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審決分類 審判 全部申し立て 特39条先願  C08G
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 産業上利用性  C08G
管理番号 1024317
異議申立番号 異議2000-70760  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-01-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-25 
確定日 2000-08-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2938811号「半導体装置の製法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2938811号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2938811号に係る発明についての出願は、昭和63年9月29日に出願された特願昭63-244880号の一部を新たな特許出願として、平成8年7月22日に出願され、平成11年6月11日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、小野尚純により特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年7月12日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のa〜cのとおりである。
a.特許明細書【0034】の【表1】(特許公報第5頁上段)のシリコーン化合物Aの欄の記載を削除する。
b.特許明細書【0034】の【表1】(特許公報第5頁上段)の「シリコーン化合物B」を「シリコーン化合物A」と、「シリコーン化合物C」を「シリコーン化合物B」と訂正する。
c.特許明細書【0033】(特許公報第8欄第46〜48行)の「【実施例1〜9】を「【実施例1〜6】」と、「シリコーン化合物A〜C」を「シリコーン化合物A〜B」と訂正する。
d.特許明細書【0035】(特許公報第9欄表下第1行〜第10欄表下第1行)の「シリコーン化合物A〜C」を「シリコーン化合物A〜B」と訂正する。
e.特許明細書【0036】の【表2】(特許公報第6頁上段)のシリコーン化合物Aの欄の記載及び実施例1,4,7を削除し、「シリコーン化合物B」を「シリコーン化合物A」と、「シリコーン化合物C」を「シリコーン化合物B」と訂正する。
また、同表の、「実施例2」、「実施例3」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例8」及び「実施例9」を、それぞれ「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例5」及び「実施例6」と訂正する。
f.特許明細書【0037】(特許公報第11欄式下第1〜6行)の「実施例1〜9」を「実施例1〜6」と訂正する。
g.特許明細書【0038】の【表3】(特許公報第6頁下段)の「シリコーン化合物B」を「シリコーン化合物A」と訂正する。
h.特許明細書【0040】の【表4】(特許公報第13欄)の実施例1,4,7を削除し、「実施例2」、「実施例3」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例8」及び「実施例9」を、それぞれ「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例5」及び「実施例6」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、訂正範囲の適否及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、訂正前の特許明細書において、請求項1の(2)式の要件を満たしていない実施例記載の「シリコーンA」について、これを削除して実施例の記載を請求項1の記載と整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲をこえるものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、上記訂正事項b乃至hは、訂正事項aに対応してシリコーン化合物の識別記号(A〜C)及び実施例番号を整理するための、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲をこえるものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号。以下、「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立についての判断

ア.申立ての概要
特許異議申立人小野尚純は、下記甲第1〜13号証を提出して、本件の請求項1及び2に係る特許は、次の理由により取り消されるべきである旨主張している。
(i)請求項1及び2に係る本件発明は、分割の原出願である特願昭63-244880号(特開平2-91965号(甲第12号証)、特公平7-76257号(甲第13号証))に係る発明と同一であり、本件出願と分割の原出願とは、同一の発明について同一の日にされた二以上の特許出願であるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものである。
(ii)訂正前の本件明細書には、請求項1及び2に係る本件発明の「素子サイズ」および「素子上のAl配線の幅」に関する構成について実施例で実証されていないので、これらは未完成発明であり、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条柱書の規定に違反してされたものである。
(iii)訂正前の本件明細書には、請求項1及び2に係る本件発明の「素子サイズ」および「素子上のAl配線の幅」に関する構成について、【発明の効果】の項以外のいずれにも記載がなく、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないので、請求項1及び2に係る本件発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件を満たしていない出願についてされたものである。
(iv)分割の原出願の明細書には、「素子サイズが16mm2 以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下」という請求項1及び2に係る本件発明の構成について、【発明の効果】の項に効果として記載されているのみであって製法の発明の構成としては開示されておらず、本件出願は適法な分割出願ではないので、出願日の遡及は認められない。
そして、請求項1及び2に係る本件発明は、本件の現実の出願時(平成8年7月22日)以前に頒布された第12号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(v)上記出願日の遡及が認められるとしても、請求項1及び2に係る本件発明は、遡及出願日以前に頒布された甲第1〜11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
〈証拠方法〉
甲第 1号証:特開昭63-251419号公報
甲第 2号証:特開昭63- 41527号公報
甲第 3号証:特開昭61- 47725号公報
甲第 4号証:特開昭61- 98726号公報
甲第 5号証:特開昭61-259552号公報
甲第 6号証:特開昭60- 30157号公報
甲第 7号証:特開昭62- 50324号公報
甲第 8号証:特開昭60- 36527号公報
甲第 9号証:特開昭62-192423号公報
甲第10号証:特開昭62- 84147号公報
甲第11号証:特開昭60- 17937号公報
甲第12号証:特開平 2- 91965号公報
甲第13号証:特公平 7- 76257号公報

イ.判断
(1)訂正後の本件発明
本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正明細書の請求項1及び2に記載された下記の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 下記の(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて、素子サイズが16mm2 以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の半導体素子を封止する半導体装置の製法。(A)下記の一般式(1)で表される結晶性エポキシ樹脂が10重量%以上含有されているエポキシ樹脂。

(1)
[式(1)中、RはHまたはCH3である。]
(B)ノボラック型フェノール樹脂。
(C)下記の一般式(2)で表されるシリコーン化合物。

(2)
[式(2)中、Rは1価の有機基であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。ただし、1分子中において、上記Rのうちの少なくとも2個はアミノ基置換有機基,エポキシ基置換有機基,水酸基置換有機基,ビニル基置換有機基,メルカプト基置換有機基およびカルボキシル基置換有機基からなる群から選択された基である。mは0〜500の整数である。]
【請求項2】 C成分のシリコーン化合物の含有割合が、エポキシ樹脂組成物中のA成分であるエポキシ樹脂,B成分であるノボラック型フェノール樹脂およびC成分であるシリコーン化合物の合計量に対して、50重量%以下に設定されている請求項1記載の半導体装置の製法。」

(2)分割の適否及び出願日の遡及について
特許異議申立人は、「分割の原出願の明細書には、「素子サイズが16mm2 以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下」という本件発明1及び2の構成について、【発明の効果】の項に効果として記載されているのみであって製法の発明の構成としては開示されておらず、本件出願は適法な分割出願ではないので、出願日の遡及は認められない」旨主張している。
これについて検討すると、原出願の明細書の特許請求の範囲1には、
「(1)下記の(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。(A)下記の一般式(I)で表される4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)-3,3’,5,5’-テトラメチルビフエニルが10重量%以上含有されているエポキシ樹脂。

(I)
[式(I)中、RはHまたはCH3である。]
(B)ノボラック型フェノール樹脂。
(C)下記の一般式(II)で表されるシリコーン化合物。

(II)
[式(II)中、Rは1価の有機基であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。ただし、1分子中において、上記Rのうちの少なくとも2個はアミノ基置換有機基,エポキシ基置換有機基,水酸基置換有機基,ビニル基置換有機基,メルカプト基置換有機基およびカルボキシル基置換有機基からなる群から選択された基である。mは0〜500の整数である。]-略-
(3)C成分のシリコーン化合物の含有割合が、エポキシ樹脂組成物中のA成分であるエポキシ樹脂,B成分であるノボラック型フェノール樹脂およびC成分であるシリコーン化合物の合計量に対して、50重量%以下に設定されている請求項(1)または(2)記載の半導体装置。-略-」が記載されている。
また、原出願の明細書には、
「・・上記特殊なエポキシ樹脂組成物による封止により、超LSI等の封止に充分対応でき、素子サイズが16mm2 以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の特殊な半導体装置において、上記のような高信頼度が得られるようになるのであり、これが大きな特徴である。」(甲第12号証第5頁左上欄第10〜16行)と記載されており、
「以上の実施例および比較例によって得られた粉末状のエポキシ樹脂組成物を用い、半導体素子をトランスファー成形でモールドすることにより半導体装置を得た。このようにして得られた半導体装置について、電圧印加状態におけるプレッシャー釜による1000時間の信頼性テスト(以下「PCBTテスト」と略す)および-50℃/30分〜150℃/30分の300回の温度サイクルテスト(以下「TCTテスト」と略す)の測定を行った。」(甲第12号証右下欄第1〜10行)との実施例が示されている。
そうすると、原出願の明細書には、本件発明1における「(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物」と同様の組成物を、「素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の特殊な半導体装置」の封止に用いることが記載されており、また、このようなエポキシ樹脂組成物を用いて半導体装置を製造する実施例も記載されているのであるから、同明細書には、本件発明1における「(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物」を用いて、素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の半導体を封止する半導体装置の製法、及びその製法において「C成分のシリコーン化合物の含有割合が、エポキシ樹脂組成物中のA成分であるエポキシ樹脂,B成分であるノボラック型フェノール樹脂およびC成分であるシリコーン化合物の合計量に対して、50重量%以下に設定」(請求項3)すること、即ち本件発明1及び2の構成が、記載されているものというべきである。
したがって、出願の分割は適法なものであるから、本件の出願日は、原出願の出願日である昭和63年9月29日まで遡及が認められる。

(3)特許法第39条第2項違反について
本件発明1と分割の原出願の請求項1に係る発明とは、ともに、本件発明1における「(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物」を用いる点で共通するものの、本件発明1が、該組成物を用いて、「素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の半導体素子を封止する半導体装置の製法」であるのに対して原出願の請求項1に係る発明は、該組成物を用いて「半導体素子を封止してなる半導体装置」である点で両者は相違している。
そして、このような発明のカテゴリーの相違及び封止対象の特定の有無には十分な技術的意味が認められるので、これらの発明が同一であるとすることはできない。
また、本件発明2と原出願の請求項3に係る発明についても同様に、これらの発明が同一であるとすることはできない。

(4)特許法第29条柱書違反について
訂正後の本件明細書には、本件発明1及び2の構成要件である「素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下」の半導体素子を樹脂封止することは実施例には記載されていないが、実施例を参照しなければこのような寸法の半導体素子の樹脂封止は実施し得ないというものではなく、同明細書の、
「・・上記特殊なエポキシ樹脂組成物による封止により、超LSI等の封止に充分対応でき、素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の特殊な半導体装置において、上記のような高信頼度が得られるようになるのであり、これが大きな特徴である。」(【0031】)との記載にしたがって、当業者が通常の技術手段により上記寸法の半導体素子の樹脂封止は十分実施可能であると認められるので、本件発明1及び2が未完成であるとはいえない。
ゆえに、特許法第29条柱書違反に関する特許異議申立人の主張は採用できない。

(5)特許法第36条第6項第1号違反について
訂正後の本件明細書の発明の詳細な説明には、上記のように「素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下」の半導体素子を樹脂封止すること(【0031】)が記載されており、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないとすることはできないので、特許法第36条第6項第1号(昭和62年改正特許法における第36条第4項第1号)違反に関する特許異議申立人の主張は採用できない。

(6)特許法第29条第2項違反について
6-1.甲第1号証について
上記のとおり、本件出願の出願日は原出願の出願日(昭和63年9月29日)まで遡及が認められ、昭和63年10月18日に出願公開された甲第1号証は、本件の遡及出願日以後に頒布された刊行物であるから、特許法第29条第2項違反を理由とする特許異議申立の証拠としては採用できない。
なお、甲第1号証には、本件発明1の(A)及び(B)に相当する成分及び官能基変性されたシリコーンゴムを含有する半導体封止用樹脂組成物について開示されているものの、本件発明1及び2の構成要件である(2)式で示される置換基を有するシリコーン化合物を含有する点、及び「素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の半導体素子を封止する」点については記載されておらず、本件発明1及び2が、その先願である甲第1号証に係る出願(特願昭62-84849号)の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であるとすることもできない。

6-2.甲2〜11各号証に記載された発明
甲第2〜11号証には、次の事項が記載されている。
甲第2号証には、
「(1)A;下記一般式で表わされるビスヒドロキシビフエニル系エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R8は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フエニル基、クロル原子又はブロム原子より選ばれた同一もしくは異なる基を示す。また、nは0〜5の整数を示す。)
B;フエノール類と1分子中に2個のアルデヒド基を有する化合物及び/又は共役不飽和アルデヒドとを酸性触媒存在下縮合反応させて得られる多価フエノール化合物
C;硬化促進剤
D;無機充填材
前記A〜D成分を含み、A成分のエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し、B成分の多価フエノール化合物のOH基が0.5〜1.5当量になる割合で、又、A+B成分の合計100重量部に対し、C成分が0.01〜10重量部、D成分が100〜1000重量部の割合で配合されてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲)が記載されており、「この他少量の可撓性付与の為の樹脂(シリコン等)を加えてもさしつかえない。」(第5頁右下欄第10〜11行)と記載されている。
甲第3号証には、
「(1)(a)一般式

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R8は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フエニル基、クロル原子又はブロム原子からなる群より選ばれた同一若しくは異なる基を示す。また、nは0〜5の整数を示す。)で表わされるビスヒドロキシビフエニル系エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂100重量部
(b)ノボラック型エポキシ樹脂20〜400重量部
(c)フエノールノボラック樹脂硬化剤
(d)硬化促進剤
(e)無機質充填剤
から成ることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲)が記載されている。
甲第4号証には、
「1.(a)一般式

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、また、nは0〜6の整数を示す。)で表わされるエポキシ樹脂、
(b)硬化剤
(c)無機質充填剤
からなることを特徴とする電子部品封止用エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲)が記載されており、
「本発明の(b)成分として用いられる硬化剤あるいは硬化促進剤としては・・例えば下記のものが挙げられる。・・(iii)・・ノボラックフエノール類・・」(第4頁左上欄第7行〜同頁右上欄第5行)と記載されている。
甲第5号証には、
「(1)結晶性エポキシ樹脂、無機質充填剤及び硬化剤を含有して成る組成物により被覆されていることを特徴とする半導体封止装置。
(2)結晶性エポキシ樹脂100重量部に対し、無機質充填剤が100〜300重量部の配合されてなる特許請求の範囲第1項記載の半導体封止装置。
(3)結晶性エポキシ樹脂が、下記構造式

(但しRはHまたはCH3を示す)で表わせる4,4’-ビス(2”,3”-エポキシプロポキシ)-3,3’,5,5’-テトラメチルビフエニルである特許請求の範囲第1、2項記載の半導体封止装置。」(特許請求の範囲)が記載されており、「本発明に於いて用いられる硬化剤としては・・ノボラック型フェノール系樹脂等である。」(第2頁右下欄第16〜20行)と記載されている。
甲第6号証には、
「1 半導体素子を次の(A)〜(D)を必須成分とする樹脂組成物で封止してなることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
(A)エポキシ樹脂。
(B)ノボラック型フェノール樹脂。
(C)分子内にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基及びシアノ基のうちから選ばれた1種又は2種以上の基を有するオルガノポリシロキサン。
(D)無機質充填剤。」(特許請求の範囲)が記載されており、また、「本発明者らは・・特定のオルガノポリシロキサンを添加した樹脂組成物を使用すれば密着性及び耐湿性の優れた樹脂封止型半導体装置を得ることを見い出したものである。」(第2頁左上欄第7〜11行)及び「本発明に使用する(A)エポキシ樹脂は、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である限り、分子構造、分子量などに特に制限はなく、一般に使用されているものを広く包含することができる。」(第2頁右上欄第4〜8行)と記載されている。
甲第7号証には、
「1(A)エポキシ樹脂、
(B)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物とフェノール性水酸基と反応し得る官能基を有する有機ケイ素化合物との反応物および
(C)無機質充填剤
を必須成分とすることを特徴とする電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料。」(特許請求の範囲)が記載されており、また、「本発明に用いられる(A)のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である限り、特に制限はなく、例えば・・グリシジルエーテル型エポキシ樹脂・・」(第2頁右上欄末行〜同頁左下欄第8行)、「本発明に用いる成分(B)を合成するための原料となる1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物は、・・例えば・・フェノールノボラック樹脂・・」(第2頁左下欄第16〜20行)、と記載されており、フェノール性水酸基と反応し得る官能基を有する有機ケイ素化合物として、「OH、OCH2CH2OH、CH2CH2CH2COOH」等の置換基を有するオルガノポリシロキサンを用いること(第2頁右下欄第6行〜第3頁左上欄下から4行)が記載されている。更に、その効果について、「このように有機ケイ素化合物を硬化剤に固定することで、単に混合したものと比べ、弾性率低減の効果が大きく現れ、熱処理によって発生する熱応力を小さくでき、また、応力緩和が効率的に行われるということに基づいて、本発明が見出された。」(第3頁左下欄第12〜17行)、及び「本発明によって得られる電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて電子部品を封止すれば、高信頼性を要求される半導体装置においても半田処理後の耐湿性に優れた装置が得られる。」(第6頁左下欄第2〜5行)と記載されている。
甲第8号証には、
「1(A)エポキシ樹脂
(B)ノボラック型フェノール樹脂
(C)分子内に不飽和炭素結合を有する合成ゴム又はその誘導体
(D)分子内にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びシアノ基のうちから選ばれた1種又は2種以上の基を有するオルガノポリシロキサン
(E)無機質充填材
を必須成分とし、かつ樹脂組成物に対して前記(E)無機質充填材を30〜90重量%含有させることを特徴とする封止用樹脂組成物。」(特許請求の範囲)が記載されており、「本発明の封止用樹脂組成物は、密着性がよく耐湿性に優れ、しかも半導体素子ペレットに加わる応力が小さいため、高集積化に伴う大型ペレットや高密度実装化した素子ペレットの封止用等に用いた場合、十分な信頼性を得ることができる。」(第4頁左上欄第14〜18行)と記載されている。
甲第9号証には、
「1(A)エポキシ樹脂
(B)ノボラック型フェノール樹脂
(C)分子内に、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びシアノ基から選ばれた1種又は2種以上の基を有するオルガノポリシロキサン、及び
(D)シリカ粉末
を必須成分とし、前記(D)シリカ粉末を樹脂組成物に対して68〜85重量%含有することを特徴とする封止用樹脂組成物。」(特許請求の範囲)が記載されており、また、「本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である限り、分子構造、分子量などに特に制限はなく、一般に使用されているものを広く包含することができる。」(第2頁右上欄第8〜12行)及び「このオルガノポリシロキサンを用いると、封止用樹脂と半導体チップとの密着性や、封止用樹脂とリードフレームとの密着性が向上し、半田浴に浸漬しても耐湿性の劣化が少ない。」(第3頁左上欄第8〜11行)と記載されている。
甲第10号証には、エポキシ樹脂組成物の発明についての実施例の項に、「耐クラック性」及び「アルミニウム電極の変形量」を測定するシリコンチップとして、「9.0×4.5×0.5mm」及び「3.4×10.2×0.3mm」のサイズのものを用いること(第7頁左上欄第10行〜同頁右上欄第6行)が記載されている。
甲第11号証には、メモリー用半導体のアルミ回路幅について、メモリー容量(ビット)64K及び256Kのものの回路幅(ミクロン)がそれぞれ「2〜3」及び「1〜2」であること(第2頁右下欄第8行〜下から4行)が記載されている。

6-3.対比、判断
本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを以下に対比、検討する。
上記のように同号証には、A:ビスヒドロキシビフエニル系エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂、B:フエノール類と1分子中に2個のアルデヒド基を有する化合物及び/又は共役不飽和アルデヒドとを酸性触媒存在下縮合反応させて得られる多価フエノール化合物、C:硬化促進剤及びD:無機充填材が配合されてなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物が記載されており、ビスヒドロキシビフエニル系エポキシ樹脂として構造式で示されている化合物は、n=0で、R,R2,R4,R5及びR7を水素、かつR1,R3,R6及びR8を水素又はメチル基とした場合、本件発明1における(1)式の結晶性エポキシ樹脂に該当するので、このような樹脂を主成分(通常は50%以上と解される。)とするAのエポキシ樹脂は、本件発明1における「(A)一般式(1)で表される結晶性エポキシ樹脂が10重量%以上含有されているエポキシ樹脂」に相当するものであり、また、Bの多価フエノール化合物はその製法からみて本件発明1の「ノボラック型フェノール樹脂」に相当するものである。
そして、甲第2号証に記載されたような「半導体封止用エポキシ樹脂組成物」を用いて半導体素子を封止し、半導体装置を製造することは自明であるから、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とは、ともに、
「(A)下記の一般式(1)で表される結晶性エポキシ樹脂が10重量%以上含有されているエポキシ樹脂。

(1)
[式(1)中、RはHまたはCH3である。]
及び
(B)ノボラック型フェノール樹脂。
を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止する半導体装置の製法」である点で一致するが、同号証には、本件発明1の構成要件である下記(イ)及び(ロ)の点が記載されていない点でこれらの間には相違が認められる。
(イ)エポキシ樹脂組成物を用いて「素子サイズが16mm2 以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下」の半導体素子を封止する点、及び
(ロ)エポキシ樹脂組成物が「一般式(2)で表されるシリコーン化合物。

(2)
[式(2)中、Rは1価の有機基であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。ただし、1分子中において、上記Rのうちの少なくとも2個はアミノ基置換有機基,エポキシ基置換有機基,水酸基置換有機基,ビニル基置換有機基,メルカプト基置換有機基およびカルボキシル基置換有機基からなる群から選択された基である。mは0〜500の整数である。]」を含有する点
これらの内、(ロ)の点について検討すると、甲第2号証には、上記組成物に加えて「少量の可撓性付与の為の樹脂(シリコン等)を加えてもさしつかえない。」と記載されているが、このシリコン樹脂として(ロ)のような有機基で置換した化合物を用いることは記載されておらず、同号証以外に、ビスヒドロキシビフエニル系エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物が開示されている甲第3〜5号証には、シリコーン化合物を配合すること自体が記載されていない。
一方、甲第6〜9号証には、エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とともに、密着性あるいは耐湿性を改良するために(ロ)に該当するシリコーン化合物を配合した樹脂組成物が記載されているが、これらにはいずれも、エポキシ樹脂として本件発明1の(A)成分のようなものを用いることは記載されていない。
そして、「エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂に併用するシリコーン化合物である」との共通点に基いて、甲第6〜9号証に記載された(ロ)に該当するシリコーン化合物を上記甲第2号証に記載された発明に付加したとしても、予測される効果は、樹脂組成物の密着性及び耐湿性の向上にとどまるものというべきである。
なお、甲第7号証には「熱処理によって発生する熱応力を小さくできる、また、応力緩和が効率的に行われる」(第3頁左下欄第14〜116行)との記載があるが、これはそれに先立つ記載から明らかなように、「有機ケイ素化合物を硬化剤に固定することで」生ずる効果であって、有機ケイ素化合物を「単に混合した」ことによりこのような効果がもたらされることを開示するものではない。
しかるに本件発明1は上記(ロ)の点により、訂正後の明細書の実施例に記載されたように、これら甲各号証に記載された可撓性、密着性及び耐湿性とは直接結び付かない高い信頼性(PCBTテスト)及び耐熱性(TCTテスト)が得られるという効果を生ずるものであり、この点を、当業者が容易になし得たものとすることはできない。
したがって、(イ)の点が甲第10及び11号証に開示されていたとしても、(ロ)の点により、本件発明1が甲第2〜11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件発明2についてみると、本件発明2は本件発明1において更に技術的に限定を加えたものであるから、上記と同様、甲第2〜11号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成七年政令第二百五号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置の製法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて、素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の半導体素子を封止する半導体装置の製法。
(A)下記の一般式(1)で表される結晶性エポキシ樹脂が10重量%以上含有されているエポキシ樹脂。
【化1】

〔式(1)中、RはHまたはCH3である。〕
(B)ノボラック型フェノール樹脂。
(C)下記の一般式(2)で表されるシリコーン化合物。
【化2】

【請求項2】 C成分のシリコーン化合物の含有割合が、エポキシ樹脂組成物中のA成分であるエポキシ樹脂,B成分であるノボラック型フェノール樹脂およびC成分であるシリコーン化合物の合計量に対して、50重量%以下に設定されている請求項1記載の半導体装置の製法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信頼性に優れた半導体装置の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランジスタ,IC,LSI等の半導体素子は、通常セラミックパッケージもしくはプラスチックパッケージ等により封止され、半導体装置化されている。上記セラミックパッケージは、構成材料そのものが耐熱性を有し、耐湿性にも優れているため、温度,湿度に対して強く、しかも中空パッケージのため機械的強度も高く信頼性の高い封止が可能である。しかしながら、構成材料が比較的高価なものであることと、量産性に劣る欠点があるため、最近ではプラスチックパッケージを用いた樹脂封止が主流になっている。この種の樹脂封止には、従来からエポキシ樹脂組成物が使用されており、良好な成績を収めている。
【0003】
上記エポキシ樹脂組成物としては、特に、エポキシ樹脂と、硬化剤としてのフェノール樹脂と、その他、硬化促進剤としての2-メチルイミダゾール,弾性補強用併用樹脂としての末端カルボン酸ブタジエン-アクリロニトリル共重合体,無機質充▲填▼剤としての溶融シリカ等の組成系で構成されるものが、封止作業性(特にトランスファー成形時の作業性)等に優れたものとして賞用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、半導体分野の技術革新はめざましく、最近では、集積度の向上とともに、素子サイズの大形化,配線の微細化が進む反面、パッケージ形状の小形化,薄形化が進むようになっており、これに伴って、半導体素子の封止材料においても、従来以上の低応力性,耐熱性,耐湿性が要求されるようになっている。これまでの封止用エポキシ樹脂組成物では、IC,LSI等の半導体素子の封止材料としては充分優れているが、超LSI等の半導体素子の封止材料としては、充分に満足できるものではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐熱性,耐湿性および低応力性に優れた半導体装置の製法の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体装置の製法は、下記の(A)〜(C)成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて、素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の半導体素子を封止するという構成をとる。
【0007】
(A)下記の一般式(1)で表される結晶性エポキシ樹脂が10重量%以上含有されているエポキシ樹脂。
【化5】

〔式(1)中、RはHまたはCH3である。〕
【0008】
(B)ノボラック型フェノール樹脂。
【0009】
(C)下記の一般式(2)で表されるシリコーン化合物。
【化6】

【0010】
すなわち、本発明者らは、上記エポキシ樹脂組成物硬化物からなる封止樹脂の耐熱性,耐湿性および低応力性を向上させることを目的として一連の研究を重ねた。その結果、従来から用いられている通常のエポキシ樹脂に代えて前記一般式(1)で表される特殊な結晶性エポキシ樹脂を単独で用いるか、または通常のエポキシ樹脂に特定の割合で上記特殊なエポキシ樹脂を加えて主剤成分として用い、さらに特殊なシリコーン化合物を含有したものを用いると耐熱性,耐湿性および低応力性に優れた封止樹脂が得られるようになることを見出し本発明に到達した。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される特殊なエポキシ樹脂が特定の割合で含有されているエポキシ樹脂(A成分)と、ノボラック型フェノール樹脂(B成分)と、特殊なシリコーン化合物(C成分)とを用いて得られるものであって、通常、粉末状もしくはそれを打錠したタブレット状になっている。
【0013】
上記A成分となるエポキシ樹脂としては、下記の一般式(1)で表される結晶性エポキシ樹脂が通常のエポキシ樹脂中10重量%(以下「%」と略す)以上含有されているものが用いられる。
【0014】
【化7】

〔式(1)中、RはHまたはCH3である。〕
【0015】
なお、ここでいう「結晶性エポキシ樹脂」とは、X線回折により多数の結晶のピークが表れる固形エポキシ樹脂であって、物理的にはシャープな融点を示しかつ溶融時には分子間相互作用が殆どなくなるため極端に粘度が低下する性質を有するものである。
【0016】
上記通常のエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であれば、特に限定するものではない。すなわち、従来から半導体装置の封止樹脂として用いられている各種のエポキシ樹脂、例えばノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が好適に用いられ、その他のビスフェノールA型のジグリシジルエーテルやその多量体であるエピビス型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,レゾルシン型エポキシ樹脂,脂環式エポキシ樹脂等も好適なエポキシ樹脂として使用可能である。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、通常、エポキシ当量160〜210,軟化点50〜130℃のものが用いられ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量180〜210,軟化点60〜110℃のものが一般に用いられる。
【0017】
上記B成分のノボラック型フェノール樹脂は、上記A成分である特殊なエポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、なかでも軟化点が50〜130℃、好ましくは70〜90℃、水酸基当量が100〜130のものを用いることが好ましい。
【0018】
上記エポキシ樹脂組成物中のA成分である特殊なエポキシ樹脂とB成分であるノボラック型フェノール樹脂との配合比は、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基と上記フェノール樹脂中の水酸基の当量比が0.8〜1.2となるように配合することが好適である。この当量比が1に近いほど好結果が得られる。
【0019】
上記A成分およびB成分とともに用いられるC成分の特殊なシリコーン化合物は、下記の一般式(2)で表されるものが用いられる。
【0020】
【化8】

【0021】
上記C成分のシリコーン化合物を用いることにより得られる封止樹脂は、特に耐湿性,耐熱衝撃性,内部応力の低減効果に優れ、その結果、封止樹脂の熱衝撃および熱応力に起因する微細な割れ,▲剥▼離(これが水分の浸入路となる)の発生が防止される。そして、大きな熱衝撃等を繰り返し受ける等の苛酷な使用条件下における耐湿信頼性の改善に優れた効果を奏する。
【0022】
このようなC成分のシリコーン化合物の含有量は、上記A,B,C成分の合計量の50%以下、好ましくは5〜30%に設定することが好適である。C成分の含有量が50%を超えると、封止樹脂の樹脂強度に著しい低下傾向がみられるようになるからである。
【0023】
なお、本発明に用いる、エポキシ樹脂組成物の上記C成分は、A成分である特殊なエポキシ樹脂もしくはB成分であるノボラック型フェノール樹脂と反応した状態、あるいは独立した状態、さらにはこれらが混合した状態のいずれの状態でも含有される。
【0024】
また、本発明では、上記A成分,B成分およびC成分以外に必要に応じて硬化促進剤,充▲填▼剤,離型剤等を用いることができる。
【0025】
上記硬化促進剤としては、フェノール硬化エポキシ樹脂の硬化反応の触媒となるものは全て用いることができ、例えば、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-メチルイミダゾール等をあげることができる。
【0026】
上記充▲填▼剤としては、石英ガラス粉,珪石粉,タルク等を用いることができる。
【0027】
上記離型剤としては、従来公知のステアリン酸,パルミチン酸等の長鎖カルボン酸、ステアリン亜鉛,ステアリン酸カルシウム等の長鎖カルボン酸の金属塩、カルナバワックス,モンタンワックス等のワックス類等を用いることができる。
【0028】
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A〜C成分原料ならびに必要に応じて上記その他の添加剤を適宜配合する。そして、この混合物をミキシングロール機等の混練機にかけ加熱状態で溶融混合し、これを室温に冷却したのち公知の手段により粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程により製造することができる。この場合、上記配合に先立って特殊なエポキシ樹脂(A成分)もしくはノボラック型フェノール樹脂(B成分)とシリコーン化合物(C成分)とを予備溶融混合して用いてもよい。
【0029】
このようなエポキシ樹脂組成物を用いての半導体素子の封止は特に限定するものではなく、通常の方法、例えばトランスファー成形等の公知のモールド方法により行うことができる。
【0030】
このようにして得られる半導体装置は、低応力性,耐熱性,耐湿性に優れており、熱衝撃試験における耐パッケージクラック性が著しく改善されている。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明の半導体装置の製法は、特殊なエポキシ樹脂が特定の割合に含有されているエポキシ樹脂(A成分)と、シリコーン化合物(C成分)を含む特殊なエポキシ樹脂組成物を用いて封止することにより、その封止プラスチックパッケージが、従来のエポキシ樹脂組成物製のものとは異なることとなるため、得られる半導体装置は内部応力が小さく耐熱信頼性が高くなり、特に、苛酷な使用条件下における耐湿信頼性が先願に比べて一層高くなる。そして、上記特殊なエポキシ樹脂組成物による封止により、超LSI等の封止に充分対応でき、素子サイズが16mm2以上、素子上のAl配線の幅が2μm以下の特殊な半導体装置において、上記のような高信頼度が得られるようになるのであり、これが大きな特徴である。
【0032】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0033】
【実施例1〜6】
下記の表1に示すシリコーン化合物A〜Bを準備した。
【0034】
【表1】

【0035】
つぎに、上記シリコーン化合物A〜Bを用い、さらに下記の表2に示すような原料を準備し、上記原料を同表に示す割合で配合し、ミキシングロール機(温度100℃)で10分間混練して冷却後粉砕し目的とする粉末状のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0036】
【表2】

【0037】
【比較例1〜3】
下記の表3に示す原料を用い、これらの原料をミキシングロール機(ロール温度100℃)で10分間混練し、得られたシート状組成物を用い、実施例1〜6と同様にして粉末状のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0038】
【表3】

【0039】
以上の実施例および比較例によって得られた粉末状のエポキシ樹脂組成物を用い、半導体素子をトランスファー成形でモールドすることにより半導体装置を得た。このようにして得られた半導体装置について、電圧印加状態におけるプレッシャー釜による1000時間の信頼性テスト(以下「PCBTテスト」と略す)および-50℃/30分〜150℃/30分の300回の温度サイクルテスト(以下「TCTテスト」と略す)の測定を行った。その結果を下記の表4に示した。
【0040】
【表4】

【0041】
上記表4の結果から、実施例品は比較例品に比べてPCBTテストおよびTCTテストの結果がよいことから内部応力が小さくかつ耐湿信頼性が著しく向上していることがわかる。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2938811号発明の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち、
a.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0034】の【表1】(特許公報第5頁上段)のシリコーン化合物Aの欄の記載を削除する。
b.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0034】の【表1】(特許公報第5頁上段)の「シリコーン化合物B」を「シリコーン化合物A」と、「シリコーン化合物C」を「シリコーン化合物B」と訂正する。
c.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0033】(特許公報第8欄第46〜48行)の「【実施例1〜9】を「【実施例1〜6】」と、「シリコーン化合物A〜C」を「シリコーン化合物A〜B」と訂正する。
d.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0035】(特許公報第9欄表下第1行〜第10欄表下第1行)の「シリコーン化合物A〜C」を「シリコーン化合物A〜B」と訂正する。
e.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0036】の【表2】(特許公報第6頁上段)のシリコーン化合物Aの欄の記載及び実施例1,4,7を削除し、「シリコーン化合物B」を「シリコーン化合物A」と、「シリコーン化合物C」を「シリコーン化合物B」と訂正する。
また、同表の、「実施例2」、「実施例3」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例8」及び「実施例9」を、それぞれ「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例5」及び「実施例6」と訂正する。
f.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0037】(特許公報第11欄式下第1〜6行)の「実施例1〜9」を「実施例1〜6」と訂正する。
g.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0038】の【表3】(特許公報第6頁下段)の「シリコーン化合物B」を「シリコーン化合物A」と訂正する。
h.明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書【0040】の【表4】(特許公報第13欄)の実施例1,4,7を削除し、「実施例2」、「実施例3」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例8」及び「実施例9」を、それぞれ「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例5」及び「実施例6」と訂正する。
異議決定日 2000-07-19 
出願番号 特願平8-192589
審決分類 P 1 651・ 4- YA (C08G)
P 1 651・ 14- YA (C08G)
P 1 651・ 121- YA (C08G)
P 1 651・ 534- YA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 均冨士 良宏  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐野 整博
關 政立
登録日 1999-06-11 
登録番号 特許第2938811号(P2938811)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 半導体装置の製法  
代理人 西藤 征彦  
代理人 西藤 征彦  

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