• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない G01N
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G01N
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない G01N
管理番号 1016007
審判番号 審判1999-35432  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1980-10-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-08-20 
確定日 2000-05-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第1332251号発明「血清塗布装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第1332251号「血清塗布装置」は、昭和54年3月30日に出願された特願昭54-37974号の特許出願に係り、昭和61年1月13日に特公昭61-935号として出願公告され、昭和61年8月14日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の概要
[無効理由1]
本件特許の明細書は、特許法36条に規定された明細書の記載要件を満たしていない。
本件明細書には、本発明は、「血清乾燥防止機構を備えた塗布装置に関」(公告公報1欄12行)し、「塗布装置中におかれた血清皿内の血清が乾燥しないようにした血清乾燥防止機構付き血清塗布装置を提供する」(同2欄8〜11行)と記載され、「本発明の血清塗布装置によれば、血清をペン先に付着させる作業を行なう時以外は水を含んだ吸水性シートにより適宜な湿度に保たれたケース内に密封された状態で血清皿が保持される」(同4欄21〜25行)と記載されている。
ところが、本件明細書の特許請求の範囲には、「水を含んだ吸水性シートにより適宜な湿度に保たれたケース内に密封された状態で血清皿が保持される」という要件が見あたらない。
このように、発明の詳細な説明における「本発明の血清塗布装置」と特許請求の範囲の記載とが不一致で、明細書の記載が不明瞭なものである。
[無効理由2]
本件発明は、下記の甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

甲第1号証:特開昭53-146689号公報
甲第2号証:実願昭51-130585号(実開昭53-49479号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭46-35606号(実開昭47-36087号)のマイクロフィルム

3 被請求人の主張の概要
本件特許の明細書は、特許法36条に規定された明細書の記載要件を満たしており、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 無効理由1についての判断
(特許法36条4項(特許請求の範囲の記載要件)違反について)
本件特許請求の範囲には、「血清皿中の血清に塗布具のペン先を挿入して血清を付着させたペン先を支持体上において血清を塗布するようにした電気泳動装置に使用される塗布装置において、前記血清皿を収容するケースと、前記血清皿の上部に位置し前記ケースと摺動自在に設けられた蓋とを具備し、前記塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉するようにした血清塗布装置。」と記載され、その記載は不明瞭であるとはいえない。
また、本件発明の目的は、「塗布装置中におかれた血清皿内の血清が乾燥しないようにした血清乾燥防止機構付血清塗布装置を提供する」もので、特許請求の範囲に記載された「前記血清皿を収容するケースと、前記血清皿の上部に位置し前記ケースと摺動自在に設けられた蓋とを具備し、前記塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉するようにした」構成により、血清の乾燥を防止する目的を達成できるという作用効果を奏することが認められる。
したがって、本件特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているというほかなく、特許法36条4項の規定に違反するものではない。
請求人は、発明の詳細な説明の「本発明の血清塗布装置によれば、血清をペン先に付着させる作業を行うとき以外は水を含んだ吸水性シートにより適宜な湿度に保たれたケース内に密封された状態で血清皿が保持される」との記載からみて、特許請求の範囲の記載に不備があると主張するが、上記記載は、本件発明の一実施例の構成に対応する作用効果があたかも本件発明の作用効果のように記載されたものと認められ、特許請求の範囲の記載が明瞭であり、発明の詳細な説明に記載された目的との整合性もある以上、上記記載があるからといって、特許請求の範囲の記載に不備があるとはいえない。
(特許法36条3項(発明の詳細な説明の記載要件)違反について)
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の目的は、「塗布装置中におかれた血清皿内の血清が乾燥しないようにした血清乾燥防止機構付血清塗布装置を提供する」ものと記載され、特許請求の範囲に記載された本件発明が実施例により説明されていて、本件発明の構成に対応する効果が明記されていないものの、本件発明は、血清の乾燥を防止する目的を達成できるという効果を奏することは明らかである。
このように、本件明細書の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲に記載された本件発明「血清塗布装置」について、当業者が容易に実施しうる程度に目的、構成が記載されていると認められ、該目的を達成できるという効果を奏することは明らかであるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法36条3項の規定に違反するとはいえない。
請求人は、発明の詳細な説明における「本発明の血清塗布装置によれば、血清をペン先に付着させる作業を行うとき以外は水を含んだ吸水性シートにより適宜な湿度に保たれたケース内に密封された状態で血清皿が保持される」との記載からみて、本件発明の目的・構成・効果に関し、不一致、不明瞭であると主張するが、該記載中「吸水性シートにより適宜な湿度に保たれたケース」が本件発明の構成に欠くことができない事項ではないことは明らかであるから、該記載が存在するからといって特許法36条3項の規定に違反するとはいえない。
5 無効理由2についての判断
(本件発明)
本件特許の発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「血清皿中の血清に塗布具のペン先を挿入して血清を付着させたペン先を支持体上において血清を塗布するようにした電気泳動装置に使用される塗布装置において、前記血清皿を収容するケースと、前記血清皿の上部に位置し前記ケースと摺動自在に設けられた蓋とを具備し、前記塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉するようにした血清塗布装置。」

(甲第1〜3号証)
甲第1〜3号証には、以下に摘記する事項が記載されている。
[甲第1号証:特開昭53-146689号公報]
「電気泳動用試料塗布装置」に関し、「電気泳動用の支持体に試料を塗布する空間を外匣によって外部雰囲気からほぼ密封し、この空間内に微細な水滴を噴霧する加湿器を設け、塗布空間内の湿度を制御するようにしたことを特徴とする電気泳動用試料塗布装置。」(特許請求の範囲)が記載されている。
[甲第2号証:実願昭51-130585号(実開昭53-49479号)のマイクロフィルム]
「分注操作の自動化にともない連続分注動作と試験管キャップの脱着を同期的に行なう自動キャップ脱着機構」(明細書1頁18〜20行)に関し、「連続分注装置における試料分取用の試験管のキャップを分注動作の事前、事後に同期して自動的に脱着するもので脱着ヘッド7の爪12の開閉ならびに脱着ヘッド7の上下移動方式、傾斜方式を採用したキャップ自動脱着機構。」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、キャップ脱着行程を順を追って描いた説明図(第2図)の説明中に、「脱着ヘッド7が上昇してキャップ6を試験管から持ち上げはずし、脱着ヘッド7が傾斜状態となり、分注ノズル9が試験管5中に下降し試料液が注入される。注入が終わると分注ノズル9が上昇し、脱着ヘッド7の傾斜が復元して再び下降しキャップ6を試験管5に嵌合する。」(3頁2〜8行)と記載されている。
[甲第3号証:実願昭46-35606号(実開昭47-36087号)のマイクロフィルム]
「従来のものは試験管と試験管立てが別々になっていたのをそれ一緒にして蓋をつけた」(明細書1頁15〜16行)もので、「血清入れ用の第5〜8図の試験管の口径は普通試験用の第1〜4図の試験管の口径より狭くしてある。こうすれば血清と空気の接触がすくなく蓋もあるので血清の変質はまずないといっていいだろう。蓋は左右から入るようになっている。」(明細書8〜14行)と記載され、図面によれば該蓋は摺動自在になっていることが認められる(第5、6図)。

(対比・判断)
本件発明と甲第1〜3号証に記載された発明とを対比すると、本件発明の「塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉する」点は甲第1〜3号証に記載された発明に開示ないし示唆されていない。
すなわち、本件発明の「塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉する」とは、塗布具の動作がなされ、これに連動してケースの蓋の開閉がなされると解されるところ、甲第1、3号証には、ケースの蓋が塗布具の動作と関連することについて開示ないし示唆する記載はなく、甲第2号証に記載されたものは、「脱着ヘッド7が上昇してキャップ6を試験管から持ち上げはずし、脱着ヘッド7が傾斜状態と」なった後、「分注ノズル9が試験管5中に下降」するもので、試験管のキャップが開いてから分注ノズルが下降するものであって、分注ノズルの下降(動作)に連動してキャップが開閉するものではないから、甲第2号証に記載されたものも、本件発明の「塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉する」点を示唆するものではない。
そして、本件発明は血清の乾燥を防止する目的を達成できるという作用効果を奏することが認められる。
したがって、本件発明は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
請求人は、甲第2号証には、ノズルを容器に挿入する前に容器の蓋をはずしノズルを容器に挿入して分注し、ノズルを抜き出した後に再度容器の蓋を閉じる動作を繰り返し連動して行うことが開示されていて、技術常識上、「塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉する」構成が開示されていると主張する。
しかしながら、甲第2号証には、「連続分注装置における試料分取用の試験管のキャップを分注動作の事前、事後に同期して自動的に脱着するもの」との記載はあるが、「同期して」に対応する具体的動作については全く説明されておらず、試験管のキャップが開いてから分注ノズルが下降するものが記載されているものの、本件発明の「塗布具の動作に連動してケースの蓋を開閉する」ことを開示ないし示唆する記載はない。
また、甲第2号証に記載されたものが、容器の蓋をはずしノズルを挿入する動作、及びノズルを抜き出して容器の蓋を閉じる動作を繰り返し行っているとしても、容器の蓋を開けることによって動作が開始するものであるから、塗布具の動作がなされ、それに連動してケースの蓋を開閉する本件発明を示唆するものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-03-17 
出願番号 特願昭54-37974
審決分類 P 1 112・ 121- Y (G01N)
P 1 112・ 531- Y (G01N)
P 1 112・ 532- Y (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 能美 知康  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 松本 邦夫
住田 秀弘
登録日 1986-08-14 
登録番号 特許第1332251号(P1332251)
発明の名称 血清塗布装置  
代理人 古川 和夫  
代理人 佐々木 敏雄  
代理人 永田 浩一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ