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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1024521
異議申立番号 異議1999-72696  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-02-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-12 
確定日 2000-09-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2849353号「粉体塗料」の請求項1ないし14の発明に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2849353号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2849353号発明は、平成7年5月19日(優先権主張 平成6年5月27日 日本)に特許出願され、平成10年11月6日に特許の設定登録がなされたものである。その後、江波戸昌美、景山和夫、日本油脂株式会社、川上塗料株式会社、坂本陽、関西ペイント株式会社、及び花王株式会社によって特許異議の申立がなされたため、当審において審理のうえ第1回取消理由を通知し、平成11年12月27日付けで訂正請求がなされた。その後、当審において第2回取消理由通知したところ、先の訂正請求を取り下げるとともに、平成12年5月10日付で新たな訂正請求がなされた。
2.訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許明細書を、訂正明細書のとおり、次の事項について訂正することを求めるものである。
〈訂正事項a〉特許請求の範囲の請求項1において、
i)粉体塗料が「溶融混練によって得られる」ものであること、また、塗膜形成用樹脂が「熱硬化性ポリエステル樹脂であり、顔料、並びに、硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むものであって、前記硬化剤はブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレート」であること、を挿入する。
ii)体積平均粒径を「20〜40μm」に訂正する。
〈訂正事項b〉請求項1の訂正に伴い、請求項6及び7を削除するとともに、以降の請求項番号を繰り上げる。
〈訂正事項c〉請求項11(訂正後請求項9)において、粉体塗料が、「溶融混練によって得られ」、「体積平均粒径が20〜40μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下」のものであること、また、塗膜形成用樹脂が「熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、硬化剤及び及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含む」ものであること、を挿入する。
〈訂正事項d〉発明の詳細な説明中の該当する個所を、訂正事項a〜cの特許請求の範囲の訂正に整合するように訂正する。
3.訂正の適否
i)訂正事項aは、訂正前の粉体塗料を、「溶融混練によって得られる」ものに、また、その粉体塗料を構成する塗膜形成用樹脂を、「熱硬化性ポリエステル樹脂であり、顔料、並びに、硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むものであって、前記硬化剤はブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレート」であるもの、に限定するとともに、体積平均粒径「20〜50μm」を「20〜40μm」に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項bにおける請求項の削除は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当し、請求項数の繰り上げは請求項の削除と一体の訂正である。
訂正事項cは、粉体塗料を、「溶融混練によって得られ」、「体積平均粒径が20〜40μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下」のものに限定し、また、塗膜形成用樹脂を「熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、硬化剤及び及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含む」ものに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に相当する。
訂正事項dは、発明の詳細な説明を、訂正事項a〜cと整合させるための訂正であるから、訂正事項a〜cと一体の訂正である。
ii)前記訂正は明細書に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。
iii)つぎに、訂正後における本件発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。
iii-1)訂正後の本件発明は、次のとおりのものである。
【請求項1】 溶融混練によって得られる粉体塗料であって、塗膜形成用樹脂からなり、体積平均粒径が20〜40μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下であることを特徴とする粉体塗料であり、前記塗膜形成用樹脂が、熱硬化性ポリエステル樹脂であり、顔料、並びに、硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むものであって、前記硬化剤はブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートである粉体塗料。
【請求項2】 粒径分布標準偏差が16μm以下である請求項1記載の粉体塗料。
【請求項3】 粒径分布標準偏差が13μm以下である請求項1記載の粉体塗料。
【請求項4】 粉体塗料粒子のうち、最大のものの粒径が、90μm以下である請求項1、2又は3記載の粉体塗料。
【請求項5】 粉体塗料粒子のうち、最小のものの粒径が、1μm以上である請求頃4記載の粉体塗料。
【請求項6】 硬化剤を、塗膜形成用樹脂100重量部に対して5〜80重量部含有し、硬化促進剤を、塗膜形成用樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部含有する請求項1記載の粉体塗料。
【請求項7】 二酸化チタン、べんがら、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン及びキナクリドン系赤色顔料からなる群より選択された少なくとも1種の顔料を含有する請求項1、2又は3記載の粉体塗料。
【請求項8】 顔料を、粉体塗料100重量部に対して1〜80重量部含有する請求頃7記載の粉体塗料。
【請求項9】 溶融混練によって得られる粉体塗料であって、塗膜形成用樹脂からなり、体積平均粒径が20〜40μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下であることを特徴とする粉体塗料であり、前記塗膜形成用樹脂が、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むものであって、粉体塗料粒子が、塗膜形成用樹脂の一部分を含む第1の粒子の表面に第2の粒子が複合化されてなるものであり、前記第2の粒子が、前記塗膜形成用樹脂の残部を含み、かつ、ガラス転移点が50〜150℃のものである粉体塗料。
【請求項10】 第2の粒子が、体積平均粒径0.001〜10μmのものである請求項9記載の粉体塗料。
【請求項11】 第2の粒子の含有量が、粉体塗料100重量部に対して0.05〜35重量部である請求項9記載の粉体塗料。
【請求項12】 第2の粒子が、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びメラミン樹脂からなる群より選択された少なくとも1種よりなるものである請求項9記載の粉体塗料。
iii-2)本件の特許異議申立において、申立人江波戸昌美(「申立人A」という。)は、甲第1〜5号証を提出して、本件の訂正前の請求項1〜3、6〜7、及び9〜10の発明は甲第1号証に記載された発明であること、また、同請求項1〜14の発明は甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを理由に、申立人景山和夫(「申立人B」という。)は、甲第1〜5号証を提出して、本件の訂正前の請求項1〜5の発明は甲第1号証に記載された発明であること、また、同請求項1〜5の発明は甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、同請求項6〜10の発明は甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを理由に、申立人日本油脂株式会社(「申立人C」という。)は、甲第1〜8号証を提出して、本件の訂正前の請求項1〜2、及び7の発明は甲第1〜5号証に、同請求項3の発明は甲第2〜5号証に、同請求項4〜5の発明は甲第1〜4号証に、同請求項8〜10の発明は甲第5号証に、それぞれ記載された発明であり、また、同請求項6の発明は甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて、同請求項8〜10の発明は甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを理由に、申立人川上塗料株式会社(「申立人D」という。)は、甲第1〜3号証を提出して、本件の訂正前の請求項1〜5、及び7〜10の発明は甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを理由に、申立人坂本陽(「申立人E」という。)は、甲第1〜3号証及び参考資料1〜2を提出して、本件の訂正前の請求項1〜14の発明は甲第1〜3号証に記載された発明であるか、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを理由に、申立人関西ペイント株式会社(「申立人F」という。)は、甲第1〜5号証を提出して、本件の訂正前の請求項1〜10の発明は甲第1〜3号証に記載された発明であるか、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであること、また、同請求項11〜14の発明は甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを理由に、申立人花王株式会社(「申立人G」という。)は、甲第1〜3号証及び参考資料を提出して、本件の訂正前の請求項1〜6、及び9〜10の発明は甲第1号証記載された発明であり、また、同請求項7の発明は甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて、同請求項8の発明は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、同請求項11〜14の発明は甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを理由に、その特許は、特許法29条1項及び2項の規定に違反したなされたものであって取り消されるべきである、と主張した。
さらに、申立人Eは、本件明細書には記載不備があることを理由に、本件発明に係る特許は、特許法36条4項の規定に違反したなされたものであって取り消されるべきである、と主張した。
iii-3)当審における第1回取消理由の概要は、訂正前の請求項1〜14の発明は、刊行物1〜14に記載された発明であるか、または、これらの刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本件特許は、特許法29条1項及び2項の規定に違反してなされた、というものであり、同第2回取消理由の概要は、本件明細書には記載不備があるので、本件特許は、特許法36条4項及び5項の規定を満たしていない出願についてなされた、というものである。
iii-4)特許法29条1項及び2項違反について
iii-4-1)各証拠刊行物等には次のとおりの事項が記載されている。
a)取消理由に引用した刊行物等
刊行物1(特開平1-247473号公報・・・申立人Aの甲第1号証、申立人Cの甲第5号証、申立人Fの甲第1号証)には、「官能基を有するビニル単量体(A)、前記単量体(A)と共重合可能なピニル単量体(B)、および前記単量体(A)の官能基と反応する官能基を有する硬化剤(C)を必須成分とし、必要に応じて重合体、顔料、添加剤などを含んだ重合性組成物を超音波により水中に分散させ、次いで、懸濁重合させることを特徴とする熱硬化性粉体塗料の製造方法。」が記載されている。上記硬化剤としては、「単量体(A)が水酸基含有の場合;低温架橋性・塗膜性能などの点からポリイソアネート類が最も好ましいが、低温架橋性を要しない用途にはアミノプラスト類も使用できる。ポリイソシアネート類として代表的なものには、トリレンジイソシアネート・・・の如き脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート・・・の如き脂環族ジイソシアネート;前記ポリイソシアネート類と・・・多価アルコール類との付加物;・・・公知慣用のブロック化剤で前記ポリイソシアネート類をブロックしたものなどが挙げられる。・・・アミノプラスト類として代表的なものには、公知のブチル化メラミン・・・などがあげられる。またアミノプラストの使用量としては、前記ビニル単量体(A)および(B)が重合して生成する樹脂固形分に対して10〜40重量%なる割合が好ましい。…硬化促進剤の使用量としては樹脂固形分に対して0.1〜10重量%が好ましい。」(3頁右上欄下3行〜右下欄下1行)。「また、本発明の重合性組成物には、前記(A),(B),(C)の必須成分以外に、必要に応じ酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料・・・を配合し、懸濁重合に供することもできる。」(4頁右下欄10〜15行)。実施例1は、「メチルメタクリレート30部、スチレン20部、n-ブチルメタクリレート25部、グリシジルメタクリレート25部にイオン交換水300部を加え、さらにポリビニルアルコール(・・・)2部と、セバシン酸20部を加え溶解させた後、・・・超音波を10分間照射し、分散液を調製した。この調製液を、タービン形撹拌翼を備えたフラスコへ移し、アゾビスイソブチルニトリル10部を加え80℃で6時間反応させた。その後、重合物を含む懸濁液をスプレードライアーを用いて乾燥させ、粉体塗料(P-1)を得た。」、実施例2は、「スチレン80部、メチルメタクリレート30部、エチルアクリレート25部、β‐ヒドロキシエチルメタクリレート15部に、クレランU1(西ドイツ国バエル社製、ブロックイソシアネート)16部およびメチルメタクリレート40部、n-ブチルメタアクリレート60部よりなる重量平均分子量11000の固形アクリル樹脂25部を加えて溶解させた。さらに、R-CR3(ブリティッシュチタン社製、酸化チタン)を50部加え、イオン交換水350部と第3リン酸カルシウム6部とを加え、実施例1と同様の方法で超音波を照射し、分散液を調製した。さらに実施例1と同様にして重合を行ない、粉体塗料(P-2)を得た。」というものであり、6頁の第1表には、平均粒径(μ)、標準偏差(μ)、塗膜外観、エリクセン、耐ブロッキング性の各性能について、(P-1)は『20.6、4.5、非常に良好、H、7mm以上、再塗装可能』、(P-2)は『32.1、5.0、非常に良好、2H、7mm以上、再塗装可能』であることが示されている。
刊行物2(「塗料と塗装」、1982,6,51-59頁(昭和57年5月25日 株式会社塗料出版社発行・・・申立人Bの甲第1号証、申立人Cの甲第2号証、申立人Dの甲第2号証、申立人Eの甲第1号証)の53頁右欄、〈4-3粒度分布〉の項には、「粉体塗料の搬送性、流動性や付着、凝集性を左右する粒子間の相互作用が、粒子径、粒子形状に関係していることは容易に理解できる。静電塗装特性に影響していることも然りである。現在の粉体塗料は機械粉砕によっているため形状は無定形であり、粒度分布も通常平均粒径30〜40μの粉体塗料が多いが、使用目的により異なる。粒子径と諸特性を表-4に示す。薄膜化の方向は粒度分布が細かくなる方向であり、塗料の流動性(搬送性)の問題が生じてくる。」と記載され、表-4には、塗面の平滑性(薄膜性)は粒子径が小さくなればが良くなり、塗料の流動性(搬送性)は粒子径が大きくなれば良くなることが示されている。同54頁右欄〈粉体粒子の大きさと薄膜化〉の項には、「粉体粒子の塗膜厚は粉体粒子の大きさに制限され、最大粒径をいかに小さくもっていくかによって、薄膜化も進むことが容易に考えられる。・・・静電粉体塗装において、一重に粉体粒子が塗着することは不可能であり、これで連続塗膜を形成することは考えられないので、最低二重に静電塗装すると仮定した場合、50μ以下の薄膜に仕上げるためには、粒子の最大粒径が50μ以下の大きさでなければならないし、37μ以下の塗膜厚に仕上げるためには400メッシュパス粉を使用する必要があることが分かる。従って現在、通常の粉体塗料が最大粒径80〜100μと大きいことと考え合わせると、薄膜化に伴い粒子が細かくなり、粉体塗料の流動性(搬送性)が大きい問題となることも分かる。」と、また、同55頁右欄下5行目〜56頁左欄14行の〈粒度分布と平滑性、隠ペイ力〉の項には、「当初の弱電用粉体塗料V-PET#5100について、実験室的にフルイのメッシュをかえて粒度分布-塗面の平滑性-隠ペイ力の関係のデータをとったのが表-8である。この表より、塗面の平滑性に粒度分布、特に50μ以上の粗大粒子の多小に影響をうけており、粒度分布が細かくなり、粗大粒子が少なくなると塗面の平滑性も向上する。また塗膜の隠ペイ力も平滑性の影響をうけ、平滑性がよくなると隠ぺい力も増すことが分かる。200メッシュパス粉の30〜35μでの表面粗度を図-5に、250メッシュパス粉の30〜35μでの表面粗度を図-6に示す。また、200メッシュパス粉のコールターカウンターによる粒度分布を図-7に、250メッシュパス粉を図-8に、280メッシュパス粉を図-9に示す。粒度分布を細かくすると10μ以下の微粉が増えるので、この微粉カットの問題が生ずる。」と記載されている。
刊行物3(European Coatings Journal,Powder coatings- A technology of the future 3.Quality assurance:testing method and procedures,814〜832,11/1993・・・申立人Cの甲第1号証)には、「塗装特性と最終塗膜外観の両者は、粉体粒度分布によって大きな影響を受ける。静電スプレー塗装に使用される粉体塗料は、粒度分布が一般的には3〜80μの範囲であるが、塗装によっては粒度分布を変化させるべきである。粒度分布は、荷電方法(コロナ又は摩擦荷電)及び特定の粉体塗装により選定される。現在、微粉を除去した、10〜70μの粗い粒子サイズ分布の要求が増加している。図1は、3つのポリエステル粉体塗料の粒子分布曲線を示している。粉体は、Mikropul ACM-30グラインダーにより粉砕された。これらの曲線のうち、カーブ1はフィルター集塵機で直接捕集して12μまでの微粉含量が最小10%である粉砕粉体の粒子分布曲線であり、カーブ2はサイクロン後に捕集して微粉含量が10%から8〜6%へと2〜4%減少した粉砕粉体の粒子分布曲線であり、カーブ3は分級され12μまでの微粉が10%から2〜2.5%に減少した粉砕粉体の粒子分布曲線である。」(〈4.1.2 粒度分布〉の項)と記載され、827頁の表7には、〈粉体塗料塗装特性及び塗膜外観に与える粒度分布の影響〉として、微粉過ぎる粒子と粗過ぎる粒子における粉体取扱い、塗膜形成、及び塗膜外観に係る特性が示されている。また、824頁左欄14〜23行には、〈レーザー回折技術〉について、「この技術は空気中あるいは液体中における粉体懸濁にレーザービームを通過させるものである。そのレーザービームが粒子から回折される角度はその粒子の直径により決定される。粒度分布は、粒子によって投影された影の大きさによって決定され、その後μ範囲の百分率に変換される。この技術は、粉体塗料実験室で広く用いられている(図2及び図3)。現在、粉砕機での粉体流からの連続粒径分析のための1列システムが利用できる。」と記載され、818頁の表2には、西ヨーロッパにおける最終用途市場及び樹脂タイプによる粉体塗料用途として、エポキシ、エポキシ/ポリエステル(ハイブリッド)、ポリエステル/TGIC又はHAA、及びポリウレタン樹脂粉体塗料の各種用途が掲載されている。
刊行物4(「粉体塗装」、Volume.11 No.3,(1985.6.24),31〜46頁,コーテック株式会社発行・・・申立人Cの甲第3号証、申立人Fの甲第2号証)の38〜39頁の〈3-4 回収塗料の粒度分布の安定〉の項には、「オーバースプレーされた塗料はすべていかなる配管関係をも経由せず、塗装ブースより直接回収されるため粒度分布が安定した塗料をコンスタントに供給できる。例えば、上記サイクロンシステムの場合、サイクロン後のアフターバックで捕集される10〜15%の回収粉体はサイクロンで分級され、微粉だけになっている。この微粉は回収粉体とうまく混合されない限り塗着効率・塗膜の均一性に影響を及ぼすため、再利用が難しいとされている。下の表はポリエステル、クリアー塗料の粒度分布及び流動性特性値を示しています。サンプル(A)では、通常の塗装が行われていますが、サンプル(B)では、微粉混入のため、塗膜の均一性を失っています。」と記載され、表-3には、コールターカウンター測定法によるサンプル(A)とサンプル(B)の粒度分布測定値が、また、表-4には、表-3の粒度分布測定値の分布曲線が示されている。
刊行物5(「塗料技術ニュース」No.133, 7〜9頁 ”エポキシ粉体塗料” 昭和47年5月シェル化学発行・・・申立人Cの甲第4号証)の8頁14〜21頁には、「粒度を特別に限定せずに、粉砕および篩過に必要な装置について述べてきた。一般に云われている条件は、静電噴霧塗装用の粉体塗料の最大粒度が75ミクロンで、平均粒度は約30ミクロンである。このことは、最大粒度は塗装される最小膜厚以下でなければならないと考えるのが妥当であると経験的に云われてきた。他方、微粒子が多いと施工中にブロッキングをおこすことが知られていた。微粒子の割合を正確にはかることは難しいが、最大粒度と平均粒度を規定することでおおよその見当がつく。この条件に合わせた粉体塗料は実際によく使われているが、流れ特性と外観の改良された粉体塗料に対する要望が高まるにつれ、真に適正な粉体塗料の粒度分布を定められるかどうか検討され始めた。」と記載され、9頁の図2には、エポキシ粉体塗料であるAメーカーのKEK MILL、BメーカーのPALLMANN MILL、BメーカーのACM MILLについて、粒度分布-白色着色,速焼付粉体塗料のガウシアン分布曲線が示されている。
刊行物6(特開昭58-65770号公報・・・申立人Dの甲第1号証)の実施例2には、「ポリエステル樹脂(ER-6610、商品名、日本エステル(株)製)52.5部、二酸化チタン(CR-90、商品名、石原産業(株)製)35.0部、ブロックイソシアネート(硬化剤、B-1065、商品名、ヒュルス社製)10.0部、エポキシ樹脂(エピコート1002、商品名、油化シェルエポキシ(株)製)2.0部、表面調整剤(アクロナール4F、商品名、バスフ社製)0.5部を混合機(三井三池(株)製、ヘンシェルミキサー)で約1分問乾式混合し、ついで分散機(ブス社製、ブスコニーダーPR-44)で溶融分散してペレット(平均粒径15mm)を得た。得られたペレットlkgと微粉シリカ(サイラノックス101、商品名、米国キャボット社製)2gとを上記の混合機で約1分間あらかじめ乾式混合したのち、微粉砕機(不二パウダル(株)製、エックサンブルミル)で微粉砕したのち、120メッシュの振動フルイにとおして平均粒径30〜50μmの白色ポリエステル樹脂系粉体塗料を得た。」ことが、また、実施例3には、「アクリル樹脂(ファインディックA-223S、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)55.0部、二酸化チタン(CR-90、商品名、石原産業(株)製)35.0部、ドデカン二酸(硬化剤、デュポン社製)7.0部、エポキシ樹脂(アラルダイドGT-7004、商品名、チバガイギー社製)2.0部、表面調整剤(レジミックスL、商品名、三井東圧化学(株)製)1.0部を混合機((株)川田製作所製、スーパーミキサー)で約2分間乾式混合し、ついで分散機(ブス社製、ブスコニーダーPR-100)で溶融分散してから冷却ベルトで厚さ3〜5mmの板状に伸ばし、粗粉砕して平均粒径10〜20mmのペレットを得た。得られたペレットを微粉砕機(ターボ工業(株)製、ターボミルTM-400)を用い、100kg/hで微粉砕する際に、微粉シリカ〔カープレックスFPS-1、商品名、塩野義製薬(株)製)を0.3kg/hで定量供給機から定量供給して同時微粉砕したのち、120メッシュの振動フルイにとおして平均粒径20〜30μmの白色アクリル樹脂系粉体塗料を得た。」ことが記載されている。
刊行物7(特開昭53-39327号公報・・・申立人Fの甲第3号証)の特許請求の範囲には、「粒子径0〜150μの粒子を含みかつ粒子径10μ以下の粒子の含量が8重量%以下であるような粒径分布をもつ粉体粒子から成ることを特徴とする粉体塗料組成物。」が記載され、1頁右欄下4行〜2頁左上欄下2行には、「粉体塗料組成物は、通常、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂又はアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂に必要な添加剤(例えば硬化剤、硬化促進剤、顔料・・・など)の固形状粉体塗料配合物をスーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどでドライブレンドし、次にエクストルーダー、ホットニーダー、ブスコニーダー、ホットロールなどでメルトブレンドし、更に冷却後機械的に粉砕して篩分けして製造する。通常粉体塗料は良好な塗膜外観を得るために粒径150μ以上のものはカットし30〜50μをピークとする粒度分布のものを使用している。しかしながら、上記機械的粉砕のため粒径10μ以下の粉体も約10〜30%存在し、本発明者等はこれらの微小粒径の粉体が塗装ガンによる吹付塗装時に塗ハネを起こし塗膜外観を損なう原因となることを見出した。・・・粒径10μ以下の粒子含量が全粉体塗料重量に対し8重量%以下の場合は実用上問題はなく、3重量%以下の場合は更に好ましい。」と記載されている。また、実施例には、2頁の第1表に掲載された、アクリル樹脂(グリシジルメタクリレート15重量部、スチレン30重量部、メチルメタクリレート30重量部、イソブチルメタクリレート10重量部、ブチルメタクリレート15重量部にアゾビス(2-メチルプロピオニトリル)2重量部、t-ドデシルメルカプタン1重量部から製造)100(重量部)、アジビン酸8、チタンR-820(石原産業製酸化チタン)30、モダフロー(モンサント製レベリング剤)1からなる配合物(A)を溶融混合した後粉砕して粉砕品の150メッシュ通過物である粉体塗料Aを得、この粉体塗料AをミクロンセパレータMS-1型を用いローター回転数2300rpm、風量10m3/分で分級して微粉を除去して粗粉を粉体塗料Cを得たこと、また、ローター回転数1500rpm、風量15m3/分で分級して同様に粉体塗料Eを得たこと、が記載されている。さらに、実施例に記載された各粉体塗料の粒度分布が第3表に示されている。
刊行物8(特開平5-311096号公報・・・申立人Gの甲第1号証)には、「塗料用原料を溶剤の存在下で混合してなる分散ペーストを乾燥し、粉砕する粉体塗料の製造方法において、前記分散ペーストの乾燥工程が、固形分濃度60〜80重量%の分散ペーストを用い、同ペーストを片面開放の状態にしてl0Torr以下の減圧下で加熱乾燥して固形分濃度95重量%以上の嵩高で密度0.4〜0.6g/cm3の乾燥物を得る工程であることを特徴とする粉体塗料の製造方法。」が記載され(特許請求の範囲の請求項1)、塗料用原料については、「通常の粉体塗料を製造するきに用いられるものであり、特に限定はない。たとえば、樹脂、硬化剤、顔料(クリアタイプの塗料の場合には不要である。)、その他の添加剤である。」と記載されている(3頁3欄【0014】)。また、実施例1には、樹脂固形分(スチレン25重量部、メタクリル酸メチル29.57重量部、メタクリル酸グリシジル30.0重量部、メタクリル酸n-ブチル15.43重量部およびアゾビスイソブチロニトリル2重量部を用いて溶液重合し、加熱減圧して得られたもの)70重量部、ドデカン2酸11重量部、二酸化チタン30重量部、表面調整剤0.5重量部、ベンゾイン0.5重量部、及び、キシレン40重量部からなる原料から得られた塗料乾燥物を、川崎重工業株式会社製の気流および機械式粉砕装置(商品名「クリプトロン」KTM-X型)を用いて粉砕(粗砕物供給量5g/hr、回転子の回転数12000rpm)し、粉体塗料を得た旨記載され、得られた粉体塗料の平均粒子径が23.3μmで、粒度分布幅が18〜51μmであることが7頁の表2に示されている。
刊行物9(PRODUCT FINISHING-August l991 14〜15頁・・・申立人Eの甲第3号証)には塗膜形成用樹脂からなる粉体塗料の粒度分布に関連して、「この薄層フィルムに用いるのは、典型的には平均粒径が20〜35ミクロンの範囲のものである。もちろん、粉体の塗布に有害である、細かい(サブ5ミクロン)材料を制御しなければならない。」と記載されている(15頁最左欄22〜28行)。
刊行物10(特開平2-178362号公報・・・申立人Aの甲第5号証、申立人Fの甲第4号証)には、「(1)各粉体塗料の少なくとも表面上に、ガラス転移温度50℃〜150℃、平均粒子径0.001〜10μで、紫外線吸収能もしくは酸化防止機能を有する物質あるいは基を含む樹脂微粒子を有し、該微粒子含量が塗料全固形分に対し、0.05〜20重量%である粉体塗料。(2)樹脂微粒子が架橋もしくは非架橋のアクリル樹脂微粒子である請求項第1項記載の粉体塗料。」が記載されている(特許請求の範囲)。
当該樹脂微粒子としては、「ビニル樹脂(アクリルを含む)、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等、就中アクリル樹脂」が好ましく(2頁左下欄1〜7行)、また、粉体粒子は、「通常使用せられる粉体塗料自体である。このような粉体粒子は例えばビニル樹脂(アクリル樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等常温で固体であり、加熱により溶融しフィルム形成性のある任意のバインダー樹脂と、顔料、硬化剤および所望により加えられるその他の添加剤からなり、その平均粒径は通常30〜50μ程度に造粒されてなるものである。また顔料を含まぬクリヤーの場合もある。本発明にあっては、係る粉体粒子の少なくとも表面上に、前述の樹脂微粒子群が存在し、該樹脂微粒子の含量が塗料全固形分に対し、0.05〜20重量%であることを特徴とする粉体塗料が提供される。」(5頁左上欄11行〜右上欄4行)とし、「本発明の粉体塗料は粉体の少なくとも表面上に樹脂微粒子群が存在するため、貯蔵時に粉体粒子同士が接触するのではなく、Tgの比較的高い樹脂微粒子同士が接触するため常温では融着、ブロッキングのおそれがなく、むしろすべり性が向上し、貯蔵安定性が極めて良好であるし、無機微粒子とことなり比較的多量に樹脂微粒子を存在せしめてもツヤびけ、外観不良を生じることがなく、特に非架橋の樹脂微粒子を用いた場合には樹脂微粒子自体も加熱フローし、特段に外観の優れた塗膜を与えることができ、架橋樹脂微粒子を用いた場合、膜硬度、耐候性の改善が得られる。」と記載されている(5頁左下欄5〜16行)。さらに、参考例13(ポリエステル塗料の調製)として、「ER6800(日本ポリエステル社製ポリエステル樹脂)100重量部、クレランUI(BASF社製ブロックイソシアナート)36部、酸化チタンCR50 40部をヘンシェルミキサー(三井三池製作所製)にて乾式混合し、ついでコニーダーPR-46(スイス:ブス社製)にて100℃の温度で溶融分散し、冷却後ハンマーミルにて粉砕し150メッシュの金網で分級して粉体粒子A-13を得た。」こと、実施例1(非架橋樹脂微粒子A-1 1%添加)として、「参考例13で得た粉体粒子A-13 100部に、樹脂微粒子A-1を1部(母体粉体塗料比で1%)加えてヘンシェルミキサーにて30秒乾式混合し、粉体粒子を得た。」こと、が示されている。
刊行物11(特開平2-178360号公報・・・申立人Gの甲第2号証)「(1)ガラス移転温度(Tg)が50℃〜150℃の非架橋樹脂微粒子を含む粉体塗料。(2)非架橋樹脂微粒子の平均粒径が0.001〜10μで、その含有量が固形分重量比で全粉体塗料の0.05〜35重量%である請求項第1項記載の粉体塗料。」が記載されている(特許請求の範囲)。この非架橋樹脂微粒子を構成する樹脂としては、「塗料分野で使用せられる任意の樹脂から構成せしめうるが、構造上あるいは実用上の見地からビニル樹脂(アクリル樹脂を含む)、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等であることが好ましく特にビニル樹脂が構造の容易さ、設計の自由度大などの点で」好ましく(2頁左下欄9〜14行目)、「粉体塗料は加熱により溶融し造膜性を有する塗料であれば、1種または2種以上の基体樹脂、顔料、硬化剤および所望により加えられるその他の添加剤からなる任意の塗料であり、クリアーの場合は顔料を必要とすることがないこともある。基体樹脂は粉体塗料の塗膜形成のための主要成分であり、例えば水酸基、カルボキシル基、グリシジル基などから選ばれる1種または2種以上の架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッソ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂およびこれらの変性体などがあげられる・・・。硬化剤は・・・、例えばアミノブラスト樹脂、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミド樹脂(ナイロンを含む)、イソシアヌレート化合物および脂肪族二塩基酸などがあげられる。」(9頁右下欄8行〜10頁左上欄6行)。また、当該発明に係る粉体塗料の作用効果について、「本発明の粉体塗料は、ガラス転移温度が特定の範囲内にあり、加熱時にフロー性を示す樹脂の微粒子が粉体の少なくとも表面に存在する粉体塗料として提供され、耐ブロッキング性に優れ、長時間の保存、高湿地帯での貯蔵、搬送にも充分耐えることができ、焼付けにより特に外観の優れた塗膜を与えることができ産業上極めて有用な粉体塗料である。」と記載されている(3頁左下欄1〜8行)。
刊行物12(昭和62年7月6日に開催された、粉体工学会主催の粒度測定セミナー「最近の粒度分布測定法の総合的比較検討」のテキスト、1〜16頁(1987年7月1日発行)・・・申立人Fの甲第5号証)の5頁の表-2には、各種粒度測定法の対象粒度範囲が、比較して記載されている。
刊行物13(「粉体塗装技術ハンドブック」 17〜19頁 平成元年6月20日二版 日本粉体塗装工業協会発行・・・申立人Bの甲第5号証)には、粉体塗料の種類には熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料があり、前者はエポキシ系、ポリエステル系、アクリル系等に、また、後者はポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリアミド系等に分類されること(19頁、3)種類の項)、エポキシ系、ポリエステル系、及び、アクリル系の粉体塗料には、〈エポキシ樹脂60重量%、顔料(酸化チタン)30重量%、硬化剤(ジシアンジアミド)3重量%、硬化促進剤を含む添加剤2重量%〉、〈ポリエステル樹脂55重量%、顔料(酸化チタン)30重量%、硬化剤(ブロックイソシアネート)10重量%、硬化促進剤を含む添加剤5重量%〉、〈アクリル系樹脂66重量%、顔料(酸化チタン)20重量%、硬化剤(二塩基酸)10重量%、硬化促進剤を含む添加剤4重量%〉の配合例があること(17頁、2)成分の項)、さらに、粉体塗料に混合される主な顔料は、酸化チタン、黄色酸化鉄、弁柄、カーボンブラックであること(17頁 (1)顔料の項)、が示されている。
刊行物14(「粉体塗装技術要覧」、7〜9頁、平成6年5月10日 株式会社塗料報知新聞社発行・・・申立人Cの甲第6号証)の7〜8頁の〈2)成分〉の項には、「粉体塗料は合成樹脂塗料の一種であり、その配合成分も溶媒を除けば従来の液状塗料と類似している。しかし、その内容が粉末の塗料であるため(有機溶媒等溶媒を使用しない)、その配合成分、配合量そして製造方法に特徴を有している。」こと、主な静電塗装用粉体塗料の配合例として、〈エポキシ樹脂60重量%、顔料(酸化チタン)30重量%、硬化剤(ジシアンジアミド)3重量%、他の添加剤2重量%〉、〈ポリエステル樹脂55重量%、顔料(酸化チタン)30重量%、硬化剤(ブロックイソシアネート)10重量%、他の添加剤5重量%〉、〈アクリル系樹脂66重量%、顔料(酸化チタン)20重量%、硬化剤(二塩基酸)10重量%、他の添加剤4重量%〉の配合例があること、及び、粉体塗料に使用される主な無機顔料には、酸化チタン、黄色酸化鉄、弁柄、カーボンブラックが、主な有機顔料には、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ジアゾ系イエロー、キナクリドン系があること、が記載されている。また、9頁の〈3)種類〉の項には、「粉体塗料はその中に配合される合成樹脂の名称により分類される。現在国内で使用されている代表的な粉体塗料の種類とその概要についてまとめる。粉体塗料は大別して熱硬化性樹脂を使用する熱硬化性粉体塗料と熱可塑性樹脂を使用する熱可塑性粉体塗料があり、前者は主として静電粉体塗装法こより薄膜に仕上げるケースが多く(50〜100μ)、後者は主として流動浸漬法にて厚膜に仕上げるケースが多い(300〜1000μ)。一部の粉体塗料については、その樹脂成分を同じくして静電塗装法でも流動浸漬法でも利用可能である。」と記載され、粉体塗料は、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料に分類されて、前者としてエポキシ系、エポキシ-ポリエステル系、ポリエステル系、アクリル系、アクリル-ポリエステル系、ふっ素系が、また、後者としてポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリアミド系、ふっ素系、変性ポリオレフィン系が有ることが示されている。
b)その他の異議証拠刊行物等
申立人Aの証拠
甲第2号証(特開平5-1243号公報)の2頁27〜33行には、「粉体塗料を用いて形成された塗膜の性能、特に塗膜の凹凸の有無および光沢は、粉体塗料の粒子の平均粒子径および粒度分布幅により影響を受ける。すなわち、平均粒径が小さいほど、および/または、粒度分布幅が小さいほど、表面平滑性は良くなり、その結果塗膜の凹凸がなくなり、光沢も良くなる。」と記載され、実施例1〜4には、平均粒子径が10μmで粒度分布幅が5〜25μm及び5〜20μmの粉体塗料が、また、比較例として、平均粒子径が30μmで粒度分布幅が8〜100μmの粉体塗料等が示されている。
甲第3号証(特開平1-135878号公報)の2頁左下欄13〜14行には、電気絶縁用エポキシ樹脂粉体塗料組成物の性能に関連して、「平均粒径を20〜50μmに調整することにより、塗膜の外観を向上させることができる。」と記載されている。
甲第4号証(特開昭59-226065号公報)の3頁左下欄下2行〜右下欄下4行には、エポキシ樹脂粉体塗料組成物の粒径に関連して、「粉体塗料組成物の平均粒径が30μmを下廻ると、粒径の小さい粒子が多くなるため流動浸漬法、ホットスプレー法で粉体塗装する場合、圧縮空気により該粉体塗料組成物を流動させる際粒子同士が密に充填されるため空気が抜けにくくなり、突沸を起こして周囲に飛散するため好ましくなく、又均一な流動状態が得られないため均一な膜厚が得られない。又、静電流動浸漬法、静電スプレー法で粉体塗装する場合、高電圧を印加した際、粒子表面に蓄えられる静電気量が少ない粒径の小さい粒子が多くなるため、静電気力が弱くなり接地された部品に付着しにくくなるため好ましくない。粉体塗料組成物の平均粒径が80μmを上廻ると、粒径の大きい粒子が多くなるため流動浸漬法、ホットスプレー法で粉体塗装する場合、粒子が重くなるため流動しずらくなり、特にホットスプレー法の場合はスプレーガンのノズルの目つまりの原因になるため好ましくない」と記載され、実施例には、平均粒径40〜45μmエポキシ樹脂粉体塗料が示されている。
申立人Bの証拠
甲第2号証(「新版 品質管理便覧 第2版」116〜117行、1988年4月1日第2版 [財]日本規格協会発行)の、〈3.2 データの数量化〉の項には、平均値を求める式(3.1)、標準偏差を求める式(3.3)が記載され、度数表を利用した平均値と標準偏差の計算の手順が示されている。
甲第3号証は、甲第1号証の図-7〜図-9に示された粒度分布からなる粉体塗料について計算した平均値及び標準偏差示す。
甲第4号証は、コールターカウンタ-用チャート紙である。
申立人Cの証拠
甲第7号証(「顔料便覧」、73〜74頁、株式会社誠文堂新光社、昭和43年11月15日発行)の73頁の第3・4表には〈各種粒度測定法による平均粒子径(μ)〉が、また、74頁の第3・5表には、〈各顔料の粒子径比較〉が示されている。
甲第8号証(日本工業規格、二酸化チタン(顔料)、K5116-1995)には、二酸化チタンの分散性が10μm以下であることが記載されている。
申立人Dの証拠
甲第3号証(川上塗料株式会社の須田憲司による実験結果報告書)には、甲第1号証の実施例2に記載された白色ポリエステル樹脂系粉体塗料および甲第1号証の実施例3に記載された白色アクリル樹脂系粉体塗料を調製し、それらの体積平均粒径および粒径分布標準偏差を求めたこと、その結果、実施例2の白色ポリエステル樹脂系粉体塗料は体積平均粒径が30.9μmで、粒径分布標準偏差が16.8μmであり、実施例3の白色アクリル樹脂系粉体塗料は体積平均粒径が22.0μmで、粒径分布標準偏差が11.4μmであることが示されている。
申立人Eの証拠
甲第2号証(特開昭56-49761号公報)の特許請求の範囲(1)には、「40〜120℃で溶融する水酸基含有ポリエステル、ε-カプロラクタムでブロックされたイソホロン-ジイソシアネート付加物および場合によっては触媒及び通例の添加物を基礎とする。良好な貯蔵安定性を有する0.25mmより小さい、特に0.02〜0.06mmの粒度の粉末状被覆材料であって、硬化剤としてε-カプロラクタムで部分的にのみブロックされたイソホロンジイソシアネート付加物を使用することを特徴とする、上記粉末状被覆材料。」が記載され、7頁左上欄13〜15行には「殊に30〜50μに粉砕しそして場合によってはより大きい区分を篩に掛けて除くことによって行なう。」と記載されている。
参考資料1は、「マイクロトラック、光とレーザーを応用した粒度分析計の測定原理集」と題する日機装株式会社のカタログ(CATALOG NO.3060 R1)である。
参考資料2は、(「マイクロトラックHRA MODEL No.9320-X100」と題する日機装株式会社、ハネウエル社のカタログ(CATALOG NO.3112-R5)である。
申立人Gの証拠
甲第3号証(特開平5-279452号公報)には、「エポキシ当量600以上のビスフェノール型エポキシ樹脂25〜90部、エポキシ当量200以上の内部可塑化液状エポキシ樹脂3〜55部、ハロゲン化エポキシ樹脂10〜40部からなるエポキシ樹脂並びに硬化剤及び/または硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物。」が記載されている(特許請求の範囲)。硬化剤とエポキシ樹脂の割合は、「エポキシ樹脂に対してエポキシ
樹脂硬化剤が当量比で0.4〜1.4の範囲、好ましくは0.6〜1.1」であり(3欄19〜21行)、4頁の表1には実施例1〜9として、エポキシ樹脂(R-307〜R-151)100重量部に対し硬化剤(PAPA〜BPF)7.2〜14.2重量部程度配合のものが示されている。また硬化促進剤の配合割合は、「混合エポキシ樹脂100重量部に対し、0.2〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部」の割合である(3欄29〜31行)。
参考資料は、川崎重工業株式会社製の高速回転式微粉砕機「クリプトロン」のカタログ(Cat.No.3Q1851Nov.'94(Y))であり、同カタログには、〈閉回路冷風粉砕システム例〉として、「クリプトロン」による粉砕品を分級機にかけ、ついで、サイクロン、あるいはバグフィルタにかけて〈製品〉、あるいは〈微粉〉を得る工程が示されている。
iii-4-2)そこで、訂正後の本件発明と各証拠刊行物に記載された発明とを対比・検討する。
a)訂正後の請求項1の発明(以下、「本件発明1」という。)について
本件発明1と各証拠刊行物の記載事項とを対比したが、各刊行物には、本件発明1の構成要素のそれぞれが部分的に記載されているものの、本件発明1の構成要素の全てを有する技術構成は記載されておらず、それらの各部分部分を本件発明1のとおりに組み合わせることが自明であるすべき根拠はなく、また、その組み合わせによって、特に優れた特性の粉体塗料が得られることを示唆する点もない。
すなわち、刊行物1には懸濁重合による粉体塗料の製造方法が記載されているが、溶融混練によって得られる粉体塗料についての記載はなく、懸濁重合法と溶融混練法のそれぞれによって得られる粉体塗料が、粉体特性の点で同じ課題下にあるとすべき根拠も見いだせない。また、同刊行物には、本件発明1におけるような、『熱硬化性ポリエステル樹脂、顔料、並びに、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートから選ばれる硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むもの』からなる粉体塗料の組成について具体的な示唆はなく、当該組成からなる粉体塗料が、特定の体積平均粒径と粒径分布標準偏差値において優れた特性を有することの示唆もない。
刊行物2には、本件発明1における『熱硬化性ポリエステル樹脂、顔料、並びに、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートから選ばれる硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含む』粉体塗料は記載されていないし、示唆もない。当該組成からなる粉体塗料において、本件発明1におけるような特定体積平均粒径と粒径分布標準偏差値を有する場合、優れた効果があることは、特許権者が特許異議意見書に添付した実験結果報告書によって明らかであり、刊行物2には、このような効果を予測させるような記載は見いだせない。
刊行物3の図1に示された粉体塗料の平均粒径は、申立人Cの計算により42.3μであるから、同粉体塗料は本件発明1の粉体塗料に該当しない。また、同刊行物のその他の記載事項を参照しても、本件発明1におけるような体積平均粒径と粒径分布標準偏差の関係において優れた特性が得られることが示唆されているものとは認められない。
刊行物4の表-3及び表-4に記載された塗料は『クリアー塗料』であるから、本件発明1の顔料を含む粉体塗料とは相違する。顔料を含む粉体塗料とクリアー塗料が同じ課題下にあるとすべき根拠は見いだせないから、同刊行物に記載された粉体塗料の粒度分布から、顔料を含む粉体塗料における良好な体積平均粒径と粒径分布標準偏差の関係が予測され得たものとは認められない。
刊行物5には、エポキシ粉体塗料に係る技術事項が記載されているが、エポキシ粉体塗料について示された粒度分布が、本件発明1におけるような『熱硬化性ポリエステル樹脂、顔料、並びに、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートから選ばれる硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含む』粉体塗料においてそのまま適用され、良好な特性を与えるとの予測が、当業者に容易になされたものとは認められない。
刊行物6の実施例2には、ポリエステル樹脂配合物を溶融分散して得た平均粒径15mmのペレットを微粉シリカとともに微粉砕機で微粉砕して120メッシュのフルイにとおし、平均粒径30〜50μmの白色ポリエステル樹脂系粉体塗料を得たと記載されているところ、申立人Dはこの実施例を追試の上、体積平均粒径30.9μm、粒径分布標準偏差16.8μmの粉体塗料を得たとする実験結果報告書(甲第3号証)を提出した。実施例2には微粉砕の条件が示されていないため、同実験結果報告書では特定の粉砕条件を設定して実施したが、粉体塗料の平均粒径及び粒度分布は粉砕の条件によって定まるものと認められるところからすると、実験者において独自に選定した粉砕条件下に実施した実験結果報告書のデータを、実施例2の適正な追試結果とすることはできない。したがって、刊行物6には本件発明1の粒径分布標準偏差が記載されていないし、その記載から明らかにされ得るものでもない。まして、同刊行物に本件発明1における体積平均粒径と粒径分布標準偏差の良好な関係が示唆されているものとすることはできない。
刊行物7には、『熱硬化性ポリエステル樹脂、顔料、並びに、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートから選ばれる硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含む』粉体塗料を具体的に示す記載はない。同刊行物の実施例には、アクリル樹脂系の粉体塗料C及びEについて粒度分布が記載され、申立人Fはこの粒度分布から平均粒径と標準偏差を求めて本件発明1と一致すると主張したが、アクリル系粉体塗料について示された粒度分布が、本件発明1におけるような『熱硬化性ポリエステル樹脂、顔料、並びに、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートから選ばれる硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含む』粉体塗料においてそのまま適用され、良好な特性を与えるとの予測が、当業者に容易になされたものとは認められない。
刊行物8には、本件発明1における『熱硬化性ポリエステル樹脂、顔料、並びに、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートから選ばれる硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種』を含み、溶融混練によって得られる粉体塗料を明らかに示唆する記載はない。同刊行物の実施例1には、樹脂固形分としてスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸n-ブチル、及びアゾイソブチロニトリルを含有する塗料用原料を溶剤の存在下で混合した分散ペーストを乾燥、粉砕して得たものであって、平均粒子径が23.3μm、粒度分布幅が18〜51である粉体塗料が記載されていて、申立人Gは計算の上、当該粉体塗料の粒径分布標準偏差が本件発明1における規定範囲に入るものとしているが、同刊行物に記載された溶剤分散法によって得られるビニル樹脂系粉体塗料に係る技術事項を、本件発明1の溶融混練法によって得られる熱硬化性ポリエステル樹脂粉体塗料に適用することが自明であるとまではし得ないから、同刊行物に、本件発明1における特定の体積平均粒径と粒径分布標準偏差の良好な関係が示唆されているものとは認められない。
刊行物9は、薄層フィルム塗装のための粉体塗料としては、平均粒径20〜35ミクロンのものが使用されることを示すに止まる。
刊行物10〜14には、本件発明1における特定の体積平均粒径と粒径分布標準偏差について記載されていない。
各申立人が提出したその他の刊行物等にも、本件発明1の構成要素が部分として記載されているに止まる。
本件発明1に係る粉体塗料は、上記構成をとることによって、明細書に記載のとおり、あるいは、特許異議意見書に示すとおり、優れた搬送性及び塗膜形成時の外観を可能としたものであるところ、上記各証拠刊行物等のいずれにも、粉体塗料の平均粒径とともに粒径分布標準偏差を特定範囲値とすることによって、塗膜性能と搬送性を向上させるという技術思想を明確に示す記載は見いだせないから、各証拠刊行物等の記載事項を寄せ集めてみても、本件発明1におけるこのような構成と優れた特性の関係が示唆され得るものとは認められない。
したがって、本件発明1は、上記各刊行物に記載された発明ではないし、これらの刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
b)訂正後の請求項2〜8の発明(以下、「本件発明2〜8」という。)について
本件発明2〜8は、本件発明1において、各構成要素をさらに具体化し限定するものであるから、本件発明1が上記各刊行物に記載された発明に該当せず、また、その記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明2〜8もまた、上記各刊行物に記載された発明に該当せず、また、その記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
c)訂正後の請求項9の発明(以下、「本件発明9」という。)について
上記刊行物には、本件発明9に係る、体積平均粒径が20〜40μm、粒径分布標準偏差が20μm以下であって、かつ、その粉体塗料粒子が、第1の粒子の表面にガラス転移点50〜150℃の第2の粒子が複合化されてなる粉体塗料について記載されていないし、示唆もされていない。
すなわち、刊行物10及び11には、平均粒径を通常30〜50μ程度とする粉体粒子の表面に、ガラス転移点50〜150℃程度の樹脂微粒子を有する粉体塗料が記載されているが、本件発明9における特定の体積平均粒径と粒径分布標準偏差を有する粉体塗料についての示唆はない。
本件発明9は、上記構成をとることによって、明細書に記載のとおり、あるいは、特許異議意見書に示すとおり、優れた搬送性及び塗膜形成時の外観を可能としたものであるところ、上記各証拠刊行物等の記載事項を寄せ集めてみても、本件発明9におけるこのような構成と優れた特性の関係が示唆され得るものとは認められない。
したがって、本件発明9は、上記各刊行物に記載された発明ではないし、各これらの刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
d)訂正後の請求項10〜12の発明(以下、「本件発明10〜12」という。)について
本件発明10〜12は、本件発明9において、各構成要素をさらに具体化し限定するものであるから、本件発明9が上記各刊行物に記載された発明に該当せず、また、その記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明10〜12もまた、上記各刊行物に記載された発明に該当せず、また、その記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
iii-5)特許法36条4項及び5項違反について
a)当審における第2回取消理由で指摘した明細書の記載不備は、訂正前の請求項6の発明、及び請求項11において塗膜形成用樹脂がエポキシ樹脂である発明については、明細書中に、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない、というものであるが、当該記載不備は、平成12年5月10日付の訂正請求によって訂正前の請求項6を削除するとともに、同請求項11においてエポキシ樹脂に係る事項が入らないことを明確にした結果、解消された。
b)申立人Eが指摘した明細書の記載不備は、明細書に記載された計算式による粒径分布標準偏差の計算には大きな誤差が伴うから、粒径分布標準偏差について、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない、というものであり、その理由として参考資料1及び2を提示の上、式において用いる『D;個々の粒子の粒径』は、粒径測定装置で得られる体積分布からソフトウェアを用いて求めた個数基準値であって大きな誤差を伴う概算値であるから、その概算値を基にして得られる標準偏差にも大きな誤差が生じることを挙げている。
しかし、本件明細書には特定の粒径測定装置が明示され、その装置によって提供された数値を基に粒径分布標準偏差を算出することが示されているから、当業者が本件発明における粒径分布標準偏差を算出することに困難があるものとは認められない。
すなわち、その装置における測定結果の再現性など性能面の信頼性に問題があるのであればともかく、装置の機構あるいはソフトウェアに由来するデータ精度の限界があることのみをもって、当業者が容易に実施できないとすることはできない。
iii-6)したがって、上記各証拠刊行物の存在に拘わらず、本件の訂正後の請求項1〜12の発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、明細書の記載不備もない。
iv)以上のとおり、上記訂正は、特許法120条の4 2項の規定に適合し、また、同3項で準用する同126条2項から4項の規定に適合するから、適法なものとして認めることとする。
4.特許異議の申立て
本件の特許異議申立における申立人の主張は、〈3.iii-2)〉に記載のとおりであるところ、訂正後の本件請求項1〜12の発明が当該理由によって取り消すことができないことは、〈3.iii-4及びiii-5)〉に記載のとおりである。
5.むすび
以上のとおり、上記訂正は適法なものとして請求のとおりに認められ、また、訂正された本件の請求項1〜12の発明に係る特許は、特許異議申立ての理由、及び当審において通知した取消理由によって、取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1〜12の発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
粉体塗料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶融混練によって得られる粉体塗料であって、
塗膜形成用樹脂からなり、体積平均粒径が20〜40μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下であることを特徴とする粉体塗料であり、
前記塗膜形成用樹脂が、熱硬化性ポリエステル樹脂であり、
顔料、並びに、硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むものであって、前記硬化剤はブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレートである粉体塗料。
【請求項2】 粒径分布標準偏差が16μm以下である請求項1記載の粉体塗料。
【請求項3】 粒径分布標準偏差が13μm以下である請求項1記載の粉体塗料。
【請求項4】 粉体塗料粒子のうち、最大のものの粒径が、90μm以下である請求項1、2又は3記載の粉体塗料。
【請求項5】 粉体塗料粒子のうち、最小のものの粒径が、1μm以上である請求項4記載の粉体塗料。
【請求項6】 硬化剤を、塗膜形成用樹脂100重量部に対して5〜80重量部含有し、硬化促進剤を、塗膜形成用樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部含有する請求項1記載の粉体塗料。
【請求項7】 二酸化チタン、べんがら、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン及びキナクリドン系赤色顔料からなる群より選択された少なくとも1種の顔料を含有する請求項1、2又は3記載の粉体塗料。
【請求項8】 顔料を、粉体塗料100重量部に対して1〜80重量部含有する請求項7記載の粉体塗料。
【請求項9】 溶融混練によって得られる粉体塗料であって、
塗膜形成用樹脂からなり、体積平均粒径が20〜40μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下であることを特徴とする粉体塗料であり、
前記塗膜形成用樹脂が、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むものであって、
粉体塗料粒子が、塗膜形成用樹脂の一部分を含む第1の粒子の表面に第2の粒子が複合化されてなるものであり、前記第2の粒子が、前記塗膜形成用樹脂の残部を含み、かつ、ガラス転移点が50〜150℃のものである粉体塗料。
【請求項10】 第2の粒子が、体積平均粒径0.001〜10μmのものである請求項9記載の粉体塗料。
【請求項11】 第2の粒子の含有量が、粉体塗料100重量部に対して0.05〜35重量部である請求項9記載の粉体塗料。
【請求項12】 第2の粒子が、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びメラミン樹脂からなる群より選択された少なくとも1種よりなるものである請求項9記載の粉体塗料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、搬送性に優れ、高外観の塗膜を形成する粉体塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料は、一般に、塗膜形成用樹脂からなり、体積平均粒径が30〜40μm程度であって、静電スプレー塗装や流動層浸漬塗装等の方法により被塗物に塗布され、焼き付けられることにより塗膜を形成する。
しかしながら、このような粉体塗料は、艶のある平滑な塗膜を形成することができず、塗膜の外観に劣るという欠点があった。
【0003】
このような欠点を改善し、高外観の塗膜を得るための技術として、例えば、特願平3-264025号公報には、平均粒径を従来よりも小さくし、しかも、小粒径粒子の比率に上限を設けた粉体塗料であって、平均粒径5〜20μmで、5μm以下の粒子の割合が25重量%以下である粉体塗料が開示されている。
この粉体塗料は、艶のある繊密で平滑な塗膜を形成することができるものであるが、従来の粉体塗料よりも小さい平均粒径を有するので、空気流等によってパイプ中を移送される途中でパイプにつまる等の支障が生じやすく、搬送性に問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の現況に鑑み、高外観の塗膜を形成することができ、かつ、搬送性に優れた粉体塗料を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、粉体塗料を、塗膜形成用樹脂からなり、体積平均粒径が20〜50μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下とするところにある。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明の粉体塗料の体積平均粒径は、20〜50μmである。体積平均粒径が20μm未満であると、気流により移送されるときにパイプを閉塞しやすく搬送性に問題が生じ、50μmを超えると高外観の塗膜が得られないので、上記範囲に限定される。好ましくは20〜40μmである。上記体積平均粒径は、リード・アンド・ノースロップ社製のマイクロトラック-II等の電磁波散乱による粒径測定装置により測定することができる。
【0007】
本発明の粉体塗料の粒径分布標準偏差は、20μm以下である。粒径分布標準偏差が20μmを超えると、高外観の塗膜が得られないので、上記範囲に限定される。本発明の粉体塗料の粒径分布標準偏差は、好ましくは16μm以下であり、より好ましくは13μm以下である。16μm以下であれば塗膜の外観がより向上し、13μm以下であれば塗膜の外観がさらに向上する。
【0008】
粉体塗料の粒径分布標準偏差は、粒径測定装置で得られたデータを用いて次式によって求めることができる。
σ=〔Σ{(D-X)2F}/ΣF〕1/2
式中、σは、粒径分布標準偏差を表す。Dは、個々の粒子の粒径を表す。Xは、体積平均粒径を表し、X=Σ(DF)/ΣFによって表される。式中、Fは、粒子の頻度である。
【0009】
本発明の粉体塗料は、その粒子のうち最大のものの粒径が、90μm以下である。粒径が90μmを超える粒子が存在すると高外観の塗膜が得られない。好ましくは、粒子のうち最大のものの粒径が、80μm以下である。
本発明の粉体塗料は、その粒子のうち最大のものの粒径が90μm以下であって、しかも、その粒子のうち最小のものの粒径が1μm以上であることが好ましい。粒径が1μm未満の粒子が存在すると搬送性が低下する。
【0010】
本発明の粉体塗料は、バインダー成分としての塗膜形成用樹脂からなる。
上記塗膜形成用樹脂としては特に限定されず、粉体塗料分野において通常使用されるもの等を使用することができ、このようなものとしては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、なかでも、ポリ塩化ビニル樹脂等のビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂等を好適に使用することができる。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、なかでも、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等を好適に使用することができる。
上記塗膜形成用樹脂として上記熱硬化性樹脂を使用する場合、本発明の粉体塗料は、硬化剤、硬化促進剤を含有することが好ましい。
【0011】
上記硬化剤の含有量は、塗膜形成用樹脂として使用される熱硬化性樹脂100重量部あたり、5〜80重量部が好ましい。5重量部未満であると硬化が不充分となり、80重量部を超えると硬化が進みすぎ、塗膜物性が低下する。
上記硬化促進剤の含有量は、塗膜形成用樹脂として使用される熱硬化性樹脂100重量部あたり0.1〜5重量部が好ましい。0.1重量部未満であると硬化が不充分となり、5重量部を超えると硬化が進みすぎ、塗膜物性が低下する。
【0012】
本発明においては、上記塗膜形成用樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、必要により、例えば、無水フタル酸、アミン化合物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド等の硬化剤、硬化促進剤;アクリル樹脂等の他の樹脂を併用することができる。
本発明においては、上記塗膜形成用樹脂として熱硬化性アクリル樹脂を使用する場合には、必要により、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の他の樹脂;多価カルボン酸、ブロックイソシアネート化合物等の硬化剤を使用することができる。
【0013】
本発明においては、上記塗膜形成用樹脂として熱硬化性ポリエステル樹脂を使用する場合には、必要により、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の他の樹脂;多塩基酸、ブロックイソシアネート化合物、トリグリシジルイソシアヌレート等の硬化剤を使用するができる。
【0014】
本発明の粉体塗料は、必要により、顔料、その他の添加剤を含んでいてもよい。上記その他の添加剤としては、他の樹脂、硬化剤、硬化促進剤又は硬化触媒、表面調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワキ防止剤、顔料分散剤等を挙げることができる。
上記顔料としては特に限定されず、なかでも、二酸化チタン、べんがら、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系赤色顔料等を好適に使用することができる。
【0015】
上記顔料の含有量は、粉体塗料100重量部に対して、1〜80重量部が好ましい。含有量が1重量部未満であると、着色等の顔料の効果が得られず、80重量部を超えると、高外観の塗膜が得られない。
上記顔料及びその他の添加剤は、粉体塗料の粒子中に塗膜形成用樹脂等とともに含まれていてもよいが、塗膜形成用樹脂とは別の粒子として添加されていてもよい。
【0016】
本発明の粉体塗料は、透明性を損なわない量又は種類の顔料を含むか、又は、顔料を全く含まないで、透明な塗膜を形成しうるクリアー塗料とすることもできる。
【0017】
本発明の粉体塗料は、粉体塗料粒子が、塗膜形成用樹脂の一部分を含む第1の粒子の表面に第2の粒子が複合化されてなるものであり、上記第2の粒子が、上記塗膜形成用樹脂の残部を含み、かつ、ガラス転移点が50〜150℃であるものであってもよい。上記複合化された粉体塗料粒子は、第1の粒子の表面に第2の粒子が付着しているものであってもよく、第1の粒子の表面に第2の粒子が若干埋め込まれたものであってもよい。本発明の粉体塗料は、これら2つの状態の粉体塗料粒子をともに含むものであってもよい。
【0018】
このように、第1の粒子の表面に第2の粒子を複合化して複合化粒子とすることにより、複合化された粉体塗料粒子を構成する第1の粒子同士が直接接触しにくくなるので、貯蔵中のブロッキングが生じにくくなり、また、搬送時の流動性も改善される。また、このように粒子を複合化することにより、塗膜形成用樹脂としてガラス転移点(以下「Tg」ともいう)が低い樹脂、例えば、Tgが40℃程度の樹脂を第1の粒子に利用することが可能となる。
【0019】
上記複合化された粉体塗料粒子においては、第2の粒子は、粉体塗料の焼き付け時に第1の粒子の塗膜形成用樹脂とともに溶融し、塗膜を形成するので、形成される塗膜には、第2の粒子による表面荒れ等の外観不良も生じにくい。
【0020】
上記第2の粒子は、上記塗膜形成用樹脂と同じ樹脂からなるものが好ましいが、製造上又は実用上の見地から、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエスチル樹脂、メラミン樹脂等が通常用いられる。これらのうち、製造の容易さや設計の自由度等の点からビニル樹脂が好ましい。
【0021】
上記第2の粒子を構成する樹脂は、Tgが50〜150℃である。Tgが50℃未満の場合は、第2の粒子を第1の粒子表面に複合化することによる効果が期待できず、Tgが150℃を超えるとより一層の効果の増大が期待できない。好ましくは、70〜120℃である。
【0022】
上記第2の粒子の体積平均粒径は、粉体塗料の体積平均粒径よりも小さく設定されることが好ましい。上記第2の粒子の体積平均粒径は、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜5μmがより好ましい。
上記第2の粒子の添加量は、粉体塗料100重量部に対して0.05〜35重量部が好ましい。0,05重量部未満であると、第2の粒子による効果が期待できず、35重量部を超えると、塗膜の外観が損なわれる。
【0023】
上記第2の粒子は、例えば、乳化重合、懸濁重合等の方法により直接製造できる。また、溶液重合、塊状重合等により樹脂を製造し、これを粉砕して分級することにより得ることもできる。
【0024】
本発明の粉体塗料の製造方法としては特に限定されず、粉体塗料製造分野において通常使用される方法等によって行うことができる。例えば、上述の塗膜形成用樹脂、及び、必要に応じて使用される顔料、その他の添加剤をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル、バンバリーミキサー等の混合機により均一に混合し、次に、得られた混合物を、エクストルーダーや熱ロール等の混練機により溶融混練し、溶融した塗膜形成用樹脂中に樹脂以外の成分を均一に分散させ、得られた混合物をペレットに成形する。得られたペレットを、ハンマーミル等の衝撃型粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等によって粉砕した後、分級することにより本発明の粉体塗料が得られる。
【0025】
上記分級により、上述の粒径分布を達成することができ、上記粒径範囲より大きい粒子の量、上記粒径範囲より小さい粒子の量が減少する。上記分級は、170メッシュ、好ましくは200メッシュのタイラー標準ふるい、90μm、好ましくは80μmよりも大きい粒子を分離し除去するディスバージョンセパレーター、ミクロンセパレーター等の流体分級機、及び、1μmよりも小さい粒子を分離し除去するサイクロン、ディスバージョンセパレーター、ミクロンセパレーター等の流体分級機等を使用して行うことができる。
【0026】
本発明の粉体塗料の製造方法としては、上述の方法以外に、例えば、原料を溶剤中で混合し、得られた混合物を乾燥、微粉砕するか、又は、スプレードライ法により粉末にする方法を採用することもできる。得られた粉末は必要に応じて、上述の粉砕、分級に供することができる。
【0027】
本発明の粉体塗料を上記複合化された粉体塗料粒子よりなるものとして得る場合には、上記のようにして分級された第1の粒子に上述の第2の粒子を添加して混合する。上記混合においては、ミキサーや混合条件を適宜選択することにより、第1の粒子と第2の粒子との複合化状態を所望の状態に設定することができ、例えば、ミキサーとしてハイブリダイザーを用いると、第2の粒子が分級物の粒子表面に埋め込まれた複合化状態の粉体塗料が得られる。上記混合においては、例えば、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイブリダイザー、ボールミル等の一般的なミキサーを適宜用いることができる。上述のようにして複合化することにより、又は、複合化の後に必要に応じて複合化された粒子を分級することにより、本発明の粉体塗料を上記複合化された粉体塗料粒子よりなるものとして得ることができる。
【0028】
本発明の粉体塗料の製造にあたっては、用いられる原料は、樹脂を除く他の成分が、粒径700μm未満の粒子を40〜100重量%含んでいることが好ましく、60〜100重量%含んでいることがより好ましい。このような粉体塗料用原料を用いると、樹脂成分中に顔料や各種添加剤が均等に分散したペレットが得られるので、ペレットの粉砕により得られる粉体塗料は、各粒子中に各種原料成分がほぼ均等に含まれることになる。このため、塗膜の形成工程において、例えば、樹脂の硬化反応が均一に起こり易くなるため、平滑性等の外観がより良好な塗膜を形成することができる。
【0029】
本発明の粉体塗料の適用対象としては特に限定されず、例えば、自動車用、家電機器用、建材用、雑貨用等の鋼板、リン酸亜鉛処理鋼板、アルミニウム又はアルミニウム合金材等を挙げることができる。
本発明の粉体塗料の塗装方法としては、例えば、静電スプレー法、流動浸漬法等の周知の方法により本発明の粉砕塗料を被塗物の表面に所望の厚みで堆積させ、その後焼き付けることにより行うことができる。樹脂成分として熱硬化性樹脂を使用した場合には、硬化した塗膜が形成される。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0031】
参考例1
グリシジル基含有固型アクリル樹脂(Tg=50℃、数平均分子量3,000、エポキシ当量350)48重量部、1,10-デカンジカルボン酸12重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD-012、東都化成社製)2.2重量部、ポリシロキサン表面改質剤0.1重量部、ベンゾイン0.3重量部をスーパーミキサー(日本スピンドル製造社製)で攪拌混合し、コニーダー(ブス社製)で溶融混練し、冷却固化した。冷却固化物を粗粉砕し、粉体塗料用ペレットを得た。
【0032】
得られた粉体塗料用ペレットを衝撃型粉砕機(アトマイザー、不二パウダル社製)で粉砕し、粉砕物を0.7mm間隔のスクリーンメッシュを通過させ、325メッシュのタイラー標準ふるい(孔径44μm)を通過させて44μmよりも
大きい粒子を除去し、気流分級機(DS-2型、日本ニューマチック工業社製)で2μmよりも小さい粒子の全量を分級除去して粉体塗料を得た。
【0033】
参考例2
分級の目標値を表1に示す値に設定し、325メッシュのタイラー標準ふるいの代わりに250メッシュのタイラー標準ふるい(孔径61μm)を用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0034】
参考例3
分級の目標値を表1に示す値に設定し、325メッシュのタイラー標準ふるい(孔径44μm)を用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0035】
参考例4
分級の目標値を表1に示す値に設定し、325メッシュのタイラー標準ふるいの代わりに250メッシュのタイラー標準ふるい(孔径61μm)を用い、気流分級機による分級を行わなかったこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0036】
参考例5
分級の目標値を表1に示す値に設定し、325メッシュのタイラー標準ふるいの代わりに170メッシュのタイラー標準ふるい(孔径88μm)を用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0037】
実施例6
参考例4で得られたアクリル粉体塗料に粒子径0.03〜0.05μm、Tg=100℃のアクリル樹脂(メチルメタクリレート87重量部、スチレン10重量部、メタクリル酸3重量部)微粉末を混合し、ヘンシェルミキサーにより30秒間乾式混合して複合化粉体塗料を得た。微粉末の混合割合は、粉体塗料の1.0重量%に設定した。
【0038】
得られた複合化粉体塗料の体積平均粒径、粒径分布標準偏差及び外観は、アクリル樹脂微粉末を混合する前とほとんど変化しなかった。しかし、搬送性は著しく改善されていた。また、粉体塗料を30℃で6ヵ月貯蔵し、粉体の凝集状態を目視で評価しところ、粉体の凝集が全くなく、貯蔵時のブロッキング性にも優れていた。一方、参考例4の粉体塗料について、同様にしてブロッキング性を評価したところ、粉体の凝集がほとんどなかった。
【0039】
実施例7
市販のポリエステル粉体塗料(P-100、日本ペイント社製)を分級の目標値を表1に示す値に設定し、200メッシュ(孔径74μm)のタイラー標準ふるいを用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0040】
このポリエステル粉体塗料は、塗膜形成用樹脂である熱硬化性ポリエステル樹脂100重量部に対して硬化剤としてブロックイソシアネートを17重量部含み、顔料含有量が粉体塗料の全体重量に対し、40重量%であった。
【0041】
参考例6
市販のハイブリッド粉体塗料(H-100、日本ペイント社製)を分級の目標値を表1に示す値に設定し、200メッシュ(孔径74μm)のタイラー標準ふるいを用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0042】
このハイブリッド粉体塗料は、塗膜形成用樹脂としてポリエステル樹脂50重量部とエポキシ樹脂50重量部とを含み、顔料含有量が粉体塗料の全体重量に対し40重量%であった。
【0043】
参考例7
参考例1で用いた配合に、更に、酸化チタン(CR-50、石原産業社製)20重量部を加えた配合であって、かつ、粒径700μm未満の成分の含有量が40重量%未満である粉体塗料用原料粒子群をスーパーミキサーで攪拌混合し、コニーダーで溶融混練し、冷却固化物を粗粉砕して参考例7の粉体塗料用ペレットを得た。得られたペレットを参考例1と同様にして粉砕し、分級の目標値を表1に示す値に設定し、250メッシュ(孔径61μm)のタイラー標準ふるいを用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去して粉体塗料を得た。
【0044】
参考例8
粒径700μm未満の成分の含有量が40重量%以上である粉体塗料用原料粒子群を用いたこと以外は、参考例7と同様にして粉体塗料を得た。
【0045】
比較例1
気流分級機により表1に示す粒径よりも大きい粒子及び小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0046】
比較例2〜3
分級の目標値を表1に示す値に設定し、325メッシュのタイラー標準ふるいの代わりに150メッシュのタイラー標準ふるい(孔径104μm)を用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0047】
比較例4
分級の目標値を表1に示す値に設定し、325メッシュのタイラー標準ふるいの代わりに170メッシュのタイラー標準ふるい(孔径88μm)を用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0048】
比較例5
市販のポリエステル粉体塗料(P-100、日本ペイント社製)を分級の目標値を表1に示す値に設定し、150メッシュ(孔径104μm)のタイラー標準ふるいを用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0049】
このポリエステル粉体塗料は、塗膜形成用樹脂である熱硬化性ポリエステル樹脂100重量部に対して硬化剤としてブロックイソシアネートを17重量部含み、顔料含有量が粉体塗料の全体重量に対し40重量%であった。
【0050】
比較例6
市販のハイブリッド粉体塗料(H-100、日本ペイント社製)を分級の目標値を表1に示す値に設定し、170メッシュ(孔径88μm)のタイラー標準ふるいを用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去したこと以外は、参考例1と同様にして粉体塗料を得た。
【0051】
このハイブリッド粉体塗料は、塗膜形成用樹脂としてポリエステル樹脂50重量部とエポキシ樹脂50重量部とを含み、顔料含有量が粉体塗料の全体重量に対し40重量%であった。
【0052】
比較例7
参考例1で用いた配合に、更に、酸化チタン(CR-50、石原産業社製)20重量部を加えた配合であって、かつ、粒径700μm未満の成分の含有量が40重量%未満である粉体塗料用原料粒子群をスーパーミキサーで攪拌混合し、コニーダーで溶融混練し、冷却固化物を粗粉砕して粉体塗料用ペレットを得た。
得られたペレットを参考例1と同様にして粉砕し、分級の目標値を表1に示す値に設定し、150メッシュ(孔径104μm)のタイラー標準ふるいを用い、気流分級機により表1に示す粒径よりも小さい粒子を分級除去して粉体塗料を得た。
【0053】
評価
得られた各粉体塗料を、下記の項目について評価した。結果を表1に示した。
1.粒径、粒径分布の測定
粒径は、粒径測定装置(マイクロトラック-II、リード・アンド・ノースロップ社製)を用いて測定した。得られた粒径/頻度の結果から、下式により体積平均粒径と粒径分布標準偏差を求めた。
σ=〔Σ{(D-X)2F}/ΣF〕1/2
(式中、σは、粒径分布標準偏差、Dは、個々の粒子の粒径、Xは、体積平均粒径を表す。X=Σ(DF)/ΣF、Fは、粒子の頻度である。)
【0054】
2.外観評価
実施例と比較例の各粉体塗料を静電塗装法により鉄板に均一に塗布し、140℃×20分の条件で焼き付けて塗膜を形成した。得られた塗膜の外観は、写像鮮明度測定器(スガ試験機社製)で測定されたNSIC値(%)で評価した。NSIC値は、図1に示す光学系を用いて塗膜表面による反射を介して結像した矩形波パターンの像をフーリエスペクトル解析することにより求められた。
【0055】
図1において、光源1から放射された光は、コンデンサーレンズ2、パターン3、投影レンズ4を通って塗装物5の塗装面で反射し、フォトダイオードアレー6の受光面に結像することで、結像波形を得た。光源1とフォトダイオードアレー6の受光面とは、塗装物5の塗装面に対して角度θの位置に配した。
【0056】
NSIC値は、形の情報を強調するためにベースライン強度bを減じた結像波形の、基本周波数ν0とその3倍の周波数3ν0のパワーの平方根の和
{P(ν0)1/2+P(3ν0)1/2}
を、黒ガラス板についての同様の値
{P(ν0)1/2+P(3ν0)1/2}B.G.
で基準化したもの:
NSIC=〔{P(ν0)1/2+P(3ν0)1/2}/{P(ν0)1/2+P(3ν0)1/2}B.G.〕×100
であり、主として像のゆず肌感(矩形網からの形の歪み)を代表するものである。
【0057】
3.搬送性評価
粉体塗料の塗装システムは、通常、粉体フィーダー(流動層)からインジェクターを経由してホースにより塗装ガンに至る。上記塗装システムで粉体塗料を1時間連続的に搬送した後、インジェクター及びホース内での粉体塗料の堆積状態を目視し、搬送性を評価した。評価基準は次のとおりであった。
◎:粉体が全く堆積しなかった。
○:粉体がほとんど堆積しなかった。
×:粉体が堆積してインジェクター又はホースをほとんど閉塞した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示された結果から次のことが判明した。
比較例2と比較例3の粉体塗料は、それぞれ、体積平均粒径26.5μmと30.5μmであり、従来のクリアーの粉体塗料に相当し、粒径分布標準偏差が20μmを超えるので外観に劣る塗膜を形成した。比較例4のものは、体積平均粒径50μmを超えるので、粒径分布標準偏差20μm以下であっても外観に劣る塗膜を形成した。比較例1のものは、体積平均粒径9.5μmで粒径分布標準偏差7.2μmであり、上記公報で提案された粉体塗料に相当し、平均粒径20μm未満であるので、搬送性に劣っていた。
【0060】
参考例1〜5及び実施例6の粉体塗料は、体積平均粒径20〜50μm、粒径分布標準偏差20μm以下であり、搬送性に優れ、NSIC値60%以上の外観に優れた塗膜を形成した。粒径分布標準偏差16μm以下の参考例1は、NSIC値65%以上の高外観塗膜を形成した。実施例6の粉体塗料は、参考例4の粉体塗料に比べ、外観は同じレベルであったが、搬送性が著しく改良され、また、貯蔵時のブロッキング性にも優れていた。
【0061】
比較例5と比較例6の粉体塗料は、粒径分布標準偏差が20μmを超えるので、従来の顔料を配合した粉体塗料と同等の外観を有した塗膜を形成した。
実施例7の粉体塗料は、粒径分布標準偏差20μm以下であるので、比較例5のものに比べると、外観に優れた塗膜を形成した。
参考例6の粉体塗料は、粒径分布標準偏差20μm以下であるので、比較例6のものに比べると、外観に優れた塗膜を形成した。
実施例7と参考例6の粉体塗料は、参考例1〜5及び実施例6のものとは塗膜形成用樹脂が異なっているが、粒径分布標準偏差が20μm以下になることにより、搬送性を損なわずに外観の向上した塗膜を形成した。
【0062】
比較例7の粉体塗料は、粒径分布標準偏差が20μmを超えるので、従来の顔料を配合したアクリル粉体塗料と同等の外観を有した塗膜を形成した。
参考例7、参考例8の粉体塗料は、体積平均粒径が20〜50μmの範囲内であり、粒径分布標準偏差20μm以下であり、比較例7に比べ、外観に優れた塗膜を形成した。
また、参考例8は、粒径700μm未満の成分の含有量が40重量%以上の粉体塗料用原料粒子群からなり、参考例7に比較し、さらに外観が向上した。
【0063】
【発明の効果】
本発明の粉体塗料は、上述の構成よりなるので、搬送性に優れ、かつ、高外観の塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
塗膜の外観評価に用いた装置の光学系の概略図。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
〈訂正事項a〉特許請求の範囲の請求項1において、
i)粉体塗料が「溶融混練によって得られる」ものであること、また、塗膜形成用樹脂が「熱硬化性ポリエステル樹脂であり、顔料、並びに、硬化剤及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含むものであって、前記硬化剤はブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂又はトリグリシジルイソシアヌレート」であること、を挿入する。
ii)体積平均粒径を「20〜40μm」に訂正する。
〈訂正事項b〉請求項1の訂正に伴い、請求項6及び7を削除するとともに、以降の請求項番号を繰り上げる。
〈訂正事項c〉請求項11(訂正後請求項9)において、粉体塗料が、「溶融混練によって得られ」、「体積平均粒径が20〜40μmであり、粒径分布標準偏差が20μm以下」のものであること、また、塗膜形成用樹脂が「熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、硬化剤及び及び硬化促進剤のうち少なくとも1種を含む」ものであること、を挿入する。
〈訂正事項d〉発明の詳細な説明中の該当する個所を、訂正事項a〜cの特許請求の範囲の訂正に整合するように訂正する。
異議決定日 2000-08-28 
出願番号 特願平7-145602
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C09D)
P 1 651・ 534- YA (C09D)
P 1 651・ 121- YA (C09D)
P 1 651・ 531- YA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中田 とし子  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 谷口 操
胡田 尚則
登録日 1998-11-06 
登録番号 特許第2849353号(P2849353)
権利者 日本ペイント株式会社
発明の名称 粉体塗料  
代理人 古谷 信也  
代理人 中野 睦子  
代理人 三輪 鐵雄  
代理人 関 仁士  
代理人 折口 信五  
代理人 古谷 信也  
代理人 三枝 英二  
代理人 安富 康男  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 奥村 茂樹  
代理人 小原 健志  
代理人 齋藤 健治  
代理人 安富 康男  
代理人 藤井 淳  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 山下 穣平  
代理人 大島 泰甫  
代理人 後藤 誠司  
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