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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない E04D |
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管理番号 | 1013856 |
審判番号 | 審判1999-35163 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-02-18 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-04-12 |
確定日 | 2000-03-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1972905号発明「建築用金属面板」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第1972905号は、平成1年7月3日に特許出願され、平成7年9月27日に説定登録されたものである。 その後、平成11年4月12日に請求人有限会社アキバより本件特許を無効とする旨の審決を求める審判請求書が、平成11年8月12日に被請求人より審判事件答弁書及び訂正請求書が、平成11年11月8日に請求人より審判事件弁駁書が提出されたものである。 第2 請求人の主張の概要 請求人は、甲第5号証を示し、本件特許の請求項1乃至3に係る発明は請求人の事業に関連する技術であるから請求人適格を有する旨、また、本件特許の請求項1乃至3に係る発明又は上記訂正請求書に添付した明細書に記載された特許請求の範囲の請求項1乃至3に係る発明は、証拠として提出した甲第1号証乃至甲第4号証に記載されたものを組み合わせることにより、当業者が容易になし得た程度のものであるから、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり無効とされるべきである旨主張する。 第3 審判被請求人の主張の概要 被請求人は、請求人適格を争うとともに、前記訂正請求書に基づいて、訂正後の発明は甲第1号証乃至甲第4号証に記載されていない金属面板部材の構成と裏当て部材の構成を備えることにより、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された各発明からは予測できない効果を奏するものであり、進歩性を有するので本件審判請求は成り立たない旨主張する。 第4 請求人適格について 被請求人は、請求人の請求人適格を争うが、請求人は上記審判事件弁駁書において、甲第5号証として請求人の登記簿抄本を提出した。 それによれば、目的の欄には、「1 土木、建築工事の設計、請負及び施工」と記載されており、本件特許に係る発明のような建材を使用した設計や施工についての事業が含まれると考えられることから、請求人は、本件特許について無効審判を請求する請求人適格を有すると認められる。 第5 訂正事項及び訂正の適否について 1 平成11年8月12日に提出された訂正請求書により訂正請求(以下、本件訂正請求という。)した事項は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の減縮を目的として、「特許請求の範囲」の 「【請求項1】長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材において、前記金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、前記面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設け、前記各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して、前記裏当て部材を連続的に貼着したことを特徴とする建築用金属面板。 【請求項2】金属面板部材と裏当て部材とが、それぞれに異なる比重の材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築用金属面板。 【請求項3】金属面板部材での各面板凹部および面板凸部からなる面板部の幅に対して、裏当て部材の幅をほゞ1/2程度にしたことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の建築用金属面板。」 を、 「【請求項1】長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材において、前記金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、前記面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設け、前記各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して、前記裏当て部材を前記面板凹部および面板凸部の裏面に連続的に貼着したことを特徴とする建築用金属面板。 【請求項2】金属面板部材と裏当て部材とが、それぞれに異なる比重の材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築用金属面板。 【請求項3】金属面板部材での各面板凹部および面板凸部からなる面板部の幅に対して、裏当て部材の幅をほゞ1/2程度にしたことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の建築用金属面板。」と訂正する。 (2)訂正事項2 明瞭でない記載の釈明を目的として、「発明の詳細な説明」に関し、 (ア)明細書6頁8行(特許公報4欄14行)、同6頁20行(同4欄25行)及び同15頁1行(同7欄24行)に記載された「施して面」を、「施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面」と訂正する。 (イ)同6頁16行(同4欄21行)、同7頁8行(同4欄32行)及び同15頁9行(同8欄5行)に記載された「部材を連続的に貼着した」を、「部材を前期面板凹部および面板凸部の裏面に連続的に貼着した」と訂正する。 2 以下、本件訂正請求の適否について検討する。 2-1 訂正の目的等について 訂正事項(1)は、特許請求の範囲における面板部の構成を「面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部」から「自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部」とし、裏当て部材に関し、「裏当て部材を連続的に貼着した」を、「裏当て部材を前記面板凹部および面板凸部の裏面に連続的に貼着した」と訂正しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項(1)は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 訂正事項(2)は、発明の詳細な説明における記載をいずれも特許請求の範囲の記載に合わせるように訂正しようとするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 2-2 独立特許要件について 次に、訂正後の特許請求の範囲1乃至3に記載された発明(以下、本件訂正発明1乃至3という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か検討する。 請求人は本件特許の出願前に公知となった刊行物として甲第1号証乃至甲第4号証を提示しているが、甲第2号証は、平成1年10月24日発行の意匠公報であって、本件特許の出願前に公知となった刊行物ではないので、証拠として採用できない。 (1)先行技術文献の記載事項の認定 (ア)刊行物1:実願昭50-124832号(実開昭52-37811号)のマイクロフィルム(請求人提出の甲第1号証) 金属製瓦に関する考案が記載されており、明細書1頁15行乃至3頁5行、同4頁1行乃至8行及び第1図乃至第3図を参照すると、金属製瓦は、断熱性及び遮音性を有する長方形芯板1の長辺側の上縁部表面に係止突条2が突設され、この長方形芯板1の全表面及び側面は、ステンレス製の金属被覆板3で被覆されている。金属被覆板3は肉薄のものを使用すると良く、長方形芯板1と金属被覆板3とは耐熱性接着剤により接着されている。この金属被覆板3の下端部(第1図参照)には、前記係止突条の背面側に係止する係止板4が連設されている。係止突条2の上方(第1図参照)には釘打ち部5が設けられている。金属被覆板3の表面には、第1図、第2図より横方向に凹凸部が形成されていると認められる。そして、この金属製瓦を用いて屋根を葺く場合は、野地板6の上に上縁部(釘打ち部5)を釘で止め、この上縁部の係止突条2に他の瓦の係止板4の背面を係止させることにより、次々と瓦を縦方向に継合することにより葺くことができるものである。 (イ)刊行物2:実願昭55-16898号(実開昭55-156122号)のマイクロフィルム(請求人提出の甲第3号証) 金属板葺改修屋根に関する考案が記載されており、既存の金属板葺屋根の金属板を残し、裏面に嵩だかの断熱層を設けた屋根面部材を重ねて葺くことができる改修屋根を提供するものであって、第一の実施例に関して明細書4頁1行乃至5頁4行には第1図に基づき「このような金属板葺の既存屋根Aに重ねられて新設屋根Bを作る屋根面部材9は立上り連結部7とほぼ等しい高さの山部10,11を両側端縁部に有する長尺の金属板からなり、一側端縁部10を除いた裏面に連続気泡・・・・等の断熱性繊維体からなる適当厚さの嵩だかにして圧縮性を有する断熱層12が一体に積層されている。・・・このような屋根面部材9の山部10,11を断熱層12を有する山部11を下にして順次立上り連結部7に載せ重ねることによって新設屋根Bを金属板4の上に敷設し、上に重ねた山部10の上から立上り連結部7を貫通して釘14を垂木1へ打込むことによって既存屋根Aに新設屋根Bを重ね固定して本考案の改修屋根を構成したものである。」と記載され、第2、第3の実施例を示す第2図、第3図にも第1図と同様の改修屋根が記載されている。また、第4図には、「屋根面部材9の異なる実施例を示し、両側端縁部および中央に既存屋根の立上り連結部7と等しい間隔で角形の山部10,11および15を形成すると共に一側端縁部の山部10を除いた裏面に断熱層12を一体に積層」(明細書6頁6行乃至11行)したものが記載されている。また、「断熱層の弾性力により密着して空隙をなくし風雨による振動と騒音を防止」(明細書8頁11行乃至13行)することができる旨記載されている。 (ウ)刊行物3:実願昭60-107236号(実開昭62-16689号)のマイクロフィルム(請求人提出の甲第4号証) 出窓に関する考案が記載されており、実用新案登録請求の範囲には、「屋根板の裏面の一部分又は大部分に制振シートを貼着すると共に、この屋根板の裏面側空間部を埋めるよう発泡プラスチック材を装填してなることを特徴とする出窓。」と記載され、屋根板に関して「屋根板5は台形状の上壁部5aとこの上壁部5aの周縁に沿って突設された周壁部5bとからなり、上壁部5aの裏面には、複数の制振シート6A、6B、6C、6D、6Eが例えば当該裏面の全面積の約70%を占有するように貼着されており」(明細書3頁4行乃至8行)と記載され、また、制振シートの貼着面積に関しては、「できるだけ大きな面積(たとえば上壁部裏面の全面)で貼ることが望ましい。しかし、制振シートが屋根板上壁部裏面の面積の20〜30%に貼られた場合であってもそれ相当の効果はある」(明細書5頁12行乃至16行)と記載されている。 (2)対比・判断 (ア)本件訂正発明1について 本件訂正発明1の金属面板部材は、「長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材」であって、ここで「平面」とは、第1図の面板部2の凹部3aや凸部3bのように平らな面を意味するものであり、「ハゼ部」は、一般に薄い金属板を相互に折り曲げて継ぎ合わせる部分を意味し、本件訂正発明1においても、面板部の幅方向両側縁部に設けられ、隣接して配置される金属面板部材のハゼ部と相互に係合して屋根下地材側に止着される部分を意味するのである。 これに対し、刊行物1に記載された金属被覆板3の表面は、第1図、第2図に示されるように横方向に凹凸となっており、平面とはなっていないし、当該図面において上下方向両側端部には、係止板4や係止突条が設けられているものの、本件訂正発明1の「ハゼ部」が設けられているものでもない。 また、刊行物2に記載された屋根面部材9は、「長尺の金属板」からなるものであって、その幅方向両側端部、つまり第1図において手前側とその反対側の端部において「ハゼ部」が設けられている旨の記載はない。 さらに、刊行物3に記載された屋根板5は、出窓の上部全体を覆う一枚の屋根板であって、長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施したものでもなく、その幅方向両側縁部に屋根板を係止するためのハゼ部を成形したものでもない。 以上のように、刊行物1乃至3に記載された金属製被覆板、屋根面部材、屋根板は、本件訂正発明1の金属面板部材とは基本的形態を異にし、屋根として葺くための係止機構をも異にするものである。 したがって、刊行物1乃至3に記載されたものには、本件訂正発明1の構成要件の一部である「長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材」が開示されているとすることはできない。 また、本件訂正発明1は、刊行物1乃至3に記載されていない上記の構成を有すると共に、「前記金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、前記面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設け、前記各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して、前記裏当て部材を連続的に貼着した」という構成としたことと相まって、刊行物1乃至3に記載されたものが奏しない「各面板凹部および面板凸部毎の個々の振動によって発生していた騒音が、これらの各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中央部を通して連続的に貼着した裏当て部材により、それぞれの固有振動数が変化して、相互に打ち消し合うことになり、結果的には、面板部の全体振動、すなわち換言すると、騒音の発生を積極的かつ効果的に抑制し得るのであり、しかも構造的にも比較的簡単で、容易かつ安価に実施し得るなどの優れた特長を有するものである。」(明細書15頁9行乃至19行(特許公報8欄6行乃至14行)」という明細書記載の作用効果を奏することが期待できるものである。 したがって、本件訂正発明1は、刊行物1乃至3に記載されたものから当業者が容易に発明できたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。 (イ)本件訂正発明2、3について 本件訂正発明2、3は、本件訂正発明1の構成要件の一部を限定するものであり、本件訂正発明1について刊行物1乃至3に記載されたものから当業者が容易に発明できたものとすることができないものである以上、本件訂正発明2、3についても刊行物1乃至3に記載されたものから当業者が容易に発明できたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。 (ウ)また、本件訂正発明1乃至3について、他に、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。 (3)したがって、本件訂正請求は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるとされる旧特許法第134条第2項ただし書き並びに同条第5項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものであるので、本件訂正請求は適法なものと認められる。 第6 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書及び弁駁書において、本件特許の訂正前の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された発明、または本件訂正発明1乃至3について、本件特許の出願前に頒布された前記刊行物1乃至3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである旨主張する。 しかしながら、本件訂正発明1乃至3は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではなく、他に特許出願の際、独立して特許を受けることができないとする理由もないことから、本件訂正請求が適法になされたことは上記第5に記載したとおりである。 また、審判請求人は、審判請求書及び弁駁書において、本件特許の訂正前の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された発明または本件訂正発明1乃至3は、面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を面板部の中心部を通して貼着した合理的理由はなく、全く無意味な限定をした技術に相当する旨、被請求人が主張する振動減衰の理由は振動工学上あり得ない旨主張するが、本件訂正発明1乃至3は、本件訂正発明1に記載された構成としたことによって、上記第5、2-2、(2)、(ア)に記載したように、結果として「面板部の全体振動、すなわち換言すると、騒音の発生を積極的かつ効果的に抑制し得る」という騒音抑制の作用効果を奏することが期待できるものであるから、審判請求人の主張は採用できない。 第7 まとめ 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。 また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項によって準用する民事訴訟法第61条の規定により請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 建築用金属面板 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材において、前記金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、前記面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設け、前記各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して、前記裏当て部材を前記面板凹部および面板凸部の裏面に連続的に貼着したことを特徴とする建築用金属面板。 【請求項2】 金属面板部材と裏当て部材とが、それぞれに異なる比重の材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築用金属面板。 【請求項3】 金属面板部材での各面板凹部および面板凸部からなる面板部の幅に対して、裏当て部材の幅をほゞ1/2程度にしたことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の建築用金属面板。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、建築用金属面板に関し、さらに詳しくは、建築物における金属屋根構造用の横葺き屋根板および縦葺き屋根板など,または金属外装構造用の外装板および壁パネルなどに用いる建築用金属面板の改良,特に、長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した表面意匠付き金属面板部材において、前記面板部に対し、少なくとも防音性,遮音性を与えるように改善した建築用金属面板に係るものである。 〔従来の技術〕 従来からこの種の建築用金属面板を用いた面構造において、その表面部に露呈されるところの,面構造材に用いる横葺き屋根板,縦葺き屋根板,または外装板,壁パネルなどの通常形態の金属面板部材での面板部にあって、その防音性,遮音性などを改善する方法としては、一般的に、この金属面板部材の張設に先立って、シート状をした別部材による吸音材,遮音材を下地側の全面に敷設させ、これらの下敷きとなる吸音材,遮音材によってそれぞれの役割り,つまり、吸音,遮音の各作用を果させるようにした手段が広く採用されている。 また、前記金属面板部材として、従来から長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向側縁部に係止用のハゼ部を成形させた,いわゆる表面意匠付きの金属面板部材が知られており、この金属面板部材における交互に連続した面板凹部および面板凸部については、主として同金属面板部材自体の外観意匠性を高めるために形成されるが、副次的には、ハゼ部形成時に金属面に生ずるところの,ポケットウエーブ(すなわち,いわゆる素材自身のもつ歪)を吸収するほか、面板部自体により強固な剛性を与えると云う効果があるもので、この表面意匠付きの金属面板部材にあっても、その防音性,遮音性などを改善する方法として、前記と同様な手段が採用されている。 〔発明が解決しようとする課題〕 しかしながら、このように前者または後者における各金属面板部材でのそれぞれの裏面側に対して、吸音材,遮音材を単に当接させるだけの,いわば間接的にしか過ぎない手段では、前者の通常形態での金属面板部材による面構造の表面部に露呈される面板部の場合は勿論のこと、特に、後者の表面意匠付きの形態での金属面板部材による面構造の表面部に露呈される面板部の場合にあっては、凹凸加工による面板凹部および面板凸部が交互に連続されていることから、下敷きとなる吸音材,遮音材との密着性が極めて悪く、殊に、個々の面板凸部に対応する部分では、同面板凸部がこれらの各吸音材,遮音材の表面から浮き上がって比較的大きな空間部を構成することになり、結果的には、この空間部のために、外部に露呈された面板部に対して、降雨,降雪などの外部からの衝撃が加えられると、内部に形成されている空間部との関係で、こゝでは、一種の太鼓におけると同様な作用,効果を生じて、比較的大きな騒音を発生すると云う問題点があった。 従って、この発明の目的とするところは、従来のこのような問題点に鑑み、特に、長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した,いわゆる表面意匠付きの金属面板部材において、最も振動し易く、かつ騒音を発生し易いところの,面板凹部および面板凸部からなる面板部に対し、効果的でしかも実際的な騒音防止対策を講じた,この種の建築用金属面板を提供することである。 〔課題を解決するための手段〕 前記目的を達成させるために、発明者が別途行った実験によれば、前記表面意匠付きの金属面板部材における面板部での面板凹部および面板凸部に対して、この金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料による裏当て部材を貼着した場合,この裏当て部材の幅が、たとえ面部材の全幅に満たなくとも、これらの両者の固有振動数の相違に基づいて、相応以上の騒音防止効果を発揮し得ることを確認できた。 すなわち,この発明は、長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かっこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材において、前記金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、前記面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設け、前記各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して、前記裏当て部材を前記面板凹部および面板凸部の裏面に連続的に貼着したことを特徴とする建築用金属面板である。 〔作用〕 すなわち,この発明においては、長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材において、前記金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、前記面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設け、前記各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して、前記裏当て部材を前記面板凹部および面板凸部の裏面に連続的に貼着して構成したので、各面板凹部および面板凸部毎の個々の振動による騒音の発生を、これらの各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して連続的に貼着した裏当て部材によって抑制し得るのである。 〔実施例〕 以下,この発明に係る建築用金属面板の実施例につき、第1図ないし第3図を参照して詳細に説明する。 第1図はこの発明の建築用金属面板を横葺き屋根構造に適用した場合における横葺き屋根板部材の概要構成を示す一部断面斜視図であり、また、第2図および第3図は第1図II-II線およびIII-III線部のそれぞれに拡大断面図である。 すなわち,これらの実施例各図において、符号(1)はこゝでの金属面板部材としての横葺き屋根板部材であって、この横葺き屋根板部材(1)は、長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施すことで面板凹部(3a)および面板凸部(3b)をそれぞれに形成してなる面板部(2)を有しており、かつこの面板部(2)の幅方向両側縁部,つまりこの場合は、軒側および棟側に対応するそれぞれの側縁部に係止用のハゼ部(4a),(4b)を所定の横断面形状に形成させたもので、従来からよく知られているように、幅方向に該当する軒側および棟側の各ハゼ部(4a),(4b)にあっては、これらの軒側と棟側とに隣接して配置される何れか一方のハゼ部に他方のハゼ部を相互係合させると共に、所定の吊子部材などで屋根下地側に引き留め止着させて、所期通りに金属面構造,こゝでは、屋根面を葺き上げるようにしている。 そして、こゝでの横葺き屋根板部材(1)における長手方向に交互に連接される各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)については、先にも述べたように、主として同金属面板部材自体の外観意匠性を高めるために形成される一方,副次的に各ハゼ部(4a),(4b)の形成時に金属面に生ずるポケットウェーブ(素材自身のもつ歪)を吸収すると共に、これら個々の各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の周辺,ひいては面板部(2)自体に一層強固な剛性を与えているのであるが、各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の個々について見るときは、恰かも剛性の高い周辺部に対して、自由振動を生じ易い平板面を形成させたかのような態様になって、これらの各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)が、使用材料である金属薄鋼板の材質による面密度,板厚,靭性度,それに設定される実効表面積の大きさなどから、それぞれに所定の固有振動数(A)および(B)を持つことになる。 また、(5)は前記横葺き屋根板部材(1)の面板部(2)での金属材料の面密度とは異なった面密度を有する異質材料によって形成された裏当て部材であって、この裏当て部材(11)には、その使用材料に、例えば、相応の厚さを有して、後述するように、前記面板部(2)の各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の裏面を通して貼着した状態で、同貼着部分での各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の固有振動数(A),(B)をそれぞれ充分に変更し得る材質のもの,例えば、これらの各固有振動数(A),(B)とは異なると共に、特定の固有振動数(C)を有するゴム板,ゴムシート,塩化ビニール板,塩化ビニールシートなどを用い、その形状,および大きさとしては、面板部(2)の厚さ,幅よりも充分に厚くかつ狭い幅で、所要長さに設定させたものであることが好ましく、この実施例では、使用材料に固有振動数(C)のゴムシートを用い、前記面板部(2)の幅よりも狭くした幅,例えば、1/2程度の幅のものを用意する。 しかして、この実施例構成においては、各図に示されているように、前記横葺き屋根板部材(1)での面板部(2)を形成している固有振動数(A)の面板凹部(3a),および固有振動数(B)の面板凸部(3b)の裏面の全体を通して、その幅方向の所定位置,例えば、幅方向の中間部分に、前記固有振動数(B)を有して1/2程度の幅とした裏当て部材(5)を容易には脱落しないように一連に貼着させ、これらの両者の全体を一体化させたものである。 従つて、このように構成される実施例においては、横葺き屋根板部材(1)での面板部(2)を形成している面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の各表面部の全体を通してみるとき、裏当て部材(5)の貼着以前にそれぞれ固有振動数(A)および(B)であったものが、それぞれの裏面所定位置を一連に通した固有振動数(C)を有する1/2程度の幅の裏当て部材(5)の一体化貼着によって、その固有振動数がこれら両者の固有振動数(A),(B)と(C)とを複合させた固有振動数(A,C)および(B,C)に変化するもので、この結果,このように構成される各横葺き屋根板部材(1)によって葺き上げた横葺き屋根構造においては、その屋根面,ひいては、各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)からなる面板部(2)に対して、例えば、降雨,降雪などの外部からの衝撃,風の擦過外圧などが間断なく加えられた場合、裏当て部材(5)が貼着されていない部分と、これが貼着されている部分との、それぞれの固有振動数(A),(A,C)および(B),(B,C)が相互に異なることになるために、この表面各部分のマッスが不均衡化されて、従来,各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の個々の表面で発生していた振動数(A)および(B)の各固有振動が、これらの表面各部分相互間での各固有振動数(A),(A,C)および(B),(B,C)の相違により直接,打ち消されることになって、こゝでは、結果的に面板部(2)の全体を通した振動,すなわち換言すると、騒音の発生が積極的かつ効果的に抑制されるのである。 また、前記各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)における固有振動数(A),(B)と裏当て材(12)の固有振動数(C)との選択基準としては、前記した両者の面密度の差以外にも、これらの両者の比重差を根拠にして選択することができ、これによっても同様な作用,効果を達成し得る。 また、本発明者の実験に徴するに、面板部(2)を構成する各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の幅に対して裏当て部材(5)の幅をほゞ1/2程度に設定した場合には、裏当て部材(5)を貼着しなかったときに発生していた騒音レベルに対し、前記のように裏当て部材(5)を貼着した場合の騒音レベルの低下率を100%とすると、その約75%程度の値が得られることを確認した。特に、この場合での騒音低下は、建築物の内部に居住する人間にとってもっとも耳障りな高周波域において一層顕著であった。 なお、前記裏当て部材(5)の幅を1/4程度に設定した場合にあっても、騒音レベルの低下は約60%を示し、このように各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の裏面の全体を通して面密度の異なる裏当て部材(5)を貼着することが、騒音抑制の上で、極めて効果的,ないしは特徴的である点が充分に実証された。 また一方、前記各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の裏面に対する裏当て部材(5)の貼着位置については、この実施例構成にも見られるように、振動発生面でもある各面板凹部(3a)および面板凸部(3b)の振動中心部,すなわち幅方向中間部分であることが有効であるが、与えられる断面形状の如何によっては、振動中心部が必ずしも幅方向中心部に位置しない場合があるので、可及的に振動中心部を選択するか、あるいはまた、振動発生によって伝搬する振動波の節点該当部分を選択して貼着するのが望ましい。 なお、前記実施例構成においては、建築用金属面板として横葺き屋根構造用の横葺き屋根板に適用した場合について述べたが、縦葺き屋根構造用の縦葺き屋根板とか、外装構造用の外装板および壁パネルなどに対しても全く同様に適用することができて、同様な作用,効果を得られるのは勿論である。 〔発明の効果〕 以上詳述したように、この発明によるときは、建築物における屋根構造用の横葺き屋根板および縦葺き屋根板など,または外装構造用の外装板および壁パネルなどに使用され、長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を成形した金属面板部材において、金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設けておき、各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して、裏当て部材を前記面板凹部および面板凸部の裏面に連続的に貼着したので、各面板凹部および面板凸部毎の個々の振動によって発生していた騒音が、これらの各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通して連続的に貼着した裏当て部材により、それぞれの固有振動数が変化して、相互に打ち消し合うことになり、結果的には、面板部の全体振動,すなわち換言すると、騒音の発生を積極的かつ効果的に抑制し得るのであり、しかも構造的にも比較的簡単で、容易かつ安価に実施し得るなどの優れた特長を有するものである。 【図面の簡単な説明】 第1図はこの発明の建築用金属面板を横葺き屋根構造に適用した場合における横葺き屋根板部材の概要構成を示す一部断面斜視図、第2図および第3図は第1図II-II線およびIII-III線部のそれぞれに拡大断面図である。 (1) ‥‥‥‥‥‥横葺き屋根板部材(金属面板)、 (2) ‥‥‥‥‥‥面板部、 (3a),(3b)‥面板凹部および面板凸部、 (4a),(4b)‥軒側,棟側のハゼ部、 (5) ‥‥‥‥‥‥裏当て部材。 |
訂正の要旨 |
(3)訂正事項 A. 特許第1972905号の明細書における「特許請求の範囲」の請求項1を下記の通り訂正する。 記 「 【請求項1】 長手方向にブロック状をなすように交互に凹凸加工を施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面板凹部および面板凸部を形成してなる面板部を有し、かつこの面板部の幅方向両側縁部に係止用のハゼ部を形成した金属面板部材において、前記金属面板部材の材料がもつ面密度とは異なった面密度の材料を用い、前記面板部の幅よりも狭い幅としたシート状の裏当て部材を設け、前記各面板凹部および面板凸部の裏面の幅方向ほゞ中間部を通じて、前記裏当て部材を前記面板凹部および面版凸部の裏面に連続的に貼着したことを特徴とする建築用金属面板。」 B. 出願当初明細書第6頁第8行目(公告公報第2頁第4欄第14行目)、第6頁第20行目(公告公報第2頁第4欄第25行目)、第15頁第1行目(公告公報第4頁第7欄第24行目)にそれぞれ記載の「施して面」を、「施して、自由振動を生じ易い平面部からなる面」に訂正する。 C. 出願当初明細書第6頁第16行目(公告公報第2頁第4欄第21行目)、第7頁第8行目(公告公報第2頁第4欄第32行目)、第15頁第9行目(公告公報第4頁第8欄第5行目)にそれぞれ記載の「部材を連続」を、「部材を前記面板凹部および面板凸部の裏面に連続」に訂正する。 |
審理終結日 | 1999-12-07 |
結審通知日 | 1999-12-24 |
審決日 | 1999-12-17 |
出願番号 | 特願平1-169833 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
YA
(E04D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森次 顕 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 宮崎 恭 |
登録日 | 1995-09-27 |
登録番号 | 特許第1972905号(P1972905) |
発明の名称 | 建築用金属面板 |
代理人 | 島田 義勝 |
代理人 | 島田 義勝 |
代理人 | 水谷 安男 |
代理人 | 水谷 安男 |