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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24C
管理番号 1013775
審判番号 審判1995-20259  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1995-09-21 
確定日 2000-03-10 
事件の表示 平成5年特許願第213649号「ガス調理器の安全装置」拒絶査定に対する審判事件(平成6年6月24日出願公開、特開平6-174235)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、昭和59年7月30日に出願された特願昭59-159636号の出願を、平成5年8月30日に特許法第44条第1項の規定により分割して新たな特許出願としたものであって、本件出願に係る発明の要旨は、補正(平成7年6月2日付け手続補正、平成7年10月20日付け手続補正、及び、平成9年7月7日付け手続補正)された明細書及び図面(本件出願の明細書及び図面という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の通りのものにあると認める。
「ガス供給路に連通した調理物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼を制御する燃焼制御手段と、前記調理物の温度を検出する温度センサからの信号に基づき、予め定められた制御シーケンスで前記バーナによる調理物への加熱量を制御する制御回路を有し、前記制御回路は前記制御シーケンスによる調理開始動作に連動して常に時間計測を開始し、前記制御シーケンスで調理する時間よりも長い予め定められた所定の時間経過すると前記バーナの燃焼を強制的に停止する信号を前記燃焼制御手段に出力する安全タイマを有する構成としたガス調理器の安全装置。」
なお、平成10年2月18日付けで提出された手続補正書に係る手続は、平成10年6月29日付け却下理由通知書に記載した理由により、平成10年10月16日付けで特許法第133条の2の規定によって却下され、また、平成11年6月25日付けでした補正は、平成11年8月31日付けの補正の却下の決定により却下され、確定したので、叙上の通りに認定した。
そして、本件出願の明細書の特許請求の範囲に記載された「予め定められた制御シーケンス」なる用語の意義は本件出願の明細書の発明の詳細な説明及び図面に明記されていないけれども、本件出願の明細書の特許請求の範囲の記載と第7、8、9,13段の記載並びに第3図のフロー図の記載を総合勘案すると、この「予め定められた制御シーケンス」は、制御回路によるバーナによる調理物への加熱量の制御手順であって、例えばコックスイッチのオン動作のような調理開始動作によって燃焼制御手段を開き、バーナを点火燃焼させた後、温度センサからの信号と設定温度信号を比較しながら燃焼制御手段の開度を調節してバーナの加熱量を制御するという一連の制御手順を意味するものと解され、この燃料制御手段は、実施例のコック2、安全弁3と制御弁6に相当するものと解される。
これに対して、当審において平成11年3月25日付けで通知した拒絶の理由の通知に引用した特開昭54-119137号公報(以下、第1引用例という。)には、「被加熱物の温度を検出するセンサと、温度設定手段と、前記設定値と前記センサからの温度信号とを比較し、電流量を増減する制御回路と、前記電流量に応じてガス量を比例制御する比例電磁弁を有し、被加熱物の温度を一定に保つ機能を有することを特徴とするガスコンロ。」が記載されており、この「ガスコンロ」に関して、上記第1引用例には、「第3図に示すように、ガス量制御手段として比例電磁弁11を用い、感温センサとして保護管8に収納された感温抵抗正特性素子(以下正特性サーミスタと呼ぶ)9を被加熱物中に挿入し、検出温度に応じて制御回路10が比例電磁弁11のコイル電流を可変し、ガス量を比例制御して温度を一定に保たせるものである。第4図はその斜視図である。13がガスコンロの外体であり、センサ接続端子14が取り付けられている。16はガスコック4を開くつまみであり、15は温度設定目盛である。本体内部17に制御回路が収納されている。なお、第3,4図において、第1,2図と同一部分には同一符号を符し説明は省略した。」(第2頁右上欄第15行〜左下欄第8行)こと、「第1図において、4がガスコック、3がガスバーナであり、ガスコックと連動した点火器(図示せず)によってガスに着火し、鍋1内の被加熱物2を加熱調理する。」(第1頁右下欄第13〜16行)こと、「コイル30に電流が流れていない時には板バネ19,21は常に弁28を弁座23に押圧すると同時に、プランジヤ29が左右に振れてボビン31に接するのを防いでいる。コイル30に電流が流れると電磁力が発生してプランジャ29,33を上に引き上げる力が働く。この力が板バネ19,21の力に打ち勝つと、プランジャ29,33は引き上げられて弁28が弁座23から離れ、電磁力と板バネ19,21の力とがつり合った所で静止する。弁28の開度はコイル30に流れる電流に比例する。」(第2頁右下欄第3〜13行)こと、「第7図は温度制御回路10の一実施例を示す。9は正特性サーミスタであり、抵抗35,39によって直線性補正されて、演算増幅器38の入力抵抗として接がる。演算増幅器38の正入力端子には第6図において、設定された目標温度値に対応する基準電圧Es(T)が印加される。」(第2頁右下欄第14〜20行)こと、及び、「34はガスコックと連動して人切するスイッチである。」(第3頁右上欄第2〜3行)ことが記載されている。
そして、上記第1引用例の第7図には、「制御回路図」が記載されており、この第7図の記載に上記の第1引用例の記載を総合してみると、上記第1引用例に記載された「ガスコンロ」は、ガスコック4と連動するスイッチ34のオン動作によって比例電磁弁11を開き、ガスバーナ3を点火燃焼させた後、正特性サーミスタ9からの温度信号と設定された目標温度値に対応する基準電圧Es(T)を比較しながら比例電磁弁11の開度を調節してガスバーナ3の加熱量を制御するという一連の制御手順を行っていることが窺える。
また、当審において平成11年3月25日付けで通知した拒絶の理由の通知に引用した特開昭58-34280号公報(以下、第2引用例という。)には、「電気的手段によってガスの通路を開閉する開閉器と、この開閉器の動作時間を規制するタイマーと、前記開閉器およびタイマーへの通電を開閉するスイッチと、ガス配管との接続パイプを少くとも具え、前記スイッチを閉じることにより前記開閉器を開くと同時に前記タイマーを動作させ、前記タイマーに設定された時間が経過した後に前記開閉器を閉じるように構成してなることを特徴とするガス開閉器。」が記載されており、この「ガス開閉器」に関して、上記第2引用例には、「第1図(a)、(b)は本発明のガス開閉器の平面図と正面図を示したものであり、図において、1,2はガスの通路を開閉する電磁弁4を動作状態(オン)、または非動作状態(オフ)とするためのスイッチである。3はタイマーで、電磁弁4をオンした後、タイマーに設定された時間経過後電磁弁4をオフし、ガスの通路をしゃ断する機能を有している。5は電磁弁4とガス配管とを接続するためのパイプ、6はパイプ5とガス配管とを接続するためのナットである。7は一般ガス器具に接続するためのゴムホースと接続できるように加工したノズル、8は電源コードである。」(第1頁右下欄第17行〜第2頁左上欄第8行)こと、及び、「電源コード8を電源に差し込み、タイマー3を各家庭のガス使用時間に合わせて設定する。次にスイッチ1を押すことにより、第2図からわかるように、スイッチ2を通じて通電され、電磁弁4及びタイマー3が作動する。その結果、電磁弁4が開いてガスが流れ始めると同時にスイッチ10が閉じ、スイッチ1のオン状態を自己保持する。ガスの使用が終われば、スイッチ2を押すことにより電磁弁4及びタイマー3がオフされる。その結果、電磁弁4が閉じ、ガスの通路をしゃ断すると同時に、タイマー3はもとの設定状態に復帰する。万一ガスをしゃ断するのを忘れた場合においては、タイマー3の働きにより、設定時間が経過するとスイッチ10が開いて電磁弁4をオフし、ガスの通路がしゃ断されるようになっている。また、電磁弁のオフと同時にタイマーもオフ状態になるため、元の設定状態に復帰する。」(第2頁左上欄第19行〜右上欄第16行)ことが記載されている。
そこで、本件出願の明細書の特許請求の範囲に記載されたもの(前者)と上記第1引用例に記載されたもの(後者)とを対比する。
上記第1引用例の記載からみて、後者の「ガスコンロ」はガス調理器具の一種であり、また、後者の「ガスバーナ3」、及び、「被加熱物の温度を検出するセンサである正特性サーミスタ9」は、それぞれ、ガス供給路に連通した調理物を加熱するバーナ、及び、調理物の温度を検出する温度センサに当たるものである。
そして、上記第1引用例の記載からみて、後者は、ガスコック4と連動するスイッチ34のオン動作によって比例電磁弁11を開き、ガスバーナ3を点火燃焼させた後、正特性サーミスタ9からの温度信号と設定された目標温度値に対応する基準電圧Es(T)を比較しながら比例電磁弁11の開度を調節してガスバーナ3の加熱量を制御するという一連の制御手順を行うガスコンロであると言うことができるから、後者の「ガスコック4」と「電流量に応じてガス量を比例制御する比例電磁弁11」は、予め定められた制御シーケンスでバーナの燃焼を制御する燃焼制御手段に当たるものであり、また、後者の「比例電磁弁11に流れる電流量を増減する制御回路10」は、調理開始動作によって燃焼制御手段を開き、バーナを点火燃焼させた後、温度センサからの信号と設定温度信号を比較しながら燃焼制御手段の開度を調節してバーナの加熱量を制御するという予め定められた制御シーケンスでバーナによる調理物への加熱量を制御する制御回路である。
そうすると、前者と後者は、ガス供給路に連通した調理物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼を制御する燃焼制御手段と、前記調理物の温度を検出する温度センサからの信号に基づき、予め定められた制御シーケンスで前記バーナによる調理物への加熱量を制御する制御回路を有するガス調理器である点において一致し、前者の制御回路は予め定められた制御シーケンスによる調理開始動作に連動して常に時間計測を開始し、前記制御シーケンスで調理する時間よりも長い予め定められた所定の時間経過するとバーナの燃焼を強制的に停止する信号を燃焼制御手段に出力する安全タイマを有する構成としているのに対して、後者の制御回路は予め定められた制御シーケンスによる調理開始動作に連動して常に時間計測を開始し、前記制御シーケンス調理する時間よりも長い予め定められた所定の時間経過するとバーナの燃焼を強制的に停止する信号を燃焼制御手段に出力する安全タイマを有していない点において両者は相違している。
よって、上記相違点について検討する。
本件出願の明細書の記載からみて、前者の制御回路が、予め定められた制御シーケンスによる調理開始動作に連動して常に時間計測を開始し、前記制御シーケンスで調理する時間よりも長い予め定められた所定の時間経過するとバーナの燃焼を強制的に停止する信号を燃焼制御手段に出力する安全タイマを有する構成としているのは、これにより、「調理シーケンスの途中や終了時に、調理物を取り除いた時に誤ってバーナの停止を忘れた時に、自動的にバーナの燃焼を停止し火災等の危険を未然に防ぐという作用」(第6段)を発揮させて、「調理物を取除いても、制御シーケンスで調理する時間よりも長い予め定められた所定時間経過すれば強制的にバーナの燃焼を停止し、安全性の高いガス調理器を提供する」(第4段)と言う本発明の目的を達成しようとするためであり、また、「使用者が使用の度にタイマ設定する煩雑さがなく、また調理時に使用者が安全タイマを気にする必要がなく通常の調理操作と何等変わらない」(第13段)と言う効果を奏することができるようにするためであると解することができる。
しかしながら、ガスコンロ等のガス調理器具にタイマーにより作動する電磁弁を設けた安全装置を有し、ガス使用中に急用等でその場を離れる時にタイマーをセットし一定の留守番時間経過後自動的にガスを遮断して火災・ガス漏れ等の災害を防止したり、調理時間経過後一定時間が過ぎた時タイマーで電磁弁を閉じるようにするようなことは、この出願前より良く行われていることである(この点、必要ならば、例えば、実願昭57-153822号(実開昭59-59921号公報)のマイクロフィルム、実願昭56-45087号(実開昭57-160561号公報)のマイクロフィルム等、参照)。
しかも、上記第2引用例の記載からみて、上記第2引用例には、家庭用一般ガス器具に接続する電磁弁を具えたガス開閉器であって、そのガス開閉器の制御回路はこのガス開閉器の動作時間を規制するタイマーとガス開閉器およびタイマーへの通電を開閉するスイッチを有し、前記スイッチを押して電磁弁及びタイマーをオンにし、電磁弁を開いてガスを流し始め、ガスの使用が終われば、前記スイッチを押して電磁弁及びタイマーをオフにし、ガスの通路を遮断すると同時にタイマーを元の設定状態に復帰し、万一ガスを遮断するのを忘れた場合においては、タイマーの働きにより設定時間が経過するとスイッチが開いて電磁弁をオフにし、ガスの通路を遮断すると同時にタイマーを元の設定状態に復帰ようにしたガス開閉器が示されていると言うことができる。
そして、上記第2引用例の記載からみて、このガス開閉器の動作時間を規制するタイマーはスイッチを押して電磁弁をオンとすると同時に時間計測を開始するものであると解することができるし、また、このタイマーの設定時間はガス器具の使用時間よりも長い予め定められた所定の時間であると解することができる。
そうすると、上記第2引用例に示されたものに基づいて、後者のガスコック及びこのガスコックと連動するスイッチ34を上記第2引用例に示されたものの電磁弁及びこの電磁弁の制御回路にかえて、後者の制御回路を、予め定められた制御シーケンスによる調理開始動作に連動して常に時間計測を開始し、前記制御シーケンス調理する時間よりも長い予め定められた所定の時間経過するとバーナの燃焼を強制的に停止する信号を燃焼制御手段に出力する安全タイマを有する構成とするようなことは、当業者が格別の困難もなく容易にできる程度の変更と認められる。
従って、本件出願の明細書の特許請求の範囲に係る発明は、上記第1引用例に記載されたもの、及び、上記第2引用例に記載され得たものに基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-12-14 
結審通知日 2000-01-04 
審決日 2000-01-25 
出願番号 特願平5-213649
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蓮井 雅之  
特許庁審判長 寺尾 俊
特許庁審判官 歌門 恵
岡田 弘規
発明の名称 ガス調理器の安全装置  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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