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審決分類 |
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない H01L |
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管理番号 | 1023694 |
審判番号 | 審判1999-35661 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-10-18 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-11-15 |
確定日 | 2000-09-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2739413号発明「基板搬送用スカラ型ロボット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 事件の経緯と本件特許発明 本件特許第2739413号は、特許法第30条第1項適用の申請(平成4年11月27日 日刊工業新聞において発表)を伴って、平成5年5月26日に特許出願され、平成10年1月23日にその設定登録がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、特許明細書に記載されたとおりの以下の事項により特定されるものである。 【請求項1】 減速機付きでモータ13を中心部へ内蔵した基台上に該モータ13の駆動により回動されるよう胴体5を取付け、該胴体5内には1対の減速機付きモータ7,7’を対称となる関係に取付け、各出力軸にはモータ7,7’の駆動で回動されるものとなる第1アーム4,4’の片側端部を取付け、且つ該第1アーム4,4’の他端部には各アーム4,4’の回動と共に、各アーム体内でプーリ及びタイミングベルトを介し一定比で回動されるものとなる支軸3a,3a’を該アーム4,4’の回動とは無関係の状態に突出させ、該支軸3a,3a’には第2アーム3,3’の片側端部を取付け、且つ該第2アーム3,3’の他端には各アーム3,3’の回動と共に各アーム体内でプーリ及びタイミングベルトを介して一定比で回動されるものとなる支軸2a,2a’を該アーム体3,3’の回動とは無関係の状態に突出させ、且つ該支軸2a,2a’には夫々れ基板15,15’を吸引止着するための1つがコ字形をなし、他の1つは上記コ字形内を干渉しないように作動する第3アーム2,2’を取付けしめ、該アーム2,2’により処理前基板を取り出し、処理箇所への搬送及び処理済み基板の返送を同一水平線上で互い違いの対称関係で同時進行するように構成したことを特徴とする基板搬送用スカラロボット。(以下、「本件発明」という。) 2 請求人の主張 これに対して、請求人は、甲第1号証として、本件特許公報、甲第2号証として、パンフレット「セミコン・ジャパン92 出展社ご案内」(表紙、第44,136,169頁並びに裏表紙)、甲第3号証として、本件に係る特許出願の「新規性喪失の例外証明書提出書」並びに「発明の新規性の喪失の例外の適用を受けるための証明書」の各写し及び甲第4号証として、「新製品 大気用 クリーンロボット RR701シリーズ RR700シリーズ 長ストロークZ軸RZ106」と表記されたローツェ株式会社作成のパンフレットを提出して、甲第2号証から、大気用クリーンロボットRR701が、本件特許出願の出願前に開催された展覧会「セミコン・ジャパン92」に出展された事実が認められ、甲第4号証をみると、大気用クリーンロボットRR701が、甲第3号証の「発明の新規性の喪失の例外の適用を受けるための証明書」に記載された「RR701シリーズ」と同一のものであり、かつ、前記出展に伴う新規性喪失に関しては、それに関する例外規定の適用申請はなされていないのであるから、本件発明は、特許法第29条第1項第1号に規定する発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する本件特許を無効とすべき旨主張している。 さらに、甲第5号証として、「自動化技術」第19巻8号(1987)(表紙、第54〜60頁、第128頁)、甲第6号証として、「電子材料」(1991年8月)(表紙、第38〜45頁、第126頁)、甲第7号証として、「実願平2-37436号(実開平3-126583号)のマイクロフィルム」及び甲第8号証として、パンフレット「セミコン・ジャパン92 出展社ご案内」(表紙、第92〜94頁、第129頁)を提出して、たとえ、展覧会「セミコン・ジャパン92」において、大気用クリーンロボットRR701の内部構造を見ることができなかったとしても、甲第5〜7号証の記載から明らかなように、その構造は周知であるから、本件発明は、同展覧会において公知となった発明である旨主張している。 3 被請求人の主張 他方、被請求人は、乙第1号証として、「セミコン・ジャパン92 ローツェ株式会社 出展レイアウト」と表記された図面、乙第2号証として、展示風景の写真、乙第3号証として「ダブルアームクリーンロボットRR701シリーズ」と表記されたパンフレット及び乙第4号証として、ローツェ株式会社 代表取締役 崎谷文雄の「陳述書」を提出して、展覧会「セミコン・ジャパン92」への出展は、日刊工業新聞における発表と密接不可分の関係にあり、同発表に係る特許法第30条第1項適用の申請により、発明の新規性の喪失の例外規定の適用を受けるべきものである旨主張すると共に、同展示会への出展は、「クリーンロボットRR701」の外観及び動きを観覧させたにすぎないことは、乙第1、2、4号証より明らかであり、かつ、同展示会で提供したパンフレットも、乙第3号証のとおり内部構造を開示しないものであるから、同出展は、本件発明を開示するものではない旨主張している。 4 当審の判断 まず、「セミコン・ジャパン92」への出展が、本件特許に係る出願の際申請された、特許法第30条第1項の適用を受けることの是否について検討すると、日刊工業新聞への掲載による公開により、発明者の意志に関わらず「セミコン・ジャパン92」への展示が発生したものとは認められないから、同出展による新規性の喪失に関しては、当該出願の際に申請された特許法第30条第1項の適用を受けることはできず、それぞれの公開行為ごとに特許法第30条第1項又は第3項の適用を受けるための手続きをとるべきものであるところ、「セミコン・ジャパンへ92」への展示に関しては、同手続きはとられていないので、同展示にかかる新規性の喪失に関しては、特許法第30条第3項の適用を受けることはできない。 次に、展覧会「セミコン・ジャパン92」に出展された大気用クリーンロボットの開示事項について検討すると、まず、「セミコン・ジャパン92」の開催時期及び開催個所に関しては当事者間に争いはなく、甲第2号証の表紙には、「1992年12月2日(水)〜4日(金)10:00am〜5:00pm 幕張メッセ」と記載されており、「セミコン・ンャパン92」が日本国内において、本件の出願前に開催されたものと認められる。 また、甲第2号証には、第44頁の小間配置図の右側に「ローツェ(株) 3-215」とあり、その136頁には、「ローツェ(株)・・(出展製品)・・大気用クリーンロボット RR304/RR308/RR701・・」と記載されており、展示された「大気用クリーンロボット RR701」は、甲第4号証及び乙第3号証に示されるRR701シリーズの製品であると認められ、このことに関しては、当事者間に争いはない。 しかしながら、乙第1号証、乙第2号証及び乙第4号証を参酌すれば、同展示において、大気用クリーンロボットRR701の外観及び作動を見せたことは明らかであるが、「セミコン・ジャパン92」の開催の趣旨に関わらず、その内部構造を開示したとする客観的証拠は何等認められないので、出展された「大気用クリーンロボット RR701」が如何なる構成を有するにかかわらず、公開された発明は、その外観及び作動から把握可能な発明である。 RR701の外観及び作動から把握できる発明について検討すると、甲第3号証に記載の、「・・「RR701シリーズ=写真」・・セミコンジャパン展に出品・・アームを業界初のダブル方式でウエハー交換時間を従来の三分の一に短縮した。・・このロボットは回転する左右の胴体に左右対称のアームを2本取り付け、ロボット上面からみて、それぞれのアームが同じ直線上でウエハーなどの基板を搬送する仕組み。また、衝突しない構造にもなっている。」は、その展示から把握可能な事項を紹介しているものと解され、甲第4号証、乙第3号証に示される外観を併せ勘案すると、当該展示において、 基台上に回動する胴体及び一対の胴体に対して回動する第1アーム、第1アームに対して回動する第2アーム及び、夫々れ基板を止着するための1つがコ字形をなし、他の1つは上記コ字形内を干渉しないように作動し、第2アームに対して回動する第3アーム、および、これらアームにより処理前基板を取り出し、仮想処理装置への搬送及び処理済み基板の返送を同一水平線上で互い違いの対称関係で同時進行するように構成した基板搬送用スカラロボット を直接把握し得たものと認める。 また、作動を観覧することにより、その装置が何らかの駆動源を内蔵すること及び駆動力の伝達機構を有すること及び止着が吸引によることは、それが直接見ることができなくても、当業者にとって把握可能な事項と言うべきである。 よって、展覧会「セミコン・ジャパン92」において、公然知られた発明は、以下のものと認める。 基台上に回動する胴体及び一対の胴体に対して回動する第1アーム、第1アームに対して回動する第2アーム及び、夫々れ基板を吸引止着するための1つがコ字形をなし、他の1つは上記コ字形内を干渉しないように作動し、第2アームに対して回動する第3アーム、および、何らかの駆動源を内蔵し、駆動力の伝達機構を有することにより、これらアームにより処理前基板を取り出し、処理箇所への搬送及び処理済み基板の返送を同一水平線上で互い違いの対称関係で同時進行するように構成した基板搬送用スカラロボット(以下、「公知発明」という。) 次いで、本件発明と上記公知発明とを比較すると、両発明は、 基台上に回動する胴体及び一対の胴体に対して回動する第1アーム、第1アームに対して回動する第2アーム及び、夫々れ基板を吸引止着するための1つがコ字形をなし、他の1つは上記コ字形内を干渉しないように作動し、第2アームに対して回動する第3アーム、および、何らかの駆動源を内蔵し、駆動力の伝達機構を有することにより、これらアームにより処理前基板を取り出し、処理箇所への搬送及び処理済み基板の返送を同一水平線上で互い違いの対称関係で同時進行するように構成した基板搬送用スカラロボット の発明である点で一致し、本件発明は、少なくても以下の点で公知発明と相違している。 本件発明が、胴体5内には1対の減速機付きモータ7,7’を対称となる関係に取付け、各出力軸にはモータ7,7’の駆動で回動されるものとなる第1アーム4,4’の片側端部を取付け、且つ該第1アーム4,4’の他端部には各アーム4,4’の回動と共に、各アーム体内でプーリ及びタイミングベルトを介し一定比で回動されるものとなる支軸3a,3a’を該アーム4,4’の回動とは無関係の状態に突出させ、該支軸3a,3a’には第2アーム3,3’の片側端部を取付け、且つ該第2アーム3,3’の他端には各アーム3,3’の回動と共に各アーム体内でプーリ及びタイミングベルトを介して一定比で回動されるものとなる支軸2a,2a’を該アーム体3,3’の回動とは無関係の状態に突出させたもの(以下、「相違構成」という。)であるのに対して、公知発明は、駆動源及び伝達機構を有し、各アームの配置は特定されるもののそのような構成に特定されない点。 そして、本件発明は、この相違構成を有することにより、所期の効果を奏するものである。 以下、上記相違構成について検討する。 請求人が主張するように、これら相違構成がたとえ甲第5〜7号証に開示されていて、周知であるとしても、上記の展示をみることにより把握される公知発明に基づいて、その内部構造が上記相違構成を有するものとの認識に至るためには、公知・周知の各種技術より、取捨選択して、それらを組み合わせて上記公知発明に適用する必要があり、甲第5〜7号証の記載は、上記の展示を見ることにより把握される公知発明の内部構造が、直ちに相違構成そのものであるとするものではない。 なお、請求人は、新規性喪失の例外規定(特許法第30条第1頃)の適用申請書の対象である日刊工業新聞に掲載された記事中のダブルアームクリーンロボット「RR701シリーズ」と、「セミコン・ジャパン92」に出展された「大気クリーンロボットRR701」とは、同一の製品であるから、本件発明は、同出展により公知となった旨主張するが、当該出展された「大気クリーンロボットRR701」が、如何なる構成を有するものであったとしても、それにより公開された発明は、上記のとおりのものと認められるので、前記新規性喪失の例外規定の申請はさておき、上記出展をもって、本件発明を公知であるとすることはできない。 5 むすび 以上説示のとおり、本件発明は、「セミコン・ジャパン92」に於いて公然知られた発明であるとすることはできないから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2000-07-25 |
出願番号 | 特願平5-163755 |
審決分類 |
P
1
112・
112-
Y
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中西 一友 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
井口 嘉和 神崎 潔 |
登録日 | 1998-01-23 |
登録番号 | 特許第2739413号(P2739413) |
発明の名称 | 基板搬送用スカラ型ロボット |
代理人 | 井上 元廣 |
代理人 | 忰熊 弘稔 |
代理人 | 山下 英樹 |