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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A47L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A47L |
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管理番号 | 1024337 |
異議申立番号 | 異議1999-74812 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-03-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-22 |
確定日 | 2000-09-11 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第2910760号「電気掃除機及びその吸口体」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2910760号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 本件は、平成7年3月15日に特許出願した特願平8-527442号(以下、「原出願」という。)の一部を平成10年5月27日に新たな特許出願とし、平成11年4月9日にその発明について特許の設定登録がされたものであって、本件発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項12に記載された次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】掃除機本体内に電動送風機と集塵部とを有し、前記集塵部に連通する吸口体を備え、該吸口体内部に前記電動送風機の発生する吸引力で駆動される羽根車と、該羽根車で回転駆動される回転刷毛と、前記吸口体に、被掃除面に対面する開口とは別に外部から空気を吸引する吸入口とを備えた電気掃除機において、 前記吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け、前記吸入口から吸い込んだ空気の全部又は一部が先ず羽根車に流入して羽根車を回転させ、その後被掃除面を通って掃除機本体に吸引される空気の流れ順路を形成してなることを特徴とする電気掃除機。 【請求項2】掃除機本体内に電動送風機と集塵部とを有し、前記集塵部に連通する吸口体を備え、該吸口体内部に前記電動送風機の発生する吸引力で駆動される羽根車と、該羽根車で回転駆動される回転刷毛と、前記吸口体に、被掃除面に対面する開口とは別に外部から空気を吸引する吸入口とを備えた電気掃除機において、 前記吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け、前記羽根車に流入して該羽根車の駆動に寄与した空気を吸口体内部の回転刷毛が設けられた空間を通して集塵部に吸引する電気掃除機。 【請求項3】掃除機本体内に電動送風機と集塵部とを有し、前記集塵部に連通する吸口体を備え、該吸口体内部に前記電動送風機の発生する吸引力で駆動される羽根車と、該羽根車で回転駆動される回転刷毛と、前記吸口体に、被掃除面に対面する開口とは別に外部から空気を吸引する吸入口とを備えた電気掃除機において、 前記吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け、前記吸入口は前記回転刷毛が設けられた空間に流れ的に連通していることを特徴とする電気掃除機。 【請求項4】請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気掃除機において、前記吸口体は吸口体内部と外部を繋ぐ出口ノズルを有し、該出口ノズルの延長軸線に対して前記吸口体の長手方向にずれた部位に前記吸入口を有することを特徴とする電気掃除機。 【請求項5】請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気掃除機において、前記羽根車は前記回転刷毛を兼ねることを特徴とする電気掃除機。 【請求項6】請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気掃除機において、羽根車の全部あるいは一部分に刷毛を取り付けることにより、前記羽根車が前記回転刷毛の全部あるいは一部を兼ねるようにしたことを特徴とする電気掃除機。 【請求項7】 被掃除面に対面する開口と、吸口本体内部に回転刷毛と、該回転刷毛を駆動する羽根車と、吸口本体内部と外部を繋ぐ出口ノズルと、被掃除面に対面する開口とは別に外部から空気を吸引する吸入口とを備えた電気掃除機の吸口体において、 前記吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け、前記吸入口から吸い込んだ空気の全部又は一部が先ず羽根車に流入して羽根車を回転させ、その後被掃除面を通って掃除機本体に吸引される空気の流れ順路を形成してなることを特徴とする電気掃除機の吸口体。 【請求項8】被掃除面に対面する開口と、吸口本体内部に回転刷毛と、該回転刷毛を駆動する羽根車と、吸口本体内部と外部を繋ぐ出口ノズルと、被掃除面に対面する開口とは別に外部から空気を吸引する吸入口とを備えた電気掃除機の吸口体において、 前記吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け、前記吸入口から前記羽根車に流入して該羽根車の駆動に寄与した空気を吸口体内部の回転刷毛が設けられた空間を通して、前記出口ノズルに流れるようにしたことを特徴とする電気掃除機の吸口体。 【請求項9】被掃除面に対面する開口と、吸口本体内部に回転刷毛と、該回転刷毛を駆動する羽根車と、吸口本体内部と外部を繋ぐ出口ノズルと、被掃除面に対面する開口とは別に外部から空気を吸引する吸入口とを備えた電気掃除機の吸口体において、 前記吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け、前記吸入口は前記回転刷毛が設けられた空間に流れ的に連通していることを特徴とする電気掃除機の吸口体。 【請求項10】請求項7乃至9のいずれか1項に記載の電気掃除機の吸口体において、前記出口ノズルの延長軸線に対して前記吸口体の長手方向にずれた部位に前記吸入口を有することを特徴とする電気掃除機の吸口体。 【請求項11】請求項7乃至10のいずれか1項に記載の電気掃除機の吸口体において、前記羽根車は前記回転刷毛を兼ねることを特徴とする電気掃除機の吸口体。 【請求項12】請求項7乃至10のいずれか1項に記載の電気掃除機の吸口体において、羽根車の全部あるいは一部分に刷毛を取り付けることにより、前記羽根車が前記回転刷毛の全部あるいは一部を兼ねるようにしたことを特徴とする電気掃除機の吸口体。」 2.異議申立ての理由の概要 特許異議申立人三洋電機株式会社は、甲第1号証実願昭51-31394号(実開昭52-122574号)のマイクロフィルム、甲第2号証特開平5-176870号公報、甲第3号証特開平4-17825号公報、甲第4号証特開平1-308513号公報、甲第5号証実願昭55-147663号(実開昭57-69665号)のマイクロフィルムを提出し、「本件請求項1乃至請求項12に係る発明は、本件特許出願前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第29条1項第3号の規定により特許を受けることができない。また、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された技術事項に基づいてその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである。」旨主張する。 また、特許異議申立人松下電器産業株式会社は、平成11年12月24日付の特許異議申立てにおいて、証拠として甲第1号証実願昭51-31394号(実開昭52-122574号)のマイクロフィルム、甲第2号証特開平4-17825号公報、甲第3号証特開昭63-214217号公報、甲第4号証実願昭55-147663号(実開昭57-69665号)のマイクロフィルムを提出し、「本件特許発明は甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当するので上記発明に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。」旨主張する。 3.当審の判断 (1)三洋電機株式会社の異議申立てに対して (a)異議申立人が提出した甲第1号証には「じゅうたん用吸込口」に関して図1〜6とともに記載されており、甲第2号証には「電気掃除機の吸込口体」に関して第1〜4図とともに記載されており、甲第3号証には「電気掃除機用床ノズル」に関して第1〜4図とともに記載されており、甲第4号証には「電気掃除機の吸込口体」に関して第1〜8図とともに記載されており、甲第5号証には「電気掃除機の吸い込み口体」に関して第1〜8図とともに記載されている。 (b)第29条第1項第3号について 甲第1号証には、「吸込口本体1,2」に「本体下面に開口した吸込口5」の他に「本体側面に開口した吸込口6」を設け、「吸込口本体をじゅうたん上に置くと、本体下面に開口した吸込口はある程度密閉状態となり、大部分の吸込気流は本体側面に開口した吸込口6より吸引される。この吸込気流により軸流タービン9が高速回転し、タービン外周のブラシによりじゅうたん上の糸屑、綿屑等が吸引されることになる」(第2頁第18行〜第3頁第4行)点が記載されており、これらの点では本件各発明と共通するものと認められるが、本件各発明の「吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け」た点の構成に関して関しては、.記載も示唆もない。なお、甲1号証における吸込口6(本件各発明の「吸入口」に相当する。)は、軸流タービン9(同「羽根車」に相当)の軸方向に吹き付けるように設けられたものであって、上記構成を備えたものではない。 したがって本件請求項1〜12に係る発明が、特許法第29条第1項3号に該当するとすることはできない。 (c)第29条2項について 異議申立人は、甲第2号証に記載のものの「回転ブラシ7とタービン10の間に隔壁11」と「タービン10を通過した空気を曲がり継ぎ手4に導くための案内流路14」の構成に代えて、甲第1号証並びに甲第3号証乃至甲第5号証に記載の技術を適用して本件各発明を得ることは当業者が容易になし得たことであると主張する。 しかしながら、甲第2号証には、本件各発明の特徴である空気の流路、すなわち、本件「吸入口から吸い込んだ空気の全部又は一部が先ず羽根車に流入して羽根車を回転させ、その後被掃除面を通って掃除機本体に吸引される空気の流れ順路を形成してなる」点(請求項1、7に係る発明)、「羽根車に流入して該羽根車の駆動に寄与した空気を吸口体内部の回転刷毛が設けられた空間を通して」、「集塵部に吸引」又は「出口ノズルに流れるようにした」点(請求項2、8に係る発明)、「吸入口は前記回転刷毛が設けられた空間に流れ的に連通している」点(請求項3、9に係る発明)に関しては、いずれも記載も示唆もない(なお、請求項4〜6に係る発明は請求項1〜3、請求項10〜12に係る発明は請求項7〜9に係る発明の構成をそれぞれさらに限定したものである)。 その上、(i)甲第1号証に記載されたものは、吸込口本体(本件各発明の「吸口体」に相当する。)側面の開口より吸引した空気で軸流タービン(同「羽根車」に相当する。)を回転させるものであり、甲第2号証に記載された発明のような「吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け」たものとは羽根車を駆動する構造が異なり、さらに、(ii)甲第3号証に記載のものは、床ノズル本体10(本件各発明の「吸口体」に相当する。)内に設けた連絡孔18を通った空気でエアタービン16を回転させるものであり、甲第4号証に記載のものも、電動送風機23からの空気でタービン37を回転させるものであって、いずれも甲第2号証のような、羽根車を回転させる空気を外部から吸い込むように吸込口本体側面に吸込口を設けたものとは、空気の流路が異なるものであり、さらに、(iii)甲第5号証にも上記のような本件各発明の空気の流路の構成については何ら開示されておらず、その示唆もない。 そうすると、甲第1号証並びに甲第3号証乃至甲第5号証に記載の手段を甲第2号証の電気掃除機の吸込口体に適用する起因ないし契機が存在するものとはいえない。 したがって、本件各発明が甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 (2)松下電器産業株式会社の異議申立てに対して (a)異議申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証は、それぞれ、上記三洋電機株式会社提出の甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証に係るものであり、一方、甲第3号証には、「電気掃除機の床ノズル」に関して第1〜4図とともに記載されている。 (b)異議申立人は、甲第1号証の羽根車として甲第3号証および甲第4号証に示すようなタービン羽根車を採用し、甲第2号証に示されるような吹き付け方法とすることは当業者であれば容易に想到できる旨主張する。 しかしながら、(i)先に指摘したように、甲第1号証記載のものは、吸込口本体側面の開口より吸引した空気で軸流タービンを回転させるものであって、本件各発明のような「吸入口を外部から吸引した空気を前記羽根車の回転方向に吹き付けるように設け」たものとは羽根車を駆動する構造が異なるもの、甲第2号証に記載のものは床ノズル本体10内に設けた連絡孔18を通った空気でエアタービン16を回転させるものであり、甲第4号証のものも、本体ケース6内の仕切板16の連通口17を通った空気でタービン22を回転させるものであり、さらに、(ii)甲第3号証記載のものも、これらと同様に、床ノズル本体3内の隔壁4に設けた通気口12を通った空気でエアタービン7を回転させており、さらに、甲第4号証に記載のものも、同様に、本体ケース6内の仕切板16の連通口17を通った空気でタービン22を回転させるものであって、いずれも甲第1号証に記載された発明のような、羽根車を回転させる空気を、羽根車の軸方向に外部から吸い込むように、吸込口本体側面に吸込口を設けたものとは空気の流路が異なるものであるので、甲第2号証乃至甲第4号証に記載の手段を甲第1号証の電気掃除機の吸込口体に適用する起因ないし契機が存在するものとはいえない。 よって、本件各発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 5.むすび したがって、いずれの特許異議申立ての理由及び証拠によっても、本件請求項1乃至12に係る発明の特許を取り消すことはできない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-08-15 |
出願番号 | 特願平10-145385 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(A47L)
P 1 651・ 121- Y (A47L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 塩澤 克利、金丸 治之 |
特許庁審判長 |
青山 紘一 |
特許庁審判官 |
藤本 信男 熊倉 強 |
登録日 | 1999-04-09 |
登録番号 | 特許第2910760号(P2910760) |
権利者 | 株式会社日立製作所 |
発明の名称 | 電気掃除機及びその吸口体 |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 山口 隆生 |
代理人 | 内藤 浩樹 |