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審決分類 審判 全部申し立て 特39条先願  A01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
管理番号 1012642
異議申立番号 異議1999-72648  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-13 
確定日 2000-03-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第2845396号「田植機の苗植装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2845396号の特許を維持する。 
理由 一、手続の経緯
本件特許第2845396号に係る発明についての出願は、昭和59年4月18日に出願された特願昭59-77873号出願の一部を分割して、特願昭63-321320号として昭和63年12月19日に新たな特許出願としたものの一部を、さらに分割して、特願平8-304533号として出願されたものであり、平成10年10月30日にその発明について特許の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議申立人山本進(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされたものである。
二、本件発明の要旨
本件の発明の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「1.機体のうち苗載台の近い部分から略水平横向きに突出する回転軸に、中空状の回転ケースを取付け、該回転ケースの外周部に複数個の植付け軸を前記回転軸と平行に軸支して、この各植付け軸の一端を、前記回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体とは反対側の側面板を貫通して前記機体と反対の方向に突出して、前記貫通部分において軸受け部にて軸支する一方、その突出端に、苗分割爪を備えた植付け体を、その苗分割爪が苗載台側に向かう姿勢で装着して成る苗植装置において、前記回転ケースの回転軸への取付けを、回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体と反対側の側面板に設けた取付け用ボスを回転軸に被嵌することで行うように構成する一方、前記回転ケース内の中心位置に、太陽歯車を、当該太陽歯車を前記回転軸を貫通するように配設して、この太陽歯車を、前記機体に対して回転不能に係止し、更に、前記回転ケース内に、前記各植付け軸と前記回転軸との略中間の部位に、中間軸を前記回転軸と平行に軸支して、この各中間軸上に、前記太陽歯車に対して噛合する第1中間歯車と、この第1中間歯車と一体的に回転する第2中間歯車とを設け、この第2中間歯車を、前記各植付け軸における連動歯車に噛合する一方、前記太陽歯車と第1中間歯車とから成る第1歯車列、及び前記第2中間歯車と連動歯車とから成る第2歯車列のうち第2歯車列における第2中間歯車と連動歯車とを、前記第1歯車列における太陽歯車及び第1中間歯車の左右両側のうち前記機体とは反対側の部分に、その連動歯車が前記軸受け部に近接するように配設したことを特徴とする田植機の苗植装置。」(以下、「本件発明」という。)
三、特許異議申立て
(1)申立ての理由の概要
申立人は、下記の証拠方法を提示して、次の理由により、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨を主張している。
異議理由1:本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物である下記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
異議理由2:本件発明は、本件発明に係る特許出願と同一出願日の特許出願に係る甲第3号証の発明と同一であるから、本件特許は特許法第39条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:実公昭56-21212号公報
甲第2号証:特公昭40-11326号公報
甲第3号証:特公平7-121174号公報
甲第4号証:特公昭48-6848号公報
甲第4号証の2:特公昭49-17806号公報
甲第4号証の3:特公昭49-17807号公報
甲第4号証の4:特公昭49-17808号公報
甲第4号証の5:特公昭49-31773号公報
甲第4号証の6:特公昭49-35528号公報
甲第5号証:特開平1-199511号公報
甲第6号証:特開昭60-221008号公報
(2)異議理由1について
1.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、田植機の植付爪駆動装置に関して、次の事項が記載されている。
「閉ループ曲線を描いて苗を植付ける植付爪をもつ爪軸がローター軸を中心として回転するローターケースに軸架され、かつローター軸のサンギアからアイルギアを介して駆動される爪軸に嵌装されたアウターギアのストツパーと係脱自在な爪力ムを前記爪軸に一体的に設けると共に、該爪カムと前記アウターギアとの間に戻しバネを設けて常時爪カムとアウターギアのストッパーとを係合せしめるように構成し、更に植付爪が爪軸を中心とする円形軌跡から離れてローター軸を中心とする後方に向う大きな円弧からなるなめらかな曲線を描いて下降するように苗載台上の苗を植付爪で取出して土中へ植える下降工程の最下点まで前後爪力ムとアウターギアのストッパーとの係合を外ずして爪軸を停止せしめる爪カムの突起と係脱自在なカムストッパーをローターケースに摺動自在に設け、このカムストツパーを前記爪カムの突起と係脱ならしめるためにカムストツパーを前進後退せしめるスプリングを力ムストツパーに設けると共にカムストツパーに当接自在なカムをサンギアに固定し、前記下降工程の最下点からカムストツパーがそのスプリングによつて後退して爪軸の爪カムから外ずれて植付爪が上昇工程の途中まで前方に向う小さな円弧状の曲線を描き爪軸を中心とする円形軌跡との接続点において急激な軌跡の変化が行なわれるように爪軸の爪カムとアウターギアのストツパーとが再び爪軸の停止中に蓄勢された戻しバネで時間をおいて係合するように構成された田植機の植付爪駆動装置。」(実用新案登録請求の範囲)、及び
「図示のものはロータリー式田植機の閉ループ曲線を描く植付爪であつて、1は田植機のケーシング2に回転自在に軸架されたローター軸、3はローター軸1にその中心部が取付けられたローターケースである。4はケーシング2に固定されたサンギアであって、ローターケース内にありローターケース3に軸架されたアイドルギア5を介してローターケース3に同様に軸架された爪軸6のアウターギア7を駆動する。爪軸6はローターケース3に対して左右対称的に設けられており、それぞれの爪軸6に植付爪8,8が取付けられている。サンギア4にはアム9が固定されており、このカム突起9’に従動するカムストッパー10がローターケース3に摺動自在に取付けられ、そのカムスプリング11によって常時カム9に当接するようになっている。12は爪軸6に取付けられた爪軸6と一体的に回転するローターケース3内の爪カムであって、これとアウターギア7との間に戻しバネ13が取付けられている。そしてこの戻しバネ13によって爪カム12のカム突起12’がアウターギア7のストッパー14に常時当接するようになっており、これによって爪軸6がアウターギア7で駆動される。」(2欄29行〜3欄16行)。
2.対比
甲第1号証に記載の発明の「ケーシング2」「ローター軸1」「ローターケース3」「爪軸6」「植付爪8」「サンギア4」「アウターギア7」が、本件発明の「機体」「回転軸」「回転ケース」「植付け軸」「苗分割爪」「太陽歯車」「連動歯車」にそれぞれ対応するから、甲第1号証の明細書及び図面の記載からみて、甲第1号証には、「機体のうち苗載台の近い部分から略水平横向きに突出する回転軸に、中空状の回転ケースを取付け、該回転ケースの外周部に複数個の植付け軸を前記回転軸と平行に軸支して、この各植付け軸の一端を、前記回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体とは反対側の側面板を貫通して前記機体と反対の方向に突出して、前記貫通部分において軸受け部にて軸支する一方、その突出端に、苗分割爪を備えた植付け体を、その苗分割爪が苗載台側に向かう姿勢で装着して成る苗植付装置において、前記回転ケースの回転軸への取付けを、回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体と反対側の側面板に設けた取付け用ボスを回転軸に被嵌することで行うように構成する一方、前記回転ケース内の中心位置に、太陽歯車を、当該太陽歯車を前記回転軸を貫通するように配設して、この太陽歯車を、前記機体に対して回転不能に係止し、更に、前記回転ケース内に、前記各植付け軸と前記回転軸との略中間の部位に、中間軸を前記回転軸と平行に軸支して、この中間軸上に、前記太陽歯車に対して噛合する中間歯車を設け、この中間歯車を、前記各植付け軸における連動歯車に噛合する一方、前記中間歯車と前記連動歯車とを、前記機体とは反対側の部分に、その連動歯車が前記軸受け部に近接するように配設した田植機の苗植装置」が記載されていると認める。
ここで本件発明と甲第1号証に記載の発明を比較対比すると、両者は、「機体のうち苗載台の近い部分から略水平横向きに突出する回転軸に、中空状の回転ケースを取付け、該回転ケースの外周部に複数個の植付け軸を前記回転軸と平行に軸支して、この各植付け軸の一端を、前記回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体とは反対側の側面板を貫通して前記機体と反対の方向に突出して、前記貫通部分において軸受け部にて軸支する一方、その突出端に、苗分割爪を備えた植付け体を、その苗分割爪が苗載台側に向かう姿勢で装着して成る苗植装置において、前記回転ケースの回転軸への取付けを、回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体と反対側の側面板に設けた取付け用ボスを回転軸に被嵌することで行うように構成する一方、前記回転ケース内の中心位置に、太陽歯車を、当該太陽歯車を前記回転軸を貫通するように配設して、この太陽歯車を、前記機体に対して回転不能に係止し、更に、前記回転ケース内に、前記各植付け軸と前記回転軸との略中間の部位に、中間軸を前記回転軸と平行に軸支して、この中間軸上に、前記太陽歯車に対して噛合する中間歯車を設け、この中間歯車を、前記各植付け軸における連動歯車に噛合する一方、前記中間歯車と前記連動歯車とを、前記機体とは反対側の部分に、その連動歯車が前記軸受け部に近接するように配設した田植機の苗植装置」の点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点:本件発明が「前記回転ケース内の中心位置に、太陽歯車を、当該太陽歯車を前記回転軸を貫通するように配設して、この太陽歯車を、前記機体に対して回転不能に係止し、更に、前記回転ケース内に、前記各植付け軸と前記回転軸との略中間の部位に、中間軸を前記回転軸と平行に軸支して、この各中間軸上に、前記太陽歯車に対して噛合する第1中間歯車と、この第1中間歯車と一体的に回転する第2中間歯車とを設け、この第2中間歯車を、前記各植付け軸における連動歯車に噛合する一方、前記太陽歯車と第1中間歯車とから成る第1歯車列、及び前記第2中間歯車と連動歯車とから成る第2歯車列のうち第2歯車列における第2中間歯車と連動歯車とを、前記第1歯車列における太陽歯車及び第1中間歯車の左右両側のうち前記機体とは反対側の部分に、その連動歯車が前記軸受け部に近接するように配設した」ものであるのに対し、甲第1号証に記載の発明は「前記回転ケース内の中心位置に、太陽歯車を、当該太陽歯車を前記回転軸を貫通するように配設して、この太陽歯車を、前記機体に対して回転不能に係止し、更に、前記回転ケース内に、前記各植付け軸と前記回転軸との略中間の部位に、中間軸を前記回転軸と平行に軸支して、この中間軸上に、前記太陽歯車に対して噛合する中間歯車を設け、この中間歯車を、前記各植付け軸における連動歯車に噛合する一方、前記中間歯車と前記連動歯車とを、前記機体とは反対側の部分に、その連動歯車が前記軸受け部に近接するように配設した」点。
すなわち、本件発明では、「中間軸上に一体的に回転する2つの中間歯車が設けられていて、歯車列が、太陽歯車と第1中間歯車とから成る第1歯車列、及び第2中間歯車と連動歯車とから成る第2歯車列で構成され、かつ、該第2歯車列の第2中間歯車と連動歯車とを、前記第1歯車列の太陽歯車と第1中間歯車の機体とは反対側の部分に、その連動歯車が軸受け部に近接するように配設した」のに対して、甲第1号証に記載の発明では、「中間軸上に1つの中間歯車が設けられていて、歯車列が、太陽歯車と中間歯車と連動歯車とから成る歯車列で構成され、かつ、該歯車列の中間歯車と連動歯車とを、その連動歯車が軸受け部に近接するように配設した」点。
3.判断
上記相違点について検討する。
申立人の提示した甲第2号証には、刈取脱穀機の排藁小腕の駆動機構について、揺動運動する排藁腕28の先端に揺動可能に設けられた排藁小腕30内に軸架される中間軸上に2つの伝動歯車101,102が設けられ、歯車列が前記排藁腕28に固定された歯車100と前記伝動歯車101とからなる歯車列と、前記伝動歯車102と藁掴み軸31に設けられている歯車とからなる歯車列との2列の歯車列で構成され、伝動歯車102とこれに噛合する藁掴み軸31に設けられている歯車を排藁小腕30のうちの排藁腕28とは反対側の軸受け部に近接配置した構成が記載されている。そして、該刈取脱穀機の排藁小腕の駆動機構における歯車列の配置構成が、前記相違点の構成に類似した構成であるかのように思われる。
しかしながら、上記甲第2号証に記載の発明は「刈取脱穀機」に関するものであって、甲第1号証に記載の「田植機の植付爪駆動装置」に関する発明とはその技術分野が相違する。そして、甲第2号証に記載の発明の歯車回転機構が、揺動可能に設けられた排藁小腕30内に軸架される1個の中間軸上に設けられた伝動歯車101、102により1個の藁掴み軸31を回転駆動させるものであるのに対して、甲第1号証に記載の発明の歯車回転機構は、ローターケース3に対して左右対称的に設けられた2個の中間軸上に設けられたアイドルギア5により、左右対称的に設けられた2個の爪軸6に取り付けられている2個の植付爪8を回転駆動させるものであるから、甲第1号証及び甲第2号証にそれぞれ記載の歯車回転機構は著しく相違しており、甲第2号証に記載の歯車回転機構が、甲第1号証に記載の発明の歯車回転機構の構成の一部として転用可能な機構であるということはできない。さらに、前記甲第1号証及び甲第2号証には、本件発明の目的である「従来におけるロータリー式苗植装置では、中間歯車を、非回転の太陽歯車と、植付け軸上の遊星歯車との両方に対して同時に噛合するように構成しているから、前記中間歯車における各歯の磨耗が大きくて当該中間歯車の耐久性が低いという問題を、苗植付けの不安定化を招来することなく解消することを目的とする」という発明の課題が存在しない。
そうしてみると、甲第1号証及び甲第2号証の記載には、本件発明に対して起因ないし契機(動機付け)となり得るものに関する記載が認められないから、申立人が提示した甲第1号証及び甲第2号証のそれぞれは、本件発明に関する構成の一部が個々に記載されているにすぎないものである。
したがって、甲第2号証に本件発明の構成の一部に類似した構成が記載されているということのみを以て、甲第1号証と甲第2号証とを組み合わせることが当業者に容易であるということはできないので、甲第1号証に記載の発明に上記甲第2号証に記載の発明を適用することが、当業者に容易にできることではない。
そして、本件発明は、その特許請求の範囲に記載された発明の構成により、本件発明の特許明細書に記載された効果を奏するものである。
4.まとめ
したがって、本件発明は上記甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたもの、とすることができない。
(3)異議理由2について
1.甲第3号証の記載事項
甲第3号証の特許請求の範囲には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】機体のうち苗載台に近い部分から略水平横向きに突出する回転軸に、中空状の回転ケースを、当該回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体とは反対側の側面板に設けた取付け用ボス部を回転軸に被嵌することによって取付け、この回転ケースの外周部に、複数個の植付け軸を前記回転軸と平行に軸支して、この各植付け軸の一端を、前記回転ケースの側面より突出して、この突出端に、苗分割爪を備えた植付け体を、その苗分割爪が苗載台側に向かう姿勢で装着して成る苗植装置において、前記回転ケースを、前記回転ケース内には、中心位置に当該回転ケースに対して非回転の太陽歯車を配設すると共に、前記各植付け軸と前記回転軸との略中間の部位に、中間軸を前記回転軸と平行に軸支して、この各中間軸上に、前記太陽歯車に対して噛合する第1中間歯車と、この第1中間歯車と一体的に回転する第2中間歯車とを設け、この第2中間歯車を、前記各植付け軸における連動歯車に噛合する一方、前記中間軸を、前記回転軸から当該中間軸までの距離と、前記植付け軸から当該中間軸までの距離とが等しい位置に配設し、更に、前記第1歯車列及び第2歯車列のうち第2歯車列における第2中間歯車と連動歯車とを、前記第1歯車列における太陽歯車及び第1中間歯車の左右両側面のうち前記機体とは反対側の部分に、前記第2歯車列における第2中間歯車の相互間に空間部を形成するように配設して、前記空間部内に、前記回転ケースの回転軸に対する取付け用ボス部を配設したことを特徴とする田植機の苗植装置。」(以下、これを「同日出願発明」という。)
2.対比、判断
本件発明は、「二、本件発明の要旨」の項に前述したように、本件特許明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そこで、本件発明と甲第3号証の同日出願発明とを対比すると、本件発明には「この各植付け軸の一端を、前記回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体とは反対側の側面板を貫通して前記機体と反対の方向に突出して、前記貫通部分において軸受け部にて軸支する」構成及び「その連動歯車が前記軸受け部に近接するように配設した」構成が必須構成要件として記載されているのに対して、同日出願発明には、該構成が必須構成要件として記載されていない。
他方、同日出願発明には「前記中間軸を、前記回転軸から当該中間軸までの距離と、前記植付け軸から当該中間軸までの距離とが等しい位置に配設」する構成、「前記第2歯車列における第2中間歯車の相互間に空間部を形成する」構成及び「前記空間部内に、前記回転ケースの回転軸に対する取付け用ボス部を配設した」構成が必須構成要件として記載されているのに対して、本件発明には、該構成が必須構成要件として記載されていない。
而して、申立人が提示した他の証拠方法である甲第4号証ないし甲第6号証に記載された事項を参照すると、本件発明と同日出願発明との両者間の構成の相違点である「この各植付け軸の一端を、前記回転ケースにおける左右両側面板のうち前記機体とは反対側の側面板を貫通して前記機体と反対の方向に突出して、前記貫通部分において軸受け部にて軸支する」構成及び「前記中間軸を、前記回転軸から当該中間軸までの距離と、前記植付け軸から当該中間軸までの距離とが等しい位置に配設」する構成については、両者間に実質上の差異を認めることができない。しかしながら、前記甲第4号証ないし甲第6号証の記載事項を参酌しても、本件発明の「その連動歯車が前記軸受け部に近接するように配設した」構成、並びに、同日出願発明の「前記第2歯車列における第2中間歯車の相互間に空間部を形成する」構成及び「前記空間部内に、前記回転ケースの回転軸に対する取付け用ボス部を配設した」の構成については互いに記載されてなく、両者の構成が明らかに相違するから、両者の発明が互いに同一であるということはない。
3.まとめ
したがって、本件発明が甲第3号証の特許請求の範囲に記載された発明と同一である、とすることはできない。
四、むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-15 
出願番号 特願平8-304533
審決分類 P 1 651・ 4- Y (A01C)
P 1 651・ 121- Y (A01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森 正幸郡山 順中村 圭伸吉田 英一  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 新井 重雄
佐藤 昭喜
登録日 1998-10-30 
登録番号 特許第2845396号(P2845396)
権利者 ヤンマー農機株式会社
発明の名称 田植機の苗植装置  
代理人 北村 修一郎  

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