層 6 メタルマスク A エキシマレーザー光 |
訂正の要旨 |
特許第2855254号発明の明細書中 a.特許請求の範囲の請求項2 「露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去する手段が、エキシマレーザ光の照射法又は樹脂エッチング手法或いはプラズマエッチング法により行われる請求項1の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、 「露出した部位の前記可撓性絶縁ベース材を除去する手段が、エキシマレーザ光の照射法又は樹脂エッチング手法により行われる請求項1の回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペンションの製造法。」 と訂正し、 b.発明の詳細な説明の記載の特許掲載公報第3頁右欄第44行の記載「樹脂エッチング」の次に加入した「やプラズマエッチング手段」を、不明瞭な記載の釈明を目的として削除する。 |
異議決定日 | 1999-12-17 |
出願番号 | 特願平6-186457 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(G11B)
P 1 651・ 561- YA (G11B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 竹中 辰利 |
特許庁審判長 |
麻野 耕一 |
特許庁審判官 |
田良島 潔 岡本 利郎 |
登録日 | 1998-11-27 |
登録番号 | 特許第2855254号(P2855254) |
権利者 | 日本メクトロン株式会社 |
発明の名称 | 回路配線を備えた磁気ヘッド用サスペションの製造法 |
代理人 | 鎌田 秋光 |
代理人 | 鎌田 秋光 |