• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1016526
異議申立番号 異議1999-71969  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-05-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-14 
確定日 2000-05-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第2866765号「淡色醤油の製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2866765号の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2866765号に係る発明についての出願は、平成4年4月9日に特願平4-115242号として出願され、平成10年12月18日にその特許の設定登録がなされ、その後、ヤマサ醤油株式会社より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年1月31日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正請求
1.訂正の内容
(1)特許請求の範囲の請求項1に係る記載「・・・の逆浸透膜で透過処理することを特徴とする淡色醤油の製造方法。」を、「・・・の逆浸透膜で濃縮度1.5〜3.0の範囲で透過処理することを特徴とする淡色醤油の製造方法。」と訂正する。
(2)本件明細書の「・・・逆浸透膜で透過処理」を「・・・逆浸透膜で濃縮度1.5〜3.0の範囲で透過処理」(特許公報2頁3欄9行)と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(1)は、「・・・の逆浸透膜で透過処理することを特徴とする淡色醤油の製造方法。」を、「・・・の逆浸透膜で濃縮度1.5〜3.0の範囲で透過処理することを特徴とする淡色醤油の製造方法。」に訂正するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当し、訂正事項(2)は、訂正事項(1)に伴う訂正である。
そして、上記いずれの訂正も新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

3.独立特許要件
当審が通知した取消理由の概要は、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である、或いは、甲第1乃至2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号或いは同条2項の規定により特許を受けることができないというものであるところ、訂正された請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、後述の「III.2.判断 」の項に記載のように、甲第1号証に記載された発明はなく、或いは、甲第1乃至2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、本件発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項、及び同条3項で準用する126条2項から4項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

III.特許異議申立
1.特許異議申立書の理由の概要
訂正前の本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である、或いは、甲第1乃至2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号或いは同条2項の規定により特許を受けることができない。

甲第1号証:特開昭61-222508号公報
甲第2号証:「日東技報(創立70周年記念号)」(26巻2号1988年12月)40〜48頁
2.判断
A.特許法29条1項3号について
甲第1号証は、「着色成分の除去方法」に係るもので、
「(2)複合半透膜の調製
・・・この製膜溶液を上記乾燥限外濾過膜上に塗布し、室温にて殆どの溶剤を揮散させた後、60℃の温度にて5分間熱処理して、厚み0.5μmのスキン層を有する複合半透膜を得た。
この半透膜の性能は、0.2%塩化ナトリウム水溶液を25℃、20kg/cm2の条件にて処理したとき、除去率50%、透水速度2.5m3/m2/日であった。
(3)醤油の脱色処理
塩化ナトリウム濃度18.8%、全窒素濃度1.6%、pH4.6である市販醤油を原液とし、上で得た複合半透膜を用いて、処理温度25℃、処理圧力20kg/cm2 にて上記醤油を膜透過処理し、膜透過液について、450nmにおける吸光度の変化から着色成分の除去率を測定した。
その結果、着色成分の除去率は97%、塩化ナトリウムの除去率は0%、全窒素の除去率は60%であった。また、透水速度は、平均にて0.1m3/m2/日であった。」(6頁左下欄13行〜右下欄20行)との記載がある。
しかるに、本件発明は、「醤油を濃度0.2%の食塩水を温度25℃、圧力30Kg/cm2・Gで処理したときの食塩の阻止率が50%以上の逆浸透膜で濃縮度1.5〜3.0の範囲で透過処理することを特徴とする淡色醤油の製造方法。」であるところ、甲第1号証には、本件発明で使用している逆浸透膜を用いて醤油を脱色することが記載されているものの、本件発明の「濃縮度1.5〜3.0の範囲で透過処理する」ことについて開示されているところはない。
そうすると、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。
B.特許法29条2項について
甲第2号証には、「表6 ニット-膜モジュールの使用例」として、「NRT-7400シリーズ」のものは、調味液の脱色に応用できることが記載されているが、本件発明の「濃縮度1.5〜3.0の範囲で透過処理する」ことについて教えるところはない。
ところで、特許権者の提出した特許異議意見書に添付された「参考図1」並びに「参考図2」によると、本件明細書の図1に係る装置で、濾過圧力をパラメータとして濾過処理し、透過流束と濃縮度の関係をみた場合、濾過圧力により透過流束は大きく変化し、濃縮倍率3倍以上では透過流束が極端に減少することとなり、濾過圧力増加の効果が現れず無駄なエネルギーが消費されること、並びに、透過液の色沢と濃縮度の関係をみた場合、透過液及び濃縮度を6倍希釈した液の532nmのOD値、即ち色沢は、濃縮倍率とともにいずれも増加するが、透過液の色沢において、濃縮倍率が3倍以上では急激に増加することが分かる。
そうすると、本件発明に係る「濃縮度1.5〜3.0」という数値範囲には、臨界的意義があるということになり、しかも、上記のように、甲第1号証及び甲第2号証には、本件発明の「濃縮度1.5〜3.0の範囲で透過処理する」ことについて教示するところはないのであるから、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることが出来たとは到底いえない。
3.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-05-08 
出願番号 特願平4-115242
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A23L)
P 1 651・ 121- YA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 滝本 晶子  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 藤田 節
田中 久直
登録日 1998-12-18 
登録番号 特許第2866765号(P2866765)
権利者 キッコーマン株式会社
発明の名称 淡色醤油の製造方法  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ