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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C07C
管理番号 1016605
異議申立番号 異議1999-70957  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-09-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-17 
確定日 1999-12-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2798765号「シリコーン溶解剤および可溶化剤」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2798765号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2798765号発明は、平成2年1月10日に特許出願され、平成10年7月3日に特許の設定登録がなされたものである。その後、高級アルコール工業株式会社によって特許異議の申立がなされたため、当審において審理のうえ、取消理由を通知したところ、その意見書の提出指定期間内である平成11年10月1日に訂正請求がなされた。
2.訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許明細書を、訂正明細書のとおり、次の事項について訂正することを求めるものである(特許公報の該当個所で示す。)。
〈訂正事項a〉特許請求の範囲の請求項1中、「R1は5〜18の炭素数のイソカルボン酸のアルキル残基」を「R1は炭素数9〜14のイソカルボン酸のアルキル残基」と訂正する。
〈訂正事項b〉発明の詳細な説明中、2頁4欄5〜6行の「R1は5〜18の炭素数のイソカルボン酸のアルキル残基」を「R1は炭素数9〜14のイソカルボン酸のアルキル残基」と訂正する。
〈訂正事項c〉同4頁7欄の「第3表」を「第4表」と訂正する。
(なお、特許公報の3頁6欄34〜35行の「実施例」は、「実施例1」の編纂ミスによる誤植であるから、当該誤植を正そうとする訂正請求は、実質的な訂正事項には当たらない。)
3.訂正の適否
i)訂正事項aは、イソカルボン酸の炭素数を限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項bは、発明の詳細な説明を、訂正事項aと整合させるための訂正であるから、訂正事項aと一体の訂正である。
訂正事項cは、誤記の訂正を目的とするものである。
ii)前記訂正は、明細書に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。
iii)つぎに、訂正後における本件発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。
iii-1)訂正後の本件発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】下記の一般式(I)で示される分岐モノエステルの1種または2種以上を含んでなるシリコーン溶解剤。

(式中、R1は炭素数9〜14のイソカルボン酸のアルキル残基、R2は炭素数3〜18のイソアルコールのアルキル残基を表す)
【請求項2】請求項1記載の一般式(I)で示される分岐モノエステルの1種または2種以上を含んでなるシリコーン不溶性油剤に対するシリコーン可溶化剤。」
iii-2)当審においては、刊行物1〜5(申立人が提出した甲第1〜5号証に相当)を提示して、本件の訂正前の請求項1及び2の発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであって、取り消されるべきである、という趣旨の取消理由を通知した。
iii-3)本件の特許異議申立において、申立人は、▲1▼甲第1〜18号証を提出して、本件の訂正前の請求項1及び2の発明は甲第1〜5号証に記載された発明であり、または、これらの証拠刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法29条1項及び2項の規定に違反してなされたものであって、取り消されるべきである、と主張した。
iii-4)各刊行物には次のとおりの事項が記載されている。
甲第1号証(「マットルーブMatlubeポロジティーエステル」株式会社成和化成が昭和56年に頒布したパンフレット・・・刊行物5)には、液状の化粧品用油性原料である、「マットルーブH.I.」(ヘキシルデカノールイソステアレート)、または、「マットルーブI.I.」(イソプロピルイソステアレート)」とともに、シリコンオイルを含む、エモリエントクリーム、乳液、ヘヤートリートメント、コールドクリーム等の処方例が示されている。
甲第2号証(「プロモイスPromoisトリートメントtreatment」株式会社成和化成が昭和63年に頒布したパンフレット・・・刊行物4)には、マットルーブH.I.(イソステアリン酸イソセチル)またはマットルーブI.I.(イソステアリン酸イソプロピル)とともにシリコーンを含むクリームの処方例が記載されている。
甲第3号証(特開昭56-95108号公報・・・刊行物1)には、分枝エステルを含有する油基材と水を、特定3成分からなる乳化剤によって乳化して得られる油中水型化粧料が記載され(特許請求の範囲)、分枝エステル(R1COOR2)のうち、R1及びR2がいずれも分枝であるものとして、イソステアリルイソステアレート、2-ヘプチルウンデシル 2-ヘプチルウンデカノエート、イソプロピルイソステアレート、イソプロピルオクチルドデカノエート、2-ヘキシルデシル イソステアレート、及び、2-ヘプチルウンデシル イソステアレートが例示され、実施例6には、イソステアリルイソステアレートとともにジメチルポリシロキサンを含有するハンドクリームが記載されている。
甲第4号証(特開昭62-120309号公報・・・刊行物2)には、分枝鎖状脂肪族エステル約1.0〜約41.0重量%、マイクロエマルジョン形成性界面活性剤約18.5〜約90.0重量%、ポリシロキサン約1.0〜約31.0重量%、及び皮膚保湿剤約2.0〜約54.0重量%を含有する皮膚保水性マイクロエマルジョン組成物が記載されている(特許請求の範囲1及び13)。その分枝鎖状脂肪族エステルとして、イソデカン酸イソセチル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、あるいはイソノナン酸イソトリデシル等が例示され(8頁右下欄9行〜9頁左上欄4行)、実施例9には、イソステアリン酸イソプロピルとともにシクロメチコンを含有する油中水型マイクロエマルジョン組成物が記載されている。
甲第5号証(特開昭62-169714号公報・・・刊行物3)には、「シリコーン油、脂肪酸および脂肪族アルコールからなる分子内分岐構造を有する凝固点0℃以下のエステル油、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理顔料ならびに固形油脂を必須成分として配合したことを特徴とする棒状化粧料。」が記載されている(特許請求の範囲)。当該発明に至る経緯として、「シリコーン油、顔料、化粧用油脂等の成分を型に流し込み棒状に成形する際に、脂肪酸および脂肪族アルコールからなる分子内分岐構造を有する凝固点O℃以下のエステル油を添加し、さらに、使用する顔料をメチルハイドロジュンポリシロキサンで加熱処理して疎水化することにより、固形油脂の結晶化を一部阻害し、また、シリコーン油、固形油脂および顔料の相溶性を高めた結果、熱衝撃による油分の分離、発汗、発粉及びひび割れを起こさず、パウダーファンデーションと同様のパウダリーな使用感を有する棒状化粧料が得られることを見出した」との記載がなされ(2頁左上欄5〜16行)、分子内分岐構造を有するエステル油として、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、イソオクタン酸セチル、ネオデカン酸オクチルドデシル等が例示されている(2頁左下欄下7〜3行)。また、第1表には、イソステアリン酸イソプロピル、メチルポリシロキサン、及びメチルハイドロジェンポリシロキサン処理顔料を含有する実施例1の棒状化粧料は、油分の分離・発汗、発粉及びひび割れを起こさなかったこと、分岐エステルを含まない参考例3、及び、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理顔料を所定量含有しない参考例4の棒状化粧料は、油分の分離・発汗、及び発粉を起こしたこと、が示されている。
甲第6号証(特開昭63-183516号公報)の実施例1には、ミリスチン酸イソピロピルとともにジメチルポリシロキサンを含有する油性ファンデーションが記載されている。
甲第7号証(特開平1-113311号公報)の第1表には、パルミチン酸イソプロピルとともにジメチルシリコンガムを含有する毛髪処理剤の配合例が示されている。
甲第8号証には、各種エステルのシリコーン溶解性、及び各種エステルの皮膚一次刺激性に関する試験結果が示されている。
甲第9号証は、株式会社薬物安全性試験センター・埼玉研究所試験責任者高橋雅夫による、IPM-R(ミリスチン酸イソプロピル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第10号証は、同、ES108109(イソペラルゴン酸オクチル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第11号証は、同、KAK109(イソノニル酸イソデシル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第12号証は、同、KAK99(イソノニル酸イソノニル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第13号証は、同、KAK139(イソノニル酸イソトリデシル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第14号証は、株式会社薬物安全性試験センター・埼玉研究所試験責任者飯浜克則による、I.O.I.P.(イソパルミチン酸オクチル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第15号証は、同、I.C.E.H.(オクタン酸イソセチル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第16号証は、株式会社薬物安全性試験センター・埼玉研究所試験責任者高橋雅夫による、I.C.I.S.(イソステアリン酸イソセチル)の皮膚一次刺激性試験データである。
甲第17号証は、「マットルーブMatlubeポロジティーエステル」、「Promois SOC formulation」、及び、「プロモイスPromoisトリートメントtreatment」が、それぞれ昭和56年、昭和64年、及び昭和63年に、株式会社成和化成が頒布した刊行物(パンフレット)であることを証明する書面である。
甲第18号証(「日本汎用化粧品原料集」凡例ix頁、本文19〜20、及び38〜39頁、株式会社薬事日報社1985年10月25日発行)には、「分岐アルキル基(側鎖を有するアルキル基)と直鎖アルキル基はその呼称で区別し、炭素数20未満の分岐アルキル基には下記の例外を除いて直鎖アルキル基呼称の前に「イソ」をつけたものを使用する。例外:2-エチルヘキシル→オクチル、2-エチルヘキサン→オクタン」と記載され、イソパルミチン酸オクチル、イソペラルゴン酸オクチル、及びオクタン酸イソセチルの別名として、それぞれ、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソペラルゴン酸2-エチルヘキシル、及び2-エチルヘキサン酸ヘキサデシルの名称が示されている。
iii-5)そこで、訂正後の請求項1及び2の発明(それぞれ、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)と、各刊行物の記載事項とを対比したが、甲第1〜3、6、7及び18号証には、本件発明1及び2の構成要件である、炭素数9〜14のイソカルボン酸と炭素数3〜18のイソアルコールとの分岐エステル(以下、「本件発明の分岐エステル」という。)について記載されていないし、当該分岐エステルが、シリコーンの溶解性を向上させること、及び、シリコーン不溶性油剤を可溶化することを示唆する記載もない。。
また、甲第4号証及び甲第5号証には、シリコーンを含む化粧料製剤に配合されるエステル類として、本件発明の分岐エステルに相当するイソデカン酸イソセチル、あるいはネオデカン酸オクチルドデシル等が例示されているものの、具体的な配合例は記載されていないし、当該分岐エステルが、特にシリコーンの溶解性を向上させること、及び、シリコーン不溶性油剤を可溶化することを示唆する記載はない。
すなわち、甲第4号証には、分岐エステル及びポリシロキサンのほか、マイクロエマルジョン形成性界面活性剤及び皮膚保湿剤を、特定重量%範囲で配合することによって良好なマイクロエマルジョンを得たこと、が記載されるだけで、分岐エステルとポリシロキサン(シリコーン)を特に関連づける記載はない。甲第5号証には、「固形油脂の結晶化を一部阻害し、また、シリコーン油、固形油脂および顔料の相溶性を高めた結果、熱衝撃による油分の分離、発汗、発粉及びひび割れを起こさず」の記載があるが、当該作用は、「分子内分岐構造を有する凝固点0℃以下のエステル油を添加し、さらに、使用する顔料をメチルハイドロジュンポリシロキサンで加熱処理して疎水化する」ことによるものとされていて、分岐エステルのみによる作用として記載されているわけではない。このことは、同号証の第1表における、分岐エステルを含有していない参考例3、及び、メチルハイドロジュンポリシロキサン処理顔料を所定量含有していない参考例4の棒状化粧料が、いずれも、油分の分離・発汗、発粉を起こしたとする結果と符合する。
申立人は、甲第4、6及び7号証に記載されたイソプロピルパルミテートあるいはイソプロピルミリステートがシリコーン溶解剤として公知であるから、これらの公知エステルを、本件発明の分岐エステルに代えて選択することに困難性はないとしているが、本件発明における特定炭素数の分岐エステルを選択するべき示唆が、各証拠刊行物になされているものとすることはできない。
そして、本件発明の分岐エステルが、シリコーンとの相溶性に優れ、シリコーン不溶性油剤の溶解性を向上させ、また、安定性及び安全性にも優れるものであることは、本件特許明細書の記載から認めることができるから、結局、本件発明1及び2を、甲第1〜7号証及び18号証に記載された発明とすることはできないし、これら証拠刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
なお、申立人は、本件発明の分岐エステルが、シリコーン溶解性及び刺激性の点で、前記イソプロピルパルミテートあるいはイソプロピルミリステートと差異がないと主張して、甲第8〜16号証を提出したが、同号証の実験結果が正当なものであっても、他方において、本件特許明細書には、本件発明の分岐エステルの優位性を示す実験結果が記載されていて、当該実験結果を正当でないとすべき確たる根拠もないから、両実験結果は、何らかの実施条件の相違によるものとする他はなく、このような条件の相違する実験により得られた結果のみによって、本件発明の分岐エステルの効果を否定することはできない。
したがって、上記各証拠刊行物の存在に拘わらず、本件発明は、特許出願時に独立して特許を受けることができるものである。
iv)以上のとおり、上記訂正は、特許法120条の42項の規定を満たし、また、同3項で準用する同126条2項から4項の規定を満たすものであるから、適法なものとして認めることとする。
4.特許異議の申立て
i)本件の特許異議申立において、申立人は、前記〈3.iii-1)〉の理由(理由1)のほか、本件特許明細書には記載不備があるから、その特許は、特許法36条3〜5項の規定に違反してなされたものであって取り消されるべきである(理由2)、と主張した。
ii)しかし、訂正後の本件発明1及び2が、理由1によって取り消され得ないことは、〈3.iii-4〉に記載のとおりである。
iii)申立人が、理由2において明細書の記載不備とした点は、本件特許明細書において実施例として記載されたシリコーンは、ジメチルポリシロキサン及びメチルフェニルポリシロキサンに限られ、また、溶解性の確認は、粘度100万csまでのジメチルポリシロキサンについてなされているに過ぎないから、本件特許の特許請求の範囲は不当に広い、というものである。
しかし、シリコーンの代表例としてのジメチルポリシロキサン及びメチルフェニルポリシロキサンの使用が実施例に示されていること、そのジメチルポリシロキサンについては、粘度が100〜100万csのものまでの溶解性が示されていること、また、申立人が第8号証によって示したとおり、粘度が900csのポリオキシエチレン変性シリコーンについて良好な溶解性が確認されなかったからといって、同変性シリコーンの大方の粘度範囲において溶解性が否定されたわけではないこと、等の事実から見て、本件の特許請求の範囲においてシリコーンの種類をさらに特定せず、単に「シリコーン溶解剤」、及び、「シリコーン可溶化剤」と記載したことを不当とまですることはできない。
したがって、本件特許明細書の記載不備に関する主張は採用することはできない。
5.むすび
以上のとおり、上記訂正は適法なものとして請求のとおりに認められ、また、訂正された本件の請求項1及び2の発明に係る特許は、特許異議申立ての理由、及び当審において通知した取消理由によって、取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1及び2の発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シリコーン溶解剤および可溶化剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】下記の一般式(I)で示される分岐モノエステルの1種または2種以上を含んでなるシリコーン溶解剤。

(式中、R1は炭素数9〜14のイソカルボン酸のアルキル残基・R2は炭素数3〜18のイソアルコールのアルキル残基を表す)
【請求項2】請求項1記載の一般式(I)で示される分岐モノエステルの1種または2種以上を含んでなるシリコーン不溶性油剤に対するシリコーン可溶化剤。
【発明の詳細な説明】
(a)産業上の利用分野
本発明はシリコーン溶解剤または可溶化剤に関するものである。
(b)従来技術
現在、シリコーンは様々用途に使用されており、上市されているシリコーンの種類も多い。代表的な用途としては、撥水剤、消泡剤、離型剤、化粧品、塗料等の添加剤、潤滑油等であり、工業製品から化粧品、食品に至るまで非常に幅広い分野で使用されている。シリコーンの種類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等数の一般シリコーン、各種変性シリコーン、共重合系シリコーン等多くあり、使用分野の拡大よってその形状も多様化している。また、使用される用途に合わせてシリコーンには数csといった低粘度のものから100万cs程度の非常に高粘度のものまであり、重合度の増加に伴った粘度の増加によって、他の油剤との溶解性も変化する。
一般にシリコーンは、各種の油剤との溶解性が悪く、鉱物油、動植物油、ほとんどの合成エステル、特に化粧品分野で利用されている脂肪酸エステルに代表される合成エステルにもほとんどのものが不溶である。例外的に溶解性が一般に認められているものとして、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート等が挙げられ、その他ではイソパラフィン、環状シリコーンなどが溶解性をもっている。しかしながら、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート等は、刺激性、安定性の点で問題があり、イソパラフィンにおいては、精製度に由来すると考えられる臭い、環状シリコーンにおいては安全性の面でそれぞれ問題をかかえている。
したがって、これらの問題点を克服しうる溶解剤が要求されており、また、シリコーンに不溶な油剤を可溶化しうる可溶化剤が必要になっている。
(c)発明が解決しようする課題
本発明の目的は、このような状況に鑑み、シリコーンとの相溶性がよく、可溶化能を有し、同時に皮膚刺激が少なく、安定性および安全性にすぐれたシリコーン溶解剤および可溶化剤を得ることである。
(d)課題を解決するための手段
本発明者は鋭意研究の結果、下記の一般式のエステルがこの目的に合致することを見出し本発明を完成した。
即ち本発明は、下記の一般式(I)で示される分岐モノエステルの1種または2種以上を含んでなるシリコーン溶解剤および可溶化剤である。

(式中、R1は炭素数9〜14のイソカルボン酸のアルキル残基、R2は炭素数3〜18のイソアルコールのアルキル残基を表す)
本発明における分岐モノエステルを構成する酸およびアルコールのアルキル基は、それぞれイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソトリデシル、イソミリスチル、イソパルミチルおよびイソステアリル基等である。
エステル化反応は、無触媒または触媒存在下常圧もしくは減圧下において常法に従って行われる。エステル化反応終了後、必要に応じて常法に従い反応混合物を脱色剤により脱色、脱臭精製するか真空蒸留による精製を行う。
本発明のエステルはいずれも無色無臭であり、常温で液状を呈し、酸化安定性、耐酸または耐アルカリ加水分解に優れ、刺激を有さないといった基本的機能を有しているのに加え、シリコーンとの相溶性に優れているという機能を持っている。
第1表に実施例1〜3の各種エステルおよび他の油剤のシリコーンヘの溶解性に付いて調べた結果を示す。同表から明らかなように、本発明のエステルは高粘度のシリコーンに至るまで優れた溶解性を有している。

第2表に実施例1〜3の各種エステルおよび他のシリコーン溶解性油剤とシリコーンの混合系におけるシリコーン不溶性油剤の可溶化能を調べた結果を示す。表中の数値は上記混合系に溶解する不溶性油剤の量である。同表から明らかなように、本発明のエステルはシリコーン不溶性油剤に対する優れたシリコーン可溶化能を有している。

第3表にシコーンを含むワックスに実施例3の可溶化剤を添加した場合の状態を示す。即ち実施例3のエステル35重量部、シリコーン(100cs)25重量部を混合し、融解したパラフィンワックス40重量部に加えて固化し、この試料を室温にて濾紙上に放置し、経時的な重量変化によりシリコーンの分離度を調べた。比較のため上記の試料において実施例3の可溶化剤を流動パラフィンに加えたものを調製し、同様にシリコーンの分離度を調べた。

上表から明らかなように本発明の可溶化剤はワックス中でシリコーンを可溶化し、シリコーンの分離を効果的におさえている。
本発明のシリコーン溶解剤および可溶化剤は各種の製品へ応用することができる。例えば化粧料へ適用する場合は、得られたエステル生成物に常用成分、任意成分を適宜配合して各種化粧料を調製する。即ち従来のシリコーンを利用している各種化粧料の油剤、エモリエント剤等の全部または一部を本発明のエステル化生成物に替えて常法により調製される。エステル化生成物の配合は一概に規定できないが一般に0.1〜30重量%である。化粧料の種類は特に制限なく、頭髪用化粧品類、洗髪用化粧品類、化粧水類、クリーム乳液類、パック類、ファンデーション類、白粉打粉類、口紅類、眉目頬化粧品類、爪化粧品類、浴用化粧品類、化粧用油類、洗顔料類、石けん類に適用することができる。
また化粧品以外に家庭用、車用などの各種シリコーン配合製品への利用も可能である。
(e)発明の効果
上記したように本発明のエステルは従来のシリコーン溶解油剤に比べて溶解性、可溶化性に優れ、したがって、シリコーンを含有する製品において、シリコーン使用量の制限を少なくし、また用途を拡大することができる。機能面では、シリコーンを溶解または可溶化することによって系を安定化し、またシリコーンの優れた機能を充分に発揮することができるようになる。その他に、刺激性、安全性、安定性にも優れているため信頼性の高い製品が得られる。さらにシリコーンを利用した製品の除去剤にも適用でき、例えば化粧品においてはクレンジングクリーム、ヘアートリートメント等、また車用品においては油膜とりなどが挙げられる。
(f)実施例
実施例1 イソノナン酸イソオクチルの調製
イソノナン酸160gとイソオクチルアルコール130gを攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管、水分離管を備えた500mlの4つロフラスコに仕込み、触媒として、塩化スズ粉末を全仕込量の0.3%、還流溶剤として、キシロールを全仕込量の5%、一緒に加え、撹拝しながら混合物を150〜200℃で10時間反応させた。反応終了後、活性白土を用いて脱色し、常法による脱臭を行い目的とする生成物を153gを得た。
実施例2 イソミリスチン酸イソノニルの調製
イソミリスチン酸200gとイソノニルアルコール130gを実施例1と同様にエステル化し、目的とする生成物118gを得た。
実施例3 イソノナン酸イソデシルの調製
イソノナン酸160gとイソデシルアルコール160gを実施例1と同様にエステル化し、目的とする生成物141gを得た。
実施例4 エステル化生成物の安全性試験
人体に対する一次刺激性を閉塞パッチテストによって次のように検討した。
即ち前膊または上腕屈側部皮表の角質および表皮上の皮脂を除き、1インチ四方のリント布に試料を塗布し、これを皮膚表面に貼布し、油紙で覆い、紙絆創膏で四方を井桁にとめ、この上をさらに繃帯で押さえる。健康人20名に対してこのテストを実施し、24時間、48時間、1週間後にそれぞれ判定を行ったが、本エステル化生成物(実施例1〜3)はいずれも全く刺激性が認められなかった。
さらに塗布後の発臭試験を次の如く実施した。即ち前膊部に2インチ四方に試料約0.2gを塗布し、10分後、20分後、30分後、1時間後、4時間後、8時間後にそれぞれ臭覚により臭気を判定した。健康人20名に対してこの試験を行ったが本エステル化生成物(実施例1〜3)のいずれも臭気は全く感じられなかった。
実施例5 エステル化生成物の安定性試験
250mlのサンプルビンに実施例で得たそれそれの油剤100mlとpH4および9の標準緩衝液(和光純薬工業)100mlを加え、窒素封入後、55℃の恒温槽にいれて放置した。経時変化は静置後の油層を分液し、酸化を測定した。その結果を第4表に示した。

実施例6
数値はいずれもwt%
(1) エアゾール整髪料
実施例1のエステル 1.5
プロピレングリコール 0.2
メチルフェニルポリシロキサン 0.1
香料 0.2
変性アルコール(無水) 18.0
噴射剤 80
(2) エモリエントローション
マイクロクリスタリンワックス 1.0
ジメチルポリキサン 2.0
ミツロウ 2.0
実施例2のエステル 30.0
ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル
(20E・O) 1.0
ステアリン酸アルミニウム 0.2
グリセリン 8.0
防腐剤、酸化防止剤、香料 適 量
精製水にて 全量100%
(3) ファンデーション(油性軟膏剤)
実施例2のエステル 24.0
パルミチン酸イソプロピル 15.0
ラノリンアルコール 2.0
ジメチルポリシロキサン 5.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
キヤンデリラロウ 1.0
オゾケライト 8.0
酸化チタン 15.0
カオリン 15.0
タルク 6.0
着色顔料 4.0
防腐剤、酸化防止剤、香料 適 量
(4) ファンデーション(ケーキ型)
実施例3のエステル 10.0
セスキオレイン酸ソルビタン 3.5
ジメチルポリシロキサン 3.0
酸化チタン 10.0
コ口イダルカオリン 25.0
タルク 45.1
ベンガラ 0.8
黄酸化鉄 2.5
黒酸化鉄 0.1
防腐剤、香料 適 量
(5) 口紅
キヤンデリラロウ 10.0
カルナウバロウ 4.0
セレシン 3.0
マイクロクリスタリンワックス 3.0
ジメチルポリシロキサン 10.0
実施例2のエステル 10.0
トリ-2エチレンヘキサン酸グリセリン 40.0
リンゴ酸ジイソステアリル 20.0
赤色202号 適 量
赤色226号 適 量
 
訂正の要旨 訂正の要旨
〈訂正事項a〉特許請求の範囲の請求項1中、「R1は5〜18の炭素数のイソカルボン酸のアルキル残基」を「R1は炭素数9〜14のイソカルボン酸のアルキル残基」と訂正する。
〈訂正事項b〉発明の詳細な説明中、2頁4欄5〜6行の「R1は5〜18の炭素数のイソカルボン酸のアルキル残基」を「R1は炭素数9〜14のイソカルボン酸のアルキル残基」と訂正する。
〈訂正事項c〉同4頁7欄の「第3表」を「第4表」 と訂正する。
異議決定日 1999-11-16 
出願番号 特願平2-4249
審決分類 P 1 651・ 534- YA (C07C)
P 1 651・ 113- YA (C07C)
P 1 651・ 121- YA (C07C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 嶋矢 督
特許庁審判官 谷口 操
後藤 圭次
登録日 1998-07-03 
登録番号 特許第2798765号(P2798765)
権利者 日清製油株式会社
発明の名称 シリコーン溶解剤および可溶化剤  
代理人 松井 光夫  
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