• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 審判種別コード:11 利害関係、当事者適格、請求の利益  G02F
管理番号 1013942
審判番号 審判1993-21834  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-04-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 1993-11-18 
確定日 1997-05-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第1541667号発明「液晶表示用電極基板の製造法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.本件特許第1541667号発明(以下、本件発明という。)は、昭和61年5月30日特許出願され、出願公告(特公昭62-38689号公報参照。)後の平成2年1月31日その特許の設定登録がなされたものである。
II.本件審判請求については、本件審判請求人(以下、請求人という。)と本件審判被請求人(以下、被請求人という。)とのあいだで当事者適格が争われている。
即ち、被請求人は、請求人が本件審判請求に関し本件審判請求の請求の利益を有することの何等裏付けがなく請求の利益が欠如している故に、本件審判請求は、無効審判請求の請求人として必要な利害関係を有するという要件を欠いている旨を主張している。
これに対して、請求人は、次の主張をしている。
請求人の主張1:「無効審判の請求に法律上利害関係(訴権)を必要としたのは旧法の規定であって、それとともに同請求には除斥期間もあった。だが、特許の無効審判の請求には正義性の実現として上記利害関係と除斥期間とを除外するを至当とするものがあり、これによって昭和35年4月1日から特許法により削除されているものである。故に、国家の行政破壊される如き場合のみ国家が利害関係の存否に介入するを至当とするものである。」
請求人の主張2:「請求人は本件特許の内容と同一、または、類似の発明を本件特許出願前に公知、ないし、公用にした者であって、これを実施する必要に迫られているから、本件請求をする訴権を有する。」と主張している。そして、その事実を疎明するために、平成6年12月5日付けの物件提出書において、
疎甲第1号証(米国特許第3、969、887号抽象(翻訳付))、
疎甲第2号証(米国特許第3、969、887号明細書全体)、
疎甲3号証(特許第1301233号に係る特許出願公開公報である特開昭49-117073号公報)、及び
疎甲第4号証(特許1300028号に係る特許出願公開公報である特開昭49-122376号公報)、
を提出し、請求人は、1973年3月8日に疎甲第3号証に係る特許願昭和48年第27260号、発明の名称「積算点灯表示による液晶腕時計」を、同年3月24日に疎甲第4号証に係る特許願昭和48年第33698号、発明の名称「液晶時刻表示装置」を、夫々出願をしており、それらを優先権主張の根拠として疎甲第1号証及び疎甲第2号証に係る名称「液晶諸要素を使用した電気制御時計」について米国に出願をしている旨を述べている。
又、上記物件提出書において疎甲第5号証(特許法第161条の4第3項の規定に基づく報告書)を提出するとともに、疎甲第6号証(被請求人出願前の液晶に係る出願公告目録)及び疎甲第7号証(同上出願公開目録)を、さらに、平成7年3月23日付け証拠物差出書において疎甲第6号証及び疎甲第7号証に係る公報を提出し、被請求人の特許出願前の出願で液晶に関する特許出願は公開になったものが229件であり、出願公告になったものは20件に達する旨を述べている。
III.そこで、請求人の主張1について検討する。
旧特許法(大正10年法)には、特許無効の審判の請求人適格について明文の規定があったが、現行の特許法はその点についてなにも規定するところがない。
しかし、次の理由により、現行特許法のもとでも、特許無効の審判を請求しうる者は、その審判請求について法律上正当な利益を有することを必要とするのであり、その点で旧特許法におけるのと異ならないものと解する。
(1)現行の特許法に規定する手続で、その利用または関与に何らかの資格を必要とせず広く公衆に開放されているものについては、法文上特に「何人も」これをなしうる旨明記していること(例えば、特許異議の申立についての同法第55条第1項参照。)
(2)同法が特許無効の審判について規定しているところによれば、この審判はいわゆる準司法的な争訟手続の性格をもって構成されており、従ってそれには「利益なければ訴権なし」という訴訟の原則が本来妥当すると考えられること。
(3)同法第148条第3項によれば、審判における補助参加人の適格として利害関係の存在が要求されており、これとの均衡上から考えても、被参加人の立場にある審判請求人について、そのような適格を要求する旨の明文の規定がないからといって、何ら適格をも必要としないと解するのは適切でないこと。
よって、請求人の主張1については採用できない。
次に、請求人の主張2について検討する。
疎甲第1号証及び疎甲第2号証に係る米国特許第3、969、887号明細書は、米国の特許に関するものであり、疎甲第1号証及び疎甲第2号証によれば、同明細書に係る発明者は請求人の福本 茂ではあるが、譲受人ではない。
そして、疎甲第3号証及び疎甲第4号証によれば、請求人・福本 茂は、疎甲第3号証及び疎甲第4号証に係る発明者ではあるが、個人としては特許出願人ではなく、本件審理における職権調査によると、疎甲第3号証に係る特許権は、昭和61年2月14日の設定の登録から平成5年3月8日の存続期間の満了までカシオ計算機株式会社の所有するところであり、同じく、疎甲第4号証に係る特許権は、昭和61年1月31日の設定の登録から平成5年3月24日の存続期間の満了までカシオ計算機株式会社の所有するところである。
このように、疎甲第1号証乃至疎甲第4号証によれば、請求人・福本 茂は、疎甲第1号証乃至疎甲第4号証のいずれについても、単なる発明者にすぎず、出願人又はそれらの特許に係る権利を有する者、即ち、それらの発明を実施している又は実施の意思を持つ者ではないから、請求人・福本 茂は、本件発明に係る特許権が存続していることで、現に不利益をこうむっている又は不利益をこうむるおそれがあるとは認められないし、本件発明と同一又は同種の発明に関して、実施している若しくは実施の意思がある者又は同業者であるとも認められない。
よって、疎甲第1号証乃至疎甲第4号証をもって、請求人が本件発明及び本件審判請求について利害関係を有するとすることはできない。
又、疎甲第5号証、疎甲第6号証及び疎甲第7号証は、請求人と何等関係するものではなく、それらをもって、請求人が本件審判請求について利害関係を有するとすることはできない。
その他、請求人が本件審判請求について利害関係を有することを疎明するに足りる証拠は提出されていない。
従って、請求人の主張2についても採用できない。
IV.以上のとおり、無効審判の請求には利害関係を有するところ、請求人は、本件審判請求についての利害関係人とは認められないから、本件審判請求は不適法な審判の請求であり特許法第135条の規定により却下すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1995-07-10 
結審通知日 1995-07-18 
審決日 1995-07-31 
出願番号 特願昭61-125293
審決分類 P 1 11・ 02- X (G02F)
最終処分 審決却下  
前審関与審査官 平井 良憲江藤 保子市川 信郷寺山 啓進  
特許庁審判長 光田 敦
特許庁審判官 綿貫 章
川上 義行
登録日 1990-01-31 
登録番号 特許第1541667号(P1541667)
発明の名称 液晶表示用電極基板の製造法  
代理人 松田 喬  
代理人 赤尾 直人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ