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審決分類 審判 訂正 特39条先願 訂正する E04B
管理番号 1019309
審判番号 訂正2000-39038  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1988-09-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-04-13 
確定日 2000-06-14 
事件の表示 特許第1928997号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1928997号発明の明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 (一)手続きの経緯
出願日:昭和62年3月20日(特願昭62-64392号)
出願公告日:平成6年8月3日(特公平6-57973号公報)
特許登録日:平成7年5月12日(特許第1928997号)
無効審判請求日:平成10年10月20日(平成10年審判第35498号)
無効審決(発送日):平成11年10月22日(不成立)
高裁出訴日:平成11年11月24日(平成11年行ケ376号)
訂正審判請求日:平成12年4月13日
(二)審判請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、特許第1928997号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。
(三)審判請求された訂正の内容
訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1の記載を、特許請求の範囲の減縮、及び誤記の訂正を目的として、次のとおり訂正する。
「以下のBに示される締結手段と、建築物の箇所に応じて構成されたCに示される建築部材用継手装置と、を用い、Aに示される建築部材を連結構成して、建築物の骨組を構築する建築物の骨組構築方法。
A 次の(a1)及び(a2)を含む建築部材。
(a1)材軸が鉛直方向に延び、端面に溝部を有するか又は2本の平行部材のプレカット木材からなる、少なくとも1つの鉛直建築部材。
(a2)材軸が水平方向に延び、端面に溝部を有するか又は2本の平行部材のプレカット木材からなる、少なくとも1つの水平建築部材。
B ボルトと該ボルトにねじ嵌合されるナットとからなる締結手段。
C 次の(c1)の継手部材に(c2)及び(c3)の少なくとも1つの継手部材を使用数及び使用箇所を適宜選択して組み合わせて構成した建築部材用継手装置。
(c1)鉛直方向に所定間隔をもって平行に対面して配置された一対の第1及び第2の側板部と、これら側板部の相対する内面の中央部に両側端が固定されて両側板部を相互連結し、かつ、前記鉛直建築部材を固定するための第1の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、鉛直方向に配置され、該鉛直建築部材の溝部に嵌合されるか又は該鉛直建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる中間板部と、前記側板部及び中間板部に周端の一端が固定され、水平方向に配置され、該鉛直建築部材の端面を受ける端板部と、を含んで構成され、少なくとも1つの第1の前記鉛直建築部材の端部が嵌合される空間を構成するH形の水平方向断面形状をなす基本継手部材。
(c2)板面が前記基本継手部材の前記中間板部と同一面内に延び、一側端が前記基本継手部材の一方の前記側板部の外面中央部への固定部となり、第1の前記水平建築部材をその端面を該側板部の外面で受けて連結するための第2の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、該第1の前記水平建築部材の溝部に嵌合されるか又は該第1の前記水平建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる第1の連結用板部を含んで構成された第1の応用継手部材。
(c3)前記基本継手部材に嵌合される第1の前記鉛直建築部材の端部のうち前記中間板部に平行な少なくとも1つの側面に固定取付されるための第3の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設された第3の側板部と、該第3の側板部の中央部に一側端が固定され、前記第1及び第2の側板部に平行に延び、第1の前記水平建築部材に対して直角方向に延び、材軸が水平方向に延びる第2の前記水平建築部材を連結するための第4の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、該第2の前記水平建築部材の溝部に嵌合されるか又は該第2の前記水平建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる第2の連結用板部と、を含んで構成された第2の応用継手部材。」
訂正事項2:平成5年8月30日及び平成6年1月7日付手続き補正書により補正された昭和63年6月20日付け全文補正明細書(以下、「全文補正明細書」という。)の第7頁第10行目(公告公報第4欄42行目)の「予め容易して」という記載を、誤記の訂正を目的として、「予め用意して」と訂正する。
訂正事項3:全文補正明細書の第8頁第16行目〜第10頁第第15行目(公告公報第5欄第15行目〜第6欄第7行目)の記載を、特許請求の範囲の訂正に伴う明瞭でない記載の釈明を目的として、次のとおり訂正する。
「このため、本発明は、以下のBに示される締結手段と、建築物の箇所に応じて構成されたCに示される建築部材用継手装置と、を用い、Aに示される建築部材を連結構成して、建築物の骨組を構築する建築物の骨組構築方法。
A 次の(a1)及び(a2)を含む建築部材。
(a1)材軸が鉛直方向に延び、端面に溝部を有するか又は2本の平行部材のプレカット木材からなる、少なくとも1つの鉛直建築部材。
(a2)材軸が水平方向に延び、端面に溝部を有するか又は2本の平行部材のプレカット木材からなる、少なくとも1つの水平建築部材。
B ボルトと該ボルトにねじ嵌合されるナットとからなる締結手段。
C 次の(c1)の継手部材に(c2)及び(c3)の少なくとも1つの継手部材を使用数及び使用箇所を適宜選択して組み合わせて構成した建築部材用継手装置。
(c1)鉛直方向に所定間隔をもって平行に対面して配置された一対の第1及び第2の側板部と、これら側板部の相対する内面の中央部に両側端が固定されて両側板部を相互連結し、かつ、前記鉛直建築部材を固定するための第1の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、鉛直方向に配置され、該鉛直建築部材の溝部に嵌合されるか又は該鉛直建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる中間板部と、前記側板部及び中間板部に周端の一端が固定され、水平方向に配置され、該鉛直建築部材の端面を受ける端板部と、を含んで構成され、少なくとも1つの第1の前記鉛直建築部材の端部が嵌合される空間を構成するH形の水平方向断面形状をなす基本継手部材。
(c2)板面が前記基本継手部材の前記中間板部と同一面内に延び、一側端が前記基本継手部材の一方の前記側板部の外面中央部への固定部となり、第1の前記水平建築部材をその端面を該側板部の外面で受けて連結するための第2の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、該第1の前記水平建築部材の溝部に嵌合されるか又は該第1の前記水平建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる第1の連結用板部を含んで構成された第1の応用継手部材。
(c3)前記基本継手部材に嵌合される第1の前記鉛直建築部材の端部のうち前記中間板部に平行な少なくとも1つの側面に固定取付されるための第3の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設された第3の側板部と、該第3の側板部の中央部に一側端が固定され、前記第1及び第2の側板部に平行に延び、第1の前記水平建築部材に対して直角方向に延び、材軸が水平方向に延びる第2の前記水平建築部材を連結するための第4の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、該第2の前記水平建築部材の溝部に嵌合されるか又は該第2の前記水平建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる第2の連結用板部と、を含んで構成された第2の応用継手部材。」
(四)審判請求された訂正事項の適否
1.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否についての検討
(1)訂正事項1について
訂正事項1中の「建築物の箇所に応じて構成された」という訂正は、建築部材の連結方法の限定的減縮であり、特許請求の範囲の減縮に該当し、全文補正明細書第17頁第7行目から第17頁18行目(特許公告公報第8欄第38行目〜48行目)の「第1図のIVdの箇所使用される第4図(d)の継手装置」、同明細書第18頁12行目(同公報第9欄第10行目)の「第1図のIVeの箇所に使用される第4図(e)の継手装置」、同明細書第21頁第18行目から第22頁第1行目(同公報第10欄第18行目〜第21行目)の「第1図のVの箇所に使用される第5図の継手装置、第1図のIVaの箇所に使用される第6図(a)の継手装置、及び第2図のIVcの箇所に使用される第6図(c)の継手装置」、同明細書第23頁第20行目〜第24頁第1行目(同公報第11欄第7行目〜第10行目)の「柱等金物13を用いる第8図(a)〜(e)の継手装置」、同明細書第25頁第4行目〜第6行目(同公報第11欄第29行目〜第31行目)の「第1図Xbの箇所に使用される第10図(b)の継手装置」の記載を根拠とするものであるから、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項1中の「端面に溝部を有するか又は2本の平行部材の」という訂正は、(a1)及び(a2)の建築部材の限定的減縮であり、特許請求の範囲の減縮に該当し、同明細書第10頁第20行目〜第11頁第2行目(同公報第6欄第12行目〜14行目)の「前記建築部材の端面に設けた溝部等に嵌合するか、又は2本の平行部材からなる建築部材間に挟み込み」という記載、同明細書第18頁第3行目〜第6行目(同公報第9欄第2行目〜6行目)の「例えば柱26、土台25及び床梁27の接合端部中央に予め切って形成した溝に、柱脚金物3及び梁接続金物6における連結用板部3b、6bや土台接続板5が挿入されるようにして、」という記載、同明細書第19頁第13行目〜第16行目(同公報第9欄第28行目〜第31行目)の「又、各建築部材は、その端部に溝Sを切り込む以外に第4図(e)に示すように平行な長手部材25a、25bにより各連結用板部を保持するようにしても良い。」という記載、及び第4図(d)、(e)の記載を根拠とするものであるから、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項1中の「プレカット木材からなる、」という訂正は、(a1)及び(a2)の建築部材の限定的減縮であり、特許請求の範囲の減縮に該当し、同明細書第8頁第9行目(同公報第5欄第9行目)及び同明細書第25頁第15行目〜第16行目(同公報第11欄第39行目)の「プレカット木材」という記載を根拠とするものであるから、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項1中の「使用数及び使用箇所を適宜選択して」という訂正は、Cの建築部材用継手装置の限定的減縮である、特許請求の範囲の減縮に該当し、同明細書第17頁第4行目〜第5行目(同公報第8欄第35行目)、同明細書第21頁第15行目〜第16行目(同公報第10欄第16行目〜第17行目)及び同明細書第23頁第19行目(同公報第11欄第5行目〜第6行目)の「使用数及び使用箇所を適宜の選択に応じ」という記載を根拠とするものであるから、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項1中の(c1)、(c2)及び(c3)における訂正は、基本継ぎ手部材における挿通孔、中間板部並びに端板部、第1の応用継手部材における挿通孔と連結用板部、及び第2の応用継手部材における連結用板部の使用方法を限定することにより、各建築部材の連結構成方法を限定的減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、同明細書第10頁第17行目〜第11頁第3行目(同公報第6欄第9行目〜第15行目)の「基本継手部材及び応用継手部材を、例えば、柱梁等を構成する建築部材の端面にその側板部又は端板部を当て、該側板部又は端板部よりこれに直角に延びる連結用板部を前記建築部材の端面に設けた溝部等に嵌合するか、又は2本の平行部材からなる建築部材に挟み込み、締結手段で締結することにより、各建築部材が連結構成され」という記載、同明細書第15頁第5行目〜第7行目(同公報第7欄第42行目〜第44行目)の「軸材が鉛直方向に延びる建築部材としての柱26への締結部となる、鉛直方向に配置された中間板部3b」という記載、同明細書第第19頁第2行目〜第3行目(同公報第9欄第18行目〜第19行目)の「柱26の端部は、柱脚金物3側の端板部3cに受けられる」という記載、同明細書第18頁第18行目〜第19頁第1行目(同公報)の「柱26の締結は、梁接続金物6の側板部6aの挿通孔4から挿入したボルトを柱26の挿通孔と柱脚金物3の側板部3aの挿通孔4を挿通させて後該ボルト先端をナットに嵌合する。」という記載、及び第4図(a)(d)(e)、第5図、第7図の記載を根拠とするものであり、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項1中の「材軸が鉛直方向に延びる第2の前記水平建築部材」という記載を、「材軸が水平方向に延びる第2の前記水平建築部材」とする訂正は、特許請求の範囲の(a2)には「材軸が水平方向に延びる少なくとも1つの水平建築部材。」というように「水平建築部材」は「材軸が水平方向に延びる」ということが前段で定義されており、前記(c3)の「材軸が鉛直方向に延びる第2の前記水平建築部材」は、前記前段の定義からみて「材軸が水平方向に延びる第2の前記水平建築部材」の明らかな誤字であると認めらるから、前記訂正は誤記の訂正に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、誤記の訂正に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に伴う訂正であり、明瞭でない記載の釈明に該当し、前記訂正事項1についての検討で示した理由により、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
2.独立特許要件についての検討
本件特許は、同一出願人の同日出願である特許第1928996号に係る発明と同一であるから、特許法第39条第2項の規定に該当するとして平成10年10月20日(平成10年審判第35498号)に無効審判請求されたものであり、その無効審判請求に対して当審では、請求不成立の審決をし、その審決を不服とする訴えが東京高等裁判所に出訴されているので、訂正後発明が特許法第39条第2項の規定に該当するか否かを検討する。
(1)訂正後発明
訂正明細書の請求項1に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の1に記載されたと次のとおりのものである。
「以下のBに示される締結手段と、建築物の箇所に応じて構成されたCに示される建築部材用継手装置と、を用い、Aに示される建築部材を連結構成して、建築物の骨組を構築する建築物の骨組構築方法。
A 次の(a1)及び(a2)を含む建築部材。
(a1)材軸が鉛直方向に延び、端面に溝部を有するか又は2本の平行部材のプレカット木材からなる、少なくとも1つの鉛直建築部材。
(a2)材軸が水平方向に延び、端面に溝部を有するか又は2本の平行部材のプレカット木材からなる、少なくとも1つの水平建築部材。
B ボルトと該ボルトにねじ嵌合されるナットとからなる締結手段。
C 次の(c1)の継手部材に(c2)及び(c3)の少なくとも1つの継手部材を使用数及び使用箇所を適宜選択して組み合わせて構成した建築部材用継手装置。
(c1)鉛直方向に所定間隔をもって平行に対面して配置された一対の第1及び第2の側板部と、これら側板部の相対する内面の中央部に両側端が固定されて両側板部を相互連結し、かつ、前記鉛直建築部材を固定するための第1の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、鉛直方向に配置され、該鉛直建築部材の溝部に嵌合されるか又は該鉛直建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる中間板部と、前記側板部及び中間板部に周端の一端が固定され、水平方向に配置され、該鉛直建築部材の端面を受ける端板部と、を含んで構成され、少なくとも1つの第1の前記鉛直建築部材の端部が嵌合される空間を構成するH形の水平方向断面形状をなす基本継手部材。
(c2)板面が前記基本継手部材の前記中間板部と同一面内に延び、一側端が前記基本継手部材の一方の前記側板部の外面中央部への固定部となり、第1の前記水平建築部材をその端面を該側板部の外面で受けて連結するための第2の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、該第1の前記水平建築部材の溝部に嵌合されるか又は該第1の前記水平建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる第1の連結用板部を含んで構成された第1の応用継手部材。
(c3)前記基本継手部材に嵌合される第1の前記鉛直建築部材の端部のうち前記中間板部に平行な少なくとも1つの側面に固定取付されるための第3の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設された第3の側板部と、該第3の側板部の中央部に一側端が固定され、前記第1及び第2の側板部に平行に延び、第1の前記水平建築部材に対して直角方向に延び、材軸が水平方向に延びる第2の前記水平建築部材を連結するための第4の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、該第2の前記水平建築部材の溝部に嵌合されるか又は該第2の前記水平建築部材の2本の平行部材間に挟み込まれる第2の連結用板部と、を含んで構成された第2の応用継手部材。」(以下、「訂正後発明」という。)
(2)対象発明
本件特許と同日付け同一人から出願された特許第1928996号の請求項1に係る発明は、公告決定された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「以下のAに示される締結手段と共に用いられ、Bに示される基本継手部材にC及びDに示される第1及び第2の応用継手部材の少なくとも1つを組み合わせて構成された建築部材用継手装置。
A ボルトと該ボルトにねじ嵌合されるナットとからなる締結手段。
B 鉛直方向に所定間隔をもって平行に対面して配置された一対の第1及び第2の側板部と、
これら側板部の相対する内面の中央部に両側端が固定されて両側板部を相互連結し、かつ第1の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、鉛直方向に配置された中間板部と、
前記側板部及び中間板部に周端の一端が固定され、水平方向に配置された端板部と、を含んで構成され、材軸が鉛直方向に延びる少なくとも1つの第1の鉛直建築部材の端部が嵌合される空間を構成するH形の水平方向断面形状をなす基本継手部材。
C 板面が前記基本継手部材の前記中間板部と同一面内に延び、一側端が前記基本継手部材の一方の前記側板部の外面中央部への固定部となり、材軸が水平方向に延びる第1の前記水平建築部材を連結するための第2の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設された第1の連結用板部を含んで構成された第1の応用継手部材。
D 前記基本継手部材に嵌合される前記第1の鉛直建築部材の端部のうち前記中間板部に平行な少なくとも1つの側面に固定取付されるための第3の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設された第3の側板部と、
該第3の側板部の中央部に一側端が固定され、前記第1及び第2の側板部に平行に延び、第1の前記水平建築部材に対して直角方向に延び、材軸が水平方向に延びる第2の水平建築部材を連結するための第4の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設される第2の連結用板部と、を含んで構成された第2の応用継手部材。」(以下、「対象発明」という。)
(3)対比
訂正後発明と対象発明を対比する。
対象発明における、「締結手段」、「基本継手部材」、「第1の応用継手部材」、「第2の応用継手部材」は、訂正後発明における、「締結手段」、「基本継手部材」、「第1の応用継手部材」、「応用継手部材」にそれぞれ対応するものであり、対象発明においても、建築部材として「材軸が鉛直方向に延びる少なくとも1つの第1の鉛直建築部材」及び「材軸が水平方向に延びる少なくとも1つの水平建築部材」を用いるものであり、対象発明における、「Bに示される基本継ぎ手部材にC及びDに示される第1及び第2の応用継手部材の少なくとも1つを組み合わせて構成された建築部材用継手装置」は、訂正後発明における、「建築物の箇所に応じて構成されたCに示される建築物用継手装置」に対応するものであるから、訂正後発明と対象発明は、次の一致点において両者の構成は一致し、次の相違点において両者の構成は相違する。
一致点:材軸が鉛直方向に延びる少なくとも1つの鉛直建築部材と材軸が水平方向に延びる少なくとも1つの水平建築部材を、ボルトと該ボルトにねじ嵌合されたナットからなる締結手段を用いて連結する建築部材用継手装置において、建築物の箇所に応じて、鉛直方向に所定間隔をもって平行に対面して配置された一対の第1及び第2の側板部と、これら側板部の相対する内面の中央部に両側端が固定されて両側板部を相互連結し、かつ第1の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設され、鉛直方向に配置された中間板部と、前記側板部及び中間板部に周端の一端が固定され、水平方向に配置された端板部と、を含んで構成され、材軸が鉛直方向に延びる少なくとも1つの第1の鉛直建築部材の端部が嵌合される空間を構成するH形の水平方向断面形状をなす基本継手部材に、板面が前記基本継手部材の前記中間板部と同一面内に延び、一側端が前記基本継手部材の一方の前記側板部の外面中央部への固定部となり、材軸が水平方向に延びる第1の前記水平建築部材を連結するための第2の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設された第1の連結用板部を含んで構成された第1の応用継手部材及び前記基本継手部材に嵌合される第1の前記鉛直建築部材の端部のうち前記中間板部に平行な少なくとも1つの側面に固定取付されるための第3の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設された第3の側板部と、該第3の側板部の中央部に一側端が固定され、前記第1及び第2の側板部に平行に延び、第1の前記水平建築部材に対して直角方向に延び、材軸が水平方向に延びる第2の前記水平建築部材を連結するための第4の前記締結手段のボルトが挿通される挿通孔が開設される第2の連結用板部と、を含んで構成された第2の応用継手部材を組み合わせて構成する建築部材用継手装置。
相違点1:訂正後発明においては、前記構成の建築部材用継手装置を、建築物の骨組を構築する建築物の骨組構築方法としたのに対して、対象発明においては、建築部材用継手装置とした点。
相違点2:訂正後発明においては、鉛直建築部材及び水平建築部材を、端面に溝部を有するか、又は2本の平行部材のプレカット木材とし、前記鉛直建築部材及び水平建築部材の基本継手部材の中間板部、第1の応用継手部材の第1の連結用板部及び第2の応用継手部材の第2の連結用板部への連結を、その端面が端板部及び側板部で受けるようにし、溝部に嵌合するか又は2本の平行部材間に挟み込むようにするとしたのに対して、対象発明においては、単に、鉛直建築部材及び水平建築部材とし、前記鉛直建築部材及び水平建築部材の基本継手部材の中間板部、第1の応用継手部材の第1の連結用板部及び第2の応用継手部材の第2の連結用板部への連結を、単に連結するとした点。
(4)判断
前記相違点について検討する。
先ず、相違点1について検討する。
訂正後発明における「建築物の骨組」とは、「建築大辞典」(株)彰国社昭和59年第1版第8刷発行の1431頁「骨組」の項には、「線材の組合せによって造られた構造要素。主として構造力学上荷重を支持し外力に抵抗する目的で用いられるもの。」、又同書の同頁「骨組構造」の項には、「柱や梁、あるいはトラスなどの線材の組合せで主として荷重を支え、外力に抵抗できるように構成された構造。」というように定義されている。
一方、対象発明における「建築部材用継手装置」における「建築部材」とは、前記「建築物の骨組」を構築するための建築部材を含む広範な部材の総称であることは明らかであり、広範な建築部材に対して、前記「建築部材用継手装置」を適用した建築物構築方法は、建築部材として、荷重を支持する「鉛直建築部材」及び「水平建築部材」を選択し、前記「建築部材継手装置」を用いた「建築物の骨組構築方法」とした本件特許発明と相違するものであるから、訂正後発明と対象発明は、単にカテゴリーが相違するだけでなく、その構成は実質的に相違するものである。
次に、相違点2について検討する。
訂正後発明においては、建築部材の形状、材質を端面に溝部を有するか、又は2本の平行部材のプレカット木材としたのに対して、対象発明においては、形状、材質について何等の限定はなく、その構成は実質的に相違するものであり、さらに、訂正後発明においては、各建築部材の基本継手部材の中間板部、第1の応用継手部材の第1の連結用板部及び第2の応用継手部材の第2の連結用板部への連結の際、その端面が端板部及び側板部で受けるようにし、溝部に嵌合するか又は2本の平行部材間に挟み込むようにする、つまり、建築部材の端面を端板部、側板部に接するようにし、中間板部、第1,2の連結用板部の両面に建築部材が接するように連結する構成に限定しているのに対して、対象発明においては、鉛直建築部材と水平建築部材の基本継手部材の中間板部、第1の応用継手部材の第1の連結用板部及び第2の応用継手部材の第2の連結用板部への連結の際、その端面が端板部及び側板部に接しない状態の連結、中間板部、第1、2の連結板部の片側だけに建築部材が接するように連結するものも含むものであり、その構成は実質的に相違する。
(五)結び
以上のとおりであるから、本件審判請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条1項の規定により、訂正についてはなお従前の例によるとされる、特許法第126条第1項ただし書き1号から3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条ただし書き、2項及び3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-05-25 
出願番号 特願昭62-64392
審決分類 P 1 41・ 4- Y (E04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青山 敏  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 鈴木 憲子
小野 忠悦
登録日 1995-05-12 
登録番号 特許第1928997号(P1928997)
発明の名称 建築物の骨組構築方法  
代理人 笹島 富二雄  
代理人 西山 春之  

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